JP5406292B2 - 可変焦点レンズおよび顕微鏡 - Google Patents

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Description

本発明は、可変焦点レンズおよび顕微鏡に関し、より詳細には、電気光学効果を有する光学材料を用いて、焦点距離を変更可能とした可変焦点レンズと、これを備えた顕微鏡とに関する。
従来、光学レンズ、プリズムなどの光学部品は、カメラ、顕微鏡、望遠鏡などの光学機器、プリンタ、コピー機など電子写真方式の記録装置、DVDなどの光記録装置、通信用、工業用の光デバイス等に用いられている。通常の光学レンズは、焦点距離が固定されているが、上述の機器、装置の中には、状況に応じて焦点距離を調整することのできるレンズ、いわゆる可変焦点レンズを用いる場合がある。従来の可変焦点レンズは、複数のレンズを組み合わせて、機械的に焦点距離を調整する。しかしながら、このような機械式の可変焦点レンズは、応答速度・製造コスト・小型化・消費電力などの点から、適用範囲を広げることには限界があった。
そこで、光学レンズを構成する透明媒質に、屈折率を可変できる物質を適用した可変焦点レンズ、光学レンズの位置を動かすのではなく、機械的に光学レンズの形状を変形させる可変焦点レンズなどが考え出された。前者の可変焦点レンズとして、光学レンズとして液晶を利用した可変焦点レンズが提案されている。この可変焦点レンズは、透明物質でできた容器、例えばガラス板により液晶を封じ込めている。この容器の内側は球面上に加工されており、液晶はレンズ形状に成形されている。さらに容器の内側には、透明電極が設けられており、この電極に印加する電圧を変えることにより、液晶にかかる電界を制御することができる。これにより液晶の屈折率を電圧で制御することができ、焦点距離を可変制御することができる(例えば、特許文献1参照)。
後者の可変焦点レンズとして、変形するレンズの材料は、液体が用いられることが多い。例えば、非特許文献1に記載された可変焦点レンズは、ガラス板に挟まれた空間に、シリコンオイルなどの液体を封入した構造を有している。ガラス板は、薄く加工されており、外部からチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ピエゾアクチュエータによって、ガラス板に圧力をかけることにより、オイルとガラス板全体で構成されるレンズを変形させ、焦点位置を制御する。この可変焦点レンズの動作原理は、眼球の水晶体と同じである。
上述の光学機器の中でも、顕微鏡は、可変焦点レンズの導入により、実用的な応用が期待できる機器である。顕微鏡は、高いNA(開口数)の対物レンズを用いるため、被写界深度が非常に浅い。そのため、測定対象として立体物を観測する場合には、焦点高さに合う、立体物の一部の領域のみしか同時に観測することができない。立体物の全体像を得るためには、レンズ系または測定対象を乗せたステージを上下に少しずつ動かしながら観測することが必要である。また、ステージを動かしながら、一定の高さごとに画像を撮影し、撮影された複数の画像を処理して、立体像を合成する技術も確立されつつある。
近年、顕微鏡の中でも、共焦点顕微鏡の利用範囲が拡大してきている。図1を参照して、共焦点顕微鏡の原理を説明する。この系では、測定対象1から発する光を、レンズ3(通常、対物レンズと呼ぶ)により平行光線にし、さらにレンズ4により再び集光する。集光した点の位置に、そのスポット径と同程度の直径のピンホール5をおき、透過した光のパワーを光検出器6で測定する。このとき、測定対象1の真下に測定対象2がある場合を考える。測定対象2から発した光は、図1の破線で示したように、レンズ3,4を透過した後、ピンホール5の位置よりも下に集光される。測定対象2から発した光は、ピンホールの高さに達したときには再び広がっており、ピンホール5を透過する光成分は、著しく少なくなる。すなわち、この系では測定対象1の位置から発した光信号のみを検出できるようになっている。
通常の顕微鏡では、測定対象の上下に光を発する別の物体がある場合、それらの物体からの光が、測定対象からの光にノイズとして重畳されるため、測定対象のみの情報を引き出すことは困難である。一方、共焦点顕微鏡では、光学系の配置を調整することにより、測定対象の情報のみを効率的に採取することが可能となる。ただし、同時に採取できる情報は、図1の測定対象1の位置にある物体のみであるため、物体の全体像を得るためには、物体を上下左右に少しずつ移動しながら3次元のデータ収集する必要がある。左右の移動については、ガルバノミラーのような、光線の向きを高速に偏向する部品(光偏向器)を使って、測定対象の物体自体を動かさずに測定する装置が存在する。しかし、上下の移動については、測定対象の物体を機械的に動かすことが一般的であった。
しかしながら、共焦点顕微鏡を含む従来の顕微鏡において、測定対象物を乗せたステージを上下に機械的に動かしながら一連の測定を行う場合、全てのデータを取得するには、時間がかかった。そこで、ステージを動かす代わりに、可変焦点レンズで焦点を電気的に制御できれば、計測の精度は上がり、さらに、走査速度の向上も期待できる。
可変焦点レンズとして、従来から、機械的に焦点距離を調整する可変焦点レンズ、液晶に電界をかけて屈折率を制御する可変焦点レンズ、およびPZTピエゾアクチュエータによりレンズを変形させる可変焦点レンズなどを用いることができた。しかし、いずれも、焦点距離を変更するのに要する応答速度には限界があり、1ms以下の高速応答には適用することができず、高速な現象を捕らえることが困難であった。
本発明の目的は、焦点距離の変更を高速に行うことができる可変焦点レンズを提供し、それによって、高さ方向の情報を含めた立体物の測定を、高速に行うことができる顕微鏡を提供することにある。
特開平11−064817号公報
金子卓他、「可変焦点レンズを用いた長焦点深度視覚機構」、デンソーテクニカルレビュー、Vol.3, No.1, p.52-58, 1998
このような目的を達成するために、本発明にかかる可変焦点レンズの一実施態様は、反転対称性を有する単結晶からなる電気光学材料と、該電気光学材料の第1の面上に形成された第1の陽極と、前記第1の面に対向する第2の面上に形成され、前記第1の陽極と向かい合う位置に形成された第1の陰極と、前記第1の面上に形成され、前記第1の陽極とは間隔をおいて配置された第2の陰極と、前記第2の面上に形成され、前記第2の陰極と向かい合う位置に形成され、前記第1の陰極とは間隔をおいて配置された第2の陽極とを備え、前記第1の面と直交する第3の面から光を入射させたとき、前記第1の陽極および前記第1の陰極からなる第1の電極対の間を透過してから、前記第2の陽極および前記第2の陰極からなる第2の電極対の間を透過して、前記第3の面に対向する第4の面から光が出射するように光軸が設定され、前記第1および第2の陽極と前記第1および第2の陰極は、帯状の形状を有し、前記第3の面と平行な長手方向の辺は、互いにすべて平行であり、前記第1および第2の電極対の間の印加電圧を変えることにより、前記電気光学材料の前記第4の面から出射された光の焦点を可変することを特徴とする。
本発明にかかる顕微鏡の一実施態様は、光学系に可変焦点レンズを含む顕微鏡であって、該可変焦点レンズは、第1の基本単位素子と半波長板と第2の基本単位素子とが、光軸方向に沿って直列に配置され、前記第1の基本単位素子と前記第2の基本単位素子とは、光軸に対して垂直に電界を印加し、電界の印加方向が互いに90度の角度をなすように配置され、前記半波長板は、前記第1の基本単位素子と前記第2の基本単位素子の電界の印加方向に対して、45度の角度をなすように配置され、前記第1および第2の基本単位素子の各々は、反転対称性を有する単結晶からなる電気光学材料と、該電気光学材料の第1の面上に形成された第1の陽極と、前記第1の面に対向する第2の面上に形成され、前記第1の陽極と向かい合う位置に形成された第1の陰極と、前記第1の面上に形成され、前記第1の陽極とは間隔をおいて配置された第2の陰極と、前記第2の面上に形成され、前記第2の陰極と向かい合う位置に形成され、前記第1の陰極とは間隔をおいて配置された第2の陽極とを備え、前記第1の面と直交する第3の面から光を入射させたとき、前記第1の陽極および前記第1の陰極からなる第1の電極対の間を透過してから、前記第2の陽極および前記第2の陰極からなる第2の電極対の間を透過して、前記第3の面に対向する第4の面から光が出射するように光軸が設定され、前記第1および第2の陽極と前記第1および第2の陰極は、帯状の形状を有し、前記第3の面と平行な長手方向の辺は、互いにすべて平行であり、前記第1および第2の電極対の間の印加電圧を変えることにより、前記電気光学材料の前記第4の面から出射された光の焦点を可変することを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、反転対称性を有する単結晶からなる電気光学材料と、電気光学材料の表面に形成された2N個の電極とを備え、互いに隣り合う電極対には反対の電圧を印加し、電極対の間の印加電圧を変えることにより、焦点距離の変更を高速に行うことができる可変焦点レンズを実現することができる。
この可変焦点レンズを顕微鏡の光学系に備えることにより、測定対象物を載せたステージを上下に機械的に動かす必要がなくなるため、立体像の測定に要する時間を短縮することが可能になる。また、測定対象物が高速に動的に変化する場合には、その高速な現象を捉えることが可能となる。
図1は、従来の共焦点顕微鏡の原理を説明するための図、 図2は、本発明の第1の実施形態にかかる可変焦点レンズの構成を示す図、 図3は、第1の実施形態にかかる可変焦点レンズの原理を説明するための図、 図4は、第1の実施形態にかかる可変焦点レンズの光路長変調の例を示す図、 図5は、第1の実施形態にかかる可変焦点レンズの焦点距離の電極間隔依存性を示す図、 図6は、本発明の第2の実施形態にかかる可変焦点レンズの構成を示す図、 図7は、本発明の第3の実施形態にかかる可変焦点レンズの構成を示す図、 図8は、本発明の一実施形態にかかる顕微鏡の構成を示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の可変焦点レンズは、電気光学材料と、これに取付けた電極から構成される。電気光学効果を利用することにより、従来の可変焦点レンズと比較して、はるかに高速な応答速度を得ることができる。
図2に、本発明の第1の実施形態にかかる可変焦点レンズの構成を示す。電気光学材料を板状に加工した基板11の上面(第1の面)および下面(第2の面)に、帯状の電極4つが形成されている。光の入射側の上部電極として陽極12(第1の陽極)、基板11を挟んで下部電極として陰極13(第1の陰極)が配置されている。さらに、これら電極対とは間隔を置き、光の出射側にもう一対の電極が配置されおり、上部電極が陰極14(第2の陰極)であり、下部電極が陽極15(第2の陽極)である。帯状の4つ電極は、長手方向の辺がすべて平行となる形状を有している。
光は、電極を配置した面と直交する面(第3の面)から入射され、基板11の内部をx軸方向に進行し、陽極12と陰極13の間を、これらの帯状電極の長手方向とは垂直な方向に透過する。次いで、光は、陰極14と陽極15との間を透過してから、入射した面と対向する面(第4の面)から空気中へと出射する。
このような構成において、陽極と陰極との間に電圧を印加する。光の入射側の電極対と光の出射側の電極対とは、電圧をかける向き(z軸方向)が互いに逆になっている。陽極12と陽極15との電位は異なっていてもよく、陰極13と陰極14の電位も同様である。なお、陽極12,15の低いほうの電位は、陰極13,14の高いほうの電位よりも高くなるように設定する。
このとき、これら電極の間には電界の分布が発生し、基板11の有する電気光学効果によって屈折率が変調される。屈折率の変調された部分を光が透過する時、この屈折率分布によって光は屈曲させられ、その結果、光は集光あるいは発散させられる。集光される場合、図2の構造によれば、シリンドリカル凸レンズとして機能し、発散される場合は、シリンドリカル凹レンズとして機能する。また、印加する電圧によって光の屈曲の度合いが変化するので、焦点距離を電圧によって制御することができる。
電気光学効果は、電圧の印加から遅く見積もっても1μs以下の時間で応答するので、従来の可変焦点レンズよりも著しく高速に応答する可変焦点レンズを実現することができる。以上説明したように、図2に示した素子はシリンドリカル可変焦点レンズであり、様々なレンズを構成する基本単位となる。通常の球面レンズを実現するためには、この基本単位である素子を2つ組み合わせればよい。すなわち、2つの基本単位素子を、光軸を中心に互いに90度の角度をなすように配置することにより、球面レンズと等価な機能を実現することができる。なお、本実施形態では基板11の材料として、電気光学効果を有する材料の中でも、特に反転対称性を有する結晶からなる材料を用いることを特徴としており、その理由については後述する。
以下、図3を参照して、屈折率の変調の様子とレンズとしての機能を詳述する。図3は、図2に示した可変焦点レンズの側面をy軸方向から見た様子を示している。基板11は、4つの電極に電圧を印加しない時には、屈折率が均一であるため、光はそのまま変調を受けずに透過する。従って、レンズの機能はない。しかし、平面波を入射したときには、基板11から出射される光の波面は平面のままで、曲率半径は無限大であることを考慮すると、焦点距離無限大のレンズとみなすこともできる。
4つの電極に電圧を印加した時には、これらの電極の間に、図3に示したような電気力線16が発生する。電気力線16は、陽極12と陰極13との間、陰極14と陽極15との間のみならず、これらの電極の外側にも大きく広がって生成される。電気力線が生成されているということは、言い換えると電界が発生している。このとき、基板11が電気光学効果を有するため、基板11内部の電界が発生している箇所では屈折率が変調される。基板11の内部において、4つの電極の付近、すなわち基板11の表面付近では、電界が大きく、屈折率変化が大きい。これに対して基板11の中央部分(すべての軸方向における中央付近)では、電界が比較的小さく、屈折率変化が小さい。
図3の右側には、屈折率変化分の分布を表す屈折率変調曲線17を模式的に示している。屈折率変調曲線の縦軸は、z軸の座標、横軸は電圧をかけないときからの屈折率の変化分Δnである。図3においては、屈折率は、全体的にマイナス方向に変化している様子が示されているが、基板11の表面付近では変調が大きく、したがって屈折率変化分Δnとしては小さくなる。一方、中央部付近では変調が小さく、したがって屈折率変化分Δnとしては、表面付近と比較して大きくなっている。このような屈折率分布の中を光が透過すると、基板11の中央部の光の速度に比べて表面付近の光の速度が速いため、凸レンズとして機能する。すなわち、電圧をかけていない場合の無限大の焦点距離から、有限の焦点距離へと、焦点が移動する。
(電気光学材料)
電気光学効果には、いくつかの次数の異なる電気光学効果が含まれるが、一般的には、1次の電気光学効果(以下、ポッケルス効果という)が利用されている。ポッケルス効果は、屈折率変化が電界に比例する。図2、3に示した構成においては、陽極12と陰極13との間と、陰極14と陽極15との間では、電界の向きが逆になり、屈折率分布も逆になる。従って、ポッケルス効果を利用すると、光がこれら2つの電極対の間を透過すると、屈折率分布による光の偏向が正負で相殺されてしまい、レンズとしての機能を奏さない。
これに対して、2次の電気光学効果(以下、カー効果という)を利用すると、屈折率変化は電界の二乗に比例する。従って、陽極12と陰極13との間と、陰極14と陽極15との間とで、電界の向きが逆になっても、屈折率分布は同じになるので、光の偏向が相殺されることなく、強めあう。
多くの電気光学材料は、反転対称性を有しておらず、ポッケルス効果を発現する。これに対して、一部の電気光学材料は、反転対称性を有しており、ポッケルス効果を発現せず、カー効果が支配的となる。従って、本実施形態の基板11を構成する電気光学材料としては、反転対称性を有する材料を用いることが重要である。
一般に誘電体は、外部から電界を印加すると、それに比例した分極が発生するが、電界を取り去ると、分極はゼロに戻る。しかし、電界を取り去っても有限の分極が残る物質が存在する。外部電界がなくても存在する分極を自発分極という。この自発分極を、外部電界によって向きを反転させることができる物質が存在し、これを強誘電体という。これに対して、強誘電体ではない誘電体を常誘電体と呼ぶことがある。
反転対称性を有する単結晶とは、原子の配列を、ある原点を中心としてx,y,z座標系で反転したとき、元の原子の配列と完全に同じ配列となる結晶をいう。自発分極を有する結晶を、座標軸上で反転すると、自発分極の向きが反転するので、このような結晶は反転対称性を有するとはいえない。従って、強誘電体は自発分極を有するので、反転対称性を有していない。
一方、自発分極を有していても、それを外部電界で反転することができない物質も存在する。このような物質は、反転対称性を有していないが、強誘電体でもないので、反転対称性を有していない物質が全て強誘電体であるわけではない。また、強誘電体であって、かつ反転対称性を有するということは、ありえない。
反転対称性を有する電気光学材料としては、ペロブスカイト型の結晶構造を有する単結晶材料がある。ペロブスカイト型単結晶材料は、使用温度を適切に選択すれば、使用状態において、結晶構造が反転対称性を有する立方晶となる。立方晶相においては、ポッケルス効果を発現せず、カー効果が支配的となる。例えば、最もよく知られたチタン酸バリウム(BaTiO、以下BTという)は、120℃付近において正方晶相から立方晶相へ相転移する。相転移する温度(以下、相転移温度という)を超えた温度であれば、BTの結晶構造は、立方晶となり、カー効果を発現する。
また、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN:KTa1−xNb、0<x<1)を主成分とする単結晶材料は、より好適な特徴を有する。BTは相転移温度が決まっているのに対し、KTNは、タンタルとニオブの組成比により、相転移温度を選択することができる。これにより、室温付近に相転移温度を設定することができる。KTNは、相転移温度よりも高い温度であれば立方晶相となり、反転対称性を有し、大きなカー効果を有する。同じ立方晶相にあっても、より相転移温度に近い方が、カー効果が圧倒的に大きくなる。このため、室温付近に相転移温度を設定することは、大きなカー効果を簡便に実現する上で、非常に重要である。
さらに、KTNに関連する単結晶材料として、結晶の主成分が、周期律表Ia族とVa族から構成されており、Ia族はカリウムであり、Va族はニオブ、タンタルの少なくとも1つを含む材料を用いることができる。また、添加不純物としてカリウムを除く周期律表Ia族、例えばリチウム、またはIIa族の1または複数種を含むこともできる。例えば、立方晶相のKLTN(K1−yLiTa1−xNb、0<x<1、0<y<1)結晶を用いることもできる。
(光路長変調)
KTNの場合について、光路長変調を詳述する。図3の構成において、偏光は、光電界の向きがy軸方向の場合と、z軸方向の場合の2種類がある。それぞれの場合に、光が感じる屈折率変調ΔnとΔnとは、
Figure 0005406292
となって異なる。ここで、nは変調前の屈折率であり、s11とs12は電気光学係数である。s11は正の値であるのに対して、s12は負の値を有し、絶対値はs11の方が大きい。レンズの特性は、下記の式のように、この屈折率変化分を光の進行経路(長さL)にわたって積分した光路長変調Δsによって評価する。
Figure 0005406292
図4に、第1の実施形態にかかる可変焦点レンズの光路長変調の例を示す。光路長変調ΔsとΔsとの分布を、数値計算で求めたものである。比誘電率は20,000、基板11の長さLを7mm、z軸方向の基板の厚さを4mm、4つの電極の幅を0.8mm、同一面上の電極の間隔を4mm、電圧を1000Vとして計算した。図4の横軸は、図2に示したz座標を示し、原点を基板11の中央にとっている。Δsの分布は、下に凸の曲線を成しており、この素子がシリンドリカル凹レンズとして機能することを表す。一方、Δsの分布は上に凸の曲線を成しており、この素子がシリンドリカル凸レンズとして機能することを表す。このKTNの例のように、偏光によって凸レンズになったり、凹レンズになることもある。
(電極の配置)
第1の実施形態では、基板11の上面に陽極12と陰極14を配置し、下面に陰極13と陽極15とを配置している。これと類似した構成として、上面の電極を双方ともに陽極とし、下面の電極を双方ともに陰極にする構成が考えられる。この構成でも可変焦点レンズとして機能するが、以下の点で第1の実施形態の方が優れている。
素子の小型化を考えた場合に、図3の構成において、基板11をz軸方向に小さくする、すなわち基板11の厚さを薄くしようとしても、基板11を透過する光ビームの大きさによって制限されてしまう。そこで、x軸方向に小さくしようとすると、上面の両電極を陽極、下面の両電極を陰極とする構成では、電極の間隔を詰めると、レンズの効果が小さくなってしまう。電極間隔を詰めた極限は、間隔がゼロになって上面の両電極、下面の両電極ともに一体化した電極となる。この場合には、基板11の内部の電界は均一になり、屈折率分布も均一になって、レンズ効果はほとんどなくなってしまう。
一方、第1の実施形態では、上面の陽極12と陰極14とは印加する電位が異なるため、電極間隔を詰めた極限は、両電極が一体になることにはならない。第1の実施形態において電極間隔を詰めると、電界が大きくなるため、逆にレンズ効果は大きくなる。
図5に、第1の実施形態にかかる可変焦点レンズの焦点距離の電極間隔依存性を示す。数値計算で求めた焦点距離を、電極の間隔の関数としてプロットしている。図4の計算条件と同様の条件で、電極間隔の増減と同時に、基板11の長さも同じ分だけ増減して計算した。光の電界は、z軸方向である。縦軸の焦点距離は、小さいほど集光度合いが強く、効果が大きいことを示す。□のプロットは、上面の両電極がともに陽極、下面の両電極がともに陰極の場合であり、電極間隔が小さいと効果が劣化していくことがわかる。○のプロットは、第1の実施形態の場合で、電極間隔が小さいと逆に効果が強くなっている。電極間隔が広がっていくと、2つの電極対の間の相互作用が弱くなっていくので、どちらの構成でも同じような効果に収束していく。基板11の厚さが4mmなので、図5を参照すると、厚さの1.5倍(6mm)よりも、電極間隔が小さい場合に、第1の実施形態の構成が有利である。
上述したように、KTNを用いると、偏光を変えて使い分ければ、凸レンズとして使用することもできるし、凹レンズとして使用することもできる。一方、電気光学結晶に電界を印加すると、圧電効果や電歪効果により、その物理的形状が変化することが知られている。圧電効果とは、歪が印加電界に比例する現象であり、電歪効果とは、歪が印加電界の二乗に比例する現象である。その物理的形状の変化は、圧電効果と電歪効果との和で表される。一般的に、反転対称性を有する電気光学材料においては、圧電効果が生じないため、電歪効果のみとなる。この電歪効果により、屈折率の分布が、上述したような電界分布の計算から求めた分布から、若干ずれが生じることがある。
この点では、Δn(または光路長s)の方が、Δn(または光路長s)よりも計算値と実際の値とのずれが少ない。すなわち、第1の実施形態の電極構成によれば、全体的に電界のz成分が大きくなるが、光の振動電界を、そのz軸に平行に合わせた方が、計算通りの屈折率分布に合致しやすいので好適である。もちろん、電界のx成分も大きくなるが、第1の実施形態の光軸設定では、光の振動電界をx軸に平行にすることはできない。
(電極材料)
電気光学材料に高い電圧を印加すると、電極から電荷が注入され、結晶内に空間電荷が発生しうる。この空間電荷により電圧の印加方向に電界の大きさの傾斜が生じるために、屈折率の変調にも傾斜が生じる。従って、電気光学材料をレンズとして機能させるための所望の屈折率分布を得るため、または、電気光学材料を透過する光が偏向しないようにするためには、基板11に電圧を印加した際に、基板11の内部に空間電荷が形成されない方がよい。
空間電荷の量は、キャリアの注入効率に依存する量であるため、電極から注入されるキャリアの注入効率は小さい方がよい。電気光学結晶において電気伝導に寄与するキャリアが電子の場合には、電極材料の仕事関数が大きくなるにつれて、電極と基板との間はショットキー接合に近づき、キャリアの注入効率は減少する。従って、電極は、電気光学材料とショットキー接合が形成される材料であることが好ましい。具体的には、電気光学結晶において電気伝導に寄与するキャリアが電子の場合には、電極材料の仕事関数は、5.0eV以上であることが好ましい。例えば、仕事関数が5.0eV以上の電極材料として、Co(5.0)、Ge(5.0)、Au(5.1)、Pd(5.12)、Ni(5.15)、Ir(5.27)、Pt(5.65)、Se(5.9)を用いることができる。()内は仕事関数を示し、単位はeVである。
一方、電気光学結晶において電気伝導に寄与するキャリアが正孔の場合には、正孔の注入を抑えるために、電極材料の仕事関数は、5.0eV未満であることが好ましい。例えば、仕事関数が5.0eV未満の電極材料として、Ti(3.84)等を用いることができる。なお、Tiの単層電極は酸化して高抵抗になるので、一般的には、Ti/Pt/Auを順に積層した電極を用いて、Tiの層と電気光学結晶とを接合させる。さらに、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnOなどの透明電極を用いることもできる。
(応用例)
以上、様々なレンズを構成する基本単位となるシリンドリカル可変焦点レンズについて述べた。次に、この基本単位を用いた応用例について説明する。図6に、本発明の第2の実施形態にかかる可変焦点レンズを示す。上述した基本単位を、光軸方向に沿って直列に配置した構成である。1つの基板21に複数の電極22a,22b,23a,23b,24a,24b・・・を配置し、互いに隣り合う電極対には反対の電圧を印加する。このように素子を構成すれば、より低い電圧でも、大きなレンズ効果を得ることができる。電極対の数は、2つ以上あれば、偶数でも奇数でもよい。
(2軸可変焦点レンズ)
上述したように、通常の球面レンズを実現するには、2つの基本単位素子を、光軸方向(x軸)に沿って直列に配置し、電界の印加方向が互いに90度の角度をなすように配置すればよい。しかし、KTNのような反転対称性を有する単結晶材料の場合、図4に示したように、偏光によって凸レンズから凹レンズへとレンズ効果が全く逆転する場合がある。球面レンズを実現するために、z軸方向に電界が振動する光を第1の基本単位素子に入射し、z軸方向に集光したのちに、この光をそのまま、90度回転した第2の基本単位素子に入射する。しかしながら、この構成によれば、y軸方向には発散されてしまい、球面レンズとして機能しない。
球面レンズとして正常に機能させるためには、第2の基本単位素子に入射する前に、この素子に合わせて偏光方向も90度回転さなければならない。そこで、第1の基本単位素子と第2の基本単位素子との間に、偏光回転素子を挿入した構造とする。偏光回転素子としては様々なものがあるが、半波長板がもっとも一般的に用いられる。
半波長板は、互いに直交する2つの偏波の間に、波長の半分に相当する位相ずれ、すなわちπラジアンだけの位相ずれを生じさせる光学素子である。典型的には、複屈折性の材料を板状に加工したものからなる。KTNのような反転対称性を有する単結晶材料は、通常、複屈折はないが、電界を一方向に印加することにより、電界に平行な方向と、これに直交する方向とで複屈折が生じる。この性質を利用して、KTNによって半波長板を構成することができる。
図7に、本発明の第3の実施形態にかかる可変焦点レンズの構成を示す。2軸可変焦点レンズは、第1の基本単位素子31とKTN半波長板32と第2の基本単位素子33とが、光軸方向(x軸)に沿って直列に配置されている。第1の基本単位素子31と第2の基本単位素子33とは、光軸に対して垂直に電界を印加し、電界の印加方向が互いに90度の角度をなすように配置される(図7ではz軸とy軸)。KTN半波長板32の形状は、直方体状であり、互いに対向する2面の面上に、ほぼ全面にわたって電極膜が形成されている。この電極対に電圧を印加することにより、これら2面に垂直な電界が均一に形成される。この電界の向きが、第1の基本単位素子31と第2の基本単位素子33の電界の印加方向に対して、45度の角度をなすように配置する。これにより、第1の基本単位素子31を透過した光の偏光が90度回転する。
半波長板も、上述した基本単位素子であるシリンドリカル可変焦点レンズと同じくKTNで構成する場合、2つの電気光学材料からなる基板を一体に成型し、第1の基本単位素子31用の電極と、KTN半波長板32用の電極と、第2の基本単位素子33用の電極とを順に並べて取り付ける。このようにして、一体化した球面可変焦点レンズを構成することもできる。
(顕微鏡)
以上、本実施形態にかかる可変焦点レンズについて説明したが、顕微鏡の光学系には、図7に示した2軸可変焦点レンズを用いるのが好適である。半波長板は、KTNであっても、一般的な水晶製、雲母製、樹脂製などであってもよい。
図8に、本発明の一実施形態にかかる顕微鏡の構成を示す。顕微鏡は、測定対象41から発する光を、レンズ43(対物レンズ)により平行光線にし、2軸可変焦点レンズ47により焦点を調整し、さらにレンズ44により再び集光する。集光した点の位置に、そのスポット径と同程度の直径のピンホール45をおき、透過した光のパワーを光検出器46で測定する。
2軸可変焦点レンズがない場合は、図1に示したのと同じく、光線はほぼ平行光線となっており、下の黒丸の測定対象41が観測位置となっている。2軸可変焦点レンズ47が挿入されていても、オフの状態(電圧がゼロの状態)では、平行光線はそのまま平行光線として透過するため、同じく下の黒丸の測定対象41が観測位置となる。ここで2軸可変焦点レンズ47に電圧をかけると、このレンズの集光作用のため、光線は図8の破線に示したように変化し、その結果、観測位置は上方の測定対象42に移動する。
これにより、共焦点顕微鏡の高さ方向の走査につき、走査速度が向上し、機械的な操作と比較すると最大5桁程度の改善が期待できる。必要に応じて、2軸可変焦点レンズ47とレンズ44との間、またはレンズ43と2軸可変焦点レンズ47との間に、2次元ビーム偏向器を挿入すれば、高速な3次元の操作が可能となる。
なお、本実施形態は、共焦点顕微鏡に限定されるものではなく、通常の顕微鏡の光学系に可変焦点レンズを挿入しても良い。通常の光学系の場合、図8の光検出器とピンホールは不要であり、レンズ44には接眼レンズなどの光学系を用いればよい。
また、上記の顕微鏡の説明では、2軸可変焦点レンズを凸レンズと仮定した説明を行ったが、当然、偏光を変えるなどして、凹レンズとして用いても良い。
図2に示したように、電気光学材料を板状に加工した基板11の上面および下面に、陽極12,陰極13を,陰極14,陽極15を形成する。基板11は、KTN単結晶から、ブロックを切り出し、7mm×7mm×(厚さT=)4mmの形状に成形する。基板11の6面とも、結晶の(100)面に平行とし、光学研磨を行っている。このKTN単結晶は、相転移温度35℃であったので、これを少し上回る40℃で使用する。この温度での比誘電率は20,000である。4つの電極は、0.8mm×7mmの帯状で、同一面上の電極の間隔は4mmとする。2つの電極対は、基板11の7mm×7mmの面上に、白金(Pt)を蒸着して形成されている。電極の各辺は、基板11の辺に平行である。
この可変焦点レンズを、40℃で温度制御した状態で、コリメートしたレーザ光を入射する。光の偏光は直線で、振動電界の方向はz軸方向である。上下電極間に1000Vの電圧を印加すると、基板11から出射する光は、z軸方向に集光され、シリンドリカル凸レンズとして機能する。焦点距離は72cmである。ここで、印加電圧を500Vにすると、集光効果は小さくなり、焦点距離は290cmになる。また、電圧を印加しない場合は、当然集光効果はなく、焦点距離は無限大である。従って、印加電圧を0Vから1000Vまで変化させることにより、焦点距離を無限大から72cmまで変化させることができる。焦点距離の変更は、印加電圧を変更するだけなので、応答時間は1μs以下であり、従来の可変焦点レンズの応答時間と比較して、3桁以上改善されている。
また、光の進行方向はそのままに、偏光を90度回転させて測定を行う。つまり、光の振動電界の方向をy軸方向とする。この場合は、凹レンズとして機能する。印加電圧が1000Vのとき、焦点距離は93cmである。従って、印加電圧を0Vから1000Vまで変化させることにより、焦点距離を無限大から93cmまで変化させることができる。
この可変焦点レンズを2個と半波長板とを、図7に示したように組み合わせて、2軸可変焦点レンズを構成する。半波長板には、水晶製のものを用いる。2個の可変焦点レンズは同じ特性であり、また、半波長板を挟んで近接して配置することにより、2個の可変焦点レンズに同じ電圧をかけることにより、通常の球面レンズと同様な集光が可能である。
さらに、この2軸可変焦点レンズを図9に示した光学系の顕微鏡に組み込む。レンズ43(対物レンズ)の焦点距離は、25mmであった。2個の可変焦点レンズに電圧をかけない状態で焦点を合わせ、そこから電圧をかけていくと、ピントが合う位置は上方に移動する。印加電圧が1500Vのとき、測定対象の観測位置が元の位置から1.5mm上方に移動した。また、焦点の位置を1.5mm移動するのに要する時間も、1μs以下を実現することができた。

Claims (16)

  1. 反転対称性を有する単結晶からなる電気光学材料と、
    該電気光学材料の第1の面上に形成された第1の陽極と、
    前記第1の面に対向する第2の面上に形成され、前記第1の陽極と向かい合う位置に形成された第1の陰極と、
    前記第1の面上に形成され、前記第1の陽極とは間隔をおいて配置された第2の陰極と、
    前記第2の面上に形成され、前記第2の陰極と向かい合う位置に形成され、前記第1の陰極とは間隔をおいて配置された第2の陽極とを備え、
    前記第1の面と直交する第3の面から光を入射させたとき、前記第1の陽極および前記第1の陰極からなる第1の電極対の間を透過してから、前記第2の陽極および前記第2の陰極からなる第2の電極対の間を透過して、前記第3の面に対向する第4の面から光が出射するように光軸が設定され、
    前記第1および第2の陽極と前記第1および第2の陰極は、帯状の形状を有し、前記第3の面と平行な長手方向の辺は、互いにすべて平行であり、
    前記第1および第2の電極対の間の印加電圧を変えることにより、前記電気光学材料の前記第4の面から出射された光の焦点を可変することを特徴とする可変焦点レンズ。
  2. 前記電気光学材料は、ペロブスカイト型単結晶材料であることを特徴とする請求項1に記載の可変焦点レンズ。
  3. 前記電気光学材料は、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN:KTa1−xNb、0<x<1)であることを特徴とする請求項2に記載の可変焦点レンズ。
  4. 前記電気光学材料は、結晶の主成分が、周期律表Ia族とVa族から構成されており、Ia族はカリウムであり、Va族はニオブ、タンタルの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の可変焦点レンズ。
  5. 前記電気光学材料は、さらに、添加不純物としてカリウムを除く周期律表Ia族またはIIa族の1または複数種を含むことを特徴とする請求項4に記載の可変焦点レンズ。
  6. 前記第1および第2の陽極と前記第1および第2の陰極は、前記電気光学材料とショットキー接合が形成される材料からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の可変焦点レンズ。
  7. 前記第1の陽極と前記第2の陰極との間の間隔G、前記電気光学材料の厚さTとすると、G<1.5Tであることを特徴とする請求項に記載の可変焦点レンズ。
  8. 反転対称性を有する単結晶からなる電気光学材料と、
    該電気光学材料の表面に形成された2N個の電極とを備え、
    1≦k≦N−1の時、前記電気光学材料の第1の面上に形成され、光の入射側からk番目の電極をk番目の陽極とし、前記第1の面に対向する第2の面上に形成され、前記k番目の陽極と向かい合う位置に形成された電極をk番目の陰極とし、
    前記第1の面上に形成され、前記k番目の陽極とは間隔をおいて配置された電極をk+1番目の陰極とし、前記第2の面上に形成され、前記k+1番目の陰極と向かい合う位置に形成され、前記k+1番目の陰極とは間隔をおいて配置された電極をk+1番目の陽極とし、
    前記第1の面と直交する第3の面から光を入射させたとき、前記k番目の陽極および前記k番目の陰極からなる電極対の間と、N番目の陽極およびN番目の陰極からなる電極対の間を透過して、前記第3の面に対向する第4の面から光が出射するように光軸が設定され、
    N個の陽極およびN個の陰極は、帯状の形状を有し、前記第3の面と平行な長手方向の辺は、互いにすべて平行であり、
    前記k番目およびN番目の間の印加電圧を変えることにより、前記電気光学材料の前記第4の面から出射された光の焦点を可変することを特徴とする可変焦点レンズ。
  9. 光学系に可変焦点レンズを含む顕微鏡であって、
    該可変焦点レンズは、第1の基本単位素子と半波長板と第2の基本単位素子とが、光軸方向に沿って直列に配置され、前記第1の基本単位素子と前記第2の基本単位素子とは、光軸に対して垂直に電界を印加し、電界の印加方向が互いに90度の角度をなすように配置され、前記半波長板は、前記第1の基本単位素子と前記第2の基本単位素子の電界の印加方向に対して、45度の角度をなすように配置され、
    前記第1および第2の基本単位素子の各々は、
    反転対称性を有する単結晶からなる電気光学材料と、
    該電気光学材料の第1の面上に形成された第1の陽極と、
    前記第1の面に対向する第2の面上に形成され、前記第1の陽極と向かい合う位置に形成された第1の陰極と、
    前記第1の面上に形成され、前記第1の陽極とは間隔をおいて配置された第2の陰極と、
    前記第2の面上に形成され、前記第2の陰極と向かい合う位置に形成され、前記第1の陰極とは間隔をおいて配置された第2の陽極とを備え、
    前記第1の面と直交する第3の面から光を入射させたとき、前記第1の陽極および前記第1の陰極からなる第1の電極対の間を透過してから、前記第2の陽極および前記第2の陰極からなる第2の電極対の間を透過して、前記第3の面に対向する第4の面から光が出射するように光軸が設定され、
    前記第1および第2の陽極と前記第1および第2の陰極は、帯状の形状を有し、前記第3の面と平行な長手方向の辺は、互いにすべて平行であり、
    前記第1および第2の電極対の間の印加電圧を変えることにより、前記電気光学材料の前記第4の面から出射された光の焦点を可変することを特徴とする顕微鏡。
  10. 前記電気光学材料は、ペロブスカイト型単結晶材料であることを特徴とする請求項に記載の顕微鏡。
  11. 前記電気光学材料は、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN:KTa1−xNb、0<x<1)であることを特徴とする請求項10に記載の顕微鏡。
  12. 前記電気光学材料は、結晶の主成分が、周期律表Ia族とVa族から構成されており、Ia族はカリウムであり、Va族はニオブ、タンタルの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の顕微鏡。
  13. 前記電気光学材料は、さらに、添加不純物としてカリウムを除く周期律表Ia族またはIIa族の1または複数種を含むことを特徴とする請求項12に記載の顕微鏡。
  14. 前記第1および第2の陽極と前記第1および第2の陰極は、前記電気光学材料とショットキー接合が形成される材料からなることを特徴とする請求項ないし13のいずれかに記載の顕微鏡。
  15. 前記第1の陽極と前記第2の陰極との間の間隔G、前記電気光学材料の厚さTとすると、G<1.5Tであることを特徴とする請求項に記載の顕微鏡。
  16. 前記第1および第2の基本単位素子の各々は、前記電気光学材料の表面に形成された2N個の電極を備え、
    1≦k≦N−1の時、前記電気光学材料の第1の面上に形成され、光の入射側からk番目の電極をk番目の陽極とし、前記第1の面に対向する第2の面上に形成され、前記k番目の陽極と向かい合う位置に形成された電極をk番目の陰極とし、
    前記第1の面上に形成され、前記k番目の陽極とは間隔をおいて配置された電極をk+1番目の陰極とし、前記第2の面上に形成され、前記k+1番目の陰極と向かい合う位置に形成され、前記k+1番目の陰極とは間隔をおいて配置された電極をk+1番目の陽極とし、
    前記第1の面と直交する第3の面から光を入射させたとき、前記k番目の陽極および前記k番目の陰極からなる電極対の間と、N番目の陽極およびN番目の陰極からなる電極対の間を透過して、前記第3の面に対向する第4の面から光が出射するように光軸が設定され、
    N個の陽極およびN個の陰極は、帯状の形状を有し、前記第3の面と平行な長手方向の辺は、互いにすべて平行であり、
    前記k番目およびN番目の間の印加電圧を変えることにより、前記電気光学材料の前記第4の面から出射された光の焦点を可変することを特徴とする請求項ないし15のいずれかに記載の顕微鏡。
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