JP5327610B2 - ピストンリング用異形線材の成形装置 - Google Patents
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Description
ピストンリングには、断面形状が疑似H形のオイルリング、断面形状が左右で異なるサイドレール、スペーサーおよび圧力リングがあり、それぞれ異形断面を有する。このピストンリングのうち、オイルリングには、断面が疑似H形の複雑な異形断面を有するものが使用され、素材となるピストンリング用線材に対しては、厳しい寸法精度が要求される。
この提案は、従来3〜5回に別けて成形し、その中間に歪取り焼なまししていた工程を、1〜2回で成形し中間の歪取り焼なましを省略もしくは削減することにより、大幅な能率向上とコスト低減ができるという点で優れたものである。
また、圧延中のロール磨耗や熱膨張等により、成形後の線材において曲がりが発生するという問題があった。これらの問題は、異形線材の成形性および次工程での加工に大きな影響を及ぼす。
本発明の目的は、異形線材の成形前後の線材に生じる曲がりの問題を解決し、成形性に優れた高い寸法精度の異形線材の成形装置を提供することである。
上述したように、線材がドラム等に巻き付けられていると、線材には巻き癖等の変形が生じている場合が多い。線材に曲がりやねじれ等の変形が残存した線材を、4方ロールタークスヘッドを使用して異形線材に成形すると、ロール孔型の面に対して垂直に線材が進入することができなくなる。その結果、ロール孔型への充填状態が不均一となり、所定の形状に成形されなくなったり、曲がりを増大させることとなる。
所定の異形の断面形状を得るためには、圧延の際にロール孔型の面に対して線材を垂直に噛み込ませることが重要である。したがって、本発明では、線材をロール孔型に噛み込ませる前に線材の曲がりを矯正するために、成形ユニットの前段にレベラーを配置する。
また、左右で異なるロール孔型を用いて異形線材を成形したときには、ロールによって線材に与えられる左右各辺での歪に差異が生じ、左右での線材の伸びが異なることがあるため、線材に曲がりが発生する場合がある。また、連続で異形線材の成形を行なうと、4方ロールタークスヘッドに用いるロールの孔型形状によっては、各ロールによって異形線材に与えられる変形量が異なるため、各ロールに与えられる線材からの加工熱量が異なる場合がある。これにより各ロールにおける熱膨張量がそれぞれで異なるため、各ロールの直径に差が生じる。このような場合には、各ロールにおける圧下量が異なることとなり、その結果、線材の各辺に与えられる歪量が異なるため、曲がりが発生する。したがって、本発明では、成形が完了した異形線材に生じた曲がりを矯正するために、成形ユニットの後段にレベラーを配置する。
ワイヤーストレッチャー、テンションレベラーは、矯正時に過大な張力を負荷するため、線材のロール孔型への充填不足および線材の伸びによる寸法変動(縮小)の発生を抑制するための張力調整が必要となる。そこで、本発明の異形線材の成形装置では、比較的線材に張力を負荷しなくとも矯正が可能なローラーレベラー、テンションアニーリング、ロータリストレーナ等を使用することが好ましい。
また、成形ユニットの後段では、線材が異形形状に加工されており、圧延によって得られた高精度な寸法精度を維持する必要があるため、冷間における矯正であるローラーレベラーを使用することが好ましい。中でもローラーレベラーは、比較的構造が簡単であるため、メンテナンスが容易であり、省スペース化を図る上でも優れており、成形装置にインラインで容易に配置することができるため、最も好ましい。ローラーレベラーとは、上下方向もしくは横方向に千鳥状に配置された非駆動の円筒形のロールを複数段有し、異形線材に発生した曲がりを矯正する装置である。
このローラーレベラーに用いるローラーは、外周面が平面のもの、または凹状に孔型加工されたものを使用することができる。これは、コバ面(幅方向の両側面)がR形状の線材を横方向からローラーで圧下して矯正する場合、または平面(厚さ方向の上下面)がテーパ状の線材を上下方向からローラーで圧下して矯正する場合に、線材がローラーから脱線することを抑制しつつ矯正できるためである。
異形線材に成形される前の線材は、リールまたはドラム等に巻き付けられているため、巻出機から巻出された線材には巻き癖等の変形(平曲がり、横曲がり)を有していることが多い。この巻き癖等により発生した平曲がりを解消するためには、前段に備えた上下方向のローラーレベラーで平曲がりの矯正を行なうことで解消できる。また、横曲がりの解消は、前段に備えた横方向のローラーレベラーによって横曲がりの矯正を行なうことで解消できる。
また、異形断面に成形後の異形線材においては、線材に生じた曲がり状態に応じて、後段に備えた上下方向のローラーレベラー、および横方向のローラーレベラーを組み合わせ、またはそれぞれ単体で配置することにより、成形後に生じた曲がりを矯正して、高い寸法精度の異形線材を得ることができる。また、たとえば、ピストンリング用線材のうちサイドレール用線材やスペーサー用線材のように、成形後の線材の厚さ寸法に対する幅寸法の割合が大きい線材の横曲がりの矯正には、上下方向のローラーレベラーを用いて線材を圧下する矯正が好ましい。
巻出機1と前段ローラーレベラー(上下方向)2の間に配置したアキュームダンサーロール10および動力駆動の4方ロールタークスヘッド5と仕上げユニット6との間に配置したダンサーロール11は、それぞれその間の張力を一定に保つように、直前に配置した巻出機1、動力駆動の4方ロールタークスヘッド5の回転数を制御する。
また、図1では、前段ローラーレベラー(上下方向)2、前段ローラーレベラー(横方向)3の順で配置しているが、この配置の順序は前後してもよい。また、前段ローラーレベラー(上下方向)2、前段ローラーレベラー(横方向)3をそれぞれ1段しか配置していないが、2以上の複数段を配置してもよい。
また、後段ローラーレベラー(上下方向)7、後段ローラーレベラー(横方向)8の順で配置しているが、この配置の順序は前後してもよい。また、後段ローラーレベラー(上下方向)7、後段ローラーレベラー(横方向)8をそれぞれ1段しか配置していないが、2以上の複数段を配置してもよい。
成形ユニットに非駆動の4方ロールタークスヘッド4を用いることにより、圧下率を小さくすることができ、その結果、圧延荷重も小さくなる。これにより、線材からの4方ロールタークスヘッドに対する反力も小さくなるため、4方ロールタークスヘッドの剛性が低い領域で圧延することができる。4方ロールタークスヘッドの剛性が低い領域で圧延することで、ロール振れによる寸法変動を抑制できるため、高い寸法精度の異形線材を成形することができる。
また、成形ユニットに動力駆動の4方ロールタークスヘッド5を用いることにより、異形線材に巻取機側から加わる前方張力を低減することができる。これにより、非駆動の4方ロールタークスヘッド4に比べて圧下率を大きくしても前方張力が増加しないため、線材の伸びによる寸法変動(縮小)および破断を抑制することができ、ロール孔型への高い充填率を確保することができる。
また、成形ユニットをタンデムに複数ユニット配列することにより、ロールの孔型形状を徐々に製品形状に近付けるようなパススケジュールで線材を成形することができ、線材のメタルフローを阻害せずに線材の成形が行なえる。これにより、高い寸法精度の異形線材を成形することができる上、圧延回数および中間焼なましを省略することができる。
また、仕上げユニット6に非駆動の4方ロールタークスヘッドを用いることにより、圧下率を小さくすることができ、圧延荷重も小さくなる。これにより、線材からの4方ロールタークスヘッドに対する反力も小さくなるため、4方ロールタークスヘッドの剛性が低い領域で圧延することができる。4方ロールタークスヘッドの剛性が低い領域で圧延することにより、ロール振れによる寸法変動を抑制できるため、さらに高い寸法精度の異形線材を成形することができる。
このとき、線材の後段ローラーレベラー(上下方向)7の通過速度は30m/min、ローラーレベラーの入側での線材の後方張力は130Nとした。また、得られた異形線材の曲がり量の測定は、図3に示すような、線材1mあたりの幅方向の横曲がり量を測定した。
今回の成形実験では、素材の平曲がり量および横曲がり量が少なかったため、図1に示す成形ユニットの前段ローラーレベラー(上下方向)2、前段ローラーレベラー(横方向)3は使用しなかった。また、圧延後の異形線材には、平曲がりの発生量が少なかったため、後段ローラーレベラー(横方向)8は使用しなかった。
一方、本発明の異形線材の成形装置のローラーレベラー(上下方向)7を使用して成形した異形線材の横曲がり量は、いずれも1m当たり10mm以下に矯正されており、本発明の有効性が確認できた。
Claims (1)
- 非駆動の4方ロールタークスヘッドと動力駆動の4方ロールタークスヘッドをタンデムに配置する成形ユニットがタンデムに複数ユニット配列されるピストンリング用異形線材の成形装置であって、巻出機の後段にアキュームダンサーロールが配置され、該アキュームダンサーロールの後段には非駆動の前段ローラーレベラーと前記成形ユニットが順に配置され、前記成形ユニットの後段には、単数または複数の非駆動の4方ロールタークスヘッドを有する仕上げユニットが配置され、該仕上げユニットの後段には非駆動の後段ローラーレベラーが配置され、前記仕上げユニットと前記後段ローラーレベラーとを通過する線材はキャプスタンを経由して巻取機により巻き取られることを特徴とするピストンリング用異形線材の成形装置。
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