JP5412909B2 - 鉛蓄電池用電極および鉛蓄電池 - Google Patents
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Description
近年、鉛蓄電池の長所である短時間の大電流放電特性の向上、ならびに短所である放電深度の大きいサイクル特性の向上に関して、活性炭を使用した技術が報告されている。
従って、本発明の目的は、従来の鉛蓄電池と比較して、充放電サイクル後でも、優れた入力特性を発揮する鉛蓄電池用電極を提供することである。
[1]電極活物質として鉛含有材料を含む層と電極活物質として多孔性炭素質材料を含む層とを含有する電極活物質層、および集電体からなる鉛蓄電池用電極であって、前記電極活物質層に含有される鉛原子の質量をA、多孔性炭素質材料の質量をBとしたとき、B/(A+B)×100が10〜90%である、鉛蓄電池用電極。
[2]前記多孔性炭素質材料を含む層が、球状複合粒子からなる[2]に記載の鉛蓄電池用電極。
[3]前記球状複合粒子の短軸径をLs、長軸径をLlとしたとき、(Ll−Ls)/{(Ls+Ll)/2}×100が20%以下である[2]に記載の鉛蓄電池用電極。
[4]前記球状複合粒子が、前記多孔性炭素質材料を溶媒に分散してスラリーを得る工程、および前記スラリーを噴霧乾燥する工程により製造されたものである、[2]または[3]に記載の鉛蓄電池用電極。
[5]正極電極と負極電極とをセパレータを介して積層した電極積層体を含み、前記正極電極または負極電極の少なくとも一部に[1]〜[4]のいずれかに記載の鉛蓄電池用電極を使用した鉛蓄電池。
2a:ガラスマイクロファイバーセパレータ
2b:微多孔性ポリエチレンセパレータ
3a:鉛活物質層
3b:多孔性炭素活物質層
4:格子状集電体
多孔性炭素質材料は、電気二重層容量を利用する目的で使用されるため、通常は同じ質量でもより広い面積の界面を形成することが可能な、比表面積の大きいものが好ましい。具体的には、比表面積は30m2/g以上、好ましくは500〜5,000m2/g、より好ましくは1,000〜3,000m2/gの範囲である。
本発明における球状複合粒子とは、多孔性炭素質材料、および後述する含まれていてよい材料等、複数の材料が球状に一体化した粒子を指す。前記球状複合粒子は、多孔性炭素質材料、および後述する含まれていてよい材料等、複数の材料が集合して球状を形成していればよく、多孔性炭素質材料、および後述する含まれていてよい材料等は必ずしも球状である必要はない。複合粒子が球状であるか否かの評価は、球状複合粒子の短軸径をLs、長軸径をLlとしたときに(Ll−Ls)/{(Ls+Ll)/2}×100で算出される値(以下、「球状度」という。)により行う。ここで、短軸径Lsおよび長軸径Llは、反射型電子顕微鏡を用いて複合粒子を観察した写真像より測定される100ケの任意の複合粒子についての平均値である。この数値が小さいほど球状複合粒子が真球に近いことを示す。
前記球状複合粒子は、鉛含有材料を含んでいてもよい。発明における鉛含有材料とは、二酸化鉛や鉛などの、通常の鉛蓄電池の活物質として使用される鉛および鉛化合物を指す。鉛含有材料の具体的な例としては、上記の二酸化鉛、鉛のほか、一酸化鉛、三酸化二鉛、四酸化三鉛(鉛丹)、硫酸鉛などが挙げられる。これらの鉛含有材料は、単独でまたは混合物を適宜選択して使用することができる。正極用電極に用いられる鉛含有材料としては二酸化鉛または一酸化鉛が好ましく、負極用電極に用いられる鉛含有材料としては一酸化鉛または鉛が好ましい。
スラリーを得る工程においては、上記の多孔性炭素質材料、ならびに必要に応じて添加される導電剤、結着剤、分散剤、およびその他の添加剤を溶媒に分散または溶解して、これらが分散または溶解されてなるスラリーを得る。
次に、前記スラリーを噴霧乾燥して造粒する。噴霧乾燥法は、熱風中にスラリーを噴霧して乾燥する方法である。スラリーの噴霧に用いる装置としてアトマイザーが挙げられる。アトマイザーは、回転円盤方式と加圧方式との二種類の装置がある。回転円盤方式は、高速回転する円盤のほぼ中央にスラリーを導入し、円盤の遠心力によってスラリーが円盤の外に放たれ、その際にスラリーを霧状にする方式である。円盤の回転速度は円盤の大きさに依存するが、通常は5,000〜30,000rpm、好ましくは15,000〜30,000rpmである。円盤の回転速度が低いほど、噴霧液滴が大きくなり、球状複合粒子の一次平均体積粒子径が大きくなる。回転円盤方式のアトマイザーとしては、ピン型とベーン型が挙げられるが、好ましくはピン型アトマイザーである。ピン型アトマイザーは、噴霧盤を用いた遠心式の噴霧装置の一種であり、該噴霧盤が上下取付円板の間にその周縁に沿ったほぼ同心円上に着脱自在に複数の噴霧用コロを取り付けたもので構成されている。スラリーは噴霧盤中央から導入され、遠心力によって噴霧用コロに付着し、コロ表面を外側へと移動し、最後にコロ表面から離れ噴霧される。一方、加圧方式は、スラリーを加圧してノズルから霧状にして乾燥する方式である。
球状複合粒子層の形成は、集電体上または別の層上に球状複合粒子を散布して加圧成形してもよく、球状複合粒子を加圧成形して単独のシート状活物質層に成形してから集電体上に貼り合せてもよい。
鉛活物質層の形成方法は、従来より知られる鉛蓄電池用電極の製造における方法と同様であり、鉛含有材料に溶媒、添加剤を加えてペーストを作製し格子状集電体上に充填させて形成することができる。
鉛活物質層と多孔性炭素活物質層は、電気的に導通がとれている必要がある。そのため、これらの層は加圧接着することが好ましい。例えば、上記の鉛活物質層の形成方法によって格子状集電体に充填された鉛活物質層の上に、球状複合粒子を均一に散布してから加圧成形してもよいし、上記の単独シート状多孔性炭素活物質層を成形してから加圧成形させてもよい。
本発明で使用される集電体は、電極活物質である多孔性炭素質材料および鉛含有材料と鉛蓄電池外との電気的導通をとるためのものである。集電体としては、板状、箔状、クラッド式と呼ばれる多孔性チューブの中心に鉛合金芯金を挿入したもの、および格子状集電体などが挙げられる。中でも、電極活物質層の維持と集電性に優れる点から格子状集電体が好ましい。格子状集電体としては、標準格子、ラジアル格子、エキスパンド式のいずれも使用できる。
本発明の鉛蓄電池で使用されるセパレータとしては、従来より知られた抄紙、微多孔性ポリエチレン、微多孔性ポリプロピレン、微多孔性ゴム、リテイナーマット、ガラスマット、などのセパレータを1つまたは複数組み合わせて使用することができる。
本発明の鉛蓄電池で使用される電解液は通常、硫酸水溶液が使用される。充放電状態によって硫酸の密度は変動するが、鉛蓄電池を化成処理後、満充電の状態で密度1.25〜1.30g/cm3(20℃)であることが好ましい。
本発明の鉛蓄電池において、セパレータを介して正極と負極が対向するように配置された電極対と電解液を収納する電槽及びふたは、従来より知られたものを使用することができる。具体的には、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を原料とするものが使用できる。
従来より知られた鉛蓄電池と同様に、上述の複数の電極対からなり正極同士および負極同士のそれぞれを短絡させた構造である鉛蓄電池を複数用意して直列に接続することができる。このようにすることで鉛蓄電池の全体の起電力を大きくすることができる。直列に接続するために電槽を複数用意する必要はなく、1つの電槽の中に複数の仕切りを設け、その仕切り毎に上述の電極対を収納し、それを直列接続すれば、一体化した起電力の高い鉛蓄電池を作製することができる。
(球状度)
球状複合粒子の球状度の評価は、以下の方法により行う。
得られる球状複合粒子を反射型電子顕微鏡を用いて球状複合粒子を観察した写真像より測定される100ケの任意の球状複合粒子について、短軸径をLs、長軸径をLlとし、(Ll−Ls)/{(Ls+Ll)/2}×100の計算式よりそれぞれ球状度(%)を求め、得られた100個の平均値を観察した球状複合粒子の球状度(%)とする。この数値が小さいほど球状複合粒子が真球に近いことを表す。
球状複合粒子の平均粒子径測定は、島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3100および専用噴射方乾式測定ユニットDS−21を用いて、23℃にて測定する体積粒度分布を元に累積頻度50%の粒子径を平均粒子径とする。
積層鉛蓄電池を25℃で充電電圧2.2VからSOC70%まで2CAの電流で充放電を10回繰り返し、最後の放電状態から10CAで充電したときの0.2秒後の電圧を測定し、10CAで放電する直前の電圧との差を比較例1に対する相対値として表したものをサイクル後の出力特性とする。ここで、SOC70%とは、鉛蓄電池の満充電時の容量を100%として、70%の容量が残っている状態を指し、2CAおよび10CAとは、作製した蓄電池の容量をそれぞれ1/2時間、1/10時間で放電するための電流量のことを指す。電圧値の差が小さいほど大電流充電の受入が優れていることを示す。
(正極電極作製)
鉛含有材料として酸化鉛100部にイオン交換水10部、比重1.27の希硫酸10部を加えて混合し、正極用活物質合剤ペーストを製造する。このペーストを鉛−カルシウム合金からなる格子状集電体(100mm×100mm×3mm)に充填した後、40℃、湿度95%の雰囲気で24時間熟成し、乾燥することで未化成の正極電極を作製する。この正極電極のB/(A+B)×100は0%である。
鉛含有材料として酸化鉛100部に導電剤のカーボンブラック0.3部、硫酸バリウム0.3部、イオン交換水10部、比重1.36の希硫酸を10部添加、混合しペーストを得る。得られるペーストを定間隙ロールに通して厚さ1,500μmのシート状酸化鉛ペーストとする。このシート状酸化鉛ペーストを、鉛−カルシウム合金からなる格子状集電体(100mm×100mm×3mm)に充填し、鉛活物質層を形成する。
シート状酸化鉛ペーストの厚さを1,000μmとし、得られる球状複合粒子をロール加圧成形する成形速度を3m/分として厚さ2,000μmのシート成形物を得る以外は、実施例1と同様にして負極電極、および鉛蓄電池を得る。この負極電極のB/(A+B)×100を計算すると、24.2%である。この鉛蓄電池の充放電サイクル後の入力特性を評価する。
シート状酸化鉛ペーストの厚さを500μmとし、得られる球状複合粒子をロール加圧成形する成形速度を2m/分として厚さ2,500μmのシート成形物を得る以外は、実施例1と同様にして負極電極、および鉛蓄電池を得る。この負極電極のB/(A+B)×100を計算すると、44.3%である。この鉛蓄電池の充放電サイクル後の入力特性を評価する。
シート状酸化鉛ペーストの厚さを100μmとし、、球状複合粒子の作製に用いる結着剤として、ポリクロロプレンの水分散体に変えてポリテトラフルオロエチレンの水分散体を用い、得られる球状複合粒子をロール加圧成形する成形速度を1.3m/分として厚さ2,900μmのシート成形物を得る以外は、実施例1と同様にして負極電極、および鉛蓄電池を得る。この負極電極のB/(A+B)×100を計算すると、82.2%である。この鉛蓄電池の充放電サイクル後の入力特性を評価する。
酸化鉛100部、ポリエステル繊維0.060部、硫酸バリウム0.493部、カーボンブラック0.026部、密度1.400(20℃)の希硫酸7.98部、水11部を混
合し、これを格子状集電体(100mm×100mm×3mm)に厚さ1,720μmになるように充填する。60m2/gの比表面積を有するカーボンブラック20部とカルボキシメチルセルロース7.5部、ポリクロロプレン7.5部、2,000m2/gの比表面積を有する活性炭(クラレケミカル社製)65部との混合物に水を加え、これをペーストコーティングにて前記格子状集電体の一面に厚さ1,280μmになるようにコーティングして負極電極を得る。得られる負極電極のB/(A+B)×100は、7.8%である。この負極を用いる以外は、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製し、この鉛蓄電池の充放電サイクル後の入力特性を評価する。
比表面積1,700m2/gの活性炭粉末92部、粉末ポリエチレン8部を混合し、格子状集電体(100mm×100mm×3mm)に厚さ3,000μmになるように充填し、焼結することにより負極電極を得る。得られる負極電極のB/(A+B)×100は、100%である。この負極電極を用いる以外は、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製し、この鉛蓄電池の充放電サイクル後の入力特性を評価する。
Claims (5)
- 電極活物質として鉛含有材料を含む層と電極活物質として多孔性炭素質材料を含む層とを含有する電極活物質層、および集電体からなる鉛蓄電池用電極であって、
前記電極活物質層に含有される鉛原子の質量をA、多孔性炭素質材料の質量をBとしたとき、B/(A+B)×100が10〜90%である、鉛蓄電池用電極。 - 前記多孔性炭素質材料を含む層が、球状複合粒子からなる請求項1に記載の鉛蓄電池用電極。
- 前記球状複合粒子の短軸径をLs、長軸径をLlとしたとき、(Ll−Ls)/{(Ls+Ll)/2}×100が20%以下である請求項2に記載の鉛蓄電池用電極。
- 前記球状複合粒子が、前記多孔性炭素質材料を溶媒に分散してスラリーを得る工程、および前記スラリーを噴霧乾燥する工程により製造されたものであることを特徴とする、請求項2または3に記載の鉛蓄電池用電極。
- 正極電極と負極電極とをセパレータを介して積層した電極積層体を含み、前記正極電極または負極電極の少なくとも一部に請求項1〜4のいずれかに記載の鉛蓄電池用電極を使用した鉛蓄電池。
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