JP5377155B2 - 条鋼線材の圧延方法 - Google Patents
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Description
このように角断面の鋼材を丸断面にする際には、まず、オーバルカリバーにより角断面の鋼材をオーバル形状にするが、鋼材を圧下する際には、鋼材のコーナ部分を始めに圧下している。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、角状断面の鋼材を丸状断面する際に鋼材の表面に発生する表面疵を抑制しながら簡単に圧延を行うことができる条鋼線材の圧延方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、条鋼線材用圧延機を用いて角状断面の鋼材を丸状断面することで条鋼線材を製造する条鋼線材の圧延方法において、前記角状断面の鋼材を丸状断面にするために当該角状断面の鋼材を圧延して変形させるに際し、当該角状断面の鋼材の面部より圧下して変形させる点にある。
本発明における課題解決のための他の技術的手段は、角状断面の鋼材を丸状断面にする過程で用いられる条鋼線材用圧延機の圧延ロールにおいて、角状断面の鋼材を丸状断面にするために当該角状断面の鋼材を圧延して変形させるための圧延ロールは、前記角状断面の鋼材における面部より圧下するカリバーを備えている点にある。
図1は、条鋼線材の圧延ラインの概要を示している。
圧延ライン1は、加熱炉2から移送された鋼材(素材)3を条鋼線材に圧延するものであって、粗圧延機4、中間圧延機5、仕上げ圧延機(ブロックミル)6、ピンチロール7、巻き取り機(レイングヘッド)8とを備えている。
各圧延機5、6、7は、複数の圧延スタンド9を備えている。各圧延スタンド9は圧延ロール10を備えている。圧延ロール10は駆動モータ(図示略)により回転駆動して、鋼材を所定の大きさに圧延する。
なお、図1に示した鋼材の断面は、出側における鋼材の断面を示している。
鋼材3を条鋼線材にするには、まず、ビレット等の鋼材3を加熱炉2にて加熱し、その後、加熱した鋼材3を粗圧延機4に搬送する。そして、粗圧延機4の圧延ロール10にて鋼材3を所定の大きさに分塊圧延する。
このように、中間圧延機5では、始め角状断面となっていた鋼材3dを、次第に丸状断面になるように圧延を行っている。そして、中間圧延機5にて丸状断面となった鋼材3は、仕上げ圧延機6にて所定の径となるようにタンディム圧延されて、巻き取り機8にて巻き取られるようになっている。
以下、角状断面の鋼材を丸状断面するための工程において、角状断面の鋼材を一番最初に変形させる点(例えば、繭形)に着目して、詳しく説明する。
図2(a)に示すように、従来の方法では、まず、第1圧延スタンドにて、圧延前形状(入側形状)が角状断面となっている鋼材3を、断面がオーバル形状(圧延後形状、出側形状)となるようにカリバーによって圧延している。ここで、オーバル形状とは、圧延後の鋼材3の上下面において、その上下面の左右方向中央部(幅方向中央部)が左右方向のコーナ部(幅方向のコーナ部)よりも厚み方向に突出しているものを言う(後述するように、圧下部の高さ、δ<0)。
詳しく説明すると、第1圧延スタンド9aの圧延後の鋼材3(3e)において、鋼材3のコーナ部付近に形成された2つの頂部13、13と鋼材3の中心側との差δ(δ≧0)が形成されるように、まず、第1圧延スタンド9aのカリバーにて、角状断面の鋼材3dの面部12(コーナ部11ではなく平坦となっている部分E)を圧下して変形させている。このようにすることにより、角状断面の鋼材3が繭形状に変形する過程において、鋼材3のコーナ部がカリバーによって移動不能に規制され難くなり、コーナ部付近の溶鋼が移動しやすくなると共に、圧延時の荷重がコーナ部に集中してしまうことが防止される。その結果、角状断面が変形することに起因して発生していた表面疵を低減することができる。
上述したように、第1圧延スタンド9aの圧延ロール10(上下の圧延ロール10)は、角状断面の鋼材3を丸状断面にするために、角状断面の鋼材3を始めに圧延して変形させるためものである。
このカリバー15は、圧延後の出側形状を見たときに、鋼材3のコーナ部付近に形成された2つの頂部と鋼材3の中心側との差δ(δ≧0)を形成させるための、圧下部(例えば、凸部)16を備えている。この圧下部16は、鋼材3の幅方向中心部を所定幅にて圧下するためのものであって、幅方向中心部側が突出する頂部16aと、当該頂部16aの幅方向両端側に位置する谷部16bとを備えたものとなっている。頂部16aの内面(圧下面)の形状は円形状又は円弧状となっている。当該頂部16aの圧下面の中心は、圧延ロール10の径内側に設定されている。
式(1)〜式(4)を満たすカリバー15の形状は、圧延ロール10に導入する前(第1圧延スタンド9aの圧延ロール10に導入する前)における鋼材3dの断面形状(入側鋼材の断面形状)の各種寸法と、圧延ロール10に導入した後における鋼材3eの断面形状(出側鋼材の断面形状)の各種寸法から設定されている。
式(3)のカリバー15の幅KHは、圧延ロール10の外周面(カリバー15が形成されていない外周面10a)から圧下部16の谷部16bまでの長さである。式(3)のSはロール隙間、即ち、カリバー15が形成されていない圧延ロール10aの外周面同士の距離である。式(3)の入側鋼材の高さTHは、角状断面となっている鋼材3dの高さ(上下面間の距離)である。式(3)に示すように、上下の圧延ロール10を接近させて鋼材3の圧延を行う状況下を考えたとき、上下の圧延ロール10間の中心Cからカリバー15の最も凹んでいる部分(谷部16b)までの距離(KH+S/2)が、鋼材3d(入側鋼材)の高さTHに対して30%(0.3)以上50%(0.5)以下に設定されている。
図5は、カリバーの形状を決定するためのカリバー設計方法の手順を示している。
図5に示すように、カリバー15の形状を設定するには、当該カリバー15によって圧延する入側鋼材(鋼材3d)の高さTH及び幅TWの範囲を設定する(S1)。次に、カリバー15を有する上下の圧延ロール10における圧下率を設定する(S2)。通常は、圧下率は0〜40%に設定される。
さて、鋼材3を圧延したときの圧縮ひずみと充満率との関係を操業実績又はシミュレーション(3種類の素材)からまとめると、図7に示すことができる。ここで、鋼材3の圧縮ひずみは−0.35以下にすることが過去の操業実績により求められ、SW/KW2は0.96以下であることが必要がある。
なお、カリバー15設計方法において、圧下率αの変化させたときのカリバー15の幅KW2、入側鋼材の幅TWの関係をまとめると、式(1)のようになった。入側鋼材の高さTH、上下の圧延ロール10間の隙間S、カリバー15の幅KW2の関係をまとめると式(3)のようになった。また、入側鋼材3の高さTHとδとの関係を操業実績又はシミュレーションにより求めると式(4)に示すものとなった。
比較例1及び比較例2では、カリバー15の形状が式(1)を満たしていなかったので、噛みだしが発生したり、圧延途中にてねじれが発生して操業が不安定となった(判定「×」)。即ち、比較例1に示すように、カリバー15の幅KW2が式(1)の下限値よりも小さくなると、噛みだしが発生し、比較例2に示すように、カリバー15の幅KW2が上限値よりも大きくなると操業が不安定となった。さらに、カリバー15の幅KW2の検証を進めたところ、1.14TW以上1.56TW以下であると好ましいことが分かった(1.14TW≦KW2≦1.56TW)。
比較例5及び比較例6では、カリバー15の形状が式(3)を満たしていなかったので、噛みだしが発生したり、圧延途中にてねじれが発生して操業が不安定となった(判定「×」)。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2 加熱炉
3 鋼材(素材)
3a、3b、3c、3d 角断面状の鋼材
3e 繭形状の鋼材
4 粗圧延機
5 中間圧延機
6 仕上げ圧延機(ブロックミル)
7 ピンチロール
8 巻き取り機(レイングヘッド)
9 圧延スタンド
12 面部
15 カリバー
16 圧下部
16a 頂部
16b 谷部
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