JP5719581B2 - 抗糖化作用剤 - Google Patents

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Description

本発明は、抗糖化作用剤に関するものである。
糖質は、ヒトを初めとする生物におけるエネルギー源として非常に重要である。しかし一方で、糖質がタンパク質と反応する糖化反応(グリケーション)は、タンパク質を非酵素的に糖により修飾する反応であり、これにより当該タンパク質の変性やタンパク質間の架橋等が起こるため、タンパク質の機能を低下させる。
糖化反応は、コラーゲン等の細胞外マトリックス構成タンパク質を修飾・構造変化させることにより直接的な障害を引き起こすほか、糖化タンパク質をリガンドとする受容体により認識されることにより細胞応答を引き起こす等の影響をもたらす。特に、血液中のグルコース濃度が高い糖尿病の患者にとって、糖化反応の影響は深刻である。糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症等の糖尿病合併症は、タンパク質の糖化がその一因であることが知られている。また、血管壁における糖化反応は、内皮細胞の障害や変性タンパク質の蓄積などにより、動脈硬化の進展をもたらすことが知られている。
また、コラーゲンを初めとする細胞外マトリックス成分は、骨や皮膚などの組織における乾燥重量の過半を占めている。そのため、例えば、コラーゲンが糖化され異常に架橋された状態となると、骨や軟骨組織においては骨粗鬆症や変形性関節症等が起こり、皮膚においては弾力性の低下、黄色化等によるくすみ等が起こる。さらに、異常に架橋したコラーゲン等はコラゲナーゼ等による分解を受けにくくなるため、コラゲナーゼ等の発現が誘導され、正常なコラーゲンまで分解されてしまうなどの問題が生じてしまう。
このため、糖化反応を何らかの形で抑制することができれば、上述した疾患、すなわち糖尿病合併症、動脈硬化、骨粗鬆症、変形性関節症などの予防又は治療に有用であると期待される。さらには、皮膚の弾力性低下やくすみ等の予防又は改善にも効果があるものと期待される。
従来、抗糖化作用を有する化合物として、N−フェナシルチアゾリウムブロミドが知られている(非特許文献1)。しかし、この化合物は安全性に問題があり、医薬品や皮膚外用剤として適していない。また、抗糖化作用を有する天然物由来の成分として、例えば、ヨモギからの抽出物が知られている(特許文献1)。しかし、抗糖化作用を有する物質の提供は十分とは言い難く、さらなる新しい抗糖化作用物質の開発及び提供が強く求められている。
特開2001−122758号公報
Vasan S. et al.,Nature,1996年7月18日,Vol. 82,No. 6588,p.275-278
本発明は、安全性の高い天然物の中から抗糖化作用を有するものを見出し、それを有効成分とする抗糖化作用剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の抗糖化作用剤は、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物及び真珠タンパク質加水分解物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の天然物由来成分を有効成分として含有することを特徴とする。
本発明によれば、優れた抗糖化作用を有し、かつ安全性の高い抗糖化作用剤を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の抗糖化作用剤は、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物及び真珠タンパク質加水分解物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の天然物由来成分を有効成分として含有する。
ここで、本実施形態において「抽出物」には、上記植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
[甘草葉部抽出物,マタタビ抽出物,ザクロ抽出物,マチルス抽出物,クスノハガシワ抽出物,セキセツソウ抽出物,ウメ抽出物,イロハモミジ抽出物の製造]
本実施形態において、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物及びイロハモミジ抽出物を製造するために使用する抽出原料は、甘草、マタタビ(学名:Actinidia polygama)、ザクロ(学名:Punica granatum)、マチルス(学名:Machilus odoratissima)、クスノハガシワ(学名:Mallotus philippinensis Mueller-Argoviensis)、セキセツソウ(学名:Centella asiatica)、ウメ(学名:Prunus mume Siebold et Zuccarini)及びイロハモミジ(学名:Acer palmatum)である。
甘草は、マメ科グリチルリーザ(Glycyrrhiza)属に属する多年生草本である。甘草には、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・インフラータ(Glychyrrhiza inflata)、グリチルリーザ・ウラレンシス(Glychyrrhiza uralensis)、グリチルリーザ・アスペラ(Glychyrrhiza aspera)、グリチルリーザ・ユーリカルパ(Glychyrrhiza eurycarpa)、グリチルリーザ・パリディフロラ(Glychyrrhiza pallidiflora)、グリチルリーザ・ユンナネンシス(Glychyrrhiza yunnanensis)、グリチルリーザ・レピドタ(Glychyrrhiza lepidota)、グリチルリーザ・エキナタ(Glychyrrhiza echinata)、グリチルリーザ・アカンソカルパ(Glychyrrhiza acanthocarpa)等、様々な種類のものがあり、これらのうち、いずれの種類の甘草を抽出原料として使用してもよいが、特にグリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・ウラレンシス(Glychyrrhiza uralensis)、及びグリチルリーザ・インフラータ(Glychyrrhiza inflata)を抽出原料として使用することが好ましい。抽出原料として使用し得る甘草の構成部位としては、葉部である。
マタタビ(Actinidia polygama)は、マタタビ科マタタビ属の半蔓性植物であって、朝鮮半島、中国、日本等に分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るマタタビの構成部位としては、例えば、花部、蕾部、果実部、果皮部、種子部、種皮部、茎部、葉部、枝部、枝葉部、幹部、樹皮部、根部、根茎部、根皮部又はこれらの混合物などが挙げられるが、好ましくは果実部である。
ザクロ(Punica granatum)は、ザクロ科ザクロ属に属する落葉小低木であって、イラン、アフガニスタン、西パキスタン等に分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るザクロの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、果皮部、花部、地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは果皮部である。
マチルス(Machilus odoratissima)は、クスノキ科マチルス属に属する常緑高木であって、雲南、貴州、四川、チベット等に分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るマチルスの構成部位としては、例えば、樹皮部、葉部、幹部、地上部、花部、果実部、種子部、根部、全草又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは樹皮部である。
クスノハガシワ(Mallotus philippinensis Mueller-Argoviensis,中国名:呂宋楸毛(ルソンシュウモウ))は、トウダイグサ科アカメガシワ属に属する常緑小高木であって、広東、広西、湖南、雲南、四川、浙江、福建、江西、台湾等に分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るクスノハガシワの構成部位としては、例えば、葉部、花部、根部、樹皮部、枝部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは樹皮部である。
セキセツソウ(Centella asiatica)は、セリ科ボタン属に属する多年草であって、本州西南部、四国、九州、沖縄、朝鮮半島、台湾、中国等に分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るセキセツソウの構成部位としては、例えば、花部、根部、葉部、茎部、枝部等が挙げられるが、好ましくは葉部又は茎部である。
ウメ(Prunus mume Siebold et Zuccarini)はバラ科に属する落葉小高木であり、観賞用及び食用のために植木される。中国中部原産で、日本には古来渡来し、九州では野生化したところもある。抽出原料として使用し得るウメの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、果皮部、花部、地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは果実部である。
イロハモミジ(学名:Acer palmatum)は、カエデ科カエデ属に属する落葉亜高木であって、イロハカエデ、タカオモミジ、タカオカエデ等とも呼ばれる。また、イロハモミジは、四国、九州、朝鮮南部、中国東部などに分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るイロハモミジの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、根部、樹皮部、種子部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物及びイロハモミジ抽出物のそれぞれに含有される抗糖化作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法によって、上記植物からこの作用を有する抽出物を得ることができる。
例えば、上記植物を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、上記植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合することが好ましい。
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
なお、上述のようにして得られた抽出液はそのままでも抗糖化作用剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
また、上記植物からの抽出物は特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料等に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
[真珠タンパク質加水分解物の製造]
本実施形態における真珠タンパク質加水分解物は、真珠層を有する貝の貝殻及び/又は真珠を脱灰処理に付し、これにより得られる真珠タンパク質(コンキオリン)を加水分解してなるものである。
真珠層を有する貝としては、例えば、ウグイスガイ科に属するアコヤ貝(学名:Pinctada fucata);イガイ科に属するイガイ(学名:Mytilus coruscum)、ムラサキイガイ(学名:Mytilus edulis);イシガイ科に属するイケチョウガイ(学名:Hyriopsis schlegelii)、カラスガイ(学名:Cristaria plicata)等が挙げられ、これらのうちアコヤ貝を用いるのが好ましい。
真珠層を有する貝の貝殻及び/又は真珠は、そのまま又は粉砕して脱灰処理に付せられる。貝殻及び/又は真珠の脱灰処理は、常法により行えばよく、例えば、貝殻及び/又は真珠に酸又はその水溶液を添加して攪拌する。
脱灰処理に使用し得る酸としては、貝殻及び/又は真珠に含まれる炭酸カルシウム等の無機成分を十分に溶出させ得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸;シュウ酸、炭酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、酢酸、ギ酸等の有機酸等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上の混酸を使用してもよい。
酸又はその水溶液の添加量は、貝殻及び/又は真珠に含まれる炭酸カルシウム等の無機成分を十分に溶出させ得る量であればよく、使用する酸の種類等に応じて適宜設定すればよい。
脱灰処理により得られた処理液を遠心分離、濾過、デカンテーション等の固液分離手段に付して不溶物を回収し、必要に応じて回収した不溶物に精製水を添加して再度遠心分離、濾過等の洗浄操作を繰り返し、不溶物を回収する。そして、得られる不溶物を、所望により粉砕機等を用いて微粉砕し、常法により乾燥して真珠タンパク質(コンキオリン)を得ることができる。
そして、得られた真珠タンパク質(コンキオリン)を酸又はアルカリの水溶液を用いて加水分解する。
真珠タンパク質(コンキオリン)の加水分解処理に使用し得る酸としては、例えば、塩酸、硫酸等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
また、真珠タンパク質(コンキオリン)の加水分解処理に使用し得るアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
酸又はアルカリの水溶液を使用して加水分解する場合、酸又はアルカリの水溶液の添加量や当該水溶液における酸又はアルカリの濃度は、貝殻及び/又は真珠に含まれる真珠タンパク質(コンキオリン)を加水分解し得るが、完全にアミノ酸にまで分解し得ない量であればよく、使用する酸又はアルカリの種類等に応じて当該水溶液の添加量や当該水溶液における酸又はアルカリの濃度を適宜変更することができる。
また、加水分解処理は、0〜130℃、好ましくは50〜110℃の温度条件の下、30分〜10日間程度、好ましくは5時間〜5日間程度行う。
このようにして加水分解処理により得られた溶液から酸又はアルカリを除去し、必要に応じて限外濾過処理に付して高分子ペプタイドを除去し、さらに濃縮、乾燥等の処理に付することで、真珠タンパク質加水分解物を得ることができる。
酸又はアルカリは、加水分解処理により得られた溶液から常法により除去することができ、例えば、凍結乾燥、溶液中の酸又はアルカリを中和して脱塩する方法等が挙げられる。
[抗糖化作用剤]
以上のようにして得られる各天然物由来成分は、優れた抗糖化作用を有しているため、抗糖化作用剤の有効成分として用いることができる。
甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物は、その抗糖化作用を通じて、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症等の糖尿病合併症の予防・治療剤の有効成分として用いることができるとともに、タンパク質の糖化反応に起因する動脈硬化の予防・治療剤の有効成分としても用いることができる。ただし、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物は、これらの用途以外にも抗糖化作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができ、例えば、タンパク質の糖化反応に起因する皮膚の弾力性低下やくすみ等の予防・改善剤の有効成分として用いることができる。さらに、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物は、タンパク質の糖化反応に起因する骨粗鬆症や変形性関節症等の疾患の予防・治療剤の有効成分として用いることもできる。
なお、本実施形態においては、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物のうちのいずれか一つを上記有効成分として用いてもよいし、これらを混合して上記有効成分として用いてもよい。甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物を混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物が有する抗糖化作用の程度等により適宜調整すればよい。
本実施形態の抗糖化作用剤は、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物及びこれらの混合物のみからなるものでもよいし、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物及びこれらの混合物を製剤化したものでもよい。
本実施形態の抗糖化作用剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。抗糖化作用剤は、他の組成物(例えば、皮膚外用剤、美容用飲食品等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
本実施形態の抗糖化作用剤を製剤化した場合、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物及びこれらの混合物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
なお、本実施形態の抗糖化作用剤は、必要に応じて、抗糖化作用を有する他の天然抽出物等を、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物及びこれらの混合物とともに配合して有効成分として用いることができる。
本実施形態の抗糖化作用剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。
また、本実施形態の抗糖化作用剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
本実施形態の抗糖化作用剤は、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物が有する抗糖化作用を通じて、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症等の糖尿病合併症を予防又は治療することができるとともに、タンパク質の糖化反応に起因する動脈硬化をも予防又は治療することができる。また、本実施形態の抗糖化作用剤は、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物又は真珠タンパク質加水分解物が有する抗糖化作用を通じて、タンパク質の糖化反応に起因する皮膚の弾力性低下やくすみ等を予防又は改善することができる。さらに、本実施形態の抗糖化作用剤は、タンパク質の糖化反応に起因する骨粗鬆症や変形性関節症等の疾患を予防又は治療することもできる。ただし、本実施形態の抗糖化作用剤は、これらの用途以外にも抗糖化作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
なお、本実施形態の抗糖化作用剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サル等)に対して適用することもできる。
本実施形態の抗糖化作用剤は、優れた抗糖化作用を有するとともに、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、例えば、皮膚外用剤に配合するのに好適である。
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
また、本実施形態の抗糖化作用剤は、優れた抗糖化作用を有するとともに、経口的に摂取した場合の安全性にも優れているため、例えば、美容用飲食品に配合するのに好適である。ここで、美容用飲食品としては、その区分に制限はなく、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
さらに、本実施形態の抗糖化作用剤は、優れた抗糖化作用を有するので、糖化反応に関連する疾患の研究のための試薬としても好適に利用することができる。
以下、試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例に何ら限定されるものではない。なお、本試験例においては、試料(試料1〜9)として表1に示す製品の凍結乾燥品を使用した。
Figure 0005719581
〔試験例1〕抗糖化作用試験
グルコース等の糖は、解糖系や酸化などにより、メチルグリオキサールや3−デオキシグルコソン等、分子内に連続した2つのカルボニル基を有するα−ジカルボニル化合物を生成する。これらα−ジカルボニル化合物は、通常の糖よりも10000倍程度反応性が高く、タンパク質中のアミノ基と反応して容易に糖化タンパク質を生成する。したがって、α−ジカルボニル化合物を分解する作用を有する成分は、タンパク質の糖化を抑制するものと考えられる。
本試験では、α−ジカルボニル化合物の分解作用を検出するために、1−フェニル−1,2−プロパンジオンを使用した。1−フェニル−1,2−プロパンジオンは分子内にα−ジケトン(α−ジカルボニル)構造を有し、α−ジケトンのC−C結合が切断されると、1−フェニル−1,2−プロパンジオンと等しい物質量の安息香酸が生成する。
上記各天然物由来成分(試料1〜9)について、安息香酸の生成量を指標に、以下のようにして抗糖化作用を試験した。
22mMの1−フェニル−1,2−プロパンジオン(和光純薬工業社製)メタノール溶液2mL、終濃度が10%になるように精製水に溶解させた被験試料(試料1〜9、試料濃度は下記表2を参照)1mL、及び0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)1mLを混合し、37℃で10時間反応させた。
反応終了後、反応液を遠心分離(450×g,3分)した後、上清を下記に示す移動相で10倍希釈した後、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、下記の条件にて安息香酸の生成量を高速液体クロマトグラフ法により定量した。なお、標準物質として、安息香酸(和光純薬工業社製)20mgを下記の移動相に溶解させて100mLに正確にメスアップし、0.45μmメンブレンフィルターでろ過したものを用いた。
<液体クロマトグラフィー条件>
固定相:JAIGEL GS−310(日本分析工業社製)
カラム径:20mm
カラム長:250mm
カラム温度:40℃
注入量:20μL
移動相:アセトニトリル:リン酸水溶液(pH2.5)=3:7(体積比)
移動相流量:1mL/min
検出波長:254nm
得られた結果から、下記式により抗糖化作用率(%)を算出した。
抗糖化作用率(%)=A/B×100
式中、Aは「生成した安息香酸の物質量」を表し、Bは「反応液に加えた1−フェニル−1,2−プロパンジオンの物質量」を表す。
結果を表2に示す。
Figure 0005719581
表2に示すように、試料1〜9はいずれも安息香酸を生成させたことから、甘草葉部抽出物、マタタビ抽出物、ザクロ抽出物、マチルス抽出物、クスノハガシワ抽出物、セキセツソウ抽出物、ウメ抽出物、イロハモミジ抽出物及び真珠タンパク質加水分解物が抗糖化作用を有すると認められた。特に、マチルス抽出物(試料4)、クスノハガシワ抽出物(試料5)、ウメ抽出物(試料7)及びイロハモミジ抽出物(試料9)は、非常に優れた抗糖化作用を有することが示された。
本発明の抗糖化作用剤は、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症等の糖尿病合併症の予防又は治療、タンパク質の糖化反応に起因する動脈硬化の予防又は治療、タンパク質の糖化反応に起因する皮膚の弾力性低下やくすみ等の予防又は改善、及びタンパク質の糖化反応に起因する骨粗鬆症や変形性関節症等の疾患の予防又は治療に大きく貢献できる。

Claims (1)

  1. 甘草葉部抽出物有効成分として含有する抗糖化作用剤(皮膚老化、肌荒れまたは骨粗鬆症の予防または治療用途および飲食品の用途を除く)
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