JP5411998B1 - 温度センサの診断装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両の走行用動力源10が発生する駆動力を伝達する動力伝達装置20に設けられる温度センサ22の診断装置40を、走行用動力源が所定の暖機終了状態であるか否かを判定する暖機状態判定手段と、暖機状態判定手段が暖機終了状態であると判定しかつ温度センサの検出値が所定の低温側閾値よりも低い場合に、温度センサの低温側オフセット故障を判定する低温側オフセット故障判定手段とを備える構成とする。
【選択図】図3
Description
このような温度センサが故障した場合には、自動変速機の制御に支障をきたすことが懸念されるため、従来各種の故障診断手法が提案されている。
また、特許文献2には、熱電対温度センサの温度ドリフトの発生状況を診断する技術において、温度ドリフトが発生しうる温度での使用時間に温度に応じた重み付けを施し、重み付け後の使用時間の加算値から推定されたドリフト量に基づいて、温度ドリフトの発生状況を診断することが記載されている。
しかし、例えばコネクタ金具の劣化等によって接触抵抗が増加した場合や、金属製の他部品との干渉等によって接触抵抗を介してグラウンド接地した状態になった場合など、センサに対して直列あるいは並列に抵抗が入った場合と同様の状態となった場合には、検出値が低温側あるいは高温側にオフセットするものの、出力電圧自体は正常時にも取り得る範囲内となることから、故障を検出することが困難である。
本発明の課題は、温度センサの検出値がオフセットする故障を簡単な構成により精度良く検出する温度センサの診断装置を提供することである。
請求項1に係る発明は、車両の走行用動力源が発生する駆動力を伝達する動力伝達装置に設けられる温度センサの診断装置であって、前記走行用動力源が所定の暖機終了状態であるか否かを判定する暖機状態判定手段と、前記暖機状態判定手段が前記暖機終了状態であると判定しかつ前記温度センサの検出値が所定の低温側閾値よりも低い場合に、前記温度センサの低温側オフセット故障を判定する低温側オフセット故障判定手段とを備えることを特徴とする温度センサの診断装置である。
これによれば、走行用動力源が暖機終了状態であると判定されたにも関わらず、温度センサの検出値が暖機終了状態では想定し難い低温である場合に、低温側オフセット故障を判定することによって、温度センサの出力自体は正常時にとり得る範囲であっても検出値が低温側へオフセットする形態の故障を適切に検出することができる。
これによれば、走行用動力源の暖機状態を精度よく検出し、低温側オフセット故障の判定精度を高めることができる。
請求項4に係る発明は、車両の走行用動力源が発生する駆動力を伝達する動力伝達装置に設けられる温度センサの診断装置であって、前記走行用動力源が所定の高発熱状態であるか否かを判定する高発熱状態判定手段と、前記高発熱状態判定手段が前記高発熱状態でないと判定しかつ前記温度センサの検出値が所定の高温側閾値よりも高い場合に、前記温度センサの高温側オフセット故障を判定する高温側オフセット故障判定手段とを備えることを特徴とする温度センサの診断装置である。
これらの各発明によれば、走行用動力源が高発熱状態でない(すなわち、高出力状態ではない)にも関わらず、温度センサの検出値が走行用動力源の状態からは想定し難い高温である場合に、高温側オフセット故障を判定することによって、温度センサの出力自体は正常時にとり得る範囲であっても検出値が高温側へオフセットする形態の故障を適切に検出することができる。
これによれば、高温側オフセット故障の判定精度をより高めることができる。
これによれば、低外気温時温度推定手段が算出した推定温度が所定値以上でありかつ温度センサが検出した測定対象物の実測値が予め設定された低温側オフセット故障判定値以下である場合に、温度センサの低温側オフセット故障を判定することによって、温度センサが本来あり得ない程度の低温を検出値としている状況を判別し、低温側オフセット故障を適切に判定することができる。
これによれば、温度センサの実測値が低温側オフセット故障判定値以下である状態が所定時間以上持続した場合に低温側オフセット故障を判定することによって、判定の信頼性を向上することができる。
請求項9に係る発明は、車両の走行用動力源が発生する駆動力を伝達する動力伝達装置に設けられる温度センサの診断装置であって、所定の高温環境下における測定対象物の推定温度を算出する高外気温時温度推定手段と、前記温度センサが検出した測定対象物の実測値が前記高外気温時温度推定手段が算出した推定温度よりも所定値以上高い場合に前記温度センサの高温側オフセット故障を判定する高温側オフセット故障判定手段とを備えることを特徴とする温度センサの診断装置である。
これらの各発明によれば、温度センサが検出した測定対象物の実測値が高外気温時温度推定手段が算出した推定温度よりも所定値以上高い場合に、温度センサの高温側オフセット故障を判定することによって、温度センサが本来あり得ない程度の高温を検出値としている状況を判別し、高温側オフセット故障を適切に判定することができる。
これによれば、温度センサの実測値が高外気温時温度推定手段が算出した推定温度よりも所定値以上高い状態が所定時間以上持続した場合に高温側オフセット故障を判定することによって、判定の信頼性を向上することができる。
また、本発明は、温度センサの検出値がオフセットする故障を簡単な構成により精度良く検出する温度センサの診断装置を提供する課題を、低外気温時の測定対象物の推定温度が所定値以上であるにも関わらず実測温度が判定値以下である状態が所定時間以上持続した場合に低温側オフセット故障を判定し、実測温度が高外気温時の測定対象物の推定温度より所定値以上高い状態が所定時間以上持続した場合に高温側オフセット故障を判定することによって解決した。
実施例1の温度センサの診断装置は、例えば、乗用車等の自動車の自動変速機の油温センサの低温側オフセット故障及び高温側オフセット故障を診断するものである。
図1は、実施例1の温度センサの診断装置を有する車両のパワートレーンの構成を示す模式図である。
図1に示すように、パワートレーン1は、エンジン10、トランスミッション20、エンジン制御ユニット30、トランスミッション制御ユニット40等を備えて構成されている。
エンジン10には、クランク角センサ11、水温センサ12等の各種センサが設けられている。
クランク角センサ11の出力は、エンジン制御ユニット30に伝達される。
エンジン制御ユニット30は、クランク角センサ11の出力に基づいて、クランクシャフトの回転速度を検出可能となっている。
水温センサ12は、エンジン10の冷却水の温度を検出する温度センサである。
トランスミッション20は、例えば、一対のプーリ間にチェーンを架け渡したバリエータを有するチェーン式の無段変速機(CVT)である。
回転センサ21は、トランスミッション20の入出力軸等、主要部分の回転速度をそれぞれ検出する複数のセンサ群である。
油温センサ22は、トランスミッション20の油圧作動油でありかつ潤滑油であるCVTフルードの油温を検出するセンサであって、サーミスタを備えている。
エンジン制御ユニット30は、CPU等の情報処理装置、RAMやROM等の記憶装置、入出力インターフェイス及びこれらを接続するバス等を備えて構成されている。
また、エンジン制御ユニット30は、例えばCAN通信システム等の車載LAN装置を用いて、トランスミッション制御ユニット40に、エンジン10の冷却水温、クランクシャフトの回転速度、出力トルク等の各種情報を伝達可能となっている。
トランスミッション制御ユニット40は、CPU等の情報処理装置、RAMやROM等の記憶装置、入出力インターフェイス及びこれらを接続するバス等を備えて構成されている。
トランスミッション制御ユニット40は、トランスミッション20の変速制御、ロックアップ制御、AWDトランスファの締結力制御等を行う。
また、トランスミッション制御ユニット40は、油温センサ22の出力電圧が、本来その温度で得られるべき電圧に対して、低温側又は高温側にオフセットする故障を診断する故障診断装置としても機能する。
この故障診断機能について、以下詳しく説明する。
図2は、油温センサに接触抵抗が入った故障時の状態をモデル的に示す回路図であって、図2(a)は接触抵抗が直列に入った低温側オフセット故障を示し、図2(b)は接触抵抗が並列に入った高温側オフセット故障を示している。
油温センサ22は、図2に示すように、2.2kΩのプルアップ抵抗、及び、22kΩのプルダウン抵抗を備えている。
また、油温センサ22は、−50〜150℃の動作範囲を有し、抵抗値の公差最大値は、−50℃において89.1kΩ、公差最小値は150℃において0.100kΩとなっている。
例えば、センサに対して接触抵抗1〜1000kΩが直列に接続された状態を想定すると、実際の温度−50℃〜150℃に対して、センサ検出温度は41.9℃〜−46℃にオフセットする。
例えば、センサに対して接触抵抗0.01〜0.2kΩが並列に接続された状態を想定すると、実際の温度−50℃〜150℃に対して、センサ検出温度は97.4℃〜150℃にオフセットする。
これらの検出値(温度)自体は、温度センサ22が正常な場合であっても取り得るものであることから、例えば出力電圧のみに基づいて、このような故障を判別することはきわめて困難である。
以下、故障診断方法について説明する。
図3は、実施例1の温度センサの診断装置における低温側オフセット故障の診断方法を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS01:油温センサ電圧判断>
トランスミッション制御ユニット40は、油温センサ22の出力電圧が、通常の運転状態を想定して予め設定された所定範囲内であるか否かを判別する。
油温センサ22の電圧が所定範囲内である場合は、ステップS02に進み、それ以外の場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン制御ユニット30からの情報に基づいて、エンジン10の冷却水温が、暖機終了状態を想定して予め設定された所定値以上であるか否かを判別する。
冷却水温が所定値以上である場合は、ステップS03に進み、それ以外の場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジンが所定の発熱状態にある持続時間であるエンジン発熱量累積時間が予め設定された所定値以上であるか否かを判別する。
このエンジン発熱量累積時間については、後に詳しく説明する。
エンジン発熱量累積時間が所定値以上である場合は、暖機が終了したものと判断してステップS04に進み、それ以外の場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、油温センサ22の出力電圧に基づいて算出される検出油温(検出値)が、予め設定された低温側閾値以下であるか否かを判別する。
検出油温が低温側閾値以下である場合には、ステップS05に進み、それ以外の場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、油温センサ22の低温側オフセット故障判定を成立させて一連の処理を終了(リターン)する。
低温側オフセット故障判定の成立時には、警告灯(MIL)の点灯やフェイルセーフモードへの制御切替など、所定の処理を行う。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS11:イグニッションオン判断>
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン制御ユニット30からの情報に基づいて、イグニッションスイッチがオン状態であるか否かを判別する。
イグニッションスイッチがオンである場合には、ステップS12に進み、それ以外の場合には、ステップS19に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン制御ユニット30からの情報に基づいて、エンジン10の冷却水温が、エンジン冷間状態を想定して予め設定された所定値A(一例として40℃)以上であるか否かを判別する。
冷却水温が所定値A以上である場合には、ステップS13に進み、それ以外の場合には、ステップS19に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン制御ユニット30からの情報に基づいて、エンジン10の冷却水温が、暖機終了状態を想定して予め設定された所定値B(所定値B>所定値A、一例として90℃)であるか否かを判別する。
冷却水温が所定値B以上である場合には、ステップS14に進み、それ以外の場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン制御ユニット30からの情報に基づいて、エンジン10のクランクシャフトの回転速度が予め設定された所定値以下であるか否かを判別する。
回転速度が所定値以下である場合には、ステップS15に進み、それ以外の場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン制御ユニット30からの情報に基づいて、エンジン10において、全ての気筒で燃料噴射が行われない燃料カット状態であるか否かを判別する。
エンジン10において正常に燃料噴射が行われている場合には、ステップS16に進み、燃料カット状態である場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン制御ユニット30からの情報に基づいて、エンジン10の推定発熱量であるエンジン発熱量推定値が予め設定された所定値以上であるか否かを判別する。
エンジン発熱量推定値は、例えば、以下の式1によって求められる。
エンジン発熱量推定値[kW]
=|エンジン発生出力[kW]−加速抵抗[kW]−空気抵抗[kW]−転がり抵抗[kW]|
−風速冷却熱量[kW] ・・・(式1)
エンジン発生出力[kW]
=エンジントルク[Nm]×エンジン回転速度[rpm]×2π[rad]/60[sec]/1000
・・・(式2)
加速抵抗[kW]
=車重[kg]×車体加速度[m/s2]×車速[km/h]×1000[m]/60[min]/60[sec]/1000
・・・(式3)
空気抵抗[kW]
=空気抵抗係数×空気密度[kg/m3]×前面投影面積[m2]
×(車速[km/h]×1000[m]/60[min]/60[sec])3/2/1000 ・・・(式4)
転がり抵抗[kw]=転がり抵抗係数×車重[kg]/9.8[m/s2]
×車速[km/h]×1000[m]/60[min]/60[sec]/1000 ・・・(式5)
風速冷却熱量[kW]
=車速→熱量変換係数[kW/s・m]×車速[km/h] ×1000[m]/60[min]/60[sec]/1000
・・・(式6)
エンジン発熱量推定値が所定値以上である場合には、ステップS17に進み、それ以外の場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、回転センサ21の出力等に基づいて検出される車両の走行速度が予め設定された上限値と下限値との間の所定範囲内であるか否かを判別する。
車速が所定範囲内である場合には、車両が通常走行中であるものと判断してステップS18に進み、それ以外の場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン発熱量累積時間のカウンタ値をカウントアップし、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン発熱量累積時間のカウンタ値をゼロにリセットし、一連の処理を終了(リターン)する。
図5は、実施例1の温度センサの診断装置における高温側オフセット故障の診断方法を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS21:油圧センサ電圧判断>
トランスミッション制御ユニット40は、油温センサ22の出力電圧が、通常の運転状態を想定して予め設定された所定範囲内であるか否かを判別する。
油温センサ22の電圧が所定範囲内である場合は、ステップS22に進み、それ以外の場合には、ステップS28に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン制御ユニット30からの情報に基づいて、エンジン10の冷却水温が、油温センサ22によって検出された油温から予め設定された所定値を減じた値以下であるか否かを判別する。
水温が油温から所定値を減じた値以下である場合には、ステップS23に進み、それ以外の場合には、ステップS28に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン制御ユニット30からの情報に基づいて、エンジン10の推定発熱量であるエンジン発熱量推定値が予め設定された所定値以上であるか否かを判別する。
エンジン発熱量推定値の算出方法は、上述したステップS16において述べたものと同様である。
エンジン発熱量推定値が所定値以下である場合には、エンジン10の運転状態が高発熱状態(高出力状態)ではないものと判断してステップS24に進み、それ以外の場合には、ステップS28に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、エンジン制御ユニット30からの情報に基づいて、エンジン10のクランクシャフトの回転速度が予め設定された所定値以上であるか否かを判別する。
回転速度が所定値以上である場合には、ステップS25に進み、それ以外の場合には、ステップS28に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、回転センサ21の出力等に基づいて検出される車両の走行速度が予め設定された上限値と下限値との間の所定範囲内であるか否かを判別する。
車速が所定範囲内である場合には、ステップS26に進み、それ以外の場合には、ステップS28に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、油温センサ22の出力電圧に基づく検出油温が、予め設定された高温側閾値以上であるか否かを判別する。
検出油温が高温側閾値以上である場合には、ステップS27に進み、それ以外の場合にはステップS28に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、故障と疑われる状態の持続時間を示すカウンタ値を保持する故障カウンタのカウンタ値をカウントアップする。
その後、ステップS29に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、上述した故障カウンタのカウンタ値をゼロにリセットする。
その後、ステップS29に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、故障カウンタのカウンタ値が予め設定された所定値以上であるか否かを判別する。
カウンタ値が所定値以上である場合には、ステップS30に進み、それ以外の場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、油温センサ22の高温側オフセット故障判定を成立させて一連の処理を終了(リターン)する。
高温側オフセット故障判定の成立時には、警告灯(MIL)の点灯やフェイルセーフモードへの制御切替など、所定の処理を行う。
(1)エンジンが所定の発熱状態となっている持続時間であるエンジン発熱量累積時間が所定値以上であり、暖機が十分に完了した状態において、油温センサ22の検出値が所定の低温側閾値以下である場合に低温側オフセット故障を判定することによって、温度センサの出力自体は正常時にとり得る範囲であっても、検出値が低温側へオフセットする形態の故障を適切に検出することができる。
(2)エンジンの発熱量が比較的低い状態であるにも関わらず検出油温が高温側閾値以上である状態の持続時間が所定値以上である場合に高温側オフセット故障を判定することによって、温度センサの出力自体は正常時にとり得る範囲であっても、検出値が高温側へオフセットする形態の故障を適切に検出することができる。
実施例2において、上述した実施例1と実質的に共通する箇所については、同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
以下、実施例2における故障診断方法について説明する。
なお、以下説明する各診断は、油温センサ22の出力電圧が予め設定された正常範囲から外れている場合、CAN通信システム等の通信系や各ECUにエラーが発生している場合、水温センサ12が故障している場合、エンジン故障警告がなされている場合等には実行しない。
図6は、実施例2の温度センサの診断装置における低温側オフセット故障の診断方法を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
トランスミッション制御ユニット40は、以下の条件a)〜c)が全て充足したか否かを判別し、全て充足した場合には、ステップS32に進み、いずれか一つでも充足しない場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
a)エンジン水温≧所定値(例えば80℃)
b)低外気温時ATF温度推定値≧所定値(例えば10℃)
c)エンジン回転速度≧所定値(例えば500rpm)
すなわち、低温側オフセット故障の診断は、エンジンの暖機完了後に行う。
ここで、低外気温時ATF温度推定値とは、低温環境下(例えば外気温−40℃)において、車両の運転状態履歴に基づいて算出される推定温度である。
トランスミッション制御ユニット40は、この低外気温時ATF温度推定値の算出を行う低外気温時温度推定手段としても機能する。
低外気温時ATF温度推定値は、例えば、10msec毎に逐次算出される。
先ず、始動時判定の成立時には、低外気温時ATF温度推定値は、式7から求められる。
低外気温時ATF温度推定値[℃]=ATF油温[℃]・・・(式7)
また、始動時判定の成立時以外には、低外気温時ATF温度推定値は、式8から求められる。
低外気温時ATF温度推定値[℃]
=エンジン発熱量積算値(低温)[kW]×熱量温度変換係数(低温)・・・(式8)
ここで、熱量温度変換係数(低温)は、例えば、0.005[℃/kW]である。
エンジン発熱量積算値(低温)[n][kW]
=エンジン発熱量積算値(低温)[n-1][kW]+エンジン発熱量(低温)[kW/s]×0.01
・・・(式9)
エンジン発熱量(低温)[kW/s]
=エンジン仕事率損失[kW/s]
+ATFウォーマ発熱量(低温)[kW/s]−車速風冷却熱量(低温)[kW/s]
・・・(式10)
ATFウォーマ発熱量(低温)
=ATFウォーマ発熱量テーブル値(ATFウォーマ流量)[kW/s]×エンジン水温[℃]
−低外気温時ATF温度推定値[n-1]
÷(ATFウォーマ特性評価時油温[℃]
−ATFウォーマ特性評価時エンジン水温[℃])
×ATFウォーマ発熱量(低温)補正係数(1.0) ・・・(式11)
ATFウォーマ流量[L/min]=ATFウォーマ流量テーブル値(エンジン回転速度)
・・・(式12)
ここで、以下の各パラメータは、ATFウォーマの特性表から設定する。
ATFウォーマ発熱量テーブル値(ATFウォーマ流量)
ATF流量テーブル値
ATF特性評価時油温(例えば120℃)
ATF特性評価時エンジン水温(例えば80℃)
車速風冷却熱量(低温)[kW/s]
=車速[km/h]×1000[m/km]÷60[min/h]÷60[min/s]×開口面積[m2]×空気比熱[J/kg/K]
×空気密度[kg/m3]
×(低外気温時ATF温度推定値[n-1][℃]−低外気温時外気温度[℃])
×車速風冷却熱量(低温)補正係数÷1000 ・・・(式13)
ここで、各パラメータは下記設定とする。
空気比熱=1030[J/kg/K](湿度100%)
空気密度=1.293[kg/m3](0℃, 1atm)
低外気温時外気温度=-40℃
開口面積=1.0[m2]
車速風冷却熱量(低温)補正係数=0.0101
なお、高温時ATF温度推定値の算出に用いる車速風冷却熱量(高温)補正係数は、例えば、0.025である。
エンジン仕事率損失[kW/s]=エンジン発生馬力[kW/s]-走行抵抗仕事率[kW/s]
・・・(式14)
エンジン仕事率損失は、0以上となるように下限リミッタ処理を行う。
エンジン発生馬力[kW/s]
=エンジントルク[N・m]×エンジン回転速度[rpm]×2π÷60[s/min]÷1000
・・・(式15)
ここで、式16を用いて、エンジン暖機途上のエンジントルク推定値ズレをトルクコンバータ特性から補正する。
エンジントルク[N・m]≦トルクコンバータ特性によるエンジントルク推定値[N・m]
・・・(式16)
トルクコンバータ特性によるエンジントルク推定値[N・m]
=エンジン回転速度[rpm]2
×トルクコンバータ容量係数テーブル値(トルクコンバータ速度比)[N・m/rpm2]
・・・(式17)
トルクコンバータ速度比=出力回転速度[rpm]÷入力回転速度[rpm] ・・・(式18)
走行抵抗仕事率[kW/s]
=慣性加速抵抗仕事率[kW/s]+空気抵抗仕事率[kW/s]+転がり抵抗仕事率[kW/s]
・・・(式19)
慣性加速抵抗仕事率[kW/s]
=慣性抵抗仕事率[kW/s]+加速抵抗仕事率[kW/s]・・・(式20)
慣性抵抗仕事率[kW/s]
=エンジン慣性抵抗仕事率[kW/s]+プライマリプーリ慣性抵抗仕事率[kW/s]
・・・(式21)
エンジン慣性抵抗仕事率[kW/s]
=エンジン慣性抵抗[N・m]×エンジン回転速度[rpm]×2π÷60[s/min]÷1000
・・・(式22)
エンジン慣性抵抗[N・m]
=エンジン回転加速度[rpm/s]×2π÷60[s/min]
×エンジン慣性抵抗係数[kg・m・s2]×9.8[m/s2] ・・(式23)
エンジン慣性抵抗係数は、エンジンクランク軸上慣性抵抗係数とトルクコンバータ入力側の慣性抵抗係数との和であり、一例として、0.011661[kg・m・s2]である。
プライマリプーリ慣性抵抗仕事率[kW/s]
=プライマリプーリ慣性抵抗[N・m]×プライマリプーリ回転速度[rpm]
×2π÷60[s/min]÷1000 ・・・(式24)
プライマリプーリ慣性抵抗[N・m]
=プライマリプーリ回転加速度[rpm/s]×2π÷60[s/min]
×プライマリプーリ慣性抵抗係数[kg・m・s2]×9.8[m/s2] ・・・(式25)
プライマリプーリ慣性抵抗係数は、プライマリプーリ軸上慣性抵抗係数とトルクコンバータ出力側慣性抵抗係数とFRクラッチ慣性抵抗係数の和であって、一例として0.0442[kg・m・s2]である。
加速抵抗仕事率[kW/s]
=車重[kg]×車体加速度[m/s2]×車速[km/h]
×1000[m/km]÷60[sec/min]÷60[sec]÷1000・・・(式26)
ここで、車体加速度[m/s2]≧-0.5[m/s2]の下限リミッタ処理が行われる。
このような下限リミッタ処理を行うのは、ブレーキ踏込時の車体加速度は-0.5[m/s2]以下であることから、ブレーキパッドが消費するエネルギを熱量に加算しないためである。
空気抵抗仕事率[kW/s]
=空気抵抗係数×空気密度[kg/m3]×前面投影面積[m2]
×(車速[km/h]×1000[m/km]÷60[sec/min]÷60[sec])3÷1000 ・・・(式27)
ここで、各パラメータは、車種等により異なるが、一例として下記の通りである。
空気抵抗係数=0.306
空気密度=1.293[kg/m3]
前面投影面積=2.29[m2]
転がり抵抗仕事率[kW/s]
=転がり抵抗係数×車重[kg]÷9.8[m/s2]
×車速[km/h]×1000[m/km]÷60[min/h]÷60[sec/min]÷1000 ・・(式28)
ここで、各パラメータは、車種等により異なるが、一例として下記の通りである。
転がり抵抗係数=0.04 (一般の敷石舗装路)
車重=1400[kg]
トランスミッション制御ユニット40は、油温センサ22によるATF温度の検出値を予め設定された所定値(低温側オフセット故障判定値:例えば20℃)と比較し、ATF温度が所定値以下である場合にはステップS33に進む。一方、その他の場合にはステップS34に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、ステップS32においてATF温度が所定値以下である状態の持続時間をカウントする故障カウンタのカウンタ値をカウントアップする。
その後、ステップS35に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、故障カウンタのカウンタ値をゼロリセットする。
その後、ステップS35に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、故障カウンタのカウンタ値を予め設定された所定値(例えば60秒に相当する値)と比較する。
故障カウンタのカウンタ値が所定値以上である場合にはステップS36に進み、その他の場合には一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、油温センサ22の低温側オフセット故障判定を確定させ、一連の処理を終了する。
図7は、実施例2の温度センサの診断装置における高温側オフセット故障の診断方法を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
トランスミッション制御ユニット40は、以下の条件a)〜b)が全て充足したか否かを判別し、全て充足した場合には、ステップS42に進み、いずれか一つでも充足しない場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
a)エンジン水温≦所定値(例えば80℃)
b)エンジン回転速度≧所定値(例えば500rpm)
すなわち、高温側オフセット故障の診断は、エンジンの暖機完了前に行う。
トランスミッション制御ユニット40は、以下の条件a)〜b)が全て充足したか否かを判別し、全て充足した場合にはステップS43に進み、その他の場合にはステップS44に進む。
a)ATF温度≧所定値(例えば80℃)
b)ATF温度≧高外気温時ATF温度推定値+所定値(例えば5℃)
このb)における所定値は、高負荷運転時のATF温度上昇時における誤診断を防止するために設定されるものである。
ここで、高外気温時ATF温度推定値とは、高温環境下(例えば外気温40℃)において、車両の運転状態履歴に基づいて算出される推定温度である。
トランスミッション制御ユニット40は、この高外気温時ATF温度推定値の算出を行う高外気温時温度推定手段としても機能する。
高外気温時ATF温度推定値は、低外気温時外気温度−40℃に代えて、高外気温時外気温度40℃を用いる以外は、上述した低外気温時ATF温度推定値と実質的に同様に算出される。
トランスミッション制御ユニット40は、ステップS42において条件a)〜b)が全て充足した状態の持続時間をカウントする故障カウンタのカウンタ値をカウントアップする。
その後、ステップS45に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、故障カウンタのカウンタ値をゼロリセットする。
その後、ステップS45に進む。
トランスミッション制御ユニット40は、故障カウンタのカウンタ値を予め設定された所定値(例えば60秒に相当する値)と比較する。
故障カウンタのカウンタ値が所定値以上である場合にはステップS46に進み、その他の場合には一連の処理を終了(リターン)する。
トランスミッション制御ユニット40は、油温センサ22の高温側オフセット故障判定を確定させ、一連の処理を終了する。
(1)トランスミッション制御ユニット40が算出した低外気温時ATF温度推定値が所定値以上であり、かつ油温センサ22が検出したATFの実測温度が予め設定された低温側オフセット故障判定値以下である場合に、油温センサ22の低温側オフセット故障を判定することによって、油温センサ22が本来あり得ない程度の低温を検出値としている状況を判別し、低温側オフセット故障を適切に判定することができる。
(2)油温センサ22の実測値が低温側オフセット故障判定値以下である状態が所定時間以上持続した場合に低温側オフセット故障を判定することによって、判定の信頼性を向上することができる。
(3)油温センサ22が検出したATFの実測温度が、所定値以上であり、かつトランスミッション制御ユニット40が算出した高外気温時ATF温度推定値よりも5℃以上高い場合に、油温センサ22の高温側オフセット故障を判定することによって、油温センサ22が本来あり得ない程度の高温を検出値としている状況を判別し、高温側オフセット故障を適切に判定することができる。
(4)油温センサ22の実測値が所定値以上でありかつ高外気温時ATF温度推定値よりも5℃以上高い状態が所定時間以上持続した場合に、高温側オフセット故障を判定することによって、判定の信頼性を向上することができる。
本発明は、以上説明した各実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、実施例の温度センサは、エンジンの回転出力を増減速するCVTの油温センサであるが、本発明はこれに限らず、手動変速機(MT)や、有段AT、DCT、AMT、AWDトランスファやディファレンシャルの油温センサ等の故障診断に用いることができる。
また、走行用動力源もエンジンに限らず、電動モータや、エンジンと電動モータとを組み合わせたハイブリッドシステムであってもよい。
10 エンジン 11 クランク角センサ
12 水温センサ 20 トランスミッション
21 回転センサ 22 油温センサ
30 エンジン制御ユニット 40 トランスミッション制御ユニット
Claims (10)
- 車両の走行用動力源が発生する駆動力を伝達する動力伝達装置に設けられる温度センサの診断装置であって、
前記走行用動力源が所定の暖機終了状態であるか否かを判定する暖機状態判定手段と、
前記暖機状態判定手段が前記暖機終了状態であると判定しかつ前記温度センサの検出値が所定の低温側閾値よりも低い場合に、前記温度センサの低温側オフセット故障を判定する低温側オフセット故障判定手段と
を備えることを特徴とする温度センサの診断装置。 - 前記暖機状態判定手段は、前記走行用動力源の推定発熱量が所定値以上である状態の累積時間が所定値以上となった場合に前記暖機終了状態であると判定すること
を特徴とする請求項1に記載の温度センサの診断装置。 - 前記走行用動力源が所定の高発熱状態であるか否かを判定する高発熱状態判定手段と、
前記高発熱状態判定手段が前記高発熱状態でないと判定しかつ前記温度センサの検出値が所定の高温側閾値よりも高い場合に、前記温度センサの高温側オフセット故障を判定する高温側オフセット故障判定手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の温度センサの診断装置。 - 車両の走行用動力源が発生する駆動力を伝達する動力伝達装置に設けられる温度センサの診断装置であって、
前記走行用動力源が所定の高発熱状態であるか否かを判定する高発熱状態判定手段と、
前記高発熱状態判定手段が前記高発熱状態でないと判定しかつ前記温度センサの検出値が所定の高温側閾値よりも高い場合に、前記温度センサの高温側オフセット故障を判定する高温側オフセット故障判定手段と
を備えることを特徴とする温度センサの診断装置。 - 前記高温側オフセット故障判定手段は、前記高発熱状態判定手段が前記高発熱状態でないと判定しかつ前記温度センサの検出値が所定の高温側閾値よりも高い状態の累積時間が所定値以上となった場合に前記高温側オフセット故障を判定すること
を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の温度センサの診断装置。 - 車両の走行用動力源が発生する駆動力を伝達する動力伝達装置に設けられる温度センサの診断装置であって、
所定の低温環境下における測定対象物の推定温度を算出する低外気温時温度推定手段と、
前記低外気温時温度推定手段が算出した推定温度が所定値以上でありかつ前記温度センサが検出した測定対象物の実測値が予め設定された低温側オフセット故障判定値以下である場合に前記温度センサの低温側オフセット故障を判定する低温側オフセット故障判定手段と
を備えることを特徴とする温度センサの診断装置。 - 前記低温側オフセット故障判定手段は、前記実測値が前記低温側オフセット故障判定値以下である状態が所定時間以上持続した場合に前記低温側オフセット故障を判定すること
を特徴とする請求項6に記載の温度センサの診断装置。 - 所定の高温環境下における測定対象物の推定温度を算出する高外気温時温度推定手段と、
前記温度センサが検出した測定対象物の実測値が前記高外気温時温度推定手段が算出した推定温度よりも所定値以上高い場合に前記温度センサの高温側オフセット故障を判定する高温側オフセット故障判定手段と
を備えることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の温度センサの診断装置。 - 車両の走行用動力源が発生する駆動力を伝達する動力伝達装置に設けられる温度センサの診断装置であって、
所定の高温環境下における測定対象物の推定温度を算出する高外気温時温度推定手段と、
前記温度センサが検出した測定対象物の実測値が前記高外気温時温度推定手段が算出した推定温度よりも所定値以上高い場合に前記温度センサの高温側オフセット故障を判定する高温側オフセット故障判定手段と
を備えることを特徴とする温度センサの診断装置。 - 前記高温側オフセット故障判定手段は、前記実測値が前記高外気温時温度推定手段が算出した推定温度よりも所定値以上高い状態が所定時間以上持続した場合に前記高温側オフセット故障を判定すること
を特徴とする請求項8又は請求項9に記載の温度センサの診断装置。
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