以下に、図面を参照して本発明に係る板材の製造方法および板材の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
はじめに、本発明の実施の形態1に係る板材の製造方法について説明する。本実施の形態1は、板材としてガラス板を用いるものである。
図1は、本発明の実施の形態1に係るガラス板の製造方法のフロー図である。図1に示すように、本実施の形態1に係るガラス板の製造方法では、はじめに、元板材としての母材ガラス板を準備する(ステップS101)。つぎに、ステップS101において準備した母材ガラス板をエッチングする(ステップS102)。つぎに、ステップS102においてエッチングした母材ガラス板を加熱延伸する(ステップS103)。以下、各工程について具体的に説明する。
はじめに、ステップS101の母材ガラス板準備工程について説明する。図2は、この母材ガラス板準備工程において準備する母材ガラス板を長手方向と垂直な面で切断した斜視断面概略図である。図2に示すように、この母材ガラス板10は、対向する主表面10a、10bと、幅方向において対向する端面10c、10dとを有する。端面10c、10dは長手方向にわたってほぼ平行となっている。また、この母材ガラス板10の厚さは、幅方向および長手方向にわたってほぼ一定である。
この母材ガラス板10の材質については、特に限定されず、製造すべきガラス板の用途に応じて適宜選択するが、たとえば石英ガラスや、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノ珪酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。
また、この母材ガラス板10を準備する方法は特に限定されず、公知の方法、たとえば所望の形状のプレス型を用いて溶融ガラスを成型するプレス法や、溶融ガラスを炉の底部に形成した所望の形状のスリットを通して下に引き出すダウンドロー法を用いることができる。または、溶融ガラスを炉の上部に形成した所望の形状のスリットを通して上に引き出すアップドロー法を用いることができる。
つぎに、ステップS102のエッチング工程について説明する。図3は、エッチング工程を実施するためのエッチング装置の一例の模式図である。図3に示すように、このエッチング装置100は、ガラスをエッチングできるフッ酸溶液等のエッチング液101を貯留した容器102と、センサ部103aを有し、エッチング液101の液面101aの位置を検出する液面センサ103と、輸送管104aからエッチング液101を汲み上げるポンプ104と、ポンプ104が汲み上げたエッチング液101を輸送する輸送管105と、輸送管105が輸送したエッチング液101をエッチング液106として貯留する容器107と、液面センサ103が検出した液面101aの位置に応じてポンプ104を制御する制御器C1とを有する。なお、液面センサ103は、センサ部103aの下端の位置における水圧の値およびその変化から液面を検出するものである。
つぎに、エッチング装置100を用いたエッチング工程の実施方法について説明する。はじめに、図3に示す母材ガラス板10を、容器102に貯留したエッチング液101に浸漬する。このとき、母材ガラス板10の長手方向をエッチング液101の液面101aと平行にして、母材ガラス板10の幅方向の中心から一方をエッチング液101に浸漬する。すると、母材ガラス板10はエッチング液101によってエッチングされる。
つぎに、ポンプ104はエッチング液101を汲み上げ、輸送管105を介して容器107に排出することによって、エッチング液101の液面101aが、母材ガラス板10の主表面10a、10b上を所望の下降速度で下降するように下降速度を制御する。そうすると、当初エッチング液101に浸漬していた母材ガラス板10の部分が徐々に露出してくる。その結果、母材ガラス板10のエッチング量は、エッチング液101に浸漬していた時間に応じて増加する。したがって、母材ガラス板10は、幅方向の中心から端面に向かって厚さが徐々に薄くなり、エッチング液101に最も長く浸漬する下側端面が最も薄くなるような形状となる。
エッチング液101の液面101aが母材ガラス板10の下端より下に到達したら、母材ガラス板10を上方に移動し、幅方向の中心のまわりに180度回転する。そして、エッチング液106を容器102に戻した後に母材ガラス板10を下降させて、幅方向の中心からもう一方をエッチング液101に浸漬する。その後、上記と同様に、ポンプ104によってエッチング液101を排出し、液面101aの下降速度を所望の下降速度に制御する。
ここで、エッチング液101の液面101aの下降速度の制御は以下のように行う。上述したように、加熱延伸法を用いて製造したガラス板は、その主表面が、幅方向の中心部の厚さが薄く、端部の厚さが最も厚くなるように凹状に湾曲する形状を有することがある。そこで、本実施の形態1においては、ステップS103の加熱延伸工程において発生する主表面の湾曲を補正するように液面101aの下降速度を制御する。
図4は、本実施の形態1における、母材ガラス板上の位置に対する相対板形状の関係と、液面位置に対するエッチング時間の関係とを示した図である。なお、図4においては、幅が475mmのボロシリケートガラスからなる母材ガラス板をフッ酸溶液でエッチングする場合を例として示している。ここで、母材ガラス板上の位置に対する相対板形状とは、後述する加熱延伸工程において発生するガラス板の主表面の湾曲を、加熱延伸工程前の母材ガラス板10上の位置に対応させて示したものである。また、液面位置に対するエッチング時間とは、母材ガラス板10の主表面10a、10bにおいて液面101aの位置にある部分がエッチングされている時間を示すものである。なお、母材ガラス板10上の位置および液面位置は、母材ガラス板10の幅方向の中心を0mmとし、そこから下方へ向かう距離として示している。
本実施の形態1においては、図4に示すように、相対板形状を示す曲線と、エッチング時間を示す曲線とが同一形状になるように液面101aの下降速度を制御する。これによって、加熱延伸工程において発生する主表面の湾曲を補正するように液面101aの下降速度を制御することができる。
なお、液面101aの下降速度の制御は、液面センサ103が検出した液面101aの位置に基づき、制御器C1がポンプ104の排出速度を調整することによって行われる。このようなエッチング装置100は、従来の砥石を用いた研削装置と比較してより簡易な構成であり、液面101aの下降速度の制御も容易であり、かつ高精度に行うことができる。
図5は、図4に示した制御によりエッチングを行った母材ガラス板を長手方向と垂直な面で切断した斜視断面概略図である。図5に示すように、この母材ガラス板11は、母材ガラス板10と同様に、対向する主表面11a、11bと、幅方向において対向する端面11c、11dとを有するが、主表面11a、11bは、幅方向の中心から端面11c、11dのそれぞれに向かって、厚さが減少するように凸状に湾曲している。この主表面11a、11bの湾曲形状は、図4に示す相対板形状とほぼ逆の形状になっている。
つぎに、ステップS103の加熱延伸工程について説明する。図6は、この加熱延伸工程において用いる加熱延伸装置の一例の模式図である。図6に示すように、この加熱延伸装置200は、加熱炉201と、母材送り機構202と、引き取り機構203a、203bと、カッター204とを備えている。
加熱炉201は、母材ガラス板11を加熱延伸するための電気抵抗炉であり、加熱手段として、母材ガラス板11の一方の主表面に対向するように配置された複数のヒータ201a〜201cを備えている。なお、加熱炉201は、母材ガラス板11の他方の主表面に対向するように配置された複数のヒータも備えている。また、母材送り機構202は、加熱炉201の上方に設けられており、加熱炉201の上方から加熱炉201内に母材ガラス板11を長手方向に送り込むものである。また、引き取り機構203a、203bは、加熱炉201の下方に設けられており、母材ガラス板11を加熱延伸して形成されたガラス板12を引き取るものである。また、カッター204は、引き取り機構203a、203bの後に設けられ、ガラス板12の表面に溝を形刻して、所定の長さにへき開する。なお、加熱炉201、母材送り機構202、および引き取り機構203a、203bは、制御器に接続している。この制御器は、外径測定器の測定したガラス板12の外径の測定値に基づいて、加熱炉201の炉内温度、母材送り機構202の母材送り速度、引き取り機構203a、203bの引き取り速度などを制御する。
つぎに、この加熱延伸装置200を用いて母材ガラス板11を加熱延伸する方法について説明する。はじめに、加熱炉201の各ヒータに通電し、炉内温度を母材ガラス板11の軟化点以上の所定温度に調整する。この際、平坦度が高くなるように母材幅方向、長手方向の温度分布を形成してもよい。一般に幅方向は端部の温度が高くなるように、長手方向は温度勾配が小さくなるように形成するとよい。つぎに、母材送り機構202が、母材ガラス板11を、その長手方向を下方に向けて加熱炉201内に送り込む。加熱炉201に送り込まれた母材ガラス板11は軟化点以上の温度に加熱されると、その幅が収縮して所望の厚さに延伸される。
ここで、母材ガラス板11は、その主表面11a、11bが凸状に湾曲しているため、従来加熱延伸の際に発生していた凹状の湾曲形状が補正されるため、形成されるガラス板12は、主表面の平坦度が高いものとなる。
その後、引き取り機構203a、203bが形成されたガラス板12を引き取り、カッター204がガラス板12の表面に溝を形刻して、所定の長さにへき開することによって、所定の長さのガラス板13が形成される。
図7は、へき開したガラス板13を長手方向と垂直な面で切断した斜視断面概略図である。図7に示すように、このガラス板13は、対向する主表面13a、13bと、幅方向において対向する端面13c、13dとを有する。そして、このガラス板13は、端面13c、13dが長手方向にわたってほぼ平行となっているとともに、幅方向および長手方向にわたってほぼ一定の厚さを有しており、その主表面13a、13bの平坦度が高いものとなっている。
以上説明したように、本実施の形態1によれば、ガラス板の主表面の表面形状をより簡易に平坦度の高い形状にすることができる。
なお、このガラス板13において、幅方向にわたる主表面13a、13b間の厚さの最大値と最小値との差が50μm以下であれば、端面13c、13dを含めた幅方向の全域にわたってカバーガラスなどの保護ガラス基板の用途に使用できる。特に、主表面13a、13bと、端面13c、13dとは、いずれも溶融した面であるから、その表面粗さがきわめて良好である。したがって、ガラス板13は、さらに主表面13a、13bの精密研磨や端面四面のうち端面13c、13dのエッジポリッシュを行うことなく、あるいはきわめて短時間の精密研磨を行うだけで、表面粗さがきわめて良好な表面で囲まれたガラス板となる。
また、このガラス板13において、幅方向にわたる主表面13a、13b間の厚さの最大値と最小値との差が10μm以下であれば、円環状に打ち抜くことによってHDD基板の用途に使用できる。特に、主表面13a、13bは、いずれも溶融した面であるから、その表面粗さがきわめて良好であり、板厚精度も高い。したがって、ガラス板13は、さらに表面の精密研磨を行うことなく、あるいはきわめて短時間の精密研磨を行うだけで、表面粗さがきわめて良好な表面のガラス板となる。
また、このガラス板13において、幅方向にわたる主表面13a、13b間の厚さの最大値と最小値との差が1μm以下であれば、端面13c、13dを含めた幅方向の全域にわたってフレキシブル性を持った電子機器用ガラス基板の用途に使用できる。特に、主表面13a、13bと、端面13c、13dとは、いずれも溶融した面であるから、その表面粗さがきわめて良好である。したがって、ガラス板13は、さらに表面の精密研磨やエッジポリッシュを行うことなく、あるいはきわめて短時間の精密研磨を行うだけで、表面粗さがきわめて良好な表面で囲まれたガラス板となり、フレキシブル性を持ったデバイスなどの作製が可能となる。また、延伸と同時に基材の形状精度が確保されるので、基板の研磨などを行わずともガラス基板に対して基板を延伸するのと同時にオンラインでSiや透明導電膜などの機能性薄膜の形成を行うことも可能になる。
また、従来母材ガラス板の加熱延伸の際に発生していた凹状の湾曲形状は、加熱炉内の温度分布、延伸速度、引き落とし率、母材ガラス板の粘度またはアスペクト比に応じて変化する。なお、延伸速度とは、延伸したガラス板の引き取り速度と母材ガラス板の送り速度との差であり、引き落とし率とは、延伸したガラス板の幅と母材ガラス板の幅との比であり、アスペクト比とは、母材ガラス板の幅と厚さとの比である。
アスペクト比が大きければ大きいほど、延伸したガラス板の中心部の厚さに対する中心部と端部との厚さの差の比が大きくなり、粘度の低下によりそれは顕著となる。引落率が大きくなってもガラス板の中心部の厚さに対する中心部と端部との厚さの差の比は大きくなる。したがって、エッチングにより形成する母材ガラス板11の主表面11a、11bの形状については、これらのうち少なくとも一つに基づいて決定することが好ましい。たとえば、引き落とし率が大きいときは、主表面11a、11bの形状を、より凸状に湾曲した形状にする。また、たとえば、加熱炉内の温度分布の対称性に応じて、主表面11aと主表面11bとの形状が互いに異なるようにしてもよいし、主表面11aの形状が幅方向の中心の両側で互いに異なるようにしてもよい。上記のようにして、加熱延伸の際に発生していた凹状の湾曲形状ができるだけ相殺されるように主表面11a、11bの形状を決定することが好ましい。
また、主表面の湾曲の形状が互いに異なる試験用母材ガラス板を準備し、これらを試験的に加熱延伸して試験用ガラス板を形成し、形成した試験用ガラス板の形状に基づいて、母材ガラス板11の主表面11a、11bの形状を決定してもよい。
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2は、ガラス板の製造方法に係るものであって、実施の形態1と同様に、加熱延伸工程において発生する主表面の湾曲を補正するようにエッチング液の液面の下降速度を制御することに加え、主表面上に所定の方向に沿って延伸する凹凸形状を形成するように液面の下降速度を変動させる制御を行う。
本実施の形態2に係るガラス板の製造方法について説明する。はじめに、実施の形態1と同様の方法で、図2に示したものと同様の母材ガラス板10を準備する。つぎに、図3に示したものと同様のエッチング装置100を用いて、エッチング液101の液面101aの下降速度を制御して、準備した母材ガラス板10をエッチングする。
ここで、図8は、本実施の形態2における、液面位置に対するエッチング時間の関係を示した図である。なお、図8において、線L1は図4におけるエッチング時間を示す線と同一の曲線であり、線L2が本実施の形態2におけるエッチング時間を示す線である。図8に示すように、本実施の形態2においては、加熱延伸工程において発生する主表面の湾曲を補正するような制御を示す線L1に沿って、液面の下降速度を速くしたり遅くしたりして変動するように制御を行う。
図9は、図8に示した制御によりエッチングを行った母材ガラス板を長手方向と垂直な面で切断した斜視断面概略図である。図9に示すように、この母材ガラス板14は、対向する主表面14a、14bと、幅方向において対向する端面14c、14dとを有するが、主表面14a、14b上には長手方向に沿って延伸する凹凸形状が形成される。図8に示すように、線L2が線L1に沿うように制御しているため、主表面14a、14bの凹部を結ぶ面は、図5に示す母材ガラス板11の主表面11a、11bと同様に幅方向の中心から端面14c、14dに向かって厚さが減少するように凸状に湾曲している。
つぎに、実施の形態1と同様の方法で、図6に示したものと同様の加熱延伸装置200を用いて、エッチングを行った母材ガラス板14を加熱延伸してガラス板とし、その後へき開を行う。
図10は、へき開したガラス板15を長手方向と垂直な面で切断した斜視断面概略図である。図10に示すように、このガラス板15は、対向する主表面15a、15bと、幅方向において対向する端面15c、15dとを有する。そして、このガラス板15の主表面15a、15b上には長手方向に沿って延伸する凹凸形状が形成される。また、端面15c、15dは、長手方向にわたってほぼ平行となっている。また、主表面15a、15bの凹部を結ぶ面は、互いに平行になっている。
このような主表面上に凹凸形状を形成する加工は、従来の砥石による研削方法では極めて困難であったが、本実施の形態2によれば、エッチング液の液面の下降速度の制御によって容易に実現できる。なお、凸凹形状のピッチについては、液面の下降速度の制御によって容易に調整でき、たとえば0.01〜10mmとできる。したがって、太陽電池に使用されるガラス板の表面のテクスチャ形状の形成にも適する方法である。また、形成できる凸凹形状は規則的な周期のものに限られず、不規則な周期の凸凹形状を形成することもできる。
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態3は、ガラス板の製造方法に係るものであって、母材ガラス板の表面形状を測定し、測定した表面形状に基づいてエッチング液の液面の下降速度を制御するものである。
図11は、本実施の形態3に係るガラス板の製造方法のフロー図である。図11に示すように、本実施の形態3に係るガラス板の製造方法では、はじめに、母材ガラス板を準備する(ステップS201)。つぎに、ステップS201において準備した母材ガラス板の表面形状を測定する(ステップS202)。つぎに、表面形状を測定した母材ガラス板をエッチングする(ステップS203)。以下、各工程について具体的に説明する。
はじめに、ステップS201の母材ガラス板準備工程については、実施の形態1と同様にダウンドロー法やアップドロー法により母材ガラス板を準備する。これらの方法により準備した母材ガラス板は、その主表面上に、引き出し方向である長手方向に沿った微少な凸凹形状が形成されることがある。
図12は、この母材ガラス板準備工程において準備する母材ガラス板を長手方向と垂直な面で切断した斜視断面概略図である。図12に示すように、この母材ガラス板20は、対向する主表面20a、20bと、幅方向において対向する端面20c、20dとを有する。端面20c、20dは長手方向にわたってほぼ平行となっている。一方、主表面20a、20bは、それぞれ長手方向に沿った微少な凸凹形状が形成されている。なお、図12においては、主表面20a、20bの凸凹形状はその高さ方向の縮尺を拡大して表している。実際には、この凸凹形状の高さは1μm程度である。
つぎに、ステップS202の表面形状測定工程については、公知の表面形状測定装置、たとえばミツトヨ社製CS−5000によって、母材ガラス板20の主表面20a、20bのそれぞれの形状をその幅方向にわたって測定する。
つぎに、ステップS203のエッチング工程について説明する。このエッチング工程は、第一エッチング工程と、第二エッチング工程とを含む。図13は、エッチングを行う母材ガラス板20を長手方向から見た状態を示す模式図である。はじめに、図13に示すように、母材ガラス板20の主表面20aの全面を覆うように保護部材301を取り付ける。一方、主表面20bについては露出させたままとする。なお、保護部材301の取り付けは、主表面20aとの間に隙間が生じないように、たとえば接着剤等で接着して行う。また、この接着剤および保護部材301については、たとえばゴム等の、エッチング工程で用いるエッチング液によって侵食されない材質からなるものを用いる。
つぎに、第一エッチング工程として、実施の形態1、2と同様に、図3に示したものと同様のエッチング装置100を用いて、エッチング液101の液面101aの下降速度を制御して、準備した母材ガラス板20をエッチングする。なお、第一エッチング工程では、実施の形態1、2とは異なり、母材ガラス板20の端面20cを上方に向けた状態で全体をエッチング液101に浸漬し、端面20cをエッチング液101の液面101aと一致させた状態でエッチングを開始する。
ここで、図14は、第一エッチング工程における液面位置に対するエッチング時間の関係を示した図である。なお、図14において、線L3は下降速度の制御を行う際の基準となる直線を示し、線L4が本実施の形態3におけるエッチング時間を示す線である。図14に示すように、この第一エッチング工程においては、基準の線L3に対して、ステップS202において測定した主表面20bの凸凹形状を加算した形状の線L4に沿って、液面の下降速度を速くしたり遅くしたりして変動するように制御を行う。
図15は、第一エッチング工程を行った後の母材ガラス板を長手方向から見た状態を示す模式図である。図15に示すように、主表面20aは保護部材301によって保護されているのでエッチングされていないが、保護されていない主表面20bはエッチングされて主表面21bのように表面形状が変化している。上述したように、基準となる直線状の線L3に対して主表面20bの凸凹形状を加算した形状の線L4に沿って液面の下降速度を制御したことによって、主表面21bは紙面下方に向かって主表面20aとの距離が小さくなるように傾斜した平坦な形状となる。また、端面20dもエッチングによって幅が狭まった端面21dとなる。
つぎに、図16は第二エッチング工程について説明する説明図である。はじめに、図16の左側の図に示すように、母材ガラス板を幅方向の中心の周りに180度回転させて端面21dを上方に向け、主表面21bの全面を覆うように保護部材301と同様の保護部材302を取り付ける。つぎに、第二エッチング工程として、エッチング装置100を用いて、エッチング液101の液面101aの下降速度を制御して、この母材ガラス板をエッチングする。なお、第二エッチング工程では、母材ガラス板の端面21dを上方に向けた状態で全体をエッチング液101に浸漬し、端面21dをエッチング液101の液面101aと一致させた状態でエッチングを開始する。
この第二エッチング工程の際には、図14に示した基準の線L3に対して、ステップS202において測定した主表面20aの凸凹形状を加算した形状の線に沿って、液面の下降速度を速くしたり遅くしたりして変動するように制御を行う。その結果、図16の右側の図に示すように、主表面20aはエッチングされて、主表面21aのように表面形状が変化している。上述したように、基準となる直線状の線L3に対して主表面20aの凸凹形状を加算した形状の線に沿って液面の下降速度を制御したことによって、主表面21aは主表面21bと平行な平坦な形状となる。また、端面20cもエッチングによって端面21dと同じ幅の端面21cとなる。
図17は、ステップS203のエッチング工程終了後のガラス板を長手方向と垂直な面で切断した斜視断面概略図である。図17に示すように、このガラス板21は、対向する主表面21a、21bと、幅方向において対向する端面21c、21dとを有する。主表面21aおよび主表面21b、端面21cおよび端面21dはそれぞれ長手方向にわたってほぼ平行となっており、ガラス板21の断面は平行四辺形となっている。そして、母材ガラス板20において主表面20a、20b上に形成されていた凸凹形状はエッチングによって除去されており、主表面21a、21bは極めて平坦になっている。したがって、本実施の形態3によれは、主表面に凸凹形状が形成されているような安価な母材ガラス板を用いて、主表面の平坦度が高いガラス板をより簡易に製造することができる。
なお、上記実施の形態3は、板材としてガラス板を用いたが、本発明はこれに限らず、エッチング液を適宜選択することによって、半導体や金属材料等からなる板材に対して適用することができる。
また、上記各実施の形態は、適宜組み合わせて実施してもよい。たとえば、実施の形態2と3とを組み合わせれば、母材ガラス板の主表面に存在する不要な凸凹形状を除去しつつ所望の凸凹形状を形成したガラス板を製造できる。
また、上記各実施の形態は、図3に示すエッチング装置100を使用したが、エッチング装置についても特に限定されない。図18は、上記各実施の形態において用いることができるエッチング装置の他の一例の模式図である。図18に示すように、このエッチング装置400は、エッチング装置100において、液面センサ103、輸送管104a、ポンプ104を、それぞれ液面センサ403、輸送管404a、バルブ404に置き換えた構成を有している。
液面センサ403は、超音波液面計であり、エッチング液101の液面101aに向かって超音波S1を発信し、液面101aにより反射した超音波S2を受信し、この発信と受信の時間差によって液面101aの位置を検出する。また、輸送管404aは、容器102に形成された排出孔102aから排出するエッチング液101をバルブ404に輸送する。バルブ404は、たとえばテフロン(登録商標)からなるエアバルブであり、液面センサ403が検出した液面101aの位置に応じて、制御器C2によってその開閉量を制御されて、輸送管105へのエッチング液101の排出量を調整する。これによって、エッチング液101の液面101aが所望の下降速度で加工するように制御を行なう。
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4に係るガラス板の製造方法について説明する。本実施の形態4に係るガラス板の製造方法は、加熱延伸法によって発生する主表面の湾曲を補正するための湾曲補正領域を有する母材ガラス板を準備するものである。
図19は、本発明の実施の形態4に係るガラス板の製造方法のフロー図である。図19に示すように、本実施の形態4に係るガラス板の製造方法では、はじめに、母材ガラス板を準備する(ステップS301)。つぎに、ステップS301において準備した母材ガラス板を加熱延伸する(ステップS302)。以下、各工程について具体的に説明する。
はじめに、ステップS301の母材ガラス板準備工程について説明する。図20は、この母材ガラス板準備工程において準備する母材ガラス板を長手方向と垂直な面で切断した斜視断面図である。図20に示すように、この母材ガラス板31は、対向する主表面31a、31bと、幅方向において対向する端面31c、31dとを有する。端面31c、31dは長手方向にわたってほぼ平行となっている。また、この母材ガラス板31の幅方向の中心部において主表面31a、31b間の厚さは厚さt1である。また、この母材ガラス板31は、端面31cから幅方向の中心部に向かって、主表面31a、31b間の厚さt2が増加している湾曲補正領域W1を長手方向にわたって有している。同様に、この母材ガラス板31は、端面31dから幅方向の中心部に向かって、主表面31a、31b間の厚さt3が増加している湾曲補正領域W2を長手方向にわたって有している。この母材ガラス板31においては、湾曲補正領域W1、W2はいずれも母材ガラス板31の幅方向の中央部まで延在している。
この母材ガラス板31の材質については、特に限定されず、製造すべきガラス板の用途に応じて適宜選択するが、たとえば実施の形態1における母材ガラス板10と同様の材質を用いることができる。
また、このような湾曲補正領域W1、W2を有する母材ガラス板31を準備する方法は特に限定されず、公知の方法、たとえば実施の形態1における母材ガラス板10の場合と同様のプレス法、ダウンドロー法、あるいはアップドロー法等を用いて製造された母材ガラス板31に砥石を用いた機械加工やウエットエッチングなどの方法によって湾曲補正領域W1、W2を形成すればよい。
以下、一例としてウエットエッチングにて湾曲補正領域を形成する方法を説明する。図21は、図20に示す母材ガラス板31を準備する方法の一例を説明する説明図である。図21に示す方法は、エッチングを用いた方法である(以下、エッチング法と呼ぶ)。すなわち、図21に示すように、たとえば公知のフロート法等で形成した主表面が互いに平行な元母材ガラス板32を準備し、これをエッチング装置500の容器502に貯留したフッ酸溶液等のエッチング液501に浸漬する。このとき、元母材ガラス板32の長手方向をエッチング液501の液面501aと平行にして、元母材ガラス板32の幅方向の片側端面から所定幅の領域、具体的には、湾曲補正領域を形成すべき領域をエッチング液501に浸漬する。すると、元母材ガラス板32はエッチング液501によってエッチングされる。
ここで、容器502は排水孔502aを備えており、所望の流速でエッチング液501bを排出することができる。このようにエッチング液501bを排出すると、容器502内のエッチング液501の液面501aが所定の速度で降下するため、当初エッチング液501に浸漬していた元母材ガラス板32の部分が徐々に露出してくる。その結果、元母材ガラス板32のエッチング量は、エッチング液501に浸漬していた時間に応じて増加する。したがって、元母材ガラス板32は、エッチング液501に最も長く浸漬する下側端面が最も薄くなり、幅方向の中心部に向かって厚さが増加するような形状になる。このような工程を両側の端面に対して行なうことによって、所望の湾曲補正領域W1、W2を有する母材ガラス板31を作製できる。
図22は、エッチング法を用いて作製した母材ガラス板の端面からの距離と厚さとの関係の一例を示した図である。なお、図22に示す母材ガラス板は、幅50mm、厚さ5.0mmの石英ガラスからなる元母材ガラス板を、容器に貯留した所定の濃度のフッ酸溶液に浸漬し、容器から所定の流速でフッ酸溶液を排出して作製したものである。図22に示すように、この母材ガラス板は、エッチング法を用いることによって、端面から中心部に向かって厚さが滑らかに増加するような湾曲補正領域が形成されている。なお、このエッチング法においては、湾曲補正領域の幅は元母材ガラス板の浸漬の深さの調整によって容易に制御でき、湾曲補正領域の形状はエッチング液の種類や濃度、または排出させるエッチング液の流速の調整によって容易に制御できる。
つぎに、ステップS302の加熱延伸工程について説明する。図23は、この加熱延伸工程において用いる加熱延伸装置の一例の模式図である。図23に示すように、この加熱延伸装置600は、加熱炉601と、母材送り機構602と、外径測定器605と、引き取り機構603a、603bと、カッター604と、制御器C3とを備えている。
加熱炉601は、母材ガラス板31を加熱延伸するための電気抵抗炉であり、加熱手段として、母材ガラス板31の一方の主表面に対向するように配置された複数のヒータ601a〜601cを備えている。なお、加熱炉601は、母材ガラス板31の他方の主表面に対向するように配置された複数のヒータも備えている。また、母材送り機構602は、加熱炉601の上方に設けられており、加熱炉601の上方から加熱炉601内に母材ガラス板31を長手方向に送り込むものである。また、引き取り機構603a、603bは、加熱炉601の下方に設けられており、母材ガラス板31を加熱延伸して形成されたガラス板33を引き取るものである。また、外径測定器605は、加熱炉601の下部に設けられており、引き取られるガラス板33の幅や厚さを測定する。また、カッター604は、引き取り機構603a、603bの後に設けられ、ガラス板33の表面に溝を形刻して、所定の長さにへき開する。また、制御器C3は、加熱炉601、母材送り機構602、外径測定器605、および引き取り機構603a、603bに接続しており、外径測定器605の測定した測定値に基づいて、加熱炉601の炉内温度、母材送り機構602の母材送り速度、引き取り機構603a、603bの引き取り速度などを制御する。
つぎに、この加熱延伸装置600を用いて母材ガラス板31を加熱延伸する方法について説明する。はじめに、加熱炉601の各ヒータに通電し、炉内温度を母材ガラス板31の軟化点以上の所定温度に調整する。この際、平坦度が高くなるように母材幅方向、長手方向の温度分布を形成してもよい。一般に幅方向は端部の温度が高くなるように、長手方向は温度勾配が小さくなるように形成するとよい。つぎに、母材送り機構602が、母材ガラス板31を、その長手方向を下方に向けて加熱炉601内に送り込む。加熱炉601に送り込まれた母材ガラス板31は軟化点以上の温度に加熱されると、その幅が収縮して所望の厚さに延伸される。
ここで、母材ガラス板31は、各端面31c、31dから幅方向の中心部に向かって、主表面31a、31b間の厚さt2、t3がそれぞれ増加している湾曲補正領域W1、W2を長手方向にわたって有しているので、従来加熱延伸の際に発生していた図39に示すような凹状の湾曲形状が補正されるため、形成されるガラス板33は、主表面の平坦度が高いものとなる。
その後、引き取り機構603a、603bが形成されたガラス板33を引き取り、カッター604がガラス板33の表面に溝を形刻して、所定の長さにへき開することによって、所定の長さのガラス板34が形成される。
図24は、へき開したガラス板34を長手方向と垂直な面で切断した斜視断面図である。図24に示すように、このガラス板34は、対向する主表面34a、34bと、幅方向において対向する端面34c、34dとを有する。そして、このガラス板34は、端面34c、34dが長手方向にわたってほぼ平行となっているとともに、主表面34a、34bは、幅方向の中心部の厚さt4と端部の厚さt5とがほぼ同じ厚さとなっており、平坦度が高いものとなっている。
したがって、このガラス板34は、その両端部を切断したり、主表面34a、34bを過度に研磨したりしなくても、主表面34a、34bの平坦度が高いものとなっているため、従来法により製造されたガラス板よりも廃棄すべき部分が少ないとともに、切断や研磨などの製造工程が簡略化される。ゆえに、本実施の形態4に係る製造方法によれば、主表面の平坦度が高いガラス板34を、材料コストと製造コストとの両面において低コストで製造することができる。
なお、このガラス板34において、幅方向にわたる主表面34a、34b間の厚さの最大値と最小値との差が50μm以下であれば、実施の形態1の場合と同様に、端面34c、34dを含めた幅方向の全域にわたってカバーガラスなどの保護ガラス基板の用途に使用できる。
また、このガラス板34において、幅方向にわたる主表面34a、34b間の厚さの最大値と最小値との差が10μm以下であれば、実施の形態1の場合と同様に、円環状に打ち抜くことによってHDD基板の用途に使用できる。
また、このガラス板34において、幅方向にわたる主表面34a、34b間の厚さの最大値と最小値との差が1μm以下であれば、実施の形態1の場合と同様に、端面34c、34dを含めた幅方向の全域にわたってフレキシブル性を持った電子機器用ガラス基板の用途に使用できる。
また、実施の形態1の場合と同様に、母材ガラス板31の湾曲補正領域W1、W2における主表面31a、31bの形状については、加熱炉内の温度分布、延伸速度、引き落とし率、母材ガラス板の粘度またはアスペクト比のうち少なくとも一つに基づいて決定することが好ましい。たとえば、引き落とし率が大きいときは、湾曲補正領域W1、W2における主表面31a、31bの形状を、より凸状に湾曲した形状にする。また、たとえば、加熱炉内の温度分布の対称性に応じて、湾曲補正領域W1における主表面31aと31bとの形状が互いに異なるようにしてもよいし、主表面31aの形状が湾曲補正領域W1とW2とで互いに異なるようにしてもよい。上記のようにして、加熱延伸の際に発生していた凹状の湾曲形状ができるだけ相殺されるように主表面31a、31bの形状を決定することが好ましい。
また、実施の形態1の場合と同様に、湾曲補正領域の形状が互いに異なる試験用母材ガラス板を準備し、これらを試験的に加熱延伸して試験用ガラス板を形成し、形成した試験用ガラス板の形状に基づいて、母材ガラス板31の湾曲補正領域W1、W2における主表面31a、31bの形状を決定してもよい。
図25は、エッチング法を用いて準備した母材ガラス板の端部におけるエッチング深さと、これを延伸した後のガラス板における端部と中央部との厚さの差との関係の一例を示す図である。なお、図25においては、ボロシリケートガラスからなり、エッチング深さが異なる4つの母材ガラス板を準備し、炉内温度1024℃、引き落とし率10の条件で加熱延伸し、ガラス板を形成した。図25に示すように、母材ガラス板におけるエッチング深さと、ガラス板における厚さの差との関係はほぼ相関し、エッチング深さが約80μmの場合に厚さの差がゼロになっている。したがって、この結果に基づいて、エッチング深さを80μmとして作製した母材ガラス板を準備し、これを加熱延伸すれば、より平坦度の高いガラス板を製造できる。
(実施例1、比較例1)
本発明の実施例1として、ボロシリケートガラス(ショット社製テンパックス フロート(登録商標))からなる、対向する主表面および端面がそれぞれ平行であり、幅50mm、厚さ5.05mm、長さ約550mm、アスペクト比9.9の元母材ガラス板を用意し、フッ酸溶液を用いたエッチング法によってこの元母材ガラス板の幅方向の各端面から中心部までをエッチングし、母材ガラス板を準備した。図26は、実施例1に係る母材ガラス板の一方の端面からの距離と厚さとの関係を示す図である。図26に示すように、実施例1に係る母材ガラス板の厚さは、幅方向の端部において厚さが5.0mmであり、中心部に向かって厚さが滑らかに増加し、中心部である距離が25mmの位置において厚さが5.05mmであった。
つぎに、この実施例1に係る母材ガラス板を図23に示すものと同様の構造の加熱延伸装置にセットし、加熱炉内の温度を900〜1170℃で適宜制御しながら、引き落とし率が10になるように加熱延伸し、ガラス板を形成した。一方、比較例1として、実施例1に係る元母材ガラス板をそのまま実施例1と同じ条件で加熱延伸し、ガラス板を形成した。
図27は、実施例1および比較例1に係るガラス板の幅方向の中心部から一方の端面における規格化幅と規格化厚さとの関係を示した図である。なお、規格化幅とは、各ガラス板の幅方向中心部からの幅を全幅の1/2の値で規格化したものであり、規格化厚さとは、各ガラス板の厚さをその最大値で規格化したものである。図27に示すように、実施例1に係るガラス板は、中心部から端面にわたってその規格化厚さがほぼ一様であり、規格化厚さの最大値と最小値の差は0.004程度であった。一方、比較例1に係るガラス板は、その規格化厚さが中心部において最小であり、端部に向かって増大し、端部において最大であった。そして、比較例1の場合、規格化厚さの最大値と最小値の差は0.03程度と大きかった。
したがって、主表面の平坦度が、厚さの最大値と最小値の差が10μm以下として規定されるガラス板を製造する場合、実施例1に係るガラス板であれば、その主表面に仕上げ用の精密研磨を行うことなく、所望の平坦度のガラス板を製造できる。しかしながら、比較例1のガラス板の場合は、所望の平坦度のガラス板を製造するためには、仕上げ用の精密研磨により、両端部の厚さを規格化厚さで0.025程度の部分を廃棄しなければならない。この廃棄部分は全体積の約2%にもあたるため、ガラス材料の大きな無駄となる。なにより研磨工程が入ることにより、工程が増えてコストが増大する。
(実施の形態5)
上記実施の形態4では、母材ガラス板31は、湾曲補正領域W1、W2がいずれも各端面31c、31dから幅方向の中央部まで延在しているものである。しかしながら、本発明はこれに限らず、母材ガラス板として、湾曲補正領域間に主表面が互いに平行な平行領域を有するものを準備してもよい。
図28は、本発明の実施の形態5に係るガラス板の製造方法において準備する母材ガラス板を長手方向と垂直な面で切断した断面図である。図28に示すように、この母材ガラス板35は、実施の形態4に係る母材ガラス板31と同様に、対向する主表面35a、35bと、幅方向において対向する端面35c、35dとを有し、端面35c、35dは長手方向にわたってほぼ平行となっている。また、この母材ガラス板35の幅方向の中心部において主表面35a、35b間の厚さは厚さt6である。また、この母材ガラス板35は、端面35cから幅方向の中心部に向かって、主表面35a、35b間の厚さt7が増加している湾曲補正領域W3を長手方向にわたって有し、端面35dから幅方向の中心部に向かって、主表面35a、35b間の厚さt8が増加している湾曲補正領域W4を長手方向にわたって有している。しかしながら、この母材ガラス板35においては、母材ガラス板31とは異なり、湾曲補正領域W3、W4間に主表面35a、35bが互いに平行な平行領域W5を有している。
この母材ガラス板35を実施の形態4のステップS302と同様に加熱延伸した場合、平行領域W5においては主表面が湾曲し、領域端部と中央部とで厚さの差が生じる。しかしながら、母材ガラス板35の端部に位置するために湾曲が最も顕著に発生する湾曲補正領域W3、W4においては、実施の形態4と同様に湾曲形状が補正されるため、平行領域W5において主表面に生じる湾曲は大幅に減少する。その結果、形成されるガラス板は主表面の平坦度が高いものとなる。したがって、本実施の形態5においても、従来よりも廃棄すべき部分が少ないとともに、切断や研磨などの製造工程が簡略化され、主表面の平坦度が高いガラス板を、低コストで製造することができる。
なお、湾曲補正領域W3、W4の幅については、要求される主表面の平坦度に応じて適宜設定できるが、たとえば母材ガラス板35の全幅の5〜50%程度、より好ましくは20%〜50%程度の幅とする。
(実施例2)
実施例1と同様の元母材ガラス板を用意し、フッ酸溶液を用いたエッチング法によってこの元母材ガラス板の幅方向の各端面から10mmまでの領域を湾曲補正領域としてエッチングし、湾曲補正領域間の幅30mmの領域は平行領域として、母材ガラス板を準備した。なお、各端部における厚さが4.5mmになるようにエッチングを行なった。
つぎに、この実施例2に係る母材ガラス板を実施例1と同様の条件で加熱延伸し、ガラス板を形成した。このガラス板の厚さを測定したところ、中心部から端面にわたる規格化厚さの最大値と最小値の差は0.02程度であった。
(実施の形態6)
上記実施の形態4、5では、母材ガラス板31、35は、湾曲補正領域W1、W2がいずれも湾曲状をしているものである。しかしながら、本発明はこれに限らず、母材ガラス板として、湾曲補正領域が湾曲状ではなく直線状であるものを準備してもよい。
図29は、本発明の実施の形態6に係るガラス板の製造方法において準備する母材ガラス板を長手方向と垂直な面で切断した断面図である。図29に示すように、この母材ガラス板36は、実施の形態5に係る母材ガラス板35と同様に、対向する主表面36a、36bと、幅方向において対向する端面36c、36dとを有し、端面36c、36dは長手方向にわたってほぼ平行となっている。また、この母材ガラス板36の幅方向の中心部において主表面36a、36b間の厚さは厚さt6aである。また、この母材ガラス板36は、端面36cから幅方向の中心部に向かって、主表面36a、36b間の厚さt7aが直線状に増加している湾曲補正領域W3aを長手方向にわたって有し、端面36dから幅方向の中心部に向かって、主表面36a、36b間の厚さt8aが直線状に増加している湾曲補正領域W4aを長手方向にわたって有している。また、母材ガラス板36は、湾曲補正領域W3a、W4a間に主表面36a、36bが互いに平行な平行領域W5aを有している。
この母材ガラス板36を実施の形態4のステップS302と同様に加熱延伸した場合、平行領域W5aにおいては主表面が湾曲し、領域端部と中央部とで厚さの差が生じる。しかしながら、母材ガラス板36の端部に位置するために湾曲が最も顕著に発生する補正領域W3a、W4aにおいては、実施の形態5と同様に湾曲形状が補正されるため、平行領域W5aにおいて主表面に生じる湾曲は大幅に減少する。その結果、形成されるガラス板は主表面の平坦度が高いものとなる。したがって、本実施の形態6においても、従来よりも廃棄すべき部分が少ないとともに、切断や研磨などの製造工程が簡略化され、主表面の平坦度が高いガラス板を、低コストで製造することができる。
なお、補正領域W3a、W4aの幅については、要求される主表面の平坦度に応じて適宜設定できるが、たとえば母材ガラス板36の全幅の5〜50%程度、より好ましくは20%〜50%程度の幅とする。
(実施の形態7)
図30は、本発明の実施の形態7に係るガラス板の製造方法によって製造するガラス板の斜視断面図である。図30に示すように、このガラス板41は、対向する主表面41a、41bと、幅方向において対向する端面41c、41dとを有する。端面41c、41dは長手方向にわたってほぼ平行となっている。また、このガラス板41は、幅方向の各端面41c、41dから所定幅で形成されたスペーサ部W12、W13と、スペーサ部W12、W13間に形成された主表面41a、41bが互いに平行な平行部W11とを有している。平行部W11における主表面41a、41b間の厚さは厚さt11でありほぼ一定である。また、スペーサ部W12、W13は、それぞれ平行部W11側からその厚さが徐々に増大する部分を有しており、その最大の厚さはそれぞれ厚さt12、t13である。
図31は、図30に示すガラス板41を収容容器700内に複数枚積層した状態を示す図である。図31に示すように、これらのガラス板41は、積層した場合に、スペーサ部W12、W13によって主表面間または主表面と収容容器700の底面701との間に間隙Gが形成されるため、平行部W11において主表面同士または主表面と底面701とが互いに接触しないため、主表面に傷が付くことが防止される。
つぎに、図30に示すガラス板41の製造方法について説明する。図32は、本実施の形態7に係るガラス板の製造方法のフロー図である。図32に示すように、本実施の形態6に係るガラス板の製造方法では、はじめに、母材ガラス板を準備する(ステップS401)。つぎに、ステップS401において準備した母材ガラス板を加熱延伸する(ステップS402)。以下、各工程について具体的に説明する。
はじめに、ステップS401の母材ガラス板準備工程について説明する。図33は、この母材ガラス板準備工程において準備する母材ガラス板を長手方向と垂直な面で切断した斜視断面図である。図33に示すように、この母材ガラス板42は、対向する主表面42a、42bと、幅方向において対向する端面42c、42dとを有する。端面42c、42dは長手方向にわたってほぼ平行となっている。また、この母材ガラス板42の幅方向の中心部において主表面42a、42b間の厚さは厚さt18である。また、この母材ガラス板42は、各端面42c、42dから所定幅で形成されたスペーサ部形成領域W14、W15と、各スペーサ部形成領域W14、W15に隣接して形成された湾曲補正領域W16、W17を長手方向にわたって有している。湾曲補正領域W16、W17においては、各端面42c、42d側から幅方向の中心部に向かって、主表面42a、42b間の厚さt16、t17がそれぞれ増加している。また、湾曲補正領域W16、W17はいずれも母材ガラス板42の幅方向の中央部まで延在している。また、各スペーサ部形成領域W14、W15においては、各端面42c、42d側から中心部に向かって主表面間の厚さt14、t15がそれぞれ一定である。なお、本実施の形態7においては、厚さt14、t15はそれぞれ一定であるが、各スペーサ部形成領域W14、W15にそれぞれ隣接する湾曲補正領域W16、W17よりも緩やかに増加していてもよい。
この母材ガラス板42の材質については、特に限定されず、製造すべきガラス板の用途に応じて適宜選択するが、たとえば実施の形態1における母材ガラス板10と同様の材質を用いることができる。
また、このようなスペーサ部形成領域W14、W15と、湾曲補正領域W16、W17とを有する母材ガラス板42を準備する方法は特に限定されず、公知の方法、たとえば実施の形態1における母材ガラス板10の場合と同様のプレス法、ダウンドロー法、あるいはアップドロー法を用いることができる。または、以下のような方法を用いて準備することもできる。
図34は、図33に示す母材ガラス板42を準備する方法の一例を説明する説明図である。図34に示す方法は、図21に示す方法と同様のエッチング法である。すなわち、図34に示すように、たとえば公知のフロート法等で形成した主表面が互いに平行な元母材ガラス板43を準備し、これをエッチング装置500の容器502に貯留したフッ酸溶液等のエッチング液501に浸漬する。このとき、元母材ガラス板43の長手方向をエッチング液501の液面501aと平行にして、元母材ガラス板43の幅方向の片側端面から所定幅の領域、具体的には、スペーサ部形成領域と湾曲補正領域とを形成すべき領域をエッチング液501に浸漬する。すると、元母材ガラス板43はエッチング液501によってエッチングされる。
ここで、容器502は排水孔502aを備えており、所望の流速でエッチング液501bを排出することができる。このようにエッチング液501bを排出すると、容器502内のエッチング液501の液面501aが所定の速度で降下するため、当初エッチング液501に浸漬していた元母材ガラス板43の部分が徐々に露出してくる。その結果、元母材ガラス板43のエッチング量は、エッチング液501に浸漬していた時間に応じて増加する。つぎに、液面501aが降下し、スペーサ部形成領域と湾曲補正領域との境界に対応する液面501cに達したら、元母材ガラス板43をエッチング液501から取り出す。すると、元母材ガラス板43は、湾曲補正領域においてはより長い時間エッチング液501に浸漬することとなる下方に向かって薄くなり、幅方向の中心部に向かって厚さが増加するような形状になり、スペーサ部形成領域においては湾曲補正領域の下端とほぼ同じで一定の厚さとなる。このような工程を両側の端面に対して行なうことによって、所望のスペーサ部形成領域W14、W15と、湾曲補正領域W16、W17とを有する母材ガラス板42を作製できる。
図35は、エッチング法を用いて作製した母材ガラス板の端面からの距離と厚さとの関係の一例を示した図である。なお、図35に示す母材ガラス板は、幅470mm、厚さ5.0mmのボロシリケートガラスからなる元母材ガラス板を、容器に貯留した所定の濃度のフッ酸溶液に浸漬し、容器から所定の流速でフッ酸溶液を排出し、液面が所定の位置に達した時点でフッ酸溶液から取り出して作製したものである。図35に示すように、この母材ガラス板は、エッチング法を用いることによって、端面から10mmの領域までは厚さが一定のスペーサ部形成領域が形成され、それに隣接して、中心部に向かって厚さが滑らかに増加するような湾曲補正領域が形成されている。なお、このエッチング法においては、スペーサ部形成領域および湾曲補正領域の幅は元母材ガラス板の浸漬の深さの調整によって容易に制御でき、スペーサ部形成領域および湾曲補正領域の形状はエッチング液の種類や濃度、または排出させるエッチング液の流速の調整によって容易に制御できる。たとえば、図34に示す工程において、エッチング液501の液面が液面501cに達したときに、元母材ガラス板43をエッチング液501から取り出さずに、エッチング液501bの排出速度を遅くすれば、各スペーサ部形成領域W14、W15の厚さが中心部に向かって緩やかに増加する母材ガラス板を製造できる。また、エッチング液501の液面は移動させずに、元母材ガラス板43を移動させることによって、元母材ガラス板43と液面の相対位置を、上記と同じように制御することもできる。さらには、機械研削により母材ガラス板42を準備してもよい。
つぎに、ステップS402の加熱延伸工程について説明する。この加熱延伸工程においては、たとえば図23に示す加熱延伸装置600を用いる。そして、はじめに、加熱炉601の各ヒータに通電し、炉内温度を母材ガラス板42の軟化点以上の所定温度に調整する。つぎに、母材送り機構602が、母材ガラス板42を、その長手方向を下方に向けて加熱炉601内に送り込む。加熱炉601に送り込まれた母材ガラス板42は軟化点以上の温度に加熱されると、その幅が収縮して所望の厚さに延伸され、ガラス板が形成される。
ここで、母材ガラス板42は、各端面42c、42dから所定幅で形成され、主表面42a、42b間の厚さt14、t15がそれぞれ一定であるスペーサ部形成領域W14、W15を長手方向にわたって有しているので、このスペーサ部形成領域W14、W15においては従来と同様に主表面42a、42b間の厚さが中心部に向かって一旦増加した後に減少するように凸状に湾曲する。一方、この母材ガラス板42は、各端面42c、42d側から幅方向の中心部に向かって、主表面42a、42b間の厚さt16、t17がそれぞれ増加している湾曲補正領域W16、W17を長手方向にわたって有しているので、この湾曲補正領域W16、W17においては凹状の湾曲形状が補正される。その結果、湾曲補正領域W16、W17においては、主表面42a、42bが平行になり、スペーサ部形成領域W14、W15においては、主表面42a、42bが湾曲補正領域W16、W17よりも突出する。なお、各スペーサ部形成領域W14、W15の主表面42a、42b間の厚さt14、t15が一定でなくても、それぞれに隣接する湾曲形成領域W16、W17よりも緩やかに増加していれば、その主表面42a、42bは湾曲補正領域W16、W17よりも突出するものとなる。
その後、引き取り機構603a、603bが形成されたガラス板を引き取り、カッター604がガラス板の表面に溝を形刻して、所定の長さにへき開することによって、図30に示すような、所定の長さを有し、平行部W11と、スペーサ部W12、W13とを有するガラス板41が形成される。
このガラス板41を磁気ディスク基板製造などの所望の用途に使用する場合には、スペーサ部W12、W13を切断して使用するが、このスペーサ部W12、W13は所定の幅で意図的に形成されたものであり、従来法で製造されたガラス板よりも、切断すべき幅を小さくできる。また、このガラス板41の平行部W11は湾曲補正領域W16、W17によって湾曲が補正されて形成されたものであり、その平坦度は従来よりも高くなっている。したがって、このガラス板41は、スペーサ部W12、W13の切断後に主表面41a、41bを過度に研磨する必要もない。ゆえに、このガラス板41は、従来法により製造されたガラス板よりも廃棄すべき部分が少ないとともに、切断や研磨などの製造工程が簡略化される。
以上説明したように、本実施の形態7に係る製造方法によれば、主表面の平坦度が高いとともに積層時に主表面に傷が付くことを防止できるガラス板41を、材料コストと製造コストとの両面において低コストで製造することができる。
なお、このガラス板41において、平行部W11における主表面41a、41b間の厚さの最大値と最小値との差が10μm以下であれば、スペーサ部W12、W13の切断後の幅方向の全域にわたってハードディスクのブランク等の用途に使用できる。また、各スペーサ部W12、W13の幅は、ガラス板41の全幅の4〜40%であれば、傷防止の効果を十分に得られるとともに、切断すべき幅を従来よりも十分に小さくすることができる。したがって、母材ガラス板42としては、各スペーサ部形成領域W14、W15の幅が全幅の4〜40%であるものを準備することが好ましい。
また、実施の形態1の場合と同様に、母材ガラス板42の湾曲補正領域W16、W17における主表面42a、42bの形状については、加熱炉内の温度分布、延伸速度、引き落とし率、母材ガラス板の粘度またはアスペクト比のうち少なくとも一つに基づいて決定することが好ましい。たとえば、引き落とし率が大きいときは、湾曲補正領域W16、W17における主表面42a、42bの形状を、より凸状に湾曲した形状にする。また、たとえば、加熱炉内の温度分布の対称性に応じて、湾曲補正領域W16における主表面42aと42bとの形状が互いに異なるようにしてもよいし、主表面42aの形状が湾曲補正領域W16とW17とで互いに異なるようにしてもよい。上記のようにして、加熱延伸の際に発生していた凹状の湾曲形状ができるだけ相殺されるように主表面42a、42bの形状を決定することが好ましい。
また、実施の形態1の場合と同様に、湾曲補正領域の形状が互いに異なる試験用母材ガラス板を準備し、これらを試験的に加熱延伸して試験用ガラス板を形成し、形成した試験用ガラス板の形状に基づいて、母材ガラス板42の湾曲補正領域W16、W17における主表面42a、42bの形状を決定してもよい。
(実施例3、比較例2)
本発明の実施例3として、ボロシリケートガラス(ショット社製テンパックス フロート(登録商標))からなる、対向する主表面および端面がそれぞれ平行であり、幅470mm、厚さ5.05mm、長さ約2000mmの元母材ガラス板を用意し、フッ酸溶液を用いたエッチング法によってこの元母材ガラス板の幅方向の各端面から中心部までをエッチングし、母材ガラス板を準備した。図36は、実施例3に係る母材ガラス板の一方の端面からの距離と厚さとの関係を示す図である。図36に示すように、実施例3に係る母材ガラス板の厚さは、幅方向の端部からの距離が約20mmの位置までの厚さがほぼ一定の4.73mmであり、その後中心部に向かって厚さが滑らかに増加し、中心部である距離が235mmの位置において厚さが5.05mmであった。
つぎに、この実施例3に係る母材ガラス板を図23に示すものと同様の構造の加熱延伸装置にセットし、加熱炉内の温度を900〜1170℃で適宜制御しながら、引き落とし率が約7になるように加熱延伸し、ガラス板を形成した。一方、比較例2として、実施例2に係る元母材ガラス板をそのまま実施例3と同じ条件で加熱延伸し、ガラス板を形成した。
図37は、実施例3および比較例2に係るガラス板の幅方向の中心部から一方の端面における規格化幅と規格化厚さとの関係を示した図である。図37に示すように、実施例3に係るガラス板は、中心部から規格化幅が約0.93の領域W18においてその規格化厚さがほぼ一様であり、それに隣接した領域W19において規格化厚さが大きいスペーサ部が形成されていた。なお、領域W18における規格化厚さの最大値と最小値の差は0.004程度であった。一方、比較例2に係るガラス板は、その規格化厚さが中心部において最小であり、端部に向かって増大し、端部において最大であった。そして、比較例2の場合、領域W18における規格化厚さの最大値と最小値の差は0.07程度と大きかった。
したがって、主表面の平坦度が、厚さの最大値と最小値の差が10μm以下として規定されるガラス板を製造する場合、実施例3に係るガラス板であれば、その両端部のスペーサ部だけを避けてくり貫き加工し、その主表面に仕上げ用の精密研磨を行うだけで、所望の平坦度のガラス板を製造できる。しかしながら、比較例2のガラス板の場合は、両端部を切断せずに、所望の平坦度のガラス板を製造するためには、所望の平坦度を研磨工程だけで実現しようとすると、きわめて長時間の研磨が必要となる。
(実施の形態8)
上記実施の形態7では、母材ガラス板42は、湾曲補正領域W16、W17がいずれも幅方向の中央部まで延在しているものであった。しかしながら、本発明はこれに限らず、母材ガラス板として、湾曲補正領域間に主表面が互いに平行な平行領域を有するものを準備してもよい。
図38は、本発明の実施の形態8に係るガラス板の製造方法において準備する母材ガラス板を長手方向と垂直な面で切断した断面図である。図38に示すように、この母材ガラス板44は、実施の形態7に係る母材ガラス板42と同様に、対向する主表面44a、44bと、幅方向において対向する端面44c、44dとを有し、端面44c、44dは長手方向にわたってほぼ平行となっている。また、この母材ガラス板44の幅方向の中心部において主表面44a、44b間の厚さは厚さt24である。また、この母材ガラス板44は、各端面44c、44dから所定幅で形成されたスペーサ部形成領域W20、W21と、各スペーサ部形成領域W20、W21に隣接して形成された湾曲補正領域W22、W23を長手方向にわたって有している。湾曲補正領域W22、W23においては、各端面44c、44d側から幅方向の中心部に向かって、主表面44a、44b間の厚さt22、t23がそれぞれ増加している。また、各スペーサ部形成領域W20、W21においては、各端面44c、44d側から中心部に向かって主表面間の厚さt20、t21がそれぞれ一定である。しかしながら、この母材ガラス板44においては、母材ガラス板42とは異なり、湾曲補正領域W22、W23間に主表面44a、44bが互いに平行な平行領域W24を有している。
この母材ガラス板44を実施の形態7のステップS402と同様に加熱延伸した場合、平行領域W24においては主表面がわずかに湾曲し、領域端部と中央部とで厚さの差が生じる。しかしながら、母材ガラス板44の端部により近い側に位置するために、湾曲がより顕著に発生する湾曲補正領域W22、W23においては、実施の形態6と同様に湾曲形状が補正されるため、平行領域W24において主表面に生じる湾曲は大幅に減少する。その結果、形成されるガラス板は主表面の平坦度が高いものとなる。したがって、本実施の形態7においても、従来よりも廃棄すべき部分が少ないとともに、切断や研磨などの製造工程が簡略化され、主表面の平坦度が高いとともに積層時に主表面に傷が付くことを防止できるガラス板を、低コストで製造することができる。
なお、湾曲補正領域W22、W23の幅については、要求される主表面の平坦度に応じて適宜設定できるが、たとえば母材ガラス板44の全幅の20〜50%程度の幅とする。
(実施例4)
実施例3と同様の元母材ガラス板を用意し、フッ酸溶液を用いたエッチング法によってこの元母材ガラス板の幅方向の各端面から30mmまでの領域を厚さが一定になるようにエッチングし、スペーサ部形成領域を形成するとともに、さらにこの領域から幅200mmまでの領域を中心部に向かって厚さが増加するようにエッチングし、湾曲補正領域を形成した母材ガラス板を準備した。なお、各端部における厚さが4.78mmになるようにエッチングを行なった。
つぎに、この実施例4に係る母材ガラス板を実施例3と同様の条件で加熱延伸し、ガラス板を形成した。このガラス板の厚さを測定したところ、中心部からスペーサ部の中心部側端部にわたる規格化厚さの最大値と最小値の差は0.015程度であった。