ところで、鉄塔には、鉄塔に懸架された電線等に起因する引き抜き荷重が作用することが考えられる。そして、この引き抜き荷重を支持するのにあたって、脚材と連結された床板の重量は、大きい方が好ましい。また、施工時間の短縮の観点からは、床板にプレキャストコンクリートを用いることが好ましい。
しかしながら、鉄塔を山岳地等に建設する場合、運搬可能な材料の重量に制限があるため、床板に用いることができるプレキャストコンクリートの重量もまた制限されることとなる。
本発明は上記事実を考慮し、鉄塔の基礎部の重量を確保しつつ、鉄塔の基礎部の構築に必要な施工時間を短縮し、さらに鉄塔の基礎部を構成する材料の運搬を容易なものとすることができる鉄塔基礎構造及びその構築方法を提供することが目的である。
第1の態様に係る鉄塔基礎構造は、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材と、前記脚材における前記鉄塔の高さ方向下側の端部と一体的に設けられると共に、平らな設置面上に配置されたプレキャストコンクリート製の内側ピースと、前記鉄塔の高さ方向から見て円環状とされると共に、軸方向を前記高さ方向とされた状態で前記内側ピースの外周側に配置された螺旋筋と、前記螺旋筋の外周側に配置された床板の一部を構成し、当該螺旋筋における前記高さ方向上側の部分の外周側に当該螺旋筋の周方向に沿って複数互いに当接された状態で配置されたプレキャストコンクリート製の上側床板ブロックと、前記床板の一部を構成し、前記螺旋筋における前記高さ方向下側の部分の外周側に当該螺旋筋の周方向に沿って複数互いに当接された状態で配置されたプレキャストコンクリート製の下側床板ブロックと、前記上側床板ブロックに一部が埋め込まれ、前記螺旋筋の内周側に配置されると共に前記高さ方向上側から前記高さ方向下側に延出された第1上側縦筋を備えた複数の上側補強筋と、前記下側床板ブロックに一部が埋め込まれ、前記螺旋筋の内周側に配置されると共に前記高さ方向下側から前記高さ方向上側に延出された第1下側縦筋を備えた下側補強筋と、前記螺旋筋の内周側に当該螺旋筋の周方向に沿って複数配置され、前記第1上側縦筋と直交する第1平面と前記第1下側縦筋と直交する第2平面との間に掛け渡された内側補強筋と、前記内側ピースと前記床板との間に介在しかつ当該内側ピース及び当該床板に密着状態で設けられると共に、前記螺旋筋、前記第1上側縦筋、前記第1下側縦筋及び前記内側補強筋が埋め込まれたコンクリート製の介在部と、を有している。
第1の態様に係る構造物の鉄塔基礎構造によれば、内側ピースが、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材における鉄塔の高さ方向(以下、単に高さ方向と称する)下側の端部と一体的に設けられている。この内側ピースは、プレキャストコンクリート製とされていると共に、当該内側ピースが平らな設置面上に配置されているため、内側ピースを設置面上に配置することで脚材の位置決めを行うことができる。
また、内側ピースの外周側には、高さ方向から見て円環状とされた螺旋筋が、軸方向を高さ方向とされた状態で配置されている。そして、螺旋筋の外周側には、床板が配置されると共に、内側ピースと床板との間には、コンクリート製の介在部が介在しており、当該介在部は、当該内側ピース及び当該床板に密着された状態となっている。このため、本態様では、鉄塔に懸架された電線等に起因する引き抜き荷重が脚材に作用しても、床板の重量によって当該引き抜き荷重を支持することができる。また、脚材に作用するせん断荷重を螺旋筋によって支持することができる。
ところで、脚材に作用する引き抜き荷重を支持するのにあたって、脚材と連結された床板の重量は、大きい方が好ましい。また、施工時間の短縮の観点からは、床板にプレキャストコンクリートを用いることが好ましい。一方で、鉄塔を山岳地等に建設する場合、運搬可能な材料の重量に制限があるため、床板に用いることができるプレキャストコンクリートの重量もまた制限されることとなる。
ここで、本態様では、プレキャストコンクリート製の複数の上側床板ブロック及び下側床板ブロックを含んで構成されている。詳しくは、複数の上側床板ブロックは、螺旋筋における高さ方向上側の部分の外周側に当該螺旋筋の周方向に沿って上側床板ブロック同士が互いに当接された状態で配置されている。一方、複数の下側床板ブロックは、螺旋筋における高さ方向下側の部分の外周側に当該螺旋筋の周方向に沿って下側床板ブロック同士が互いに当接された状態で配置されている。
このため、本態様では、床板を構成する部材を分割して運搬することができ、その結果、鉄塔を山岳地等に建設する場合であっても、床板の重量を確保することができる。
ところで、上側床板ブロック及び下側床板ブロックに脚材側からの荷重を伝達するものが介在部のみである場合、上側床板ブロックと下側床板ブロックとの間においてこれらに作用する当該荷重の大きさに偏りが生じることが考えられる。
ここで、本態様では、上側床板ブロックには、当該上側床板ブロックに一部が埋め込まれた上側補強筋が複数設けられており、当該上側補強筋は、螺旋筋の内周側に配置されると共に高さ方向上側から高さ方向下側に延出された第1上側縦筋を備えている。一方、下側床板ブロックには、当該下側床板ブロックに一部が埋め込まれた下側補強筋が設けられており、当該下側補強筋は、螺旋筋の内周側に配置されると共に高さ方向下側から高さ方向上側に延出された第1下側縦筋を備えている。
また、螺旋筋の内周側には、内側補強筋が当該螺旋筋の周方向に沿って複数配置されており、当該内側補強筋は、第1上側縦筋と直交する第1平面と第1下側縦筋と直交する第2平面との間に掛け渡されている。そして、第1上側縦筋、第1下側縦筋及び内側補強筋は、介在部に埋め込まれた状態となっている。
このため、第1上側縦筋と第1下側縦筋とが、内側補強筋及び介在部を介して高さ方向に連結された状態となり、上側床板ブロック及び下側床板ブロックには、第1上側縦筋、第1下側縦筋及び内側補強筋を介して脚材側からの荷重が同様に伝達される。その結果、本態様では、脚材側からの荷重を床板全体で支持することができる。
第2の態様に係る鉄塔基礎構造は、第1の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記内側ピースの前記螺旋筋側の面、前記床板の当該螺旋筋側の内周面には、前記介在部の一部を構成するコンクリートが充填された内側凹部が設けられている。
第2の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、内側ピースの螺旋筋側の面及び床板の当該螺旋筋側の内周面には、内側凹部が設けられており、当該内側凹部には、介在部の一部を構成するコンクリートが充填された状態となっている。つまり、介在部には、内側ピース側に突出した突起部と床板側に突出した突起部とが設けられた状態となっている。
このため、内側ピースと床板とが相対移動しようとするときに介在部に作用するせん断力が、当該介在部に設けられたこれらの突起部によって支持され、その結果、介在部を介して床板の自重による荷重を内側ピース側により伝達し易くすることができる。
第3の態様に係る鉄塔基礎構造は、第1の態様又は第2の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記上側床板ブロックの前記下側床板ブロック側の面及び当該下側床板ブロックの当該上側床板ブロック側の面の一方には、他方に対して突出した突起部が形成されると共に、当該他方には、当該突起部が係合可能な被係合部が形成され、当該突起部が当該被係合部に係合されることで当該上側床板ブロックと当該下側床板ブロックとの前記高さ方向と直交する方向の相対変位が制限可能とされている。
第3の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、上側床板ブロックの下側床板ブロック側の面及び当該下側床板ブロックの当該上側床板ブロック側の面の一方には、他方に対して突出した突起部が形成されると共に、当該他方には、当該突起部が係合可能な被係合部が形成されている。そして、突起部が被係合部に係合されることで、上側床板ブロックと下側床板ブロックとの高さ方向と直交する方向の相対変位が制限される。
ところで、床板には、鉄塔の自重及び当該自重に対する地盤からの反力に起因するモーメントや鉄塔が受ける外力に起因するモーメントが発生することが考えらえる。そして、上側床板ブロックと下側床板ブロックとの高さ方向と直交する方向の相対変位が制限されていない状態で床板に上記モーメントが生じた場合、上側床板ブロックと下側床板ブロックとの間で滑りが生じ、床板全体で当該モーメントを支持することが困難となることが考えられる。
ここで、本態様では、上述したように、突起部及び被係合部によって上側床板ブロックと下側床板ブロックとの高さ方向と直交する方向の相対変位が制限されているため、床板に上記モーメントが生じても当該モーメントを床板全体で支持することができる。
第4の態様に係る鉄塔基礎構造は、第1の態様又は第2の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記上側床板ブロックと前記下側床板ブロックとの間に配置されると共に、前記床板の一部を構成し、前記螺旋筋の外周側に当該螺旋筋の周方向に沿って複数互いに当接された状態で配置されたプレキャストコンクリート製の中間床板ブロックをさらに備え、前記上側床板ブロックの前記中間床板ブロック側の面及び当該中間床板ブロックの当該上側床板ブロック側の面の一方には、他方に対して突出した第1突起部が形成されると共に、当該他方には、当該第1突起部が係合可能な第1被係合部が形成され、当該第1突起部が当該第1被係合部に係合されることで当該上側床板ブロックと当該中間床板ブロックとの前記高さ方向と直交する方向の相対変位が制限可能とされており、前記中間床板ブロックの前記下側床板ブロック側の面及び当該下側床板ブロックの当該中間床板ブロック側の面の一方には、他方に対して突出した第2突起部が形成されると共に、当該他方には、当該第2突起部が係合可能な第2被係合部が形成され、当該第2突起部が当該第2被係合部に係合されることで当該中間床板ブロックと当該下側床板ブロックとの前記高さ方向と直交する方向の相対変位が制限可能とされている。
第4の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、上側床板ブロックと下側床板ブロックとの間に床板の一部を構成するプレキャストコンクリート製の中間床板ブロックが、螺旋筋の外周側に当該螺旋筋の周方向に沿って複数互いに当接された状態で配置されている。
また、上側床板ブロックの中間床板ブロック側の面及び当該中間床板ブロックの当該上側床板ブロック側の面の一方には、他方に対して突出した第1突起部が形成されると共に、当該他方には、当該第1突起部が係合可能な第1被係合部が形成されている。そして、第1突起部が第1被係合部に係合されることで上側床板ブロックと中間床板ブロックとの高さ方向と直交する方向の相対変位が制限される。
さらに、中間床板ブロックの下側床板ブロック側の面及び当該下側床板ブロックの当該中間床板ブロック側の面の一方には、他方に対して突出した第2突起部が形成されると共に、当該他方には、当該第2突起部が係合可能な第2被係合部が形成されている。そして、第2突起部が第2被係合部に係合されることで中間床板ブロックと下側床板ブロックとの高さ方向と直交する方向の相対変位が制限される。
このため、本態様では、床板の重量の増加を図りつつ、床板に発生するモーメントすなわち鉄塔の自重及び当該自重に対する地盤からの反力に起因するモーメントや鉄塔が受ける外力に起因するモーメントを床板全体で支持することができる。
第5の態様に係る鉄塔基礎構造は、第1の態様~第4の態様の何れか1態様に係る鉄塔基礎構造において、前記床板の前記螺旋筋と反対側の外周面には、当該螺旋筋側に凹んだ外側凹部が設けられている。
第5の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、床板の螺旋筋と反対側の外周面に、当該螺旋筋側に凹んだ外側凹部が設けられている。このため、床板を土中に埋めるときに当該床板周辺のモルタルや土が外側凹部に充填されることとなる。その結果、本態様では、外側凹部に充填されたモルタルや土を、脚材に作用する引き抜き荷重に対する抵抗として機能させることができる。
第6の態様に係る鉄塔基礎構造は、第1の態様~第5の態様の何れか1態様に係る鉄塔基礎構造において、前記上側補強筋は、前記第1上側縦筋と連続しかつ当該第1上側縦筋から前記螺旋筋の径方向外側に延出された上側横筋を備え、前記下側補強筋は、前記第1下側縦筋と連続しかつ当該第1下側縦筋から前記螺旋筋の径方向外側に延出された下側横筋を備えると共に、前記螺旋筋の周方向に隣接する前記上側横筋を当該周方向に繋ぐ上端筋と、当該周方向に隣接する前記下側横筋を当該周方向に繋ぐ下端筋と、をさらに有している。
第6の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、上側床板ブロックに設けられた上側補強筋が、第1上側縦筋と連続する上側横筋を備えており、当該上側横筋は、当該第1上側縦筋から螺旋筋の径方向外側に延出されている。そして、螺旋筋の周方向に隣接する上側横筋が、上端筋によって当該周方向に繋がれている。このため、本態様では、脚材に作用する引き抜き荷重に対する地盤による支持力を上側床板ブロック全体に伝達させることができる。
また、下側床板ブロックに設けられた下側補強筋が、第1下側縦筋と連続する下側横筋を備えており、当該下側横筋は、当該第1下側縦筋から螺旋筋の径方向外側に延出されている。そして、螺旋筋の周方向に隣接する下側横筋が、下端筋によって当該周方向に繋がれている。このため、本態様では、脚材に作用する引き抜き荷重に対する地盤による支持力を下側床板ブロック全体に伝達させることができる。
第7の態様に係る鉄塔基礎構造は、第6の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記上側床板ブロック同士の境界部において、一方の前記上側床板ブロックに設けられた前記上端筋と、他方の前記上側床板ブロックに設けられた前記上端筋とを前記周方向に連結する周方向継手部をさらに有している。
第7の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、上側床板ブロック同士の境界部において、一方の上側床板ブロックに設けられた上端筋と、他方の上側床板ブロックに設けられた上端筋とが、周方向継手部によって螺旋筋の周方向に連結される。このため、本態様では、脚材に作用する引き抜き荷重を床板の上部に分散させて支持することができる。
第8の態様に係る鉄塔基礎構造は、第6の態様又は第7の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記上側補強筋は、前記上側横筋と連続しかつ当該上側横筋から前記高さ方向下側に延出されると共に当該高さ方向下側の端部が前記床板から露出された第2上側縦筋を備え、前記下側補強筋は、前記下側横筋と連続しかつ当該下側横筋から前記高さ方向上側に延出されると共に当該高さ方向上側の端部が前記床板から露出された第2下側縦筋を備えると共に、前記第2上側縦筋と前記第2下側縦筋とを前記高さ方向に連結する高さ方向継手部をさらに有している。
第8の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、上側床板ブロックに設けられた上側補強筋が、上側横筋と連続する第2上側縦筋を備えており、当該第2上側縦筋は、当該上側横筋から高さ方向下側に延出されると共に高さ方向下側の端部が床板から露出している。
また、下側床板ブロックに設けられた下側補強筋が、下側横筋と連続する第2下側縦筋を備えており、当該第2下側縦筋は、当該下側横筋から高さ方向上側に延出されると共に高さ方向上側の端部が床板から露出している。そして、第2上側縦筋と第2下側縦筋とは、高さ方向継手部によって高さ方向に連結されている。このため、本態様では、脚材に作用する引き抜き荷重を床板の上部と下部とに分散させて支持することができる。
第9の態様に係る鉄塔基礎構造は、第1の態様~第8の態様の何れか1態様に係る鉄塔基礎構造において、前記床板の前記高さ方向上側に配置されると共に当該高さ方向から見て前記脚材を囲む柱体の一部を構成し、前記内側補強筋同士を前記螺旋筋の周方向に連結するプレキャストコンクリート製の柱体構成部をさらに有している。
第9の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、プレキャストコンクリート製の柱体構成部を床板の高さ方向上側に配置することで、高さ方向から見て鉄塔の脚材を囲む柱体の一部を構成することができる。また、柱体構成部によって内側補強筋同士が、螺旋筋の周方向に連結されており、柱体構成部によって内側補強筋の位置決めを行うことができる。このため、本態様では、生コンクリートを打設して柱体を構築するような構成に比し、施工時間の短縮を図ることができる。
第10の態様に係る鉄塔基礎構造は、第9の態様に係る鉄塔基礎構造において、前記床板の前記螺旋筋側の内周面は、前記高さ方向から見て前記脚材側に中心を有する円周に沿うように形成されており、前記柱体構成部の内周は、前記高さ方向から見て前記内周面を囲む円周状とされている。
第10の態様に係る鉄塔基礎構造によれば、床板の螺旋筋側の内周面は、高さ方向から見て脚材側に中心を有する円周に沿うように形成されている。つまり、床板には、高さ方向から見て円形の貫通部が形成された状態となっている。一方、柱体構成部の内周は、高さ方向から見て床板の内周面を囲む円周状とされている。このため、柱体構成部を床板に対して位置合わせするときに、柱体構成部が床板の貫通部内に落下することを抑制することができる。
第11の態様に係る鉄塔基礎構造の構築方法は、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材の一端部と一体に設けられたプレキャストコンクリート製の内側ピースを平らな設置面に載置し、床板の一部を構成するプレキャストコンクリート製の下側床板ブロックを前記鉄塔の高さ方向から見て前記内側ピースを囲むように複数互いに当接された状態で配置し、軸方向を前記高さ方向とされた螺旋筋を前記下側床板ブロックに設けられると共に当該下側床板ブロックの前記内側ピース側において前記高さ方向下側から前記高さ方向上側に延出された第1下側縦筋が当該螺旋筋の内周側に位置するようにかつ当該螺旋筋で当該内側ピースが囲まれるように配置し、前記床板の一部を構成するプレキャストコンクリート製の上側床板ブロックを前記高さ方向から見て前記内側ピースを囲むように複数互いに当接された状態でかつ当該上側床板ブロックに設けられた第1上側縦筋が前記螺旋筋の内周側に位置するように配置し、前記高さ方向に延在する複数の内側補強筋を前記第1上側縦筋と直交する第1平面と前記第1下側縦筋と直交する第2平面との間に掛け渡されるようにかつ前記螺旋筋の内周側において当該螺旋筋の周方向に沿って間隔をあけて配置し、前記内側ピースと前記床板との間に生コンクリートを打設する。
第11の態様に係る鉄塔基礎構造の構築方法によれば、鉄塔の鉄骨脚部の一部を構成する脚材の一端部と一体に設けられたプレキャストコンクリート製の内側ピースを平らな設置面に載置する。
次に、床板の一部を構成するプレキャストコンクリート製の下側床板ブロックを高さ方向から見て内側ピースを囲むように複数互いに当接された状態で配置する。また、下側床板ブロックには、当該下側床板ブロックの内側ピース側において高さ方向下側から高さ方向上側に延出された第1下側縦筋が設けられている。そして、軸方向を高さ方向とされた螺旋筋を、第1下側縦筋が当該螺旋筋の内周側に位置するようにかつ当該螺旋筋で当該内側ピースが囲まれるように配置する。
次に、床板の一部を構成するプレキャストコンクリート製の上側床板ブロックを、高さ方向から見て内側ピースを囲むように複数互いに当接された状態でかつ当該上側床板ブロックに設けられた第1上側縦筋が螺旋筋の内周側に位置するように配置する。
次に、高さ方向に延在する複数の内側補強筋を、第1上側縦筋と直交する第1平面と前記第1下側縦筋と直交する第2平面との間に掛け渡されるようにかつ螺旋筋の内周側において当該螺旋筋の周方向に沿って間隔をあけて配置する。
そして、内側ピースと床板との間に生コンクリートを打設し、内側ピースと床板との間に、螺旋筋、第1上側縦筋、第1下側縦筋及び内側補強筋が埋め込まれた介在部を形成する。
このため、本態様では、床板を構成する部材を分割して運搬することができ、その結果、鉄塔を山岳地等に建設する場合であっても、床板の重量を確保することができる。また、本態様では、第1上側縦筋と第1下側縦筋とが、内側補強筋及び介在部を介して高さ方向に連結された状態となり、上側床板ブロック及び下側床板ブロックには、第1上側縦筋、第1下側縦筋及び内側補強筋を介して脚材側からの荷重が同様に伝達される。その結果、本態様では、脚材側からの荷重を床板全体で支持することができる。
以上説明したように、本発明に係る鉄塔基礎構造及びその構築方法は、鉄塔の基礎部の重量を確保しつつ、鉄塔の基礎の構築に必要な施工時間を短縮し、さらに鉄塔の基礎を構成する材料の運搬を容易なものとすることができるという優れた効果を有する。
以下、図1~図9を用いて、本発明に係る鉄塔基礎構造及びその構築方法の第1実施形態について説明する。
図9に示されるように、本実施形態に係る鉄塔基礎構造が適用された「鉄塔10」は、山岳地に建設されていると共に、複数の主柱材12、複数の水平材14、複数の斜材16及び主柱材12と斜材16とに架け渡された複数の主柱材用補助材18を含んで構成されており、4本の「鉄骨脚部20」を備えている。そして、それぞれの鉄骨脚部20に対して基礎部22が設けられている。なお、以下では、特にことわりのない限り、鉄塔10の高さ方向を単に高さ方向と称することとする。
図1及び図8に示されるように、基礎部22は、鉄骨脚部20の一部を構成する「脚材24」を地盤26に対して支持すると共に、「内側ピース28」、「螺旋筋30」、「床板32」、柱体構成ピース34及び「介在部36」を含んで構成されている。
図2にも示されるように、内側ピース28は、脚材24の高さ方向下側の「端部24A」と一体的に設けられている。この内側ピース28は、プレキャストコンクリート製とされており、高さ方向に延在する角柱状に構成されている。なお、内側ピース28の外周側には、後述するように、螺旋筋30が配置されている。
より詳しくは、内側ピース28は、高さ方向から見て正方形の四隅が二等辺三角形状に切り取られた八角形状とされていると共に、その外周面、すなわち螺旋筋30側の「面28A」には、複数の内側凹部としての「凹部38」が設けられている。この凹部38は、高さ方向から見て面28Aの周方向に沿う環状に形成されており、高さ方向に複数配置されている。
一方、脚材24は、図3にも示されるように、山形鋼で構成された本体部40と、平型鋼で構成された基部42とが、溶接等による図示しない接合部で接合されることでその主な部分が構成されている。より詳しくは、本体部40は、高さ方向下側の部分が内側ピース28に埋設されており、高さ方向上側の部分が内側ピース28から露出されて鉄塔10の上方側に延びている。また、本体部40には、その延在方向に沿って山形鋼で構成された複数の支圧板44が、図示しない取付部材で取り付けられている。
基部42は、高さ方向から見て八角形の板状とされており、その下面42Aが内側ピース28から露出されると共に、高さ方向に貫通された貫通部42Bが設けられている。また、基部42の高さ方向下側には、板厚方向を高さ方向とされた板状の支持板部46が配置されており、支持板部46の高さ方向上側の面は、平らな「設置面46A」とされている。
また、設置面46Aには、貫通部42Bに嵌合可能な突起部46Bが形成されており、基部42は、下面42Aが設置面46Aに当接されると共に突起部46Bが貫通部42Bに嵌合された状態で、支持板部46に対して位置決めされている。なお、支持板部46の設置面46Aには、内側ピース28の下面も当接された状態となっている。
一方、螺旋筋30は、図1及び図6に示されるように、異形棒鋼で構成されており、高さ方向から見て円環状とされると共に、軸方向を高さ方向とされた螺旋状とされている。この螺旋筋30は、内側ピース28の外周側に配置されている。なお、螺旋筋30は、丸鋼で構成されていてもよい。
床板32は、図1に示されるように、全体では、高さ方向から見て中央部に円形の貫通部48が形成された円盤状とされており、貫通部48の内側には、内側ピース28及び螺旋筋30が配置されている。つまり、床板32の「内周面32A」は、高さ方向から見て脚材24側に中心を有する円周に沿うように形成されている。
この床板32は、その高さ方向上側の部分を構成する複数(一例として4つ)の「上側床板ブロック50」と、その高さ方向下側の部分を構成する複数(一例として4つ)の「下側床板ブロック52」とを含んで構成されている。なお、上側床板ブロック50及び下側床板ブロック52は、何れもプレキャストコンクリート製とされている。
詳しくは、上側床板ブロック50は、螺旋筋30における高さ方向上側の部分の外周側に螺旋筋30の周方向に沿うように連なって配置されており、隣接する上側床板ブロック50は、互いに当接された状態となっている。
図4にも示されるように、上側床板ブロック50は、高さ方向から見て上側床板ブロック50同士の境界に位置する一対の側面50Aの成す角度が90度となる略扇形状に形成されている。また、上側床板ブロック50の螺旋筋30側の側面50Bは、内周面32Aの一部を構成すると共に、側面50Bの高さ方向下側の部分には、螺旋筋30の径方向外側に凹むと共に螺旋筋30の周方向に延在する内側凹部としての「凹部54」が設けられている。
一方、上側床板ブロック50の螺旋筋30と反対側の側面50Cは、床板32の「外周面32B」の一部を構成すると共に、側面50Cの高さ方向下側の部分には、螺旋筋30の径方向内側に凹むと共に螺旋筋30の周方向に延在する外側凹部としての「凹部56」が設けられている。
さらに、上側床板ブロック50の「下面50D」すなわち下側床板ブロック52側の面には、高さ方向上側に凹むと共に螺旋筋30の周方向に延在する被係合部としての「凹部58」が形成されている。
図8に戻り、上側床板ブロック50には、複数の「上側補強筋60」並びに複数の「上端筋62」が設けられている。詳しくは、これらの上側補強筋60は、高さ方向から見て床板32の中心側から延びる放射線状となるように配置されている。また、図1及び図4にも示されるように、上側補強筋60は、異形棒鋼で構成されると共に、「第1上側縦筋60A」、「上側横筋60B」及び「第2上側縦筋60C」を含んで構成されている。なお、上側補強筋60は、丸鋼で構成されていてもよい。
第1上側縦筋60Aは、螺旋筋30の内周側に配置されると共に、高さ方向上側から高さ方向下側に延出されており、上側補強筋60には、螺旋筋30の高さ方向上側の部分が係止された状態となっている。そして、第1上側縦筋60Aの高さ方向上側の部分からは、第1上側縦筋60Aと連続して上側横筋60Bが螺旋筋30の径方向外側に延出されている。
上側横筋60Bは、上側補強筋60の主な部分を構成すると共に、高さ方向から見て螺旋筋30の径方向に延在している。そして、上側横筋60Bにおける螺旋筋30の径方向外側の部分からは、上側横筋60Bと連続して第2上側縦筋60Cが高さ方向下側に延出されている。
上記のように構成された上側補強筋60は、少なくとも一部が上側床板ブロック50に埋め込まれているものの、第1上側縦筋60A及び第2上側縦筋60Cの高さ方向下側の「端部60C1」は、上側床板ブロック50に対して露出した状態となっている。また、第2上側縦筋60Cの高さ方向下側の部分は、高さ方向から見て上側床板ブロック50の凹部56と重なる位置に位置している。
一方、上端筋62は、異形棒鋼で構成されると共に、高さ方向から見て、上側横筋60Bと直交するように床板32の中心を中心とされた円弧状に延在しており、螺旋筋30の径方向に互いに対して間隔をあけて配置されている。そして、上端筋62は、図示しない結束線等によって上側横筋60Bに繋がれている。つまり、上端筋62は、螺旋筋30の周方向に隣接する上側横筋60B同士を当該周方向に繋いでいる。なお、上端筋62は、丸鋼で構成されていてもよい。
また、上側床板ブロック50の上面50Eは、側面50A側の部分が高さ方向下側に凹んでおり、上端筋62の端部62Aは、上側床板ブロック50に対して露出した状態となっている。そして、上側床板ブロック50同士の境界部において、一方の上側床板ブロック50に設けられた上端筋62と、他方の上側床板ブロック50に設けられた上端筋62とが、周方向継手部としての「溶接継手部64」によって螺旋筋30の周方向に連結されている。
一方、下側床板ブロック52は、螺旋筋30における高さ方向下側の部分の外周側に螺旋筋30の周方向に沿うように連なって配置されており、隣接する下側床板ブロック52は、互いに当接された状態となっている。
図5にも示されるように、下側床板ブロック52は、高さ方向から見て下側床板ブロック52同士の境界に位置する一対の側面52Aの成す角度が90度となる略扇形状に形成されている。また、上側床板ブロック50の螺旋筋30側の側面52Bは、内周面32Aの一部を構成すると共に、側面52Bの高さ方向下側の部分には、螺旋筋30の径方向外側に凹むと共に螺旋筋30の周方向に延在する内側凹部としての「凹部66」が設けられている。
一方、下側床板ブロック52の螺旋筋30と反対側の側面52Cは、床板32の外周面32Bの一部を構成すると共に、側面52Cの高さ方向下側の部分には、螺旋筋30の径方向内側に凹むと共に螺旋筋30の周方向に延在する外側凹部としての「凹部68」が設けられている。
さらに、下側床板ブロック52の「上面52D」すなわち上側床板ブロック50側の面には、高さ方向上側に突出すると共に螺旋筋30の周方向に延在する「突起部52E」が形成されており、この突起部52Eは、上側床板ブロック50の凹部58に係合可能とされている。そして、突起部52Eが凹部58に係合されることで、上側床板ブロック50と下側床板ブロック52との高さ方向と直交する方向の相対変位が制限可能とされている。
図8に戻り、下側床板ブロック52には、複数の「下側補強筋70」並びに複数の「下端筋72」が設けられている。詳しくは、これらの下側補強筋70は、高さ方向から見て床板32の中心側から延びる放射線状となるように配置されている。また、図1及び図5にも示されるように、下側補強筋70は、異形棒鋼で構成されると共に、「第1下側縦筋70A」、「下側横筋70B」及び「第2下側縦筋70C」を含んで構成されている。なお、下側補強筋70は、丸鋼で構成されていてもよい。
第1下側縦筋70Aは、螺旋筋30の内周側に配置されると共に、高さ方向下側から高さ方向上側に延出されており、下側補強筋70には、螺旋筋30の高さ方向下側の部分が係止された状態となっている。そして、第1下側縦筋70Aの高さ方向下側の部分からは、第1下側縦筋70Aと連続して下側横筋70Bが螺旋筋30の径方向外側に延出されている。
下側横筋70Bは、下側補強筋70の主な部分を構成すると共に、高さ方向から見て螺旋筋30の径方向に延在している。そして、下側横筋70Bにおける螺旋筋30の径方向外側の部分からは、下側横筋70Bと連続して第2下側縦筋70Cが高さ方向上側に延出されている。
上記のように構成された下側補強筋70は、少なくとも一部が下側床板ブロック52に埋め込まれているものの、第1下側縦筋70A及び第2下側縦筋70Cの高さ方向上側の「端部70C1」は、下側床板ブロック52に対して露出した状態となっている。また、第2下側縦筋70Cの高さ方向上側の部分は、高さ方向から見て下側床板ブロック52の凹部68と重なる位置に位置している。
一方、下端筋72は、異形棒鋼で構成されると共に、高さ方向から見て、下側横筋70Bと直交するように床板32の中心を中心とされた円弧状に延在しており、螺旋筋30の径方向に互いに対して間隔をあけて配置されている。そして、下端筋72は、図示しない結束線等によって下側横筋70Bに繋がれている。つまり、下端筋72は、螺旋筋30の周方向に隣接する下側横筋70B同士を当該周方向に繋いでいる。なお、下端筋72は、丸鋼で構成されていてもよい。
また、下側補強筋70は、高さ方向から見て上側補強筋60と重なるように配置されており、第2下側縦筋70Cの端部70C1は、第2上側縦筋60Cの端部60C1と高さ方向継手部としての「カプラー74」で高さ方向に連結されている。なお、上側補強筋60及び下側補強筋70の構成を理解し易くするため、図8には、カプラー74を図示していない。
一方、柱体構成ピース34は、図1及び図7に示されるように、柱体構成部としての「柱体ブロック76」と、複数の柱体定着筋78とを含んで構成されている。柱体ブロック76は、プレキャストコンクリート製とされると共に、床板32の高さ方向上側に配置されており、基礎部22の「柱体80」の一部を構成している。なお、柱体80は、脚材24の延在方向に延在すると共に、高さ方向から見て脚材24を囲むように構成されている。
この柱体ブロック76は、高さ方向から見て、その内周が床板32の内周面32Aを囲む円周状とされたリング状に形成されている。そして、柱体ブロック76の下面76Aは、上側床板ブロック50の上面50Eに当接された水平面とされており、柱体ブロック76の上面76Bは、柱体80の延在方向に対して直交している。
一方、柱体定着筋78は、異形棒鋼で構成されると共に、その一部が柱体ブロック76に埋め込まれると共に、螺旋筋30の周方向に互いに対して間隔をあけて配置されている。この柱体定着筋78は、柱体ブロック76の高さ方向上側に延出された柱体補強筋78Aと、柱体ブロック76の高さ方向下側に延出された「内側補強筋78B」とを含んで構成されている。なお、柱体定着筋78は、丸鋼で構成されていてもよい。
柱体補強筋78Aは、柱体80の延在方向に延在しており、内側補強筋78Bは、高さ方向に延在している。そして、柱体補強筋78Aは、柱体80の一部を構成すると共に柱体ブロック76の高さ方向上側に取り付けられた図示しない柱体構成部品の固定に用いられている。
一方、内側補強筋78Bは、螺旋筋30の内周側において、第1上側縦筋60A及び第1下側縦筋70Aよりも螺旋筋30に近い位置に配置されている。また、内側補強筋78Bは、第1上側縦筋60Aと直交する範囲において高さ方向の位置を任意の位置とされた「第1平面82」と、第1下側縦筋70Aと直交する範囲において高さ方向の位置を任意の位置とされた「第2平面84」との間に掛け渡されるように配置されている。
図8に戻り、介在部36は、内側ピース28と床板32との間にコンクリートが充填されることで構成されており、内側ピース28及び床板32と密着状態とされている。また、上記のように構成された介在部36には、図1に示されるように、螺旋筋30、第1上側縦筋60A、第1下側縦筋70A及び内側補強筋78Bが埋め込まれた状態となっている。なお、図1には、床板32等の構成を理解し易くするため、介在部36を図示していない。
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
本実施形態では、図1に示されるように、内側ピース28が、鉄塔10の鉄骨脚部20の一部を構成する脚材24における高さ方向下側の端部24Aと一体的に設けられている。この内側ピース28は、プレキャストコンクリート製とされていると共に、内側ピース28が支持板部46の平らな設置面46A上に配置されているため、内側ピース28を設置面46A上に配置することで脚材24の位置決めを行うことができる。
また、内側ピース28の外周側には、高さ方向から見て円環状とされた螺旋筋30が、軸方向を高さ方向とされた状態で配置されている。そして、螺旋筋30の外周側には、床板32が配置されると共に、内側ピース28と床板32との間には、コンクリート製の介在部36が介在しており、介在部36は、内側ピース28及び床板32に密着された状態となっている。このため、本実施形態では、鉄塔10に懸架された電線等に起因する引き抜き荷重が脚材24に作用しても、床板32の重量によって当該引き抜き荷重を支持することができる。また、脚材24に作用するせん断荷重を螺旋筋30によって支持することができる。
ところで、脚材24に作用する引き抜き荷重を支持するのにあたって、脚材24と連結された床板32の重量は、大きい方が好ましい。また、施工時間の短縮の観点からは、床板32にプレキャストコンクリートを用いることが好ましい。一方で、鉄塔10を山岳地等に建設する場合、運搬可能な材料の重量に制限があるため、床板32に用いることができるプレキャストコンクリートの重量もまた制限されることとなる。
ここで、本実施形態では、プレキャストコンクリート製の複数の上側床板ブロック50及び下側床板ブロック52を含んで構成されている。詳しくは、複数の上側床板ブロック50は、螺旋筋30における高さ方向上側の部分の外周側に螺旋筋30の周方向に沿って上側床板ブロック50同士が互いに当接された状態で配置されている。一方、複数の下側床板ブロック52は、螺旋筋30における高さ方向下側の部分の外周側に螺旋筋30の周方向に沿って下側床板ブロック52同士が互いに当接された状態で配置されている。
このため、本実施形態では、床板32を構成する部材を分割して運搬することができ、その結果、鉄塔10を山岳地等に建設する場合であっても、床板32の重量を確保することができる。
ところで、上側床板ブロック50及び下側床板ブロック52に脚材24側からの荷重を伝達するものが介在部36のみである場合、上側床板ブロック50と下側床板ブロック52との間においてこれらに作用する当該荷重の大きさに偏りが生じることが考えられる。
ここで、本実施形態では、上側床板ブロック50には、上側床板ブロック50に一部が埋め込まれた上側補強筋60が複数設けられており、上側補強筋60は、螺旋筋30の内周側に配置されると共に高さ方向上側から高さ方向下側に延出された第1上側縦筋60Aを備えている。一方、下側床板ブロック52には、下側床板ブロック52に一部が埋め込まれた下側補強筋70が設けられており、下側補強筋70は、螺旋筋30の内周側に配置されると共に高さ方向下側から高さ方向上側に延出された第1下側縦筋70Aを備えている。
また、螺旋筋30の内周側には、柱体定着筋78の内側補強筋78Bが螺旋筋の周方向に沿って複数配置されており、内側補強筋78Bは、第1上側縦筋60Aと直交する第1平面82と第1下側縦筋70Aと直交する第2平面84との間に掛け渡されている。そして、第1上側縦筋60A、第1下側縦筋70A及び内側補強筋78Bは、介在部36に埋め込まれた状態となっている。
このため、第1上側縦筋60Aと第1下側縦筋70Aとが、内側補強筋78B及び介在部36を介して高さ方向に連結された状態となり、上側床板ブロック50及び下側床板ブロック52には、第1上側縦筋60A、第1下側縦筋70A及び内側補強筋78Bを介して脚材24側からの荷重が同様に伝達される。その結果、本実施形態では、脚材24側からの荷重を床板32全体で支持することができる。
また、本実施形態では、内側ピース28の螺旋筋30側の面28Aには凹部38が設けられており、床板32の螺旋筋30側の内周面32Aには、凹部54及び凹部66が設けられており、凹部38、凹部54及び凹部66には、介在部36の一部を構成するコンクリートが充填された状態となっている。つまり、介在部36には、内側ピース28側に突出した突起部と床板32側に突出した突起部とが設けられた状態となっている。
このため、内側ピース28と床板32とが相対移動しようとするときに介在部36に作用するせん断力が、介在部36に設けられたこれらの突起部によって支持され、その結果、介在部36を介して床板32の自重による荷重を内側ピース28側により伝達し易くすることができる。
また、本実施形態では、下側床板ブロック52の上面52Dに突起部52Eが形成されると共に、上側床板ブロック50の下面50Dには、突起部52Eが係合可能な凹部58が形成されている。そして、突起部52Eが凹部58に係合されることで、上側床板ブロック50と下側床板ブロック52との高さ方向と直交する方向の相対変位が制限される。
ところで、床板32には、鉄塔10の自重及び当該自重に対する地盤26からの反力に起因するモーメントや鉄塔10が受ける外力に起因するモーメントが発生することが考えらえる。そして、上側床板ブロック50と下側床板ブロック52との高さ方向と直交する方向の相対変位が制限されていない状態で床板32に上記モーメントが生じた場合、上側床板ブロック50と下側床板ブロック52との間で滑りが生じ、床板32全体で当該モーメントを支持することが困難となることが考えられる。
ここで、本実施形態では、上述したように、突起部52E及び凹部58によって上側床板ブロック50と下側床板ブロック52との高さ方向と直交する方向の相対変位が制限されているため、床板32に上記モーメントが生じても当該モーメントを床板32全体で支持することができる。
また、本実施形態では、床板32の螺旋筋30と反対側の外周面32Bに、螺旋筋30側に凹んだ凹部56及び凹部68が設けられている。このため、床板32を土中に埋めるときに床板32周辺のモルタルや土が凹部56及び凹部68に充填されることとなる。その結果、本実施形態では、凹部56及び凹部68に充填されたモルタルや土を、脚材24に作用する引き抜き荷重に対する抵抗として機能させることができる。
また、本実施形態では、上側床板ブロック50に設けられた上側補強筋60が、第1上側縦筋60Aと連続する上側横筋60Bを備えており、上側横筋60Bは、第1上側縦筋60Aから螺旋筋30の径方向外側に延出されている。そして、螺旋筋30の周方向に隣接する上側横筋60Bが、上端筋62によって当該周方向に繋がれている。このため、本実施形態では、脚材24に作用する引き抜き荷重に対する地盤26による支持力を上側床板ブロック50全体に伝達させることができる。
また、下側床板ブロック52に設けられた下側補強筋70が、第1下側縦筋70Aと連続する下側横筋70Bを備えており、下側横筋70Bは、第1下側縦筋70Aから螺旋筋30の径方向外側に延出されている。そして、螺旋筋30の周方向に隣接する下側横筋70Bが、下端筋72によって当該周方向に繋がれている。このため、本実施形態では、脚材24に作用する引き抜き荷重に対する地盤26による支持力を下側床板ブロック52全体に伝達させることができる。
また、本実施形態では、図8に示されるように、上側床板ブロック50同士の境界部において、一方の上側床板ブロック50に設けられた上端筋62と、他方の上側床板ブロック50に設けられた上端筋62とが、溶接継手部64によって螺旋筋30の周方向に連結される。このため、本実施形態では、脚材24に作用する引き抜き荷重を床板32の上部に分散させて支持することができる。
また、本実施形態では、上側床板ブロック50に設けられた上側補強筋60が、上側横筋60Bと連続する第2上側縦筋60Cを備えており、第2上側縦筋60Cは、上側横筋60Bから高さ方向下側に延出されると共に高さ方向下側の端部60C1が床板32から露出している。
一方、下側床板ブロック52に設けられた下側補強筋70は、下側横筋70Bと連続する第2下側縦筋70Cを備えており、第2下側縦筋70Cは、下側横筋70Bから高さ方向上側に延出されると共に高さ方向上側の端部70C1が床板32から露出している。そして、第2上側縦筋60Cと第2下側縦筋70Cとは、カプラー74によって高さ方向に連結されている。このため、本実施形態では、脚材24に作用する引き抜き荷重を床板32の上部と下部とに分散させて支持することができる。
また、本実施形態では、プレキャストコンクリート製の柱体ブロック76を床板32の高さ方向上側に配置することで、高さ方向から見て脚材24を囲む柱体80の一部を構成することができる。また、柱体ブロック76によって柱体定着筋78の内側補強筋78B同士が、螺旋筋30の周方向に連結されており、柱体ブロック76によって内側補強筋78Bの位置決めを行うことができる。このため、本実施形態では、生コンクリートを打設して柱体80を構築するような構成に比し、施工時間の短縮を図ることができる。
加えて、本実施形態では、図1に示されるように、床板32の螺旋筋30側の内周面32Aは、高さ方向から見て脚材24側に中心を有する円周に沿うように形成されている。つまり、床板32には、高さ方向から見て円形の貫通部48が形成された状態となっている。一方、柱体ブロック76の内周は、高さ方向から見て床板32の内周面32Aを囲む円周状とされている。このため、柱体ブロック76を床板32に対して位置合わせするときに、柱体ブロック76が床板32の貫通部48内に落下することを抑制することができる。
次に、図1を用いて、本実施形態に係る鉄塔基礎構造の構築方法の手順の一例を示す。
最初に、第1工程において、土留めを行いながら地盤26を掘り進めることで床板32が納まる穴86を形成し、穴86が所定深さとなったところで、穴86の底部86Aにおける所定の位置に支持板部46を配置し、内側ピース28を支持板部46の設置面46A上に載置する。
次に、第2工程において、下側床板ブロック52を高さ方向から見て内側ピース28を囲むように複数互いに当接された状態で配置し、軸方向を高さ方向とされた状態の螺旋筋30を、第1下側縦筋70Aが螺旋筋30の内周側に位置するようにかつ螺旋筋30で内側ピース28が囲まれるように配置する。
次に、第3工程において、上側床板ブロック50を、高さ方向から見て内側ピース28を囲むように複数互いに当接された状態でかつ第1上側縦筋60Aが螺旋筋30の内周側に位置するように配置する。
次に、第4工程において、床板32に対して柱体構成ピース34を位置決めし、複数の内側補強筋78Bを、第1平面82と第2平面84との間に掛け渡されるようにかつ螺旋筋30の内周側において螺旋筋30の周方向に沿って間隔をあけて配置する。
次に、第5工程において、内側ピース28と床板32との間に生コンクリートを打設し、内側ピース28と床板32との間に、螺旋筋30、第1上側縦筋60A、第1下側縦筋70A及び内側補強筋78Bが埋め込まれた介在部36を形成する。
そして、第6工程において、床板32の周辺部に掘削土を埋め戻すことで鉄塔10の基礎部22が完成する。
以上、説明したように、本実施形態に係る鉄塔基礎構造及びその構築方法によれば、鉄塔10の基礎部22の重量を確保しつつ、基礎部22の構築に必要な施工時間を短縮し、さらに基礎部22を構成する材料の運搬を容易なものとすることができる。
<第2実施形態>
以下、図10~図12を用いて、本発明の第2実施形態に係る鉄塔基礎構造について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る基礎部90は、基本的に第1実施形態に係る基礎部22と同様の構成とされているものの、「床板92」が高さ方向から見て正方形状とされている。
床板92は、その高さ方向上側の部分を構成する複数(一例として4つ)の「上側床板ブロック94」と、その高さ方向下側の部分を構成する複数(一例として4つ)の「下側床板ブロック96」とを含んで構成されている。なお、上側床板ブロック94及び下側床板ブロック96は、何れもプレキャストコンクリート製とされている。
上側床板ブロック94は、高さ方向から見て上側床板ブロック94同士の境界に位置する一対の側面の成す角度が90度となる略正方形状に形成されており、脚材24側の角部は、扇形状に切り欠かれた状態となっている。
また、上側床板ブロック94の「下面94A」には、高さ方向上側に凹んだ被係合部としての「凹部98」が形成されている。そして、この凹部98は、高さ方向から見て、その脚材24側の周縁部が螺旋筋30に沿うように延在する円弧状とされると共に、その脚材24と反対側の周縁部が脚材24と反対側に凸となる直角状とされている。
さらに、上側床板ブロック94には、上側補強筋60と同様の構成とされた複数の「上側補強筋100」並びに上端筋62と同様の構成とされた複数の「上端筋102」が設けられている。
詳しくは、本実施形態では、これらの上側補強筋100の長さが一定とされておらず、高さ方向から見て、床板92の中心と上側床板ブロック94の脚材24と反対側の角部94Bとを結ぶ直線との成す角度(鋭角)が小さくなるに従って、上側補強筋100の長さが長くなっている。
また、上端筋102のうち、上側床板ブロック94の最も外周側に配置された上端筋102は、角部94B側に凸となる直角状に曲げられている。
一方、下側床板ブロック96は、高さ方向から見て上側床板ブロック94と同様の形状とされており、その「上面96A」には、高さ方向上側に凸とされた「突起部96B」が形成されている。この突起部96Bは、上側床板ブロック94の凹部98に係合可能とされている。そして、突起部96Bが凹部98に係合されることで、上側床板ブロック94と下側床板ブロック96との高さ方向と直交する方向の相対変位並びに高さ方向周りの相対回転が制限可能とされている。
また、下側床板ブロック96には、下側補強筋70と同様の構成とされた複数の「下側補強筋104」並びに下端筋72と同様の構成とされた複数の「下端筋106」が設けられている。
詳しくは、本実施形態では、これらの下側補強筋104の長さが一定とされておらず、高さ方向から見て、床板92の中心と下側床板ブロック96の脚材24と反対側の角部96Cとを結ぶ直線との成す角度(鋭角)が小さくなるに従って、下側補強筋104の長さが長くなっている。
また、下端筋106のうち、下側床板ブロック96の最も外周側に配置された下端筋106は、角部96C側に凸となる直角状に曲げられている。なお、図10では、床板92の構成を理解し易くするため、溶接継手部64及びカプラー74を図示していない。
このような構成によれば、床板32の形状による作用並びに効果を除き、基本的に上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。また、地盤26に掘ることが可能な穴の形状が矩形状に限られるような場合に、当該穴の形状に床板92の形状を対応させることができる。
また、本実施形態では、突起部96Bが凹部98に係合されることで、上側床板ブロック94と下側床板ブロック96との高さ方向周りの相対回転が制限され、床板92に生じる捩じれを支持することができる。
<第3実施形態>
以下、図13を用いて、本発明の第3実施形態に係る鉄塔基礎構造について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る基礎部110は、基本的に第1実施形態に係る基礎部22と同様の構成とされているものの、「床板112」が、上側床板ブロック50と下側床板ブロック52との間に複数配置されたプレキャストコンクリート製の「中間床板ブロック114」を備えている。
中間床板ブロック114は、螺旋筋30における高さ方向中央部の外周側に螺旋筋30の周方向に沿うように連なって配置されており、隣接する中間床板ブロック114は、互いに当接された状態となっている。
また、中間床板ブロック114の上面114Aには、突起部52Eと同様の構成とされた第1突起部としての「突起部114B」が設けられており、中間床板ブロック114の下面114Cには凹部58と同様の構成とされた第2被係合部としての「凹部116」が設けられている。
このような構成によれば、中間床板ブロック114の突起部114Bが上側床板ブロック50の凹部58に係合されると共に、中間床板ブロック114の凹部116に下側床板ブロック52の突起部52Eが係合されることで、上側床板ブロック50及び下側床板ブロック52に対する中間床板ブロック114の高さ方向と直交する方向の相対変位が制限される。つまり、本実施形態において、凹部58は、第1係合部として機能しており、突起部52Eは、第2突起部として機能している。
したがって、本実施形態においても、基本的に上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。また、本実施形態では、上側床板ブロック50と下側床板ブロック52との間に中間床板ブロック114を追加することで床板112の重量の増加を図ることができる。
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、上側床板ブロックに上端筋が設けられているが、床板の仕様等に応じて、上側床板ブロックに上端筋を設けない構成としてもよい。また、同様に、下側床板ブロックに下端筋を設けない構成としてもよい。
(2) また、上述した実施形態では、柱体ブロック76で柱体定着筋78の位置決めが行われていたが、床板の仕様等に応じて、治具を用いて柱体定着筋78の位置決めを行うようにしてもよい。
(3) また、上述した実施形態では、第2上側縦筋と第2下側縦筋との連結にカプラー74が用いられていたが、第2上側縦筋と第2下側縦筋との連結は、溶接継手で行われていてもよい。
(4) 加えて、上述した実施形態では、上側床板ブロックに被係合部が形成されると共に、下側床板ブロックに当該被係合部に係合される突起部が形成されていたが、これに限らない。すなわち、基礎部の仕様等に応じて、上側床板ブロックに突起部が形成されると共に、下側床板ブロックに当該突起部を係合可能な被係合部が形成されるような構成とされていてもよい。また、中間床板ブロックに、上側床板ブロックの突起部が係合可能な被係合部と、下側床板ブロックの被係合部に係合可能な突起部とが形成されるような構成とされていてもよい。