JP5415037B2 - コラーゲン産生促進剤 - Google Patents

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本発明は、パッションフルーツの種子抽出物を有効成分とするコラーゲン産生促進剤及び化粧料並びにコラーゲン産生促進のための経口用組成物に関する。
肌荒れや小じわなどを予防・改善するためには皮膚の潤いと張りを保持することが重要であり、肌の保湿性や弾力性の維持効果を有する様々な成分を配合した化粧品が市販されている。皮膚の構成成分であるコラーゲンは、真皮層に多く存在して保水性や弾力性に大きく関与している。加齢などにより、これらの量が減少すると皮膚の保水性や弾力性が失われてしまい、肌荒れや小じわ等の原因となる。
また、コラーゲンは結合組織や軟骨組織などにも多く分布し、細胞の機能や形態を維持するのに役立っている。
したがって、若さを保ち美容及び健康を維持する上では、コラーゲン産生細胞によるコラーゲン産生を促進して、加齢などによるコラーゲンの減少を抑えることが望ましい。
一方、パッションフルーツは、パッシフローラ属トケイソウ科の植物であり、別名:クダモノトケイソウ(果物時計草)とよばれ、その実は甘酸っぱく果物として実をそのまま食したり、その果汁をジュースにして飲んだり、ゼリー、ケーキ等の飲食品に配合して、風味付けに用いられたりされている。
パッションフルーツ類縁植物に由来する植物成分をコラーゲン産生促進のための有効成分とする技術に関して、例えば、下記特許文献1には、コラーゲン産生細胞である線維芽細胞に関し、キョウニン抽出物を有効成分とする線維芽細胞増殖促進剤の発明が開示され、パッションフラワー抽出物には、キョウニン抽出物による増殖促進効果を相乗的に高める作用効果のあることが記載されている。
特開2003−34631号公報
パッションフルーツの種子は硬く、ジュースなどにする場合には果実から取り除かれ、果実を種ごと飲食した場合であってもその外皮は硬く消化を受けにくいのでそのまま排泄されてしまう。このような背景のなか、従来、パッションフルーツの種子中の成分に着目した技術はなかった。
したがって、本発明の目的は、パッションフルーツの種子を有効利用するとともに、皮膚組織、結合組織、軟骨組織などでのコラーゲンの産生を促進し、しかも体に優しい植物由来の成分からなるコラーゲン産生促進剤、化粧料、並びにコラーゲン産生促進のための経口用組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、パッションフルーツの種子抽出物を用いて、コラーゲン産生細胞によるコラーゲンの産生を促進することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のコラーゲン産生促進剤は、パッションフルーツの種子抽出物を有効成分とすることを特徴とする。より具体的には、抽出溶媒として水、エタノール、酢酸エチル、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はこれらの二種以上の混合溶媒を用いてパッションフルーツの種子から抽出して得られた、ピセアタンノールを含有する組成物を有効成分とすることを特徴とする。本発明においては、前記パッションフルーツの種子抽出物が、熱水又はエタノール含有水で抽出されたものであることが好ましい。より具体的には、前記抽出溶媒が、熱水又はエタノール含有水であることが好ましい。また、パッションフルーツの種子抽出物由来のポリフェノールを有効成分とすることが好ましい。

一方、本発明のもう一つは、パッションフルーツの種子抽出物をその固形分換算で0.001〜99質量%含有することを特徴とする化粧料である。また、本発明の更にもう一つは、パッションフルーツの種子抽出物をその固形分換算で0.001〜99質量%含有することを特徴とするコラーゲン産生促進のための経口用組成物である。
本発明のコラーゲン産生促進剤によれば、皮膚組織、結合組織、軟骨組織などでのコラーゲン産生を促進し、皮膚組織においては、肌の保湿性や弾力性の維持効果を有する組織の機能を維持・促進し、結合組織、軟骨組織などにおいては、それらの組織を構成する細胞の機能を維持・促進することができる。
本発明に用いられるパッションフルーツの種子抽出物の調製方法は特に限定されが、例えば、種子を細断、破砕、又は磨砕等し、種々の溶媒を用いて抽出する方法があげられる。抽出温度は適宜設定することができる。また、上記種子は、抽出効率をよくするため、適宜、酸又はアルカリ分解、酵素分解等の化学的処理を施してから抽出することもできる。
抽出溶媒としては、水、エタノール等の低級アルコール、酢酸エチル等の低級アルキルエステル、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が例示され、これらの一種又は二種以上の混合溶媒を用いることができる。これらの中で、熱水又はエタノール含有水は、後述するポリフェノール関連化合物を含む有効成分を効率よく抽出することができるので好ましい。
本発明に用いられるパッションフルーツの種子抽出物は、上記の方法で得られた抽出液を、そのまま又は濃縮して液体のまま用いてもよく、更に上記抽出液を凍結乾燥又は噴霧乾燥により粉末化して用いることもできる。抽出物中に含まれる不溶物は、適宜、濾過などで除くことができる。不溶物はさらに粉砕し、微細粒子状にしてもよい。
本発明に用いられるパッションフルーツの種子抽出物は、上記のようにして得られる一次抽出物をそのまま用いてもよいが、これをイオン交換、サイズ排除カラムクロマト法、HPLC法、ゲルろ過、膜分離等により、分画、精製して用いることもできる。特に、後述する実施例で示されるように、ポリフェノール関連化合物が有効成分であることが推測されることから、HPLC等のその通常の方法でその有効活性成分を高度に精製し、これを用いることができる。
本発明のコラーゲン産生促進剤の有効成分とされる種子抽出物は、パッションフルーツの食経験からも裏付けられるように、安全性には問題がないものである。
本発明のコラーゲン産生促進剤の使用形態としては、肌のつややはりの衰えを予防したい部位、又はこれらを改善したい部位、乾燥肌の部位などに塗布することができる。あるいは、経口的に摂取して、体の中から作用させるようにしてもよい。
本発明のコラーゲン産生促進剤の有効投与量は、皮膚に塗布する場合には、上記パッションフルーツの種子の一次抽出物の固形物換算で、単位面積あたり一回およそ0.025〜50mg/cmである。また、上記パッションフルーツの種子の一次抽出物から有効活性成分を高度に精製する場合には、その有効活性成分の質量換算で、単位面積あたり一回およそ0.005〜10mg/cmである。経口摂取する場合には、上記パッションフルーツの種子の一次抽出物の固形物換算で、成人1日当りおよそ2.5〜5,000mgである。また、上記パッションフルーツの種子の一次抽出物から有効活性成分を高度に精製する場合には、その有効活性成分の質量換算で、成人1日当りおよそ0.5〜1,000mgである。
本発明のコラーゲン産生促進剤は、液剤、軟膏剤、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、ゼリー状剤等に製剤化することができる。これらの製剤化は常法に従って行なえばよい。
本発明のコラーゲン産生促進剤は、コラーゲン産生促進のための経口用組成物とすることができ、皮膚に適用される化粧料、医薬部外品等の製品形態とすることもできる、また、本発明のコラーゲン産生促進剤を、各種飲食品に添加して、コラーゲン産生促進効果が期待できる飲食品とすることもできる。各製品形態とした場合におけるパッションフルーツの種子抽出物の含有量は、その製品が使用される量と有効投与量との関係を勘案して適宜定めればよく、特に制限されるものではないが、通常、固形状の製品の場合には、上記パッションフルーツの種子の一次抽出物の固形物換算で、0.001〜99質量%含有させることが好ましく、0.001〜20質量%含有させることがより好ましい。また、上記パッションフルーツの種子の一次抽出物から有効活性成分を高度に精製する場合には、その有効活性成分の質量換算で、0.0002〜20質量%含有させることが好ましく、0.0002〜4質量%含有させることがより好ましい。そして、液状又はゼリー状の製品の場合には、上記パッションフルーツの種子の一次抽出物の固形物換算で、0.001〜99質量%含有させることが好ましく、0.001〜20質量%含有させることがより好ましい。また、液状又はゼリー状の製品の場合であって上記パッションフルーツの種子の一次抽出物から有効活性成分を高度に精製する場合には、その有効活性成分の質量換算で、0.0002〜20質量%含有させることが好ましく、0.0002〜4質量%含有させることがより好ましい。
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<試験例1>
パッションフルーツの部位ごとに抽出物を調製し、そのコラーゲン産生促進効果を検討した。
[サンプル調整方法]
パッションフルーツは果皮・果肉・種子の3つの部位に分け、それぞれをフリーズドライして粉砕し、各部位を80%エタノールで抽出した。遠心後その上清をとりエバポレートで濃縮後、フリーズドライして粉末にした。この粉末を水に溶かして抽出物とした。
[培養細胞を用いたアッセイ方法]
96−ウェルプレートにヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY)(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手)を1×104/well播種し、MEMα(10%FBS)で24時間培養した。24時間後、培地を吸引除去し、固形分濃度換算で0〜1000μg/mlの抽出物濃度となるように上記抽出物を低血清のM106培地(Cascade Biologics社製)に添加して調製した培地を、各1ウェル中に0.2mlずつ添加した。3日間培養後、培地を回収して10000rpm、4℃で5分間遠心分離し、その上清について、コラーゲン定量キットである「Sircol soluble collagen assayキット」(商品名、英国Biocolor社製)を用いて水溶性コラーゲン濃度を定量した。図1には、抽出物を添加しない対照(コントロール)に対するコラーゲン生成量の比を示す。
図1(a)及び図1(b)に示すように、パッションフルーツの果皮又は果肉からの抽出物においては、最大濃度1000μg/mlでも、ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY)からのコラーゲン産生を促進する効果は認められなかった。また、100〜500μg/mlの濃度範囲では、その原因は明らかではないが、産生阻害効果が見られた。これに対し、図1(c)に示すように、パッションフルーツの種子抽出物には、100〜200μg/mlの濃度範囲で、コラーゲン産生促進効果が認められた。なお、上記の試験における抽出物の濃度範囲で、ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY)に対する細胞毒性がないことは別途確認した。
<試験例2>
パッションフルーツの種子抽出物の活性成分を探るため、以下のような実験を行った。
すなわち、活性のあった種子抽出物を、ポリフェノールを吸着する樹脂であるポリビニルポリピロリドン(PVPP:Polyvinylpolypyrrolidone)を水で膨潤させたものとともに30分間攪拌し、15000rpmで15分遠心分離し、上清を種子抽出物のPVPP処理サンプルとした。なお、サンプル中のポリフェノール濃度をFolin-Ciocalteu法で測定した結果、このPVPP処理によりポリフェノール濃度は95%以上低下していた。したがって、PVPP処理により大部分のポリフェノールは除かれたことが確認された。
図2に示すように、PVPP処理を行った結果、種子抽出物にコラーゲン産生促進効果が見られなくなった。したがって、種子抽出物中のポリフェノールが主な活性成分であることが示唆された。
<試験例3>
パッションフルーツの種子抽出物の活性成分の同定を、以下のようにして行った。
まず、試験例1と同様にして調製されたパッションフルーツの種子抽出物(4ml)を、ODSカラムを用いたHPLCによって分画した。
HPLC条件は、以下のとおりとした。
・ カラム:Mightysil RP-18 GP250-10 径10mm、長さ250mm(関東化学株式会社製)
・ カラム温度:40℃
・ 溶出条件:流速3ml/min、0%メタノール→30%メタノール(10min)
・ UV検出:280nm
ODSカラムからの溶出フラクションを図3に示すように、フラクション1、フラクション2、フラクション3の3つに分け、得られたフラクションの溶媒をエバポレート後に凍結乾燥し、水によってもとの粗抽出物の体積に戻した。そして、試験例1、2と同様にして、ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY)によるコラーゲン産生に与える影響を調べた。
具体的には、96−ウェルプレートにヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY)(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手)を7×103/well播種し、MEM(10%FBS)で24時間培養した。24時間後、培地を吸引除去し、もとの粗抽出液の固形分濃度換算で100μg/ml相当の濃度となるように、上記フラクションからの溶出フラクション組成物を低血清のM106培地(Cascade Biologics社製)に添加して培地を調製し、各1ウェル中に0.2mlずつ添加した。3日間培養後、培地を回収し、試験例1と同様にして水溶性コラーゲン濃度を定量した。図4には、抽出物を添加しない対照(コントロール)に対するコラーゲン生成量の比を示す。
図4に明らかなように、フラクション1とフラクション3からの溶出フラクション組成物にはコラーゲン生成促進効果は認められなかった。一方、フラクション2からの溶出フラクション組成物には粗抽出物とほぼ同等の活性が認められた。したがって、上記HPLCにおいて保持時間20.6分に溶出する成分が、パッションフルーツの種子抽出物によるコラーゲン生成促進効果の活性成分であると考えられた。
そこで、上記保持時間20.6分に溶出する成分について、HPLC/質量分析装置(サーモエレクトロン株式会社製、装置名「Thermo-LCQ-MS/MS」)を用いて、そのマススペクトルを測定した(図5A)。なお、ポジティブ、ネガティブの両イオンモードで検討したがネガティブに良好なイオンが見出されたので、そのデータを用いた。その結果、主要シグナルm/z243は、(M−H)であり、その他のピークm/z279は(M+2HO−H)と帰属され、m/z487は(M×2−H)と帰属できた。したがって、分子量が244と決定できた。また、UVスペクトルを取ると、λmaxとして、220nm、304nm、322nmが観察された(図5B)。
これらのマススペクトルやUVスペクトルの結果は、ピーナッツ果皮に含まれるポリフェノールであるレスベラトロール(Resveratrol、分子量228)に類似していた(図6A,B参照)。また、上記HPLC条件でのレスベラトロールの保持時間が24.5分であり、未知化合物はレスベラトロールよりも逆相カラムでの保持時間が小さいことから、水酸基1個分の分子量が大きい、下記式(1)で表されるピセアタンノール(Piceatannol、分子量244)であることが推定された。
そこで、ピセアタンノールの純化合物(シグマ社製)について、上記と同じ条件でのHPLC分析を行ない(図7)、さらにマススペクトルやUVスペクトルを得た(図8A,B)。その結果、HPLCにおける保持時間や、マススペクトルやUVスペクトルの帰属が全て一致した。よって、パッションフルーツの種子抽出物の活性成分が、ピセアタンノールであることが明らかとなった。
<試験例4>
試験例1と同様にして調製されたパッションフルーツの種子抽出物について、そのピセアタンノール含量を、上記HPLC分析によるピーク面積を利用した標準濃度の検量線から求めた。その含有量は約1.9μg/100μg粗抽出物(1.9質量%)であった。また、パッションフルーツの種子抽出物中の含有量から原料とされたパッションフルーツの種子のフリーズドライ乾燥物中の含有量を算出すると、約1mg/gであった。そこで、ピセアタンノール換算で0、4.5、9、18μMの濃度となるように培養液に添加した以外は、試験例3と同様にして、ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY)によるコラーゲン産生に与える影響を調べた。また、ピセアタンノールの純化合物についても同様にコラーゲン産生に与える影響を調べた。その結果を図9に示す。
図9に明らかなように、パッションフルーツの種子抽出物と、ピセアタンノールの純化合物の両者は、ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY)によるコラーゲン産生促進効果ついて、ピセアタンノール換算で0〜18μMの濃度範囲において、ほぼ同等の濃度依存性を示した。よって、パッションフルーツの種子抽出物の活性成分がピセアタンノールであることが明らかであった。
果皮(a)、果肉(b)及び種子(c)からの抽出物のコラーゲン産生促進効果を示す図表である。 種子抽出物及びポリフェノールを除いた種子抽出物のコラーゲン産生促進効果を示す図表である。 種子抽出物のHPLC溶出プロファイルを示す図表である。 HPLCで分画された種子抽出物の各溶出フラクション組成物によるコラーゲン産生促進効果を示す図表である。 種子抽出物中の未知化合物のマススペクトル(A)及びUVスペクトル(B)を示す図表である。 レスベラトロール(Resveratrol、分子量228)のマススペクトル(A)及びUVスペクトル(B)を示す図表である。 ピセアタンノール(Piceatannol、分子量244)のHPLC溶出プロファイルを示す図表である。 ピセアタンノール(Piceatannol、分子量244)のマススペクトル(A)及びUVスペクトル(B)を示す図表である。 パッションフルーツの種子抽出物によるコラーゲン産生促進効果とピセアタンノールの純化合物によるコラーゲン産生促進効果とを比較した図表である。

Claims (4)

  1. 抽出溶媒として水、エタノール、酢酸エチル、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、又はこれらの二種以上の混合溶媒を用いてパッションフルーツの種子から抽出して得られた、ピセアタンノールを含有する組成物を有効成分とすることを特徴とするコラーゲン産生促進剤。
  2. 前記抽出溶媒が、熱水又はエタノール含有水である請求項1記載のコラーゲン産生促進剤。
  3. 前記抽出溶媒が、エタノール含有水である請求項1記載のコラーゲン産生促進剤。
  4. 経口剤として用いられる、請求項1〜3のいずれか1つに記載のコラーゲン産生促進剤。
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