JP5403480B2 - 小径cbnエンドミル - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも刃部の一部がCBN焼結部から構成され、超硬合金部分と一体焼結された構造を有するものであり、刃径が3mm以下の小径CBNエンドミルに関する。
立方晶窒化硼素(CBN)切削工具は、ダイヤモンドに次ぐ硬さを有する窒化硼素(BN)を、超高圧で焼結した切削工具である。鉄系材料の切削にはダイヤモンドが向かないため、CBNは鉄系高硬度材料や難削材の切削、または低硬度鉄系材料の高速切削、断続切削などに用いられる。しかし、CBN切削工具は、超硬工具に比べて極めて脆く、切削中にチッピングや欠損を起こしやすいという欠点があり、切削ボリュームを大きくした高能率切削は不可能であり、制約された環境化で超仕上げ加工として使われているにすぎない。特に小径CBNエンドミルの場合は、少なくとも刃部はCBN焼結材で構成されており、刃部の後方の逃げ面、及びバックメタルの部分もCBN焼結材である。このことから、切削中に横方向の力が加わると、強度不足でチッピングを起こしてしまう。従って、刃径が3mm以下の小径エンドミルでは、CBN焼結材に比べて靭性に優れた超硬エンドミルを用いて精度の低い加工を余儀なくされており、場合によっては、極めて加工能率の低い放電加工が依然として採用されている。
非特許文献1には、小径CBNラジアスエンドミルが記載されており、工具のカケ防止として、エンド切れ刃およびコーナ切れ刃を含むエンドミル先端切れ刃から外周切れ刃にかけてチャンファーリング、すなわち、切れ刃全体に大きな負のすくい角を有したエンドミルが提案されている。
また別の特許文献1には少なくとも先端部が超高圧CBN焼結体で構成され、シャンク側からみて切削回転方向に対して反対方向にねじれを有した外周刃をもつCBNエンドミルを用いて、加工能率を向上させることができると提案されている。
特開2008−110411号公報 「型技術」第21巻第8号 2006年7月号(P.38−39)
近年、家電製品や機械製品の小型精密化は目を見張るものがあり、電子部品関係や半導体関連の部品も精密かつ複雑化している。例えばコネクタ関連の金型では60HRCを越える高硬度鋼材の加工に小径エンドミルを用いて切削する必要がでてきている。また近年、携帯電話の厚みは年々薄くなってきており、薄くてもフレームの強度を持たせるためにリブの構造が変わってきている。つまり微細なリブのプレス加工のために、従来よりも、より硬い金型材料が必要とされており、切削加工も、微細加工の必要性から特に刃径が3mm以下の小径エンドミルが要請されている。しかしながら前記のような高硬度鋼材は切削工具による加工では、工具の摩耗に問題があり、長時間における高能率・高精度な加工が困難である。このため、極めて加工能率の低い放電加工が依然として採用されている。
放電加工を用いないでこれら高硬度材の材料を加工する場合、一般的には超硬合金製のコーティング被覆工具が用いられている。高硬度材の材料を長時間において高精度な加工を行うためには、工具の材質そのものの硬度を上げ、耐摩耗性を向上させる必要がある。そのような背景の中で近年、切れ刃がCBN焼結体で形成されたCBN焼結工具が用いられるケースが増えてきた。しかしながらCBN焼結工具は、超硬工具に比べて極めて脆く、切削中にチッピングや欠損を起こしやすいという欠点があり、切削ボリュームを大きくした高能率切削は不可能であり、制約された環境化で超仕上げ加工として使われているにすぎない。ここで刃先にボール刃を有するボールエンドミルの場合、ピッチを細かくしないと形状が仕上がらないため高能率な切削ができない。すなわち超硬合金製のエンドミルであっても高能率な仕上げ加工をすることは困難である。ましてや切れ刃がCBN焼結体で形成されたCBNボールエンドミルの場合は、無理に高能率な加工を行って切削条件を上げると欠損してしまい、用途的に採用されない。CBN焼結材特有の問題点を解決するためにCBNボールエンドミルの形状を改善した提案が前述した非特許文献1や特許文献1で提案されているが、上述に示すように高能率な加工を行う上で問題があり、無理に高能率な加工を行って切削条件を上げると欠損してしまうという課題が残っている。
本発明者は特に小径のCBNエンドミルの刃先からシャンクまでの全体の構成と刃先の形状を詳しく検討した。その結果、特に直径が3mm以下の小径CBNエンドミルの場合は、少なくとも刃部がCBN焼結材で構成されていると、刃部の後方の逃げ面、及びバックメタルの部分もCBN焼結材であるので、切削中に横方向の力が加わると、刃径が細いこともあって強度不足でチッピングを起こしてしまうことが分かった。
刃先にボール刃を有するボールエンドミルの場合、精密部品加工や携帯電話のリブ構造と異なるフレーム部分の金型加工など3次元の形状を有さない加工、すなわち2次元もしくは2.5次元の加工においては、ピッチを細かくしないと形状が仕上がらないため高能率な加工ができず、根本的にその用途に全く合わない。すなわち対象のエンドミル形状にはなり得ない。
ここで、精密部品や携帯電話のリブ構造と異なるフレーム部分の金型加工などの加工においては、刃先にボール刃を有するボールエンドミルよりも、刃先がフラットであるスクエアエンドミルや丸コーナを持つラジアスエンドミルの方が、底刃フラット部分が広いために高能率な加工が可能である。しかし、底面部の加工において、図1に示すように、ボールエンドミル1とラジアスエンドミル2ともに同じ切込み量3で切削すると、ラジアスエンドミル2は底刃フラット部分が広いがゆえに、その分被削材4に接触する切れ刃の接触面積5が広くなるため抵抗が上がりやすいという欠点を抱えている。図1には被削材4に接触する切れ刃の接触面積5の部分が太い線で比較して描かれているが、両者を比較するとラジアスエンドミル2の方が切れ刃の接触面積5が大きいことが分かる。
これに対して非特許文献1には、小径CBNラジアスエンドミルであって、カケ防止のために切れ刃全体に大きな負のすくい角をもったエンドミルが提案されているが、この提案のエンドミルでは、切削抵抗がさらに大きくなり、その抵抗に耐えられず、より大きな欠損につながってしまう。つまり刃先がフラットであるスクエアエンドミルや丸コーナを持つラジアスエンドミルの場合、工具の材質がCBN焼結材で形成されると、より欠損を引き起こしやすく、安定した加工が望めない。
また特許文献1には、少なくとも先端部が超高圧CBN焼結体で構成され、シャンク側からみて切削回転方向に対して反対方向にねじれを有した外周切れ刃をもつCBNエンドミルが提案されている。これによってコーナ切れ刃の刃先角が大きくなって刃先強度が増し、ラップやホーニング等によるチャンファー処理で刃先を丸くする必要がなく、刃カケが抑制されるとしている。しかし、この提案のエンドミルでは、図2に示すように、コーナ切れ刃のすくい面27と外周切れ刃のすくい面28が違う面で形成されることになる。すなわち精密部品加工や携帯電話のリブ構造と異なるフレーム部分の金型加工などの底面部の加工、特に金型のコーナ部の加工において、コーナ切れ刃が接触したときの抵抗と外周切れ刃が接触したときの抵抗が変化するため、底刃の接触面積が広くあたって発生する振動と相まって、大きな抵抗が発生する。特に高能率な加工を行うと刃先の強度が耐えられずに欠損し、安定した加工は望めない。
さらに切り屑排出時のチップポケットを形成するコーナ切れ刃のすくい面27と外周切れ刃のすくい面28が違う面で形成されているため、すくい面境界部29に段差が生じやすく、切削加工時に生成された切り屑がチップポケット内で噛みこみやすく、仕上げ面に傷をつけることや、噛みこみが原因で抵抗が増大し、欠損することもある。
またこのエンドミルの提案によれば、外周切れ刃のすくい角は負のすくい角になるほど良いとされているが、負のすくい角では食い付き性が悪化し、抵抗の増大に伴う振動が極めて大きく発生しやすく、安定した加工は望めない。
本発明は係る従来の事情に鑑み、精密部品加工のような高硬度材の切削加工を高精度、高能率で長時間にわたって加工ができる、刃部の刃径が3mm以下の小径CBNエンドミル、特にその中で高能率切削加工を達成できる3mm以下の小径CBNスクエアエンドミル及び小径CBNラジアスエンドミルを提供するものである。
本発明は、図3、図4に示すように、少なくとも刃部26がCBN焼結部6からなり、前記CBN焼結部6に一体焼結された超硬合金部分17の後端部7がシャンク孔部に差し込まれて固定されている構造であり、前記刃部26は刃径が3mm以下の先端切れ刃11及び外周切れ刃8を有した2枚刃の小径CBNエンドミルであって、外周切れ刃8の60%以上がギャッシュ9で形成されており、前記先端切れ刃11及び前記外周切れ刃8のうちのギャッシュのみで形成された外周切れ刃9が全て同じすくい面で形成されており、前記刃部26の外周切れ刃8は右刃左ねじれで形成され、前記エンドミル先端切れ刃11のアキシャルレーキが−25°〜−5°であり、前記エンドミル先端切れ刃11のラジアルレーキが0°〜5°であることを特徴とする小径CBNエンドミルである。外周切れ刃8はギャッシュ9と刃溝で形成された外周切れ刃10からなる。ここでエンドミル先端切れ刃11は、エンド切れ刃12とコーナ切れ刃13および外周切れ刃8を合わせたものとし、エンド切れ刃12、コーナ切れ刃13および外周切れ刃8のアキシャルレーキがすべて同じとする。また、刃部26とはエンドミル先端切れ刃を総称的に指す語句であり、刃径30とはこの刃部の最大径部を指す。
本発明の小径CBNエンドミルはボールエンドミルでも実現可能であるが、ボールエンドミルでは難しい高能率な切削を目的とする場合には、本発明の特徴を大きく生かせるスクエアエンドミルまたはラジアスエンドミルが望ましい。
本発明の小径CBNエンドミルは、該外周切れ刃後方に干渉回避部分が設けられており、図3、図4で示される刃溝で形成された外周切れ刃10は無く、外周切れ刃8は図の符号10まで延長されたギャッシュ9のみからなる。またこの場合には、該外周切れ刃後方に工具回転時の干渉回避部分が設けられるのが特徴である。
本発明の小径CBNエンドミルにおいて、エンド切れ刃12のラジアルレーキと外周切れ刃8のラジアルレーキがほぼ同一の角度であることが望ましい。前記のほぼ同一の角度とは具体的には±1゜以内の角度の差異を言う。この発明の場合には、図5に示すようにコーナ切れ刃のすくい面27と外周切れ刃のすくい面28がほぼ同一であることになり、図6に示すような従来例に発生するすくい面段差31が発生しない。すなわち、エンドミル先端切れ刃11内に刃溝で形成されたすくい面36が存在しない。
本発明の小径CBNエンドミルにおいて、エンドミル先端切れ刃のラジアルレーキは0°〜5°であることが望ましい。また、本発明の小径CBNエンドミルにおいて、刃部の形状はエンドミル先端切れ刃両端にコーナRを有したラジアスエンドミルであることが望ましい。
本発明の小径CBNエンドミルは、シャンクから刃部までの全体の構成として、シャンク孔部内に差し込まれている超硬合金部分の後端部7は、その底面19と少なくとも外周面部18の一部が接合材を介してシャンク部23に固定され、前記の少なくとも外周面18の工具軸方向の長さ20は刃径の1倍以上とするのが良い。本発明の小径CBNエンドミルは、CBN焼結部と超硬合金部が一体焼結されて製造されるが、その超硬合金部の後端部はシャンクにろう材などの接合剤を用いて接合される。前記の外周面とは、超硬合金部分の後端の外周面を指す。
本発明は、60%以上の外周切れ刃がギャッシュのみで形成されているので、エンド切れ刃近傍にすくい面段差がない。その効果で、生成された切り屑が段差によって噛みこむことも抑制でき従来例のような切り屑の噛みこみに対する問題を解決できる。
また仕上げ工程の前工程で取りしろが不均一な加工の場合においても、本発明の小径CBNエンドミルは、外周切れ刃の60%以上をギャッシュのみで形成し、該エンドミル先端切れ刃のアキシャルレーキを−25°〜−5°としているので、従来の小径CBNエンドミルの最大の問題点である工具の振動および強度不足から生じるCBN粒子の脱落、チッピングや欠損、不安定性を防止できる効果がある。
本発明では外周切れ刃の60%以上をギャッシュのみで形成できるため、従来のような刃溝で剛性が低下する部分がなくなる。この工具剛性の確保の効果は、本発明が対象とする刃径が3mm以下で、CBNという脆性工具を小径エンドミルで実現するためにとても大切な効果である。
本発明の小径CBNエンドミルにおいて、先端切れ刃11のアキシャルレーキは−25°〜−5°することが望ましい。外周切れ刃は右刃左ねじれで形成される。この効果によって該エンドミルは工作機械の主軸側へ引っ張られる方向に力が加わるため、切削工具の保持剛性が上がり、工作物側への振動が軽減できる。また切れ刃剛性が上がり、チッピングを抑制する効果もある。
本発明の小径CBNエンドミルにおいて、先端切れ刃11のラジアルレーキが0°〜5°であることにより、十分な食い付き性を確保できるので、より安定した加工が実現できる効果がある。
本発明の小径CBNエンドミルは、CBN刃部に一体焼結された超硬合金部分の後端部がシャンク孔部に差し込まれ、前記後端部の外周面部と底面部がろう付け等で固定されているので、前記後端部の挿入部分の機械強度が確保され、首部取り付け部近傍の強度が大きくなり、たわみによる振動等にも強くなり、工具形状の効果と相まって、極めて安定した加工を実現することができる。
本発明を適用することにより、例えば刃径が3mm以下のCBN小径エンドミルを使用する精密部品や携帯電話のリブ構造と異なるフレーム部分の金型加工などの加工において、たとえ金型材が高硬度材であっても、チッピングを引き起こすことなく、安定して長時間の高精度加工が実現でき、精密部品加工などのコスト削減に有効である。
本発明は、少なくとも刃部がCBN焼結部からなり、前記CBN焼結部に一体焼結された超硬合金部分の後端部がシャンク孔部に差し込まれて固定されている構造であり、前記刃部は刃径が3mm以下の先端切れ刃及び外周切れ刃を有した2枚刃の小径CBNエンドミルであって、前記外周切れ刃の60%以上がギャッシュで形成されており、前記先端切れ刃及び前記外周切れ刃のうちのギャッシュのみで形成された外周切れ刃が全て同じすくい面で形成されており、前記刃部の外周切れ刃は右刃左ねじれで形成され、前記刃部の先端切れ刃のアキシャルレーキが−25°〜−5°であり、前記刃部の先端切れ刃のラジアルレーキが0°〜5°であることを特徴とする小径CBNエンドミルである。実施例で後述するが75%以上の外周切れ刃がギャッシュのみで形成されているのが望ましいことを確認している。
高硬度の材料において、2次元もしくは2.5次元の形状加工を行う場合、刃部がCBN焼結材で構成された小径CBNスクエアエンドミルや小径CBNラジアスエンドミルの場合、底面部の加工において切れ刃の接触面積が広くなるため抵抗が上がりやすく、先端切れ刃のチッピングを誘発し、大きな欠損につながってしまう。すなわち切削抵抗を下げる必要があるが、切れ刃のすくい角を鋭角にすると切れ刃の剛性が不足し、かえって大きな欠損を引き起こしてしまう。
本発明は刃の形状として、外周切れ刃8の60%以上をギャッシュのみで形成したことを大きな特徴としている。これによって図7に示すように、エンド切れ刃12とコーナ切れ刃13およびギャッシュのみで形成された外周切れ刃9がすべて同じすくい面で形成される。この外周切れ刃の特徴は精密部品や携帯電話のリブ構造と異なるフレーム部分の金型加工などの、高硬度材加工のコーナ部加工において大きな効果として発揮される。例えば、図8に示すように、コーナ部加工では、エンド切れ刃12、コーナ切れ刃13に抵抗が加わると共に、ギャッシュのみで形成された外周切れ刃9と刃溝で形成された外周切れ刃10も接触するが、刃溝で形成された外周切れ刃10以外は同一のすくい面で形成されるため抵抗が一定である。逆に言えば刃溝で形成された外周切れ刃10のみが切削抵抗が変化し、振動を誘発する原因になるが、本発明者は60%以上の外周切れ刃がギャッシュでのみ形成すれば振動抑制に大きな効果があることを発見した。さらに、60%以上の外周切れ刃がギャッシュのみで形成されていれば図7のようにエンド切れ刃12近傍にはすくい面段差31がないため、生成された切り屑がその段差によって噛みこむことも抑制でき、従来例の図6に示すようにエンド切れ刃12近傍にすくい面段差31が存在する切り屑の噛みこみに対する問題が解決できる。
また、該エンドミル先端切れ刃11のアキシャルレーキを−25°〜−5°としたことによって外周切れ刃8は右刃左ねじれで形成されることになるが、この効果によって該エンドミルは工作機械の主軸側へ引っ張られる方向に力が加わるため、保持剛性が上がり、工作物側への振動が軽減できる。またエンドミル先端切れ刃11のアキシャルレーキを−25°〜−5°としたことにより切れ刃剛性が上がり、チッピングを抑制することができる。ここで先端切れ刃のアキシャルレーキが−5°よりも大きいと、切れ刃剛性が不足し、CBN焼結材の強度が持たず、CBNの粒子が脱落して、最終的にはチッピングを起こしてしまい、−25°よりも小さいと刃先剛性は上がるものの、抵抗が増大してしまい、逆にCBN粒子の脱落が進行し、大きな欠損につながってしまう。
外周切れ刃8は刃の長さの60%以上をギャッシュのみで形成するのが、本発明の特徴の一つであるが、本発明のさらに好ましい形態としては、図9に示すように、外周切れ刃8はギャッシュのみで形成する方が望ましい。これによって図8に示した加工時においても接触する切れ刃はすべて同一のすくい面で形成されるから抵抗の変化がなく安定した加工が望める。さらに図5の本発明例と図6の従来例で対比して示すように、エンドミル先端切れ刃11にすくい面段差31が存在しないため、段差による切り屑の噛みこみが全く発生せず、切り屑の噛みこみによる切削抵抗の変化やチッピング等をより確実に抑制できる。また刃溝が必要なくなるので、刃溝をつける場合の図3、図4に示される刃溝長さ14のような剛性が低下する部分が必要なくなる。すなわち発明者は図9のように不必要な刃溝を削除し、工具の回転軌跡の干渉部分を必要最低限だけ除去した干渉回避部分25を外周切れ刃後方に設けた。これによってむだな工具剛性の低下を抑制でき、つまり全体の剛性が向上し、より安定した加工を実現する。ここで干渉回避部分25の形状は凹状、凸状、多角形状などでよく、必要最低限の干渉部分を除去できればどのような形状でも効果を発揮する。
本発明においては、該エンドミル先端切れ刃11のラジアルレーキが0°〜5°であるラジアルレーキを前記範囲にすることで、十分な食い付き性を確保し、より安定した加工を実現する。
本発明のさらに好ましい形態としては、該エンドミル先端切れ刃エッジにコーナRを有したラジアスエンドミルであることが望ましい。先端切れ刃エッジにコーナRを有することで先端切れ刃エッジの強度がさらに増し、チッピング等の抑制効果がさらに上がる。
本発明のより好ましい態様は、本発明の小径CBNエンドミルにおいて、シャンク孔部内に差し込まれている超硬合金部分の後端部7は、その底面19と少なくとも外周面18の一部が接合剤を介してシャンク23に固定され、前記少なくとも外周面の一部の工具軸方向の長さ20は刃径の1倍以上であることが望ましい。工具軸方向の長さ20は刃径の1倍以上とするのは、接合剤によるシャンクへの固定を確実にするためである。CBN焼結部に一体焼結された超硬合金部分の後端部7をシャンク孔部に差し込む手段として、該孔部内に差し込まれている超硬合金部分はテーパ部15の途中の差し込みスタート位置16から固定され、一体焼結された超硬合金材部分17のうちの孔部内に差し込まれた超硬合金材の一部7の外周面部18と底面部19をろう付け等で固定するのが望ましい。これにより該孔部先端から挿入部分の機械強度が確保され、首部取り付け部近傍の強度が大きくなり、たわみによる振動等にも強くなり、工具形状の効果と相まって、極めて安定した加工を実現する。
次に、本発明の刃部を形成するCBNとシャンク孔部に差し込まれる超硬合金の一体焼結体の素材の製造について説明する。
CBN焼結材とその下部に構成する超硬合金材とが一体焼結されたディスク上の素材から必要な大きさに切断し、その超硬合金材の1部をシャンク部の孔部に固定して製造する。固定する方法としては、ろう付け、圧着、嵌合等があるが、ろう付けが固定後の精度と信頼性及び経済的利便性が高く好ましい。ろう材にはNi−Cr系ろう材やAg−Cu−Ti系ろう材、Ag−Cu−Zn系ろう材が用いられていることが好ましい。例えば、Ag−Cu−Ti系ろう材やAg−Cu−Zn系ろう材では890〜1173°K、Ni−Cr系ろう材では1200〜1490°Kと、より高温で超高硬度焼結材をろう付けすることが出来、切削時に刃先温度が上がった場合にも、ろう付け強度が落ちることなく、より信頼性の高い小径エンドミルが実現できる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
図7、図10は本発明に係る小径CBNラジアスエンドミルの実施例の形状を示す。本発明例1として、CBN含有量が65%、平均粒径が3μmのCBN焼結材に一体焼結された超硬合金材の一部7を刃径の0.3倍とした0.3mmの長さだけシャンク孔部に差し込んで、外周面部18と底面部19をろう付けで固定した。図10に示されるように実施例1はCBN焼結材で構成されたCBN焼結部6と超硬合金材で構成された超硬合金部21からなるCBNラジアスエンドミルである。この工具の先端からエンド切れ刃12とコーナ切れ刃13、外周切れ刃8、首部22、テーパ部15、シャンク部23を設け、刃数は2枚刃、外周切れ刃8のねじれ角が−20°とした。すなわちエンドミル先端切れ刃11のアキシャルレーキが−20°であり、エンドミル先端切れ刃11のラジアルレーキが0°とした。CBNラジアスエンドミルの刃径30は1mm、コーナRのサイズが0.2mm、ギャッシュのみで形成された外周切れ刃9の長さが0.3mm、刃溝で形成された外周切れ刃10の長さが0.1mmとし、つまりエンドミル先端切れ刃の長さ(以下、有効刃長と称する)を0.6mmとした。首部はストレート形状で、首部直径を0.94mm、首下長さを3mmで刃径に対して3倍、シャンク径を4mmにしたものを用意した。
また従来例2として、エンドミル先端切れ刃11のアキシャルレーキを0°でギャッシュを形成した後に、チャンファーリング24で刃部26全体に−40°の大きな負のすくい角とラジアルレーキ−40°を設け、その他の仕様は本発明例1と同様の仕様のものを用意した。従来例3として、図6のような刃溝で外周切れ刃を形成し、アキシャルレーキを−10°、ラジアルレーキ−20°、その他の仕様は本発明例1と同様の仕様のものを用意し、それぞれ切削テストを行った。
切削テストに用いるワークとして、被削材にSKD11(HRC60)で、一部に高さ1mm、アール0.2mmのコーナ部を有したL字形状の底面切削を行った。切削条件は回転数が40000min−1、送り速度が2.4m/min、一回当たりの工具軸方向の切込み量を0.02mm、一回当たりの工具半径方向切込み量を0.3mmとして、クーラントにミストを用いて行った。
評価方法としては、工具摩耗の推移及び、コーナ部における切削初期の切削抵抗の測定、それぞれ切削距離100m毎の仕上げ面の状態を観察した。工具摩耗に関しては走査型電子顕微鏡で250倍の倍率で観察し、逃げ面の摩耗幅が0.1mmに達するもの、もしくはチッピング等により切削不可能となったものを寿命と判断し、最終的に500mまで切削を行った。仕上げ面の状態の評価は、実用上から良好なものは◎印、若干のくすみは○印、びびり面は△印、むしれた光沢のない状態や工具の欠損に至ったものは判断した切削距離を示し、その距離において×印で示した。
各試料の仕様と結果を表1に示す。
Figure 0005403480
その結果、本発明例1は、切削距離500m切削後もほとんど摩耗もなく安定した切削状態であった。さらに仕上げ面も光沢のある面であり、工具送り方向に直角方向の最大仕上げ面粗さはRzで0.98μmと非常に優れた結果となった。それに対して、従来例2は、切削距離100mの時点でエンド切れ刃からコーナ切れ刃にかけてCBNの脱落による大きな欠損が発生し、切削不可能となった。また仕上げ面もむしれた光沢のない極めて悪い結果であった。また切削初期のコーナ部における切削抵抗値も22Nと大きな値を示した。これは、従来例2のエンドミルは、エンドミル先端切れ刃全体に−40°の大きな負のすくい角をもったチャンファーリング24を設けたため、底面切削時に特にエンド切れ刃の広い範囲が工作物に接触した際に切削抵抗が増大し、CBN焼結材の強度が耐えられずに欠損したためと考えられる。ここで、図11に500m切削時の本発明例1と100m切削時の従来例2の工具摩耗状態の比較を示す。同図からも従来例2はチャンファーリング24の影響で抵抗が増大し、100m切削時にすでにエンド切れ刃12とコーナ切れ刃13の境界部分を起点に欠損している様子がわかる。
一方、本発明例1は先端切れ刃のアキシャルレーキを−20°に設定したことによって切れ刃は右刃左ねじれで形成されることになり、該エンドミルは工作機械の主軸側へ引っ張られる方向に力が加わるため、保持剛性が上がり、工作物側への振動が軽減できたことで安定し、さらに切れ刃剛性も上がったことで極めて良好な結果を示したと考えられる。
また従来例3のエンドミルは、切削距離100mの時点ではほとんど摩耗もなく安定していたが、切削初期からコーナ部における切削抵抗値が14Nと高く、切削距離200mの時点で仕上げ面の状態としてびびりが観察され、工具には微小チッピングの発生とすくい面段差31の部分に溶着物が多く観察され、最終的に400m終了時に欠損した。
(実施例2)
次に本発明例5〜8、10、11および比較例4、9、12として、エンドミル先端切れ刃のアキシャルレーキの最適化をはかるためにテストを行った。テスト方法としては、本発明例1と同様の仕様でラジアルレーキが0°、エンドミル先端切れ刃11のアキシャルレーキを比較例4は−2°、本発明例5〜8は−25°〜−5°、比較例9は−30°とした。
また、本発明例10、11と比較例12のものは、アキシャルレーキが−20°とし、有効刃長が0.5mmで外周切れ刃後方に干渉回避部分25を設け、外周切れ刃が100%ギャッシュで形成された本発明例10、有効刃長が0.7mmの外周切れ刃の60%がギャッシュで形成された本発明例11、有効刃長が0.8mmの外周切れ刃の50%がギャッシュで形成された比較例12を用いて、実施例1と同様の加工と評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0005403480
その結果、本発明例5〜8および10、11の工具はすべて500mまで切削しても安定した加工ができた。本発明例5、8の工具は500m切削後に微小チッピングと仕上げ面も若干のくすみが確認されたが、摩耗はほとんど確認されなかった。また本発明例11の工具は500m切削後の仕上げ面状態に若干のびびり面が確認されたが、チッピング等もなく優れた性能を示した。特に、本発明例10の工具は500m切削後も全く摩耗が見られず、仕上げ面も極めて良好な状態であった。
一方、比較例4は200m切削時に工具を確認したところエンド切れ刃のすくい面にチッピングが発生し、仕上げ面も非常に悪くむしれた光沢のない状態が確認された。これはエンドミル先端切れ刃の剛性が十分ではなく、CBN焼結材の強度が持たず、CBNの粒子が脱落、最終的にはチッピングを引き起こしたためと考えられる。また比較例9も同様に100m切削時に工具を確認したところ、エンド切れ刃から大きなチッピングが発生し、このことによる仕上げ面も極めて悪い結果となった。これは、アキシャルレーキが大きな負のすくい角になりすぎて、抵抗が増大してしまい、逆にCBN粒子の脱落が進行し、大きなチッピングの発生につながったためと考えられる。また比較例12の工具は100m切削時は若干のびびり面は確認されたが、チッピングもなく安定していた、しかし200m時に微小チッピングを引き起こし、仕上げ面の状態としてびびり面が観察され、300mの途中で欠損した。これは有効刃長が長くなった分、刃溝長さが長くなってしまい、工具そのものの剛性が低下したことで振動により欠損したと考えられる。
ここで図12に代表的な工具摩耗状態として、500m切削時の本発明例10と比較例4の100m切削時の工具摩耗状態の比較を示す。同図からも比較例4の工具はエンドミル先端切れ刃の剛性が十分ではなく、エンド切れ刃12とコーナ切れ刃13の境界付近からCBN粒子の脱落が始まり、最終的にチッピングに繋がったと考えられる。一方本発明例10の工具は全く摩耗していない様子がわかる。
実施例1および実施例2の結果より75%以上の外周切れ刃がギャッシュのみで形成されているのが望ましいことを確認した。
(実施例3)
次に本発明例15、参考例13、14、16、17として、エンドミル先端切れ刃のラジアルレーキの最適な範囲を見いだすためにテストを行った。エンドミル先端切れ刃のアキシャルレーキは−20°で一定とし、エンドミル先端切れ刃11のラジアルレーキが−10°から15°を変化させ、他は本発明例1と同様の仕様で製作したものを使用した。評価方法としては、実施例1と同様の加工と評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0005403480
その結果、本発明例15、参考例13、14、16、17の工具はすべて500mまで切削しても安定した加工ができた。参考例13の工具は400m切削時に微小チッピングの確認と、仕上げ面が若干のくすみが観察されたが500m切削後もそこから大きなチッピングを引き起こすことはなく良好であった。また参考例17の工具も400m切削時の仕上げ面に若干のびびり面が確認されたが、工具にチッピング等はなく500m切削時に微小な脱落摩耗が確認された。一方、本発明例15は500m切削後もほとんど摩耗もなく、仕上げ面粗さも0.96μmと非常に優れた結果となった。エンドミル先端切れ刃のラジアルレーキの範囲は0°〜5°の範囲が最適な範囲と推察した。
(実施例4)
次に本発明例1と同様の仕様で、本発明例18として、コーナRのないスクエアエンドミルを、本発明例19としてコーナRが0.2mmで、CBN焼結材に一体焼結された超硬合金部分の後端部7を1mmの長さだけシャンク孔部に差し込んだものを用いて、実施例1と同様の加工と評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 0005403480
その結果、本発明例18、19ともに500mまで切削しても安定した加工ができた。本発明例18の工具は400m切削時にコーナ切れ刃に微小チッピングがみられ、仕上げ面も若干のくすんだ面となったが、500m切削時もチッピングが大きくなることはなかった。また、本発明例19の工具は500m切削後も全く摩耗が見られず、仕上げ面も極めて良好な状態であった。これはCBN焼結材に一体焼結された超硬合金部分の後端部7をより深くまでシャンク孔部に差し込んだことによって孔部先端から挿入部分の機械強度が確保され、首部取り付け部近傍の強度が大きくなり、たわみによる振動等にも強くなったためと考えられる。
図1は、ボールエンドミルとラジアスエンドミルの切削抵抗の相違点を比較する図を示す。 図2は、従来の小径CBNエンドミルのすくい面の一例を示す。 図3は、本発明に係る小径CBNラジアスエンドミルの一例を示す。 図4は、本発明に係る小径CBNスクエアエンドミルの一例を示す。 図5は、本発明に係る小径CBNエンドミルのすくい面の拡大部ですくい面の段差がないことを示す。 図6は、従来の小径CBNエンドミルの段差があるすくい面の拡大部を示す。 図7は、本発明に係る別の小径CBNエンドミルのすくい面を示す。 図8は、金型のコーナ部加工におけるラジアスエンドミルの切れ刃の抵抗を示す。 図9は、外周切れ刃はギャッシュのみで形成され、外周切れ刃後方に干渉回避部分が設けられた本発明に係る小径CBNエンドミルを示す。 図10は、本発明に係る別の小径CBNラジアスエンドミルの一例を示す。 図11は、本発明例1と従来例2の工具摩耗状態の比較を示す。 図12は、本発明例10と比較例4の工具摩耗状態の比較を示す。
符号の説明
1 ボールエンドミル
2 ラジアスエンドミル
3 切込み量
4 被削材
5 切れ刃の接触面積
6 CBN焼結部
7 CBN焼結材に一体焼結された超硬合金部分の後端部
8 外周切れ刃
9 ギャッシュで形成された外周切れ刃
10 刃溝で形成された外周切れ刃
11 エンドミル先端切れ刃
12 エンド切れ刃
13 コーナ切れ刃
14 刃溝長さ
15 テーパ部
16 差し込みスタート位置
17 一体焼結された超硬合金部分
18 外周面部
19 底面部
20 差し込んだ一体焼結された超硬合金部分の後端部の長さ
21 超硬合金部
22 首部
23 シャンク部
24 チャンファーリング
25 干渉回避部分
26 刃部
27 コーナ切れ刃のすくい面
28 外周切れ刃のすくい面
29 すくい面境界部
30 刃径
31 すくい面段差
32 コーナ逃げ面
33 外周逃げ面
34 エンド切れ刃のすくい面
35 ギャッシュで形成されたすくい面
36 刃溝で形成されたすくい面

Claims (3)

  1. 少なくとも刃部がCBN焼結部からなり、前記CBN焼結部に一体焼結された超硬合金部分の後端部がシャンク孔部に差し込まれて固定されている構造であり、前記刃部は刃径が3mm以下の先端切れ刃及び外周切れ刃を有した2枚刃の小径CBNエンドミルであって、前記外周切れ刃の60%以上がギャッシュで形成されており、前記先端切れ刃及び前記外周切れ刃のうちのギャッシュのみで形成された外周切れ刃が全て同じすくい面で形成されており、前記刃部の外周切れ刃は右刃左ねじれで形成され、前記刃部の先端切れ刃のアキシャルレーキが−25°〜−5°であり、前記刃部の先端切れ刃のラジアルレーキが0°〜5°であることを特徴とする小径CBNエンドミル。
  2. 請求項1に記載の小径CBNエンドミルにおいて、前記刃部の先端切れ刃のラジアルレーキと外周切れ刃のラジアルレーキがほぼ同一の角度であることを特徴とする小径CBNエンドミル。
  3. 請求項1または2に記載の小径CBNエンドミルにおいて、シャンク孔部内に差し込まれている超硬合金部分の後端部は、その底面と少なくとも外周面の一部が接合材を介してシャンクに固定され、前記外周面の一部の工具軸方向の長さは刃径の1倍以上であることを特徴とする小径CBNエンドミル。
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