以下、本発明の実施形態について説明する。
図1(a)〜(f)に、本発明の一実施形態に係る電子基板の製造方法を示す。本実施形態に係る製造方法で製造することのできる電子基板としては、例えば、画素制御基板、発光モジュール、プリント基板等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態では、最初に、図1(a)に示すように、溶解性または膨潤性の剥離層2が設けられた工程基板1を作製する。
工程基板1は、後述する配線パターンの形成、配線パターンと電子素子の接続固定および樹脂封止を行うときに、支持体として使用されるものであり、それらの工程後に剥離除去される。
工程基板1としては、ガラス、合成樹脂、金属、セラミックス等からなる板状のものを使用することができる。ガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリカーボネートなどが挙げられる。金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム等、またはそれらの合金、例えばステンレススチール等が挙げられる。セラミックスとしては、例えば、アパタイト、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素等が挙げられる。
上記の中でも、耐熱性と透明性に優れるガラスが好ましい。配線パターンを形成するときに熱が印加され、また、硬化型樹脂が紫外線硬化性の場合には、工程基板1側から工程基板1を透過させて紫外線を照射することができるからである。
工程基板1の厚さは特に限定されないが、0.1〜10mmが好ましく、特に0.5〜5mmが好ましい。
剥離層2は、水、水溶液、有機溶媒等の液体に溶解するか、あるいはそれらの液体と接触すると膨潤するものである。剥離層2が溶解または膨潤することで、電子基板10に力、すなわちダメージを加えることなく、工程基板1を容易に剥離することができる(図1(f)参照)。
水に溶解する材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等の合成高分子、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、トウモロコシ澱粉等の天然澱粉、それらを酸化、アルファ化、エーテル化またはエステル化処理した加工澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体などの他、カゼイン、セラック、アラビアゴム、デキストリン等が挙げられる。
水溶液に溶解する材料としては、例えば、アルカリ水溶液に溶解するポジ型フォトレジスト(ノボラック樹脂)、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸等が挙げられる。なお、本明細書では、水に溶解するもの、および水溶液に溶解するものを含めて水溶性という。
有機溶媒に溶解する材料としては、例えば、天然ゴム、アスファルト、クロロプレン系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、スチレン系樹脂、ブチルゴム、ポリサルファイド、シリコーンゴム、酢酸ビニル、ニトロセルロース等が挙げられる。使用可能な有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、エチルセルソルブ、メチルセルソルブ等のアルコキシエタノール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒などが挙げられる。
一方、水、水溶液、有機溶媒等の液体と接触すると膨潤する材料としては、上記材料の架橋物を用いることができ、例えば、ポリアクリル酸の架橋物、ポリアクリル酸共重合体の架橋物、ポリアクリル酸中和物の架橋物等が挙げられる。
上記材料の中でも、剥離性に優れるとともに、取り扱いが容易で環境への悪影響がなく、低コストで剥離層2を形成することのできる水溶性の材料が好ましく、中でも特に、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等が好ましい。
剥離層2の厚さは、0.3〜50μmが好ましく、特に0.5〜20μmが好ましい。
工程基板1に対する剥離層2の形成方法としては、特に限定されるものではなく、剥離層2を構成する材料をスピンコート法やバーコート法などの常法により工程基板1に塗布して剥離層2を形成すればよい。
本実施形態では、次に、図1(b)に示すように、上記工程基板1の剥離層2上に機能性膜3を形成する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、この段階での機能性膜3の形成、または機能性膜3の形成自体は任意である。
機能性膜3は、電子基板10に特定の機能を付与するものであり、例えば、液晶配向膜、放熱性膜、ガスバリア膜等が挙げられる。液晶配向膜としては、例えば、ポリイミド膜、ポリアミドイミド膜等が挙げられる。放熱性膜としては、例えば、シリコーン系樹脂、炭化ケイ素、窒化ホウ素等からなる膜が挙げられる。ガスバリア膜としては、例えば、シリカ、窒化珪素等からなる薄膜が挙げられる。なお、機能性膜3上に直接配線パターンが形成される場合には、機能性膜3は導電性を有さない材料からなる必要がある。
機能性膜3の厚さは、機能性膜3の種類によっても異なるが、通常0.05〜200μmが好ましく、特に0.1〜100μmが好ましい。
機能性膜3の形成方法は、機能性膜3の種類によって異なる。例えば、液晶配向膜は、膜を構成する材料および所望により溶剤を含有する塗布液をスピンコート法等により塗布し、加熱乾燥することによって形成することができる。また、ガスバリア膜および放熱性膜は、化学蒸着(CVD)法、スパッタリング法等の気相成長法または被膜形成用塗布液を用いる塗布法によって形成することができる。
機能性膜3を形成した後、図1(c)に示すように、機能性膜3上に配線パターン4を形成する。配線パターン4は、導電性の金属や金属酸化物等を用いて形成することができる。形成方法としては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、印刷等、公知の方法が挙げられ、使用する電子素子に応じて必要なパターニングを行えばよい。
配線パターン4の厚さは、通常0.01μm〜10μmであり、好ましくは0.03〜5μmである。
配線パターン4を形成した後、図1(d)に示すように、配線パターン4に電子素子5を接続固定する。電子素子5としては、例えば、ICやLSIなどの回路チップ、発光ダイオードチップ、コンデンサー、抵抗等が挙げられ、目的とする電子基板に応じて適宜選択される。
なお、「配線パターン4に電子素子5を接続固定する」とは、配線パターン4に対して電子素子5を電気的に接続するとともに、物理的に固定することをいう。
電子素子5の接続固定には、一般的には接着剤6が用いられる。接着剤6としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の耐久性、耐薬品性に優れた硬化型の樹脂を用いることが好ましい。
電子素子5の端子(電極パッド)を配線パターン4に接着する場合、接着剤6としては、導電性を有するものを使用する。この場合、上記樹脂中に導電性材料、例えば、金、銀、銅、ニッケル等の金属の粒子や繊維状物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子の粉体や繊維状物;カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等を配合したものを使用することが好ましい。導電性材料は、通常、樹脂100質量部に対して10〜500質量部、好ましくは30〜300質量部の割合で配合される。
一方、電子素子5の端子(電極パッド)を配線パターン4に直接接触させる場合には、非導電性の接着剤6で電子素子5の端子以外の部分を接着し固定すればよい。
電子素子5を接続固定した後、図1(e)に示すように、硬化型樹脂7を用いて電子素子5を封止する。封止方法としては、低圧トランスファー成形機を用いて成形する方法、ディスペンサーにより液体状の硬化型樹脂7をドリップコーティングする方法、シート状の硬化型樹脂7を圧着する方法等を行った後、硬化型樹脂7を硬化させる方法があるが、シート状の硬化型樹脂7を圧着する方法によれば、電子基板10を品質良く、高い生産性のもとで効率的に製造することができる。
また、本実施形態では、シート状の硬化型樹脂7を圧着するときに、電子素子5は配線パターン4に固定されているため、シート状の硬化型樹脂7の圧着により電子素子5が位置ずれするおそれはなく、したがって、電子素子5は配線パターン4に位置精度良く配置された状態を保つ。
シート状の硬化型樹脂7としては、剥離シートの剥離面上に硬化型樹脂7からなる硬化型樹脂層を形成した硬化型樹脂シートを使用することが好ましい。
硬化型樹脂層は、
(1)硬化前には、硬化型樹脂シートの圧着時の温度(0〜150℃)における貯蔵弾性率が1×103Pa以上、1×107Pa未満であり、硬化後には、25℃における貯蔵弾性率が1×107Pa以上であるか、
(2)硬化前には、25℃における貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paであり、硬化後には、25℃における貯蔵弾性率が1×107Pa以上である
ことが好ましい。なお、貯蔵弾性率は、特開2006−323335号公報(特許文献1)に記載の方法と同様の方法で、それぞれの温度において測定する。
硬化前の硬化型樹脂層が上記のような貯蔵弾性率を有することで、硬化型樹脂層の形状保持性および電子素子5の埋め込み性が良好となる。また、硬化後の硬化型樹脂層が上記のような貯蔵弾性率を有することで、埋め込まれた電子素子5の保持性が良好となる。
硬化型樹脂層の厚さは、電子素子5の厚さにもよるが、通常50〜1000μm程度、好ましくは80〜500μmである。
上記のような硬化型樹脂層を構成する硬化型樹脂7としては、エネルギー線硬化型高分子材料を使用することが好ましく、エネルギー線硬化型高分子材料としては、例えば(1)粘着性アクリル系重合体とエネルギー線硬化型重合性オリゴマー及び/又は重合性モノマーと所望により光重合開始剤とを含む高分子材料、(2)側鎖に重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型官能基が導入されてなる粘着性アクリル系重合体と所望により光重合開始剤とを含む高分子材料などを挙げることができる。
(1)の高分子材料において、粘着性アクリル系重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、所望により用いられる活性水素をもつ官能基を有する単量体及び他の単量体との共重合体、すなわち(メタ)アクリル酸エステル共重合体を好ましく挙げることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸・・・」とは「アクリル酸・・・」及び「メタアクリル酸・・・」の両方を意味する。
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、所望により用いられる活性水素をもつ官能基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体中、(メタ)アクリル酸エステルは5〜100重量%、好ましくは50〜95重量%含有され、活性水素をもつ官能基を有する単量体は0〜95重量%、好ましくは5〜50重量%含有される。
また、所望により用いられる他の単量体の例としては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体中、これらの単量体は、0〜30重量%含有することができる。
(1)の高分子材料において、粘着性アクリル系重合体として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量は、重量平均分子量で30万以上が好ましい。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、エネルギー線硬化型重合性オリゴマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
上記重合性オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリスチレン換算の値で、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。
上記重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、エネルギー線硬化型重合性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボニルなどの単官能性アクリル酸エステル類、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールアジペートエステル、ジ(メタ)アクリル酸ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ジ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジシクロペンテニル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンオキシド変性リン酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸アリル化シクロヘキシル、ジ(メタ)アクリル酸イソシアヌレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンエステル、トリ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパンエステル、イソシアヌル酸トリス(アクリロキシエチル)、ペンタ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールエステルなどが挙げられる。これらの重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの重合性オリゴマーや重合性モノマーの使用量は、エネルギー線の印加により、硬化後の高分子材料が前述の性状を有するように選定されるが、通常(メタ)アクリル酸エステル共重合体の固形分100質量部に対し、3〜300質量部配合することができる。
また、エネルギー線として、通常紫外線又は電子線が照射されるが、紫外線を照射する際には、光重合開始剤を用いることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン)などが挙げられる。これらは1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の配合量は、上述のエネルギー線硬化型高分子材料の固形分100質量部に対し、通常0.1〜10質量部である。
次に、上記(2)の高分子材料において、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型官能基が導入されてなる粘着性アクリル系重合体としては、例えば前述の(1)の高分子材料において説明した粘着性アクリル系重合体のポリマー鎖に−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの活性点を導入し、この活性点とラジカル重合性不飽和基を有する化合物を反応させて、当該粘着性アクリル系重合体の側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型官能基を導入してなるものを挙げることができる。
粘着性アクリル系重合体に上記活性点を導入するには、当該粘着性アクリル系重合体を製造する際に、−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの官能基と、ラジカル重合性不飽和基とを有する単量体又はオリゴマーを反応系に共存させればよい。
具体的には、前述の(1)の高分子材料において説明した粘着性アクリル系重合体を製造する際に、−COOH基を導入する場合には(メタ)アクリル酸などを、−NCO基を導入する場合には、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアナートなどを、エポキシ基を導入する場合には、(メタ)アクリル酸グリシジルなどを、−OH基を導入する場合には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、モノ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオールエステルなどを、−NH2基を導入する場合には、(メタ)アクリルアミドなどを用いればよい。
これらの活性点と反応させるラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアナート、(メタ)アクリル酸グリシジル、モノ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、モノ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、モノ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンエステルなどの中から、活性点の種類に応じて、適宜選択して用いることができる。
このようにして、粘着性アクリル系重合体の側鎖に、上記活性点を介してラジカル重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型官能基が導入されてなる粘着性アクリル系重合体、すなわち(メタ)アクリル酸エステル共重合体が得られる。
このエネルギー線硬化型官能基が導入された(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、重量平均分子量が100,000以上のものが好ましく、特に300,000以上のものが好ましい。なお、上記重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の値である。
また、所望により用いられる光重合開始剤としては、前述の(1)の高分子材料の説明において例示した光重合開始剤を用いることができる。
上記の(1)及び(2)のエネルギー線硬化型高分子材料においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
上記架橋剤としては、例えばポリイソシアナート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアナート化合物が好ましく用いられる。この架橋剤は、上述の(メタ)アクリル酸エステル共重合体の固形分100質量部に対して、0〜30質量部配合することができる。
ここで、ポリイソシアナート化合物の例としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナートなどの脂環式ポリイソシアナートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。これらの架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記の(1)及び(2)のエネルギー線硬化型高分子材料は、弾性率をコントロールするために、(1)のエネルギー線硬化型高分子材料に対し(2)の側鎖にラジカル重合性不飽和基のエネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体を加えることができる。同様に(2)のエネルギー線硬化型高分子材料に対し(1)の粘着性アクリル系重合体、又はエネルギー線硬化型重合性オリゴマーやエネルギー線硬化型重合性モノマーを加えることができる。
上記剥離シートとしては、特に制限はないが、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムにシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布して剥離剤層を設けたものなどを使用することができる。この剥離シートの厚さは、通常20〜150μm程度である。
硬化型樹脂シートの製造方法は特に制限はなく、例えば、剥離シートの剥離面上に、上記のエネルギー線硬化型高分子材料を含む適当な濃度の塗工液を、公知の方法、例えばナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等により、乾燥塗膜の厚さが所定の厚さになるように直接塗布、乾燥して、硬化型樹脂層を形成する方法を用いることができる。なお、上記コート法では硬化型樹脂層が所望の厚さに達しない場合には、複数の硬化型樹脂層を積層して、所望の厚さの硬化型樹脂層とすればよい。
上記のようなエネルギー線硬化型高分子材料からなる硬化型樹脂層を備えた硬化型樹脂シートを使用する場合、剥離シート上の硬化型樹脂層を電子素子5に圧着した後、硬化型樹脂層に対してエネルギー線を照射して当該硬化型樹脂層を硬化させ、最後に剥離シートを剥離除去する。
圧着の圧力は、0.05〜2.0MPa程度であることが好ましく、圧着時の温度は、5〜100℃の範囲であることが好ましい。エネルギー線としては、通常紫外線又は電子線が用いられる。紫外線は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプなどで得られ、一方、電子線は電子線加速器などによって得られる。このエネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。このエネルギー線の照射量としては、硬化した硬化層の貯蔵弾性率が前述の範囲になるように、適宜選択されるが、例えば紫外線の場合には、光量で100〜500mJ/cm2が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
本実施形態における電子基板の製造方法では、最後に、図1(f)に示すように、剥離層2を溶解または膨潤させて、得られる電子基板10から工程基板1を剥離する。なお、得られる電子基板10は、機能性膜3と、機能性膜3の上に形成された配線パターン4と、接着剤6によって配線パターン4に接続固定された電子素子5と、機能性膜3上にて電子素子5を封止した硬化型樹脂7とから構成される。
剥離層2を溶解または膨潤させる方法としては、図1(e)に示す積層体を、水、水溶液、有機溶媒等の液体に浸漬する方法、図1(e)に示す積層体に対し、水、水溶液、有機溶媒等の液体をスプレーする方法等が挙げられる。
本実施形態では、剥離層2を溶解または膨潤させることで、電子基板10にダメージを加えることなく、工程基板1を容易に剥離することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
述した通りである。
〔実施例1〕
(1)硬化型樹脂シートの作製
メタクリル酸メチル98質量部とメタアクリル酸2−ヒドロキシエチル2質量部との比率からなるメタクリル酸エステル共重合体の酢酸エチル溶液(固形分30質量%)の固形分100質量部に対し、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製,商品名「ライトアクリレートDCPA」)を180質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,商品名「イルガキュア184」)を6質量部、架橋剤としてポリイソシナート化合物(東洋インキ製造社製,「BHS−8515」,固形分37.5質量%)を1.5質量部加えて攪拌し、これを塗工液とした。
得られた塗工液を、重剥離型剥離フィルム(リンテック社製,商品名「PET3811」)の剥離処理面にナイフコーターを用いて塗工し、90℃で2分間加熱して乾燥させて、厚さ50μmの硬化型樹脂層を形成した。同様にして、軽剥離型剥離フィルム(リンテック社製,商品名「PET3801」)の剥離処理面に厚さ50μmの硬化型樹脂層を形成した。次に、重剥離型剥離フィルム上の硬化型樹脂層に、軽剥離型剥離フィルム上の硬化型樹脂層を積層し、軽剥離型剥離フィルムを剥離する工程を繰り返し、重剥離型剥離フィルムと軽剥離型剥離フィルムとの間に厚さ500μmの硬化型樹脂層を有する硬化型樹脂シートを作製した。
(2)電子基板の作製
工程基板としての無アルカリガラス基板(コーニング社製,商品名「イーグル2000」,厚さ0.7mm,縦100mm,横100mm)に、ポジ型液状フォトレジスト(東京応化工業社製,商品名「OFPR−800」)を、スピンコーターを用いて回転数800rpmで厚さ2μmになるように塗布して、フォトレジストからなる剥離層を形成した。
上記工程基板の剥離層上に、液晶配向剤(日産化学社製,商品名「サンエバーSE−5291」)を、スピンコーターを用いて厚さ2μmになるように塗布して、180℃で60分間加熱し、機能性膜として液晶配向膜を形成した。
得られた液晶配向膜上に、格子状の空間パターンを設けたメタルマスク(格子状の空間パターン部は配線が形成され、メタル部は遮蔽され配線が形成されない)を用い、スパッタリング法(アルミニウム(Al)ターゲット)により、厚さ50nmの格子状のアルミニウム配線パターンを形成した。
上記格子状の配線パターンの交差部に、電子素子としてICチップ(厚さ50μm)を、異方導電性接着剤(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス社製,商品名「FP2322D」)を用いて当該ICチップの電極パッドと配線パターンとが導通するようにして接続固定した。接続固定したICチップの数は10個とした。
次に、上記(1)で得られた硬化型樹脂シートの軽剥離型剥離フィルムを剥離し、硬化型樹脂層によってICチップを覆うように積層した。硬化型樹脂シートの重剥離型剥離フィルム側に厚さ0.7mmのガラス板を載置し、室温下、圧力0.3MPaの条件で押圧した状態で、工程基板側からフュージョン社製Hバルブを光源とする紫外線(光量300mJ/cm2)を照射し、硬化した硬化型樹脂によりICチップを封止して電子基板の積層体を得た。なお、紫外線の光量は、光量照度計(ジーエス・ユアサ・ライティング社製,商品名「UVR−N1」)を用いて測定した。
ガラス板を除去した後、電子基板の積層体をアルカリ現像液(東京応化工業社製,商品名「NMD−3」)に10分間浸漬して剥離層を溶解し、工程基板を剥離して電子基板を得た。
〔実施例2〕
実施例1で用いた工程基板としての無アルカリガラス基板に、ポリビニルアルコール(クラレ社製,商品名「ポバールPVA117H*」)の水溶液(2質量%)を、スピンコーターを用いて回転数800rpmで乾燥後の厚さが1μmになるように塗布し、120℃で2分間乾燥して剥離層を形成した。
上記剥離層上に実施例1と同様の操作を行うことにより、電子基板の積層体を作製した。その電子基板の積層体を97℃の熱水中に60分間浸漬して剥離層を溶解し、工程基板を剥離して電子基板を得た。
〔実施例3〕
実施例2と同様にして、工程基板としての無アルカリガラス基板上にポリビニルアルコールを塗布し剥離層を形成した。その剥離層上に、機能性膜としてシリコーンゴム製の放熱性膜(電気化学工業社製,商品名「BFG30」)を形成した。得られたシリコーンゴム膜上に、実施例1と同様の方法を用いて、配線パターンを形成し、配線パターン上に発光ダイオードチップ(日亜化学工業社製,商品名「NESWC04T」,チップ厚さ:約350μm)を接続固定した。
次に、実施例1と同様の硬化型樹脂シートの軽剥離型剥離フィルムを剥離し、硬化型樹脂層によって発光ダイオードチップを覆うように積層した。硬化型樹脂シートの重剥離型剥離フィルム側に厚さ0.7mmのガラス板を載置し、室温下、圧力0.3MPaの条件で押圧した状態で、工程基板側からフュージョン社製Hバルブを光源とする紫外線(光量300mJ/cm2)を照射し、硬化した硬化型樹脂により発光ダイオードチップを封止して電子基板の積層体を得た。
ガラス板を除去した後、電子基板の積層体を97℃の熱水中に60分間浸漬して剥離層を溶解し、工程基板を剥離して電子基板を得た。
〔実施例4〕
実施例1で用いた工程基板としての無アルカリガラス基板に、ポリビニルアルコール(クラレ社製,商品名「ポバールPVA117H*」)の水溶液(2質量%)を、スピンコーターを用いて回転数800rpmで乾燥後の厚さが1μmになるように塗布し、120℃で2分間乾燥して剥離層を形成した。
形成した剥離層上に、実施例3と同様の方法を用いて、配線パターンの形成、発光ダイオードチップの接続固定及び硬化型樹脂シートによる発光ダイオードチップの封止を行った(機能性膜の形成は無し)。ガラス板を除去した後、電子基板の積層体を97℃の熱水中に60分間浸漬して剥離層を溶解し、工程基板を剥離して電子基板を得た。
〔比較例1〕
実施例1で用いた無アルカリガラス板上に10個のICチップを載置し、実施例1と同様の硬化型樹脂シートの軽剥離型剥離フィルムを剥離し、硬化型樹脂層によってICチップを覆うように積層した。硬化型樹脂シートの重剥離型剥離フィルム側に厚さ0.7mmのガラス板を載置し、室温下、圧力0.3MPaの条件で押圧した状態で、工程基板側からフュージョン社製Hバルブを光源とする紫外線(光量300mJ/cm2)を照射し、硬化した硬化型樹脂によりICチップを封止して電子基板の積層体を得た。ガラス板を除去した後、ICチップが封止された樹脂層(電子基板)を折り曲げるように湾曲させながら剥離して、電子基板を得た。
〔試験例1〕(位置精度(ずれ量)の測定)
実施例及び比較例で得られた電子基板において、ICチップまたは発光ダイオードチップの封止前後の位置ずれをデジタル顕微鏡を用いて測定し、10個のチップの位置ずれの平均値をずれ量とした。
位置ずれは、実施例においては、チップを接続固定した位置からのずれを測定することにより測定し、比較例においては、チップを無アルカリガラス板上に載置した位置からのずれを測定することにより行った。得られたずれ量の結果を表1に示す。
表1から分かるように、実施例1〜4の電子基板においては、電子素子の位置精度が良好であった。一方、比較例1の電子基板では、電子素子のずれが大きかった。
〔試験例2〕(導通確認)
実施例で得られた電子基板におけるICチップまたは発光ダイオードチップと配線との間の導通確認を、テスターにより行った。その結果、実施例1〜4の電子基板は、全てのチップと配線との間で導通していることが確認された。なお、比較例1で得られた電子基板のおいては、ICチップのずれが大きく、配線パターンを形成することが困難であった。
〔試験例3〕(剥離性の評価)
実施例1〜4及び比較例1で得られた電子基板を、光学顕微鏡を用いて倍率50倍で観察し、クラックの有無を確認した。その結果、実施例1〜4の電子基板にはクラックは観察されなかったが、比較例1の電子基板にはクラックが観察された。すなわち、実施例1〜4の電子基板製造方法においては、工程基板の剥離性が良好であった。