JP6547706B2 - 直線形鋼矢板の曲がり矯正方法及び曲がり矯正装置 - Google Patents
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さらに、曲がりの発生を抑制する直線形の広幅爪付鋼矢板の製造方法として、特許文献1には、ガス切断で半裁されて曲がりが発生した直線形鋼矢板を用いた溶接組立て方法が開示されている。特許文献1の方法によれば、厚鋼板と半裁された直線形鋼矢板とを、上下左右から精度よく押圧するとともに、牽引移動させ、スポット溶接することで、歪みを精度よく矯正しつつ、迅速且つ作業能率よく広幅爪付鋼矢板を組み立てることができる。
そこで、本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、直線形鋼矢板の左右方向の曲がりを効率的に矯正することができる、直線形鋼矢板の曲がり矯正方法及び曲がり矯正装置を提供することを目的としている。
<矯正方法の検討>
本発明に先立ち、本発明者らは、圧延で生じた直線形鋼矢板の左右方向の曲がりに対して、3点曲げ矯正の方法で矯正ができないか、種々の検討を行った。
はじめに、本発明者らが行った第1の検討について説明する。第1の検討では、上述のような曲がりが生じた直線形鋼矢板Sについて、図10に示す曲がり矯正装置7を用いて、単純な3点曲げによる曲がりの矯正を検討した。
曲がり矯正装置7は、図10に示すように、一対の受け金型71,72と、押し金型73とを備える。一対の受け金型71,72は、直線形鋼矢板Sの曲がりの内側に、直線形鋼矢板Sの長手方向に離間して配される。押し金型73は、直線形鋼矢板Sの曲がりの外側、且つ直線形鋼矢板Sの長手方向において一対の受け金型71,72の略中間の位置に配される。さらに、一対の受け金型71,72及び押し金型73は、継手S2の左右方向端に当接して配される。一対の受け金型71,72及び押し金型73の形状は、特許文献1に記載された横押しローラを模した形状とした。図11に押し金型73が継手S2に接触した状態を示す。図11に示すように、押し金型73の継手S2との接触面は、主爪S3及び副爪S4の形状に合わせて湾曲しており、主爪S3と副爪S4との先端間には左右方向へと突出する突出部731が形成される。なお、突出部731の左右方向の長さは、主爪S3及び副爪S4の先端の厚みと同程度とする。また、一対の受け金型71,72の形状についても、押し金型73と同じ形状とした。
次に、本発明者らが行った第2の検討について説明する。第2の検討では、第1の検討の結果を受け、押し金型73や受け金型71,72で押圧及び保持する箇所は、継手S2の内面部であるべきと考えた。このため、図13に示すように、押し金型73の突出部731の左右方向に突出する長さを長くし、突出部731が継手S2のウェブS1側の内面に当接するようにした。なお、突出部731が継手S2の内面に当接した状態では、押し金型73と継手S2の左右方向の端面は接触しないものとする。また、一対の受け金型71,72の形状についても、押し金型73と同じ形状とした。そして、一対の受け金型71,72及び押し金型73を備えた曲がり矯正装置7を用いて、第1の検討と同様に、曲がりが生じた直線形鋼矢板Sに対して、3点曲げ矯正を行った。
第2の検討の結果、押し金型73で継手S2を押圧しても、第1の検討の様な継手S2の変形は生じず、直線形鋼矢板Sの曲がりを矯正できることを確認した。しかし、直線形鋼矢板Sに多少の反りやねじれがある場合には、図14に示すように、矯正後にウェブS1が湾曲する変形が生じることが判明した。
次に、本発明者らが行った第3の検討について説明する。第3の検討では、第1の検討及び第2の検討の結果を受け、第2の検討と同様な形状の受け金型71,72及び押し金型73を備える曲がり矯正装置7に、ウェブS1の上面に平行な下面と、ウェブS1の下面に平行な上面とを有し、これら下面と上面とで上下方向からウェブS1の面を保持する金型をさらに設けた。この金型は、直線形鋼矢板Sの長手方向において押し金型73と重畳する位置に設けられる。このような曲がり矯正装置7を用いて、第1の検討及び第2の検討と同様に、曲がりが生じた直線形鋼矢板Sに対して、3点曲げ矯正を行った。
第3の検討の結果、直線形鋼矢板Sに多少の反りやねじれがある場合においても、ウェブS1の湾曲や継手S2の変形が生じることなく、曲がりを矯正できることが判明した。
本発明の一実施形態に係る直線形鋼矢板Sの曲がり矯正装置1について説明する。曲がり矯正装置1は、上記の検討に基づいてなされたものであり、図1及び図2に示すように、フレーム2と、複数のテーブルローラ3a〜3dと、押し部4と、一対の受け部5a,5bと、抑え部6とを備える。なお、図1〜図5において、x軸、y軸及びz軸は、互いに垂直に交差する軸であり、矯正される直線形鋼矢板Sを配した状態で、直線形鋼矢板Sの長手方向がy軸方向、直線形鋼矢板Sの左右方向がx軸方向、直線形鋼矢板Sの上下方向がz軸方向となる。
複数のテーブルローラ3a〜3dは、所定間隔だけ離間して、y軸方向に並んで設けられる。複数のテーブルローラ3a〜3dは、不図示の駆動装置に接続され、駆動装置からの駆動力を受けて回転することで、直線形鋼矢板Sの長手方向に平行なy軸方向に、直線形鋼矢板Sを搬送する。
押し金型41は、図3〜図5に示すように、略直方体の形状を有する鉄やステンレスなどの金属製部材であり、x軸負方向側の面に、x軸負方向へと突出し、y軸方向に延在する板状の突出部411が形成される。突出部411は、z軸方向の厚みの寸法H1が継手S2の先端間の寸法D1よりも小さく、x軸方向の寸法H2が継手S2の内面から先端の外面までのx軸方向の寸法D2よりも長い。また、押し金型41は、x軸正方向側の面に、y軸正方向及びy軸負方向へと延出するフランジ412が形成される。
昇降手段44は、押し金型41のz軸正方向側の面に接続されるワイヤ441と、不図示のモータの回転駆動を受けて回転し、ワイヤ441を巻取るドラム442とを有する。昇降手段44は、ドラム442を回転させ、ワイヤ441を巻上げ又は巻下げすることで、押し金型41をz軸方向に移動(昇降)させる。
上面金型61は、z軸負方向側にウェブS1の上面に平行な方形の面(下面)を有する。上面金型61の下面は、x軸方向の寸法がウェブS1の長さ(左右方向の寸法)の9割程度であり、y軸方向の寸法が一対の受け金型51a,51bの離間距離の半分程度の長さである。また、上面金型61は、x軸方向において押し金型41と一対の受け金型51a,51bとの中間、且つy軸方向において押し金型41と中心が重畳する位置に配される。
下面金型63は、テーブルローラ3b,3cの間に設けられる不図示のエプロンに固定して設けられる、金属製の金型である。下面金型63は、z軸正方向側にウェブS1の下面に平行な方形の面(上面)を有する。下面金型63の上面は、上面金型61の下面よりも小さく形成され、x軸方向の寸法がウェブS1の長さ(左右方向の寸法)の半分程度であり、y軸方向の寸法が一対の受け金型51a,51bの離間距離の3割程度の長さである。また、下面金型63は、上面金型61と対向する位置に配される。さらに、下面金型63は、矯正される直線形鋼矢板Sが配された状態で、下面金型63と直線形鋼矢板Sとが接触した状態となるように、z軸正方向側の面が、複数のテーブルローラ3a〜3dの搬送面(z軸正方向側端)よりもやや高い同じ高さ位置に設けられる。
次に、本実施形態に係る直線形鋼矢板Sの曲がりの矯正方法について説明する。
まず、直線形鋼矢板Sが載せられた複数のテーブルローラ3a〜3dを回転させることで、直線形鋼矢板Sを矯正開始位置まで搬送する。矯正開始位置とは、長手方向において直線形鋼矢板Sが左右方向に曲がり始める箇所が、押し金型41とy軸方向に重畳する位置であり、3点曲げによる矯正を開始する位置である。この際、直線形鋼矢板Sは、曲がりの外側の継手S2が押し部4の側、曲がりの内側の継手S2が一対の受け部5a,5bの側となるように配される。また、曲がりの内側の継手S2は、主爪S3と副爪S4との間に、受け金型51a,51bの突出部511a,511bが嵌入した状態で搬送が行われる。なお、受け金型51a,51bは、突出部511a,511bが継手S2の内部に嵌入可能なように、押し部4と同様に受け部5a,5bに設けられた不図示の昇降手段によって、予めz軸方向の高さが調整される。また、搬送時には、受け部5a,5bの昇降手段のワイヤをゆるめることで、直線形鋼矢板Sの反り等に伴う搬送時の継手S2の上下方向への高さの変化に応じて、受け金型51a,51bがz軸方向に移動することができる。さらに、直線形鋼矢板Sを搬送する際、直線形鋼矢板Sに反りがあっても接触しないように、上面金型61を直線形鋼矢板Sよりも所定距離だけz軸正方向側へ配する。
さらに、シリンダ43を用いて、押し金型41を、曲がり量δに応じた所定の距離だけx軸負方向側へと移動させる。押し金型41は、突出部411が継手S2の内部に嵌入可能なように、昇降手段44によって、予めz軸方向の高さが調整される。押し金型41が移動する過程で、押し金型41の突出部411及び一対の受け金型51a,51bの突出部511a,511bは、x軸両端側の継手S2の内面にそれぞれ当接する。そして、押し金型41がさらに移動することで、押し金型41は継手S2の内部面を押圧し、3点曲げの矯正が行われる。この際、ウェブS1の上下面(z軸方向の両端側の両面)は、上面金型61及び下面金型63で保持されているため、ウェブS1の湾曲等の変形が抑えられる。
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例または実施形態も網羅すると解すべきである。
(1)本発明の一態様に係る直線形鋼矢板Sの曲がり矯正方法は、長手方向(y軸方向)に直交する断面形状が、左右方向に延在するウェブS1と、ウェブS1の左右方向(x軸方向)の両端側に形成される主爪S3及び副爪S4からなる継手S2とを有する直線形鋼矢板Sの左右方向の曲がりを矯正する曲がり矯正方法であって、曲がりの内側となるウェブS1の左右方向の一端側に、長手方向に離間して配される一対の受け金型51a,51bを、一端側の継手S2の内部面に当接させ、一端側と逆側となる左右方向の他端側、且つ長手方向において一対の受け金型51a,51bの間に配される押し金型41を、他端側の継手S2の内部面に当接させ、ウェブS1の上面に平行な下面を有する上面金型61を、長手方向において押し金型41と重畳する位置、且つウェブS1の厚み方向となる上下方向(z軸方向)の上側に配し、ウェブS1の下面に平行な上面を有する下面金型63を、上面金型61に対向させて、上下方向の下側に配し、押し金型41で継手S2の一端側の内部面を押圧する。
上記(2)の構成によれば、継手S2の内部面の広い範囲を保持又は押圧することができるため、より大きな曲がりを矯正することができる。
上記(3)の構成によれば、継手S2の上下方向の位置が多少変化しても、それに追随して矯正を行うことができる。
上記(4)の構成によれば、上記(1)と同様な効果を得ることができる。
実施例1では、図3に示す形状の押し金型41、及び押し金型41と同じ形状の受け金型51a,51bを用いて矯正を行った。受け金型51a,51bのy軸方向の離間距離は2mとした。押し金型41は、受け金型51a,51bの中間位置に配置した。押し金型41及び受け金型51a,51bの突出部のz軸方向の寸法H1は、10.0mmとした。押し金型41で直線形鋼矢板Sを押圧する際には、上面金型61とウェブS1との隙間及び下面金型63とウェブS1との隙間が、それぞれ0.5mmとなるように設定した。矯正では、直線形鋼矢板Sを1mずつ搬送させ、搬送が行われる毎に直線形鋼矢板Sの先端から1mおきに順に押し金型41による押圧を行った。矯正前の直線形鋼矢板Sの最大曲がり量δmaxは、14mmであった。
実施例2では、図6に示す形状の押し金型41、及び押し金型41と同じ形状の受け金型51a,51bを用いて矯正を行った。押し金型41及び受け金型51a,51bの突出部の先端のz軸方向の寸法H1は、20.0mmとした。また、矯正前の直線形鋼矢板Sの最大曲がり量δmaxは、18mmであった。上記以外の条件は、実施例1と同じとした。
比較例1では、押し金型41及び受け金型51a,51bの突出部の形状を図11に示す、検討で用いた押し金型73及び受け金型71,72と同じ形状とした。押し金型73及び受け金型71,72のz軸方向の寸法H3は、継手部S2のz軸方向の寸法D3と略同じ50.0mmとした。また、矯正前の直線形鋼矢板Sの最大曲がり量δmaxは、13mmであった。上記以外の条件は、実施例1と同じとした。
比較例2では、実施例1の曲がり矯正装置1から上面金型61及び下面金型63を取り除いたものを用いて曲がりの矯正を行った。比較例2における条件は、上面金型61及び下面金型63でウェブS1を保持しないことを除いて、実施例1と同じである。また、矯正前の直線形鋼矢板Sの最大曲がり量δmaxは、14mmであった。
上記の4条件の矯正における、矯正前後での最大曲がり量δmax、並びに矯正後のウェブS1及び継手S2の変形の有無について測定及び観察した結果を、表1にまとめる。
また、発明者らは、継手の大きさが異なる直線形鋼矢板Sでも、同様の効果があることを確認した。さらに、押し金型41及び受け金型51a,51bともにz軸方向の位置を調整可能としているので、直線形鋼矢板Sのサイズが変わっても、同一の金型で矯正を行うことができることが確認できた。
2 フレーム
3a〜3d テーブルローラ
4 押し部
41 押し金型
42 ホルダ
43 シリンダ
431 突出部
432 フランジ部
44 昇降手段
441 ワイヤ
442 ドラム
5a,5b 受け部
51a,51b 受け金型
511a,511b 突出部
52a,52b ホルダ
6 抑え部
61 上面金型
62 シリンダ
63 下面金型
7 曲がり矯正装置
71,72 受け金型
73 押し金型
731 突出部
S 直線形鋼矢板
S1 ウェブ
S2 継手
S3 主爪
S4 副爪
Claims (4)
- 長手方向に直交する断面形状が、左右方向に延在するウェブと、該ウェブの前記左右方向の両端側に形成される主爪及び副爪からなる継手とを有する直線形鋼矢板の前記左右方向の曲がりを矯正する曲がり矯正方法であって、
前記曲がりの内側となる前記ウェブの左右方向の一端側に、前記長手方向に離間して配される一対の受け金型を、前記一端側の継手の内部面に当接させ、
前記一端側と逆側となる前記左右方向の他端側、且つ前記長手方向において前記一対の受け金型の間に配される押し金型を、前記他端側の継手の内部面に当接させ、
前記ウェブの上面に平行な下面を有する上面金型を、前記長手方向において前記押し金型と重畳する位置、前記ウェブの厚み方向となる上下方向の上側、且つ前記左右方向において前記押し金型と前記一対の受け金型との中間に配し、
前記ウェブの下面に平行な上面を有する下面金型を、前記上面金型に対向させて、前記上下方向の下側に配し、
前記押し金型で前記継手の一端側の内部面を押圧することを特徴とする直線形鋼矢板の曲がり矯正方法。 - 前記一対の受け金型及び前記押し金型の少なくとも一方には、前記一端側及び前記他端側の少なくとも一方の内部面に当接可能なように前記左右方向に突出し、前記内部面に当接する面の前記上下方向の寸法が、前記主爪と前記副爪との先端間の寸法よりも大きな突出部を有するものを用いることを特徴とする請求項1に記載の直線形鋼矢板の曲がり矯正方法。
- 前記一対の受け金型及び前記押し金型には、前記上下方向に移動可能に設けられるものを用い、
前記一対の受け金型及び前記押し金型を、前記一端側及び前記他端側のそれぞれの内部面に当接させる際に、前記一端側及び前記他端側の継手の前記上下方向の位置に応じて、前記一対の受け金型及び前記押し金型の前記上下方向の位置を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の直線形鋼矢板の曲がり矯正方法。 - 長手方向に直交する断面形状が、左右方向に延在するウェブと、該ウェブの前記左右方向の両端側に形成される主爪及び副爪からなる継手とを有する直線形鋼矢板の前記左右方向の曲がりを矯正する曲がり矯正装置であって、
前記曲がりの内側となる前記ウェブの左右方向の一端側に、前記長手方向に離間して配され、前記一端側の継手の内部面に当接する一対の受け金型と、
前記一端側と逆側となる前記左右方向の他端側、且つ前記長手方向において前記一対の受け金型の間に配され、前記他端側の継手の内部面に当接し、該内部面を押圧する押し金型と、
前記ウェブの上面に平行な下面を有し、前記長手方向において前記押し金型と重畳する位置、前記ウェブの厚み方向となる上下方向の上側、且つ前記左右方向において前記押し金型と前記一対の受け金型との中間に配される上面金型と、
前記ウェブの下面に平行な上面を有し、前記上面金型に対向して、前記上下方向の下側に配される下面金型とを備えることを特徴とする直線形鋼矢板の曲がり矯正装置。
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