JP6657666B2 - 薄膜パターンの形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜に対して高精細なパターニングを行うことができ、基材レスの薄膜パターンを形成することが可能な薄膜パターンの形成方法に関するものである。
樹脂や金属等の各種材料から形成される材料層は、所望のパターン形状を有することで、光学素子や配線回路等の様々な用途に用いられている。
材料層をパターニングする方法としては、抜き型を用いた打ち抜き方法や、材料層上にレジストパターンを形成して上記材料層をエッチングするフォトリソグラフィ法等が用いられている。例えば、特許文献1では、基板上に金属箔を形成し、フォトリソグラフィ法を用いて金属配線パターンを形成する方法が開示されている。
しかし、打ち抜き方法により材料層をパターニングする場合、抜き刃の押圧に耐え得る厚さが必要となるため、厚さの小さい上記材料層(以下、薄膜とする。)に対してパターニングを行うことは困難であった。また、抜き刃の設計上、高精細な薄膜パターンを形成することは困難であった。
一方、フォトリソグラフィ法は、薄膜に対して高精細なパターニングを行うことが可能であるが、この方法においては、通常、薄膜を基材上に形成し、または基材に貼り合せて積層体とし、薄膜を固定させた状態でパターニングする必要があることから、形成された薄膜パターンは、必然的に基材を備えることとなる。
特開2004−063575号公報
薄膜パターンを備える部品等では、部品全体での薄型化および小型化が要求されるところ、フォトリソグラフィ法で形成される薄膜パターンを所望の部品に取り付ける場合、上記部品上、任意構成となる基材の厚さが、部品の薄型化を阻害してしまう。また、薄膜パターンから基材を剥離することが困難であるため、薄膜パターン単体で用いることができない。このような実情から、基材レスの薄膜パターンの形成が求められる。
しかし、薄膜は自己支持性に劣るため、薄膜単体でパターニングを行おうとすると、搬送時の風圧を受けてバタつきが生じたり、薄膜の面方向にかかる張力の程度により撓みや曲げが生じ、薄膜の平面性を保持することが困難となる。また、薄膜の平面性を保持させるために機械的に固定する方法も想定されるが、薄膜の大きさやパターン形状の大きさによっては上記方法を採用することができない。
このように、薄膜単体で微細なパターニングを行い、基材レスの薄膜パターンを形成することは困難であるという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、薄膜に対して高精細なパターニングを行うことができ、基材レスの薄膜パターンを形成することが可能な薄膜パターンの形成方法を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、基材と、上記基材上に形成された粘着層と、上記粘着層上に形成され、自己支持性を有さない薄膜と、上記薄膜上に形成されたフォトレジスト層と、を有する積層体を準備する準備工程と、上記積層体をパターン露光し、現像することにより、上記フォトレジスト層をパターニングするフォトレジスト層パターニング工程と、上記フォトレジスト層が除去された部分の上記薄膜を除去することにより、上記薄膜をパターニングする薄膜パターニング工程と、上記薄膜から上記フォトレジスト層を剥離する第1剥離工程と、上記薄膜から上記粘着層および上記基材を剥離して、薄膜パターンとする第2剥離工程と、を有することを特徴とする薄膜パターンの形成方法を提供する。
本発明によれば、自己支持性を有さない薄膜が基材上の粘着層と貼り合わされて平面性を保持した状態で固定されるため、薄膜に対して高精細なパターニングを容易に行うことができる。また、第2剥離工程において、パターニング後の薄膜から粘着層が剥離可能となるため、基材レスの薄膜パターンを得ることができる。
上記発明においては、上記薄膜が、金属薄膜であることが好ましい。
上記発明においては、上記粘着層が、微粘着性を示す粘着層であることが好ましい。また、上記発明においては、外部刺激を受けることで剥離する粘着層であることが好ましい。粘着層をこれらの種類のものとすることで、第2剥離工程において、上記薄膜パターン側に糊残りが生じにくく、粘着層等を容易に剥離可能となるからである。
本発明においては、薄膜に対して高精細なパターニングが可能であり、基材レスの薄膜パターンを形成することができるという効果を奏する。
本発明の薄膜パターンの形成方法の一例を示す工程図である。 本発明における薄膜の自己支持性の規定方法を説明する説明図である。 本発明の薄膜パターンの形成方法の他の例を示す工程図である。
以下、本発明の薄膜パターンの形成方法について詳細に説明する。本発明の薄膜パターンの形成方法は、基材と、上記基材上に形成された粘着層と、上記粘着層上に形成され、自己支持性を有さない薄膜と、上記薄膜上に形成されたフォトレジスト層と、を有する積層体を準備する準備工程と、上記積層体をパターン露光し、現像することにより、上記フォトレジスト層をパターニングするフォトレジスト層パターニング工程と、上記フォトレジスト層が除去された部分の上記薄膜を除去することにより、上記薄膜をパターニングする薄膜パターニング工程と、上記薄膜から上記フォトレジスト層を剥離する第1剥離工程と、上記薄膜から上記粘着層および上記基材を剥離して、薄膜パターンとする第2剥離工程と、を有することを特徴とする方法である。
本発明の薄膜パターンの形成方法について、図を参照して説明する。図1は、本発明の薄膜パターンの形成方法の一例を示す工程図である。
まず、図1(a)に示すように、基材2と、基材2上に形成された粘着層3と、粘着層3上に形成された自己支持性を有さない薄膜1Aと、薄膜1A上に形成されたフォトレジスト層4と、を有する積層体10を準備する(準備工程)。次に、図1(b)で示すように、積層体10をパターン露光し、現像することにより、フォトレジスト層4をパターニングする(フォトレジスト層パターニング工程)。続いて、図1(c)で示すように、フォトレジスト層4が除去された部分Pの薄膜1Aをエッチング等により除去することで、薄膜1Aをパターニングし、パターン状の薄膜(薄膜パターン)1とする(薄膜パターニング工程)。
次に、図1(d)に示すように、パターン状の薄膜1からフォトレジスト層4を剥離し(第1剥離工程)、同様に図1(e)に示すように、基材2付きの粘着層3を剥離することで(第2剥離工程)、基材レスの薄膜パターン1が得られる。
本発明によれば、自己支持性を有さない薄膜が、基材上の粘着層と貼り合わされて平面性を保持した状態で固定されるため、薄膜に対して高精細なパターニングを容易に行うことができる。また、第2剥離工程において、パターニング後の薄膜から粘着層が剥離可能となるため、基材レスの薄膜パターンを得ることができる。
さらに、本発明によれば、粘着層により薄膜の搬送が支持されることで、ライン上で薄膜の平面性が保たれた状態で連続してパターニングを行うことが可能であり、歩留まりを向上させることが可能であるという利点を有する。
以下、本発明の薄膜パターンの形成方法について、工程ごとに説明する。
I.準備工程
本発明における準備工程は、基材と、上記基材上に形成された粘着層と、上記粘着層上に形成され、自己支持性を有さない薄膜と、上記薄膜上に形成されたフォトレジスト層と、を有する積層体を準備する工程である。
A.積層体
上記積層体は、基材と、上記基材上に形成された粘着層と、上記粘着層上に形成され、自己支持性を有さない薄膜と、上記薄膜上に形成されたフォトレジスト層と、を有する。
1.薄膜
上記薄膜は、自己支持性を有さないものである。
ここで、薄膜が「自己支持性を有さない」とは、薄膜単体で平面性および形状を保持できないことをいい、薄膜の長さと自重により生じた撓みとの比率により規定される。
具体的には、図2(a)、(b)で示すように、2箇所で支持された薄膜(支持間長さL、厚さT、幅W)の支持間長さL(mm)と、上記薄膜の中央部に自重により生じた撓みh(mm)との比n(=h/L)が、n>0.05であることが好ましい。薄膜が「自己支持性がある」とは、n≦0.01であることをいう。
ここで、薄膜の自己支持性は、薄膜の長さL、幅W、および厚さTの相関で決定される。すなわち、薄膜の幅Wや長さLが大きくなれば撓みhは大きくなる。また薄膜の厚さTが大きくなると自重が増えて撓ませようとする力が増える。このとき、変形に抗する力(伸長・収縮に対する内部の抵抗力)も増える。このため、薄膜の厚さTおよび幅Wは、薄膜の長さLを指定して、長さLと撓みhとの比nが上記範囲内となる大きさで決定される。
なお、図2は薄膜の自己支持性の規定方法を説明する説明図であり、図2(a)は試験方法を示す概略斜視図、図2(b)は自重により撓みが生じた薄膜の概略断面図に相当する。
薄膜を構成する材料は、各種エッチング法によりエッチングが可能な材料であれば特に限定されず、薄膜パターンの用途に応じて適宜選択することができる。例えば、金属材料、樹脂、セラミック(無機化合物)、ガラス等が挙げられる。
金属材料は、一般的な金属薄膜に用いられる金属材料を用いることができ、例えば、アルミニウム、銅、金、銀、白金、ニッケル、スズ、鉄等の金属、あるいはこれらのいずれかを主体とする合金が挙げられる。金属合金は、APC(Ag、Pd、Cuを含む合金)、SUS等が挙げられる。また、MAMと称されるモリブデン、アルミニウム、モリブデンの3層構造体等の金属複合体も適用可能である。
中でも得られる薄膜パターンを配線等として使用する場合に、導電性に優れ、かつ安価であるという理由から、銅材が好ましい。銅材とは銅または銅を主成分とする銅合金の総称である。
樹脂は、フォトレジスト層のパターニングと同時にパターニングされない材料であれば特に限定されず、一般に薄膜の樹脂フィルム等に用いられる熱可塑性樹脂、硬化樹脂、ガラスエポキシ等が挙げられる。硬化樹脂とは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が熱や光照射を受けて硬化されたものをいう。また、PEDOT等の樹脂材料に上述の金属材料を加えた導電性高分子も挙げられる。
セラミック(無機化合物)としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化インジウム錫(ITO)、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化クロム、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコーン添加酸化亜鉛等の金属酸化物、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系などの金属酸化物が2種以上複合された材料、窒化珪素等の金属窒化物、炭化珪素等の金属炭化物等が挙げられる。
薄膜は、自己支持性を有さないものであれば、上述の材料の単体で形成された単一の薄膜であってもよく、材料の異なる薄膜が複数積層された多層膜であってもよい。例えば、特開昭54−125267号で開示されるように、樹脂で形成された薄膜表面に金属箔が形成された薄膜等が挙げられる。
中でも薄膜が上述した金属材料で形成された金属薄膜であることが好ましい。
薄膜は透明性を有していてもよく有さなくてもよく、得られる薄膜パターンの用途等に応じて適宜設定することができる。
薄膜の厚さは、薄膜の自己支持性が発揮されず、薄膜単体でのパターニングが困難な厚さであればよく、薄膜の幅Wおよび長さLと撓みhとの比nにより決定される。すなわち、薄膜の幅Wおよび長さL(mm)を設定して、薄膜の長さLと薄膜の中央部に自重により生じた撓みhとの比nが上述の範囲内となる厚さとなるように設定される。
薄膜を粘着層上に形成する方法は、特に限定されず、薄膜の材料等に応じて適宜選択することができる。金属薄膜であれば、例えば、粘着層に蒸着して成膜する方法や熱プレス方法等が挙げられる。樹脂薄膜であれば、例えば、粘着層上に樹脂を公知の方法で塗布し硬化させる方法等が挙げられる。また、市販の薄膜を粘着層と貼り合せる方法等を用いてもよい。粘着層との貼り合せ方法は、例えば、熱溶着による方法が挙げられる。
2.粘着層
上記粘着層は、再剥離性を示すことが好ましい。上記粘着層が再剥離性を示すとは、薄膜を貼り合せることができ、各パターニング工程を行う際に、上記薄膜の位置ズレを生じさせず、平面性を保持した状態で固定することができ、且つ、薄膜パターン側への糊残りの発生や薄膜パターンの損傷の発生を抑えて剥離可能であることをいう。
また、粘着層は、薄膜の材料や成膜条件等に応じて、耐熱性や低アウトガス性、耐薬品性に優れたものであることが好ましい。粘着層の耐熱性および低アウトガス性については、後述する。
このような粘着層としては、微粘着性を示す粘着層(第1態様)、外部刺激を受けることで剥離する粘着層(第2態様)が挙げられる。
以下、粘着層について態様ごとに説明する。
(1)粘着層の第1態様
粘着層の第1態様(以下、本項目内においては、「本態様の粘着層」と称する場合がある。)は、微粘着性を示す粘着層である。
本態様の粘着層は、その初期粘着力により平面性を保持した状態で薄膜を固定して位置ズレを防ぐことができ、また、第2剥離工程において、薄膜パターン側に糊残りが生じにくく、容易に剥離することができる。
ここで、本態様の粘着層が示す微粘着性とは、第2剥離工程までの一連の工程において薄膜の平面性を担保した状態で固定を保つことができ、且つ、薄膜パターンから粘着層を剥離する際に、薄膜パターン側に糊残りが生じない程度の粘着力を示すことをいう。
具体的には、本態様の粘着層の初期粘着力が、6N/25mm以下、好ましくは3N/25mm以下、より好ましくは2N/25mm以下であることをいう。また、本態様の粘着層の初期粘着力は、0.05N/25mm以上であることが好ましい。
上記粘着力は、基材としてポリイミドフィルム(厚さ25μm、東レ・デュポン製、製品名:100H)を用い、上記基材の片面に本態様の粘着層を所望の厚さとなるように形成し、巾25mm×長さ150mmの大きさの短冊状の試験片をカットしてJIS Z0237の規格に準拠した条件でステンレス板にラミネートし、最後に、試験片を剥離角180°、剥離速度300mm/分、室温下の条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより測定することができる。また、このような180°剥離強度測定には、例えば、インストロン社製の万能試験機5565を用いることができる。
本態様の粘着層は、所望の粘着力を示すことが可能なものであればよいが、中でもアクリル系樹脂を少なくとも含むことが好ましく、アクリル系樹脂および硬化樹脂を含むことがより好ましい。
アクリル系樹脂および硬化樹脂を含むことで、初期粘着力を所望の範囲内に抑えつつ、自己支持性のない薄膜への接着および薄膜パターンからの剥離を容易に行うことができるからである。また、アクリル系樹脂に加えて硬化樹脂を含むことで、アクリル系樹脂単独よりも高耐熱性を示すことができ、第2剥離工程までの一連の工程において粘着層が高温環境下等に置かれる場合であっても、粘着層の粘着力が低下せず優れた剥離性を示すことができるため、剥離する際に薄膜パターン側への糊残りの発生を抑制することができる。さらに、硬化樹脂を含むことで、粘着層の耐薬品性や低アウトガス性が向上し、フォトレジスト層や薄膜のパターニングの際に使用する薬品による粘着力の低下や剥離、アウトガスによる薄膜の製膜環境やドライエッチング時のエッチング環境の悪化を防ぐことができるからである。
ここで、本態様の粘着層がアクリル系樹脂を含むとは、粘着層内において、アクリル系樹脂が架橋を形成せずに単体で存在していてもよく、アクリル系樹脂間もしくはアクリル系樹脂と他の樹脂との間で架橋形成されてなる架橋体として存在していてもよく、上記単体および上記架橋体の両方が存在していてもよい。
また、本態様の粘着層内に含まれる硬化樹脂とは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が熱や光照射を受けて硬化されたものをいう。
アクリル系樹脂および硬化樹脂を含む本態様の粘着層の形成に用いられる粘着剤組成物は、アクリル系樹脂および硬化性樹脂を含むものであればよいが、中でも以下に述べる2種類の態様のうち一方を好適に用いることができる。
すなわち、本態様の粘着層の形成に用いられる粘着剤組成物の第1態様は、アクリル系樹脂、エポキシ熱硬化性樹脂、および硬化剤を含み、上記エポキシ熱硬化性樹脂が、上記アクリル系樹脂100重量部に対して20重量部〜60重量部の範囲内で含まれているものである。
また、本態様の粘着層の形成に用いられる粘着剤組成物の第2態様は、アクリル系樹脂、架橋剤、光硬化性樹脂、および光開始剤を含むものである。
以下、本態様の粘着層の形成に用いられる粘着剤組成物について、態様ごとに説明する。
(a)粘着剤組成物の第1態様
本態様の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂、エポキシ熱硬化性樹脂、および硬化剤を含み、上記エポキシ熱硬化性樹脂が、上記アクリル系樹脂100重量部に対して20重量部〜60重量部の範囲内で含まれている。
本態様の粘着剤組成物により形成される粘着層は、アクリル系樹脂の単体およびエポキシ硬化樹脂を少なくとも含む。また、アクリル系樹脂の架橋体や、アクリル系樹脂とエポキシ熱硬化性樹脂とが反応した架橋体を含む場合もある。
(i)アクリル系樹脂
上記アクリル系樹脂については、特に限定されず、例えば(メタ)アクリル酸エステルを単独重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。中でも(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸エステル共重合体において(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするとは、共重合体において、他の単量体よりも(メタ)アクリル酸エステルの割合が30質量%よりも多いことをいい、具体的には、共重合割合が51質量%以上であることをいう。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方をいうものとする。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜30の直鎖状または分岐状のアルキルエステル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等を使用することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、特開2014−101457号公報で開示されるものが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは1種または2種以上を含んでいてもよい。
中でも炭素数1〜18、特に炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。アクリル系樹脂のガラス転移点(℃)を後述する範囲内とすることができ、粘着層の粘着性および耐熱性が向上するからである。
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルとモノマーまたはオリゴマーとの共重合体であってもよい。(メタ)アクリル酸エステルの他に必要に応じて他のモノマーまたはオリゴマーを共重合成分として含むことで、凝集力、耐熱性等の改質を図ることができる。上記共重合成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な官能基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
また、共重合成分として、シアノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー等の窒素含有モノマーを用いてもよい。
上記共重合成分は、アクリル酸エステル重合体に共重合成分として含まれてもよい。
アクリル系樹脂の質量平均分子量は、10万〜200万の範囲内であることが好ましく、より好ましくは20万〜100万の範囲内である。質量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、粘着層の粘着性が劣る場合があり、一方、上記範囲よりも大きいと、粘着剤組成物の塗工性が悪化したり、エポキシ熱硬化性樹脂との相溶性が低下して、粘着層が所望の粘着性を得られない場合がある。
なお、本明細書内において、質量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算値であり、例えば、測定装置に東ソー株式会社製のHLC−8220GPCを、カラムに東ソー株式会社製のTSKGEL−SUPERMULTIPORE−HZ−Mを、溶媒にTHFを、標準品として分子量が1050、5970、18100、37900、96400、706000の標準ポリスチレンを用いることで測定することができる。
アクリル系樹脂は、ガラス転移点が−20℃以上30℃以下であることが好ましく、中でも−15℃〜20℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移点が上記範囲にあるアクリル系樹脂を粘着剤組成物の主剤として用いることにより、凝集力を維持しながら、アクリル系樹脂と他の成分との相溶性を向上させることができるからである。
アクリル系樹脂のガラス転移点は、使用するモノマー単位の種類や、組み合わせるモノマー単位の比率等を変更することにより、適宜調整することができる。アクリル系樹脂は、モノマーを単独重合した重合体(ホモポリマー)の場合であってもガラス転移点が上記した範囲となるものもあるが、ホモポリマーのガラス転移点が上記した範囲にないようなモノマー単位の使用が制限されるわけではなく、種々のモノマー単位を組み合わせて共重合した共重合体のガラス転移点が上記の範囲内にあればよい。
なお、本明細書内においてガラス転移点は、損失正接(tanδ)のピークトップの値に基づく方法(DMA法)により測定された値を意味する。また、損失正接は、損失弾性率/貯蔵弾性率の値により決定される。これら弾性率は、重合体または共重合体に対して一定の周波数で力を付与したときの応力を動的粘弾性測定装置を用いて測定される。
アクリル系樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸エステル、モノマー、オリゴマー等の単量体を、通常の溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合等の方法により重合させることにより得ることができる。
(ii)エポキシ熱硬化性樹脂
エポキシ熱硬化性樹脂は、少なくとも1つ以上のエポキシ基またはグリシジル基を有する。エポキシ熱硬化性樹脂は、後述する硬化剤との併用により架橋重合反応により硬化して、エポキシ硬化樹脂として粘着層内に含まれる。
エポキシ熱硬化性樹脂は、エポキシ当量が100g/eq.〜2000g/eq.の範囲内であることが好ましい。エポキシ当量が上記範囲に満たないエポキシ熱硬化性樹脂では、架橋密度が高くなりすぎて粘着層の粘着性が所望の範囲から低下してしまう場合があり、一方、上記範囲を超えるエポキシ熱硬化性樹脂では、粘着剤組成物を硬化させて粘着層を形成した際に、粘着層の耐熱性および低アウトガス性が十分に得られない場合がある。
なお、エポキシ当量は、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。
エポキシ熱硬化性樹脂の質量平均分子量は、特に制限はないが、アクリル系樹脂との相溶性の観点から、一般的には300〜5000の範囲内であることが好ましく、粘着層の耐久性等の観点からは、上記範囲内において高分子量のものを使用することがより好ましい。
エポキシ熱硬化性樹脂としては、例えば特開2011−202045号公報に開示されるエポキシ系樹脂が挙げられる。中でも、ビフェニル骨格、ビスフェノール骨格、スチルベン骨格などの剛直構造を主鎖に持つエポキシ系樹脂が好ましく、より好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、特に好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
エポキシ熱硬化性樹脂脂のうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格の繰り返し単位の数によって、常温で液体のものと常温で固体のものとが存在する。主鎖の炭素数が1〜3のビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で液体であり、主鎖の炭素数が2〜10のビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で固体である。このような比較的低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂は結晶性があり、常温で結晶化して固体のものであっても融点以上の温度になると、急速に融解して低粘度の液状に変化する。このような比較的低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、硬化の際に架橋密度が高くなるため、硬化性が高く、吸湿性(自由体積が小さくなるため)が小さくなる特徴もある。
常温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、機械的強度および耐熱性の観点から、ガラス転移点が50℃〜150℃の範囲内にあるものが好ましい。
常温で液体である主鎖が1〜3のビスフェノールA型エポキシ樹脂、および常温で固体である主鎖が2〜10のビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば特開2011−202045号公報等に開示される市販品が挙げられる。
初期粘着力が低く糊残りの発生が少ない粘着層を形成するためには、エポキシ熱硬化性樹脂は、アクリル系樹脂100重量部に対して20重量部〜60重量部の範囲内で含まれている必要があり、中でも30重量部〜50重量部の範囲内で含まれていることが好ましい。エポキシ熱硬化性樹脂の配合量が上記範囲よりも少ないと、粘着層の初期粘着力が増加したり、一連の工程の実施環境により粘着力が増加する傾向にあるからである。一方、エポキシ熱硬化性樹脂の配合量が上記範囲を超えると、初期粘着力が低下して、粘着層と薄膜とを常温で貼合することが困難となる場合や、一連の工程において粘着層から薄膜が剥離する場合があるからである。
(iii)硬化剤
上記エポキシ熱硬化性樹脂は、加熱等により反応が進行して硬化するが、通常は、硬化反応を促進するための硬化剤が粘着剤組成物中に含まれる。
上記硬化剤は、エポキシ熱硬化性樹脂と当量で反応可能なものであればよく、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤を好適に使用することができる。また、エポキシ熱硬化性樹脂を単独で硬化(重合)させることが可能な硬化剤としては、例えばイミダゾール系硬化剤やカチオン系硬化剤等が挙げられる。中でも、エポキシ熱硬化性樹脂の骨格由来の性能を期待でき、添加量が少なくてもエポキシ熱硬化性樹脂を単独で硬化させ得るイミダゾール系硬化剤やカチオン系硬化剤を使用することが好ましい。
硬化剤の配合量は、エポキシ熱硬化性樹脂の重合態様に応じて適宜設定することができる。例えば、エポキシ熱硬化性樹脂を単独で重合させ硬化させる場合、硬化剤の配合量は、エポキシ熱硬化性樹脂100重量部に対して1重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましい。一方、エポキシ熱硬化性樹脂と硬化剤とを当量で重合反応させて硬化させる場合、硬化剤の配合量は、エポキシ熱硬化性樹脂のエポキシ当量に対して0.7〜1.2の割合となることが好ましい。
エポキシ熱硬化性樹脂に対しての硬化剤の配合量が少ないと、粘着剤組成物を硬化させて粘着層を形成する際に、エポキシ熱硬化性樹脂の硬化時間が長くなる等による硬化不足が生じ、所望の粘着性を得ることが困難となる場合がある。一方、硬化剤の配合量が過剰になると、粘着剤組成物の保存安定性が低下したり、エポキシ熱硬化性樹脂の硬化密度が高くなり過ぎて、粘着層が所望の粘着性を示さない場合がある。
(iv)その他の材料
本態様の粘着剤組成物には、架橋剤が含まれていてもよい。本態様の粘着剤組成物により形成される粘着層内において、アクリル系樹脂は、通常、架橋を形成せずに単体として存在するが、上記粘着剤組成物に架橋剤を添加することにより、得られる上記粘着層は、アクリル系樹脂間で架橋形成された架橋体を一部に含むものとなる。これにより、粘着力を維持しながらベタつきが改善された粘着層とすることができる。架橋剤は、従来公知のものを使用することができ、例えば、多官能エポキシ化合物やイソシアネート化合物が挙げられる。
さらに、本態様の粘着剤組成物は、必要に応じて、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、フィラー、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、光安定剤、染料、顔料等の着色剤等の任意の添加剤を含んでいてもよい。また、必要に応じて、シラン系、チタン系、アルミニウム系などのカップリング剤を含むことができる。
(b)粘着剤組成物の第2態様
本態様の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂、架橋剤、光硬化性樹脂、および光開始剤を含むものである。
本態様の粘着剤組成物により形成される粘着層は、アクリル系樹脂の架橋体および光硬化性樹脂が硬化してなる硬化樹脂を少なくとも含む。粘着層は、アクリル系樹脂の架橋体と共にアクリル系樹脂の単体を含んでいてもよい。
本態様の粘着剤組成物は、光硬化性樹脂が含まれることにより、粘着層の形成に際し、エネルギー線の照射によって粘着剤組成物の塗布層中で光硬化性樹脂が硬化して硬化樹脂となるため、上記塗布層が適度に硬くなり、アクリル樹脂の架橋反応が進行しても、糊残りが生じにくい剥離性に優れる粘着層になると考えられる。
なお、光硬化性樹脂の硬化の際に用いられるエネルギー線の種類については、後述する「(2)粘着層の第2態様」の項で説明するものと同様とすることができる。
(i)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂については、特に限定されず、「(a)粘着剤組成物の第1態様」におけるアクリル系樹脂と同様に、アクリル酸エステル重合体や(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする(メタ)アクリル酸エステル共重合体が用いられる。中でも(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、粘着性および塗工性の観点から5万〜100万の範囲内が好ましく、より好ましくは10万〜80万の範囲内である。
アクリル系樹脂における(メタ)アクリル酸エステル、モノマー、およびオリゴマー、ならびにこれらの重合方法等については「(a)粘着剤組成物の第1態様」で説明した内容と同様とすることができる。
アクリル系樹脂のガラス転移点、および上記ガラス転移点を示すことによる効果については、「(a)粘着剤組成物の第1態様」で説明したアクリル系樹脂のガラス転移点およびそれによる効果と同様とすることができる。
(ii)光硬化性樹脂
光硬化性樹脂は、エネルギー線照射により重合可能なラジカル重合性の化合物であれば特に制限なく使用することができ、例えば、アクリレート基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー等が挙げられる。このような化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系の光硬化性化合物を好ましく使用することができる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも2官能性のモノマーまたはオリゴマーを好適に使用することができる。
また、アクリル系樹脂との相溶性の観点から、例えば、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類や、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレートを好適に使用することができる。
光硬化性樹脂は、アクリル系樹脂100重量部に対して5重量部〜60重量部の範囲内、中でも5重量部〜40重量部の範囲内で含まれることが好ましい。光硬化性樹脂を上記の範囲で含むことにより、得られる粘着層の初期粘着力、凝集力をより向上させることができ、また、高温環境下に置かれた場合の粘着力の変化を抑えることができるからである。
(iii)光開始剤
光開始剤は、光照射によりリビングラジカル重合開始能を発揮することができ、光硬化性樹脂を硬化させることが可能なものであれば特に限定されず、公知の光開始剤から光硬化性樹脂の種類に応じて、1種または2種以上を適宜選択することができる。具体的には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、ベンジルメチルケタール類、α−アミノケトン類、ビスアシルフォスフィンオキサイド類が挙げられる。
光硬化性樹脂としてウレタンアクリレートを使用する場合には、光開始剤がビスアシルフォスフィン系光開始剤であることが好ましい。上記光開始剤は耐熱性を有し、基材に粘着剤組成物を塗布して光照射を行う際に、基材を介して光照射を行う場合であっても確実に光硬化性樹脂を硬化させることができるからである。
(iv)架橋剤
架橋剤は、アクリル系樹脂を架橋させることが可能なものであればよく、多官能エポキシ系化合物やイソシアネート系化合物等の従来公知の架橋剤を用いることができる。具体的には、例えば特開2012−177084号公報に開示される多官能エポキシ系化合物やイソシアネート系化合物が挙げられる。
架橋剤は、アクリル系樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部の範囲内、中でも0.5重量部〜10重量部の範囲内で含まれることが好ましい。得られる粘着層の初期粘着力を抑えながら、凝集性を高めることができ、容易に貼り直しが可能であり、第2剥離工程までの一連の工程において薄膜からの浮きや剥がれの発生を防ぐことができるからである。
さらに、本態様の粘着剤組成物は、必要に応じて、「(a)粘着剤組成物の第1態様」で説明した任意の添加剤やカップリング剤を含むことができる。
(v)粘着剤組成物の調製方法
本態様の粘着層を形成する粘着剤組成物は、上記した各成分を混合し、必要に応じて混合ないし分散して調製することができる。混合ないし分散方法は、特に限定されるものではなく、例えば特開2014−234460号公報等で開示される従来公知の混練分散機などが適用できる。また、粘度調整のため、希釈溶剤を加えて各成分を混合してもよい。
(c)その他
本態様の粘着層は、上述した各態様の粘着剤組成物を用いることで、後述する「(3)その他」の項で規定される耐熱性および低アウトガス性を示すことができ、また、高耐薬品性を示すことができる。
本態様の粘着層の厚さは、所望の粘着力を示すことが可能な大きさであればよく、例えば3μm〜50μmの範囲内、中でも5μm〜30μmの範囲内が好ましい。
本態様の粘着層の形成方法は、基材の一方の面上に上述した粘着剤組成物を塗布し、上記粘着剤組成物の種類に応じて、加熱や光照射により硬化させる方法が用いられる。粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば特開2014−234460号公報等で開示される塗布方法を適用することができる。
第1態様の粘着剤組成物を用いて形成する場合、上記粘着剤組成物を塗布し、加熱により塗布層内のエポキシ熱硬化性樹脂を硬化させる。加熱温度は、例えば50℃〜150℃程度、好ましくは90℃〜120℃程度である。また、加熱時間は、加熱温度により適宜調整することができる。例えば、加熱温度が90℃〜150℃の範囲内であれば、加熱時間は1分〜240分の範囲内、好ましくは数分〜60分の範囲内である。また、加熱温度が50℃〜90℃の範囲内であれば、加熱時間は24時間〜168時間、好ましくは48時間〜120時間である。
また、第2態様の粘着剤組成物を用いて形成する場合、粘着剤組成物の塗布後、上記塗布層に光を照射して光硬化性樹脂を硬化させる。光照射の条件については、光硬化性樹脂の種類に応じて適宜設定される。第2態様の粘着剤組成物は架橋剤を含むことから、塗布層の乾燥に際し、層内にてアクリル系樹脂間で架橋が形成される。上記塗布層は加熱してもよい。アクリル系樹脂の架橋反応を促進させることができるからである。加熱温度については適宜設定することができる。
(2)粘着層の第2態様
粘着層の第2態様(以下、本項目内においては、「本態様の粘着層」と称する場合がある。)は、外部刺激を受けることで剥離する粘着層である。
本態様の粘着層は、その初期粘着力によりにより平面性を保持した状態で薄膜を固定して位置ズレを防ぐことができ、また、第2剥離工程において外部刺激を与えることで、粘着力が低下して剥離性が向上するため、薄膜パターン側への糊残りの発生を抑えて容易に剥離することができる。
ここで、外部刺激を受けることで剥離するとは、本態様の粘着層が、外部刺激を受ける前は、強粘着性を示して薄膜を固定することができるが、外部刺激を与えると、粘着力が著しく低下して薄膜から容易に剥離可能となることをいう。具体的には、外部刺激付与前の本態様の粘着層の粘着力が0.5N/25mm以上20N/25mm以下であり、外部刺激付与後の本態様の粘着層の粘着力が2.0N/25mm以下であることが好ましい。
上記粘着力は、ポリエステルフィルム(厚さ50μm)を基材とし、上記基材の片面に本態様の粘着層を後述する厚さの範囲内となるように形成した粘着性基材を用い、「(1)粘着層の第1態様」の項で説明した粘着力の測定方法と同様の方法で測定される。
また、外部刺激とは、例えば、加熱、エネルギー線の照射をいう。
本態様の粘着層のうち、エネルギー線照射により剥離する粘着層をエネルギー線応答型剥離性粘着層、加熱により剥離する粘着層を熱応答型剥離性粘着層と称する。
以下、本態様の粘着層について説明する。
(a)エネルギー線応答型剥離性粘着層
エネルギー線応答型剥離性粘着層は、エネルギー線照射により剥離する粘着層である。
エネルギー線応答型剥離性粘着層は、エネルギー線の照射を受けることで粘着力が低下し、剥離性が発現する。
上記エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。中でも汎用性等の観点から、紫外線が好ましい。
エネルギー線応答型剥離性粘着層の組成としては、エネルギー線照射前後で上述の粘着力を示すものであればよく、例えば樹脂(粘着主剤)、エネルギー線重合性オリゴマー、および重合開始剤を少なくとも含む組成とすることができる。このような組成とすることでエネルギー線の照射によりエネルギー線応答型剥離性粘着層に含まれるエネルギー線重合性オリゴマーが硬化して、粘着力を低下させることができるからである。また、このとき凝集力が高まるため、薄膜表面への転着が生じにくくなり、容易に剥離が可能となる。
上記樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等、一般に粘着剤の主剤として用いられる樹脂が挙げられるが、中でもアクリル系樹脂が好ましい。耐熱性や低アウトガス性の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
したがって、エネルギー線応答型剥離性粘着層の好適な組成は、アクリル系樹脂、エネルギー線重合性オリゴマー、重合開始剤および架橋剤を含むものとすることができる。
なお、上記エネルギー線応答型剥離性粘着層において、上記アクリル系樹脂は、通常、上記架橋剤によりアクリル系樹脂間が架橋されてなる架橋体として存在するが、上記架橋体と共にアクリル系樹脂の単体が含まれていてもよい。
また、このようなエネルギー線応答型剥離性粘着層の形成に用いられる粘着剤組成物としては、例えば、アクリル系樹脂、エネルギー線重合性オリゴマー、重合開始剤、および架橋剤を含むものが挙げられる。
以下、上記粘着剤組成物に含まれる各組成について説明する。
(i)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂については、特に限定されず、例えば(メタ)アクリル酸エステルを単独重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられるが、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルおよび他の単量体は、例えば特開2012−31316号公報等に開示されるものが挙げられる。他の単量体は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ここでの主成分とは、共重合割合が51質量%以上であることを意味し、好ましくは65質量%以上である。
中でも上記アクリル系樹脂として、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、上記(メタ)アクリル酸エステルと、共重合可能な水酸基含有モノマーとの共重合により得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、上記(メタ)アクリル酸エステルと、共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとの共重合により得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体を好適に用いることができる。
共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーは、特に限定されず、例えば特開2012−31316号公報等に開示される水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーが用いられる。
上記アクリル系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、20万〜100万の範囲内であることが好ましく、中でも20万〜80万の範囲内であることが好ましい。アクリル系樹脂の質量平均分子量を上記範囲内とすることで、十分な粘着力を発揮可能なエネルギー線応答型剥離性粘着層とすることができるからである。
上記アクリル系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとの(メタ)アクリル酸エステル共重合体である場合、上記水酸基含有モノマーと上記カルボキシル基含有モノマーとの質量比は、51:49〜100:0の範囲内であることが好ましく、中でも75:25〜100:0の範囲内であることが好ましい。各モノマーの重量比が上記範囲内であれば、第2剥離工程において薄膜パターン側への糊残りの発生を抑制することができ、また、エネルギー線照射による効果的な粘着力の低下が期待できる。
なお、主成分とは、共重合割合が51質量%以上であることを意味し、好ましくは65質量%以上である。
(ii)エネルギー線重合性オリゴマー
エネルギー線重合性オリゴマーは、エネルギー線の照射を受けて重合し得るものであれば特に限定されず、例えば、光ラジカル重合性、光カチオン重合性、光アニオン重合性等のオリゴマーが挙げられる。中でも、光ラジカル重合性オリゴマーが好ましい。硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができ、更には、硬化前の粘着性や硬化後の剥離性等の物性を容易に制御することができるからである。
光ラジカル重合性オリゴマーは、例えば特開2012−31316号公報等に開示されるものが挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エネルギー線重合性オリゴマーの質量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、例えば250〜8000の範囲内、中でも250〜5000の範囲内であることがより好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であれば、エネルギー線応答型剥離性粘着層がエネルギー線照射前には所望の粘着力を示し、エネルギー線照射後には、薄膜パターン側に糊残りが生じにくく、容易に剥離可能となるからである。
粘着剤組成物は、エネルギー線重合性オリゴマーの量を調整することにより、エネルギー線照射後のエネルギー線応答型剥離性粘着層の粘着力の制御が可能となる。
粘着剤組成物中のエネルギー線重合性オリゴマーの含有量は、アクリル系樹脂100重量部に対して、10重量部〜60重量部の範囲内であることが好ましく、中でも20重量部〜50重量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であれば、エネルギー線照射後のエネルギー線応答型剥離性粘着層の架橋密度が十分となるので、所望の剥離性を実現することができる。また、凝集力の低下による薄膜パターン側への糊残りの発生を抑制することができる。
(iii)重合開始剤
上記重合開始剤は、一般的な光重合開始剤を用いることができるが、中でも、昇温速度10℃/minで30℃から190℃まで昇温させ、190℃にて30分間維持した際の熱重量測定による重量減少率が50%以下、特に20%以下である光重合開始剤が好ましい。このような光重合開始剤を選択することで、第2剥離工程までの一連の工程において高温に曝されてもエネルギー線応答型剥離性粘着層の粘着力の低下を防ぐことができる。
なお、上記重量減少率は、市販の熱重量測定装置、例えば、島津製作所社製のDTG−60Aを用いて重量を測定することにより求めることができる。具体的には、上記重合開始剤を分析(雰囲気ガス:窒素、ガス流量:50ml/min、温度範囲:30℃〜190℃、昇温条件:10℃/min)し、30℃における上記重合開始剤の重量(W1)と、190℃に到達して30分経過後における上記重合開始剤の重量(W2)とを測定し、下記式から算出される。
重量減少率(%)=[(W1(g)−W2(g))/W1(g)]×100
このような重合開始剤の市販品は、例えば、IRGACURE754(BASF ジャパン社製),IRGACURE2959(BASF ジャパン社製)等が挙げられる。
粘着剤組成物中の重合開始剤の含有量は、エネルギー線重合性オリゴマーを十分に硬化させることが可能な量であればよく、アクリル系樹脂およびエネルギー線重合性オリゴマーの合計100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部の範囲内、中でも0.5重量部〜3重量部の範囲内であることが好ましい。重合開始剤の含有量が上記範囲に満たないと、エネルギー線重合性オリゴマーの重合が十分起こらず、エネルギー線照射後のエネルギー線応答型剥離性粘着層の粘着力が過剰に高くなり、剥離性を実現することができない場合がある。一方、上記範囲を越えると、エネルギー線照射面の近傍にしかエネルギー線が届かず、エネルギー線応答型剥離性粘着層の硬化が不十分となる場合がある。また、凝集力が低下して薄膜パターン側へ糊残りが発生する原因となる場合もある。
なお、粘着剤組成物に、エネルギー線重合性オリゴマーと後述するエネルギー線重合性モノマーとを含有する場合には、アクリル系樹脂、エネルギー線重合性オリゴマー、およびエネルギー線重合性モノマーの合計100重量部に対して、重合開始剤の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
(iv)架橋剤
上記架橋剤は、少なくともアクリル系樹脂間を架橋するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤の具体例は、特開2012−31316号公報に開示されるものが挙げられる。
上記架橋剤は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができ、アクリル系樹脂の種類等に応じて、適宜選択することができる。
粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、架橋剤の種類に応じて適宜設定することができるが、例えばアクリル系樹脂100重量部に対して0.01重量部〜15重量部の範囲内、中でも0.01重量部〜10重量部の範囲内が好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲に満たないと、エネルギー線応答型剥離性粘着層と薄膜および基材との密着性が不十分である場合や、第2剥離工程において剥離する際にエネルギー線応答型剥離性粘着層が凝集破壊を起こし、薄膜パターン側に糊残りが生じる場合がある。一方、架橋剤の含有量が上記範囲を超えると、エネルギー線照射後のエネルギー線応答型剥離性粘着層中に上記架橋剤が未反応モノマーとして残留し、凝集力の低下の要因となる場合がある。
(v)任意の組成
上記粘着剤組成物は、上述のエネルギー線重合性オリゴマー以外にエネルギー線重合性モノマーを含有してもよい。エネルギー線を照射した際に、粘着剤組成物を3次元架橋により硬化させて粘着力を低下させるとともに、凝集力を高めて薄膜パターン側に転着させないようにすることができるからである。
エネルギー線重合性モノマーは、光ラジカル重合性モノマーが好ましく、中でも一分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能性アクリレートや多官能性メタクリレートが好ましい。具体的には、特開2012−31316号公報等に開示されるエネルギー線重合性モノマーが挙げられる。
粘着剤組成物中に、上記エネルギー線重合性オリゴマーと上記エネルギー線重合性モノマーとが含有される場合には、その合計含有量は、アクリル系樹脂100重量部に対して、10重量部〜60重量部の範囲内、中でも20重量部〜50重量部の範囲内であることがより好ましい。エネルギー線照射後の架橋密度が十分になり、エネルギー線応答型剥離性粘着層が適正な剥離性を実現することができ、また、凝集力の低下による剥離の際の薄膜パターン側への糊残りを生じにくくすることができるからである。
粘着剤組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、粘着付与剤、金属キレート剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、着色剤、耐電防止剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性調整剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
また、エネルギー線応答型剥離性粘着層の再剥離性を向上させるために、フッ素系樹脂等の樹脂を含んでいてもよい。
(vi)好適な粘着剤組成物
エネルギー線応答型剥離性粘着層を形成する粘着剤組成物は、アクリル系樹脂、エネルギー線重合性オリゴマー、重合開始剤および架橋剤を含むことが好ましいが、中でも、以下に示す粘着剤組成物であることが好ましい。
すなわち、好適な粘着剤組成物の第1態様は、アクリル系樹脂、エネルギー線重合性オリゴマー、重合開始剤、および架橋剤を含むものであり、上記アクリル系樹脂が、質量平均分子量が20万〜100万の範囲内であり、且つ、アクリル酸エステルを主成分とし、上記アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーとの共重合により得られるものであり、上記重合開始剤は、昇温速度10℃/minで30℃から190℃まで昇温させ、190℃にて30分間維持した際の熱重量測定による重量減少率が50%以下であることが好ましい。
また、好適な粘着剤組成物の第2態様は、アクリル系樹脂、エネルギー線重合性オリゴマー、重合開始剤、および架橋剤を含むものであり、上記アクリル系樹脂が、質量平均分子量が20万〜100万の範囲内であり、且つ、アクリル酸エステルを主成分とし、上記アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーとの共重合により得られるものであり、上記水酸基含有モノマーと上記カルボキシル基含有モノマーとの質量比が51:49〜100:0の範囲内であり、上記重合開始剤は、昇温速度10℃/minで30℃から190℃まで昇温させ、190℃にて30分間維持した際の熱重量測定による重量減少率が50%以下であることが好ましい。
これらの粘着剤組成物を用いることで、エネルギー線応答型剥離性粘着層の耐熱性および低アウトガス性がさらに向上し、第2剥離工程までの一連の工程において高温に曝される場合であっても、上記エネルギー線応答型剥離性粘着層の劣化および粘着性の低下、ならびにアウトガスの発生による製膜環境やエッチング環境の悪化、薄膜の劣化を防止することができるからである。
(vii)調製方法
粘着剤組成物の調製方法は、上述の「(1)粘着層の第1態様」の項で説明した粘着剤組成物の調製方法と同様とすることができる。
(b)熱応答型剥離性粘着層
熱応答型剥離性粘着層は、加熱により剥離する粘着層である。熱応答型剥離性粘着層は、加熱により粘着力が低下し、剥離性が発現する。
熱応答型剥離性粘着層の形成に用いられる粘着剤組成物は、加熱前後で上述の粘着力を示すものであればよいが、例えば、アクリル系樹脂等の粘着主剤となる樹脂に、マイクロカプセルや発泡剤等の熱膨張剤が含有された公知の組成物、粘着主剤として熱溶融アクリル系樹脂や熱溶融エポキシ樹脂等の熱溶融型樹脂を含む組成物等が挙げられる。
(c)その他
本態様の粘着層は、上述した粘着剤組成物を用いることで、後述する「(3)その他」の項で規定される耐熱性およびアウトガス性を示すことができ、また、高耐薬品性を示すことができる。
本態様の粘着層の厚さは、十分な粘着力が得られ、且つ、外部刺激を十分に受けることが可能な大きさであればよい。すなわち、本態様の粘着層がエネルギー線応答型剥離性粘着層であれば、エネルギー線が内部まで透過することが可能な大きさであればよく、また、本態様の粘着層が熱応答型剥離性粘着層であれば、内部まで伝熱が可能な大きさであればよい。具体的には、エネルギー線応答型剥離性粘着層であれば、上記厚さは、3μm〜50μmの範囲内、中でも5μm〜30μmの範囲内が好ましい。
本態様の粘着層は、基材の一方の面上に、所望の粘着剤組成物を塗布し乾燥させて形成することができる。乾燥に際し、塗布層内にてアクリル系樹脂間で架橋が形成される。粘着剤組成物の塗布方法については、「(1)粘着層の第1態様」の項で説明した塗布方法と同様とすることができる。また、乾燥条件等については特に限定されない。
(3)粘着層の物性
粘着層は、高耐熱性を示すことが好ましい。粘着層が高耐熱性を示すとは、具体的には、粘着層の重量減少率が1%〜10%の範囲内、好ましくは2.5%未満であることをいう。上記重量減少率は、粘着層の単体について熱重量−示差熱装置(TG−DTA)を用いて測定し算出される値であり、具体的には、窒素雰囲気下(ガス流量:150ml/min)で、昇温速度10℃/minで30℃から250℃まで昇温させた時点での重量変化量を測定し、下記式から重量減少率を算出した。30℃での粘着層の重量(W1)と、250℃での粘着層の重量(W2)とを測定し、下記式から算出される。
重量減少率(%)=[(W1(g)−W2(g))/W1(g)]×100
また、粘着層は、低アウトガス性を示すことが好ましい。粘着層が低アウトガス性を示すとは、粘着層を200℃で0.5時間加熱したときのアウトガス発生量が15μg/cm以下、好ましくは10μg/cm以下、さらに好ましくは5μg/cm以下であることをいう。上記アウトガス発生量は、ポリイミドフィルムに粘着剤組成物を用いて各態様で規定された厚さの範囲内で粘着層を形成し、幅10mm、長さ10mmのサイズに切断して測定サンプルとして以下の方法にて測定および算出した値である。なお、同条件下におけるポリイミドフィルム単体からのアウトガス発生量は0.3μg/cm未満であり無視できる量であるため、上記測定サンプルでのアウトガス発生量を、粘着層のアウトガス発生量とする。
(測定方法および算出方法)
パージ&トラップヘッドスペースサンプラーにより、上記測定サンプルを200℃で0.5時間加熱し、発生したガス(アウトガス)をトラップした後、このトラップされた成分についてガスクロマトグラフ質量分析計により分離測定を行った。
発生したガスの量を、n−ヘキサデカン標準による換算値として粘着層の単位面積当たりの値に換算し、粘着層のアウトガス発生量(200℃にて0.5時間加熱した際に発生するアウトガス発生量、単位:μg/cm)として算出した。
3.フォトレジスト層
フォトレジスト層は、通常、薄膜上の全面に形成される。
上記フォトレジスト層の形成に用いられるフォトレジストは、一般的なフォトリソグラフィ法に用いられるものと同様とすることができ、ポジ型およびネガ型の何れも用いることができるが、中でも、後述の第1剥離工程での剥離し易さから、ポジ型レジストが好ましい。ポジ型レジストは、例えば、ノボラック系が挙げられる。
また、上記フォトレジストは、液状であってもよく、ドライフィルムレジストを用いてもよい。
フォトレジスト層の厚さは、特に限定されない。
フォトレジスト層は、使用するフォトレジストの種類に応じて、塗布やラミネート等、従来公知の方法により形成することができる。
4.基材
基材は、粘着層、薄膜、およびフォトレジスト層を支持することが可能であれば、特に限定されない。上記基材は、可撓性を有していてもよく有さなくてもよい。この様な基材としては、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の無機基材、樹脂フィルム、光学用樹脂板、エポキシガラス(ガラエポ)基板等の樹脂基材等を挙げることができる。
可撓性を有する基材を用いる場合は、例えば、基材に対して面方向に張力を掛けることで、粘着性基材の平面性を保持することが可能となり、薄膜を均質に製膜することができる。また、薄膜および積層体全体の平面性を保持することも可能となる。
基材は、透明性を有していてもよく有していなくてもよい。粘着層がエネルギー線応答型剥離性粘着層である場合は、基材側から粘着層の粘着力を低下させるのに十分なエネルギー線を照射するために、上記基材は透明性を有することが好ましい。このときの基材の透過率については、エネルギー線が透過可能であればよく、適宜設定することができる。
上記基材は、粘着層との密着性を高めるため、粘着層が形成される面にコロナ処理やプライマー処理等の表面処理が施されていてもよい。
基材の厚さについては、材質や可撓性の有無に応じて適宜選択することができる。
また、基材の形態は、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。
上記基材は必要に応じて耐熱性を有していてもよい。基材の耐熱性は、基材の150℃から250℃の範囲内における熱膨張係数が5ppm/℃〜50ppm/℃の範囲内、中でも10ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましい。
5.積層体の準備
上記積層体を形成する方法は、基材上に粘着層、薄膜、およびフォトレジスト層をこの順で形成可能な方法であれば特に限定されない。
各層の形成方法については、上述の通りであるため、ここでの説明は省略する。
基材上に各層を積層した後、加熱等により基材と粘着層との層間、および粘着層と薄膜との層間を熱溶着させることで、各層を十分に固定させることが好ましい。
B.フォトレジスト層パターニング工程
本発明のおけるフォトレジスト層パターニング工程は、上記積層体をパターン露光し、現像することにより、上記フォトレジスト層をパターニングする工程である。
フォトレジスト層をパターン露光する方法は、例えば、フォトマスクを介して露光する方法、レーザー描画法等、一般的な方法を用いることができる。
露光後のフォトレジスト層を現像する方法は、例えば現像液を用いる方法を適用することができる。現像液は、一般的に使用されている有機アルカリ系現像液を使用できる。また、現像液として、無機アルカリ系現像液や、フォトレジスト層の現像が可能な水溶液を使用することもできる。フォトレジスト層を現像した後は、水で洗浄することが好ましい。
フォトレジスト層のパターン形状は、目的とする薄膜のパターン形状に応じて適宜選択される。
C.薄膜パターニング工程
本発明における薄膜パターニング工程は、上記フォトレジスト層が除去された部分の上記薄膜を除去することにより、上記薄膜をパターニングする工程である。
本工程において、パターン状のフォトレジスト層をマスクとして薄膜をエッチングすることで、パターン状の薄膜とすることができる。
エッチング方法は、ウェットエッチングおよびドライエッチングのいずれも適用することができる。ウェットエッチングおよびドライエッチングについては、公知の方法を用いることができる。
ウェットエッチングを行う場合のエッチング液は、薄膜をエッチングできるものであれば特に限定されず、薄膜の材料に応じて適宜選択することができる。
また、本工程においては、エッチング後に水等を用いた洗浄処理を行ってもよい。
薄膜が、材料の異なる複数の薄膜が積層されてなる多層膜である場合は、各薄膜の組成に応じたエッチング方法を選択して、本工程を複数回行ってもよい。
本工程により形成される薄膜のパターン形状は、用途に応じて適宜設計することができる。また、上記パターン形状は、複数のパターン状の薄膜片が互いに独立したアイランド状であってもよく、連結形状であってもよい。
D.第1剥離工程
本発明における第1剥離工程は、上記薄膜から上記フォトレジスト層を剥離する工程である。
フォトレジスト層を剥離する方法は、フォトレジスト層の材料に応じて従来公知の方法を適宜用いることができる。例えば、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ液を用いて剥離する方法等が挙げられる。
E.第2剥離工程
本発明における第2剥離工程は、上記薄膜から上記粘着層および上記基材を剥離して、薄膜パターンとする工程である。
本工程により、粘着層および基材が剥離されるため、基材レスの薄膜パターンを得ることができる。
粘着層および基材の剥離方法は、薄膜および粘着層の層間において剥離可能な方法であればよく、粘着層の種類に応じて適宜選択することができる。粘着層が第1態様であれば、剥離方法は、例えば、薄膜および粘着層の層間に力を加える方法が挙げられる。具体的には、粘着層を手や機械で剥離する方法、薄膜の上記粘着層と反対側の表面に被転写体を貼合し、粘着層をエア等で吸着して剥離する方法、薄膜の上記粘着層と反対側の表面に、粘着層よりも粘着力の強い強粘着層を有する被転写体を貼合し、粘着層と強粘着層との粘着力の差を利用して、粘着層を剥離する方法等を用いることができる。
一方、粘着層が第2態様であれば、剥離方法は、粘着層に所望の外部刺激を与え、粘着力が低下した粘着層を所望の方法で剥離する方法が挙げられる。
外部刺激の付与条件については、外部刺激により粘着層の粘着力が低下し、剥離性を発現可能な条件であればよく、第2態様の粘着層の種類や膜厚等に応じて、適宜設定することができる。例えば、第2態様の粘着層がエネルギー線応答型剥離性粘着層であれば、特開2012−31316号公報に記載の照射条件を適用することができる。
F.その他
本発明においては、上記第1剥離工程と上記第2剥離工程との間に、上記粘着層の上記薄膜側表面上に、上記薄膜を覆うように保護層を形成する保護層形成工程を有していてもよい。保護層形成工程を有することで、例えば、薄膜パターンがアイランド状である場合に、保護層により薄膜パターンを保持することができるからである。また、保護層を形成することで、薄膜パターンへの異物ゴミの付着を防ぎ、さらには薬液等から保護することができる。なお、図3は、本発明の薄膜パターンの形成方法の他の例を示す工程図であって、図3(e)が保護層形成工程に該当し、粘着層3上に薄膜パターン1を覆うようにして保護層5が形成されている。図3(a)〜(d)および(f)で示す各工程は、図1(a)〜(e)で示す各工程と同様である。
保護層の材料は、例えば、樹脂を挙げることができる。具体的には、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。また、保護層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。
保護層の厚さは、薄膜パターンを覆うことが可能な厚さであればよく、薄膜の厚さに応じて適宜設定することができる。
保護層の形成方法は、例えば上述の樹脂を基板上の薄膜を覆うように塗布し硬化する方法が挙げられる。
G.用途
本発明により製造される薄膜パターンは、薄膜の材料に応じた用途に用いることができる。具体的には、フレキシブルプリント基板、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパー、薄膜トランジスタ、薄膜太陽電池等における配線や薄膜素子、リードフレーム、電磁波シールド、アンテナ回線、セラミックコンデンサー、メタルマスク、カバーレイフィルム等、電子機器分野における部品として用いることができる。
また、エッチンググラス、装飾フィルム、金属製のカードやしおり等の、意匠品およびその装飾用薄膜として使用することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
以下の方法により、薄膜パターンを形成した。
なお、粘着剤組成物の各組成の物性、および粘着層の物性等の測定方法については、「I.準備工程」で説明した方法を用いた。
(粘着剤組成物の調製)
アクリル系粘着剤(商品名:N−4498、アクリル系ポリマー+エネルギー線重合性オリゴマー、アクリル系ポリマーの質量平均分子量:約40万、エネルギー線重合性オリゴマー:ポリウレタンアクリレートオリゴマー、アクリル系ポリマーにおける水酸基含有モノマーとカルボキシル基含有モノマーとの質量比:30/1、固形分:40%、日本合成化学社製)100重量部に対して、重合開始剤(商品名:IRGACURE754、光ラジカル発生剤、固形分:100%、BASFジャパン社製)を1.4重量部、および架橋剤(商品名:コロネートL、イソシアネート系架橋剤、固形分:75%、日本ポリウレタン社製)を1.5重量部配合し、トルエンおよびメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT11、質量比1:1、DICグラフィックス株式会社製)180重量部で希釈し、ディスパーにて回転数500rpmで30分間撹拌した後、常温で気泡がなくなるまで放置することにより粘着剤組成物を得た。
(粘着性基材の作製)
得られた粘着剤組成物を、片面にシリコーン系剥離剤による易剥離処理が施された厚さ38μmのポリエステルフィルム(商品名:SP−PET−01、三井化学東セロ社製)の易剥離処理面上にアプリケータを用いて全面塗工した後、乾燥オーブンにより100℃で2分間乾燥し、厚さ10μmの粘着層を形成した。上記粘着層は、エネルギー線照射により剥離する粘着層であった。形成した粘着層の面に、厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフィルム基材(商品名:ルミラーS56、加熱収縮率(JIS C2151準拠,150℃×30min):MDが0.5%、TDが0.3%、膜厚:50μm、東レ社製)をラミネートし、40℃で72時間養生し、易剥離処理が施されたポリエステルフィルムを剥離して、粘着性基材を得た。上記粘着性基材は、アウトガス発生量が10μg/cm、初期粘着力が0.40N/25mm、重合開始剤の重量減少率が12%であった。
(積層体の準備)
銅箔(三井金属鉱業株式会社製 型番:3EC−TKIII W×L=400mm×500mm、T=0.018mm)の片側に、粘着性基材の粘着層を貼り合わせた。ウェットブラストで表面処理し、銅箔の表面を均一にかつ細かく粗化した。この際、銅めっきにめっきの塊がある場合、必要に応じてウェットブラスト処理前にバフおよびウェットブラスト処理を行なった。銅箔の粗面化後、水洗浄を行ない、次いで銅箔側にフォトレジスト(旭化成製ドライフィルムレジスト 型番:AQ−209A)を塗布し、水洗、乾燥してフォトレジスト層を形成し、積層体を得た。
(フォトレジスト層パターニング工程および薄膜パターニング工程)
積層体のフォトレジスト層に対し露光、現像(20%炭酸ナトリウム水溶液)してパターニングした後、塩化鉄水溶液を用いて銅箔をエッチングして回路パターンをパターニングした。
(第1及び第2剥離工程)
その後、15%水酸化ナトリウム水溶液でフォトレジスト層を剥離し、回路検査を行った。さらに、粘着性基材側から波長365nmで積算照射量が300mJ/cmとなるよう紫外線を照射し、粘着性基材を剥離して基材レスの薄膜パターンを得た。
[実施例2]
下記の方法で粘着性基材を作製し、第2剥離工程にて紫外線を照射せずに粘着性基材を剥離したこと以外は、実施例1と同様の方法で薄膜パターンを得た。
(粘着剤組成物の調製)
モノマー単位として、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、および2−ヒドロキシエチルアクリレートを、それぞれ質量基準で50:40:0.5:9.5の割合で含むアクリル共重合体樹脂(質量平均分子量:20万、ガラス転移温度:6℃)を用いた。このアクリル共重合体樹脂の酢酸エチル溶液(固形分35質量%)を100重量部と、固体状エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:480g/eq.、質量平均分子量:900、商品名:JER1001、三菱化学社製)を14重量部と、硬化剤として2−メチル−4−エチルイミダゾール(商品名:キャアゾール2E4MZ、四国化成社製)を0.35重量部と、を、トルエンおよびメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT−11、質量比1:1、DICグラフィクス社製)に溶解させ、ディスパーにて回転数500rpmで30分間撹拌した後、常温で気泡がなくなるまで放置することにより粘着剤組成物を得た。
(粘着性基材の作製)
上記の得られた粘着剤組成物を、片面にシリコーン剥離剤による易剥離処理が施された厚さ38μmのポリエステルフィルム(商品名:SP−PET−01、三井化学東セロ社製)の易剥離処理面上にアプリケータを用いて全面塗工した後、乾燥オーブンにより110℃で2分間乾燥させ、厚さ10μmの微粘着性を示す粘着層を形成した。形成した粘着層の面に、厚さ25μmのポリイミドフィルム基材(商品名:カプトン100H、東レ・デュポン社製)をラミネートし、60℃で120時間養生後、ポリエステルフィルムを剥離することにより、アウトガス発生量が2.2μg/cm、初期粘着力が0.30N/25mmである粘着性基材を得た。
[実施例3]
下記の方法で粘着性基材を作製し、第2剥離工程にて紫外線を照射せずに粘着性基材を剥離したこと以外は、実施例1と同様の方法で薄膜パターンを得た。
(粘着剤組成物の調製)
モノマー単位として、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、および2−ヒドロキシエチルアクリレートを、それぞれ質量基準で50:40:0.5:9.5の割合で含むアクリル共重合体樹脂(質量平均分子量:20万、ガラス転移温度:6℃)を用いた。このアクリル系共重合体樹脂の酢酸エチル溶液(固形分35質量%)を100重量部と、架橋剤としてイソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製)を2.4重量部と、光硬化性樹脂として10官能ウレタンアクリレート(商品名:U−10PA、新中村化学工業社製)を7重量部と、光開始剤(商品名:Irgcure819、BASF社製)を0.21重量部とを、トルエンおよびメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT−11、質量比1:1、DICグラフィクス社製)に溶解させ、固形分が25%となるようにディスパーにて回転数500rpmで30分間撹拌した後、常温で気泡がなくなるまで放置することにより粘着剤組成物を得た。
(粘着性基材の作製)
得られた粘着剤組成物を、片面にシリコーン系剥離剤による易剥離処理が施された厚さ38μmのポリエステルフィルム(商品名:SP−PET−01、三井化学東セロ社製)の易剥離処理面上にアプリケータを用いて全面塗工した後、乾燥オーブンにより100℃で2分間乾燥し、次いで、波長365nmの紫外線を300mJ/cmで照射することにより光硬化性樹脂を硬化させて、厚さ10μmの微粘着性を示す粘着層を形成した。形成した粘着層の面に、厚さ25μmのポリイミドフィルム基材(商品名:カプトン100H、東レ・デュポン社製)をラミネートし、ポリエステルフィルムを剥離することにより、アウトガス発生量が2.8μg/cm、初期粘着力が0.40N/25mmである粘着性基材を得た。
本発明による薄膜パターン形成方法では、パターニングする薄膜の自己支持性を向上する目的で、再剥離性を示す粘着層を介して基板上に薄膜を設けてパターニングを行うことで、各工程の搬送での不具合が減り、従来工法と異なり歩留りが良好であった。
また、実施例1〜3により得られた薄膜パターンについて、粘着層と接触していた面上の糊残り(幅1mm以上)を、光学顕微鏡(VHX−600、キーエンス社製、倍率200)にて確認したところ、薄膜パターン側への糊残りの発生は確認されず、薄膜パターンの汚染を防ぐことができた。
1 … 薄膜パターン
1A … 薄膜(パターニング前)
2 … 基材
3 … 粘着層
4 … 薄膜
5 … 保護層
10 … 積層体

Claims (2)

  1. 基材と、前記基材上に形成された粘着層と、前記粘着層上に形成され、自己支持性を有さない薄膜と、前記薄膜上に形成されたフォトレジスト層と、を有する積層体を準備する準備工程と、
    前記積層体をパターン露光し、現像することにより、前記フォトレジスト層をパターニングするフォトレジスト層パターニング工程と、
    前記フォトレジスト層が除去された部分の前記薄膜を除去することにより、前記薄膜をパターニングする薄膜パターニング工程と、
    前記薄膜から前記フォトレジスト層を剥離する第1剥離工程と、
    前記薄膜から前記粘着層および前記基材を剥離して、薄膜パターンとする第2剥離工程と、
    を有し、
    前記粘着層が、微粘着性を示す粘着層であり、
    前記第2剥離工程では、前記粘着層および前記基材の剥離方法が、前記薄膜および前記粘着層の層間に力を加える方法であることを特徴とする薄膜パターンの形成方法。
  2. 前記薄膜が、金属薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜パターンの形成方法。
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