JP5388146B2 - 溝形断面材のロール成形方法 - Google Patents
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通常ロール成形プロセスでは、素材が噛み込まれるロールギャップが素材の幅方向の位置にかかわらず素材の厚みとほぼ等しく設定され、曲げコーナー内側に接触するロールのコーナー半径が素材の板厚に対して適正な大きさに、例えば素材厚みの1ないし2倍程度に設定された成形ロールが使用されている。厚みが大きく異なる素材を成形するに当たっては、厚みの差が少ない場合にはウェブとフランジ部におけるロールギャップが素材の厚みとほぼ等しくなるようにロールの軸方向の取付け位置を調整してウェブとフランジ部におけるロールギャップが素材の厚みとほぼ等しくなるようにロール位置を調整するか、あるいは厚みの差が大きい場合には、コーナー部内側に当接するロールを素材の厚みに対して適正な大きさのコーナー半径が設定されたロールに交換し、ウェブとフランジ部におけるロールギャップが素材の厚みとほぼ等しくなるようにロールを取付けて成形している。
また、特許文献3では、上下ロールを片側支持方式とし、さらに上ロールのチョックが垂直方向に対して45度の角度に沿って上下することにより、ロールギャップの大きさに関わらずウェブとフランジのロール隙間が常に等しくなるような成形スタンドが開示されている。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、剛性が高く簡素な構造の汎用のロール成形スタンドを使用しながらも、成形ロールを交換することなく、例えば構造材等に使用される厚さ2.3〜6mm程度の範囲の溝形断面材を成形する方法を提供することを目的とする。
本発明では、成形しようとする対象の溝形断面材の内、最も厚いものに合わせてロールギャップとコーナーRの形状が設定された成形ロールを全ての厚みの素材に適用する。成形スタンドは剛性が高く汎用性のある上下に一対のロール軸が並行に配置され、その両端をチョックならびにロールスタンドで支持する方式のものを使用する。
本成形ロールでは、形鋼のウェブ部のロールギャップを最も厚い素材の厚みに合わせた時、その両側のフランジ部のロールギャップもほぼ同様なロールギャップに設定される。例えばJIS
G3350に記載されているように板厚中心で板厚の1.5倍程度となるように、曲げコーナー部の内側を押圧する上ロールには板厚と同程度のコーナーRが設けられている。
このようなロールを用いて最も厚い素材を溝形断面材に成形した場合、断面の概略形状及びコーナー部とも所定の形状に成形される。
コーナー矯正を行った後フランジ角度を最終の製品角度まで曲げて、必要に応じて残留応力除去、反り・曲がり修正を行った後、素材がコイルの場合は所定長さに切断して溝形断面材を得る。80度前後の角度でコーナー矯正を実施する場合は、夫々の厚みに対する矯正ロールスタンドを成形方向に沿って並べておいて、使用するロールのみロールギャップを素材の厚みに設定して、その他の厚み用のロールについては成形する素材よりも広いロールギャップになるように解放しておくことで、成形する素材の厚みが変わってもロール交換を行う必要がなくなる。
なお、後段の成形スタンドで90度よりも過度にオーバーベンドに成形する際には、上ロールにフランジ部が入り込むスリットが設けてあり、下ロールはウェブ部の下面を支えるのみのフラットな構造となった成形ロールが用いられるために、上記形態と若干異なる。すなわち、オーバーベンドで曲げ角度が90度以上となる場合には、フランジの外側にフランジ部が入り込むスリットが設けられた上ロールが接触し、次のスタンドでオーバーベンドを戻す際にはフランジの内側が上ロールに接触する。粗成形では一方的にフランジを外側のロールで起こしていくのでフランジのほぼ全面が下ロールに接触するが、オーバーベンド工程では一つのロールで曲げ角度を微調整するのでロールに接触するのはフランジの先端付近のみになる場合が多くなる。
なお、フランジ長さについては従来法においても素材幅の変更で調整可能であり、以上の手段を組み合わせて使用することにより、1台のロール成形機でロールを交換及びロールの軸方向の取付け位置の調整をすることなく厚みとウェブ幅とフランジ長さが異なる溝形断面材を製造することが可能となる。
表1に示すように板厚4.5mm用に設計された6段のフランジ立て用ロールと、板厚2.3mm用に設計されたフランジ成形兼コーナー矯正用ロールと、板厚4.5mm用に設計されたフランジ立てロール及び最終段を含む5段の板厚4.5mm用に設計されたオーバーベンドロールを、両端を支持された2本の上下軸よりなる全14段の下軸駆動式ロール成形スタンドに取付けた溝形断面材ロール成形装置を用いた。なお、表1中の曲げ角度は、図6に示す通り、ウェブ部の延長線とフランジ部とで形成される角度の設計値を指している。
夫々のロールのウェブ部のロールギャップを板厚に相当する約2.3mmに設定して呼称板厚2.3mm、幅290mmの鋼帯をロール成形し、ウェブ幅200mm×フランジ長さ50mmの溝形断面材を得た。
次いで、前記の成形装置のロールギャップを全て約4.5mmに設定し、さらに板厚2.3mm用に設計されたNo.7段の80度成形ロールのみフランジ部のロールギャップが4.5mmよりも大きくなるように解放して、呼称板厚4.5mm、幅283mmの鋼帯をロール成形し、ウェブ幅200mm×フランジ長さ50mmの溝形断面材を得た。得られた溝形断面材は寸法精度、表面品質等に関して何ら問題のないものであった。
表1に示したロールの内、成形角度80度までの8組のロールについて、夫々の成形ロールをワークサイドとドライブサイドに2分して200mmのスタンド間隔を隔てて連続する2段の成形スタンドに形鋼のコーナー部の幅方向位置の関係を維持した状態で取付けた表2に示すようなロールが取付けられた全22段のロール成形装置を用いて、実施例1と同様に溝形断面材の成形を行い、板厚2.3mm及び4.5mm×ウェブ幅200mm×フランジ長さ50mmの2種類の溝形断面材を得た。
次いで、ワークサイドの成形ロールが取付けられたNo.2〜16までの偶数段の成形スタンドを幅方向ドライブ側に50mm移動して、さらに各ロールのウェブ部のギャップを成形する素材の板厚に調整し、No.17〜22の6段の成形スタンドについては円周方向の一部に軸の外径より広い切り欠きのある馬蹄形のスペーサーの位置を入れ替えることによりワークサイドの上下のロールを50mmドライブ側に移動した状態で、板厚2.3mm×板幅240mm、及び板厚4.5mm×板幅233mmの鋼帯をロール成形し、板厚2.3mm及び4.5mm×ウェブ幅150mm×フランジ長さ50mmの2種類の溝形断面材を得た。得られた溝形断面材はいずれも寸法精度、表面品質等に関して問題のない品質を有するものであった。
Claims (2)
- 両端が支持された上下軸に成形ロールを取付けたロール成形スタンドを多段配置したロール成形装置によって平坦なウェブの両側にフランジを持つ所定の範囲の厚みの溝形断面材を成形する方法であって、前記ロール成形装置によって成形する溝形断面材の中で最も厚みの大きい溝形断面材が成形可能なように設計されたロールを使用して、成形する溝形断面材の中で最も厚みの大きい溝形断面材よりも厚みの薄い溝形断面材を成形する際、溝形断面材を概略最終形状にまで成形する粗成形領域の後半から、引続いて行われる残留応力除去ならびに寸法精度確保のための仕上げ成形領域の間に、ウェブ及びフランジ部のロール隙間とウェブとフランジに挟まれたコーナー部内側の半径が成形する溝形断面材の厚みに応じて設計された成形ロールを用いてコーナー部の寸法を矯正する工程を挟むことを特徴とする溝形断面材のロール成形方法。
- 両端が支持された上下軸に取付けられた、成形する溝形断面材の中で最も厚みの大きい溝形断面材が成形可能なように設計されたロールの上下軸間の距離を調整することによって、成形ロールの形鋼ウェブ部に相当する位置のギャップを成形する形鋼の厚みに合わせる請求項1に記載の溝形断面材のロール成形方法。
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