以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、以下に記載する説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明は請求項に記載の要旨を超えない限り、これらの内容に特定されるものではない。
〔1.非水系電解液〕
本発明の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様に、通常はその主成分として、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を有し、更に前記式(1)で表される化合物を含有する。
〔1−1.式(1)で表される化合物〕
本発明の非水系電解液に含有される化合物は、下記の式(1)で表される。
R−CN (1)
[(1)式中、Rは炭素数11以上、30以下の直鎖又は分岐アルキル基を表す。]
Rが表すアルキル基の炭素数は11以上、30以下である。炭素数が多すぎると非水電解液の粘度が上昇して電池特性を悪化させる。よって、アルキル基の炭素数は20以下がより好ましい。
炭素数が少なすぎるとセパレーターや、電池部材に対する電解液の濡れ性が劣り、結果として満足な充放電が出来ない恐れがある。即ち、炭素数が11以上、30以下あることで、電池部材が十分に電解液に濡れるため均一な充放電が可能である。
また、Rで表されるアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、分岐の場合、その位置に制限はない。
前記式(1)におけるRの炭素数が11以上、17以下であるのが好ましく、特に炭素数が11以上、15以下であるのが好ましい。
Rの具体例としては次ようなものが挙げられる。
ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、1−メチルデシル基、1−エチルノニル基、1−エチルデシル基、1−メチルウンデシル基、1−エチルウンデシル基、2−メチルウンデシル基、2−エチルウンデシル基。
前記式(1)で表される化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
ドデカンニトリル(ラウロニトリル)、トリデカンニトリル、テトラデカンニトリル(ミリストニトリル)、ヘキサデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ヘプタデカンニトリル、オクタデカンニトリル(ステアノニトリル)、ノナデカンニトリル、イコサンニトリル。
上記の具体例の中でも、分子全体に対するニトリルの割合が多く、本発明の効果を得やすいことから次のものが好ましい。
ドデカンニトリル(ラウロニトリル)、トリデカンニトリル、テトラデカンニトリル(ミリストニトリル)、ヘキサデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ヘプタデカンニトリル、オクタデカンニトリル(ステアノニトリル)。
前記式(1)で表される化合物の製造方法には特に制限は無く、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
前記式(1)で表される化合物は、本発明の非水電解液中に、何れか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有させてもよい。
また、本発明の非水系電解液中の前記式(1)で表される化合物の含有量は0.001重量%以上、5重量%以下である。本発明の効果をより有効にするためには、好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、一方、好ましくは3重量%以下、更に好ましくは2.5重量%以下であり、5体積%未満が好ましい。この範囲の下限を下回ると本発明の効果を十分に発揮することが出来ず、上限を上回ると、非水電解液二次電池の抵抗が大きくなったり、電池特性が低下する。
〔1−2.モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩〕
本発明の非水系電解液は、更に、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含有するのが好ましい。モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含むことにより、電池を高温で保存後も容量の低下を抑制することが可能となる。
上記モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩としては、モノフルオロリン酸イオン、ジフルオロリン酸イオンと金属イオンとの塩(以下、「モノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩」等と略称する場合がある)と、モノフルオロリン酸イオン、ジフルオロリン酸イオンと4級オニウムとの塩(以下、「モノフルオロリン酸4級オニウム塩、ジフルオロリン酸4級オニウム塩」等と略称する場合がある)とが挙げられる。
<モノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩>
上記モノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩に用いられる金属としては、周期表の第1族、第2族、第13族の金属が挙げられる。
周期表第1族の金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。中でも、入手の容易性、得られる電池特性の点からリチウム、ナトリウムが好ましく、リチウムが特に好ましい。
周期表の第2族の金属の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム 、バリウム等が挙げられる。中でも、入手の容易性、得られる電池特性の点からマグネシウム、カルシウムが好ましく、マグネシウムが特に好ましい。
周期表の第13族の金属の具体例としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等が挙げられる。中でも、入手の容易性、得られる電池特性の点からアルミニウム、ガリウムが好ましく、アルミニウムが特に好ましい。
上記モノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩が、一分子内に有するこれらの金属原子の数は制限されず、1原子のみであってもよく、2原子以上であってもよい。
上記モノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩が一分子内に2原子以上の金属を含有する場合、これらの金属原子の種類は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、上記の周期表の第1族、第2族、第13族の金属以外の金属原子を1又は2以上有していてもよい。
モノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩の具体例としては、Li2PO3F、 Na2PO3F、MgPO3F、CaPO3F、Al2(PO3F)2、Ga2(PO3F)3、LiPO2F2、NaPO2F2、 Mg(PO2F2)2、Ca(PO2F2)2、Al(PO2F2)3、Ga(PO2F2)3 等が挙げられる。
中でも、入手の容易性、得られる電池特性の点から、Li2PO3F、LiPO2F2、NaPO2F2、Mg(PO2F2)2が好ましい
<モノフルオロリン酸4級オニウム塩、ジフルオロリン酸4級オニウム塩>
上記モノフルオロリン酸4級オニウム塩、ジフルオロリン酸4級オニウム塩に用いられる4級オニウムは、通常はカチオンであり、具体的には、下記一般式(2)で表されるカチオンが挙げられる。
(式中、R
1〜R
4は各々独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Qは周期表第15族に属する原子を表す。)
上記一般式(2)中、R1〜R4の炭化水素基の種類は制限されない。即ち、脂肪族炭化 水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、それらの結合した炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基の場合は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状及び環状が結合した構造であってもよい。鎖状炭化水素基の場合は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和結合を有していてもよい。
R1〜R4の炭化水素基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、s−ブチル基、2−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基 等が好ましい。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、2,2−ジメチルシクロペンチル基、2,3−ジメチルシクロペンチル基、2,4−ジメチルシクロペンチル基、2,5−ジメチルシクロペンチル基、3,3−ジメチルシクロペンチル基、3,4−ジメチルシクロペンチル基、2−エチルシクロペンチル基、3−エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2,2−ジメチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,4−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、3,4−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、2−エチルシクロヘキシル基、3−エチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、ビシクロ[3,2,1]オクタ−1−イル基、ビシクロ[3,2,1]オクタ−2−イル基等が挙げられ、中でも、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基 が好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、等が挙げられ、中でも、ベンジル基、2−フェニルエチル基が好ましい。
R1〜R4の炭化水素基は、1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。置換基の種類は、本発明における効果を著しく損なうことの無い限り制限されないが、例としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。なお、R1〜R4の炭化水素基が2以上の置換基を有する場合、これらの置換基は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
R1〜R4の炭化水素基は、任意の2つ以上を比較した場合に、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。R1〜R4の炭化水素基が置換基を有する場合には、それらの置換基も含めた置換炭化水素基が、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
更には、R1〜R4の炭化水素基或いはその置換基のうち任意の2つ以上が相互に結合して、環状構造を形成していてもよい。
R1〜R4の炭化水素基の炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。炭素数が多く、炭化水素基が大き過ぎると重量あたりのモル数が減り、種々の効果が低減する傾向がある。なお、R1〜R4の炭化水素基が置換基を有する場合には、それらの置換基も含めた置換炭化水素基の炭素数が、上記範囲を満たすものとする。
また、上記一般式(2)中、Qは、周期表の第15族に属する原子を表すが、中でも、窒素原子又は燐原子が好ましい。
以上のことから、上記一般式(2)で表される4級オニウムの好ましい例としては、脂肪族鎖状4級塩類、脂肪族環状アンモニウム、脂肪族環状ホスホニウム、含窒素ヘテロ環芳香族カチオン等が挙げられる。
脂肪族鎖状4級塩類としては、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム等が特に好ましい。
テトラアルキルアンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、 テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム等が挙げられる。
テトラアルキルホスホニウムの具体例としては、テトラメチルホスホニウム、エチルトリメチルホスホニウム、ジエチルジメチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム等が挙げられる。
脂肪族環状アンモニウムとしては、ピロリジニウム類、モルホリニウム類、イミダゾリニウム類、テトラヒドロピリミジニウム類、ピペラジニウム類、ピペリジニウム類等が特に好ましい。
ピロリジニウム類の具体例としては、N,N−ジメチルピロリジウム、N−エチル−N−メチルピロリジウム、N,N−ジエチルピロリジウム等が挙げられる。
モルホリニウム類の具体例としては、N,N−ジメチルモルホリニウム、N−エチル−N−メチルモルホリニウム、N,N−ジエチルモルホリニウム等が挙げられる。
イミダゾリニウム類の具体例としては、N,N'−ジメチルイミダゾリニウム、N−エチル−N'−メチルイミダゾリニウム、N,N'−ジエチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム等が挙げられる。
テトラヒドロピリミジニウム類の具体例としては、N,N'−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、N−エチル−N'−メチルテトラヒドロピリミジニウム、N,N'−ジエチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチルテトラヒドロピリミジニウム等が挙げられる。
ピペラジニウム類の具体例としては、N,N,N',N'−テトラメチルピペラジニウム、 N−エチル−N,N',N'−トリメチルピペラジニウム、N,N−ジエチル−N',N'−ジメチルピペラジニウム、N,N,N'−トリエチル−N'−メチルピペラジニウム、N,N,N',N'−テトラエチルピペラジニウム 等が挙げられる。
ピペリジニウム類の具体例としては、N,N−ジメチルピペリジニウム、N−エチル−N−メチルピペリジニウム、N,N−ジエチルピペリジニウム等が挙げられる。
含窒素ヘテロ環芳香族カチオンとしては、ピリジニウム類、イミダゾリウム類等が特に好ましい。
ピリジニウム類の具体例としては、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、 1,2−ジメチルピリミジニウム、1,3−ジメチルピリミジニウム、1,4−ジメチルピリミジニウム、1−エチル−2−メチルピリミジニウム等が挙げられる。
イミダゾリウム類の具体例としては、N,N'−ジメチルイミダゾリウム、N−エチル−N'−メチルイミダゾリウム、N,N'−ジエチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム等が挙げられる。
即ち、以上例示した4級オニウムとモノフルオロリン酸イオン、ジフルオロリン酸イオンとの塩が、本発明におけるモノフルオロリン酸4級オニウム塩、ジフルオロリン酸4級オニウム塩の好ましい具体例になる。
本発明の非水系電解液においては、1種類のモノフルオロリン酸塩又はジフルオロリン酸塩のみを用いてもよく、2種類以上のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよいが、二次電池を効率的に動作させるという観点から1種類のモノフルオロリン酸塩又はジフルオロリン酸塩を用いるのが好ましい。
また、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩の分子量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常150以上である。また、分子量の上限に特に制限は無いが、通常1000以下、好ましくは500以下が実用的で好ましい。
上述の如く、本発明においては、モノフルオロリン酸塩又はジフルオロリン酸塩を、1種類用いるのが好ましく、非水系電解液としたときに、これらの塩を2種以上混合して用いた方が好ましい場合には、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を2種以上混合して用いてもよい。
これらモノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩の製造方法にも特に制限は無く、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
本発明の非水系電解液がこれらモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む場合、その含有量は、全非水系電解液に対して、合計で10ppm以上(0.001重量%以上)であることが好ましく、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。また、含有量の上限は合計で、好ましくは5重量%、より好ましくは4重量%、更に好ましくは3重量%である。非水系電解液中のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩の濃度が低すぎると、これらの分解に基づく皮膜が充分に形成されず、電池特性を充分に発現することができなくなるおそれがあり、一方、その濃度が高過ぎると、余剰分の分解によって電池特性の低下をもたらすおそれがある。
なお、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、非水系電解液として実際に二次電池作製に供すると、その電池を解体して再び非水系電解液を抜き出しても、その中の含有量が著しく低下している場合が多い。従って、電池から抜き出した非水系電解液から、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が検出できるものは、非水系電解液中にこれらを本発明で規定する所定割合で含む非水系電解液であるとみなされる。
また、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、非水系電解液として実際に二次電池作製に供した後、その電池を解体して再び抜き出した非水系電解液にはモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩が含有されていなかった場合であっても、二次電池の他の構成部材である正極、負極、もしくはセパレータ上で検出される場合も多い。従って、正極、負極、セパレータの少なくとも一構成部材から、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が検出された場合もまた、非水系電解液中にこれらを本発明で規定する所定割合で含む非水系電解液とみなされる。また、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を非水系電解液に含ませると共に、正極、負極、セパレータの少なくとも一構成部材に含ませて用いた場合についても同様である。
なお、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩は、作成される非水系電解液二次電池の正極内、または正極の表面に予め含有させておくことでも、上述の効果を得ることができる。この場合、予め含有させたモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩の一部もしくは全てが非水系電解液中に溶解し、機能を発現することが期待され、この場合も、非水系電解液がモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む本発明の非水系電解液に該当することとなる。モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を予め正極内、または正極の表面に含有させる手段に関しては、特に限定されないが、具体的な例としては、後述する正極作成時に調合するスラリーにモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を溶解させておく、あるいは既に作成した正極に対し、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を任意の非水系溶媒に予め溶解させて作成した溶液を塗布或いは含浸させた後、用いた溶媒を乾燥、除去することで含有させる、などの方法が挙げられる。
また、実際に二次電池を作成した時に、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及び/ 又はジフルオロリン酸塩を含む非水系電解液からこれらフルオロリン酸塩を正極内または正極表面に含ませても良い。二次電池を作成する場合、非水系電解液は正極に含浸させるため、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む非水系電解液を用いた場合、非水系電解液中のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が正極内あるいは正極表面に含まれるようになる場合が多い。その為、電池を解体した時に回収される正極から、少なくともモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が検出できるものは、非水系電解液中にモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含んでいた本発明の非水系電解液とみなされる。
また、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩は、作成される非水系電解液二次電池の負極内、または負極の表面に予め含有させていておくことでも、上述の効果を得ることができる。この場合、予め含有させたモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩の一部もしくは全てが非水系電解液中に溶解し、機能を発現することが期待され、この場合も、非水系電解液がモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む本発明の非水系電解液に該当することとなる。モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を予め負極内、または負極の表面に含有させる手段に関しては、特に限定されないが、具体的な例としては、後述する負極作成時に調合するスラリーにモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を溶解させておく、あるいは既に作成した負極に対し、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を任意の非水系溶媒に予め溶解させて作成した溶液を塗布或いは含浸させた後、用いた溶媒を乾燥、除去することで含有させる、などの方法が挙げられる。
また、実際に二次電池を作成した時に、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む非水系電解液から負極内または負極表面に含ませても良い。二次電池を作成する場合、非水系電解液は負極に含浸させるため、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む非水系電解液を用いた場合、非水系電解液中のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が負極内あるいは負極表面に含まれるようになる場合が多い。その為、電池を解体した時に回収される負極から、少なくともモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が検出できるものは、非水系電解液中にモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含んでいた本発明の非水系電解液とみなされる。
さらに、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩は、作成される非水系電解液二次電池のセパレータ内、またはセパレータの表面に予め含有させていておくことでも、上述の効果を得ることができる。この場合、予め含有させたモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩の一部もしくは全てが非水系電解液中に溶解し、機能を発現することが期待され、この場合も、非水系電解液がモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む本発明の非水系電解液に該当することとなる。モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を予めセパレータ内、またはセパレータの表面に含有させる手段に関しては、特に限定されないが、具体的な例としては、セパレータ作成時にモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を混合させておく、あるいは二次電池に組み立てる前のセパレータに、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を任意の非水系溶媒に予め溶解させて作成した溶液を塗布或いは含浸させた後、用いた溶媒を乾燥、除去することで含有させる、などの方法が挙げられる。
また、実際に二次電池を作成した時に、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む非水系電解液からセパレータ内またはセパレータ表面に含ませても良い。二次電池を作成する場合、非水系電解液はセパレータに含浸させるため、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む非水系電解液を用いた場合、非水系電解液中のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩がセパレータ内あるいはセパレータ表面に含まれるようになる場合が多い。その為、電池を解体した時に回収されるセパレータから、少なくともモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が検出できるものは、非水系電解液中にモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含んでいた本発明の非水系電解液とみなされる。
〔1−3.非水溶媒〕
本発明の非水系電解液が含有する非水溶媒としては、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、任意のものを用いることができる。なお、非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
通常使用される非水溶媒の例としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状及び環状カルボン酸エステル、鎖状及び環状エーテル類、含リン有機溶媒、含硫黄有機溶媒 などが挙げられる。
環状カーボネートの種類に特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートは、誘電率が高いため電解質が溶解し易く、非水系電解液二次電池にしたときにサイクル特性が良いという点で好ましい。
また、鎖状カーボネートの種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート等が挙げられる。
更に、鎖状カルボン酸エステルの種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−イソブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸−イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸−イソブチル、プロピオン酸−t−ブチル 等が挙げられる。
これらの中でも、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルがより好ましい。
また、環状カルボン酸エステルの種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン 等が挙げられる。
これらの中でも、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
更に、鎖状エーテルの種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられる。
これらの中でも、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンがより好ましい。
また、環状エーテルの種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。
更に、含リン有機溶媒の種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類; 亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸エステル類;トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類; などが挙げられる。
また、含硫黄有機溶媒の種類にも特に制限は無いが、通常使用されるものの例としては、エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等が挙げられる。
これらの中でも、環状カーボネートであるエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを用いることが好ましく、更にこれらと鎖状カーボネートとを併用することが好ましい。
このように環状カーボネートと鎖状カーボネートとを非水溶媒として併用する場合、本発明の非水系電解液中の非水溶媒中に占める鎖状カーボネートの好適な含有量は、通常20体積%以上、好ましくは40体積%以上、また、通常95体積%以下、好ましくは90 体積%以下である。一方、本発明の非水系電解液中の非水溶媒中に占める環状カーボネートの好適な含有量は、通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上、また、通常70体積%以下、好ましくは50体積%以下である。鎖状カーボネートの割合が少な過ぎると、本発明の非水系電解液の粘度が上昇する場合があり、鎖状カーボネートの割合が多過ぎると、電解質であるリチウム塩の解離度が低下して、本発明の非水系電解液の電気伝導率が低下する場合がある。
〔1−4.電解質〕
本発明の非水系電解液に用いる電解質に制限は無く、目的とする非水系電解液二次電池に電解質として用いられるものであれば公知のものを任意に採用することができる。本発明の非水系電解液をリチウム二次電池に用いる場合には、通常は、電解質としてリチウム塩を用いる。
電解質の具体例としては、LiClO4 、LiAsF6、LiPF6、Li2CO3、LiBF4等の無機リチウム塩; LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,3−ヘキサフルオロプロパンジスルホニルイミド、リチウム環状1,2−テトラフルオロエタンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩;リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、等の含ジカルボン酸錯体リチウム塩; KPF6、 NaPF6、 NaBF4、NaCF3SO3等のナトリウム塩又はカリウム塩; などが挙げられる。
これらのうち、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、L iN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2−テトラフルオロエタンジスルホニルイミドが好ましく、特にLiPF6、LiBF4が好ましい。
また、電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、特定の無機リチウム塩の2種を併用したり、無機リチウム塩と含フッ素有機リチウム塩とを併用したりすると、トリクル充電時のガス発生が抑制され、若しくは高温保存後の劣化が抑制されるので好ましい。特に、LiPF6とLiBF4との併用や、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩と、LiCF3SO3、LiN(CF3 SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩とを併用することが好ましい。
更に、LiPF6とLiBF4とを併用する場合、電解質全体に対してLiBF4が通常 0.01重量%以上、50重量%以下の比率で含有されていることが好ましい。LiBF4は解離度が低く、比率が高過ぎると電解液の抵抗を高くする場合がある。
一方、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩と、LiCF3SO3、LiN(CF3 SO2)2、LiN(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩とを併用する場合、電解質全体に占める無機リチウム塩の割合は、通常70重量%以上、99重量%以下の範囲であることが望ましい。一般に含フッ素有機リチウム塩は無機リチウム塩と比較して分子量が大きく、比率が高過ぎると電解液全体に占める溶媒の比率が低下し電解液の抵抗を高くする場合がある。
本発明の非水系電解液中におけるリチウム塩の濃度は、本発明の効果を著しく行なわない限り任意であるが、通常0.5mol・dm-3以上、好ましくは0.6mol・dm-3以上、より好ましくは0.8mol・dm-3以上、また、通常3mol・dm-3以下、好ましくは2mol・dm-3以下、より好ましくは1.5mol・dm-3以下の範囲である。この濃度が低過ぎると、非水系電解液の電気伝導率が不十分となる場合があり、濃度が高過ぎると、粘度上昇のため電気伝導率が低下し、本発明の非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池の性能が低下する場合がある。
〔1−5.添加剤〕
本発明の非水系電解液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種の添加剤を含有していても良い。添加剤としては、従来公知のものを任意に用いることができる。
なお、添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
添加剤の例としては、過充電防止剤や、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤などが挙げられる。
過充電防止剤の具体例としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物; 2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ物; 2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニオール等の含フッ素アニソール化合物; などが挙げられる。
なお、これらの過充電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液が過充電防止剤を含有する場合、その濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体に対して通常0.1重%以上、5重量%以下の範囲とすることが望ましい。非水系電解液に過充電防止剤を含有させることによって、過充電による非水系電解液二次電池の破裂・発火を抑制することができ、非水系電解液二次電池の安全性が向上するので好ましい。
一方、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤の具体例としては、コハク酸、マレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸無水物; ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート等のカーボネート化合物; エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフイド、 N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物; 1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシイミド等の含窒素化合物; ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物; フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物; などが挙げられる。
なお、これらの助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液が助剤を含有する場合、その濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体に対して通常0.1重量%以上、5重量%以下の範囲とすることが好ましい。
なお、上記助剤のうちフルオロエチレンカーボネートは溶媒としても使用することが可能であり、そのときのフルオロエチレンカーボネートの濃度は、非水系電解液全体に対して5重量%以上、50重量%以下の範囲とすることが好ましい。
また、上記助剤のうち含フッ素芳香族化合物も溶媒としても使用することが可能であり、そのときの含フッ素芳香族化合物の濃度は、非水系電解液全体に対して5重量%以上、50重量%以下の範囲とすることが好ましい。
〔1−6.非水系電解液の製造方法〕
本発明の非水系電解液は、上述した非水溶媒に、上述した電解質と、本発明の前記式(1)で表される化合物と、好ましくはモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、必要に応じて用いられるその他の助剤などを溶解させることにより、調製することができる。
非水系電解液の調製に際して、非水溶媒などの各成分は、予め脱水しておくのが好ましい。具体的には、その水分含有率が通常50ppm以下、中でも20ppm以下の値となるまで脱水しておくことが好ましい。脱水の手法は任意に選択することが可能であるが、例えば減圧下で加熱したり、モレキュラーシーブを通過させたりする等の手法が挙げられる。
なお、本発明の非水系電解液は、これを高分子などのゲル化剤でゲル化して半固体状にして用いてもよい。半固体状電解質における上記非水系電解液の占める比率は、半固体状電解質の総量に対して、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは75重量%以上、また、通常99.95重量%以下、好ましくは99重量%以下、更に好ましくは98重量%以下の範囲である。半固体状電解質における非水系電解液の比率が 大き過ぎると、非水系電解液の保持が困難となって液漏れが生じやすくなり、逆に非水系電解液の比率が少な過ぎると、充放電効率や容量の点で不十分となることがある。
〔2.非水系電解液二次電池〕
本発明の非水系電解液二次電池は、負極及び非水系電解液以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様であり、通常は、本発明の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。本発明の非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
〔2−1.非水系電解液〕
非水系電解液としては、上述の本発明の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を混合して用いることも可能である。
〔2−2.負極〕
本発明の非水系電解液二次電池に用いられる負極を構成する負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
<炭素質材料負極>
炭素質材料負極(以下「炭素負極」と称す場合がある。)の負極活物質として用いられる炭素質材料としては、以下の(1)〜(4)から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスが良く好ましい。また、(1)〜(4)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(1)天然黒鉛
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400から3200℃の範囲で1回以上熱処理した炭素質材料
(3)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(4)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる配向性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
上記(2)の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質の具体的な例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、あるいはこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物、及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
なお、上記の炭化可能な有機物の、具体的な例としては、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、或いは乾留液化油等の石炭系重質油、常圧残油、減圧残油の直流系重質油、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等分解系石油重質油、更にアセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素、フェナジンやアクリジン等の窒素原子含有複素環式化合物、チオフェン、ビチオフェン等の硫黄原子含有複素環式化合物、ビフェニル、テルフェニル等のポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、含窒素性のポリアクニロニトリル、ポリピロール等の有機高分子、含硫黄性のポリチオフェン、ポリスチレン等の有機高分子、セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロースに代表される多糖類等の天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の熱可塑性樹脂、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
炭素負極の製造は、本発明の効果を著しく制限しない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
電池の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは、通常15μm以上であり、20μm以上が好ましく、30μm以上が更に好ましく、また、通常150μm以下であり、120μm以下が好ましく、100μm以下が更に好ましい。負極活物質の厚さが、この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。また、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができ、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
圧延法により作製した銅箔からなる集電体は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れにくく、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。
電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された非水系電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られるものである。上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させていても良い。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm〜1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理等)がなされていても良い。
金属薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましい。
金属皮膜の厚さが、1μmより薄くなると、強度が低下するため塗布が困難となる場合がある。また、100μmより厚くなると、捲回等の電極の形を変形させる場合がある。なお、金属薄膜は、メッシュ状でもよい。
集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液注液直前 の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下が更に好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上が更に好ましく、1以上が特に好ましい。
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上が更に好ましく、1.3g・cm-3以上が特に好ましく、また、2g・cm-3以下が好ましく、1.9g・cm-3以下がより好ましく、1.8g・cm-3以下が更に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー(結着剤)、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N・N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
負極活物質に対するバインダーの割合は、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量% 以上が更に好ましく、0.6重量%以上が特に好ましく、また、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましく、8重量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲を上回ると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1重量%以上であり、0.5重量%以上が好ましく、0.6重量%以上が更に好ましく、また、通常5重量%以下であり、3重量%以下が好ましく、2重量%以下が更に好ましい。
また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1重量%以上であり、2重量%以上が好ましく、3重量%以上が更に好ましく、また、通常15重量%以下であり、10重量%以下が好ましく、8重量%以下が更に好ましい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
増粘剤を用いる場合、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1重量%以上であり、0.5重量%以上が好ましく、0.6重量%以上が更に好ましく、また、通常5重量%以下であり、3重量%以下が好ましく、2重量%以下が更に好ましい。
負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
<合金系材料負極>
本発明の非水系電解液二次電池の負極は、金属イオンを吸蔵・放出しうる負極活物質として合金系材料、好ましくはSi、Sn及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有する負極(以下「合金系材料負極」と称す場合がある。)であってもよい。
前述の如く、本発明の非水系電解液は、前記式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするものであるが、このような式(1)で表される化合物を含む非水系電解液に対して、金属イオンを吸蔵・放出しうる負極活物質として、Si、Sn及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有する場合、特に有益な効果を得ることが可能となる。
合金系材料負極の負極活物質として用いられる合金系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、またはそれらの酸化物・炭化物・窒化物・珪化物・硫化物・燐化物等の化合物のいずれであっても特に限定はされないが、好ましくはリチウム合金を形成する単体金属及び合金であれば、周期表第13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料あることが好ましく、さらにはSi、Sn、及びPb(これらを以下「特定金属元素」という場合がある。)の単体金属、及びこれら原子を含む合金・化合物である事が好ましい。
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質の例としては、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物の例としては、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する炭化物、酸化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等の複合化合物が挙げられる。
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金、又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も例として挙げることができる。より具体的には、例えばSiやSnでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。また例えばSnでは、SnとSi、Sn、Pb以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位重量当りの容量が大きいことから、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、特に、Si及び/又はSnの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位重量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
また、金属単体又は合金を用いるよりは単位重量当りの容量には劣るものの、サイクル特性に優れることから、Si及び/又はSnを含有する以下の化合物も好ましい。
・Si及び/又はSnと酸素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下のSi及び/又はSnの酸化物。
・Si及び/又はSnと窒素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下のSi及び/又はSnの窒化物。
・Si及び/又はSnと炭素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に
好ましくは1.1以下のSi及び/又はSnの炭化物。
なお、上述の負極活物質は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
合金系材料負極は、公知のいずれの方法を用いて製造することが可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
負極集電体の材質としては、鋼、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがある。
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラ スト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシなどで集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
また、負極集電体の重量を低減させて電池の重量当たりのエネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの負極集電体を使用することもできる。このタイプの負極集電体は、その開口率を変更することで、重量も白在に変更可能である。また、このタイプの負極集電体の両面に負極活物質層を形成させた場合、この穴を通してのリベット効果により、負極活物質層の剥離が更に起こり難くなる。しかし、開口率があまりに高くなった場合には、負極活物質層と負極集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合わせた材料を指すものとする。
負極材中における負極活物質の含有量は、通常70重量%以上、特に75重量%以上、また、通常97重量%以下、特に95重量%以下であることが好ましい。負極活物質の含有量が少な過ぎると、得られる負極を用いた二次電池の容量が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に導電剤の含有量が不足することにより、負極としての電気伝導性を確保しづらい傾向にある。なお、二以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、通常3重量%以上、特に5重量%以上、また、通常30重量%以下、特に25重量%以下であることが好ましい。導電材の含有量が少な過ぎると導電性が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や強度が低下する傾向となる。なお、二以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。結着剤の含有量は、負極材100重量部に対して通常0.5重量部以上、特に1重量部以上、また、通常10重量部以下、特に8重量部以下であることが好ましい。結着剤の含有量が少な過ぎると得られる負極の強度が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や導電性が不足する傾向となる。なお、二以上の結着剤を併用する場合には、結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。増粘剤は必要に応じて使用すればよいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5重量%以上、5重量%以下の範囲で用いることが好ましい。
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電剤や結着剤、増粘剤を混合して、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製される。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類などの有機溶媒を、水に対して30重量%以下の範囲で併用することもできる。また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。なお、これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成される。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
上記手法により負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、好ましくは1g・cm-3以上、より好ましくは1.2g・cm-3以上、更に好ましくは1.3g・cm-3以上であり、上限として2g・cm-3以下、好ましくは1.9g・cm-3以下、より好ましくは1.8g・cm-3以下、更に好ましくは1.7g・cm-3以下の範囲である。この範囲を上回ると活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
〔2−3.正極〕
本発明の非水系電解液二次電池に使用される正極に含まれる正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、例えば、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、LiCoO2等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO2、LiMn2O4、Li2MnO4等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiMn1.8Al0.2O4、Li Mn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等のリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
上記の正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質(以後、適宜「表面付着物質」という)が付着したものを用いることもできる。表面付着物質の例としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により、正極活物質表面に付着させることができる。
正極活物質の表面に付着している表面付着物質の質量は、正極活物質の質量に対して、通常0.1ppm以上であり、1ppm以上が好ましく、10ppm以上が更に好ましく、また、通常20%以下であり、10%以下が好ましく、5%以下が更に好ましい。
表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができる。しかし、付着量が上記範囲を下回ると、その効果は十分に発現せず、また上記範囲を上回ると、リチウムイオンの出入りを阻害するために抵抗が増加する場合があるため、上記範囲が好ましい。
正極活物質粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状又は楕円球状であるものが好ましい。
通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。従って、一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐためである。
また、板状等軸配向性の粒子よりも、球状又は楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作成する際の導電剤との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
正極活物質のタップ密度は、通常1.3g・cm-3以上であり、1.5g・cm-3以上が好ましく、1.6g・cm-3以上が更に好ましく、1.7g・cm-3以上が特に好ましく、また、通常2.5g・cm-3以下であり、2.4g・cm-3以下が好ましい。
タップ密度の高い金属複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。従って、正極活物質のタップ密度が上記範囲を下回ると、正極活物質層形成時に必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。また、タップ密度は一般に大きいほど好ましく特に上限はないが、上記範囲を下回ると、正極活物質層内における非水系電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合がある。
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセ
ルに試料を落下させてセル容積を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明の正極活物質のタップ密度として定義する。
正極活物質粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上が好ましく、1μm以上が更に好ましく、3μm以上が特に好ましく、また、通常20μm以下であり、18μm以下が好ましく、16μm以下が更に好ましく、15μm以下が特に好ましい。メジアン径d50が、上記範囲を下回ると、高嵩密度品が得られなくなる場合があり、上記範囲を上回ると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池特性の低下や、電池の正極作成すなわち活物質と導電剤やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等が生じる場合がある。
なお、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上、任意の比率で混合することで、正極作成時の充填性を更に向上させることもできる。
正極活物質粒子のメジアン径d50の測定は、0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒にして、粒度分布計として堀場製作所社製LA−920用いて、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24に設定して測定することができる。また、正極活物質粒子のメジアン径d50は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いても測定することができる。
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合、正極活物質の平均一次粒子径は、通常0.01μm以上であり、0.05μm以上が好ましく、0.08μm以上が更に好ましく、0.1μm以上が特に好ましく、また、通常3μm以下であり、2μm以下が好ましく、1μm以下更に好ましく、0.6μm以下が特に好ましい。
上記範囲を上回ると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。また、上記範囲を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等、二次電池の性能を低下させる場合がある。
なお、正極活物質の平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
正極活物質のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.2m2・g-1以上であり、0.3m2・g-1以上が好ましく、0.4m2・g-1以上が更に好ましく、また、通常4.0m2・g-1以下であり、2.5m2・g-1以下が好ましく、1.5m2・g-1以下が更に好ましい。
BET比表面積の値が、上記範囲を下回ると、電池性能が低下しやすくなる。また、上記範囲を上回ると、タップ密度が上がりにくくなり、正極活物質形成時の塗布性が低下する場合がある。
BET比表面積は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて測定する。試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定する。該測定で求められる比表面積を、正極活物質のBET比表面積と定義する。
正極活物質の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばその1つとして、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が 挙げられる。
さらに別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原 料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
以下に、本発明に使用される正極の構成及びその作製法について説明する。
正極は、正極活物質粒子と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。
正極活物質を用いる正極の製造は、公知の何れの方法で作製することができる。すなわち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
正極活物質の正極活物質層中の含有量は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、また、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である。正極活物質層中の正極活物質の含有量が、上記範囲を下回ると、電気容量が不十分となる場合がある。また、上記範囲を上回ると、正極の強度が不足する場合がある。なお、正極活物質粉体は1種を単独で用いても良く、異なる組成又は異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
導電材は、正極活物質層中に、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下含有するように用いられる。導電材の含有量が上記範囲よりも下回ると、導電性が不十分となる場合がある。また、上記範囲よりも上回ると、電 池容量が低下する場合がある。
正極活物質層の製造に用いる結着剤は、非水系電解液や電極製造時用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
塗布法による場合の結着剤は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば良いが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1重量%以上であり、1重量%以上が好ましく、3重量%以上が更に好ましく、また、通常80重量%以下であり、60重量%以下が好ましく、40重量%以下が更に好ましく、10重量%以下が特に好ましい。
結着剤の割合が、上記範囲を下回ると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。また、上記範囲を上回ると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電剤、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。
水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N・N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。
増粘剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
増粘剤を使用する場合、活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.6重量%以上、また、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下が望ましい。上記範囲を下回ると著しく塗布性が低下する場合があり、また上記範囲を上回ると、正極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
スラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.5g・cm-3以上が更に好ましく、2g・cm-3以上が特に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3.5g・cm-3以下が更に好ましく、3g・cm-3以下が特に好ましい。正極活物質層の密度が、上記範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下する場合がある。また上記範囲を下回ると、活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大する場合がある。
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
集電体の金属薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下が更に好ましい。金属薄膜が、上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足する場合がある。また、薄膜が上記範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる場合がある。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)が通常150以下であり、20以下が好ましく、10以下が特に好ましく、また、通常0.1以上であり、0.4以上が好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と正極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和が面積比で20倍以上とすることが好ましく、更に40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
正極板の厚さは特に限定されるものではないが、高容量かつ高出力、高レート特性の観点から、集電体の厚さを差し引いた正極活物質層の厚さは、集電体の片面に対して、10μm以上が好ましく、20μm以上が更に好ましく、また、200μm以下が好ましく、100μm以下が更に好ましい。
〔2−4.セパレータ〕
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、更に好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上が更に好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化珪素等の酸化物類、窒化アルミや窒化珪素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
その形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として多孔層を形成させることが挙げられる。
〔2−5.電池設計〕
<電極群>
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のものの何れでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解液の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、更には、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
<集電構造>
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明の非水系電解液による高温保存特性およびサイクル特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
電極群が前述の積層構造では、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。一枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造では、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
前述の構造を最適化することにより、内部抵抗をできるだけ小さくすることができる。大電流で用いられる電池では、10kHz交流法で測定されるインピーダンス(以下、「直流抵抗成分」と略記する)を10ミリオーム(mΩ)以下にすることが好ましく、直流抵抗成分を5ミリオーム(mΩ)以下にすることがより好ましい。
直流抵抗成分を0.1ミリオーム以下にすると高出力特性が向上するが、用いられる集電構造材の占める比率が増え、電池容量が減少する場合がある。
<保護素子>
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常発熱や 熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
<外装体>
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
外装ケースの材質は本発明の非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
前記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して前記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。前記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、前記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
また、外装ケースの形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1-1〜1-2、比較例1-1〜1-5]
<非水系電解液の調製>
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートの混合物(容量比2:3:3)に、それぞれ十分に乾燥したLiPF6を1mol・dm-3、ビニレンカーボネートを2重量%となるように加え、さらにニトリル化合物を溶解して非水系電解液を調製した。各実施例、比較例におけるニトリル化合物の種類と濃度を表1に示した(ただし、比較例1-1ではニトリル化合物を使用しなかった)。
<正極の作製>
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)94重量%と、導電材としてのアセチレンブラック3重量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを負極容量の90%の容量となるように、厚さ15μmのアルミ箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ85μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅65mm、長さ150mmの形状に切り出した。このものを、活物質が幅30mm、長さ40mmとなるように切り出して正極とした。なお、この正極は摂氏80度において12時間減圧乾燥をして用いた。
(炭素負極の作製)
負極活物質として人造黒鉛粉末KS−44(ティムカル社製、商品名)98重量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1重量%)100重量部、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50重量%)2重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ75μmに圧延した。このものを、活物質が幅30mm、長さ40mmとなるように切り出して負極とした。なお、この負極は摂氏60度で12時間減圧乾燥して用いた。
<二次電池の作成>
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、正極、セパレータ、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に0.4mL注入し、真空封止を行ない、シート状電池を作製した。
<電池の評価>
1.4.2Vにおける高温保存試験
上記シート状の電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において0.2Cに相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させた。その後、4.2V−CCCV(0.05Cカット)充電を行った後、85℃、24時間の条件で高温保存試験を行った。この高温保存の前後で、シート状電池をエタノール浴中に浸して、体積の変化から発生したガス量(保存ガス)を求めた。
本発明のニトリル化合物を含まない電解液を使用した比較例1-1を用いたときに対し、本発明のニトリル化合物を含む電解液を使用した実施例1-1および1-2では保存ガスの量が減少した。また、本発明の範囲に含まれない鎖状モノニトリルを含む電解液を使用した比較例1-2〜1-5では比較例1-1に対して保存ガス量が減少するものの、その効果は本発明のニトリル化合物には及ばなかった。
[実施例2-1〜2-2、比較例2-1〜2-2]
<非水系電解液の調製>
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートの混合物(容量比2:8)に、それぞれ十分に乾燥したLiPF6を1mol・dm-3、さらにラウロニトリルおよびジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)をそれぞれ表2に示すように溶解して非水系電解液を調製した。
<電池の作成>
評価用の電池は前記実施例1に記載の方法に準ずる方法で行った。
<電池の評価>
1.4.33Vにおける高温保存試験
上記シート状の電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において0.2Cに相当する定電流で充電終止電圧4.33V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させた。その後、4.33V−CCCV(0.05Cカット)充電を行った後、85℃、24時間の条件で高温保存試験を行った。この高温保存の前後で、シート状電池をエタノール浴中に浸して、体積の変化から発生したガス量(保存ガス)を求めた。また、上記保存試験後の電池を0.2C相当の定電流で放電させた後、 4.33V−CCCV(0.05Cカット)充電を行った後、再び0.2C相当の定電流で3VまでCC放電させた容量を保存後の容量とした。これを回復容量という。
本発明で規定するニトリル化合物並びに、モノ及び/又はジフルオロリン酸塩を含まない電解液を使用した比較例2-1に比べ、本発明で規定するニトリル化合物を含む電解液を使用した実施例2-1では保存ガスが減少し、保存後の容量も増加した。また、本発明で規定するニトリル化合物を含まず、ジフルオロリン酸リチウム塩を含む電解液を 使用した比較例2-2は比較例2-1に比べ、保存後の容量は増加するものの、保存ガス量が増加してしまった。一方、本発明で規定するニトリル化合物を含み、かつジフルオロリン酸リチウム塩を含む電解液を使用した実施例2-2では本発明のニトリル化合物を含まず、ジフルオロリン酸リチウム塩を含む電解液を使用した比較例2-2と比べて保存ガスが減少し、かつ保存後の容量は同じ値を保った。
[実施例3-1、比較例3-1〜3-2]
<非水系電解液の調製>
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートの混合物(容量比3:7)に、それぞれ十分に乾燥したLiPF6を1mol・dm-3、さらにニトリル化合物をそれぞれ表3記載の濃度になるように溶解して非水系電解液を調製した(ただし、比較例3-1では添加剤を使用しない)。
<正極の作製>
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)94重量%と、導電材として
のアセチレンブラック3重量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを負極容量の90%の容量となるように、厚さ15μmのアルミ箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ85μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅65mm、長さ150mmの形状に切り出した。このものを、活物質が幅30mm、長さ40mmとなるように切り出して正極とした。なお、この正極は摂氏80度において12時間減圧乾燥をして用いた。
<負極の作製>
(ケイ素合金負極の作製)
負極活物質として、非炭素材料であるケイ素73.2重量部及び銅8.1重量部と、人造黒鉛粉末(ティムカル社製商品名「KS−6」)12.2重量部とを用い、これらにポリフッ化ビニリデンを12重量部含有するN−メチルピロリドン溶液54.2重量部、及び、N−メチルピロリドン50重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー状とした。得られたスラリーを、負極集電体である厚さ18μmの銅箔上に均一に塗布して負極とし、その後電極密度が1.5g・cm-3程度となるようにプレスし、活物質が幅30mm、長さ40mmとなるように切り出して負極(ケイ素合金負極)とした。なお、この負極は摂氏60度で12時間減圧乾燥して用いた。
<電池の作成>
評価用の電池は前記実施例1−1に記載の方法に準ずる方法で行った。
<電池の評価>
1.Si負極を使用した高温保存試験
上記シート状の電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において0.2Cに相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させた。その後、4.2V−CCCV(0.05Cカット)充電を行った後、85℃、24時間の条件で高温保存試験を行った。この高温保存の前後で、シート状電池をエタノール浴中に浸して、体積の変化から発生したガス量(保存ガス)を求めた。また、上記保存試験終了後の電池電圧(開回路電圧)を測定した。
本発明で規定するニトリル化合物を含まない電解液を使用した比較例3-1に比べ、本発明で規定するニトリル化合物を含む電解液を使用した実施例3-1は保存ガスの量が減少し、保存試験終了後の電池電圧は高い状態を保っていた。また、本発明で規定するニトリル化合物の範囲に含まれない鎖状モノニトリルを含む電解液を使用した比較例3-2では比較例3-1に対して保存ガス量が減少するものの、その効果は実施例3−1には及ばなかった。 また、比較例3-2では比較例3-1に対して保存試験終了後の電池電圧も高い状態を保っていたが、その効果は実施例3−1には及ばなかった。
[実施例4-1、比較例4-1〜4-3]
<非水系電解液の調製>
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートの混合物(容量比1:1)に、それぞれ十分に乾燥したLiPF6を1mol・dm-3、さらに表4に記載の通りニトリル化合物を溶解して非水系電解液を調製した。
<濡れ性の評価>
1.セパレーターへの電解液の浸透試験
上記電解液をポリエチレン製のセパレーター上に静かに滴下して、電解液のセパレーターへの浸透を目視にて確認した。
本発明に記載のニトリル化合物を含む電解液(実施例4−1)はセパレーターへの滴下後10分以内にセパレータに浸透した。一方、ニトリル化合物を含まない電解液(比較例4-1)および、本発明で規定するニトリル化合物の範囲に含まれない鎖状モノニトリルを含む電解液(比較例4-2〜4-3)では30分以上放置してもセパレーターへの浸透は観察されなかった。
以上のような結果から、本発明で規定するニトリル化合物を含有する非水系電解液を用いることで、保存ガスの抑制、保存後容量の増加、保存後電池電圧の維持、セパレーターへの濡れ性向上などの特性が向上することが分かる。