JP5403254B2 - 鉄塔基礎の補強構造及びその補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄塔の主脚柱を支持する鉄塔基礎の補強構造及びその補強方法に関する。
過去に建設された送電用鉄塔基礎の内、数十年の歳月が経過したものは、自然暴露による経年劣化、打継ぎ目の施工不良、アルカリ骨材反応、引上げ荷重等の影響によって、図7に示されるように、基礎床版に水平クラック50、50が発生しているものが散見されるようになってきた。
このような耐力減少の生じた基礎に対する補強方法又は補強構造として、従来より種々のものが提案されている。例えば、下記特許文献1では、図8に示されるように、上側主筋と下側主筋を有する既設の鉄筋コンクリート構造物をせん断補強する鉄筋コンクリート構造物の補強方法であって、補強すべき前記鉄筋コンクリート構造物におけるせん断応力が発生する方向を横切るように有底の所定深さの孔51を上側主筋側から穿孔し、該孔51内に該孔より長さの短い棒状の補強部材52をその先端が下側主筋のいくらか上側位置またはいくらか下側位置になるまで没入した後、該補強部材52の全部を覆うように自己硬化型充填材53を充填する鉄筋コンクリート構造物の補強方法が提案されている。
また、下記特許文献2では、図9に示されるように、フーチング55(地中基礎構造物)の耐震補強するに当り、掘削工程と、削孔工程と、鉄筋定着工程と、コンクリート打設工程とにより行われ、掘削工程では、土留め壁を設けて、その内部を掘削し、フーチング55を露出させ、削孔工程では、掘削工程で露出したフーチング55の上端から下側主筋56の下方まで到達する削孔57を、上側、下側主筋58,56の間隙部に形成し、鉄筋定着工程では、削孔57内に棒状補強鋼材59を挿入して、当該棒状補強鋼材59を削孔57内に、無収縮コンクリート60を充填、硬化させることで定着し、コンクリート打設工程では、棒状補強鋼材59を内部に埋設した状態で、必要な配筋61を施して、上側鉄筋58の上部にコンクリート62を打ち増しする鉄筋コンクリート構造物の耐震補強工法が記載されている。
特許第4253785号公報 特開平11−323988号公報
ところで、送電用鉄塔の基礎は、図10に示されるように、鉄塔の自重、電線の自重の影響よりも、電線の延線張力や、台風や季節風などによる風荷重の影響を強く受けることになる。その結果、転倒モーメントが他の要因による全圧縮荷重に比べて大きくなるため、風下側の鉄塔脚部には圧縮荷重が作用する一方で、風上側の鉄塔脚部には圧縮荷重(押込み力)の約7割に及ぶ引揚荷重(引抜き力)が作用する。また、前記押込み力と引抜き力による偶力によって曲げモーメントが作用するとともに、水平力が作用することになる。また、主脚柱からの荷重伝達は、基礎内部に埋設された鋼材(通称、いかり材)によって行われるため、荷重がコンクリート内の一断面に集中することになるという特殊事情を有する。
図7に示されるように、いかり材又はそれよりも上面に水平クラック50が存在する状態で引揚げ荷重が作用した場合、いかり材からのコンクリート剪断破壊面が形成されず、床版が剥がれるような状態で破壊に至ることが予想される。また、水平クラック50が存在していることにより、引揚げ荷重作用時に床版の有効高さが確保できないため、床版の曲げ破壊が想定荷重以下で発生することが予想される。
このような点を考慮しながら前記特許文献1、2記載の補強方法の適用を検討した場合、特許文献1記載の方法は、剪断補強は比較的に容易に行えるが、水平クラック50のために床版の有効高さを確保できないなどの問題があった。また、前記特許文献2記載の補強方法の場合は、床版の増厚によって床版の有効高さは確保できるものの、増厚する床版の施工に多くの手間と時間が掛かるなどの問題があった。
そこで本発明の主たる課題は、鉄塔基礎を床版の増厚を行うことなく、有効高さを確保し得るとともに、簡易な施工で済む補強構造及びその補強方法を提供することにある。
前期課題を解決するために請求項1に係る本発明として、鉄塔の主脚柱を支持する鉄塔基礎の補強構造であって、
既設の鉄塔基礎の上面側から略垂直方向に形成した鉄塔基礎を貫通しない複数の有底の孔内に、下端に受圧部を備えた棒状補強鋼材が上端を鉄塔基礎の上面よりも若干突出させた状態で挿入されるとともに、前記孔内にモルタル又は樹脂グラウト材が充填され、複数の棒状補強鋼材を一組として、これら棒状補強鋼材の上端に、下面側に形成されたズレ止めリブを鉄塔基礎の上面に形成されたズレ止め凹部に係合させた状態で受圧板が取付けられ、鉄塔基礎の上面を支圧面として前記棒状補強鋼材に緊張力が導入され定着されていることを特徴とする鉄塔基礎の補強構造が提供される。
上記請求項記載の発明は、鉄塔基礎の上面側から略垂直方向に埋設した棒状補強鋼材に対して、緊張力を導入して定着するようにしている。従って、前記緊張力の導入によって、鉄塔基礎を床版の増厚を行うことなく、有効高さを確保し得るようになる。また、床版の増厚を行わないため、比較的簡易な施工で済むようになる。更に、棒状補強鋼材に緊張力が導入され、基礎を上下方向に締め付けているため、主脚柱から引揚げ荷重が作用しても、その力を相殺してコンクリート内部に引き揚げ応力が発生しにくくなるため、引揚げ力に対する耐力向上効果も同時に見込めるようになる。
さらに、上側の受圧板として、複数の棒状補強鋼材を一組として定着することができる寸法を有し、下面側に形成されたズレ止めリブを鉄塔基礎の上面に形成されたズレ止め凹部に係合させた状態で取り付けられたものを使用している。これによって、鉄塔基礎に曲げモーメントが作用した際、上側鉄筋と同様に、前記受圧板が引張り鋼材として機能し、曲げ耐力の向上が図れるようになる。
請求項に係る本発明として、鉄塔の主脚柱を支持する鉄塔基礎を補強するための補強方法であって、
既設の鉄塔基礎の上面側から略垂直方向に穿孔を行い、鉄塔基礎を貫通しない有底の孔を複数形成する第1工程と、
下端に受圧部を備えた棒状補強鋼材を前記孔内に挿入するとともに、挿入した状態で棒状補強鋼材の上端を鉄塔基礎の上面よりも若干突出させた状態とする第2工程と、
前記孔内にモルタル又は樹脂グラウト材を充填する第3工程と、
前記モルタル又は樹脂グラウト材の硬化後に、複数の棒状補強鋼材を一組として、これら棒状補強鋼材の上端に、下面側に形成されたズレ止めリブを鉄塔基礎の上面に形成されたズレ止め凹部に係合させた状態で受圧板を取付け、前記鉄塔基礎の上面を支圧面として前記棒状補強鋼材に緊張力を導入し定着を図る第4工程と、からなることを特徴とする鉄塔基礎の補強方法が提供される。
上記請求項記載の発明は、請求項に係る発明の施工手順を示したものである。
以上詳説のとおり本発明によれば、鉄塔基礎を床版の増厚を行うことなく、有効高さを確保し得るとともに、簡易な施工で済むようになる。
本発明の第1形態例に係る鉄塔基礎の補強構造の縦断面図である。 その平面図である。 その施工手順図である。 本発明の第2形態例に係る鉄塔基礎の補強構造の縦断面図である。 その平面図である。 支圧板を示す、(A)は平面図、(B)は右側面図、(C)は正面図である。 既設の鉄塔基礎の劣化状態を示す側面図である。 従来の基礎補強方法(その1)を示す側面図である。 従来の基礎補強方法(その2)を示す縦断面図である。 鉄塔の側面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔第1形態例〕
第1形態例に係る鉄塔の主脚柱を支持する鉄塔基礎の補強構造は、図1及び図2に示されるように、既設の鉄塔基礎1の上面側から略垂直方向に形成した鉄塔基礎1を貫通しない複数の有底の孔2内に、下端に受圧部となる受圧板3を取り付けた棒状補強鋼材4が上端を鉄塔基礎1の上面よりも若干突出させた状態で挿入されるとともに、前記孔2内にモルタル又は樹脂グラウト材5が充填され、各棒状補強鋼材4,4…毎、その上端に受圧板6が取付けられ、鉄塔基礎の上面を支圧面として前記棒状補強鋼材4に緊張力が導入され定着されているものである。
以下、さらに具体的に詳述する。
先ず、鉄塔基礎1は、図1に示されるように、コンクリート内部に上側主筋10、10…と、下側主筋11、11…と、組立筋12、12…などの縦方向鉄筋とが埋設されているとともに、図示例ではいかり材13が埋設され、主脚柱14の下端が前記いかり材13に連結されている。基礎1の下面側地盤には杭基礎15、15が打設されている。
次に、施工手順に従いながら、本発明の補強構造について詳述する。
図3(A)に示されるように、既設の鉄塔基礎1の上面側から略垂直方向にコアカッターにより穿孔を行い、鉄塔基礎を貫通しない有底の孔2,2…を複数形成する(第1工程)。前記孔2は、図2に示されるように、平面視で、鉄筋10〜12及びいかり材13を避けながら、均等配置となるように位置を決定するのが望ましい。また、間隔は概ね300〜1000mmの間隔で配置するのが望ましい。更に、前記孔2は、鉄塔基礎1の下側主筋11の近傍、具体的には、下側主筋11の若干上側位置、ほぼ同位置又は若干下側位置に達するように形成するのが望ましい。
次に、図3(B)に示されるように、下端に受圧板3を取り付けた棒状補強鋼材4を前記孔2内に挿入するとともに、挿入した状態で棒状補強鋼材4の上端を鉄塔基礎1の上面よりも若干突出させた状態とする(第2工程)。前記棒状補強鋼材4としては、次工程で充填するモルタル又は樹脂グラウト材との付着縁切りを行うために、丸鋼又はアンボンドPC鋼材を使用するのが望ましい。前記丸鋼は表面が平滑であり、引張りによって断面径が小さくなることにより、自動的にコンクリートとの付着が切れるようになる。また、前記丸鋼と、モルタル又は樹脂グラウト材との付着を確実に断ち切るようにするには、丸鋼を一旦降伏点以上の荷重で引張り、周囲のモルタル等との付着を完全に切った後、張力を開放し、その後に所定の緊張力を導入するようにするのが望ましい。前記アンボンドPC鋼材は、ポリエチレンシースとグリースによりコーティングされ、コンクリートとは付着しない構造としたPC鋼材であり、コンクリートが硬化した後で引張力を与える「ポストテンション方式」に多く使用されているPC鋼材である。
前記受圧板3の取付けは、図示例のように、前記棒状補強鋼材4の下端部にネジ切り加工を行い、受圧板3に前記棒状補強鋼材4を挿通したならば、受圧板3の下面側にナット部材7を螺合するようにすればよい。また、前記棒状補強鋼材4の上端部にも、定着のためにネジ切り加工が施される。なお、前記受圧板3に代えて、前記棒状補強鋼材4の下端部を加熱成形し、受圧部となる円盤状の拡径部を一体的に備えるようにすることでもよい。
各孔2,2…内に前記棒状補強鋼材4を挿入したならば、図3(C)に示されるように、前記孔2,2…内にモルタル又は樹脂グラウト材5を充填する(第3工程)。前記モルタルとしては、無収縮モルタル又はその相当品を使用するのが望ましく、前記樹脂グラウト材としては、エポキシ系グラウト材を使用するのが望ましい。
次いで、前記モルタル又は樹脂グラウト材5の硬化後に、各棒状補強鋼材4毎に、棒状補強鋼材4の上端に受圧板6を取付け、鉄塔基礎1の上面を支圧面として前記棒状補強鋼材4に緊張力を導入し、ナット部材8により定着を図る(第4工程)。前記棒状補強鋼材4の上端、受圧板6及びナット部材8の防錆処理を行う場合は、例えば紫外線劣化の少ないウレタン系塗料等によって防錆塗装を行うか、各定着部にキャップ材を被せ、内部に防錆材(油)を充填するようにすればよい。
〔第2形態例〕
次に、図4及び図5に示される第2形態例に係る鉄塔基礎の補強構造は、曲げ補強を同時に行うようにした態様を示したものである。
本補強構造は、同図に示されるように、既設の鉄塔基礎1の上面側から略垂直方向に形成した鉄塔基礎1を貫通しない複数の有底の孔2内に、下端に受圧板3を取り付けた棒状補強鋼材4が上端を鉄塔基礎1の上面よりも若干突出させた状態で挿入されるとともに、前記孔2内にモルタル又は樹脂グラウト材5が充填され、複数の、図示例では4本の棒状補強鋼材4、4…を一組として、これら棒状補強鋼材4,4…の上端に、下面側に形成されたズレ止めリブ9a〜9dを鉄塔基礎1の上面に形成されたズレ止め凹部16に係合させた状態で受圧板9が取付けられ、鉄塔基礎の上面を支圧面として前記棒状補強鋼材4,4…に緊張力が導入され定着されているものである。
前記受圧板9は、詳細には図6に示されるように、下面側に複数の、図示例では4つのズレ止めリブ9a〜9dを備えた板材であり、任意の荷重方向に対応するため、4つのズレ止めリブ9a〜9dの内、リブ9a、9bとリブ9c、9dとが直交的に配置されている。これらズレ止めリブ9a〜9dが、鉄塔基礎1の上面に形成されたズレ止め凹部16に隙間無く係合させることにより、鉄塔基礎1に曲げモーメントが作用した際、上側鉄筋と同様に、前記受圧板9が引張り鋼材として機能し、曲げ耐力の向上が図れるようになる。なお、前記ズレ止めリブ9a〜9dを、鉄塔基礎1の上面に形成されたズレ止め凹部16に隙間無く係合させるには、ズレ止め凹部16に少量のモルタル又は樹脂グラウト材を充填した状態で設置するようにすればよい。この第2形態例の場合には、前記第1形態例に比べて、棒状補強鋼材4の本数を低減することが可能である。
なお、施工手順については改めて詳述しないが、前記受圧板9の取付け以外は、第1形態例と全く同様である。
1…鉄塔基礎、2…孔、3…受圧板、4…棒状補強鋼材、5…モルタル又は樹脂グラウト材、6・9…受圧板、7・8…ナット部材、10…上側主筋、11…下側主筋、12…組立筋

Claims (2)

  1. 鉄塔の主脚柱を支持する鉄塔基礎の補強構造であって、
    既設の鉄塔基礎の上面側から略垂直方向に形成した鉄塔基礎を貫通しない複数の有底の孔内に、下端に受圧部を備えた棒状補強鋼材が上端を鉄塔基礎の上面よりも若干突出させた状態で挿入されるとともに、前記孔内にモルタル又は樹脂グラウト材が充填され、複数の棒状補強鋼材を一組として、これら棒状補強鋼材の上端に、下面側に形成されたズレ止めリブを鉄塔基礎の上面に形成されたズレ止め凹部に係合させた状態で受圧板が取付けられ、鉄塔基礎の上面を支圧面として前記棒状補強鋼材に緊張力が導入され定着されていることを特徴とする鉄塔基礎の補強構造。
  2. 鉄塔の主脚柱を支持する鉄塔基礎を補強するための補強方法であって、
    既設の鉄塔基礎の上面側から略垂直方向に穿孔を行い、鉄塔基礎を貫通しない有底の孔を複数形成する第1工程と、
    下端に受圧部を備えた棒状補強鋼材を前記孔内に挿入するとともに、挿入した状態で棒状補強鋼材の上端を鉄塔基礎の上面よりも若干突出させた状態とする第2工程と、
    前記孔内にモルタル又は樹脂グラウト材を充填する第3工程と、
    前記モルタル又は樹脂グラウト材の硬化後に、複数の棒状補強鋼材を一組として、これら棒状補強鋼材の上端に、下面側に形成されたズレ止めリブを鉄塔基礎の上面に形成されたズレ止め凹部に係合させた状態で受圧板を取付け、前記鉄塔基礎の上面を支圧面として前記棒状補強鋼材に緊張力を導入し定着を図る第4工程と、からなることを特徴とする鉄塔基礎の補強方法。
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