JP2015219973A - 鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法及び鉛蓄電池用電極 - Google Patents

鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法及び鉛蓄電池用電極 Download PDF

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Abstract

【課題】 強度に優れた鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層及び抵抗が小さい鉛蓄電池を得ることができる鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法を提供する。
【解決手段】 活性炭、導電材および結着材を含む複合粒子であって、前記結着材を前記活性炭の重量に対して2wt.%以上20wt.%未満含む複合粒子を造粒する造粒工程と、前記複合粒子を厚さ10μm以上70μm未満の水溶性フィルム上に供給する供給工程と、前記水溶性フィルム上に複合粒子をシート成形する成形工程とを含む。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鉛蓄電池に用いられる鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法及びこの鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層を用いた鉛蓄電池用電極に関するものである。
正極活物質として二酸化鉛、負極活物質として鉛を使用し、電解液に硫酸を使用した鉛蓄電池は、他の二次電池と比較して安価で大電流放電に適することから多くの産業にて使用されており、リチウムイオン二次電池等の高容量二次電池が隆盛を誇る今日もその重要性は失われておらず、現在でも鉛蓄電池性能向上の検討が精力的に行われている。
近年、鉛蓄電池の長所である短時間の大電流放電特性の向上、ならびに短所である放電深度の大きいサイクル特性の向上に関して、活性炭を使用した技術が報告されている。
例えば、鉛蓄電池の充電速度を速めたり、放電深度の改善のためにキャパシタ電極組成物層を設けたりすることが行われている。
特許文献1においては、鉛電極上にキャパシタ電極組成物層形成用のスラリーを塗工することにより、キャパシタ電極組成物層を形成している。また、特許文献2においては、活性炭等のキャパシタ電極活物質及び結着材等を含んでなる複合粒子を用いて乾式成形によりキャパシタ電極組成物層を形成している。
特開2011−71110号公報 特開2010−192417号公報
しかし、特許文献1のようにスラリーを塗工し乾燥させることによりキャパシタ電極組成物層を形成すると、結着材のマイグレーションが起こるため、得られる鉛蓄電池の抵抗が増加する。また、特許文献2のように乾式成形によりキャパシタ電極組成物層を形成する場合には、得られるキャパシタ電極組成物層の強度が求められる。
本発明の目的は、強度に優れた鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層及び抵抗が小さい鉛蓄電池を得ることができる鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法及びこの鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層を用いた鉛蓄電池用電極を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、水溶性フィルムを用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、
(1) 活性炭、導電材および結着材を含む複合粒子であって、前記結着材を前記活性炭の重量に対して2wt.%以上20wt.%未満含む複合粒子を造粒する造粒工程と、前記複合粒子を厚さ10μm以上70μm未満の水溶性フィルム上に供給する供給工程と、前記水溶性フィルム上に複合粒子をシート成形する成形工程とを含む鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法、
(2) 前記供給工程で用いる水溶性フィルムは、水が塗布された水溶性フィルムである(1)記載の鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法、
(3) 前記複合粒子は、前記活性炭の重量に対して水を5wt.%以上40wt.%未満含む(1)または(2)記載の鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法、
(4) (1)〜(3)の何れかに記載の鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法により製造された鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層を含む鉛蓄電池用電極
が提供される。
本発明によれば、強度に優れた鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層及び抵抗が小さい鉛蓄電池を得ることができる鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法及びこの鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層を用いた鉛蓄電池用電極が提供される。
本発明の供給工程及び成形工程を示す概略図である。
以下、図面を参照して本発明の鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法について説明する。本発明の鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法は、活性炭、導電材および結着材を含む複合粒子であって、前記結着材を前記活性炭の重量に対して2wt.%以上20wt.%未満含む複合粒子を造粒する造粒工程と、前記複合粒子を水溶性フィルム上に供給する供給工程と、前記水溶性フィルム上に複合粒子をシート成形する成形工程とを含む。
(造粒工程)
本発明の造粒工程においては、活性炭、導電材および結着材を含む複合粒子を造粒する。また、複合粒子は、水および分散剤等のその他の成分を含んでいてもよい。複合粒子を用いることにより、得られる鉛蓄電池用電極の電極強度を高くしたり、内部抵抗を低減したりすることができる。ここで、複合粒子とは、活性炭、導電材、結着材、水および分散剤等のその他の成分等、複数の材料が一体化した粒子をさす。また、好適に用いることができる複合粒子は、活性炭、導電材、結着材、水および分散剤等のその他の成分を用いて造粒することにより製造される。
(導電材)
本発明に用いる導電材は、導電性を有し、電気二重層を形成し得る細孔を有さない粒子状の炭素の同素体からなり、具体的には、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベル ケミカルズ ベスローテン フェンノートシャップ社の登録商標)などのカーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックが好ましい。
本発明に用いる導電材の体積平均粒子径は、活性炭の体積平均粒子径よりも小さいものが好ましく、より少ない使用量で高い導電性が得られる観点から、好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.005〜5μm、さらに好ましくは0.01〜1μmである。これらの導電材は、単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
導電材の量は、複合粒子中の活性炭の重量に対して好ましくは0.1wt.%以上50wt.%未満、より好ましくは0.5wt.%以上15wt.%未満、さらに好ましくは1wt.%以上10wt.%未満である。
複合粒子中の導電材の量が多すぎると、得られる鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の容量が低下する。また、複合粒子中の導電材の量が少なすぎると、得られる鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の抵抗が増加する。
(結着材)
本発明に用いる結着材は、活性炭や導電材を相互に結着させることができる化合物であれば特に制限はない。好適な結着材は、溶媒に分散する性質のある分散型結着材である。分散型結着材として、例えば、フッ素重合体、ジエン重合体、アクリル重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン重合体等の高分子化合物が挙げられ、ジエン重合体、アクリル重合体が好ましい。
ジエン重合体は、共役ジエンの単独重合体もしくは共役ジエンを含む単量体混合物を重合して得られる共重合体、またはそれらの水素添加物である。ジエン重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエン単独重合体;カルボキシ変性されていてもよいスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル・共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)などのシアン化ビニル・共役ジエン共重合体;水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。
アクリル重合体は、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの単独重合体またはこれらと共重合可能な単量体を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体である。前記共重合可能な単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステル類;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基含有化合物等が挙げられる。
これらのなかでも、活性炭や導電材とともに複合粒子にして乾式成形を行う場合の強度の観点から、ジエン重合体を用いることが好ましく、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(以下、「NBR」と記載することがある。)を用いることがより好ましい。また、前記アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を用いる場合における結着材中の1,3−ブタジエン単量体単位の比率は、40〜75重量%であることが好ましく、45〜75重量%であることがより好ましい。また、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を用いる場合における結着材中のアクリロニトリル単量体単位の比率は、20〜60重量%であることが好ましく、20〜45重量%であることがより好ましい。
アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、1,3−ブタジエンおよびアクリロニトリルの他に、さらにアクリル酸やメタクリル酸等の上述の不飽和カルボン酸類の単量体単位を含むことが好ましい。不飽和カルボン酸類としては、メタクリル酸が好ましい。この場合において、結着材中の、不飽和カルボン酸類の単量体の比率は、下限は3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、上限は39重量%以下であることが好ましく、35重量%以下であることがより好ましい。
本発明に用いる結着材のガラス転移温度(以下、「Tg」という)は、好ましくは−40〜+40℃、より好ましくは−30〜+30℃である。結着材のTgが高すぎると得られる鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層が柔軟性に劣り、結着材のTgが低すぎると鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の形成が困難となる。なお、結着材は融点を有するものであってもよい。
結着材の形状は、結着性の向上、鉛蓄電池の容量の低下、および鉛蓄電池用電極の抵抗の増大を最小限に抑えるために、粒子状であることが最も好ましく、例えば、ラテックスのような結着材樹脂の粒子が溶媒に分散した状態のものや、このような分散液を乾燥して得られる粉末状のものが挙げられる。
結着材の粒子径は特に限定されないが、体積平均粒子径で、100〜500nmであることが好ましい。
結着材の製造方法は特に限定されず、所定の比率で各単量体を含む組成物を用いた乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法または溶液重合法等の公知の重合法を採用することができる。中でも、乳化重合法で製造することが、結着材の粒子径の制御が容易であるので好ましい。特に水を主溶媒とした水系での重合法が好ましい。
結着材の量は、複合粒子中の活性炭の重量に対して2wt.%以上20wt.%未満、好ましくは3wt.%以上20wt.%未満、より好ましくは4wt.%以上20wt.%未満である。
複合粒子中の結着材の量が多すぎると、得られる鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の抵抗が増加する。また、複合粒子中の導電材の量が少なすぎると、得られる鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の強度が低下する。
(水)
本発明の複合粒子は、水を含むことが好ましい。複合粒子に含まれる水の量は、複合粒子中の活性炭の重量に対して好ましくは5wt.%以上40wt.%未満、より好ましくは8wt.%以上20wt.%未満である。
複合粒子中の水の量が多すぎると複合粒子の流動性が悪化する。また、複合粒子中の水の量が少なすぎると、得られる鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層に電解液が浸透しにくくなり、さらに、この鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の強度が低下する。
(分散剤)
本発明の複合粒子は、分散剤を含んでいてもよい。分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、キチン、キトサン誘導体などが挙げられる。これらの分散剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、セルロース系ポリマーが好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩が特に好ましい。
複合粒子中の分散剤の量は、複合粒子中の活性炭の重量に対して、好ましくは0.1wt.%以上20wt.%未満、より好ましくは0.5wt.%以上10wt.%未満、さらに好ましくは0.8wt.%以上5wt.%未満である。
(複合粒子の製造)
複合粒子の造粒方法は特に制限されず、噴霧乾燥造粒法、転動層造粒法、圧縮型造粒法、攪拌型造粒法、押出し造粒法、破砕型造粒法、流動層造粒法、流動層多機能型造粒法、および溶融造粒法などの公知の造粒法により製造することができる。中でも、所望の複合粒子を容易に得られるので、噴霧乾燥造粒法、流動層造粒法及び攪拌型造粒法が好ましい。
前記噴霧乾燥造粒法では、まず上記した活性炭、導電材、結着材および分散剤等のその他の成分を溶媒(水)に分散または溶解して、活性炭、導電材、結着材および分散剤等のその他の成分が分散または溶解されてなるスラリーを得る。
スラリーを得るために用いる溶媒は、通常水を用いる。特に限定されないが、上記の分散剤を用いる場合には、分散剤を溶解可能な溶媒が好適に用いられる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、水と有機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルキルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のアルキルケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類;ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類;ジメチルスルホキサイド、スルホラン等のイオウ系溶剤;等が挙げられる。この中でも有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。水と、水よりも沸点の低い有機溶媒とを併用すると、噴霧乾燥時に、乾燥速度を速くすることができる。また、水と併用する有機溶媒の量または種類によって、結着材の分散性または分散剤の溶解性が変わる。これにより、スラリーの粘度や流動性を調整することができ、生産効率を向上させることができる。
スラリーを調製するときに使用する溶媒の量は、結着材を均一に分散させる観点から、スラリーの固形分濃度が好ましくは1wt.%以上50wt.%未満、より好ましくは5wt.%以上50wt.%未満、さらに好ましくは10wt.%以上30wt.%未満となる量である。
活性炭、導電材、結着材および分散剤等のその他の成分とを溶媒(水)に分散または溶解する方法または手順は特に限定されず、例えば、溶媒(水)に、活性炭、導電材、結着材および分散剤等を添加し混合する方法;溶媒(水)に分散剤を溶解した後、溶媒(水)に分散させた結着材(例えば、ラテックス)を添加して混合し、最後に活性炭、導電材を添加して混合する方法;溶媒(水)に分散させた結着材に活性炭および導電材を添加して混合し、この混合物に溶媒に溶解させた分散剤を添加して混合する方法等が挙げられる。混合の手段としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機器が挙げられる。混合は、室温〜80℃で、10分〜数時間行うことが好ましい。
スラリーの粘度は、複合粒子の生産性を上げる観点から、室温において好ましくは10〜3,000mPa・s、より好ましくは30〜1,500mPa・s、さらに好ましくは50〜1,000mPa・sである。なお、スラリーの粘度が高いほど、噴霧液滴が大きくなり、得られる複合粒子の体積平均粒子径が大きくなる。
次に、上記で得たスラリーを噴霧乾燥して造粒し、複合粒子を得る。噴霧乾燥は、熱風中にスラリーを噴霧して乾燥することにより行う。スラリーの噴霧に用いる装置としてアトマイザが挙げられる。アトマイザは、回転円盤方式と加圧方式との二種類の装置がある。回転円盤方式は、高速回転する円盤のほぼ中央にスラリーを導入し、円盤の遠心力によってスラリーが円盤の外に放たれ、その際にスラリーを霧状にする方式である。円盤の回転速度は円盤の大きさに依存するが、好ましくは5,000〜30,000rpm、より好ましくは15,000〜30,000rpmである。円盤の回転速度が低いほど、噴霧液滴が大きくなり、得られる複合粒子の体積平均粒子径が大きくなる。回転円盤方式のアトマイザとしては、ピン型とベーン型が挙げられるが、好ましくはピン型アトマイザである。ピン型アトマイザは、噴霧盤を用いた遠心式の噴霧装置の一種であり、該噴霧盤が上下取付円板の間にその周縁に沿ったほぼ同心円状に着脱自在に複数の噴霧用コロを取り付けたもので構成されている。スラリーは噴霧盤中央から導入され、遠心力によって噴霧用コロに付着し、コロ表面を外側へと移動し、最後にコロ表面から離れ噴霧される。一方、加圧方式は、スラリーを加圧してノズルから霧状にして乾燥する方式である。
噴霧されるスラリーの温度は、通常は室温であるが、加温して室温以上にしたものであってもよい。また、噴霧乾燥時の熱風温度は、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜200℃である。噴霧乾燥において、熱風の吹き込み方法は特に制限されず、例えば、熱風と噴霧方向が横方向に並流する方式、乾燥塔頂部で噴霧され熱風と共に下降する方式、噴霧した滴と熱風が向流接触する方式、噴霧した滴が最初熱風と並流し次いで重力落下して向流接触する方式等が挙げられる。
また、前記攪拌型造粒法、流動層造粒法は、強制的に流動させた活性炭に結着材を散布し造粒を行う方法である。それぞれの方法では、活性炭を流動させる方法が異なり、攪拌型造粒法では、容器内に設けられた攪拌翼などで強制的に原料粉体に流動運動を与える。流動層造粒法は、下から吹き上げる流体中に粉体を浮遊懸濁させた状態に保つ方法で、流動層多機能型造粒法は、攪拌作用、回転容器内部で活性炭及び必要に応じてその他の成分を転動させる転動作用を、流動層造粒法に併用させる方法である。流動している活性炭へ結着材を散布する方法は、特に制限はないが、好ましくは結着材を含む分散液を噴霧する方法である。このようにして凝集造粒することで本発明の複合粒子を得ることができる。活性炭を含む流動層の温度は、通常20〜300℃、好ましくは50〜200℃である。
これらの造粒方法では、導電材及び分散剤等のその他の成分は、活性炭と共に流動していても、結着材と共に活性炭に散布されても良い。導電材及びその他の成分を活性炭と共に流動させる場合は、活性炭の表面に導電材及びその他の成分を予め付着させておくと、比重の異なる材料同士が均一に分散することができるため好ましい。導電材等を活性炭の表面に付着させる方法としては、例えば、活性炭と導電材等とを、圧縮力やせん断力などの機械的外力を加えつつ混合するメカノケミカル処理がある。メカノケミカル処理を行う装置としては、加圧ニーダーや二本ロール等の混練機;回転ボールミルやハイブリダイゼーションシステム((株)奈良機械製作所製)等の高速衝撃式乾式粉体複合化装置;メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン(株)製)などの圧縮せん断式乾式粉体複合化装置;等を使用することができる。また、導電材及びその他の成分を結着材と共に散布する場合は、例えば結着材、導電材及び分散剤を溶剤中で均一に混合し、得られた混合分散液を、活性炭の流動層に噴霧し造粒を行うことができる。
上記の造粒法により、複合粒子が得られる。該複合粒子の体積平均粒子径は、好ましくは50μm以上200μm未満、より好ましくは60μm以上180μm未満である。ここで、複合粒子の体積平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて複合粒子を圧搾空気により加圧噴霧して測定される体積平均粒子径である。複合粒子の体積平均粒子径が大きすぎると水溶性フィルムからなる支持体上に複合粒子を供給する際の、支持体上への複合粒子の目付量の精度が悪化する。また、複合粒子の体積平均粒子径が小さすぎると複合粒子の流動性が不十分となる。
また、複合粒子は、球状であることが好ましい。前記複合粒子が球状であるか否かの評価は、複合粒子の短軸径をLs、長軸径をLlとしたときに(Ll−Ls)/{(Ls+Ll)/2}で算出される値(以下、「球状度」という。)により行う。ここで、短軸径Lsおよび長軸径Llは、反射型電子顕微鏡を用いて複合粒子を観察した写真像より測定される100個の任意の複合粒子についての平均値である。この数値が小さいほど球状の複合粒子が真球に近いことを示す。複合粒子の球状度は、好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。
上記の製造方法で得られる複合粒子は、活性炭、導電材、結着材を含み、好ましくは水を含む。また、分散剤等のその他の成分を含んでいてもよい。また、複合粒子中の結着材の量は、活性炭の重量に対して2wt%以上20wt.%未満、好ましくは3wt.%以上15wt.%未満、より好ましくは4wt.%以上12wt.%未満である。また、複合粒子の水の量は、活性炭の重量に対して好ましくは5wt.%以上40wt.%未満、より好ましくは8wt.%以上20wt.%未満である。
上記の製造方法で得られた複合粒子に対して、必要に応じて粒子製造後の後処理を実施してもよい。具体例としては、複合粒子に上記の活性炭、導電材、結着材あるいは分散剤等と混合することによって、粒子表面を改質して、球状の複合粒子の流動性を向上または低下させる、連続加圧成形性を向上させる、球状の複合粒子の電気伝導性を向上させることなどができる。
(供給工程及び成形工程)
本発明の供給工程においては、前記複合粒子を水溶性フィルム上に供給する。また、本発明の成形工程においては、前記水溶性フィルム上に複合粒子をシート成形する。
水溶性フィルムとしては、オブラート、ポリビニルアルコール等からなるフィルムを用いることができる。また、水溶性フィルムの厚さは、10μm以上70μm未満、好ましくは25μm以上50μm未満である。水溶性フィルムが厚すぎると、得られる鉛蓄電池において電解液中に水溶性フィルムが溶解するため、電解液の粘度が増加する。さらに、抵抗が増大する。また、水溶性フィルムが薄すぎると、得られる鉛蓄電池用電極の強度が不十分となる。
また、水溶性フィルムの幅は特に限定されないが、好ましくは100〜1000mm、より好ましくは100〜500mmである。
供給工程および成形工程は、例えば、図1に示すように行うことができる。図1に示すように、水溶性フィルムからなる支持体14の巻収体をアンワインダー11に取り付け、これを送り出す。次いで、スクリューフィーダー等の供給装置により複合粒子13を水溶性フィルムからなる支持体14上に供給する。
ここで、水溶性フィルムからなる支持体14上に複合粒子13を供給する前に、水溶性フィルムからなる支持体14上に水が塗布されていることが好ましい。
次に、水溶性フィルムからなる支持体14上に供給された複合粒子13は、支持体14と共に略水平に配置された一対のプレス用ロール12に供給される。また、一対のプレス用ロール12により加圧成形することにより、複合粒子をシート状の成形体である鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層(以下、「キャパシタ層」ということがある。)に成形するとともに、これを支持体の面に圧着する。そして、鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層が積層された支持体(支持体付キャパシタ層)をワインダー10で巻き取り、支持体付キャパシタ層の巻収体が得られる。
なお、図1に示す一対のプレス用ロール12は、一対のプレス用ベルトに置き換えてもよい。
また、成形速度は好ましくは0.1〜100m/分、より好ましくは4〜50m/分である。また、ロール間のプレス線圧は、好ましくは0.2〜30kN/cm、より好ましくは1.5〜15kN/cmである。また、プレス用ロールに代えてプレス用ベルトを用いる場合の成形速度は、好ましくは1〜15m/分、より好ましくは5〜10m/分である。また、プレス用ベルト間の圧力は、好ましくは5〜50MPa、より好ましくは10〜30MPaである。
また、シート成形したキャパシタ層の厚さのばらつきをなくし、キャパシタ層の密度を上げて高容量化を図るために、必要に応じてさらに後加圧を行っても良い。後加圧の方法は、ロールプレス工程が一般的である。ロールプレス工程では、2本の円柱状のロールを狭い間隔で平行に上下にならべ、それぞれを反対方向に回転させて、その間に電極をかみこませ加圧する。ロールプレス工程で用いるロールは加熱または冷却等により温度調節されていてもよい。
また、キャパシタ層の密度は、特に制限されないが、好ましくは0.30〜10g/cm3、より好ましくは0.35〜5.0g/cm3、さらに好ましくは0.40〜3.0g/cm3である。また、キャパシタ層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは5〜1000μm、より好ましくは20〜500μm、さらに好ましくは30〜400μmである。
(鉛蓄電池用電極)
鉛蓄電池用電極は、鉛電極とキャパシタ層とを含む。
(鉛電極)
本発明に用いられる鉛電極は、集電体上に鉛活物質層が形成されたものをいう。鉛活物質層は、通常の鉛蓄電池の活物質として使用される鉛、一酸化鉛、二酸化鉛、三酸化二鉛、四酸化三鉛(鉛丹)、硫酸鉛などの、鉛および鉛化合物を主体とする層をさす。これらの鉛および鉛化合物は、単独でまたは混合物を適宜選択して使用することができる。鉛活物質層中の鉛原子が占める割合は、活物質層のエネルギー密度を高めることができる観点から、層全体の重量に対して好ましくは50wt.%以上、より好ましくは70wt.%以上である。
正極活物質層に用いられる鉛含有材料としては二酸化鉛または一酸化鉛が好ましく、負極活物質層に用いられる鉛含有材料としては一酸化鉛または鉛が好ましい。
鉛活物質層は、鉛および鉛化合物の他に、ポリエステル繊維などの強化材、リグニンなどの界面活性剤、硫酸バリウムなどを含んでいてもよい。また、アンチモン、亜鉛、カドミウム、銀およびビスマスの酸化物、水酸化物もしくは硫酸塩から選ばれる添加剤なども使用することができる。さらに、鉛含有材料のペーストを作製して鉛活物質層を形成する場合は、硫酸水溶液を加えることもできる。
集電体としては、板状、箔状、クラッド式と呼ばれる多孔性チューブの中心に鉛合金芯金を挿入したもの、および格子状集電体などが挙げられる。鉛活物質ペーストを保持し、効率的に電流を取り出す形状として最適であるため、格子状集電体が好ましい。格子状集電体としては、標準格子、ラジアル格子、エキスパンド式のいずれも使用できる。
格子状集電体の材質としては、鉛−カルシウム合金、鉛−アンチモン合金、鉛−錫合金等の鉛含有合金が用いられる。前記鉛合金の組成の一部として、砒素、錫、銅、銀、アルミなどを含んでいてもよい。
鉛活物質層は、鉛含有材料に溶媒、添加剤を加えてペーストを作製し、このペーストを格子状集電体上に充填させることにより形成することができる。
例えば格子状集電体を用いる場合、格子状集電体の格子平面の一部に鉛活物質層を形成する、格子状集電体の格子全面に鉛活物質層を形成する、などが挙げられる。
本発明において、鉛電極は、鉛活物質層の上に接着剤層を有するものであってもよい。接着剤層を設けることで、キャパシタ層と鉛活物質層との密着性が向上し、接触抵抗を低減できる。
接着剤層はフィラーを必須成分として、結着材や分散剤などの任意成分を含む。フィラーとしては、公知のものを使用することができ、具体的には導電性フィラー、金属酸化物フィラーが挙げられる。これらの中でも、導電性フィラーを用いることが好ましい。
(鉛蓄電池用電極の製造方法)
鉛活物質層とキャパシタ層は、電気的に導通がとれている必要がある。そのため、これらの層は加圧接着することが好ましい。例えば、上記の鉛活物質層の形成方法によって格子状集電体に充填された鉛活物質層の上に、キャパシタ層を加圧成形する。例えば、支持体付キャパシタ層のキャパシタ層側が鉛活物質層に対向するように配置して加圧することにより、鉛活物質層とキャパシタ層との加圧接着を行う。
鉛蓄電池用電極の製造方法は特に制限されないが、水溶性フィルムからなる支持体を含む支持体付キャパシタ層の鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層を鉛電極に貼り合わせる工程により製造することが好ましい。
支持体付キャパシタ層のキャパシタ層を鉛電極に貼り合わせる際の線圧は、特に制限されないが、鉛電極上にキャパシタ層を均一に貼り合わせることができ、得られる鉛蓄電池用電極の強度に優れる観点から、好ましくは50〜2,000kN/m、より好ましくは100〜1,000kN/m、さらに好ましくは200〜500kN/mである。
支持体付キャパシタ層のキャパシタ層を鉛電極に貼り合わせる際に、圧着と同時に熱を加え(熱プレス)てもよい。熱プレス法としては、具体的には、バッチ式熱プレス、連続式熱ロールプレスなどが挙げられ、生産性が高められる連続式熱ロールプレスが好ましい。熱プレスの温度は、特に制限されないが、鉛電極上にキャパシタ層をより均一に貼り合わせることができ、電極強度に優れる観点から、好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜150℃である。
本発明においては支持体として水溶性フィルムを用いるため、支持体付キャパシタ層を鉛電極に貼り合わせた後に支持体をキャパシタ層から剥離する必要がなく、支持体付キャパシタ層を鉛電極に貼り合わせものをそのまま鉛蓄電池用電極として使用することができる。
(鉛蓄電池)
上記のように製造されたキャパシタ層を有する鉛蓄電池用電極を正極または負極の少なくとも一方に用いることにより鉛蓄電池を製造することができる。即ち、鉛蓄電池は、正極と負極と、正極と負極の間に配置されるセパレータと、電解液とを含み、本発明においては、正極または負極の少なくとも一方が、キャパシタ層を有する鉛蓄電池用電極である。
鉛蓄電池は通常、セパレータを介して正極と負極が対向するように配置され、正極および負極の少なくとも一方がキャパシタ層を有する鉛蓄電池用電極である構造を複数対有しており、正極同士、または負極同士はそれぞれ電気的に短絡された構造である。このような構造とすることにより、鉛蓄電池の容量を大きくすることができる。
鉛蓄電池において、上述した以外の構成要素としては、上述の構成要素を収納する電槽及びふたが挙げられる。
(セパレータ)
鉛蓄電池で使用されるセパレータとしては、抄紙、微多孔性ポリエチレン、微多孔性ポリプロピレン、微多孔性ゴム、リテイナーマット、ガラスマット、などのセパレータを1つまたは複数組み合わせて使用することができる。
(電解液)
鉛蓄電池で使用される電解液は通常、硫酸が使用される。充放電状態によって硫酸の密度は変動するが、鉛蓄電池を化成処理後、満充電の状態で密度1.25〜1.30g/cm3(20℃)であることが好ましい。
(電槽、ふた)
鉛蓄電池において、正極、負極、セパレータおよび電解液を収納する電槽及びふたとしては、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を原料とするものを使用することができる。
(組電池)
上述のようにセパレータを介して正極と負極が対向するように配置され、正極とセパレータとの間および負極とセパレータとの間の少なくとも一方に上述の鉛蓄電池用キャパシタ電極が配置された構造を複数対有し、正極同士および負極同士のそれぞれを短絡させた構造である鉛蓄電池を複数用意して直列に接続することができる。このようにすることで鉛蓄電池の全体の起電力を大きくすることができる。直列に接続するために電槽を複数用意する必要はなく、1つの電槽の中に複数の仕切りを設け、その仕切り毎に上述の正極、負極、セパレータおよび鉛蓄電池用キャパシタ電極を含む構造を収納し、それを直列接続すれば、一体化した起電力の高い鉛蓄電池を作製することができる。
本発明の鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法及びこの鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層を用いた鉛蓄電池用電極によれば、強度に優れた鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層及び抵抗が小さい鉛蓄電池を得ることができる。また、寿命の長い鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層及び鉛蓄電池を得ることができる。
また、本発明によれば、紙よりも強度の強い水溶性フィルムを支持体として用いるため、キャパシタ層の成形性に優れる。また、支持体として紙を用いる場合にはキャパシタ層と支持体とを接着性向上のために支持体上に接着剤を塗布することが好ましいが、本発明のように支持体として水溶性フィルムを支持体としても用いる場合には、水により容易に接着性を付与することができる。
また、本発明によれば、支持体としてのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に一旦キャパシタ層を成形し、その後キャパシタ層を支持体としての紙に転写する場合と比較して、工程を簡略化することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における部および%は、特記しない限り重量基準である。
実施例および比較例において、キャパシタ層の強度および内部抵抗の判定は、以下のように行った。
(キャパシタ層の強度)
実施例および比較例において得られたキャパシタ層について、JIS K6251に準じて測定した。具体的には、実施例および比較例で得られた支持体付キャパシタ層から支持体を剥離し、160℃で40分乾燥した。その後1号形のダンベル状試験片の形状に打ち抜き、雰囲気温度25℃にて引張速度10mm/分で引張試験を行い、破断時の最大荷重を測定した。この測定を6回繰り返し、最大荷重の平均値をシートの断面積で除した値をこのキャパシタ層の引張り強度とし、以下の基準により評価した。結果を表1に示した。
キャパシタ層の引張り強度が大きいほど、亀裂、破壊が生じにくく、形状保持性に優れることを示す。
A:0.7MPa以上
B:0.5MPa以上0.7MPa未満
C:0.3MPa以上0.5MPa未満
D:0.3MPa未満
(内部抵抗)
実施例および比較例において得られたキャパシタ層を、直径12mmの円形状に打ち抜いた。このキャパシタ層およびガラスファイバー製セパレータを十分電解液に含浸させ、次いで2枚のキャパシタ電極を、セパレータを介して対向させ、それぞれのキャパシタ電極が電気的に接触しないように配置して、電気二重層キャパシタを作製した。電解液には硫酸を用いた。
この電気二重層キャパシタの充放電試験を行うことにより内部抵抗を求めた。即ち、充電電流は、電極の単位面積あたりの電流値が6.6mA/cm2となる電流値を用いて行い、電圧が1.0Vに達したら、10分間その電圧を保って定電圧充電とし、充電を完了した。次いで、充電終了直後に定電流放電を充電時に用いたのと同様な電流値で0Vに達するまで行う。静電容量は放電時の電力量からエネルギー換算法を用いて算出した。
次に、この静電容量を用いて、電気二重層キャパシタの充放電速度が一定になるように10mA/Fの定電流で充電を開始し、定電流充電と定電圧充電の充電時間を合わせて20分間行った時点で充電完了とし、さらに、充電終了直後に定電流放電を充電時に用いたのと同様な電流値で0Vに達するまで行った。
内部抵抗は、放電開始から所定時間までの電圧データの最小二乗法による近似曲線の外挿からもとめた放電開始時電圧降下量を放電電流値で除した値とし、体積当たりの抵抗率、すなわち体積抵抗率として表し、以下の基準により評価した。但し、所定時間は全放電時間の10%とした。結果を表1に示した。
A:0.6Ω未満
B:0.6以上0.8Ω未満
C:0.8以上1.0Ω未満
D:1.0Ω以上
(実施例1)
(複合粒子の作製)
キャパシタ電極活物質として比表面積が2,200m2/gで重量平均粒子径が5μmの石油ピッチ由来の高純度活性炭粉末を100部、導電材としてアセチレンブラック(商品名「デンカブラック粉状」:電気化学工業社製)を5部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1.5%水溶液(商品名「WS−C」:ダイセル化学工業社製)を固形分相当量で1.4部、結着材としてアクリル重合体のラテックスを固形分相当量で8部混合し、さらにイオン交換水を固形分濃度が20%となるように加え、混合分散を行い、スラリーを得た。
このスラリーを、スプレー乾燥機(大川原化工機社製)を使用し、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)の回転数25,000rpm、熱風温度160℃、粒子回収出口の温度が90℃で噴霧乾燥造粒を行い、球状の複合粒子を得た。この複合粒子の平均体積粒子径は80μmであり、複合粒子中の水の量は、活性炭の重量に対して8%であった。
(鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製)
得られた複合粒子を、表面に水を塗布したポリビニルアルコール(以下、「PVA」ということがある。)からなる水溶性フィルム(厚さ25μm)の上に供給し、一対のロールを用いて、成形速度20m/分、プレス線圧5.0kN/cm(500kN/m)の条件にて加圧成形を行った。これにより厚さ200μm、密度0.54g/cm3のキャパシタ層を備える支持体付キャパシタ層を得た。
(鉛電極の作製)
鉛含有材料として酸化鉛100部に、導電材としてのカーボンブラック0.3部、硫酸バリウム0.3部、イオン交換水10部、比重1.36の希硫酸を10部添加、混合し、ペーストを得た。得られたペーストを、鉛−カルシウム合金からなる格子状集電体(100mm×100mm×3mm)に充填し、鉛電極を作製した。
(鉛蓄電池用電極の作製)
支持体付キャパシタ層のキャパシタ層側が鉛電極に対向するように配置し、バッチプレスにて100℃、2MPaで加圧圧着し、鉛蓄電池用電極を作製した。
(実施例2)
複合粒子を作製する際に用いるスラリー中の結着材の量を固形分相当で15部とした以外は、実施例1と同様に複合粒子の作製を行った。また、この複合粒子を用いて実施例1と同様に鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製、鉛蓄電池用電極の作製を行った。
(実施例3)
複合粒子を作製する際に用いるスラリー中の結着材の量を固形分相当で3部とした以外は、実施例1と同様に複合粒子の作製を行った。また、この複合粒子を用いて実施例1と同様に鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製、鉛蓄電池用電極の作製を行った。
(実施例4)
鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製に用いる水溶性フィルムの厚さを60μmに変更した以外は、実施例1と同様に複合粒子の作製、鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製および鉛蓄電池用電極の作製を行った。
(実施例5)
(複合粒子の作製)
導電材としてアセチレンブラック(商品名「デンカブラック粉状」:電気化学工業社製)を5部、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(商品名「WS−C」:ダイセル化学工業社製)の2%水溶液を70部、結着材としてアクリル重合体のラテックスを固形分相当量で8部混合し、さらに水30部を加えて、プラネタリーミキサーで混合して混合液(I)を得た。
次に、電極活物質として比表面積が2,200m2/gで重量平均粒子径が5μmの石油ピッチ由来の高純度活性炭粉末100部を流動層造粒機(アグロマスタ;ホソカワミクロン社製)に供給し、80℃の気流中で前記混合液(I)を10分かけて噴霧乾燥し、粒子径80μmの混合物粒子を得た。複合粒子中の水の量は、活性炭の重量に対して15%であった。
そして、鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製において水溶性フィルムの表面に水を塗布せずに、水溶性フィルム上に複合粒子を供給した以外は、実施例1と同様に鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製および鉛蓄電池用電極の作製を行った。
(比較例1)
複合粒子を作製する際に用いるスラリー中の結着材の量を固形分相当で25部とした以外は、実施例1と同様に複合粒子の作製を行った。また、この複合粒子を用いて実施例1と同様に鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製、鉛蓄電池用電極の作製を行った。
(比較例2)
複合粒子を作製する際に用いるスラリー中の結着材の量を固形分相当で1部とした以外は、実施例1と同様に複合粒子の作製を行った。また、この複合粒子を用いて実施例1と同様に鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製、鉛蓄電池用電極の作製を行った。
(比較例3)
鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製に用いる水溶性フィルムに代えて、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなるフィルム(厚さ25μm)を用いた以外は、実施例1と同様に複合粒子の作製を行った。また、この複合粒子を用いて鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製を行ったが、キャパシタ層と支持体とを接着させることができなかった。
(比較例4)
鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製に用いる水溶性フィルムの厚さを75μmに変更した以外は、実施例1と同様に複合粒子の作製、鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の作製および鉛蓄電池用電極の作製を行った。
(比較例5)
複合粒子の作製に用いるためのスラリーを用いた複合粒子の作製を行わずに、このスラリーをPVAからなる水溶性フィルム上に塗布した。この場合には、水溶性フィルムが溶解するため、鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層を作製することができなかった。
Figure 2015219973
表1に示すように、活性炭、導電材および結着材を含む複合粒子であって、前記結着材を前記活性炭の重量に対して2wt.%以上20wt.%未満含む複合粒子を造粒する造粒工程と、前記複合粒子を水溶性フィルム上に供給する供給工程と、前記水溶性フィルム上に複合粒子をシート成形する成形工程とを含む製造方法により得られた鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の強度及び内部抵抗は良好であった。
10…ワインダー、11…アンワインダー、12…プレス用ロール、13…複合粒子、14…支持体

Claims (4)

  1. 活性炭、導電材および結着材を含む複合粒子であって、前記結着材を前記活性炭の重量に対して2wt.%以上20wt.%未満含む複合粒子を造粒する造粒工程と、
    前記複合粒子を厚さ10μm以上70μm未満の水溶性フィルム上に供給する供給工程と、
    前記水溶性フィルム上に複合粒子をシート成形する成形工程と
    を含む鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法。
  2. 前記供給工程で用いる水溶性フィルムは、水が塗布された水溶性フィルムである請求項1記載の鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法。
  3. 前記複合粒子は、前記活性炭の重量に対して水を5wt.%以上40wt.%未満含む請求項1または2記載の鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層の製造方法により製造された鉛蓄電池用キャパシタ電極組成物層を含む鉛蓄電池用電極。
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