JP5396130B2 - 制振材料 - Google Patents
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Description
本発明の制振材料においては、(メタ)アクリルポリマー、板状鉱物及びカーボン繊維を含有する。板状鉱物は板状で接触面積が大きいことから制振材料に外力が作用したとき、十分な擦れ合いにより熱変換量が大きくなり、損失正接(tanδ)を高めることができると共に、板状鉱物は耐熱性に優れていることから高いtanδを示す温度範囲の上限を高温側へ移行させることができる。また、カーボン繊維はほぼ円柱状をなし、粒状に比べて接触面積が大きいことから、十分な接触により熱変換を行うことができ、損失正接(tanδ)を高めることができる。
〔制振材料〕
本実施形態の制振材料は、(メタ)アクリルポリマー、板状鉱物及びカーボン繊維を含有する。この制振材料には、制振性を高めるために減衰性付与剤を含むことが望ましい。
この損失正接(tanδ)の値が大きいほど、高い減衰性能すなわち優れた制振性を得ることができる。従って、tanδを高くして制振性を向上させるためには、損失弾性率(E”)の変化を貯蔵弾性率(E’)の変化より大きくすることが必要である。さらに、優れた制振性を示す温度領域は、例えばtanδ=0.8以上となる温度範囲で評価される。
<(メタ)アクリルポリマー>
前記(メタ)アクリルポリマーは制振材料のマトリックスポリマーとなるものであり、粘弾性を有するポリマーであって、制振性を発揮できる温度領域を常温に近づけることが容易なポリマーである。該(メタ)アクリルポリマーは、アクリル系モノマー又はメタクリル系モノマー〔本発明ではアクリルとメタクリルを(メタ)アクリルと総称する。〕のホモポリマー又は(メタ)アクリル系モノマーを主成分とし、その他のモノマーとのコポリマーである。アクリル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられ、メタクリル系モノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。その他のモノマーとしては、スチレン、エチレン、酢酸ビニル等のモノマーが挙げられる。
<板状鉱物>
板状鉱物(層状鉱物)は、板状で接触面積が大きいが故に制振材料に外力が作用したとき、十分な接触により熱変換量が大きくなり、前記損失弾性率(E”)を高め、制振性を向上させる機能を果たす成分である。また、板状鉱物は耐熱性が高いことから、高いtanδを示す温度範囲の上限を高温側へ移行させることができる。この板状鉱物としては、雲母(マイカ)、タルク、グラファイト(黒鉛)等が用いられるが、接触面積が大きく、制振性を向上させる効果が高い点から雲母が好ましい。
<カーボン繊維>
カーボン繊維は、ほぼ円柱状の形状を有し、粒状に比べて接触面積が大きく、十分な接触により熱変換ができ、損失弾性率(E”)を高め、制振性を向上させる成分である。このカーボン繊維としては、弾性率が200〜1000GPaであることが好ましく、800〜950GPaであることがさらに好ましい。弾性率が200GPaを下回る場合には、カーボン繊維の弾性が不足し、損失正接(tanδ)を十分に高めることができない。その一方、1000GPaを上回る場合には、カーボン繊維の弾性が高くなり過ぎ、損失正接(tanδ)のピーク値は高くなるが、高いtanδが得られる温度領域が狭くなって好ましくない。
<減衰性付与剤>
減衰性付与剤は、制振材料の制振性を高める物質であり、具体的にはベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物のほか、正リン酸エステル系化合物、芳香族第二級アミン系化合物等が挙げられる。
<その他の成分>
制振材料には、前記(メタ)アクリルポリマー、板状鉱物及びカーボン繊維以外に、その他の成分を常法に従って配合することができる。その他の成分としては、難燃剤、補強材、増量剤、潤滑剤、着色剤、抗菌剤、腐食防止剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤等が挙げられる。
<制振材料の用途>
制振材料は、振動エネルギーや衝撃エネルギーの抑制が要求される分野において利用される。そのような制振材料の適用分野としては、例えば自動車、建材、家電機器、産業機械等が挙げられる。
〔実施形態により発揮される作用及び効果のまとめ〕
・ 実施形態における制振材料においては、(メタ)アクリルポリマー、板状鉱物及びカーボン繊維を含有する。板状鉱物は板状をなし、カーボン繊維はほぼ円柱状をなしていることから、制振材料が振動、衝撃等の外力を受けたとき十分な擦れ合いが生じ、その擦れ合いは粒状や粉状に比べて大きい。この場合、板状鉱物は板状で接触面積が大きいことから、十分な擦れ合いにより熱変換量が大きくなり、tanδを高めることができると共に、板状鉱物は耐熱性に優れていることから、高いtanδを示す温度範囲の特に上限を高温側へ移行させることができる。また、カーボン繊維はほぼ円柱状をなし、粒状に比べて接触面積が大きいことから、十分な接触により熱変換を行うことができ、tanδを高めることができる。これらの板状鉱物とカーボン繊維とは相乗的に作用する。
・ カーボン繊維は、弾性率が200〜1000GPaであることにより、tanδのピーク値を高め、そのピーク値の高い温度領域を一層拡張することができる。
・ 板状鉱物は雲母であることにより、板状鉱物としての機能を十分に果たすことができる。
まず、制振材料を調製するための材料及び測定方法について説明する。
〔(メタ)アクリルエマルジョン〕
(メタ)アクリル系モノマーとしてメタクリル酸メチルを乳化重合して得られたエマルジョン〔サイデン化学(株)製、サイビノール X−204−936E1(固形分55質量%)〕。
(雲母)
白雲母1:アスペクト比80、平均粒子径47μm。
(カーボン繊維)
パイロフィル:三菱レイヨン(株)製のカーボン繊維、弾性率235GPa、繊維長100μm、繊維径7μm。
グラノックスXN−100−15M:日本グラファイトファイバー(株)製のカーボン繊維、弾性率900GPa、繊維長150μm、繊維径10μm。
(炭酸カルシウム)
炭酸カルシウム:平均粒子径0.9μm。
(減衰性付与剤)
CBS:N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド。
(動的粘弾性の測定)
制振材料をシート状に成形することによって厚さ1mmのシート材を得た。そのシート材を長さ35mm、幅3mmの寸法に切断し、動的粘弾性測定用の試験片とした。動的粘弾性測定装置(RSA−II、レオメトリック社製)を用いて試験片を加振しながら連続的に昇温した際の損失弾性率(E”)を測定した。測定条件は、周波数10Hz、測定温度範囲−40℃〜+90℃、昇温速度5℃/分とした。動的粘弾性の測定結果から温度と貯蔵弾性率(E’)との関係が得られ、損失弾性率(E”)を算出した。そして、貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比として、損失正接(tanδ)を求めた。
<実施例1>
以下の手順に従って制振材料を調製した。
<実施例2及び3>
実施例1において、カーボン繊維を実施例2ではHTA CNF/O160 OHに変更し、実施例3ではグラノックスXN−100−15Mに変更した以外は、実施例1と同様にして制振材料のシートを調製し、試験片を作製した。その試験片について、実施例1と同様にtanδのピーク値及びピーク温度を読み取り、さらにtanδ=0.8以上となる温度範囲を読み取った。それらの結果を表1に示した。
<比較例1>
実施例1において、カーボン繊維を炭酸カルシウムに変更した以外は、実施例1と同様にして制振材料のシートを調製し、試験片を作製した。その試験片について、実施例1と同様にtanδのピーク値及びピーク温度を読み取り、さらにtanδ=0.8以上となる温度範囲を読み取った。それらの結果を表1に示した。
<実施例4>
実施例3において、減衰性付与剤(CBS)を省略した以外は、実施例3と同様にして制振材料のシートを調製し、試験片を作製した。その試験片について、実施例3と同様にtanδのピーク値及びピーク温度を読み取り、さらにtanδ=0.8以上となる温度範囲を読み取った。それらの結果を表1に示した。
<比較例2>
実施例4において、カーボン繊維を炭酸カルシウムに変更した以外は、実施例4と同様にして制振材料のシートを調製し、試験片を作製した。その試験片について、実施例4と同様にtanδのピーク値及びピーク温度を読み取り、さらにtanδ=0.8以上となる温度範囲を読み取った。それらの結果を表1に示した。
・ カーボン繊維として、弾性率の異なるものを複数組合せて使用し、tanδを高めて制振性を向上させるように構成することもできる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想を以下に記載する。
Claims (2)
- (メタ)アクリルポリマー、板状鉱物としての雲母及びカーボン繊維を含有し、
前記カーボン繊維として、弾性率が200〜1000GPaであるとともに、繊維長が50〜200μm及び繊維径が5〜15μmのカーボン繊維を配合してなり、
前記(メタ)アクリルポリマーの含有量は、10〜50質量%であり、
前記雲母の含有量は、30〜70質量%であり、
前記カーボン繊維の含有量は、10〜20質量%であることを特徴とする制振材料。 - さらに、減衰性付与剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の制振材料。
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