JP5416325B2 - 2サイクルエンジン油組成物の製造法 - Google Patents

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Description

【発明の属する技術分野】
本発明は、排気煙性能、排気系閉塞性能に優れ、かつエンジンにおけるベアリングの潤滑性に優れた2サイクルエンジン油組成物の製造法に関する。
二輪車用2サイクルエンジン油の性能分類として1993年にJASO規格が制定され、排気煙指数、排気系閉塞性指数、潤滑性指数、初期トルク指数、清浄性指数を規定した性能分類(FA、FB、FC)が規定されている。FC級はポリブテンを配合したスモークレス油であり、現在、国内及び海外を含め主流となっている。
一方、近年の高出力化された2サイクルガソリンエンジンに対して、上記JASO規格試験に充分合格しうるFC級品であっても、クランク軸受けベアリングの潤滑性不足が指摘されている。その理由は、JASO規格試験においてこのようなクランク軸受けのベアリングの潤滑性が十分に評価できないことに起因しており、たとえ、JASO規格試験に合格してもこのベアリングの潤滑性についてはその性能不足が問題となることがある。そこで、排気煙性能及び排気系閉塞性能が良く、かつクランク軸受けベアリングの潤滑性に問題のない2サイクルエンジン油の開発が望まれている。
また、エンジン油の上記各種評価は、エンジンを用いた実試験により行われているが、この実試験は煩雑であり、多大な労力を必要とする。従って、このような実試験に代わるエンジン油の評価基準の設定が望まれている。
発明が解決しようとする課題
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、排気煙性能、排気系閉塞性能及びエンジンにおけるベアリングの潤滑性をバランス良く備え、エンジンによる実試験評価を省略しうる2サイクルエンジン油組成物の製造法を提供することにある。
課題を解決するための手段
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、特定組成を含む2サイクルエンジン油において、DSCにより常温から590℃までに測定される熱量及びTGにより測定される400℃における熱分解残分が特定の数値となるように制御することにより、排気煙性能や排気系閉塞性能が良く、かつクランク軸受けベアリングの潤滑性に問題が生じない2サイクルエンジン油が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、鉱油及び合成油からなる群より選択される少なくとも2種の基油を含むエンジン油成分を配合して2サイクルエンジン油組成物を製造するにあたり、得られる2サイクルエンジン油組成物の、DSCにより常温から590℃までに測定される熱量を1000〜2500J/gとし、かつTGにより測定される400℃における熱分解残分を1〜5質量%とするように、エンジン油成分中の少なくとも基油を選択的に配合することを特徴とする2サイクルエンジン油組成物の製造法が提供される。
以下本発明を更に詳細に説明する。
本発明の2サイクルエンジン油組成物は、特定のエンジン油成分組成を含み、示差走査熱量計(DSC)により常温から590℃までに測定される熱量及び熱天秤(TG)により測定される400℃における熱分解残分が特定値を示すことを特徴とする。
本発明において前記示差走査熱量計(DSC)により常温から590℃までに測定される熱量(J/g)とは、示差走査熱量計(DSC)を用い、空気雰囲気中、常温から590℃まで10℃/分の速度で昇温させる条件下で測定された結果から示差走査熱量曲線を作成し、その総ピーク面積を求めた値である。DSCとしては、例えば、島津製作所(株)製の「DSC−60」、セイコーインスツルメンツ(株)製の「EXSTAR6000DSC」、パーキンエルマー社製の「7シリーズ」等の市販品を用いることができる。本発明においては、市販のDSCを使用し、試料となる2サイクルエンジン油をアルミ製オープンカップに4.5〜5.5mg採取し、参照物質には、空のアルミ製オープンカップを用いて測定した。
前記DSCは、物質の融解、転移、分解等の熱量を測定する熱量計の一種であり、熱分析の分野では一般に広く普及している。基本原理としては、試料と参照物質に等しい熱量を与えつつ同時に昇温させ、試料が分解等を起こすとそれに応じた熱量を吸収して試料と参照物質との間に温度差が生じる。その温度差をなくすために必要な電気エネルギーを記録したものが示差走査熱量曲線であり、そのピーク面積がその熱量に相当する。
本発明の2サイクルエンジン油組成物において、上記DSCにより常温から590℃までに測定される熱量は、1000〜2500J/gであることが必要であり、好ましくは1000〜2000J/gである。該熱量が1000J/g未満であるとクランクケースベアリングの潤滑性に劣り、一方、該熱量が2500J/gを超えると排気煙性能が劣る。
本発明において前記熱天秤(TG)により測定される400℃における熱分解残分(質量%)とは、熱天秤(TG)を用い、試料室において試料を常温から590℃まで10℃/分で昇温させたときに得られる熱分解曲線から、400℃における熱分解残分を求めた値である。TGとしては、例えば、島津製作所(株)製の「TGA50」、セイコーインスツルメンツ(株)製の「EXSTAR6000TG/DTA」等の市販品を用いることができる。本発明においては、市販のTGを使用し、試料となる2サイクルエンジン油を白金製オープンカップに14.5〜15.5mg採取し、試料室への空気導入量を50ml/分、窒素導入量を40ml/分として測定した。
前記TGとは、加熱による試料の熱分解等により生じる質量変化を測定する装置てあり、示差走査熱量計と同様に一般に広く普及している。
本発明の2サイクルエンジン油組成物において、上記TGにより測定される400℃における熱分解残分は1〜5質量%であることが必要であり、好ましくは1〜3質量%である。該熱分解残分が1質量%未満の場合、クランクケースベアリングの潤滑性に劣り、一方、該熱分解残分が5質量%を超えると、排気系閉塞性能が劣る。
本発明において、特定のエンジン油成分組成は、鉱油及び合成油からなる群より選択される少なくとも2種の基油を含む。要するに、基油の組合せとしては、鉱油が2種以上、合成油が2種以上、若しくは鉱油1種以上と合成油1種以上との組合せの態様が挙げられる。
合成油としては、エステル化合物及び/又はポリブテンを含むことが好ましい。また、鉱油又は合成油に分類される希釈油を配合することもできる。更に、各種添加剤のうち好ましくは必要により金属系清浄剤及び/又は無灰分散剤等を配合することもできる。
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用できる。
合成油としては、例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン及びその水素化物;イソブテンオリゴマー及びその水素化物;イソパラフィン;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド付加物の末端エステル化物、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;ポリオキシアルキレングリコール;ジアルキルジフェニルエーテル;ポリフェニルエーテル;ポリブテン又はこれらの混合物等が使用できる。
前記合成油としてのポリブテンは、ブタン−ブテン混合物又はイソブテンを、例えば、塩化アルミニウム系触媒やフッ化ホウ素系触媒等により重合させることにより得られるもの、あるいはさらに二重結合を水素化して飽和させたものをいう。ここで、ブタン−ブテン混合物とは、イソブタン、n−ブタン、イソブテン、1−ブテン、trans−2−ブテン、cis−2ブテン等を含む。なお、これらのポリブテンは、上記触媒に起因する塩素やフッ素等のハロゲン化合物が微量に混在することがあるが、これらは吸着法や水洗等により十分除去されることが好ましく、ポリブテン中に含まれるハロゲン元素量としては50質量ppm以下、好ましくは10質量ppm以下、さらに好ましくは5質量ppm以下、特に好ましくは1質量ppm以下が望ましい。
ポリブテンの数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは300〜900、特に好ましくは400〜850である。数平均分子量が900を超えるポリブテンを混合する場合でも、その混合物の数平均分子量が300〜900となっていれば好ましく使用できる。ポリブテンの数平均分子量が300未満の場合、潤滑性に劣る傾向にあり、一方、数平均分子量が900を超えるとエンジン内部に徐々に蓄積し、低温起動性の悪化やベアリングの潤滑不足を起こす可能性があるためそれぞれ好ましくない。
本発明において、基油として用いることができる希釈油は、炭化水素系溶剤であり、通常2サイクルエンジン油に使用されるものであればよい。例えば、初留点が通常100〜250℃、好ましくは150〜190℃、90%留出温度が通常150〜300℃、好ましくは190〜250℃の石油系及び/又は合成系炭化水素溶剤等が挙げられる。具体的には、ストッダードソルベント、ミネラルスピリット、灯油留分、軽油留分、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、プロピレンオリゴマー、低分子量のポリブテン等が用いられ、これらの中でも灯油留分が好ましい。
本発明において希釈油を用いる場合の配合割合は、組成物全量基準で通常3〜30質量%、好ましくは5〜25質量%である。希釈油の配合割合が3質量%未満では、組成物の粘度が高くなり、組成物と燃料との混合性が悪化する恐れがあり、一方、希釈油の配合割合が30質量%を超える場合、組成物の引火点が低下しすぎる恐れがあるため、それぞれ好ましくない。
本発明において基油の動粘度は、特に限定されず任意であるが、通常、100℃における動粘度は、好ましくは1〜50mm2/s、より好ましくは2〜40mm2/sであり、特に好ましくは4〜35mm2/sである。
本発明において、基油の配合割合は、その種類やその他のエンジン油成分組成等を考慮し、得られる組成物の上述のDSCによる熱量及び400℃における熱分解残分が上記特定値範囲となるように配合すれば良い。通常は、組成物全量基準で80質量%以上、好ましくは85〜99質量%となるように配合することが好ましい。
前記金属系清浄剤としては、例えば、中性又は塩基性カルシウムスルホネート及びそのホウ素化物、中性又は塩基性カルシウムフェネート及びそのホウ素化物、中性又は塩基性カルシウムサリシレート及びそのホウ素化物等が挙げられ、中性カルシウムスルホネートと中性カルシウムフェネートを配合したものが特に好ましい。これら金属系清浄剤の配合割合は、基油100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
前記無灰分散剤としては、例えば、モノタイプ又はビスタイプのポリブテニルコハク酸イミド及び/又はこれらのホウ素化物、ベンジルアミン、ポリアルケニルアミン等が挙げられ、重量平均分子量が700〜3500のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミドが好ましい。無灰分散剤の含有割合は、基油100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましい。
本発明の2サイクルエンジン油組成物には、さらにその性能を高める目的で、必要に応じて公知の他の各種添加剤を任意に配合することができる。このような添加剤としては、例えば、ポリメタクリレート等の流動点降下剤;フェノール系化合物やアミン系化合物等の酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等の腐食防止剤;アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル、石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート等の錆止め剤;ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類等の消泡剤;極圧添加剤;摩耗防止剤;ゴム膨潤剤;着色剤等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の添加剤は、任意の量を含有させることができるが、その含有割合は、通常、基油100質量部に対して0.001〜5質量部が望ましい。
なお、これら添加剤は、その製造過程において、塩素等のハロゲン化合物を使用しないか、極力除去されていることが好ましい。これら添加剤中のハロゲン元素の含有割合は、好ましくは100質量ppm以下、さらに好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下、最も好ましくは1質量ppm以下である。
本発明の2サイクルエンジン油組成物において、塩素等のハロゲン元素の含有割合は、好ましくは50質量ppm以下、さらに好ましくは10質量ppm以下、特に好ましくは1質量ppm以下である。
本発明の2サイクルエンジン油組成物を製造するには、後述の本発明の製造法が好適であり、得られる2サイクルエンジン油組成物は、排気煙性能、排気系閉塞性能及びエンジンにおけるベアリングの潤滑性がバランス良く示されるように、予め前記DSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分が制御されているので、エンジン油特性を評価する実試験を省略して使用することもできる。
本発明の製造法では、鉱油及び合成油からなる群より選択される少なくとも2種の基油を含むエンジン油成分を、得られる2サイクルエンジン油組成物のDSCにより常温から590℃までに測定される熱量が1000〜2500J/g、好ましくは1000〜2000J/gとなり、かつTGにより測定される400℃における熱分解残分が1〜5質量%、好ましくは1〜3質量%となるように、エンジン油成分中の少なくとも基油を選択的に配合する工程を含む。
本発明の製造法に用いる上記各エンジン油成分としては、必須の基油に加えて、上述の各成分の具体例を好ましく挙げることができ、上記DSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分となるように配合することができる。
本発明の製造法において、各エンジン油成分を、上述のDSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分の値となるように選択的に配合する方法としては、例えば、以下の操作(1)〜(5)のうち、(3)を必須にし、必要に応じて、(3)の操作を行なうための(1)及び(2)の操作、更に必要に応じて、(4)及び/又は(5)の操作を行う方法等が挙げられる。
(1)鉱油及び合成油からなる群より選択される少なくとも2種の配合する各基油について、DSCにより常温から590℃までに測定される熱量を測定する操作、(2)鉱油及び合成油からなる群より選択される少なくとも2種の配合する各基油について、TGにより400℃における熱分解残分を測定する操作、
(3)得られる組成物のDSCによる常温から590℃までに測定される熱量が1000〜2500J/g、好ましくは1000〜2000J/gとなり、かつ得られる組成物のTGによる400℃における熱分解残分が1〜5質量%、好ましくは1〜3質量%となるように少なくとも基油を選択的に配合し、この際、必要により粘度調整のために希釈油を適宜配合する操作、
(4)清浄性等を付与するために必要に応じて、金属系清浄剤及び/又は無灰分散剤等の添加剤を配合する操作、
(5)得られた組成物について、上記DSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分が、上述の範囲となっているかを確認し、必要に応じて各エンジン油成分の配合割合を微調整する操作。
このような製造法により、JASO排気煙試験や排気系閉塞性試験のような多大な労力と時間のかかるエンジン試験を行わずとも所望のエンジン性能を有する本発明の2サイクルエンジン油組成物を製造することができる。また、この際、エンジン油成分中の少なくとも基油を、上記DSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分となるように配合すれば良いのは、これらの値が、配合割合が高い基油の配合に大きく作用され、且つ決定することができるからである。
本発明の製造法について、更に具体的に説明する。
まず、鉱油又は合成油のDSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分をそれぞれ測定し、必要により添加剤のDSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分を測定する。例えば、表1に示すような結果が得られる。
Figure 0005416325
ここで、本発明の知見によれば、DSCにより得られる該熱量が小さいほど排気煙性能が良く、TGによる該熱分解残分が小さいほど排気系閉塞性能が良く、該熱分解残分が大きいほどベアリング潤滑性が良い。そこで、表1において、ポリブテン−1のみではTGによる該熱分解残分が0であるため、ベアリング潤滑性を維持するためにはエステル−1又は2、鉱油−1等のTGによる該熱分解残分が高い基油を適量配合して本発明で規定する前記DSCによる熱量及びTGによる熱分解残分の範囲とする必要があることがわかる。具体的には本発明の実施例等を参照して実施することができる。
また、本発明の製造法では、ポリブテン以外の合成油、特に合成油としてエステル化合物を用いて、排気煙性能、排気系閉塞性能に優れ、かつベアリング潤滑性に優れる組成物を得ることも容易に行うことができる。一般に、合成油としてのエステル化合物は生分解性があり、耐熱性が高く、その反面、排気煙性能、排気系閉塞性能が極めて悪いことが知られている。尚、ポリブテンや鉱油は生分解性が低いことが知られている。従って、生分解性があり、排気性能、排気系閉塞性能に優れた2サイクルエンジン油を得るには、エステル化合物の中から生分解性の良いものを選定した上でエンジン試験を多数実施する必要があり、目標を達成するために、労力と時間、多大な費用がかかっていた。しかし、本発明の製造法によれば、排気煙性能及び排気系閉塞性能が高いエステル化合物を短時間で探索することが可能となり、これを用いた該組成物のエンジン性能を迅速に確認することができ、該組成物の開発期間、労力、費用を大幅に圧縮することが可能である。例えば、上記表1中、エステル−3は、上記DSCによる熱量や上記TGによる熱分解残分が、エステル−1や2に比べて特に小さいため、排気煙性能及び排気系閉塞性能を向上させる材料として有用な基油であることが容易に判断できる。このようなエステル−3を用いることにより、特に、排気系閉塞性能等に優れた生分解性のあるFC級の2サイクルエンジン油を得ることができる。このようなエンジン油の具体的な製造法は、後述する実施例6を参照して実施することができる。
本発明の製造法では、上述のとおり、組成物のDSCによる熱量と、TGによる熱分解残分とを特定範囲とすることにより、優れた排気煙性能及び排気系閉塞性能が得られると共に、優れたベアリング潤滑性が得られるので、この知見に基づき、2サイクルエンジン油の品質管理を行うこともできる。即ち、製造され、保存された2サイクルエンジン油の、上記DSCによる熱量及びTGによる熱分解残分を測定し、本発明で規定する上述の範囲になっているかを確認し、維持することにより、必要なエンジン性能を有していることが確認できる。
発明の効果
【発明の効果】
本発明の製造法では、得られる組成物のDSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分を所定値とするために、少なくとも基油の選択的な配合という容易な方法を採用するので、排気煙性能、排気系閉塞性能及びクランクケースベアリングの潤滑性をバランス良く備えた2サイクルエンジン油組成物を容易に得ることができ、従来のこれらの性能を評価する実試験を省略することも可能である。従って、この知見により、エンジン油の新たな評価方法や管理方法を提供することもできる。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
なお、本発明のエンジン用潤滑油組成物の性能を以下に示す性能評価試験により評価した。
(排気煙試験)
JASO M342−92の試験方法に準拠した、排気量69cc単気筒強制空冷の発電機を用い、マフラーから排出される排気煙濃度(透過率)をスモークメーターで計測する。比較標準油(JATRE−1)の排気煙濃度を100としたときの試験油の排気煙濃度を排気煙指数として表す。比較標準油より排気煙濃度が低い場合、排気煙指数は大きい数値を示す。
(排気系閉塞性試験)
JASO M343−92の試験方法に準拠した。排気量69cc単気筒強制空冷の発電機を用い、排気系へのカーボンなどの堆積による出力低下の度合いを評価する。比較標準油(JATRE−1)の排気系閉塞到達時間を100としたときの試験油の排気系閉塞到達時間を排気系閉塞性指数として表す。比較標準油より排気系閉塞性に優れる場合、排気系閉塞性指数は大きい数値を示す。
(潤滑性試験)
JASO M340−92の試験方法に準拠した。排気量49cc単気筒強制空冷の2サイクルエンジンを用い、エンジン回転数4000rpm、全負荷、燃料:油混合比50:1、プラグ座温200℃に達した時の出力トルクを測定し、さらにプラグ座温200℃に達した時に再び出力トルクを測定する。その間の出力トルク低下量を測定する。比較標準油(JATRE−1)の出力トルク低下量を100としたときの試験油の出力トルク低下量を潤滑性指数として表す。比較標準油より潤滑性に優れる場合、潤滑性指数は大きい数値を示す。
また、初期トルクはプラグ座温200℃に達した時の出力トルクで、比較標準油(JATRE−1)を100としたときの試験油の初期トルクを初期トルク指数として表す。比較標準油より初期トルクが高い場合、初期トルク指数は大きい数値を示す。
(清浄性試験)
JASO M341−92の方法に準拠した。排気量49cc、単気筒強制空冷の2サイクルエンジンを用い、エンジン回転数6000rpm、全負荷、燃料:油混合比100:1、プラグ座温240℃の条件で1時間運転後、エンジンを分解し、ピストンリング膠着(Top、2nd)、ピストンランド(Top、2nd)、ピストングルーブ(Top、2nd)、ピストンスカート、ピストンアンダーサイド、ピストンヘッド、シリンダヘッドの清浄性をJPI−5S−34−91(2サイクルエンジン清浄性評価法)により評価を行う。比較標準油(JATRE−1)の評点を100としたときの試験油の評点を清浄性指数として表す。比較標準油より清浄性が優れる場合は、清浄性指数が大きい数値を示す。
(ベアリング潤滑性)
排気量49cc、単気筒強制空冷の2サイクルエンジンを用い、エンジン回転数6000rpm、全負荷、燃料:油混合比100:1、プラグ座温210℃の条件で100時間運転後、エンジンを分解し、コンロッド大端部及び小端部のニードルベアリングとクランクシャフトの軸受ベアリングとの状態を観察した。焼付きや摩耗、変色がない場合を合格とした。
(DSCによる熱量(J/g)及びTGによる400℃における熱分解残分(質量%))
示差走査熱量計又は熱天秤を用い、上述で説明した測定法に従って測定した。
実施例1〜6
表2に示す各種基油のDSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分を測定し、表2に示す組成に配合し、2サイクルエンジン油組成物を調製した。この際、添加剤として、カルシウムスルフォネート、カルシウムフェネート及びコハク酸イミド等を含むパッケージ添加剤を用いた。得られたそれぞれの組成物のDSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分を測定し、所定値の範囲であることを確認した。次いで、得られた各組成物について性能評価を行った。結果を表2に示す。
表2より明らかなように、本発明の2サイクルエンジン油組成物は、DSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分が所定値の範囲内であり、排気煙性能、排気系閉塞性能が良いだけでなく、クランクケース潤滑性にも問題がないことがわかる。
比較例1〜3
表2に示す組成の2サイクルエンジン油組成物を調製し、DSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分、並びに各性能評価を行なった。結果を表2に示す。
比較例1は、DSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分が本発明で規定する数値よりも大きい例であり、比較例2は、DSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分が本発明で規定する数値よりも小さい例であり、比較例3は、DSCによる熱量及びTGによる400℃における熱分解残分が高い表1に示すエステル−1及びエステル−2を用いた例である。
表2より明らかなとおり、比較例1ではベアリング潤滑性に異常が見られ、エンジン性能試験において、特に、排気煙性能及び排気系閉塞性能に劣るものであった。比較例2では、エンジン性能試験においては問題はないが、ベアリング潤滑性に異常が発生した。比較例3では、ベアリング潤滑性には問題は無かったが、排気煙性能及び排気系閉塞性能が劣るものであった。
Figure 0005416325

Claims (1)

  1. 鉱油及び合成油からなる群より選択され、ポリブテンを必須として少なくとも2種の基油を含むエンジン油成分を配合して2サイクルエンジン油組成物を製造する方法であって
    (A)前記基油の各々について、DSCによる常温から590℃までに測定される基油の熱量、及びTGによる400℃における基油の熱分解残分を測定する工程と、
    (B)前記基油の熱量及び前記基油の熱分解残分の値から、ベアリング潤滑性が得られるように前記各々の基油の配合割合を決定する工程と、
    (C)前記配合割合に基づいて、前記少なくとも2種の基油を配合し、当該少なくとも2種の基油を含むエンジン油組成物を調製する工程と、
    (D)前記エンジン油組成物のDSCによる常温から590℃までに測定される組成物の熱量、及びTGによる400℃における組成物の熱分解残分を測定する工程と、
    (E)前記組成物の熱量及び前記組成物の熱分解残分が、それぞれ、1000〜2500J/g、及び1〜5質量%となるように、(B)〜(D)の工程を繰り返す工程と、を有する、
    2サイクルエンジン油組成物の製造方法。
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