JP5387333B2 - 非水系電解液、それを用いた電池及びリン酸エステル化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、非水系電解液、それを用いた電池及びリン酸エステル化合物に関するものである。
電子機器の急速な進歩に伴い、二次電池に対する高容量化への要求が高くなっており、ニッケル・カドミウム電池やニッケル・水素電池に比べてエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池が広く使用され、また活発に研究されている。
非水系電解液電池に用いる電解液は、通常、主として電解質と非水溶媒とから構成されている。リチウムイオン二次電池の電解液としては、LiPF6、LiBF4、LiN(CF3SO22等の電解質を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の低粘度溶媒との混合溶媒に溶解させた非水系電解液が用いられている。
このようなリチウムイオン二次電池は、従来より充電状態において高温条件下で保存するとガスが発生し、電池容量の低下などの劣化が起こり、最悪の場合には電池内部の暴走反応により電池の破裂、発火などの重篤な危険性があることが知られており、それを改善するために非水溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
これまでに、リチウムイオン電池の特性を改善する方法として、リン酸エステル化合物を含有する非水系電解液は多数提案されている(特許文献1〜3参照)。特許文献1では、非共役系不飽和結合を有する環状カーボネートと特定炭素数のアルキル又はフッ素置換アルキルのリン酸エステルを含有する電解液を用いることで、難燃性及び充放電効率を改善することがなされている。特許文献2では、リン酸エステルを含有する電解液を用いることで、サイクル特性、負荷特性、37℃における自己放電率が改善されるという提案がなされている。特許文献3では、炭素数1〜4のアルキル基とアリル基、特定炭素数のアリール又はアラルキル基を有するリン酸エステルを含有する電解液を用いることで、自己消火性に優れ、充放電特性に優れた電池が得られるという提案がなされている、
特開2000−12080号公報 特開2000−331710号公報 特開2001−160415号公報
しかしながら、特許文献1には、不飽和炭化水素基を有するリン酸エステル化合物は記載されておらず、実施例に示されているリン酸エステルはリン酸トリメチルのみであり、また、自己消火性に関する記載はあるが、高温保存に対する影響は全く記載されていない。更に、電池特性に関する実施例の記載は初回充放電効率のみであり、電池としての実使用に対しての有用性が不明である。
一方、特許文献2には、ハロゲン置換リン酸エステルは記載されておらず、実施例に示されているリン酸エステルはジベンジルホスフェートのみで、37℃における自己放電率が改善されたとの実施例があるが、高温保存に対する影響は全く記載されていない。また、実施例の充電電圧が4.1Vであり、近年の市販電池で主流となっている4.2V充電で、同様の効果が得られるか否か定かではない。
特許文献3にも、ハロゲン置換リン酸エステルは記載されておらず、又、種々のリン酸エステルが実施例で示されており、自己消火性および放電容量に関する記載はあるが、高温保存に対する影響は全く記載されていない。
本発明は、非水系電解液二次電池において、充電状態での高温保存時におけるガス発生を抑制し、かつ電池の充放電特性を向上させる二次電池用非水系電解液と、この非水系電解液を用いた二次電池を提供することを課題とする。 更に、上記非水系電解液の添加剤として有用な新規なリン酸エステル化合物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、リン酸エステルを構成する炭化水素置換基が不飽和結合を有し、さらに炭化水素置換基のいずれかにハロゲンを有する特定構造のリン酸エステルを電解液中に含有することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の要旨は、電解質と非水溶媒とを含む非水系電解液において、下記一般式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物を含有することを特徴とする非水系電解液にある(請求項1)。
Figure 0005387333
(式中、R1、R2及びR3は、夫々独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基を表すが、R1、R2及びR3の少なくともいずれかはハロゲン原子で置換されており、かつR1、R2及びR3の少なくとも1つはハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基を表す。)
このとき、炭化水素基の炭素数が1以上10以下であり、アルケニル基の炭素数が
2以上10以下である(請求項2)。
更に、R1、R2及びR3の1つ又は2つがハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基であり、残りがハロゲン原子で置換されていてもよい飽和脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である(請求項3)。
更に、一般式(1)で表される化合物を0.001重量%以上10重量%以下含有する
(請求項4)。
更に、非水電解液が、炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ハロゲン原子
を有する環状カーボネート、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩及びニトリル化
合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する(請求項5)。
又、本発明の他の要旨は、負極、正極及び非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、非水系電解液が上記の非水電解液であることを特徴とする非水電解液二次電池にある(請求項6)。
又、他の要旨は、下記式(2)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物にある(請求項7)。
Figure 0005387333
本発明の電解液は、これを電池の電解液として用いることで、電池の充電状態での高温保存時におけるガス発生を抑制し、充放電特性、特に、高温保存の電圧及び容量に優れた電池を得ることができる。又、本発明の化合物は、上記効果を有する電池の電解液の成分として有用である。
以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、以下に記載する説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明は請求項に記載の要旨を超えない限り、これらの内容に特定されるものではない。
〔1.非水系電解液〕
本発明の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様に、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含有し、更に前記一般式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物を含有することを特徴とする。
〔1−1.電解質〕
本発明の非水系電解液に用いる電解質に制限は無く、目的とする非水系電解液二次電池に電解質として用いられるものであれば公知のものを任意に採用することができる。本発明の非水系電解液をリチウム二次電池に用いる場合には、通常は、電解質としてリチウム塩を用いる。
電解質の具体例としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、Li2CO3、LiBF4等の無機リチウム塩; LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、リチウム環状1,3−ヘキサフルオロプロパンジスルホニルイミド、リチウム環状1,2−テトラフルオロエタンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO23、LiPF4(CF32、LiPF4(C252、LiPF4(CF3SO22、LiPF4(C25SO22、LiBF2(CF32、LiBF2(C252、LiBF2(CF3SO22、LiBF2(C25SO22等の含フッ素有機リチウム塩; リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、等の含ジカルボン酸錯体リチウム塩などが挙げられる。
これらのうち、非水溶媒への溶解性・解離度、電気伝導度および得られる電池特性の点からLiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22が好ましく、特にLiPF6、LiBF4が好ましい。
また、電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、特定の無機リチウム塩の2種を併用したり、無機リチウム塩と含フッ素有機リチウム塩とを併用したりすると、トリクル充電時のガス発生が抑制されたり、高温保存後の劣化が抑制されるので好ましい。特に、LiPF6とLiBF4との併用や、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩と、LiCF3SO3、LiN(CF3 SO22、LiN(C25SO22等の含フッ素有機リチウム塩とを併用することが好ましい。
更に、LiPF6とLiBF4とを併用する場合、電解質全体に対してLiBF4が通常 0.01重量%以上、50重量%以下の比率で含有されていることが好ましい。上記比率は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、一方、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。比率が低すぎると所望の効果を得にくくなる場合があり、比率が高過ぎると、LiBF4は解離度が低いため電解液の抵抗を高くする場合がある。
一方、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩と、LiCF3SO3、LiN(CF3 SO22、LiN(C25SO22等の含フッ素有機リチウム塩とを併用する場合、電解質全体に占める無機リチウム塩の割合は、通常70重量%以上、99重量%以下の範囲であることが望ましい。
本発明の非水系電解液中におけるリチウム塩の濃度は、本発明の要旨を損なわない限り任意であるが、通常0.5mol/L以上、好ましくは0.6mol/L以上、より好ましくは0.8mol/L以上、更に好ましくは1.0mol/L以上で、特に好ましくは1.1mol/L以上、最も好ましくは、1.2mol/L以上である。また、通常3mol/L以下、好ましくは2mol/L以下、より好ましくは1.8mol/L以下、更に好ましくは1.5mol/L以下の範囲である。この濃度が低過ぎると、非水系電解液の電気伝導率が不十分となる場合があり、濃度が高過ぎると、粘度上昇のため電気伝導率が低下し、本発明の非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池の性能が低下する場合がある。
〔1−2.非水溶媒〕
本発明の非水系電解液が含有する非水溶媒としては、従来から非水系電解液の溶媒として公知のものの中から適宜選択して用いることができる。なお、非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
通常使用される非水溶媒の例としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状及び環状カルボン酸エステル、鎖状及び環状エーテル類、含リン有機溶媒、含硫黄有機溶媒 などが挙げられる。
環状カーボネートとしては、 エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類が挙げられ、アルキレンカーボネート類の炭素数は、通常3以上6以下である。
これらの中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートは、誘電率が高いため電解質が溶解し易く、非水系電解液二次電池にしたときにサイクル特性が良いという点で好ましく、特にエチレンカーボネートが好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート等などのジアルキルカーボネート類が挙げられ、構成するアルキル基の炭素数は、夫々1以上5以下が好ましく、特に好ましくは1以上4以下である。また、アルキル基の水素の一部がフッ素で置換されていてもよい。
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが電池特性向上の点から好ましい。
鎖状カルボン酸エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル等及びトリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸ブチル等のこれらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した化合物等が挙げられ、鎖状カルボン酸エステル類の総炭素数は、通常、3以上10以下、好ましくは3以上6以下である。これらの中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、吉草酸メチルがより好ましい。
環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。 これらの中でも、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
更に、鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられる。これらの中でも、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンがより好ましい。
環状エーテル例としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。
更に、含リン有機溶媒の種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類; 亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸エステル類;トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類; などが挙げられる。 尚、含リン有機溶媒には、前述の一般式(1)で表される本発明のリン酸エステル化合物は包含されない。
含硫黄有機溶媒としては、エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン等が挙げられる。
上記の非水溶媒の中でも、環状カーボネートであるエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを用いることが好ましく、更にこれらと鎖状カーボネートとを併用することが電解液の高い電導度と低い粘度を両立できる点から好ましい。
このように環状カーボネートと鎖状カーボネートとを非水溶媒として併用する場合、本発明の非水系電解液中の非水溶媒中に占める鎖状カーボネートの好適な含有量は、通常20体積%以上、好ましくは40体積%以上、また、通常95体積%以下、好ましくは90 体積%以下である。一方、本発明の非水系電解液中の非水溶媒中に占める環状カーボネートの好適な含有量は、通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上、また、通常80体積%以下、好ましくは60体積%以下である。鎖状カーボネートの割合が少な過ぎると、本発明の非水系電解液の粘度が上昇する場合があり、鎖状カーボネートの割合が多過ぎると、電解質であるリチウム塩の解離度が低下して、本発明の非水系電解液の電気伝導率が低下する場合がある。
なお、本明細書において、非水溶媒の容量は25℃での測定値であるが、エチレンカーボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値を用いる。
〔1−3.式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物〕
本発明の非水系電解液は、下記一般式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物を含有することを特徴とする。
Figure 0005387333
(式中、R1、R2及びR3は、夫々独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基を表すが、R1、R2及びR3の少なくともいずれかはハロゲン原子で置換されており、かつR1、R2及びR3の少なくとも1つはハロゲン原子で置換されていてもよい不飽和炭化水素基を表す。)
R1、R2及びR3で示されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基における炭化水素基としては、飽和及び不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が、不飽和アルキル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロパルギル基、1−プロピニル基などのアルキニル基が、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。飽和炭化水素基の炭素数は、通常1以上10以下であり、好ましくは6以下、更に好ましくは、4以下であり、不飽和炭化水素基の炭素数は、通常2以上8以下、好ましくは、6以下であり、芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6以上10以下、好ましくは8以下である。
本発明においては、上記一般式(1)におけるR1、R2及びR3の少なくともいずれかはハロゲン原子で置換されている必要がある。ハロゲン原子で置換されていない場合、電池を高温で保存した際のガスの発生抑制効果が劣り、又、高温保存後の電圧及び容量が劣ることとなる。尚、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、中でもフッ素原子が好ましい。
ハロゲン原子で置換された炭化水素基としては、具体的には、モノ、ジ又はトリハロメチル基(但し、ハロは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素。以下同様。)、モノ、ジ、トリ又はパーハロエチル基、モノ、ジ、トリ又はパーハロプロピル基等のハロアルキル基、フルオロビニル基、ジフルオロビニル等のハロアルケニル基、ハロアルキニル基、ハロフェニル等のハロアリール基、ハロベンジル等のハロアラルキル基等が挙げられるが、ハロアルキル基であるのが好ましい。
又、上記一般式(1)において、R1、R2及びR3の少なくとも1つはハロゲン原子で置換されていてもよい不飽和炭化水素基である必要がある。不飽和炭化水素基を有さない場合には、電池を高温で保存した際のガスの発生抑制効果が劣り、又、高温保存後の電圧及び容量が劣ることとなる。ハロゲン原子で置換されていてもよい不飽和炭化水素基としては、上記の不飽和炭化水素基の中でも、高温保存時のガス発生抑制の点からアルケニル基であるのが好ましく、特に、ビニル基及びアリル基が好ましい。
又、高温保存時のガス発生抑制、電圧及び電池容量の点から、R1、R2及びR3の1つ又は2つがハロゲン原子で置換されていてもよい不飽和炭化水素基であるのが好ましく、この場合、残りのR1、R2又はR3は、必然的に、ハロゲン原子で置換されていてもよい飽和脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基となる。特に好ましくは、R1、R2及びR3の1つ又は2つが未置換の不飽和炭化水素基であり、残りのR1、R2又はR3が、ハロゲン原子で置換された飽和脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。
前記式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。 リン酸ビニルビス(トリフルオロメチル)、リン酸アリルビス(トリフルオロメチル)、リン酸1−プロペニルビス(トリフルオロメチル)、リン酸プロパルギルビス(トリフルオロメチル)、リン酸ビニルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸アリルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸1−プロペニルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸プロパルギルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ビニルビス(ペンタフルオロエチル)、リン酸アリルビス(ペンタフルオロエチル)、リン酸1−プロペニルビス(ペンタフルオロエチル)、リン酸プロパルギルビス(ペンタフルオロエチル)等の1ケの不飽和炭化水素基と2ケのハロアルキル基を有する化合物、リン酸ジビニル(トリフルオロメチル)、リン酸ジアリル(トリフルオロメチル)、リン酸ジ(1−プロペニル)(トリフルオロメチル)、リン酸ジプロパルギル(トリフルオロメチル)等の2ケの不飽和炭化水素基と1ケのハロアルキル基を有する化合物、リン酸フェニルビス(トリフルオロメチル)、リン酸トリルビス(トリフルオロメチル)、リン酸ジフェニル(トリフルオロメチル)等のアリール基とハロアルキル基を有する化合物、リン酸ベンジルビス(トリフルオロメチル)、リン酸フェネチルビス(トリフルオロメチル)等のアラルキル基とハロアルキル基を有する化合物、リン酸2−フルオロビニルビス(トリフルオロメチル)、リン酸2,2−ジフルオロビニルビス(トリフルオロメチル)等のハロゲン原子で置換された不飽和炭化水素基とハロアルキル基を有する化合物等が挙げられる。
上記の中でも、リン酸ビニルビス(トリフルオロメチル)、リン酸アリルビス(トリフルオロメチル)、リン酸1−プロペニルビス(トリフルオロメチル)、リン酸プロパルギルビス(トリフルオロメチル)、リン酸ビニルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸アリルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸1−プロペニルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸プロパルギルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)等の1ケの不飽和炭化水素基と2ケのハロアルキル基を有する化合物を用いると、高温保存後のガス発生量、高温保存後の電圧及び容量等の電池特性の改善効果が特に高い点で好ましく、特にリン酸ビニルビス(トリフルオロメチル)、リン酸アリルビス(トリフルオロメチル)、リン酸ビニルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸アリルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)が好ましい。
前記式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物の含有量は特に限定されるものではないが、非水電解液に対し、0.001重量%以上、10重量%以下が好ましい。0.01重量%以上であるのが更に好ましく、特に0.1重量%以上が好ましい。一方、5重量%以下が更に好ましく、3重量%以下が特に好ましい。前記式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物の含有量が少なすぎる場合は、本発明の効果が発現しにくくなる傾向がある。一方、含有量が多すぎる場合は、抵抗増加につながり電池特性が悪化する可能性がある。尚、前記式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物は、1種であっても、複数種を併用してもよいが、複数種を併用する場合、上記含有量は、複数種の合計量を表す。
前記式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物を含有する電解液を用いた場合、高温保存時のガス発生量が減少し、電池特性も向上する。その詳細な機構は明らかになっていないが、前記式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物は不飽和結合とハロゲン原子を同一分子内に有するリン酸エステルであり、不飽和結合を有することで正極を保護する機能を発現し、ハロゲン原子を有することで、化合物自身が正極によって酸化されることが抑制されると推察される。従って、このどちらかが欠けると、本発明のような効果が得られない。
尚、後述の実施例で使用した下記式(2)で表されるリン酸エステル化合物は、新規化合物であり、具体的には、例えば、後述の実施例に記載の方法により製造可能である。
Figure 0005387333
〔1−4.好ましい第三成分〕
本発明では、前記式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物に加えて、特定の化合物を電解液中に含有させることによって、さらに効果を向上させることが出来る。特定の化合物としては、炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ハロゲン原子を有する環状カーボネート、モノフルオロリン酸塩またはジフルオロリン酸塩、ニトリル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物が挙げられる。
炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート化合物;ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニルエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート等のビニルエチレンカーボネート化合物;4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等のメチレンエチレンカーボネート化合物などが挙げられる。これらのうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネートまたは4,5−ジビニルエチレンカーボネートがサイクル特性や高温保存後の容量維持特性向上の点から好ましく、なかでもビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートがより好ましく、特にビニレンカーボネートが好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
2種類以上を併用する場合は、ビニレンカーボネートとビニルエチレンカーボネートとを併用するのが好ましい。
炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上である。炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物が少なすぎると、電池のサイクル特性や高温保存後の容量維持特性を向上させるという効果を十分に発揮できない場合がある。しかし、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物の含有量が多すぎると、高温保存時にガス発生量が増大したりする場合があるので、その上限は、通常10重量%、好ましくは8重量%、特に好ましくは6重量%である。
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとしては、フルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4,5−トリフルオロエチレンカーボネート、4,4,5,5−テトラフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,4,5−トリフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらのうち、フルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネートがサイクル特性向上や高温保存特性向上の点から好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
非水系電解液がフッ素原子を有する環状カーボネート化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、通常、0.001重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上であり、通常、30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
モノフルオロリン酸塩またはジフルオロリン酸塩としては、モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及び、N+4567(式中、R4〜R7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等が例示として挙げられる。
上記アンモニウムのR4〜R7で表わされる炭素数1〜12の有機基としては特に限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR4〜R7として、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基等が好ましい。
モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩の具体例としては、モノフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオロリン酸カリウム等が挙げられ、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウムが好ましく、ジフルオロリン酸リチウムがより好ましい。
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
非水系電解液がモノフルオロリン酸塩および/またはジフルオロリン酸塩を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、通常、0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上、最も好ましくは0.2重量%以上であり、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である。
なお、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、非水系電解液として実際に二次電池作製に供すると、その電池を解体して再び非水系電解液を抜き出しても、その中の含有量が著しく低下している場合が多い。従って、電池から抜き出した非水系電解液から、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が検出できるものは、非水系電解液中にこれらを本発明で規定する所定割合で含む非水系電解液であるとみなされる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、ノナンニトリル、デカンニトリル、ドデカンニトリル(ラウロニトリル)、トリデカンニトリル、テトラデカンニトリル(ミリストニトリル)、ヘキサデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ヘプタデカンニトリル、オクタデカンニトリル(ステアノニトリル)、ノナデカンニトリル、イコサンニトリル等のモノニトリル;マロノニトリル、 スクシノニトリル、 グルタロニトリル、 アジポニトリル、 ピメロニトリル、 スベロニトリル、 アゼラニトリル、 セバコニトリル、 ウンデカンジニトリル、 ドデカンジニトリル、 メチルマロノニトリル、 エチルマロノニトリル、 イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、 メチルスクシノニトリル、 2,2−ジメチルスクシノニトリル、 2,3−ジメチルスクシノニトリル、 トリメチルスクシノニトリル、 テトラメチルスクシノニトリル 、3,3'−オキシジプロピオニトリル、 3,3'−チオジプロピオニトリル、 3,3'−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、 3,3'−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル、 1,2,3−プロパントリカルボニトリル、 1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、 1,2,3−トリス(2−シアノエトキシ)プロパン、 トリス(2−シアノエチル)アミン等 のジニトリルが挙げられ、これらの中でも、ラウロニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリルが好ましい。
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
非水系電解液がニトリル化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、通常、0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上、最も好ましくは0.2重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である。
〔1−5.添加剤〕
本発明の非水系電解液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種の添加剤を含有していても良い。添加剤としては、従来公知のものを任意に用いることができる。 尚、添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
添加剤の例としては、過充電防止剤や、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤などが挙げられる。
過充電防止剤の具体例としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物; 2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ物; 2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニオール等の含フッ素アニソール化合物; などが挙げられる。
なお、これらの過充電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液が過充電防止剤を含有する場合、その濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体に対して通常0.1重量%以上、5重量%以下の範囲とすることが望ましい。非水系電解液に過充電防止剤を含有させることによって、過充電による非水系電解液二次電池の破裂・発火を抑制することができ、非水系電解液二次電池の安全性が向上するので好ましい。
一方、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤の具体例としては、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、シトラコン酸無水物等の酸無水物; エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート等のカーボネート化合物; エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジビニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジエチルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物; 1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシイミド等の含窒素化合物; ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物; フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物; などが挙げられる。
なお、これらの助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液が助剤を含有する場合、その濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体に対して通常0.1重量%以上、5重量%以下の範囲とすることが好ましい。
〔1−6.ゲル化剤〕
非水系電解液は、本発明のリチウム二次電池に用いる際、通常は液体状態で存在するが、例えば、これを高分子によってゲル化して、半固体状電解質にしてもよい。ゲル化に用いる高分子は任意であるが、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどが挙げられる。なお、ゲル化に用いる高分子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、非水系電解液を半固体状電解質として用いる場合、半固体状電解質に占める非水系電解液の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。好適な範囲としては、半固体状電解質の総量に対する非水系電解液の比率が、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上であり、また、通常99.95重量%以下、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下である。非水系電解液の比率が大きすぎると、電解液の保持が困難となり液漏れが生じやすくなる虞があり、逆に少なすぎると充放電効率や容量の点で不十分となることがある。
〔1−7.非水系電解液の製造方法〕
本発明の非水系電解液は、上述した非水溶媒に、上述した電解質と、本発明の前記一般式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物と、好ましくは炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ハロゲン原子を有する環状カーボネート、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩及びニトリル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、必要に応じて用いられるその他の助剤などを溶解させることにより、調製することができる。
尚、非水系電解液中に水が存在すると、水の電気分解、水とリチウム金属との反応、リチウム塩の加水分解などが起こる可能性があり、好ましくない。従って、非水系電解液の調製に際して、非水溶媒などの各成分は、予め脱水しておくのが好ましい。具体的には、その水分含有率が通常50ppm以下、中でも20ppm以下の値となるまで脱水しておくことが好ましい。脱水の手法は任意に選択することが可能であるが、例えば減圧下で加熱したり、モレキュラーシーブを通過させたりする等の手法が挙げられる。
〔2.非水系電解液二次電池〕
本発明の非水系電解液二次電池は、非水系電解液以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様であり、通常は、本発明の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。本発明の非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
〔2−1.非水系電解液〕
非水系電解液としては、上述の本発明の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を混合して用いることも可能である。
〔2−2.負極〕
本発明の非水系電解液二次電池に用いられる負極を構成する負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
<炭素質材料負極>
炭素質材料負極(以下「炭素負極」と称す場合がある。)の負極活物質として用いられる炭素質材料としては、以下の(1)〜(4)から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスが良く好ましい。また、(1)〜(4)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(1)天然黒鉛
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400から3200℃の範囲で1回以上熱処理した炭素質材料
(3)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(4)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる配向性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
上記(2)の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質の具体的な例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、あるいはこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物、及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
なお、上記の炭化可能な有機物の具体的な例としては、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、或いは乾留液化油等の石炭系重質油、常圧残油、減圧残油の直流系重質油、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等分解系石油重質油、更にアセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素、フェナジンやアクリジン等の窒素原子含有複素環式化合物、チオフェン、ビチオフェン等の硫黄原子含有複素環式化合物、ビフェニル、テルフェニル等のポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、含窒素性のポリアクニロニトリル、ポリピロール等の有機高分子、含硫黄性のポリチオフェン、ポリスチレン等の有機高分子、セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロースに代表される多糖類等の天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の熱可塑性樹脂、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
炭素負極の製造は、本発明の効果を著しく制限しない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
電池の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは、通常15μm以上であり、20μm以上が好ましく、30μm以上が更に好ましく、また、通常150μm以下であり、120μm以下が好ましく、100μm以下が更に好ましい。負極活物質の厚さが、この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。また、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができ、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
圧延法により作製した銅箔からなる集電体は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れにくく、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。
電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された非水系電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られるものである。上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させていても良い。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm〜1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理等)がなされていても良い。
金属薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましい。
金属皮膜の厚さが、1μmより薄くなると、強度が低下するため塗布が困難となる場合がある。また、100μmより厚くなると、捲回等の電極の形を変形させる場合がある。なお、金属薄膜は、メッシュ状でもよい。
集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液注液直前 の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下が更に好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上が更に好ましく、1以上が特に好ましい。
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上が更に好ましく、1.3g・cm-3以上が特に好ましく、また、2g・cm-3以下が好ましく、1.9g・cm-3以下がより好ましく、1.8g・cm-3以下が更に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー(結着剤)、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N・N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
負極活物質に対するバインダーの割合は、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量% 以上が更に好ましく、0.6重量%以上が特に好ましく、また、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましく、8重量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲を上回ると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1重量%以上であり、0.5重量%以上が好ましく、0.6重量%以上が更に好ましく、また、通常5重量%以下であり、3重量%以下が好ましく、2重量%以下が更に好ましい。
また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1重量%以上であり、2重量%以上が好ましく、3重量%以上が更に好ましく、また、通常15重量%以下であり、10重量%以下が好ましく、8重量%以下が更に好ましい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
増粘剤を用いる場合、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1重量%以上であり、0.5重量%以上が好ましく、0.6重量%以上が更に好ましく、また、通常5重量%以下であり、3重量%以下が好ましく、2重量%以下が更に好ましい。
負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
<合金系材料負極>
本発明の非水系電解液二次電池の負極は、金属イオンを吸蔵・放出しうる負極活物質として合金系材料、好ましくはSi、Sn及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有する負極(以下「合金系材料負極」と称す場合がある。)であってもよい。
合金系材料負極の負極活物質として用いられる合金系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、またはそれらの酸化物・炭化物・窒化物・珪化物・硫化物・燐化物等の化合物のいずれであっても特に限定はされないが、好ましくはリチウム合金を形成する単体金属及び合金であれば、周期表第13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料あることが好ましく、さらにはSi、Sn、及びPb(これらを以下「特定金属元素」という場合がある。)の単体金属、及びこれら原子を含む合金・化合物である事が好ましい。
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質の例としては、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物の例としては、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する炭化物、酸化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等の複合化合物が挙げられる。
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金、又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も例として挙げることができる。より具体的には、例えばSiやSnでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。また例えばSnでは、SnとSi、Sn、Pb以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位重量当りの容量が大きいことから、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、特に、Si及び/又はSnの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位重量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
また、金属単体又は合金を用いるよりは単位重量当りの容量には劣るものの、サイクル特性に優れることから、Si及び/又はSnを含有する以下の化合物も好ましい。
・Si及び/又はSnと酸素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下のSi及び/又はSnの酸化物。
・Si及び/又はSnと窒素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下のSi及び/又はSnの窒化物。
・Si及び/又はSnと炭素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に
好ましくは1.1以下のSi及び/又はSnの炭化物。
なお、上述の負極活物質は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
合金系材料負極は、公知のいずれの方法を用いて製造することが可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
負極集電体の材質としては、鋼、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがある。
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラ スト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシなどで集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
また、負極集電体の重量を低減させて電池の重量当たりのエネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの負極集電体を使用することもできる。このタイプの負極集電体は、その開口率を変更することで、重量も白在に変更可能である。また、このタイプの負極集電体の両面に負極活物質層を形成させた場合、この穴を通してのリベット効果により、負極活物質層の剥離が更に起こり難くなる。しかし、開口率があまりに高くなった場合には、負極活物質層と負極集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
〔2−3.正極〕
本発明の非水系電解液二次電池に使用される正極に含まれる正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、例えば、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
リチウム遷移金属複合酸化物としては、LiCoO2等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO2、LiMn24、Li2MnO4等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi0.5Mn0.52、LiNi0.85Co0.10Al0.052、LiNi0.33Co0.33Mn0.332、LiMn1.8Al0.24、Li Mn1.5Ni0.54等が挙げられる。
リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、LiFePO4、Li3Fe2(PO43、LiFeP27等のリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
さらに、上述した遷移金属とリチウムとの複合酸化物の表面をAl、B、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ca、Ga等の金属の酸化物で被覆すると、高電圧における溶媒の酸化反応が抑制されて好ましい。なかでもAl23、TiO2、ZrO2、MgOは強度が高く、安定した被覆効果を発現させるため特に好ましい。
なお、これらの正極活物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
正極活物質のタップ密度は、通常1.3g・cm-3以上であり、1.5g・cm-3以上が好ましく、1.6g・cm-3以上が更に好ましく、1.7g・cm-3以上が特に好ましく、また、通常2.5g・cm-3以下であり、2.4g・cm-3以下が好ましい。タップ密度の高い金属複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。従って、正極活物質のタップ密度が上記範囲を下回ると、正極活物質層形成時に必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。また、タップ密度は一般に大きいほど好ましく特に上限はないが、上記範囲を下回ると、正極活物質層内における非水系電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合がある。
正極活物質のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.2m2・g-1以上であり、0.3m2・g-1以上が好ましく、0.4m2・g-1以上が更に好ましく、また、通常4.0m2・g-1以下であり、2.5m2・g-1以下が好ましく、1.5m2・g-1以下が更に好ましい。 BET比表面積の値が、上記範囲を下回ると、電池性能が低下しやすくなる。また、上記範囲を上回ると、タップ密度が上がりにくくなり、正極活物質形成時の塗布性が低下する場合がある。
正極活物質の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
以下に、本発明に使用される正極の構成及びその作製法について説明する。
正極は、正極活物質粒子と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。
正極活物質を用いる正極の製造は、公知の何れの方法で作製することができる。すなわち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
正極活物質の正極活物質層中の含有量は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、また、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である。正極活物質層中の正極活物質の含有量が、上記範囲を下回ると、電気容量が不十分となる場合がある。また、上記範囲を上回ると、正極の強度が不足する場合がある。なお、正極活物質粉体は1種を単独で用いても良く、異なる組成又は異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
導電材は、正極活物質層中に、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下含有するように用いられる。導電材の含有量が上記範囲よりも下回ると、導電性が不十分となる場合がある。また、上記範囲よりも上回ると、電 池容量が低下する場合がある。
正極活物質層の製造に用いる結着剤は、非水系電解液や電極製造時用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
塗布法による場合の結着剤は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば良いが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1重量%以上であり、1重量%以上が好ましく、3重量%以上が更に好ましく、また、通常80重量%以下であり、60重量%以下が好ましく、40重量%以下が更に好ましく、10重量%以下が特に好ましい。
結着剤の割合が、上記範囲を下回ると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。また、上記範囲を上回ると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電剤、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。
水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N・N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。
増粘剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
増粘剤を使用する場合、活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.6重量%以上、また、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下が望ましい。上記範囲を下回ると著しく塗布性が低下する場合があり、また上記範囲を上回ると、正極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
スラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.5g・cm-3以上が更に好ましく、2g・cm-3以上が特に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3.5g・cm-3以下が更に好ましく、3g・cm-3以下が特に好ましい。正極活物質層の密度が、上記範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下する場合がある。また上記範囲を下回ると、活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大する場合がある。
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
集電体の金属薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下が更に好ましい。金属薄膜が、上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足する場合がある。また、薄膜が上記範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる場合がある。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)が通常150以下であり、20以下が好ましく、10以下が特に好ましく、また、通常0.1以上であり、0.4以上が好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と正極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
〔2−4.セパレータ〕
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、更に好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上が更に好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化珪素等の酸化物類、窒化アルミや窒化珪素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
その形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として多孔層を形成させることが挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例A(化合物1の合成)]
50gの塩化ホスホリルに19gのアリルアルコールを氷冷下、ゆっくりと加え攪拌した後、さらに85gの2,2,2−トリフルオロエタノールと67gのピリジンの混合溶液を氷冷下、ゆっくりと加えて攪拌した。反応液中に生成した固形物をろ過で取り除き、得られた液体を蒸留して、後述の化合物1(ハロゲン含有リン酸エステル)を合成した。
マススペクトルによる分析の結果、303の分子イオンピークが検出された。これは化合物1のプロトン付加体と考えられる。
また、NMRによる分析の結果を以下に示す。
Figure 0005387333
Figure 0005387333
表の数値はNMRのケミカルシフトを示す(単位ppm)
・1H-NMR:重ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)中の軽DMSOのメチル水素を内部基準(2.49ppm)とした。
・19F-NMR:ヘキサフルオロベンゼンのフッ素を外部基準(-162.2ppm)とした
・31P-NMR:リン酸重水溶液中のリン酸イオンを外部基準(0ppm) とした
13C-NMR:重ジメチルスルホキシドのメチル炭素を内部基準(39.5ppm)とした。
[実施例1〜3、比較例1〜3]
<非水系電解液の調製>
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートの混合物(容量比2:8)に、それぞれ十分に乾燥したLiPF6を1mol・dm-3、ビニレンカーボネートを1重量%となるように加え、さらに上記一般式(1)で示されるハロゲン含有リン酸エステル化合物0.5重量%、又は、比較として、これに含まれないリン酸エステル化合物0.5重量%を溶解して非水系電解液を調製した。各実施例、比較例におけるリン酸エステル化合物の種類と濃度を表-2に示した。
<正極の作製>
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)97重量%と、導電材としてのアセチレンブラック1.5重量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5重量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを負極容量の90%の容量となるように、厚さ12μmのアルミ箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ85μmに圧延したものを、活物質が幅30mm、長さ40mmとなるように切り出して正極とした。作成した正極は摂氏80度において12時間減圧乾燥をして用いた。
<炭素負極の作製>
負極活物質として黒鉛粉末98重量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1重量%)1重量部、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50重量%)1重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ12μmの銅箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ75μmに圧延した。これを、活物質が幅30mm、長さ40mmとなるように切り出して負極とした。作成した負極は摂氏60度で12時間減圧乾燥して用いた。
<二次電池の作成>
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、正極、セパレータ、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に0.6mL注入し、真空封止を行ない、シート状電池を作製した。更に、電極間の密着性を高めるために、ガラス板でシート状電池を挟んで加圧した。
<電池の評価>
1.4.33Vにおける高温保存試験
上記シート状の電池を、25℃において0.2Cに相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を数サイクル行って安定させた。その後、4.33V−定電流−定電圧充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、3日間の条件で高温保存試験を行った。この高温保存の前後で、シート状電池をエタノール浴中に浸して、体積の変化から発生したガス量(高温保存ガス量)を求めた。また、高温保存後の電池電圧と、残存した容量を測定した。
Figure 0005387333
Figure 0005387333
本発明のリン酸エステル化合物を含まない電解液を使用した比較例1に対し、本発明のリン酸エステル化合物を含む電解液を使用した実施例1ないし3では、高温保存ガスの量が減少した。また、本発明の範囲に含まれない化合物4(不飽和結合を有するが、フッ素原子を有さない)を含む電解液を使用した比較例2では、比較例1に対して高温保存ガス量が減少したものの、本発明の電解液には及ばなかった。また、本発明の範囲に含まれない化合物5(フッ素原子を有するが、不飽和結合を有さない)を含む電解液を使用した比較例3では、比較例1に対して高温保存ガス量が減少したものの、本発明の電解液には及ばなかった。
又、本発明のリン酸エステル化合物を含まない電解液を使用した比較例1に対し、本発明のリン酸エステル化合物を含む電解液を使用した実施例1ないし3では、高温保存後の電圧が高かった。また、本発明の範囲に含まれない化合物4(不飽和結合を有するが、フッ素原子を有さない)を含む電解液を使用した比較例2では、比較例1に対して高温保存後の電圧は高いものの、本発明の電解液には及ばなかった。また、本発明の範囲に含まれない化合物5(フッ素原子を有するが、不飽和結合を有さない)を含む電解液を使用した比較例3では、比較例1に対して高温保存後の電圧は高いものの、本発明の電解液には及ばなかった。
更に、本発明のリン酸エステル化合物を含まない電解液を使用した比較例1に対し、本発明のリン酸エステル化合物を含む電解液を使用した実施例1ないし3では高温保存後の容量が大きかった。また、本発明の範囲に含まれない化合物4(不飽和結合を有するが、フッ素原子を有さない)を含む電解液を使用した比較例2では、比較例1に対して高温保存後の容量が小さくなった。一方、本発明の範囲に含まれない化合物5(フッ素原子を有するが、不飽和結合を有さない)を含む電解液を使用した比較例3では、比較例1に対して高温保存後の容量が大きいものの、本発明の電解液には及ばなかった。
以上のことから、不飽和結合およびフッ素原子を共に有する本発明のリン酸エステル化合物を含有する非水系電解液の効果がわかる。
本発明の非水系電解液によれば、非水系電解液二次電池の電解液の分解を抑制し、電池を高温環境下で使用した際にガス発生及び電池の劣化を抑制すると共に高エネルギー密度の非水系電解液二次電池を製造することができる。従って、非水系電解液二次電池が用いられる電子機器等の各種の分野において好適に利用できる。
本発明の二次電池用非水系電解液や非水系電解液二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ等を挙げることができる。

Claims (7)

  1. 電解質と非水溶媒とを含む非水系電解液において、下記一般式(1)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物を含有することを特徴とする非水系電解液。
    Figure 0005387333
    (式中、R1、R2及びR3は、夫々独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基を表すが、R1、R2及びR3の少なくともいずれかはハロゲン原子で置換されており、かつR1、R2及びR3の少なくとも1つはハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基を表す。)
  2. 炭化水素基の炭素数が1以上10以下であり、アルケニル基の炭素数が2以上10以下であることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液。
  3. R1、R2及びR3の1つ又は2つがハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基であり、残りがハロゲン原子で置換されていてもよい飽和脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系電解液。
  4. 一般式(1)で表される化合物を0.001重量%以上10重量%以下含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の非水電解液。
  5. 炭素―炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ハロゲン原子を有する環状カーボネート、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩及びニトリル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の非水電解液。
  6. 負極、正極及び非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、非水系電解液が請求項1乃至5の何れか1項に記載の非水電解液であることを特徴とする非水電解液二次電池。
  7. 下記式(2)で表されるハロゲン含有リン酸エステル化合物。
    Figure 0005387333
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