実施の形態1.
この発明の実施の形態1の構成について図を用いて説明する。図1は、実施の形態1の冷凍サイクル装置の冷媒回路図である。図において、11は室外機、12は室内機であり、室外機11は、圧縮機21、室外熱交換器22、室外熱交換器用送風機23を備え、室内機12は、膨張弁などの膨張手段24、室内熱交換器25、室内熱交換器用送風機26を備えている。なお、図1の冷媒回路においては、室外熱交換器22は凝縮器として、室内熱交換器25は蒸発器として動作しており、ユニットクーラやショーケースなどの低温機器あるいはエアコンなどの空調機器に見られる形態である。図1では室内機12を複数設けた例を示している。また図1では室内熱交換器25と室外熱交換器22のように室内と室外に分離する構成にて説明しているが、冷蔵庫本体の中にこの両方の熱交換器を収納する構成でも本発明の構成効果は同様に成り立つものである。
この冷媒回路においては、圧縮機21により圧縮され高温高圧になった冷媒は、室外熱交換器22にて室外熱交換器用送風機23の作用により凝縮され放熱した後、室外機11から出て室内機12に流入する。室内機12に入った冷媒は、膨張手段24にて膨張されて低温低圧冷媒になり、室内熱交換器25にて室内熱交換器用送風機26の作用によって蒸発し、室内空気から吸熱した後、室内機12を出て再び室外機11の圧縮機21へ戻る。したがってこの冷凍サイクル装置が空調機に使用される場合の室内機は室内の空気を冷却する冷房運転を行うことになる。
例えば、室内機12がユニットクーラであり、冷蔵用である場合、ユニットクーラ周囲の空気温度は約0℃、冷媒の蒸発温度は約−10℃である。また、ユニットクーラ12が冷凍用である場合、ユニットクーラ周囲の空気温度は約−20℃であり、冷媒の蒸発温度は約−30℃である。ユニットクーラが冷蔵用および冷凍用のいずれの場合であっても、蒸発器すなわち室内熱交換器25の配管およびフィンの表面温度は0℃以下であり、周囲空気温度よりも温度が低くかつ氷点下であるため、空気中の水蒸気が室内熱交換器25の周囲に霜となって堆積、すなわち着霜する。冷蔵用であり室内熱交換器25の周囲空気が0℃以上の場合は、空気中の水蒸気が凝縮し、室内熱交換器25の表面に水滴として付着した後、凝固して霜となる。一方、冷凍用の場合は、室内熱交換器25の周囲空気が0℃以下のため、空気中の水蒸気が昇華し室内熱交換器25の表面に直接霜として堆積する。
このように冷蔵用と冷凍用とでは着霜に至る過程は異なるが、いずれの場合においても、室内熱交換器25への着霜は、冷媒と空気との熱交換の妨げとなる。着霜量が増加すると、室内熱交換器25の熱抵抗が増加し、熱交換性能が低下し、機器の効率が悪化する。更に、着霜量が増加すると、室内熱交換器用送風機26の作用により室内熱交換器25の周囲を流れる空気の流通抵抗が増え、風量が低下し、ユニットクーラ12が規定の冷却能力を維持することができなくなり、周囲空気温度が上昇してしまう。ユニットクーラ12の周囲空気温度が上昇すると、食品の品質保持面での問題があるため、ユニットクーラ12には除霜手段が設けられており、定期的に除霜により蒸発器周囲の霜を溶かして取り除く。除霜手段には、ユニットクーラの場合は一般的に蒸発器近傍に設置されたヒーターを通電加熱して行うが、その他にも、霜が溶けるまで冷媒の流れを停止するオフサイクルデフロストや、圧縮機21の出口側の高温高圧の冷媒を室内熱交換器25に導入するホットガスデフロストや、冷媒の流路を逆に切り換え蒸発器に高温高圧の冷媒を流す四方弁などの流路切り換え手段が付いている空調機の場合は冷媒の流れを逆にするリバースデフロストが用いられる。
この発明は、ルームエアコンやパッケージエアコンやビル用マルチエアコンなどの空調機器、ユニットクーラやショーケースなどの低温機器、ヒートポンプ給湯機などの給湯機器に関し、蒸発器に付着する霜の形または霜層の厚さを制御し、着霜時の性能を向上させ、省エネにする技術に関連するものである。この発明は、蒸発器に用いるフィンに多数の細孔を設けると、蒸発器に0℃以下の冷媒が供給され、蒸発器表面に着霜が起きる際、空気中の水分は細孔の位置(細孔の稜線または細孔の内部)に凝縮し水滴として付着するため、水滴同士の距離が一定値に確保されており、水滴の合体が起き難く、小さな水滴のまま凝固し、そのため、ほぼ平らなきれいな霜層が形成され、風路圧損が小さくなり、着霜時の性能が向上し、省エネとなる冷凍サイクル装置を得るものである。蒸発器として動作する室内熱交換器25の表面に堆積する霜は氷と空気の多孔質層である。以下に、図2および図3を用いて、空気温度が0℃以上の場合を例に、蒸発器周囲に霜ができる過程を説明する。
空気は、冷却面(蒸発器表面)で冷やされ、露点(飽和温度)以下にまで冷却されると、冷却面近傍でミストができ、それが冷却面上に水滴(凝縮液滴)として析出し、冷却面に付着する。冷却面に水滴が生成されると、それが核となり、水滴が成長し大きさが大きくなる。その際、図2のように、冷却面に特別な表面処理を施していない場合、水滴は、冷却面上の至る所に、任意に発生する((a))。そのため、水滴の間の距離が短い箇所と長い箇所が存在する。水滴が成長し、隣同士の水滴が接触する程の大きさになると、水滴同士が合体し大きな水滴となる((b)、(c))。しかし、冷却面上の水滴は、水滴の間の距離が短い箇所と長い箇所が存在するため、距離が短い箇所の水滴が合体し、大きな水滴が生成し易い。水滴は更に冷却面で冷却されて凝固し、氷滴となり、その氷滴から針状に霜が生成し、霜層が形成されていく((d))。この際、着霜量が同じである場合、氷滴(または凝固直前の水滴)の大きさが大きいと、凹凸の大きい霜層となるため、霜層厚さの最大値が厚くなる。熱交換器の通風抵抗は、最大霜層厚さで決まるため、無処理のフィンで構成された熱交換器は通風抵抗が大きくなり、蒸発器として動作している室内熱交換器25に送風している室内熱交換器用送風機26の風量が低下し、冷却性能が悪化し易い。
一方、図3のように、冷却面の表面に細孔(小さい孔)があると、そこを核として水滴ができ易い(詳細説明は後述)。細孔が冷却面上にほぼ均等に分布して配置されていると、水滴がほぼ均等な距離に生成されるため((a))、水滴の合体が置き難く、小さい水滴が生成される((b)、(c))。水滴は更に冷却面で冷却されて凝固し、氷滴となり、その氷滴から針状に霜が生成し、霜層が形成されていく((d))。この際、着霜量が同じである場合、氷滴(または凝固直前の水滴)の大きさが小さいと、凸凹の小さい霜層となるため、霜層厚さの最大値が薄くなる。熱交換器の通風抵抗は、最大霜層厚さで決まるため、冷却面の表面に多数の細孔の持ったフィンで構成された熱交換器は通風抵抗が小さくなり、蒸発器として動作している室内熱交換器25に送風している室内熱交換器用送風機26の量の低下を防ぎ、冷却性能が悪化し難く、無処理の場合に比べて、省エネになる。
図4に、実験にて得られた、無処理の冷却面と多数の細孔を持った冷却面(後述する陽極酸化処理を施した冷却面)での凝固直前の水滴の写真(上面写真)を示す。実験条件は、空気条件は温度10℃・湿度80%、冷却面条件は温度−15℃、自然対流(強制的には風を流していない状態)であり、冷却開始6分後に撮影した写真である。冷却面にはアルミニウムを用いている。無処理の冷却面においては、大きな水滴が生成され、多数の細孔を持った冷却面においては、小さな水滴が生成されているのが分かる。凝固直前にて、無処理の冷却面における水滴の大きさは0.8〜1mm程度、多数の細孔を持った冷却面における水滴の大きさは0.3〜0.5mm程度である。また、無処理の冷却面に生成された水滴は、むらがあり大きさがまちまちであり、かつ、形も円形のものと楕円形のものがまざっており、大きさも形も一定していないことが分かる。これは、先に説明した通り、冷却面上に凝縮した水滴の位置が特定されていないため、隣接した水滴同士の距離が一定値になっておらず、たまたま近くに凝縮し生成された水滴同士が成長して合体するため、大きさも形も一定していない水滴が生成される。一方、多数の細孔を施した冷却面においては、大きさがほぼ同じ大きさになっており、かつ、形はきれいな円形をしているのが分かる。これは、先に説明した通り、冷却面上に凝縮した水滴は細孔の位置にできるため、隣接した水滴同士の距離が一定値になっており、水滴同士の合体が起き難く、大きさも形も一定している水滴が生成される。
このように、むらの少ない多数の細孔を持った冷却面を用いると、大きさも形も一定したきれいな水滴、ひいては氷滴、ができ、平らで凹凸が小さい、最大霜層厚さが薄い霜層が生成され、風路圧損が小さく、冷却性能の低下が少ない、省エネとなる熱交換器を構成することができる。
なお、図4は、自然対流における実験結果であるが、強制対流においても水滴の大きさは多少変わるかもしれないが、類似の結果となるのは明らかである。
冷却面の表面に細孔(小さい孔)があると、そこを核として水滴ができることについて、図5〜図7を用いて説明する。空気は、冷却面(蒸発器表面)で冷やされ、冷却面の近傍では過飽和空気になり、気流中に微小液滴が混在するミスト状になる。そのミストの一部が気流により移流されて冷却面近傍から排出され、残りが冷却面上に水滴として凝縮する。この際、冷却面のどこに初期の水滴(凝縮液滴)ができるかは、冷却面表面の部位によるミクロな状態での違い(微細な凹凸など)によって決まり、図5のような無処理の場合はどこに初期の水滴(凝縮液滴)ができるか分からない。従って、無処理の場合は、水滴のできる位置が特定されていないため、ランダムに水滴が発生し、水滴間の距離が一定していないため、水滴の成長に伴う合体が起き易く、大きな水滴ができ易い。一方、図6のように、冷却面に細孔があると、初期の水滴(凝縮液滴)は、細孔の稜線の位置にでき易い。細孔の大きさが水滴の大きさに対して小さいまたは十分に大きくない場合は、細孔の上部の稜線に水滴ができる。従って、冷却面に多数の細孔を一定間隔で配置しておけば、更に、細孔の開口角部に丸み(R部)が有るとしても水滴が付着する稜線を形成していれば、水滴の位置が一体間隔に特定されているため、水滴が合体して成長する過程において、均一な大きさの小さい水滴がたくさん生成されることになる。また、図7のように、細孔が水滴の大きさまたは水蒸気の振動振幅よりも十分に大きい場合は、空気中の水分は孔の上部の稜線および孔の内部に生成される。この場合も、冷却面に多数の細孔を一定間隔で配置しておけば、水滴の位置が一体間隔に特定されているため、水滴が合体して成長する過程において、均一な大きさの小さい水滴がたくさん生成されることになる。後ほど説明するが、孔の中に水滴を生成することにより伝熱面であるフィンの表面に霜がつくことをさらに遅らせることができる。即ち、○形状、楕円形状、あるいは細長いスリット形状などの穴をあけてその開口にて水滴が付着する開口角部を形成させ、この開口角部による稜線の形状を一様に分布させることにより小さい水滴が均等に分布されることになる。
しかし、無処理の冷却面における水滴に対して、小さい水滴を生成させる必要があり、細孔間の距離は離れすぎていると、細孔間の無処理の冷却面にも凝縮して水滴ができてしまい、大きな水滴ができてしまうため、細孔間の距離はある程度小さくなければならない。後述の陽極酸化処理の一例においては、細孔間の距離は約20nm程度であるが、図4の細孔を持った冷却面における水滴は0.3〜0.5mmであり、これよりも十分小さい間隔の細孔であればよいため、最大で0.1mm(100μm)程度までであれば小さな水滴の生成が可能である。ただ、このくらいの大きさになると、最初に凝縮して生成する水滴の大きさに比べて十分大きいため、細孔間にも水滴が生成し、楕円形になる水滴も発生してしまう。最初に凝縮してできる水滴の大きさは、冷却面の温度などによっても異なるが、10nm程度の水滴ができる旨の記述がしてある文献もあり、100nm程度以下の細孔間距離であれば、初期の水滴に対して距離は十分に大きくなく、最も効果が高い。
また、細孔の大きさ(等価直径または最短辺の長さ)についても、同様のことが言え、最大で0.1mm(100μm)程度までであれば小さな水滴の生成が可能であるが、100nm程度以下の細孔の大きさであれば、初期の水滴に対して十分に大きくなく、最も効果が高い。
なお、ここでは、空気の温度が0℃以上で、冷却面に水滴ができ、その後凝固し、氷滴になり、霜層が形成される場合について説明した。以下に、空気の温度が0℃以下の場合の霜層生成形態について説明する。
空気の温度が0℃以下の場合は、昇華により氷滴および霜層が直接形成される。しかし、この場合も、図5から図7で説明したように、空気中の水蒸気が冷却面で冷やされ、冷却面近傍でミストができる過程は、同一であり、そのミストが、冷却面に付着する過程で、氷滴となるため、冷却面にできる初期氷滴の位置および大きさは、空気の温度が0℃以上で、冷却面に水滴ができる場合と同様である。また、一旦氷滴ができると、空気中のミストがその氷滴の周囲に昇華し、氷滴が成長する過程も同一である。氷滴の成長時は、水滴の合体とはメカニズムが異なるが、氷滴間の距離が短い箇所においては、隣同士の氷滴が成長し、すきまがなくなると、氷同士は結合して一つの塊になる性質があるため、お互いにくっついて結合し、見かけ上大きな氷滴になり、水滴が合体し氷滴になった場合と類似の大きい氷滴ができる。一方、氷滴同士の距離が長い部分では、氷滴同士の結合は起きないため、無処理の冷却面においては、空気温度が0℃以上の場合と同様、凹凸の大きい霜層となり、霜層厚さの最大値が厚くなり、熱交換器の通風抵抗が大きくなり、蒸発器として動作している室内熱交換器25に送風している室内熱交換器用送風機26の風量が低下し、冷却性能が悪化し易い。冷却面に多数の細孔が設けられている場合についても、空気温度が0℃以上の場合と同様の大きさの氷滴となり、霜層厚さの最大値が薄くなり、熱交換器の通風抵抗が小さくなり、蒸発器として動作している室内熱交換器25に送風している室内熱交換器用送風機26の風量が低下し難く、冷却性能が悪化し難く、省エネになる。
図8は、細孔を設けたフィンを用いて形成したフィンチューブ式の熱交換器の例である。熱交換器40はフィン45と伝熱管46で構成されており、フィンは一様に分布された多数の細孔を持つような処理が施されている。フィンは、アルミニウム、伝熱管は銅であることが多いが、これに限るものではなく、熱伝導率のよい材料であれば、どんなものでもよい。例えば、伝熱管として、フィン材と同じアルミニウムを用いた熱交換器とし、フィンの表裏の両表面および伝熱管表面に細孔を施すようにすれば、水滴吸着、霜層厚さの平均化などより省エネ効果が大きくなる。なお説明ではフィンチューブ式の熱交換器の例を上げているがコルゲート式フィンを使用した扁平伝熱管を使用した熱交換器であっても良い。
図8に基づいて、本発明の熱交換器40の構成、機能などについて説明する。ここでは冷凍装置、空気調和装置などに広く利用されているフィンチューブ式の熱交換器40について説明する。熱交換器40は、冷凍サイクル装置において、蒸発器、凝縮器として用いられる装置である。特に熱交換器40が蒸発器として機能する場合には、低温の冷媒(熱伝達媒体)と対象空間の空気との熱交換を行い、冷媒に空気の熱を吸収させて空気を冷やす。熱交換器40は、主として複数の熱交換器用フィン45(以下、フィン45という)と複数の伝熱管46およびこの伝熱管間を熱交換器の端部で接続する図示していないヘヤピン管とで構成されている。本実施の形態のフィン45は、例えば穴空けなどの加工がしやすく、熱伝導率のよいアルミニウム(熱伝導率は約230W/mK)を材料とする平面板(プレート)とする。また、フィン45は、後述するように表面(表裏両面とも)に細孔を有している。コルゲートフィンの場合でも両面に細孔を形成させると有効である。
所定の間隔で複数並べたフィン45に対して、各フィン45に設けた貫通穴を貫通するように、伝熱管46が設けられている。各伝熱管46は冷凍サイクル装置における冷媒回路の一部となり、管内部を冷媒が流れる。伝熱管46内部を流れる冷媒と外部を流れる空気との熱をフィン45を介して伝えることで空気との接触面となる伝熱面積が拡がり、冷媒と空気との間の熱交換を効率よく行える。各伝熱管46を接続する管がヘヤピン管である。一般的に、伝熱管46およびヘヤピン管については、熱伝導率が高く、強度も確保できる銅を材料とする。但し、オールアルミ熱交換器のように伝熱管他を含めてアルミニウムとしても良い。そして、ヘヤピン管により各伝熱管46を繋げていき、一連の管を構成するものとするが、伝熱管46の配管経路については直列接続でもよいし、例えば、フィン45を貫通する複数の伝熱管46に冷媒を分岐させて流入し、合流させる流路を形成する少なくとも一部を並列に接続するような構成にしてもよい。また、貫通穴の数についても特に限定しない。なお、熱交換器を複数重ねる構造など使い方は自由であるが、細孔を設ける位置はフィンだけでなく通風部分であれば良く、伝熱管、ヘヤピン管のみならず熱交換器外郭構造部分などや風路仕切り板、通風ガイドなど温度低下の影響を受ける部分であれば細穴を分布させることは空気中の水分吸着に有効である。またフィンのない例えば扁平管熱交換器の場合は扁平伝熱管の通風を受ける表面部分に細孔を設けることになる。
本発明に係る熱交換器40は、空気と接する伝熱面(ここでは特にフィン45)に細孔を設け、その細孔に対象空間の環境下における空気中の水分(水蒸気)を吸着し、また脱着させる機能をもたせたものである。ここでは、水蒸気の相対圧力が約0.1以上約0.9以下の範囲のいずれかの段階で、細孔において毛管凝縮がはじまることにより、空気中に水蒸気として存在する水分の急峻な吸脱着が生じるようにする。この範囲の中でも、熱交換器40が曝される環境として最も適用の可能性が高い約0.3以上約0.8以下の範囲において、毛管凝縮がはじまるようにすることがより好ましいと考えられる。また、複数の細孔における吸着について考える。所定の相対圧力(環境下)において効率よく吸着量を増大させるためには、その相対圧力において毛管凝縮を生じる細孔ができる限り多い方がよい。つまり、同じ直径を有する細孔が多い方がよい。ただ、ナノオーダーの細孔を形成において、すべての細孔を同じ形状や直径にすることは困難である。この発明における細孔の細孔の平均直径もしくは短辺側径の形成は大きくても数十nm乃至数百nm程度までの直径であれば陽極酸化方法により稜線を有する開口の細孔が得られるが数百nm以上、μmやmmオーダーの細孔を陽極酸化させる場合細孔形成に時間が掛かり開口の稜線が崩れてしまう。従って大きな直径や巾系の細孔や溝では放電加工、レーザー加工など機械加工、あるいはスリット状の溝であれば回転刃による加工などを使用すると良い。もちろん機械加工可能な小径の細孔は機械加工であけてもよい。
以上のことから、本発明においては、一例として、細孔の平均直径もしくは短辺側幅径を約2nm以上数百nm以下の範囲内で陽極酸化により形成するように加工条件を選択し、かつ、除湿を行う対象空間の環境下にある熱交換器40の所定の範囲(例えば1枚のフィン45、熱交換器40全体など)の約50%以上の細孔を略均等な間隔で一様に分布させる。なお、孔径と細孔間のピッチは所定のものが得られるように製造時に陽極酸化処理時間や陽極であるフィンと陰極との相対位置関係など陽極酸化の条件を調整する。そして、熱交換器40における空気との接触面(伝熱面)に対して垂直になる細孔を形成する。これにより、限られた熱交換器10のフィン20を構成するフィンプレートの表面積に対して、出来るだけ大きな細孔容積を得られるようにすると、例えば吸着材等のような不規則に細孔が形成されている場合に比べて、冷媒の熱の伝わり方にバラツキなどがなく、エネルギー的にも効率よく吸脱着を行うことができる。
ここで、細孔における毛管凝縮現象について説明する。凝縮現象とは、温度が下がった場合などに気体の一部が液体に相変化する現象である。例えば、細孔内部のような3次元的に制限された空間(毛管)では、界面で発生する表面張力のために、細孔内部の気体分子が分子同士で引き合うよりも、細孔壁に引かれるほうが安定な場合があり、この場合に細孔壁に引かれた気体分子は容易に液化(凝縮)することが知られている。気体分子が次々と液化していくことで、細孔内部は液体で満たされることになり、その数が多ければ、細孔内部を埋め尽くす大きな吸着量が期待できる。この吸着した液体は安定状態にあるため氷結が遅れ氷になって体積を増大させフィン間のスペースを狭めることも無く着霜遅延に有効である。さらには、通常の気体分子の吸着現象では、細孔壁との相互作用で気体分子は強く吸着されているため、脱着する際には大きな脱着エネルギーが必要となる。これに対して、毛管凝縮で細孔内部に満たされた分子は比較的弱い脱着エネルギーで脱離が可能なことから、脱着に必要な入力エネルギーを小さくすることができ、特に繰り返し吸脱着を行うような場合にはエネルギー的に非常に有利となる特徴をもつ。この毛細凝縮現象を利用することにより水分を吸着する吸着材を使用しなくともよいことになる。
図9は毛管凝縮現象で得られる特徴ある吸着特性(脱着特性)を、吸着等温線(脱着に係るものも含む。以下同じ)として模式的に示した図である。吸着等温線とは、一定の温度(等温)条件下での各圧力(濃度)における平衡吸着時の吸着量を示したものである。図9では、縦軸が吸着物質(ここでは水分子である)の単位重量あたりの平衡吸着量[g/g](吸着とするが脱着も含むものとする。以下、単に吸着量という)を表す特性説明図であって、横軸がその温度における飽和蒸気圧力を1とした場合の相対分圧(相対圧力)を表す。一般に、毛管凝縮を伴う吸着現象は、吸着時と脱着時で吸着量にヒステリシスをもつので、吸着時と脱着時でそれぞれ異なる特性をもつ吸着等温線となる。図9では、例として、吸着物質の相対圧力が0.3付近で細孔による吸着量が急峻に増大して、やがて、プラトー(横ばい)となる吸着等温線を模式的に示している。これは、吸着量の急峻な増大が見られる相対圧力領域(0.3付近)で毛管凝縮がはじまり、細孔内部は吸着に係る液体で満たされ、大きな吸着量が得られることで説明できる。
図9のような急峻な吸着特性をもつ細孔の場合には、吸着物質の相対圧力が約0.3以上において吸着量が著しく増加することになる。そこで、なんらかの方法で周囲(その環境における)の相対圧力を約0.3以上にすれば、吸着物質を多量に、かつ、速やかに細孔に吸着させることが可能となる。相対圧力を大きくする効果的な方法は、吸着する細孔の周囲環境の温度を下げることである。例えば熱交換器40の場合には、吸着時において、伝熱管46を通過する冷媒に周囲環境の熱を吸収させて伝熱面を冷却することができれば、細孔付近の相対圧力が大きくなり、吸着量を増大させることができる。
また逆に、相対圧力が0.3以下では吸着量が著しく減少することになる。そこで、この場合には、なんらかの方法で周囲の相対圧力を0.3以下にすれば、吸着物質を細孔から逆に脱着させることが可能となる。同じく、相対圧力を小さくする効果的な方法は、細孔の周囲環境の温度を上げることである。例えば、熱交換器40の場合には、脱着時において、冷媒などで熱を放出することで伝熱面の細孔を加熱することができれば、脱着量を増大させることができる。
吸着等温線がどのあたりの相対圧力領域で急峻に立ち上がるか、すなわち、どのあたりの相対圧力領域で毛管凝縮が生じるかは、細孔のサイズ(直径)に依存している。例えば図9の吸着特性をもつ細孔より小さくなった場合には、0.3よりも低相対圧力側で毛管凝縮が生じ、吸着量の増大が始まる(図9の一点鎖線)。大きくなった場合には、逆に0.3よりも高相対圧力側で毛管凝縮が生じ、吸着量の増大が始まることになる(図9の点線)。一般に、どの相対圧力領域で毛管凝縮が生じるかが吸着特性を大きく左右するが、両者の関係は次式(1)のケルビン式で示すことができる。毛管凝縮が発生する際の相対圧力(平衡圧)をP/P0 で示した場合の両者の関係を(1)式に示す。
ここで、vl は凝縮分子体積、γは表面張力、θは毛細管に接触する際の角度、Rは気体定数(8.31[J/mol・K])、Tは絶対温度、rは細孔の半径を示している。この関係は水蒸気の場合にも成立し、ある相対圧力P/P0 に対して、水蒸気が毛管凝縮を生じるために必要な細孔の半径rを理論的に求めることができる。
図10は25℃における水蒸気の相対圧力と毛管凝縮が生じる細孔直径(細孔サイズ)の関係を示す図である。横軸は細孔直径[nm(ナノメートル)]、縦軸は25℃において毛管凝縮が発生する水蒸気の相対圧力、すなわち、25℃において毛管凝縮が発生する相対湿度を表す。図9より、例えば25℃において、水蒸気の相対圧力0.5(相対湿度50%RH)の環境で毛管凝縮が生じるような細孔直径は約3nm(半径は約1.5nm)、水蒸気の相対圧力0.8(相対湿度80%RH)の環境で毛管凝縮が生じるような細孔直径は約9nm(半径は約4.5nm)であることがわかる。但しこれは理論値であって、理論で求めた細孔の直径よりもフィンを用いた実験的では孔の形状が真円ではなく、且つ一定値でもないことから理論よりも大きな孔とするほうにずれるようであり、加工の際に大きな直径を狙うことが望ましい。
図10から見ると、対象とする環境下において細孔内部で発生する毛管凝縮を利用して大きな吸着量を得るためには、その環境における相対圧力で毛管凝縮が起こるようなサイズの細孔を多く形成するようにすればよい。具体的には、例えば、理論値では細孔の平均直径を2nm〜40nm以上に形成するようにし、かつ、50%以上の細孔の直径について、平均直径を中心として±20パーセントの範囲内に分布していれば十分な毛管凝縮が生じる。
ここで、必要以上に小さな細孔サイズにすると、毛管凝縮は生じるが、毛管となる細孔の内容積が小さくなってトータルの吸着量が減少する。また、それだけでなく、細孔サイズが小さくなることで、細孔壁との相互作用が大きくなって強い吸着となり、その結果、脱着するために大きなエネルギーが必要となる。以上のことから、対象とする環境における水蒸気の相対圧力に最も適した細孔サイズが存在するといえる。例えば、1nm以下の細孔直径では水蒸気の相対圧力が0.1以上の環境でも毛管凝縮が生じる場合があるものの、細孔の容積が小さく十分な吸着量が得られないだけでなく、細孔壁との相互作用も強くなって、ゼオライト並に大きな脱着エネルギーが必要となってしまう。したがって着霜遅延を得るには湿度、吸着量、脱着量などから2nm程度以上が望ましい。
このように、図10でもわかるように、理論的には水蒸気の相対圧力が0.9以上の相対圧力領域では、細孔サイズの依存性が少なくなる。このことから、本発明における毛管凝縮を考えた場合の熱交換器40のフィン45に設ける細孔直径は、水蒸気の相対圧力が0.3以上(相対湿度が30%RH)の範囲でそれぞれ毛管凝縮が生じる直径が望ましい。しかしながら図3ー図7にて説明したように、水滴を均等に分布する場合には小さな水滴が得られる水滴の大きさに対し細孔の大きさ(等価直径または最短辺の長さ)は、最大で0.1mm(100μm)程度までであれば小さな水滴の生成が可能である。一方、細孔に吸着した水分子は融点が低下するというGibbs-Thomson効果があり、直径100nm程度以下の細孔の大きさであれば、少なくとも1度以上の融点低下が得られる。これは制限された空間の中では吸着された液体である水分が安定状態にあり融点が低下して蒸発器の冷却温度が低くても凍りにくく凍結開始が遅れるものである。孔径が小さくなれば、例えば2nm程度では融点は−40℃になるし、μmのオーダーの直径では融点の低下はコンマ数℃程度になってしまう。融点が低下すれば氷結晶の生成を遅らせることができ、着霜遅延に有効となる。従って直径100nm程度以下の細孔の大きさの場合はさらに遅延効果が大きくなるといえる。霜の厚さを抑える小さな水滴を得るには一様に分布された細孔であって、その孔径は0.1mm(100μm)程度以下であって2nm程度以上にて着霜遅延効果が得られ、しかも直径を大きくすることによりフィン表面積が大きくなり熱伝達性能が向上するだけでなく、より多く水分を吸着しておくことが出来着霜遅延効果は大きい。ただし、100nm程度以下であって2nm以上の細孔の大きさであれば細孔内の水分の融点低下の効果により着霜遅延に大きな効果が得られる。
なお、細孔サイズにより毛管凝縮が生じる水蒸気の相対圧力が異なるので、例えば、同じ伝熱面上にさまざまなサイズを有する細孔が混在させると、特定の環境下における湿度条件や温度条件で優れた吸着性能を得るサイズを有する細孔が減少するが、様様な環境下における吸着能力を示すことが出来る。一方、熱交換器40に設けた細孔の50%以上が、平均直径を中心として±20パーセントの範囲内のサイズを有するようにしていると特定の環境下における湿度条件や温度条件で優れた吸着性能を得る事ができる。このように設定する細孔直径が設定したものであれば、図7にて示すように水滴の大きさに対し十分に大きな穴の場合、融点低下の効果は小さくとも孔の内部にも水滴は凝縮し、且つ、フィン全体から見ると水滴を凝縮させ水分を蓄える表面積が増えた状態と同じであり霜の厚さを押さえる効果が得られることになる。さらにこれらの考えを発展させて表面に近い孔径を大きくし細孔の深い部分の孔径を小さくする細孔の深さ方向に対する直径を段階的に変化させた構造にすると、熱交換器の使用条件によってはさらに良い着霜遅延効果が得られる。この場合液滴を付着させる開口稜線は表面の広い細孔又は深い部分の狭い細穴またはその両方に設けることが可能である。
次に細孔の深さについて説明する。毛管凝縮により細孔内に吸着できる水蒸気の量は細孔の深さにも依存する。そのため、本発明の熱交換器40に設ける細孔の深さは1μm〜1000μm(1mm)の範囲であるとよい。例えば、1μm以下の細孔の深さでは、毛管凝縮して吸着した液体(水)を保持できる容積の絶対量が不足する。また、吸脱着の回数も増えるため効率的ではない。一方、1000μm以上の細孔の深さでは、ナノオーダーである細孔の直径に対して、約1000000 倍以上もの深さ/径の比をもつことになる。そのため、吸着時に水分子を細孔底部まで到達させ、脱着時に開口部から水分子を排出させるために長時間を要する。このため、細孔形成処理時間などを考慮すると、10μm〜200μm(より具体的には100μm前後まで)の間で形成することが加工上においても、水分吸着量確保においても好ましいものと考えられる。
また、熱交換器40の構成部材がすべてアルミニウムであると良い。伝熱管、フィン45を含めた構成部材のすべてを熱伝導性の良好なアルミニウムにすることで、熱交換器40から細孔への伝熱がスムーズに行われるだけでなく、電流や時間などを規定する後述の陽極酸化処理を行うことで同じ程度の直径の細孔を比較的一様な分布で多く形成することができ、容易に均一な細孔直径をもつ細孔が得られる。
また、熱交換器40を組み立てる前のフィン45に対して酸処理により表面酸化物を除去する工程、フィン45を陽極とする陽極酸化処理工程、陽極酸化処理したフィン45に対して封孔を防ぐための熱処理工程を直ちに施し、細孔がフィン45の両面に形成された後にフィン45の貫通穴に伝熱管46を通して拡管し、熱交換器40を組み立てる方法でもよい。この熱処理工程を行うことによって細孔開口の開口角部を形成した状態を維持でき、細穴開口稜線を崩さずに液滴が付着可能となる。
ここで、数百ナノオーダー以下の細孔を安価に、かつ、均一に制御よく形成することができる本発明の陽極酸化処理について説明する。アノード酸化と呼ばれるこの表面処理方法は従来からあるアルマイト処理方法であって、一般には開いた穴を封止して耐食性を向上させるが本発明ではこの開いた穴を開けた状態で直ちに稜線を維持する処理を行うものである。なおマイクロオーダー、ミリオーダーの細孔に対しては開口の角部に丸みがあったとしても液滴が付着する稜線を確保できる機械加工、放電加工、レーザー加工などが望ましい。
陽極酸化処理による方法は処理対象となる金属を陽極とし、不溶性電極を陰極として電解質溶液(以下、電解液という)中で直流電解操作を行うものである。陽極と陰極との間に通電することにより、陽極である金属の表面が酸化し、金属の一部がイオン化して電解液中に溶解する。その金属イオンが電解液中の水と反応して、金属酸化物を生成する。陽極酸化処理により得られる金属表面の形態は、金属酸化物がどのような電子伝導性を有するかによって変わる。特に、アルミニウム、ニオブ、タンタルなど、陽極酸化処理により金属表面に厚く緻密な酸化皮膜が電流を一方向のみに流し、逆方向には流しにくい弁作用である電解整流作用を有する金属であればよく、言い換えるとポーラス膜が形成できるいわゆるバルブ金属と呼ばれる金属を使用する。この金属を使用したフィンなどに形成される酸化皮膜が電子伝導性に乏しいため、陽極酸化が進行するにつれて金属酸化物(アノード酸化皮膜。アルミニウムの場合にはアルミナ)が素地金属上に成長する。このとき、適当な電解質溶液(以下、電解液という)と電流および/または電圧の条件などを選択することによって、成長した細孔構造を形成することができる。
図11は陽極酸化処理により形成された理論的な規則正しい細孔断面構造の模式図である。陽極酸化処理により、表面にはアノード酸化皮膜である多孔質層が形成される。この多孔質層であるアノード酸化皮膜は、素地金属45に対して垂直に成長し、細孔が形成された多孔質分と金属に接するバリア層部分からなり、六角セルの細孔構造を有している。陽極酸化皮膜は、垂直な細孔が形成された多孔質層と素地金属と接する底壁部分のバリア層からなり、いわゆる六角セル構造を有している。以上は模式図に基づく基本的な説明であって、実際の製造においては通電状態が一定ではなく時間をかける都合で表面が不規則な網目形状の細孔となる。これをあらかじめ選択した孔径、ピッチ、深さを多くの孔で形成させるように多くのパラメータ制御が必要である。細孔を形成する際、基本的にバリア層の厚さは一定に形成されるため、細孔の深さ制御は実質的に皮膜の厚さを制御することで行う。皮膜の形成速度と厚さは供給する両極間の電流または電位及び陽極酸化時間に依存するため、所定の深さの細孔を形成するときには供給する両極間の電流または電位及び陽極酸化時間を制御する。また、単位面積当たりの細孔数(密度)及び細孔径は両極間の電位に依存するため、所定の数及び細孔径を形成するためには、両極間の電位を制御する。したがって穴あけ途中で孔径を変える場合は、電圧を変更すればよい。また、細孔の間隔に合わせて突起が形成されたモールド(金型など)を、フィンとなるアルミニウム表面に押しつけて表面に規則的な窪みを形成する。その後陽極酸化を行うと、その窪み部分を中心として細孔が形成され、細孔の配列を相当程度規則正しく行うことができ、密度の面において高い制御を行うことができる。さらに重要なことは、陽極酸化により形成された細孔が空気中の水分と反応して閉塞するのを防ぐため、細孔形成後に直ちに100〜200℃程度の温風でフィン45を加熱して皮膜に含まれる水分を除去し、安定な酸化物に変える操作を行う。以上のようにして形成した複数のフィンの貫通穴に伝熱管を通し、熱交換器を形成する。
フィン45となるフィンプレート両面に細孔を陽極酸化処理により形成するにあたり、細孔の直径や単位面積当たりの細孔数および細孔径は、経験的に電極間の電圧および/または電流に比例することが知られている。例として、電気化学便覧 第5版(電気化学会編、丸善)p.449〜453には、次式(2)で示すように、細孔の直径2r[nm]と電極間の電圧Ea[V]との関係が示されている。
電圧Ea<15Vの場合、2r=13.9+0.21XEa
電圧Ea>15Vの場合、2r= 4.2+0.84XEa (2)
この(2)式は経験式であり、必ずしもすべての陽極酸化処理に当てはまるものではない。また、陽極酸化される金属の表面状態や、陽極酸化処理で使用する電解液の種類や濃度、液温などに影響を受けるため、細孔直径の決定条件を一般化することは難しい。ただ、陽極酸化処理における電極間の電流や電圧を制御することで、選択した細孔直径を形成するための制御が可能であることを示している。
一方、細孔の深さも、陽極酸化処理における条件を適切に設定すれば制御することができる。アルミニウムのように、アノード酸化皮膜が電子伝導性に乏しい場合、陽極酸化の駆動力となる電場は電子伝導性の高い方のバリア層に印加され、バリア層部分の厚さは一定で形成されていく。そして、多孔質部分とバリア層部分の境界、すなわち、多孔質層の底部でのみ酸化が進行してアノード酸化皮膜が成長する。その結果、細孔の深さである厚みは陽極酸化処理の時間または印加した電流量(皮膜に与えたクーロン量)とともに厚くなる。このように陽極酸化の時間または印加した電流を増やすことで、例えば、薄くしたフィンプレートの両側から陽極酸化処理を行ってフィン45に貫通細孔を形成することもできる。孔の径が微細な孔の中では、水分が凍結するために多大なエネルギーが必要となり、孔が小さければ小さいほど、水分の過冷却度が増加し氷結が遅くなり、その分、着霜が遅延され、除霜間隔を長くすることができ、省エネになる。細孔の深さが深い方が、孔内に保水される水分量が多くなるため、着霜遅延効果、省エネ効果が、より大きくなる。細孔の深さは、例えば10μm以上あると、十分な保水量が得られ、省エネ効果が大きい。
上記の陽極酸化処理により、所望の、例えば吸着対象となる水蒸気の相対圧力に最も適した細孔サイズと細孔の深さを得るため、陽極酸化処理の電流または電圧を変えることで細孔の直径サイズを、陽極酸化処理の時間または電極間に流れる電流量を変える(これによってクーロン量(電流X時間)が変わる)ことで細孔の深さを制御することができる。
冷却面(フィン)表面へ細孔を付ける方法としては、すでに説明してきたように例えば陽極酸化(アノード酸化)による方法がある。陽極酸化(アノード酸化)は、フィン表面に両面同時に細孔を形成することができる。フィン(アルミニウム)を陽極として、硫酸、シュウ酸、リン酸、クロム酸などの酸性溶液中、ホウ酸アンモニウムのような中性溶液、水酸化ナトリウムやリン酸ナトリウムなどのアルカリ性溶液中などの環境で直流電解を行うと、例えば、フィン(アルミニウム)から溶解したアルミニウムイオン(Al3 +)と水(H2O )とが反応し、酸化アルミニウム(アルミナ)の皮膜(アノード酸化皮膜)が素地金属であるアルミニウム上に生成される。ここで、毛管凝縮を利用する場合の水分の吸脱着に好適なナノオーダーサイズの細孔を精度良く形成するには、陽極酸化処理の電解液に酸性水溶液を用いることが望ましく、特に、強酸である硫酸や塩酸が望ましい。
また、陽極酸化処理で形成したナノオーダーの細孔が、空気中の水蒸気や周囲の温度などで変質して封孔してしまわない(塞がってしまわない)ように、陽極酸化処理により細孔を形成した後、ただちに水の蒸発温度である100℃以上(より好ましくは約150℃以上)で熱処理して、水分を除去することで細孔構造を安定化させることが重要となる。
次に、熱交換器40が曝される、ある特定の環境における水蒸気の相対圧力に応じて毛管凝縮が生じ、かつ、十分な水分の吸着を行うことができるような細孔の理論的な必要条件について説明する。
熱交換器40が使用される、すなわち、冷凍サイクルによって温湿度を制御する冷熱機器が使用される場所はさまざまである。例えば、一般的に人が活動する居住空間では、25℃における水蒸気の相対圧力が0.3〜0.6であることが知られている。近年、ビル管理法が制定され、温度:17〜28℃、相対湿度:40〜70%RH(水蒸気の相対圧力:0.4〜0.7)が基準として設定されるようになったため、さらに温度湿度管理の重要性が高まっている。また、食品加工を取り扱う工場などでは、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)管理の観点から、防カビや菌対策に食品に応じた低温・低湿度(例えば、5℃、30%RH以下など)の管理値が設定されている。さらに、美術館や博物館などは急激な温度変化による展示物の膨張/収縮や、60%RH以上の湿度環境になると急激に増加するカビの活動を抑制するために、展示室内の気温は20〜22℃、相対湿度は50%〜55%の一定値になるように設定されていることが多い。
このように、熱交換器40は、その外部環境におけるさまざまな温度・湿度条件で使用されているため、熱交換器40の伝熱面に細孔を設け、その細孔に毛管凝縮により水蒸気を吸脱着させるには、それぞれの使用環境に対応させたサイズ又はそれ以下の細孔を図10を基に選択すると都合がよい。ただし、実際には理論よりも大きめの孔径が良い。
例えば、居住空間に位置する空調機器の熱交換器40が前記の相対圧力範囲である0.5(相対湿度50%RH)の環境に曝された場合を考える。熱交換器40が有する細孔に毛管凝縮が生じるためには、(1)式より、細孔半径が約1.5nm、すなわち、細孔直径が約3.0nmの細孔サイズが望ましい。また、食品加工場など30%RH以下の低湿度環境が求められる空間では、同じく(1)式より、細孔半径が約1.0nm、すなわち、細孔直径が約2.0nm又はそれ以下の細孔サイズが必要となる。
また、熱交換器40が使用される湿度領域によって吸着できる総吸着量は大きく異なる。例えば、人が活動する居住空間の場合には、100〜200g(水蒸気)/h程度の速度で水蒸気が吸着できれば除湿効果が得られると見積もれる。つまり、毛管凝縮による除湿を実現するためには、空気中からワンパスで100〜200g(水蒸気)程度の水蒸気を吸着できればよい。ここで、全体の水分(水蒸気)の総吸着量は細孔の深さでも決まり、例えば、1馬力サイズの冷熱機器を考えた場合、冷熱機器で使用される熱交換器40のフィン45の表面積は4m2程度である。例えば、3.0nm程度のサイズを有する細孔について、これだけの量の水分(水蒸気)をワンパスで吸着するには25〜50μm程度の細孔の深さがあればよいことになる。
本発明の熱交換器の種類は以上の説明に限るものではなく、例えば、平板上のフィンの代わりにコルゲートフィンに細孔を設ける、あるいは、扁平の伝熱管を用いフィンを具備することなしに伝熱性能を向上させた熱交換器を用いてもよく、この場合は、伝熱管の外表面に多数の細孔処理を施すことになる。このタイプの熱交換器は、アルミニウムにより製作されることが多い。
なお、熱交換器の強度面より、細孔は、フィン表面に貫通しない形で設ける方が好ましいが、細孔ピッチが細孔径より大幅に大きい場合や細孔箇所がフィンの特定の箇所に限定されるような場合にはフィンを貫通した細孔にしてもよく、小さな水滴を生成するという効果は変わらない。本発明は以上述べた細孔に空気中の水分を貯える事がで、且つ、霜の成長を遅らせて、薄い霜層とすることが出来るため、装置運転中の性能低下をおさえ。更に、霜取りサイクルを伸ばすことにより霜取りという無駄なエネルギーを減少させて省エネルギー装置とすることが出来る。
実施の形態2.
実施の形態2においては、フィンプレートに、細孔の選択条件(例えば、細孔直径3.0nm、細孔の深さ50μm)を満たす細孔を形成し、図8にて説明している熱交換器40のフィン45を形成する方法や、細孔を形成したフィン45の貫通穴に伝熱管46を通して拡管して得られる熱交換器40の構成と製造方法他について説明する。
まず陽極参加処理の前に、原材料である純アルミニウム圧延板(例えばJIS1060 グレード、厚み200μm)をフィン45となるサイズに切断し、伝熱管46を通すための貫通穴と所定の切り起こし加工を行い、フィン45となる平板状のフィンプレートを作製する。熱交換器40の大きさや能力にもよるが、通常、1台分の熱交換器40にはこのフィンプレートが数百枚必要となる。次に、図12に示すフィンプレートにおける細孔形成に係る処理工程のプロセスフローチャート例を説明する。
図12において、フィンプレートアルミニウムの表面に存在する有機物汚染を除去する目的で、フィンプレートを50℃に加熱した市販の脱脂溶液中に例えば2分間ディップ(浸漬)し、脱脂処理を行う(S1)。その後、イオン交換水による水洗処理を行う(S2)。続いて、フィンプレート表面に形成された自然酸化膜を除去する目的で、約60℃に加熱したアルカリ性エッチング溶液(例えば、濃度が1M(mol/l)のNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液など)中に1分間ディッピングしてアルカリエッチング(ウェットエッチング)処理を行う(S3)。その後、イオン交換水による水洗処理を行う(S4)。次に、ウェットエッチングにより表面に生成した反応物(不純物、スマット)を除去する(デスマット)目的で、室温管理したデスマット溶液(0.5M−H2SO4(硫酸)溶液)に30秒浸漬し、デスマット処理を行う(S5)。その後、同様にイオン交換水による水洗処理を行う(S6)。
図13は陽極酸化処理に係る装置を中心として示した原理図である。図13において、1M−H2SO4水溶液の電解液62が電解槽(ウォーターバス)63内を満たしている。電解槽63により浴温を10℃にコントロールした後、直流電源61に接続され、電圧が印加された1枚分のフィンプレート65を陽極とし、平面状の2枚のカーボン板64を陰極にして電解液62中に浸漬した。そして、両極間に1.5A/dm2 の定電流が流れるように定電流制御しながら陽極酸化処理を行う(S7)。ここでは、反応初期の表面状態を維持するために、ホットスタート(あらかじめ両極間に電圧を印加しておき、電解液に浸漬すると同時に電流が流れる)により陽極酸化を開始するものとする。そして、陽極酸化処理時間は30分とする。フィンプレート65を中央にして、各カーボン板64がフィンプレート65のそれぞれの平面部分と対向するかたちで処理を行っているため、フィンプレート65の両面に同時に陽極酸化が進行することになる。
ここで、前出したように、形成される細孔が一様に分布し、且つ、細孔の直径はできる限り同じ程度のものが多い(均一である)方が望ましい。そのためには、フィンプレート65全体の電流密度を均一にするようにするなどの対策を行うようにする。このため、例えば、陰極であるカーボン板64の大きさをフィンプレート65と同じかそれ以上にする、電解液62の振動を抑えるなどにより、金属イオンの析出、反応が均一に起こるようにする。また、フィンプレート65の両面を同条件で陽極酸化するため、フィンプレート65と2つのカーボン板64との間におけるそれぞれの間隔を同じにする。場合によっては補助電極を用い、形状に合わせて全体が同条件で陽極酸化されるようにする。
陽極酸化が進むにつれてフィンプレート65の表面に酸化物(アノード酸化皮膜)が成長し、界面抵抗が大きくなっていく。このように陽極酸化処理においては定電流制御を行っているため、両電極間の電圧は次第に上昇していく。
陽極酸化処理を終了すると、すぐにフィンプレート65を電解液62内から引き上げてイオン交換水による水洗処理を行う(S8)。水洗でフィンプレート表面に付着した水滴をブロワで吹き飛ばした後、陽極酸化により形成された細孔の形状構造を強化するために、ただちに、あらかじめ加熱しておいたオーブン(大気中)に入れる。ここでは、オーブン内の温度を約150℃とする。そして、60分間の熱処理を行い、オーブンから取り出して徐冷する(S9)。このような方法で伝熱面となる部分に細孔を形成したフィンプレート65をフィン45として例えば120枚準備する。
図14は図12の処理工程にて製造したフィン45における吸着等温線を表す図である。ここでは、製造されたフィン45に形成された細孔の水分の吸着特性および細孔サイズ分布を平衡吸着測定により評価するものとする。
最初に、例えば、フィン45と同じフィンプレートの一部を適当な大きさに切断してサンプル管に詰め、150℃X1hの真空中で前処理を行った後、自動ガス/蒸気吸着量測定装置を使って、25℃における水分の吸着等温線測定を行った。図14より、吸着時と脱着時とにおいてヒステリシスがあるものの、吸着/脱着の平均では、相対圧力P/P0 が0.5付近において、急峻な立ち上がり(立ち下がり)がみられ、この付近を境として、毛管凝縮による吸脱着が行われていることがわかる。また、このときの水分の吸着量も細孔単位重量あたり200g程度の量が得られており、十分な吸着特性を示していることがわかる。形成された細孔の深さは約50μmであった。
図15は細孔サイズの分布を表す図で、相対圧力が0.5付近で毛管凝縮を示すサンプルの細孔サイズをBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により求めたものである。図14から、細孔サイズの分布は3.5nm付近で極大を迎えており、急峻な細孔分布ピークが得られていることから、50%以上の細孔が細孔直径3.5nm±2nmの範囲に含まれていることが確認できる。すなわち選択した細孔直径3.0nm、細孔の深さ50μmとほぼ同程度の細孔が得られた。
続いて、このような吸着特性をもつ120枚のフィン45を、例えば2段3列に並べ、同じ方向にスタックした(積み重ねた)フィン45の貫通穴に、冷媒が流れる複数の銅製の伝熱管46を差し込む。さらに伝熱管46内に冶具を挿入して内部より拡管し、フィン45と伝熱管46の両者が一体化となるようにする。このとき、並べられた各フィン45は等間隔となっているものとする。さらに、複数の伝熱管46をシリーズに(一連になるように)繋げるために、銅管をヘヤピン状に曲げて形成した(ベンドした)ヘヤピン管を準備し、伝熱管46内部を窒素ガスで満たした後、接続する2つの伝熱管の終端とヘヤピン管とをロウ付けする。以上のようにして図8に示すような熱交換器40が得られる。
以上のように、熱交換器40の伝熱面となるフィン45を構成するフィンプレートの表面に複数の細孔を形成し、フィン45自体が水分を吸着する手段として機能するようにしたので、例えばシリカゲルなどの粉末状の吸着材などのような特別な手段などを必要とせず、フィン45の間を通過する空気から水分を吸着することができる。これにより、フィン45を初めとする熱交換器40への着霜を防止することができ、除霜運転の回数や時間などを低減することができる。また、吸着材の剥がれ落ちなどを防ぐことができ、衛生面などからも安全で管理を行いやすい。そして、フィン45と吸着材との間の熱抵抗がなく、伝熱効果を損なうことがない。吸着材などにより熱交換器40のフィン45間の間隔を狭めることも無く、フィン45間の空気の流れをよくし、さらに細孔による凹凸により、伝熱面における表面積が拡がるため、熱交換をさらに効率的に行うことができる。また、吸着材による空気の圧損などもないためエネルギーなどの観点からみても効率よく熱交換を行うことができる。また、吸着材を設ける必要がない分、性能の良い熱交換器40全体をコンパクトにすることもできる。
そして、水蒸気の相対圧力が約0.3以上において、水分を吸脱着できるように、細孔の平均直径を約2nm以上とし、所定範囲内の約50%以上の細孔について、その直径が、平均直径を中心として約±20パーセントの範囲内に分布するような直径にするようにし、また、所望する吸着量に合わせた深さを形成するように細孔を形成する条件としたので、環境下の相対圧力付近において吸着能力が高い熱交換器40(フィン45)を得ることができる。
特に特定の径の細孔を製造する様に、例えば、居住空間に位置する空調機器における熱交換器40が曝される水蒸気の相対圧力の環境下に応じて、毛管凝縮が発現するようにするため、1M−H2SO4水溶液の陽極酸化電解液に浸漬して陽極酸化処理を行い、例えば各フィン45(熱交換器40)において、約50%の細孔の直径が約3.5nm±20パーセントの範囲に収まるような細孔を形成し、吸着量に合わせた深い細孔を形成し、熱効率よく冷媒でダイレクトに細孔を冷却できることで、図14の吸着特性で示すように、相対圧力0.5付近において、吸着特性が向上する熱交換器40を得ることができる。また、同じく図14に示すような脱着特性をもつことから、脱着時に高い温度の冷媒を伝熱管46内に通過させて、フィン45に直接形成された細孔をダイレクトに加熱できるため、効率よく相対圧力を高めることができ、細孔に吸着した水蒸気を効率よく脱着することができ、優れた伝熱効率と省エネルギー性をもつ熱交換器40を得ることができる。
一方、食品加工を取り扱う工場などでは衛生上の観点から、防カビや菌対策のために、通常の環境よりも低温・低湿度(例えば、5℃−20%RHなど)の管理値が、通常、設定されている。そこで、次にこのような低温・低湿度環境で最も好適な熱交換器40を製造する例を示す。
水蒸気の相対圧力が約0.3(相対湿度30%RH)の環境に、細孔を有する熱交換器10が曝された場合、細孔半径が約1.0nm、すなわち、約2.0nmの細孔直径を有する細孔において、最も優れた吸着特性が得られることが予想される。また、低温・低湿度環境においては、空気中の水分の絶対量はそれほど多くないため、50〜100g(水蒸気)/h程度の速度で水分を吸着できればよいと考えられる。以上のことから、このような環境において細孔の深さは50〜75μm程度が必要であると予測される。
上記の予測などに基づいて、上記と同様に図12に示したプロセスでフィンプレートへの細孔形成を行った。ただ、本例においては、後述するように、陽極酸化処理を行う際の条件が異なっている。まず、上記と同様の条件・溶液で、脱脂→アルカリエッチング→デスマット処理(図12のS1〜S6)を行う。
次に前出した図13に示す電解槽63などを用いて、陽極酸化処理を行った(図12のS7)。浴温を20℃に制御した0.5M−H2SO4水溶液を電解液として使用する。そして、1枚分のフィンプレートを陽極とし、2枚のカーボン板を陰極にして電解液中に浸漬し、両極間に例えば2.0A/dm2 の定電流が流れるように定電流制御して処理を行う。ここでの陽極酸化処理時間は45分とする。
陽極酸化処理を終了すると、電解液から引き上げてイオン交換水で水洗・ブロワーによる水切りを行う。そして、上記と同様に、ただちに150℃に加熱しておいたオーブン(大気中)に入れ、このまま、60分間の熱処理を行って、オーブンから取り出して徐冷した(図12のS8〜S9)。このような方法で伝熱面に細孔を形成したフィン45を例えば200枚準備する。
図16は作成したフィン45における吸着等温線を表す図である。前処理条件および評価装置並びに測定方法は、前回の吸着特性評価と同様の装置および方法であるため説明を省略する。図16においては、吸着時と脱着時とにおいてヒステリシスがあるものの、吸着/脱着の平均では、相対圧力P/P0 が0.3付近において、急峻な立ち上がり(立ち下がり)がみられる。また、このときの水分の吸着量も細孔単位重量あたり70g程度の量が得られており、十分な吸着特性を示していることがわかる。形成された細孔の深さは約70μmであった。
図17は細孔サイズの分布を表す図で、相対圧力が0.3付近で毛管凝縮を示すサンプルの細孔サイズをBJH法により求めたものである。図17から、細孔サイズの分布は1.8nm付近で極大を迎えており、急峻な細孔分布ピークが得られていることから、50%以上の細孔が細孔直径1.8nm±2nmの範囲に含まれていることが確認でき選択した2nm程度の細孔のものが得られている。
次に、前記吸着特性をもつ300枚のフィン45を3段4列に並べ、同じ方法で、伝熱面に細孔をもつ熱交換器40を製造した。
以上のように、食品加工を取り扱う工場などの低温・低湿度環境に適した熱交換器40を得ることができるように、0.5M−H2SO4水溶液の陽極酸化電解液に浸漬して陽極酸化処理を行い、例えば各フィン45(熱交換器40)において、約50%の細孔の直径が約1.8nm±2nmの範囲に収まるような細孔を形成し、吸着量に合わせた細孔を形成し、熱効率よく冷媒でダイレクトに細孔を冷却できる。
次の例における熱交換器40は、構成上は、上述した各実施の形態と同様である。ただ、伝熱管46(ヘアピン管を含む)にも、フィン45と同じく、熱伝導性が良好で、陽極酸化処理を行うことができるアルミニウムを材料として使用し、オールアルミニウム製で構成している。そして、フィン45だけではなく、伝熱管46(ヘアピン管を含む)にも細孔を形成するようにしたものである。
熱交換器40の組み立てについては、本実施の形態で述べてきた方法と同じであり、例えば、160枚のフィン45を3段4列に並べ、フィン45の貫通穴に伝熱管46を差し込んだ。そして、伝熱管46を内部より拡管して、フィン45と伝熱管46の両者を一体化するように形成する。さらに、複数の伝熱管46をヘヤピン管で接続する。これにより、オールアルミニウム製の熱交換器40を準備する。
冷凍サイクル装置の他の機器と配管接続するための伝熱管30の両終端における開口部分を、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなるフッ素樹脂のテープでマスキングし、電解液に浸漬した際に伝熱管46端部より管内に電解液が浸入しないように処理する。このため、管内が陽極酸化されるのを防ぎ、例えばアノード酸化皮膜により、冷媒の流路抵抗を増やさずにすむ。その後、実施の形態1と同様に図12に示したプロセスフローで熱交換器40への細孔形成を行う。まず、実施の形態1と同様の条件・溶液で、脱脂→アルカリエッチング→デスマット処理(図12のS1〜S6)を行う。
プレートではなく熱交換器40全体を陽極として、前出した図13に示すような陽極酸化処理を行う。そのため、熱交換器40全体が陽極となるが、電流密度のばらつきを小さくするため、熱交換器40の中心線に対して対称となる位置に複数の電極を取り付けた。一方、陰極については、実施の形態1と同様に平板状のカーボン板を使用するものとする
。ただ、このとき、カーボン板を4枚として熱交換器40を囲むようにした。
本実施の形態では、熱交換器40とカーボン板64とを電解液62中に浸漬し両極間に2.0A/dm2 の定電流が流れるように定電流制御して処理を行う。そしてここでの陽極酸化処理時間は20分とする。
陽極酸化処理を終了すると、実施の形態1などと同様に熱交換器40を電解液から引き上げてイオン交換水で水洗・ブロワー水切りを行う。そして、ただちに150℃に加熱しておいたオーブン(大気中)に入れ、このまま、60分間の熱処理を行って、オーブンから取り出して徐冷する(図12のS8〜S9)。このような方法で細孔形成を行い、全体に細孔を有する熱交換器40を製造する。
組み立てが完了した状態で熱交換器40全体についてその表面を陽極酸化することになるが、伝熱管46やフィン45がすべてアルミニウムを材料としており、フィン45表面だけでなく、伝熱管46の表面にも細孔が形成される。そのため、細孔の数が多くなり水蒸気を含む対象空間の空気に接する面積がより多くなるため有利である。
図18は熱交換器の外表面全体に細孔を設けた熱交換器10における吸着等温線を表す図である。前処理条件および評価装置ならびに測定方法は実施の形態1において行った吸着特性評価の場合と同様であるため説明を省略する。図18より、吸着時と脱着時とにおいてヒステリシスがあるものの、吸着/脱着の平均では、相対圧力P/P0 が0.40付近において、急峻な立ち上がり(立ち下がり)がみられる。また、このときの水分の吸着量も細孔単位重量あたり120g程度の量が得られており、十分な吸着特性を示していることがわかる。形成された細孔の深さは約180μmであった。
図19は細孔サイズの分布を表す図である。相対圧力が0.4付近で毛管凝縮を示すサンプルの細孔サイズをBJH法により求めたものである。図から、細孔サイズの分布は2.5nm付近で極大を迎えており、急峻な細孔分布ピークが得られており、フィン部分においては分布の広がりは見られるが一様に分布する細孔の開口分布が見られた。
以上のように、フィン45だけでなく、伝熱管46およびヘヤピン管等をアルミニウムを材料として構成し、伝熱管46(及びヘヤピン管)にも細孔を形成するようにしたので、空気中の水分を吸脱着できる細孔を有する部分の面積(細孔の数)を増やすことができ、細孔の深さ調整に依らずに、さらに多量の水分を吸着することができる。
次に陽極酸化処理における電解液に強アルカリ性を示す1M−NaOH水溶液を用い、定電流3A/dm2 の定電流が流れるように定電流制御して40分間陽極酸化処理を行うものとする。それ以外は、実施の形態1と同じ条件/方法で細孔形成を行った。なお、陽極酸化処理後のフィン45の表面には白い粉が吹いた状態となっていた。
図20は作成したフィン45における吸着等温線を表す図である。前処理条件および評価装置ならびに測定方法は実施の形態1において行った吸着特性評価の場合と同様であるため説明を省略する。図20より、吸着時と脱着時とにおいてヒステリシスがあるが、吸着、脱着共に、吸着量については、急峻に立ち上がる(立ち下がる)ことはなく、相対圧力の増加(減少)に伴って緩やかに吸着量(脱着量)が増加(減少)した等温線となった。
図21は細孔サイズの分布を表す図で、BJH法により求めたものである。図21から、細孔は全体に大きく、10〜11nm付近で分布が極大となっている。一方で、7nm以下の微小な細孔も多く散見され、全体としてはバイモーダルなピーク(2つのピーク)をもつ細孔分布となった。これは電解液に強アルカリの水溶液を使用したため、細孔壁の酸化成長(アノード酸化皮膜の成長)よりも金属の溶解が優先的に進行して、細孔直径が大きくなり、かつ、細孔分布も広くなったと考えられる。ただし、開口の稜線が見られており、且つ分布している寸法が小さいものであり、この熱交換器40の製造方法によると、時間を極端に長くしすぎなければ、液滴を小さくする一様に分布するものが得られ、異なる開口寸法の細穴が含まれるが一様に分布するものが得られる。
上述では、フィンの材料をアルミニウムであるものとして説明したが、材料をアルミニウムに限定するものではない。例えば、いわゆるバルブ金属(弁金属)をフィンの材料として用い、陽極酸化により表面に細孔を形成するようにしてもよい。バルブ金属とは、アノード酸化法により電解整流作用を示す酸化皮膜を形成できる、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどの金属の総称である。このうち、フィンとして実用的に用いることができる金属は、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタルなどである。これらの金属を用いても、アルミニウムと同様の効果を得ることができる。
陽極酸化による方法を用いれば、アルミニウムなどの熱交換器のフィン材を溶液に浸し、電界をかけるだけで、大きな伝熱面積を持つ、多数のフィン材の両面に、一度に細孔を施すことができ、安価に製造することができる。また、製造ライン中で陽極酸化処理を行うようにしてもよいが、フィン材を酸性溶液に浸す時間は、例えば5分から30分くらいであり、陽極酸化処理を施したフィン材をロールで購入しておき、熱交換器の製造時に切断して使用する方が、より安価に製造できる。図22にて、88mm*203.2mm寸法のフィンに陽極酸化処理を行い製造した細孔の例を説明する。図22の(イ)は処理時間5分により得られた細孔、(ロ)は処理時間30分、(ハ)は処理時間90分のものである。各例とも50万倍に拡大したものであって、それぞれの孔の深さは、数μから数十マイクロのものである。各例とも不規則な網目形状のように見えるが、フィン表面に黒い個所で示すnmオーダーの孔が一様に分布され、且つ、孔のピッチが同じ程度に形成されていることが示されている。実験的には陽極酸化処理時間が短いと孔の深さが浅くなるなど問題があり、10分以上が望ましく、処理時間が長い場合で90分のものでも良好な稜線が得られることを確認した。図22のようにこの孔に基づく稜線が一様に同じようなピッチで形成され、結果として図4にて説明した表面に多数の細孔を持った冷却面状の水滴のように、小さな均等な水滴の分布、ひいては薄い霜の分布が得られることになる。
陽極酸化処理を施した後のフィンは、親水性にも撥水性にもなり得る。処理直後は、親水性(接触角50度未満)になっており、時間が経つと撥水性(接触角50度以上)になっている。しかし、フィン表面にできる液滴、氷滴の大きさは、細孔の大きさおよび間隔によって決るため、親水性であっても撥水性であっても、効果にほとんど違いは無く、同様の効果を奏する。すなわち、陽極酸化処理に基づく方法は、経年的に効果がほとんど変わらず、省エネ効果を持続させることができる。
また、ここでは、室外機11にユニットクーラ12が2台接続されている場合を例に説明を行ったが、これに限るものではなく、1台でも構わないし、3台以上接続されていても構わない。
また、当然、冷媒回路の液管部に液溜が接続されていてもよく、圧縮機21の吸入配管部にアキュムレータが接続されていてもよい。また、室外機11内に、圧縮機21、室外熱交換器22、室外熱交換器用送風機23、が内蔵されている場合を例に説明を行ったが、これに限るものではなく、室外熱交換器22および室外熱交換器用送風機23が圧縮機21とは別体に置かれているリモートコンデンサ方式のものであっても構わない。
なお上記では、熱交換器外側表面全体に細孔を形成させる説明をした際に、伝熱管の両端にてマスキングして電解液を伝熱管の中にいれずに伝熱管内面には細孔を形成させない方法を説明している。もし蒸発器の配管内部に外部と同様に細孔を分布させる場合は配管を構成する金属の酸化被膜が弁作用を有するアルミなどであり陽極として接続されていれば、配管端部にマスキングをせずに熱交換器全体の外側に設けられた陰極との間で陽極酸化をするだけでよい。配管内面全体に細孔を形成しても良いが、特に、蒸発器出口側でなく入口側の配管内部に細孔を設けることにより、冷媒が主に液状態である入口側の配管内面の細孔が蒸発の核となり液から気体状態への蒸発が活発化して有効に冷媒の液から気体への蒸発が行われ省エネルギーにつながるものとなる。一方出口側では冷媒は主に気体状態であるので細孔を形成しなくとも良い。図23は蒸発器の冷媒入口側にだけ細孔を形成する説明図であって、蒸発器入口側の伝熱管両端を開放して電解液が管内部に入るようにするとともに、蒸発器出口側の伝熱管の両端は管をマスキングで閉鎖している。熱交換器構造を完成させるときは、冷媒入口側と冷媒出口側の配管を図のようにUベンドで接続して冷媒を流すようにしている。
室内機としてユニットクーラを用いる場合を例に説明したが、類似の構成のものであればどんなものでもよい。例えば、図24は、冷媒回路内に四方弁などの流路切り換え手段27を持つ空調機(ルームエアコン)であるが、この場合は、圧縮機21から吐出される冷媒の流れが四方弁27にて冷媒配管を切り換えることにより方向が変えられる。これにより室内熱交換器25または室外熱交換器22のいずれか蒸発器として動作する熱交換器となり、かつ、伝熱管の内部を流通する冷媒の温度が0℃以下である場合、蒸発器で着霜が起きるため、蒸発器のフィンまたは伝熱管に多数の細孔を持ったものを用いると、霜の厚みをおさえるという同様の効果を奏する。当然、パッケージエアコンやビルマルチエアコンなどの空調機でも同様の効果を奏するし、冷媒回路に、液溜やアキュムレータなどの冷媒を貯留する容器が挿入されていても全く問題ない。また、室内熱交換器または室外熱交換器がそれぞれ何台接続されていても、同様の効果を奏するのは言うまでもない。
ルームエアコン、パッケージエアコン、ビルマルチエアコンなどに適用する場合は、室外側に配置される筐体内に配置される熱交換器として、本発明に基づく熱交換器を用いると、同熱交換器が蒸発器として動作する外気温が低い冬期の暖房運転時に、着霜が遅延され省エネとなる。また除湿機の蒸発器に細孔を形成させると小型化が可能になる。
また、設備用パッケージエアコン、ユニットクーラ、ショーケースなどの室内の物品を冷却する機器に適用する場合は、室内側に配置される筐体内に配置される熱交換器として、本発明に基づく熱交換器を用いると、同熱交換器が蒸発器として動作し、着霜が遅延され省エネとなる。
なお、冷凍サイクル装置内を循環する冷媒は、どんなものでもよく、二酸化炭素、炭化水素、ヘリウムのような自然冷媒、HFC410A、HFC407Cなどの代替冷媒など塩素を含まない冷媒、もしくは既存の製品に使用されているR22、R134aなどのフロン系冷媒のいずれでもよい。
また、ヒートポンプ式の給湯機やヒートポンプチラーのように、凝縮器として、水と熱交換を行うものを用いてもよい。また、冷媒としてCO2を用いた場合は、高圧側は超臨界状態で使用することになり、冷媒はガスクーラ内で相変化を行わないが、蒸発器での状態さえ同じであれば、このような状態で使用してもよいのは明らかである。
また、圧縮機11は、レシプロ、ロータリー、スクロール、スクリューなどの各種タイプのいずれのものを用いてもよく、回転数可変可能のものでも、回転数固定のものでも構わない。
以上のように本実施の形態の冷凍サイクル装置は、蒸発器のフィンまたは熱交換器のほぼ全面に多数の細孔を設けることにより、蒸発器表面に空気中の水分が凝縮して生成された水滴が合体して大きな水滴になるのを起き難くし、凝固が起きる際の水滴を小さくし、薄くきれいな霜層を形成し、風路圧損を小さくして、着霜時の性能を向上し、省エネにできる。更に霜取りを行うインターバルを大幅に伸ばすことが出来、本来の装置運転とは無関係な無駄なエネルギー発生を抑えることが出来る。
図25は本発明の熱交換器フィンの表面の拡大図である。図25において、フィンは、表面に形成する細孔を設ける位置によって細孔径を異ならせるようにしたものである。熱交換器においては、一般的に、風上側に付く霜の量が多く、これにより空気の風路圧損が決まるため、風上側での霜の厚さを低くすることができれば、風路圧損を小さくすることができる。そこで、図25のように、例えば空気が流入する側の細孔の数を多くするまたは細孔の深さを深くし(図25の左側)、流出する側の細孔の数を少なくするまたは細孔の深さを浅くする(図25の右側)ようにすると、フィンの陽極酸化処理時間を短くすることができる。風上側では空気の絶対湿度が大きく、風下側では空気の絶対湿度が小さいため、このような構造にしても、フィン前面に陽極酸化処理を施した場合と、ほぼ同様の効果を奏することができ、安価に、風路圧損を小さくでき、省エネにすることができる。1枚のフィンにおける細孔の径や深さを変えるには処理時間などの変更が必要でありマスキング位置を変えた処理を複数回行う必要がある。なお、風下側では着霜量が少ないため、風上側のフィンのみ陽極酸化処理を施し、細孔をあけ、風下側のフインは無処理のままであっても、ほぼ同様の効果を奏する。
但し、冷媒回路の特性やフィンピッチ等の設計により風上側よりも風下側に霜がたくさん着きやすい構成の熱交換器では風下側の細孔の数を多くするまたは細孔の深さを深くし、流入する側の細孔の数を少なくするまたは細孔の深さを浅くするようにすると、熱交換器の処理時間を短くすることができる。
図26は、一体型のフィンにおいて、部分的に細孔を変化させる場合を示したが、陽極酸化では、フィンを丸ごと溶液の中に浸すため、この構造では部位毎に細孔の密度を調整するのに手間がかかる。そこで、図26のように、列毎にフィンが分かれている構造とすることにより、簡単に風上側と風下側とで細孔の密度を変えることが可能となる。また、図27のように、風上側のフィンのみ陽極酸化処理を行い、風下側のフィンは無処理のものを使用するようにするとさらに容易である。
以上のように本発明の冷凍サイクル装置は、空気の流れの風上側には表面のほぼ全面に一様に多数の細孔が設けられたフィンを用い、風下側には細孔が設けられていないフィンを用いる、または風上側に設置したフィンよりも細孔の数が少ないあるいは細孔の深さが浅いフィンを用いることにより、フィン全面を処理する場合にくらべて、安価に製造することができ、凝固が起きる際の水滴を小さくし、きれいな霜層を形成し、風路圧損を小さくして、着霜時の性能を向上し、省エネにできる。
次に霜取りを行う構造と方法について説明する。図28はヒータにて除霜を行う、例えばショーケースの構成図を示す。ショーケースの場合、熱源である室外機22に圧縮機21や室外熱交換器22を設け、食品を冷凍保存するショーケース本体である室内機の中に室内熱交換器25を配置している。室内熱交換器はフロンやHC冷媒などでは高温の熱を放出する凝縮器、あるいは超臨界状態となる二酸化炭素冷媒ではガスクーラーとなり、室内熱交換器が蒸発器となる。蒸発器25に霜が大量に付着すると冷却性能が低下して食品温度が上がるためショーケース内の温度を検出し設定された温度以上になると、圧縮機21を停止して圧縮機に近接させ、且つ、空気流入側に配置したヒーターに通電を行い、蒸発器25を加熱して霜を溶かして除去する霜取り運転を行う。なお、霜取りの検出は圧縮機の運転累積時間やショーケースの運転時間により行う場合もある。
図29、30は給湯装置の霜取り説明図であって、給湯装置では熱源である冷凍サイクルは、圧縮機21から吐出された高温冷媒がプレート熱交換器33にて負荷側に熱を供給し膨張手段24にて膨張し蒸発器22にて蒸発し室外空気に放熱される構成である。負荷側の水系統はポンプ32で水を循環しておりプレート熱交換器33の負荷である水は熱源側から加熱されてポンプ32で夜間などにタンク31に順次温水として貯留される。タンク31の温水は例えば風呂などに温水として供給される。蒸発器22に大量に霜が付着すると給湯装置の性能低下を引き起こすため、図29においては0℃以下では圧縮機を動かし0℃以上では圧縮機21を停止し蒸発器用送風機23を動かして通風してデフロスト運転を行う。一方図30の構成においては蒸発器22にて霜取りを行うデフロスト運転ではバイパス管34に設けたバイパス弁35を開き運転させている圧縮機からの高温冷媒を蒸発器22に流して伝熱管を加熱して霜を除去する。図29、図30の何れのデフロスト運転でも、送風機23を運転させて短時間で霜取りを行うが、ポンプ32を停止させて負荷側の水系統にて無駄なエネルギーを使用しないようにしている。なお、このデフロスト運転の間はタンク31からの給湯は貯留された温水にて行うことになる。
図28ー図30はショーケースや給湯装置の例で説明したが、冷蔵庫、エアコンなどほかの装置にも適用できる。また、上記以外、例えば四方弁を切り換えて高温冷媒を蒸発器であった熱交換器に流すなど、様様なデフロスト運転により霜を除く運転が可能である。これらの除霜運転は本来の装置の目的である冷蔵、冷凍、空調、給湯などには無用の運転であって、可能な限りエネルギーを使わずに短時間で終わらせたい。例えば給湯装置では水を高温に沸き上げている明け方に起こりやすいので、冷媒の温度や外気温度から霜の状態を検出し、短時間でデフロスト運転を行わなければならない。また冷蔵装置などでは同様に着霜量を冷却温度にて判断し、圧縮機の履歴時間や冷蔵装置の運転時間などによりあらかじめ設定してあるデフロストを行うインターバルに基づいて除霜運転を行うが、本発明のフィンなど蒸発器表面に微小な細孔を多数分布させることにより、空気中の水分を吸着させ、霜の発生や成長を遅らせる、あるいは、均一にして薄いきれいな状態の霜とするなどにより、装置運転中の性能、例えば蒸発器の熱伝達率、送風機圧損などの性能の低下を抑制し、設定するデフロスト運転のインターバルを長くすることを可能にし、例え温度などにより霜付着を検出したとしても、装置運転に支障をきたすようなデフロスト運転を急遽行う必要も無ければ長時間のデフロスト運転を行う必要がないなど、使用するエネルギーが少なくて済む装置が得られるものとなる。場合によってはデフロスト用のヒータを除くことも可能となる。
本発明の冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、膨張手段、蒸発器を配管にて接続し、配管の内部に冷媒を流通させて冷凍サイクルを構成し、前記蒸発器に空気を送出する送風手段を備え、前記蒸発器を構成するフィンの表面のほぼ全面に多数の細孔を設ける。また、本発明の冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、膨張手段、蒸発器を配管にて接続し、配管の内部に冷媒を流通させて冷凍サイクルを構成し、前記蒸発器に空気を送出する送風手段を備え、前記蒸発器を構成するフィンとして、空気の流れの風上側には表面のほぼ全面に多数の細孔が設けられたフィンを用い、風下側には細孔が設けられていないフィンを用いるので、使用エネルギーの少ない装置が得られる。
本発明の冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、膨張手段、蒸発器を配管にて接続し、配管の内部に冷媒を流通させて冷凍サイクルを構成し、前記蒸発器に空気を送出する送風手段を備え、前記蒸発器を構成するフィンとして、空気の流れの風上側には表面のほぼ全面に多数の細孔が設けられたフィンを用い、風下側には風上側に設置したフィンよりも細孔の数が少ないまたは細孔の深さが浅いフィンを用いる。また、本発明の冷凍サイクル装置は、前記蒸発器を構成する伝熱管の表面にも多数の細孔が設けられているので、使用エネルギーの少ない装置が得られる。
本発明の冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、膨張手段、蒸発器を配管にて接続し、配管の内部に冷媒を流通させて冷凍サイクルを構成し、前記蒸発器に空気を送出する送風手段を備え、前記蒸発器を構成する伝熱管の外表面のほぼ全面に多数の細孔を設けるので、水分吸着量をふやすことができる。
本発明の冷凍サイクル装置の前記細孔は、前記フィンを貫通しない径の小さい孔である。また、本発明の冷凍サイクル装置は、前記細孔は、その深さが10μm以上である。本発明の冷凍サイクル装置は、前記細孔は、前記フィンを貫通する径の小さい孔である。本発明の冷凍サイクル装置は、前記細孔は、細孔間の距離が0.1mm以下に配置されている。本発明の冷凍サイクル装置は、前記細孔は、細孔の等価直径または最短辺の長さが0.1mm以下であるのて、本来の性能に関係のない孔にて空気中の水分を蓄えられる。
本発明の冷凍サイクル装置の細孔は、フィンに陽極酸化処理を施すことにより生成されたものである。本発明の冷凍サイクル装置は、室内側に設置される筐体内に、前記細孔を設けたフィンを用いた蒸発器を配置するので、簡単に製造できる。
本発明の冷凍サイクル装置は、前記冷凍サイクル中に、前記蒸発器として動作する熱交換器と、前記凝縮器として動作する熱交換器とを切り換える四方弁などの流路切り換え手段を備え、室内側に設置される筐体内に、前記細孔を設けたフィンを用いた熱交換器を配置するのて、効率的な除霜が可能になる。
本発明の冷凍サイクル装置は、室外側に設置される筐体内に、前記細孔を設けたフィンを用いた蒸発器および水と熱交換を行う凝縮器を配置し、前記凝縮器へは水を循環するポンプを備え、除霜時にポンプを停止させるので無駄なエネルギーを使用しない。
本発明の冷凍サイクル装置は、前記室内側に設置される熱交換器が複数接続される。 また、本発明の冷凍サイクル装置は、室外側に設置される熱交換器が複数接続されるのて、エネルギー節約が有効である。
さらにこの発明は、熱交換器のフィンの表面が親水性表面や撥水性表面などに経年的に変化しても、液摘が開口稜線などに付着して着霜遅延効果を維持し、同様の省エネ効果を発揮し続けることができる装置である。