JP5414853B2 - 直流モータのリップル検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルを検出する装置に関する。
直流モータの一種に、回転電機子にコンミテータを備えてブラシから通電方向を切り換える方式の直流ブラシモータがあり、例えば車両用シート装置のシートスライド用やリクライニング角度調整用などに適用されている。直流ブラシモータでは、回転電機子が回転してブラシとコンミテータの接触が切り替わることに起因して電流リップルが発生し、電機子電流に重畳する。したがって、直流の電機子電流に含まれる交流分の電流リップルを抽出して波形整形し、極大点、極小点、ゼロクロス点などの特異点を検出することにより、回転電機子の回転位相を知ることができ、回転位相センサや累積回転量センサの代わりになる。つまり、これらのセンサを別途設ける必要がなくなり、上記例では車両用シート装置が簡素となり、製作コストを低減できる。
しかしながら、電機子電流には電流リップルだけでなく低周波ノイズや高周波ノイズも重畳する場合が多い。例えば、4極10スロットの直流モータにおいては、電気角の360°ではなく720°で構造上のトポロジーをもつため、720°を周期とする電流成分が重畳する。換言すれば、リップル周波数の1/2の周波数をもつ低周波ノイズ(1/2周波数ノイズ)が電機子電流に重畳する。また、リップル周波数の2倍や4倍の周波数をもつ高周波ノイズ(n倍周波数ノイズ)が電機子電流に重畳することも往々にしてある。本願出願人は、このようなノイズの影響を受けずに電流リップルを検出する装置の一例を特許文献1に開示している。
特許文献1の直流モータの回転状態検出装置は、遮断周波数演算手段、遮断周波数設定手段、フィルタ手段、回転状態検出手段、回転状態判定手段、および遮断周波数更新手段を備え、直流モータが定常回転をしていないときにのみフィルタ手段の遮断周波数の変更を許可するようにしている。したがって、回転状態に応じて遮断周波数の変更可否を制御し、また、定常回転状態ではノイズ成分を遮断して正確にリップルを検出できる。これにより、フィルタ手段の遮断周波数がリップル周波数よりも低周波側へ誤って設定され、最終的に低周波ノイズの周波数に設定されてしまうおそれを解決できる、とされている。
特開2007−124865号公報
ところで、特許文献1の実施形態では、リップルパルス整形回路出力のパルス間時間の逆数を実リップル周波数として、フィルタ手段の遮断周波数を演算している。この方法によると、例えば、一過性のノイズが重畳してこれをフィルタ手段で除去しきれない場合、実リップル周波数が誤って高くなったり低くなったりするおそれが解消できない。例えば、リップル波形の検出過程で電流リップルを検出できないリップル抜けが発生すると、リップル周期が約2倍に延びる。また、電流リップルと区別できないノイズが重畳するリップル増しが発生すると、正規のリップル周期が2分される。これらの場合、リップル周期の逆数で求めたリップル周波数は正しい値の概ね半分または2倍となる。
また、電流リップルには、ジッタ成分と呼ばれる微妙なゆらぎが含まれることもある。この場合、定常回転状態であっても逐次求めたリップル周期の精度が高いとは限らず、ある程度のばらつきを含む。ばらつきを低減するためには移動平均値を求めることが考えられるが、リップル抜けやリップル増しが発生した場合は、やはりリップル周期やリップル周波数の精度は低下してしまう。
リップル周期の精度低下により、リップル周期を利用した回転位相や累積回転量などの演算の精度低下が生じる。さらには、リップル周波数の精度低下により、フィルタの遮断周波数を良好に制御できなくなり、ノイズを除去できなくなって誤った周波数、例えば1/2周波数にロックしてしまうような悪循環に陥るおそれもある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、一過性のノイズによりリップル抜けやリップル増しが発生しても、リップル周波数を高精度に求めてフィルタ部をフィードバック制御できる直流モータのリップル検出装置を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する請求項1に係る直流モータのリップル検出装置の発明は、直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルを抽出してリップル波形を求める遮断周波数可変のフィルタ部と、前記リップル波形に基づいてリップル周期を求めるリップル周期検出部と、前記リップル周期に基づいて前記フィルタ部の前記遮断周波数を制御する遮断周波数制御部と、を備える直流モータのリップル検出装置であって、前記リップル周期検出部は、前記リップル波形に基づいて逐次前記リップル周期を演算するリップル周期演算手段と、前記リップル周期の平均値を求めて平均リップル周期とする平均値演算手段と、前記リップル周期演算手段の後段に、前記平均リップル周期に1を越え2未満の所定倍率を乗じた抜け判定値よりも最新のリップル周期が大きいときに、前記リップル波形の前記電流リップルを検出できないリップル抜けが発生したと判断し、前記最新のリップル周期を2で除して求めた抜け補正周期を2個前記平均値演算手段に受け渡すリップル抜け補正手段とを有し、前記遮断周波数制御部は、前記平均リップル周期に基づいて前記フィルタ部の前記遮断周波数を制御する、ことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルを抽出してリップル波形を求める遮断周波数可変のフィルタ部と、前記リップル波形に基づいてリップル周期を求めるリップル周期検出部と、前記リップル周期に基づいて前記フィルタ部の前記遮断周波数を制御する遮断周波数制御部と、を備える直流モータのリップル検出装置であって、前記リップル周期検出部は、前記リップル波形に基づいて逐次前記リップル周期を演算するリップル周期演算手段と、前記リップル周期の平均値を求めて平均リップル周期とする平均値演算手段と、前記リップル周期演算手段の後段に、前記平均リップル周期に1未満の所定倍率を乗じた増し判定値よりも最新のリップル周期が小さいときに、前記リップル波形に前記電流リップルと区別できないノイズが重畳するリップル増しが発生したと判断し、前記最新のリップル周期と次に検出するリップル周期とを加えて求めた増し補正周期を前記平均値演算手段に受け渡すリップル増し補正手段とを有し、前記遮断周波数制御部は、前記平均リップル周期に基づいて前記フィルタ部の前記遮断周波数を制御する、ことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記リップル周期検出部は、請求項2に記載の前記リップル増し補正手段をさらに有する、ことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1または3において、前記抜け判定値は前記平均リップル周期に1.3倍を乗じた値である、ことを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項2または3において、前記増し判定値は前記平均リップル周期に0.7倍を乗じた値である、ことを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記リップル抜け補正手段は、前記リップル抜けが発生したと判断したときに、リップル抜けフラグを立て、ならびに/あるいは、前記リップル増し補正手段は、前記リップル増しが発生したと判断したときに、リップル増しフラグを立てる、ことを特徴とする、
請求項1に係る直流モータのリップル検出装置の発明では、リップル周期検出部のリップル抜け補正手段は、リップル抜けが発生したと判断したとき、最新の過大なリップル周期を2で除して求めた抜け補正周期を2個平均値演算手段に受け渡す。これにより、2個の妥当な抜け補正周期が平均値演算手段に追加されるので、リップル抜けが多頻度で発生しても、平均リップル周期を高精度に求めることができる。
請求項2に係る発明では、リップル周期検出部のリップル増し補正手段は、リップル増しが発生したと判断したとき、最新の過小なリップル周期と次に検出するリップル周期とを加えて求めた増し補正周期を平均値演算手段段に受け渡す。これにより、過小なリップル周期に代えて妥当な増し補正周期が平均値演算手段に追加されるので、リップル増しが多頻度で発生しても、平均リップル周期を高精度に求めることができる。
請求項3に係る発明では、リップル抜けやリップル増しの発生頻度が増加しても、リップル抜け補正手段およびリップル増し補正手段により影響が低減されて、平均リップル周期を高精度に求めることができる。
本発明の実施形態の直流モータのリップル検出装置を説明するブロック図である。 実施形態における平均リップル周期を用いた遮断周波数制御のメインフローを説明する処理フロー図である。 図2のメインフロー中の通常時処理を説明する処理フロー図である。 図2のメインフロー中のリップル抜け判定時処理を説明する処理フロー図である。 図2のメインフロー中のリップル増し判定時処理を説明する処理フロー図である 実施形態のリップル検出装置の作用を説明する実測波形例の図である。 図6の実測波形例の一定回転状態の部分を時間的に拡大した図である。
本発明を実施するための実施形態を、図1〜図7を参考にして説明する。図1は、本発明の実施形態の直流モータのリップル検出装置1を説明するブロック図である。直流モータ91は、図略の車両用シート装置のシートスライド用に適用されており、通常一定の直流電圧を印加して一定回転速度で用いるものである。リップル検出装置1は、直流モータ91を制御する制御装置の一部としてカスタムICの形態で構成され、モータ制御CPU99の制御で動作するようになっている。リップル検出装置1は、第1バンドパスフィルタ2、第1リップル周期検出部3、第2バンドパスフィルタ4、第2リップル周期検出部5、リップル周波数演算部6、および遮断周波数制御部7などの機能ブロックを備えている。
リップル検出装置1において、第1バンドパスフィルタ2および第1リップル周期検出部3は、直流モータ91の電機子電流Imに含まれる電流リップルから第1リップル周期Tr1を検出してモータ制御CPU99に受け渡す機能を担っている。また、第2バンドパスフィルタ4以降の機能ブロックは、電流リップルからリップル周波数を検出して基本周波数f0とし、基本周波数f0を基にして第1バンドパスフィルタ2の遮断周波数f1CL、f1CHを正確にフィードバック制御する機能を担っている。
第1バンドパスフィルタ2は、遮断周波数制御部7からの制御により遮断周波数が可変とされるディジタルフィルタである。第1バンドパスフィルタ2は、下側遮断周波数f1CLのハイパスフィルタHPF1、および上側遮断周波数f1CHのローパスフィルタLPF1の組み合わせにより構成され、通過周波数帯域f1は下側遮断周波数f1CLと上側遮断周波数f1CHの間に制限されている(f1CL≦f1≦f1CH)。同様に、第2バンドパスフィルタ4も、下側遮断周波数f2CLのハイパスフィルタHPF2、および上側遮断周波数f2CHのローパスフィルタLPF2の組み合わせにより構成され、通過周波数帯域f2は下側遮断周波数f2CLと上側遮断周波数f2CHの間に制限されている(f2CL≦f2≦f2CH)。
第1バンドパスフィルタ2および第2バンドパスフィルタ4には、それぞれ直流モータ91の電機子電流Imに相当する波形が入力され、フィルタリング後の第1リップル波形Ir1および第2リップル波形Ir2が出力される。
第1リップル周期検出部3は、第1バンドパスフィルタ2から出力された第1リップル波形Ir1に基づいて第1リップル周期Tr1を求めるとともに、リップル抜けおよびリップル増しの有無の判定を行うものである。第1リップル周期検出部3は、図略のリップル周期演算手段、リップル抜け補正手段 リップル増し補正手段、配列作成更新手段、配列要素並べ替え手段、および中央選択平均値演算手段の各機能手段を有している。
リップル周期演算手段は、第1リップル波形Ir1の極小点からの増加量が通常時の振幅に達するタイミングを逐次検出して、第1パルス信号IP1を出力するようになっている。そして、隣接する第1パルス信号IP1の発生間隔を検出して第1リップル周期Tr1とする。さらに、リップル周期演算手段は、第1リップル周期Tr1を検出した都度、時系列情報として通し番号Nを付与するようになっている。また、リップル抜け補正手段〜中央選択平均値演算手段の各機能は、第2リップル周期検出部5のそれらと同様であり、後述する。
第2リップル周期検出部5は、第2バンドパスフィルタ4から出力された第2リップル波形Ir2に基づいて第2リップル周期Tr2を求めるとともに、リップル抜けおよびリップル増しが発生したときに補正処理を行い、最終的に平均リップル周期Tavを求めるものである。図1に示されるように、第2リップル周期検出部5は、リップル周期演算手段51、リップル抜け補正手段52、リップル増し補正手段53、配列作成更新手段54、配列要素並べ替え手段55、および中央選択平均値演算手段56を有している。
リップル周期演算手段51は、第2リップル波形Ir2がゼロ点閾値Zの負側から正側にクロスする増加方向のゼロクロス点の発生タイミングを逐次検出して、第2パルス信号IP2を出力するようになっている。そして、隣接する第2パルス信号IP2の発生間隔を検出して第2リップル周期Tr2とする。さらに、リップル周期演算手段51は、第2リップル周期Tr2を検出した都度、時系列情報として通し番号Nを付与するようになっている。
リップル抜け補正手段52は、リップル抜けの有無を判断し、リップル抜けが発生したときに補正処理を行う手段である。詳述すると、リップル抜け補正手段52は、後述する平均リップル周期Tavに所定倍率として1.3を乗じた抜け判定値と最新の第2リップル周期Tr2とを比較する。そして、後者が大きいときに第2リップル波形Ir2の電流リップルを検出できないリップル抜けが発生して第2リップル周期Tr2が過大になったと判断する。またこのとき、リップル抜けフラグF22を立てる。さらに、最新のリップル周期Tr2を2で除して求めた抜け補正周期Trh(=Tr2/2)を2個、配列作成更新手段54に受け渡す。
リップル増し補正手段53は、リップル増しの有無を判断し、リップル増しが発生したときに補正処理を行う手段である。詳述すると、リップル増し補正手段53は、平均リップル周期Tavに所定倍率として0.7を乗じた増し判定値と最新の第2リップル周期Tr2とを比較する。そして、後者が小さいときに第2リップル波形Ir2に電流リップルと区別できないノイズが重畳するリップル増しが発生して第2リップル周期Tr2が過小になったと判断する。またこのとき、リップル増しフラグF23を立てる。さらに、最新のリップル周期Tr2と次に検出するリップル周期とを加えて求めた増し補正周期Trbを、配列作成更新手段54に受け渡す。
リップル抜けもリップル増しも発生していないとき、すなわち、最新の第2リップル周期Tr2が平均リップル周期Tavの0.7〜1.3倍の間にあるとき、第2リップル周期Tr2はそのまま配列作成更新手段54に受け渡される。
配列作成更新手段54は、時系列的に連続する12個の第2リップル周期Tr2(i)、i=0〜11を配列要素とする時系列配列を作成および逐次更新する手段である。逐次更新するとは、最新の第2リップル周期Tr2(new)を検出したときに、下式に示される処理を行うことを意味する。すなわち、先頭の配列要素である通し番号Nが最小の最旧の第2リップル周期Tr2(0)を削除し、2番目以降の配列要素を前進させ、配列の末尾に最新の第2リップル周期Tr2(new)を加える。
Tr2(i)=Tr2(i+1) ただし、i=0〜10
Tr2(11)=Tr2(new)
配列要素並べ替え手段55は、時系列配列中の第2リップル周期Tr2(i)を大きさの順番に並べ替えて昇順配列Tr2(k)、k=0〜11を作成する手段である。並べ替えにより、12個の第2リップル周期Tr2(k)は値が小さい順に並んで時系列的な順序はなくなるが、通し番号Nは付帯している。したがって、配列要素並べ替え手段55は、最新の第2リップル周期Tr2(new)を受け取ったときに、最旧の第2リップル周期Tr2(i=0)を削除し、昇順配列中のどこかに最新の第2リップル周期Tr2(new)を割り込ませることで並べ替えを完了できる。
中央選択平均値演算手段56は、下式に示されるように、昇順配列の前後からそれぞれ4個の第2リップル周期を取り除いた後に、残された中央の4個の第2リップル周期Tr2(k)を平均化の母集団として平均値を求め、平均リップル周期Tavとする。
Tav=ΣTr2(k)/4 ただし、k=4〜7
中央選択平均値演算手段56は、求めた平均リップル周期Tavをリップル周波数演算部6に送る。
第1リップル周期検出部3においても、第2リップル周期検出部5と同様に、第1リップル周期Tr1の大小によりリップル抜けおよびリップル増しの有無の判定を行い、これが発生したときにリップル抜けフラグF12およびリップル増しフラグF13を立てる。また、同様の中央選択平均値演算の処理により平均リップル周期を求めて内部処理に使用するが、検出部3の外部へは送らない。
リップル周波数演算部6は、中央選択平均値演算手段56から送られた平均リップル周期Tavの逆数を求めて基本周波数f0とし、遮断周波数制御部7に送る。
遮断周波数制御部7は、基本周波数f0に基づいて、第1バンドパスフィルタ2の下側遮断周波数f1CLおよび上側遮断周波数f1CHを制御し、かつ第2バンドパスフィルタ4の下側遮断周波数f2CLおよび上側遮断周波数f2CHを制御する。具体的には、第1バンドパスフィルタ2において、基本周波数f0が通過周波数帯域f1に入るように制御する。例えば、下側遮断周波数f1CL=基本周波数f0、上側遮断周波数f1=2.4×基本周波数f0、に制御する。また、第2バンドパスフィルタ2において、基本周波数f0が通過周波数帯域f2の下側となるように制御する。例えば、第1バンドパスフィルタ2の2倍の周波数となるように、下側遮断周波数f2CL=2×基本周波数f0、上側遮断周波数f2CH=4.8×基本周波数f0、に制御する。
ここで、第2バンドパスフィルタ2は、第2リップル波形Ir2の基本周波数f0の信号成分を減衰させるが、基本周波数f0より低い周波数、例えば1/2周波数のノイズ成分をさらに減衰させることができる。加えて、第2リップル波形Ir2のゼロ点閾値Z付近における微少な増減振動が減衰されてゼロクロス点の検出が安定する作用もあり、第2リップル周期Tr2を高精度に求めることができる。
なお、遮断周波数制御部7は、起動時にはリップル周波数演算部6から送られた基本周波数f0ではなく、リップル周波数マップから求めた基本周波数f0に基づいて各遮断周波数f1CL、f1CH、f2CL、f2CHを制御する。リップル周波数マップは、直流モータ91に印加する電圧と流れる電流からリップル周波数を求めるようしたものである。したがって、起動時の実際の印加電圧と流れている電流を考慮してリップル周波数を求め、これを基本周波数f0とすることができる。
最終的に、リップル検出装置1は、第1リップル周期Tr1の情報を含む第1パルス信号IP1と、第2リップル周期Tr2の情報を含む第2パルス信号IP2と、4つのフラグF12、F13、F22,F23の情報とをモータ制御CPU99に送出する。モータ制御CPU99は、第1パルス信号IP1および2つのフラグF12,F13の情報から直流モータ91の累積回転量を求め、シートのスライド移動量を把握する。
次に、実施形態のリップル検出装置1の動作について、図2〜図5の処理フロー図を参考にして説明する。図2は、平均リップル周期を用いた遮断周波数制御のメインフローを説明する処理フロー図である。また、図3はメインフロー中の通常時処理を説明する処理フロー図、図4はメインフロー中のリップル抜け判定時処理を説明する処理フロー図、図5はメインフロー中のリップル増し判定時処理を説明する処理フロー図である。
図2のメイン処理のステップM1で、リップル検出装置1は、モータ制御CPU99からのリセット信号を受け付けて動作を開始する。リップル検出装置1は、まずステップM2で装置内を初期化する。具体的には、時系列配列および昇順配列の各配列要素や各フラグF12、F13、F22,F23をクリヤし、各遮断周波数f1CL、f1CH、f2CL、f2CHをデフォルト値に初期設定する。次にステップM3で、新規の第2リップル周期Tr2(new)を検出し、通し番号Nを付与する。次にステップM4で、新規の第2リップル周期Tr2(new)が付帯する通し番号Nが起動時を判定する40に達しているか調査する。通し番号Nが40未満のときは起動時であり、ステップM5でリップル周波数マップから基本周波数f0を決定する。ステップM5の後、ステップM12に移行する。
ステップM4で通し番号Nが40以上のときは、ステップM6で第2リップル周期Tr2(new)が過大になっているか調査する。過大になっているときはステップM8に移行してリップル抜け判定時処理を行い、過大になっていないときはステップM7で第2リップル周期Tr2(new)が過小になっているか調査する。過小になっているときはステップM9に移行してリップル増し判定時処理を行い、過小になっていないときはステップM10で通常時処理を行う。このようにして、第2リップル周期Tr2(new)の大きさにより、ステップM8、M9、M10のいずれかの処理を行う。
ステップM10の通常時処理の詳細は図3に示されており、ステップS11で時系列配列に第2リップル周期Tr2(new)を加えて更新する。次に、ステップS12で昇順配列に第2リップル周期Tr2(new)を加え、並べ替えを行って更新する。次に、ステップS13で、中央選択平均値演算により平均リップル周期Tavを演算した後、メインフローに戻る。
ステップM8のリップル抜け判定時処理の詳細は図4に示されており、ステップS20で抜け補正周期Trhを演算する。次に、ステップS11で時系列配列に抜け補正周期Trhを加えて更新する。次のステップS12およびステップS13は通常時処理と同一であり、平均リップル周期Tavを演算する。また、ステップS24で抜け補正周期Trhによる補正処理を2回繰り返したことを確認した後、メインフローに戻る。
ステップM9のリップル増し判定時処理の詳細は図5に示されており、ステップS30で増し補正周期Trbを演算する。次に、ステップS11で時系列配列に増し補正周期Trbを加えて更新する。次のステップS12およびステップS13は通常時処理と同一であり、平均リップル周期Tavを演算した後、メインフローに戻る。
図2のメインフローに戻り、ステップM11で平均リップル周期Tavの逆数を求めて基本周波数f0とする。次に、ステップM12で基本周波数f0に基づいて各遮断周波数f1CL、f1CH、f2CL、f2CHを制御し、起動時の場合にはステップM5で決定した基本周波数f0に基づいて制御する。ステップM12により遮断周波数制御の1サイクルが終了し、ステップM3に戻って、以降は繰り返し動作する。
次に、上述のように機能構成された実施形態のリップル検出装置1の作用について、図6および図7の実測波形例を参考にして説明する。図6は、実施形態のリップル検出装置1の作用を説明する実測波形例の図である。図6の横軸は共通の時間tを示し、上側のグラフの(1)は直流モータ91の電機子電流Im、(2)は第2パルス信号IP2を示し、中央のグラフの(3)は第2リップル波形Ir2、(4)はゼロ点閾値Zを示し、下側のグラフの(5)は基本周波数f0を示している。また、図7は、図6の実測波形例の一定回転状態の部分を時間的に拡大した図(基本周波数f0は省略)である。
図6において、直流モータ91は時刻t0で起動され、電機子電流Imは増加した後一旦減少し再度増加して概ね一定値の定常状態に落ち着いている。起動時の電機子電流Imの過渡的変化を避けるために、リップル検出装置1は、第2リップル周期Tr2を40個検出した時刻t40以降に、平均リップル周期Tavを有効とするようになっている。つまり、29番目から40番目の第2リップル周期Tr2に中央選択移動平均法を実施して得られた平均リップル周期Tavが初回の有効な値となる。また、電機子電流Imの波形は、電流リップルが重畳して小さく波打っている。この電機子電流Imの波形が第2バンドパスフィルタ4に入力され、フィルタリング後の第2リップル波形Ir2が出力される。
図7に示されるように、第2リップル波形Ir2がゼロ点閾値Zの負側から正側にクロスする増加方向のゼロクロス点で、第2パルス信号IP2が出力される。なお、ゼロ点閾値Zをゼロレベル付近で微調整している理由は、ノイズの影響により第2リップル波形Ir2がゼロレベル付近で増減振動する場合に、多数のゼロクロス点が発生することを防止するためである。第2パルス信号IP2の発生間隔、すなわち第2リップル周期Tr2は、一定回転状態においてもばらつきを有している。また、図6で第2パルス信号IP2に注目すると、図中X1の箇所でリップル抜けが発生し、図中Y1〜Y3の3箇所でリップル増しが発生している。それでも、基本周波数f0は安定している。
実施形態のリップル検出装置1によれば、中央選択移動平均法により第2リップル周期Tr2のばらつきを平均化して平均リップル周期Tavを高精度に求めることができる。また、図6に示されるようにリップル抜けやリップル増しの発生頻度が小さい場合、これらに起因する過大または過小な第2リップル周期Tr2は、平均化の母集団から取り除かれて平均リップル周期Tavに影響を及ぼさない。さらに、リップル抜けやリップル増しの発生頻度が増加しても、リップル抜け補正手段52およびリップル増し補正手段53により影響が低減されて、平均リップル周期Tavを高精度に求めることができる。したがって、図6に示されるように、正確な基本周波数f0を求めることができ、第1および第2バンドパスフィルタ2、4の各遮断周波数f1CL、f1CH、f2CL、f2CHを正確にフィードバック制御できる。また、フィードバック制御された第1バンドパスフィルタ2の正確な第1リップル周期Tr1を用いて、直流モータの累積回転量を高精度に演算できる。
なお、本実施形態では、フィルタ部およびリップル周期検出部を二重系としたが、一重系でも実施できることは当然である。さらに、フィルタ部やリップル周期検出部の構成も実施形態に限定されず、様々な方式を適用できる。
さらになお、配列作成更新手段54、配列要素並べ替え手段55、および中央選択平均値演算手段56による中央選択移動平均法は必須でなく、単純な平均値演算法を用いても、リップル抜け補正手段52およびリップル増し補正手段53の効果は生じる。

また、説明に用いた時系列配列の配列要素数12個、昇順配列中の前後の除去数各4個、平均化の際の母集団の配列要素数4個、起動時の判定数40などの諸数は一例であって、自由に設定できる。例えば、平均化の際の母集団の配列要素数を1〜2個とした場合、平均リップル周期Tavはメジアン(中央値)となり、メジアン検出法も本発明の一応用形態と見なすことができる。さらには、昇順配列中の前後の除去数を同数とすることは確率論の一般的な考え方であるが、リップル抜けが生じやすい場合には過大なリップル周期を多数除去できるように後の除去数を大とし、リップル増しが生じやすい場合には過小なリップル周期を多数除去できるように前の除去数を大とするようにしてもよい。
1:リップル検出装置
2:第1バンドパスフィルタ
HPF1:ハイパスフィルタ LPF1:ローパスフィルタ
3:第1リップル周期検出部
4:第2バンドパスフィルタ
HPF2:ハイパスフィルタ LPF2:ローパスフィルタ
5:第2リップル周期検出部
51:リップル周期演算手段 52:リップル抜け補正手段
53:リップル増し補正手段 54:配列作成更新手段
55:配列要素並べ替え手段 56:中央選択平均値演算手段
6:リップル周波数演算部
7:遮断周波数制御部
91:直流モータ 99:モータ制御CPU
Im:電機子電流
f1CL、f1CH:第1バンドパスフィルタの下側および上側遮断周波数
f2CL、f2CH:第2バンドパスフィルタの下側および上側遮断周波数
Ir1:第1リップル波形 Ir2:第2リップル波形
IP1:第1パルス信号 IP2:第2パルス信号
F22:リップル抜けフラグ F23:リップル増しフラグ
Tr2、Tr2(new):第2リップル周期
Tav:平均リップル周期 f0:基本周波数

Claims (6)

  1. 直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルを抽出してリップル波形を求める遮断周波数可変のフィルタ部と、前記リップル波形に基づいてリップル周期を求めるリップル周期検出部と、前記リップル周期に基づいて前記フィルタ部の前記遮断周波数を制御する遮断周波数制御部と、を備える直流モータのリップル検出装置であって、
    前記リップル周期検出部は、
    前記リップル波形に基づいて逐次前記リップル周期を演算するリップル周期演算手段と、
    前記リップル周期の平均値を求めて平均リップル周期とする平均値演算手段と、
    前記リップル周期演算手段の後段に、前記平均リップル周期に1を越え2未満の所定倍率を乗じた抜け判定値よりも最新のリップル周期が大きいときに、前記リップル波形の前記電流リップルを検出できないリップル抜けが発生したと判断し、前記最新のリップル周期を2で除して求めた抜け補正周期を2個前記平均値演算手段に受け渡すリップル抜け補正手段とを有し、
    前記遮断周波数制御部は、前記平均リップル周期に基づいて前記フィルタ部の前記遮断周波数を制御する、
    ことを特徴とする直流モータのリップル検出装置。
  2. 直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルを抽出してリップル波形を求める遮断周波数可変のフィルタ部と、前記リップル波形に基づいてリップル周期を求めるリップル周期検出部と、前記リップル周期に基づいて前記フィルタ部の前記遮断周波数を制御する遮断周波数制御部と、を備える直流モータのリップル検出装置であって、
    前記リップル周期検出部は、
    前記リップル波形に基づいて逐次前記リップル周期を演算するリップル周期演算手段と、
    前記リップル周期の平均値を求めて平均リップル周期とする平均値演算手段と、
    前記リップル周期演算手段の後段に、前記平均リップル周期に1未満の所定倍率を乗じた増し判定値よりも最新のリップル周期が小さいときに、前記リップル波形に前記電流リップルと区別できないノイズが重畳するリップル増しが発生したと判断し、前記最新のリップル周期と次に検出するリップル周期とを加えて求めた増し補正周期を前記平均値演算手段に受け渡すリップル増し補正手段とを有し、
    前記遮断周波数制御部は、前記平均リップル周期に基づいて前記フィルタ部の前記遮断周波数を制御する、
    ことを特徴とする直流モータのリップル検出装置。
  3. 請求項1において、前記リップル周期検出部は、請求項2に記載の前記リップル増し補正手段をさらに有する、ことを特徴とする直流モータのリップル検出装置。
  4. 請求項1または3において、前記抜け判定値は前記平均リップル周期に1.3倍を乗じた値である、ことを特徴とする直流モータのリップル検出装置。
  5. 請求項2または3において、前記増し判定値は前記平均リップル周期に0.7倍を乗じた値である、ことを特徴とする直流モータのリップル検出装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項において、
    前記リップル抜け補正手段は、前記リップル抜けが発生したと判断したときに、リップル抜けフラグを立て、ならびに/あるいは、
    前記リップル増し補正手段は、前記リップル増しが発生したと判断したときに、リップル増しフラグを立てる、ことを特徴とする直流モータのリップル検出装置。
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