以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池用電解液
2.二次電池
2−1.第1の二次電池(リチウムイオン二次電池:円筒型+塗布法等)
2−2.第2の二次電池(リチウムイオン二次電池:円筒型+気相法等)
2−3.第3の二次電池(リチウム金属二次電池:円筒型)
2−4.第4の二次電池(ラミネート型)
2−5.第5の二次電池(コイン型)
<1.二次電池用電解液>
本発明の一実施の形態に係る二次電池用電解液(以下、単に「電解液」ともいう。)は、例えば二次電池などの電気化学デバイスに用いられるものであり、溶媒と、電解質塩とを含んでいる。
溶媒は、主溶媒と、副溶媒とを含んでいる。主溶媒は、化7で表されるハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルおよび化8で表されるハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含有している。副溶媒は、化9、化10および化11で表される化合物のうちの少なくとも1種を含有している。主溶媒と副溶媒とを併せて含むことにより、電解液の化学的安定性が向上するからである。
(R1、R2、R3およびR4は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
(R11、R12、R13、R14、R15およびR16は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
(R21およびR23はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、または芳香族炭化水素基あるいは脂環式炭化水素基で置換したアルキル基、アルケニル基あるいはアルキニル基、またはそれらをハロゲン化した基である。R22は直鎖状あるいは分岐状のアルキレン基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とを有する2価の基、エーテル結合とアルキレン基とを有する炭素数2〜12の2価の基、またはそれらをハロゲン化した基である。)
(R31およびR33はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、または芳香族炭化水素基あるいは脂環式炭化水素基で置換したアルキル基、アルケニル基あるいはアルキニル基、またはそれらをハロゲン化した基である。R32は直鎖状あるいは分岐状のアルキレン基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とを有する2価の基、エーテル結合とアルキレン基とを有する炭素数2〜12の2価の基、またはそれらをハロゲン化した基である。)
(R41およびR43はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、または芳香族炭化水素基あるいは脂環式炭化水素基で置換したアルキル基、アルケニル基あるいはアルキニル基、またはそれらをハロゲン化した基である。R42は直鎖状あるいは分岐状のアルキレン基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とを有する2価の基、エーテル結合とアルキレン基とを有する炭素数2〜12の2価の基、またはそれらをハロゲン化した基である。)
なお、化7中のR1〜R4は、互いに同一でもよいし、異なってもよい。化8中のR11〜R16についても同様である。また、化9中のR21およびR23は、互いに同一でもよいし、異なってもよい。化10中のR31およびR33、あるいは化11中のR41およびR43についても同様である。化9〜化11について説明した「それらをハロゲン化した基」とは、少なくとも一部の水素基がハロゲン基に置換された基という意味であり、後述する化22についても同様である。
以下に、化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステル、化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステル、ならびに化9、化10および化11に示した化合物の具体的な構成について、詳細に説明する。
化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルおよび化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルは、電解液が電気化学デバイスに用いられた場合に、電極の表面に被膜(ハロゲン化物)を形成して電解液の化学的安定性を向上させる。それぞれが有するハロゲンの個数は、2個以上が好ましい。ハロゲンの個数が1個の場合よりも強固で安定な被膜が形成されるため、より高い効果が得られるからである。
化7に示したR1〜R4のうちの少なくとも1種がアルキル基あるいはハロゲン化アルキル基である場合、そのR1〜R4としては、メチル基、エチル基、ハロゲン化メチル基あるいはハロゲン化エチル基などが好ましい。十分な効果が得られるからである。
化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルとしては、例えば、化12および化13で表される一連の化合物が挙げられる。すなわち、化12に示した(1)の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(2)の4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(3)の4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(4)のテトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(5)の4−フルオロ−5−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(6)の4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(7)のテトラクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(8)の4,5−ビストリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(9)の4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(10)の4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(11)の4−メチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(12)の4−エチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。また、化13に示した(1)の4−トリフルオロメチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(2)の4−トリフルオロメチル−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(3)の4−フルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(4)の4,4−ジフルオロ−5−(1,1−ジフルオロエチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン、(5)の4,5−ジクロロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(6)の4−エチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(7)の4−エチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(8)の4−エチル−4,5,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(9)の4−フルオロ−4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(10)の4,5−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(11)の4−ブロモ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンのうちの少なくとも1種が好ましく、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンがより好ましい。容易に入手可能であると共に、より高い効果が得られるからである。特に、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。なお、化11に示した構造を有していれば、上記した化合物に限定されないことは、言うまでもない。
化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ビス(フルオロメチル)、炭酸フルオロメチルメチルあるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、炭酸ビス(フルオロメチル)が好ましい。十分な効果が得られるからである。なお、化12に示した構造を有していれば、上記した化合物に限定されないことは、言うまでもない。
副溶媒である化9〜化11に示した化合物の含有量としては、溶媒中において0.001重量%以上10重量%以下が好ましい。十分な効果が得られるからである。中でも、0.001重量%以上1重量%以下がより好ましく、0.1重量%以上1重量%以下が特に好ましい。より高い効果が得られるからである。
化9に示した化合物の分子量としては、200以上800以下が好ましく、200以上600以下がより好ましく、200以上450以下が特に好ましい。十分な効果が得られると共に、十分な溶解性および相溶性が得られるからである。
化9に示したR21およびR23としては、例えば、以下の基が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n(ノルマル)−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec(セカンダリ)−ブチル基、tert(ターシャリ)−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、あるいはn−ヘキシル基などが挙げられる。アルケニル基としては、n−ヘプチル基、ビニル基、2−メチルビニル基、2,2−ジメチルビニル基、ブテン−2,4−ジイル基、あるいはアリル基などが挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基などが挙げられる。アルキル基、アルケニル基あるいはアルキニル基の炭素数としては、1以上20以下が好ましく、1以上7以下がより好ましく、1以上4以下が特に好ましい。十分な効果が得られると共に、十分な相溶性が得られるからである。
アルキル基、アルケニル基あるいはアルキニル基が芳香族炭化水素基あるいは脂環式炭化水素基で置換される場合、芳香族炭化水素基としてはフェニル基などが挙げられ、脂環式炭化水素基としてはシクロヘキシル基などが挙げられる。このうち、フェニル基で置換されたアルキル基(いわゆるアラルキル基)としては、例えば、ベンジル基あるいは2−フェニルエチル基(フェネチル基)などが挙げられる。
ハロゲンで置換されたアルキル基(ハロゲン化アルキル基)としては、フッ素化アルキル基が挙げられる。このフッ素化アルキル基は、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、あるいはペンタフルオロエチル基などが挙げられる。
中でも、ハロゲンで置換されたアルキル基等よりも、芳香族炭化水素基あるいは脂環式炭化水素基で置換されたアルキル基等が好ましく、芳香族炭化水素基あるいは脂環式炭化水素基で置換されていないアルキル基等がより好ましい。芳香族炭化水素基あるいは脂環式炭化水素基で置換されたアルキル基等について、芳香族炭化水素基あるいは脂環式炭化水素基の炭素数とアルキル基等の炭素数との合計としては、20以下が好ましく、7以下がより好ましい。
化9に示したR22が直鎖状あるいは分岐状のアルキレン基、アリーレン基、あるいはアリーレン基とアルキレン基とを有する2価の基の場合、それらの基の炭素数は任意に設定可能である。中でも、2以上10以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下が特に好ましい。十分な効果が得られると共に、十分な相溶性が得られるからである。なお、アリーレン基とアルキレン基とを有する2価の基としては、1つのアリーレン基と1つのアルキレン基とが連結されている2価の基であってもよいし、2つのアルキレン基がアリーレン基を介して連結されている2価の基(アラルキレン基)であってもよい。
この場合のR22としては、例えば、化14(1)〜(7)で表される直鎖状のアルキレン基、化15(1)〜(9)で表される分岐状のアルキレン基、化16(1)〜(3)で表されるアリーレン基、あるいは化16(4)〜(6)で表されるアリーレン基とアルキレン基とを有する2価の基などが挙げられる。化16(4)〜(6)に示した2価の基は、いわゆるベンジリデン基である。
また、R22がエーテル結合とアルキレン基とを有する炭素数2〜12の2価の基の場合、少なくとも2つのアルキレン基がエーテル結合を介して連結されており、末端が炭素原子である基が好ましい。その場合の炭素数は、4以上12以下が好ましい。十分な効果が得られると共に、十分な相溶性が得られるからである。なお、エーテル結合とアルキレン基とを有する炭素数2〜12の2価の基では、エーテル結合の数や、エーテル結合とアルキレン基との連結順は、任意に設定可能である。
この場合のR22としては、例えば、化17(1)〜(13)で表される2価の基などが挙げられる。化17に示した2価の基がフッ素化された場合、そのR22としては、例えば、化18(1)〜(9)で表される2価の基などが挙げられる。中でも、化17(6)〜(8)に示した2価の基が好ましい。
化9に示した化合物の具体例としては、化19で表される化合物などが挙げられる。十分な効果が得られるからである。なお、化9に示した構造を有していれば、化19に示した化合物に限定されないことは、言うまでもない。
化10に示した化合物の分子量は、162以上1000以下が好ましく、162以上500以下がより好ましく、162以上300以下が特に好ましい。十分な効果が得られると共に、十分な相溶性が得られるからである。化10に示したR31およびR33の具体例は、例えば、上記した化9に示したR21およびR23の具体例と同様である。また、化10に示したR32の具体例は、例えば、上記した化9に示したR22の具体例と同様である。化10に示した化合物の具体例としては、化20で表される化合物などが挙げられる。十分な効果が得られるからである。この他、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、トリエチレングリコールジブチレート、テトラエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジプロピオネート、あるいはテトラエチレングリコールジブチレートなども挙げられる。なお、化10に示した構造を有していれば、上記した化合物に限定されないことは、言うまでもない。
化11に示した化合物の分子量は、200以上800以下が好ましく、200以上600以下がより好ましく、200以上450以下が特に好ましい。十分な効果が得られると共に、十分な溶解性および相溶性が得られるからである。化11に示したR41およびR43の具体例は、例えば、上記した化9に示したR21およびR23の具体例と同様である。また、化11に示したR42の具体例は、例えば、上記した化9に示したR22の具体例と同様である。化11に示した化合物の具体例としては、化21で表される化合物などが挙げられる。十分な効果が得られるからである。なお、化11に示した構造を有していれば、化21に示した化合物に限定されないことは、言うまでもない。
また、主溶媒は、化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルおよび化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルのうちの少なくとも1種の他に、他の有機溶媒などの非水溶媒を含有していてもよい。この非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、ジメチルスルホキシドあるいはジメチルスルホキシド燐酸などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、主溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルのうちの少なくとも1種を含有しているのが好ましい。十分な効果が得られるからである。この場合には、特に、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)とを混合して含有しているのが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するため、より高い効果が得られるからである。
溶媒は、さらに、補助溶媒を含んでいてもよい。この補助溶媒は、化22で表される化合物を含有しているのが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。溶媒中における補助溶媒の含有量は、0.001重量%以上1重量%以下であることが好ましい。十分な効果が得られるからである。
(R51、R52およびR53はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、または芳香族炭化水素基あるいは脂環式炭化水素基で置換したアルキル基、アルケニル基あるいはアルキニル基、またはそれらをハロゲン化した基である。)
化22に示した化合物の分子量としては、200以上800以下が好ましく、200以上600以下がより好ましく、200以上450以下が特に好ましい。十分な効果が得られると共に、十分な相溶性が得られるからである。化22に示したR51、R52およびR53の具体例は、化9に示したR21およびR23の具体例と同様である。
化22に示した化合物の具体例としては、化23で表される化合物などが挙げられる。なお、化22に示した構造を有していれば、化23に示した化合物に限定されないことは、言うまでもない。
また、溶媒は、その他の溶媒として、不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有しているのが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。溶媒中における不飽和結合を有する環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%以上5重量%以下が好ましい。十分な効果が得られるからである。この不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ビニレン系化合物、炭酸ビニルエチレン系化合物および炭酸メチレンエチレン系化合物のうちの少なくとも1種などが挙げられる。
炭酸ビニレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オンあるいは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどが挙げられる。
炭酸ビニルエチレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
炭酸メチレンエチレン系化合物としては、4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、炭酸ビニレンが好ましい。十分な効果が得られるからである。
また、溶媒は、その他の溶媒として、スルトン(環状スルホン酸エステル)や、酸無水物を含有しているのが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。溶媒中におけるスルトンの含有量は、0.5重量%以上3重量%以下が好ましい。十分な効果が得られるからである。スルトンとしては、例えば、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、プロペンスルトンが好ましい。十分な効果が得られるからである。
溶媒中における酸無水物の含有量は、0.5重量%以上3重量%以下が好ましい。十分な効果が得られるからである。酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸あるいは無水マレイン酸などのカルボン酸無水物、無水エタンジスルホン酸あるいは無水プロパンジスルホン酸などのジスルホン酸無水物、あるいは無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸あるいは無水スルホ酪酸などのカルボン酸とスルホン酸との無水物などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、溶媒は、無水コハク酸あるいは無水スルホ安息香酸を含有しているのがより好ましい。十分な効果が得られるからである。
溶媒の固有粘度は、例えば、25℃において10.0mPa・s以下であることが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度を確保できるからである。なお、溶媒に電解質塩を溶解した状態における固有粘度(すなわち、電解液の固有粘度)も、25℃において10.0mPa・s以下であることが好ましい。同様の理由からである。
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩の1種あるいは2種以上を含有している。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 H5 )4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちの少なくとも1種が好ましく、特に、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。電解液の抵抗が低下するため、十分な化学的安定性が得られるからである。また、六フッ化リン酸リチウムと四フッ化ホウ酸リチウムとの組み合わせが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。
また、電解質塩は、化24に示した化合物を含有しているのが好ましい。より高い効果が得られるからである。化24に示した化合物としては、例えば、化25に示した化合物が挙げられる。
(Z61は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素、またはアルミニウムである。M61は遷移金属元素、または短周期型周期表における3B族元素、4B族元素あるいは5B族元素である。R61はハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。X61およびX62は酸素あるいは硫黄である。Y61は−OC−R62−CO−、−OC−C(R63)(R64)−あるいは−OC−CO−である。ただし、R62はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基であり、R63およびR64はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。なお、a6は1〜4の整数であり、b6は0〜8の整数であり、c6、d6、m6およびn6は1〜3の整数である。)
(Z71は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素、またはアルミニウムである。M71はリンあるいはホウ素である。R71はハロゲン基である。Y71は−OC−R72−CO−、−OC−C(R73)(R74)−あるいは−OC−CO−である。ただし、R72はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基であり、R73およびR74はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。なお、a7は1〜4の整数であり、b7は0、2あるいは4の整数であり、c7、d7、m7およびn7は1〜3の整数である。)
なお、化24に示したX61およびX62は、互いに同一でもよいし、異なってもよい。化24に示したR63およびR64や、化25に示したR73およびR74についても同様である。
化25に示した化合物の具体例としては、化26(1)〜(6)に示した化合物などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種を混合して用いられてもよい、中でも、化26(6)に示した化合物が好ましい。上記した六フッ化リン酸リチウムと共に用いられた場合、より高い効果が得られるからである。なお、化25に示した構造を有していれば、化26に示した化合物に限定されないことは、言うまでもなく、化24に示した構造を有していれば、化25および化26に示した化合物に限定されないことも同様である。
また、電解質塩は、化27、化28および化29で表される化合物のうちの少なくとも1種を含有しているのが好ましい。上記した六フッ化リン酸リチウムと共に用いられた場合、より高い効果が得られるからである。なお、化27に示したmおよびnは、互いに同一でもよいし、異なってもよい。化29に示したp、qおよびrについても同様である。
(R81は炭素数2〜4の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
化27に示した鎖状の化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 F5 SO2 )2 )、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C2 F5 SO2 ))、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C3 F7 SO2 ))あるいは(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C4 F9 SO2 ))などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
化28に示した環状の化合物の具体例としては、化30で表される一連の化合物が挙げられる。すなわち、化30に示した(1)の1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウム、(2)の1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウム、(3)の1,3−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウム、(4)の1,4−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウムなどである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムが好ましい。十分な効果が得られるからである。
化29に示した鎖状の化合物の具体例としては、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 )3 )などが挙げられる。
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であるのが好ましい。この範囲外ではイオン伝導性が極端に低下するため、電解液を備えた電気化学デバイスにおいて容量特性などが十分に得られないおそれがあるからである。
この二次電池用電解液によれば、溶媒が、主溶媒として化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルおよび化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルのうちの少なくとも1種と、副溶媒として化9、化10および化11に示した化合物のうちの少なくとも1種とを含有しているので、主溶媒および副溶媒を併せて含有していない場合と比較して、化学的安定性が向上する。これにより、二次電池などの電気化学デバイスに用いられた場合に、保存特性などの高温特性の向上に寄与することができる。この場合には、溶媒中における副溶媒(化9、化10および化11に示した化合物)の含有量が0.001重量%以上10重量%以下であれば十分な効果を得ることができると共に、0.001重量%以上1重量%以下、さらに0.1重量%以上1重量%以下であればより高い効果を得ることができる。
特に、溶媒が化22に示した化合物を含有していれば、より高い効果を得ることができる。
また、溶媒が、不飽和結合を有する環状炭酸エステルや、スルトンや、酸無水物を含有していれば、より高い効果を得ることができる。
さらに、電解質塩が、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムあるいは六フッ化ヒ酸リチウムや、化24に示した化合物や、化27、化28および化29に示した化合物のうちの少なくとも1種を含有していれば、より高い効果が得ることができる。
<2.二次電池>
次に、上記した二次電池用電解液の使用例について説明する。ここで電気化学デバイスの一例として、二次電池を例に挙げると、電解液は以下のようにして用いられる。
<2−1.第1の二次電池>
図1は、第1の二次電池の断面構成を表している。この二次電池は、例えば、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるものであり、いわゆるリチウムイオン二次電池である。
この二次電池は、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、正極21および負極22がセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20と、一対の絶縁板12,13とが収納されたものである。電池缶11は、例えば、ニッケル(Ni)めっきが施された鉄(Fe)により構成されており、その一端部および他端部はそれぞれ閉鎖および開放されている。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を挟み、その巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。この電池缶11を用いた電池構造は、いわゆる円筒型と呼ばれている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、その内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが取り付けられている。これらはガスケット17を介してかしめられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡あるいは外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板15Aが反転することにより電池蓋14と巻回電極体20との間の電気的接続が切断されるようになっている。熱感抵抗素子16は、温度の上昇に応じて抵抗が増大することにより電流を制限し、大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、その表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20の中心には、例えば、センターピン24が挿入されている。この巻回電極体20では、アルミニウムなどにより構成された正極リード25が正極21に接続されており、ニッケルなどにより構成された負極リード26が負極22に接続されている。正極リード25は、安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は、電池缶11に溶接されることにより電気的に接続されている。
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表している。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。なお、図2では、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの両面に設けられているが、その片面に設けられていてもよい。正極集電体21Aは、例えばアルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいる。この正極活物質層21Bは、必要に応じて、導電剤や結着剤などを含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムあるいはこれらを含む固溶体(Li(Nix Coy Mnz )O2 );x、yおよびzの値はそれぞれ0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1である。)、またはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム(LiMn2 O4 )あるいはその固溶体(Li(Mn2-v Niv )O4 ;vの値はv<2である。)などのリチウム複合酸化物や、リン酸鉄リチウム(LiFePO4 )などのオリビン構造を有するリン酸化合物などが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。この他、上記した正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化鉄、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、硫黄や、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。なお、図2では、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの両面に設けられているが、その片面に設けられていてもよい。負極集電体22Aは、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する金属材料により構成されているのが好ましい。この金属材料としては、例えば、銅(Cu)、ニッケルあるいはステンレスなどが挙げられる。中でも、金属材料としては、銅が好ましい。高い電気伝導性が得られるからである。
特に、負極集電体22Aを構成する金属材料としては、リチウムと金属間化合物を形成しない1種または2種以上の金属元素を含有するものが好ましい。リチウムと金属間化合物を形成すると、充放電時における負極集電体22Aの膨張および収縮による応力の影響を受けて破損するため、集電性が低下したり、負極活物質層22Bが剥離したりしやすくなるからである。この金属元素としては、例えば、銅、ニッケル、チタン(Ti)、鉄あるいはクロム(Cr)などが挙げられる。
負極活物質層22Bは、負極活物質としてリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含有している。この負極活物質層22Bは、必要に応じて、導電剤あるいは結着剤などを含んでいてもよい。なお、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量としては、正極活物質による充電容量よりも大きくなっているのが好ましい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。このような炭素材料としては、例えば、易黒鉛化性炭素、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素あるいは(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などが挙げられる。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成し、炭素化したものをいう。炭素材料は、リチウムの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、高エネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られる上、さらに導電剤としても機能するので好ましい。
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料が挙げられる。このような負極材料は、高いエネルギー密度が得られるので好ましい。この負極材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またはこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。ここで、本発明における合金には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、本発明における合金は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などである。これらは結晶質であってもよいし、非晶質(アモルファス)のものであってもよい。これらの金属元素あるいは半金属元素の合金または化合物としては、例えば、Mas Mbt Liu (s、tおよびuの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0である。)や、Map Mcq Mdr (p、qおよびrの値はそれぞれp>0、q>0、r≧0である。)の化学式で表されるものなどが挙げられる。ただし、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表わしている。また、Mcは非金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表している。
リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素により構成された負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素および半金族元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含むものが好ましい。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料が特に好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金および化合物、ならびにスズの単体、合金および化合物のうちの少なくとも1種が挙げられる。すなわち、ケイ素の単体、合金あるいは化合物、スズの単体、合金あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料である。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロムのうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムのうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
ケイ素の化合物あるいはスズの化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素を含むものが挙げられ、ケイ素あるいはスズに加えて、上記した第2の構成元素を含んでいてもよい。
上記したケイ素の合金あるいは化合物、またはスズの合金あるいは化合物としては、例えば、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、LiSiO、Mg2 Sn、SnSiO3 、LiSnO、あるいはSnOw (0<w≦2)などが挙げられる。
特に、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料としては、スズを第1の構成元素とし、そのスズに加えて第2の構成元素と第3の構成元素とを含むものが好ましい。第2の構成元素は、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリンのうちの少なくとも1種である。第2の元素および第3の元素を含むことにより、サイクル特性が向上するからである。
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、スズおよびコバルトの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。
このCoSnC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムあるいはビスマスなどが好ましく、それらの2種以上を含んでいてもよい。より高い効果が得られるからである。
なお、CoSnC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、結晶性の低いまたは非晶質な構造を有しているのが好ましい。また、CoSnC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合しているのが好ましい。スズなどが凝集あるいは結晶化が抑制されるからである。
また、元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えば、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSでは、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、グラファイトであれば、炭素の1s軌道(C1s)のピークは284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば、炭素が金属元素あるいは半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、CoSnC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、CoSnC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合している。
なお、XPSでは、例えば、スペクトルのエネルギー軸の補正に、C1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPSにおいて、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとCoSnC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られる。このため、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、CoSnC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
さらに、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物あるいは高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどが挙げられ、高分子化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
もちろん、上記した一連のリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料を組み合わせて用いてもよい。
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。なお、導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。ただし、図1に示したように、正極21および負極22が巻回されている場合には、柔軟性に富むスチレンブタジエン系ゴムあるいはフッ素系ゴムなどを用いることが好ましい。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどよりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多硬質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は、ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による二次電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下でシャットダウン効果を得ることができると共に、電気化学的安定性にも優れているので好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であれば、ポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたものや、ブレンド化したものであってもよい。
セパレータ23には、液状の電解質として上記した電解液が含浸されている。サイクル特性を維持しつつ保存特性を向上させることができるからである。
この二次電池は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bを形成することにより、正極21を作製する。この正極活物質層21Bを形成する際には、正極活物質の粉末と、導電剤と、結着剤とを混合した正極合剤を溶剤に分散させることによりペースト状の正極合剤スラリーとし、その正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布して乾燥させたのちに圧縮成型する。また、例えば、正極21と同様の手順にしたがって負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成することにより、負極22を作製する。
続いて、正極集電体21Aに正極リード25を溶接して取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接して取り付ける。続いて、正極21および負極22をセパレータ23を介して巻回させることにより巻回電極体20を形成する。この場合には、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接する。続いて、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟みながら電池缶11の内部に収納する。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させる。最後に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極21に吸蔵される。
この円筒型の二次電池によれば、負極22の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表される場合に、上記した電解液を備えているので、その電解液の分解が抑制される。したがって、保存特性などの高温特性を向上させることができる。この二次電池に関する他の効果は、上記した電解液と同様である。
次に、第2および第3の二次電池について説明するが、第1の二次電池と共通の構成要素については、同一符号を付して、その説明は省略する。
<2−2.第2の二次電池>
第2の二次電池は、負極22の構成が異なる点を除き、第1の二次電池と同様の構成、作用および効果を有していると共に同様の手順により製造される。
負極22は、第1の二次電池と同様に、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質としてケイ素あるいはスズを構成元素として含む材料を含有している。具体的には、例えば、ケイ素の単体、合金あるいは化合物、またはスズの単体、合金あるいは化合物を含有しており、それらの2種以上を含有していてもよい。
この負極活物質層22Bは、気相法、液相法、溶射法あるいは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成されたものであり、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとが界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに拡散し、あるいは負極活物質層22Bの構成元素が負極集電体22Aに拡散し、またはそれらの構成元素が互いに拡散し合っていることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層22Bの膨張および収縮による破壊を抑制することができると共に、負極活物質層22Bと負極集電体22Aとの間の電子伝導性を向上させることができるからである。
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition )法あるいはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電気鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼成法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合して溶剤に分散させることにより塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が挙げられる。
<2−3.第3の二次電池>
第3の二次電池は、負極22の容量がリチウムの析出および溶解に基づく容量成分により表されるものであり、いわゆるリチウム金属二次電池である。この二次電池は、負極活物質層22Bがリチウム金属により構成されている点を除き、第1の二次電池と同様の構成を有していると共に同様の手順により製造される。
この二次電池は、負極活物質としてリチウム金属を用いており、これにより高いエネルギー密度を得ることができるようになっている。負極活物質層22Bは、組み立て時から既に有するようにしてもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により構成されるようにしてもよい。また、負極活物質層22Bを集電体としても利用することにより、負極集電体22Aを省略するようにしてもよい。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出する。一方、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、電解液を介して正極21に吸蔵される。
この円筒型の二次電池によれば、負極22の容量がリチウムの析出および溶解に基づく容量成分により表される場合に、上記した電解液を備えているので、保存特性などの高温特性を向上させることができる。この二次電池に関する他の効果は、上記した第1の二次電池と同様である。
<2−4.第4の二次電池>
図3は、第4の二次電池の分解斜視構成を表している。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、この電池構造はいわゆるラミネート型と呼ばれている。
正極リード31および負極リード32は、例えば、それぞれ外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの金属材料により構成されている。また、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。正極リード31および負極リード32を構成するそれぞれの金属材料は、薄板状または網目状とされている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。この外装部材40では、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体30と対向していると共に、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材40は、上記した3層構造のアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルムにより構成されていてもよいし、またはポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成されていてもよい。
図4は、図3に示した巻回電極体30のIV−IV線に沿った断面構成を表している。この電極巻回体30は、正極33および負極34がセパレータ35および電解質36を介して積層されたのちに巻回されたものであり、その最外周部は保護テープ37により保護されている。
正極33は、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。負極34は、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものであり、その負極活物質層34Bが正極活物質層33Bと対向するように配置されている。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34A、負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ上記した第1ないし第3の二次電池における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23の構成と同様である。
電解質36は、上記した電解液と、それを保持する高分子化合物とを含んでおり、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に漏液が防止されるので好ましい。
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートなどが挙げられる。これらの高分子化合物は、単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。特に、電気化学的安定性の点から、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドなどを用いることが好ましい。電解液中における高分子化合物の添加量は、両者の相溶性によっても異なるが、例えば5質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましい。
電解質塩の含有量は、上記した第1ないし第3の二次電池の場合と同様である。ただし、この場合の溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。したがって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
なお、電解液を高分子化合物に保持させた電解質36に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液がセパレータ35に含浸される。
この二次電池は、例えば、以下の3種類の製造方法によって製造することができる。
第1の製造方法では、まず、例えば、第1の二次電池の製造方法と同様の手順によって正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成することにより、正極33を作製する。また、例えば、第1の二次電池の製造方法と同様の手順によって負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成することにより、負極34を作製する。
続いて、電解液と、高分子化合物と、溶剤とを含む前駆溶液を調製し、正極33および負極34に塗布したのちに溶剤を揮発させることにより、ゲル状の電解質36を形成する。続いて、正極集電体33Aおよび負極集電体34Aにそれぞれ正極リード31および負極リード32を取り付ける。続いて、電解質36が設けられた正極33および負極34をセパレータ35を介して積層させたのちに長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープ37を接着させることにより、巻回電極体30を形成する。続いて、例えば、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、その外装部材40の外縁部同士を熱融着などで接着させることにより巻回電極体30を封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に、密着フィルム41を挿入する。これにより、図3および図4に示した二次電池が完成する。
第2の製造方法では、まず、正極33および負極34にそれぞれ正極リード31および負極リード32を取り付ける。続いて、正極33および負極34をセパレータ35を介して積層して巻回させると共に最外周部に保護テープ37を接着させることにより、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させることにより袋状の外装部材40の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製し、袋状の外装部材40の内部に注入したのち、外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質36を形成する。これにより、二次電池が完成する。
第3の製造方法では、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第1の製造方法と同様に、巻回体を形成して袋状の外装部材40の内部に収納する。このセパレータ35に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体、すなわち単独重合体、共重合体あるいは多元共重合体などが挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種あるいは2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、外装部材40に加重をかけながら加熱し、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸し、その高分子化合物がゲル化して電解質36が形成されるため、二次電池が完成する。この第3の製造方法では、第1の製造方法と比較して、膨れ特性が改善される。また、第3の製造方法では、第2の製造方法と比較して、高分子化合物の原料であるモノマーや溶媒などが電解質36中にほとんど残らず、しかも高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質36との間において十分な密着性が得られる。
このラミネート型の二次電池による作用および効果は、上記した第1の二次電池と同様である。
<2−5.第5の二次電池>
図5は、第5の二次電池の断面構成を表している。この二次電池は、正極51を外装缶54に貼り付けると共に負極52を外装カップ55に収容し、それらを電解液が含浸されたセパレータ53を介して積層したのちにガスケット56を介してかしめたものである。この外装缶54および外装カップ55を用いた電池構造は、いわゆるコイン型とよばれている。
正極51は、正極集電体51Aの一面に正極活物質層51Bが設けられたものである。負極52は、負極集電体52Aの一面に負極活物質層52Bが設けられたものである。正極集電体51A、正極活物質層52B、負極集電体52A、負極活物質層52Bおよびセパレータ53の構成は、それぞれ上記した第1ないし第3の二次電池における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23の構成と同様である。
このコイン型の二次電池による作用および効果は、上記した第1の二次電池と同様である。
本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実験例1−1)
負極活物質として人造黒鉛を用いて、図1および図2に示した円筒型の二次電池を作製した。この際、負極22の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
まず、正極21を作製した。この場合には、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中で900℃×5時間焼成してリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤とした。続いて、N−メチル−2−ピロリドンに正極合剤を分散させてペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、帯状のアルミニウム箔(20μm厚)からなる正極集電体21Aに正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層21Bを形成した。こののち、正極集電体21Aの一端に正極リード25を取り付けた。
続いて、負極22を作製した。この場合には、負極活物質として黒鉛粉末90質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、帯状の銅箔(15μm厚)からなる負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層22Bを形成した。こののち、負極集電体22Aの一端に負極リード26を取り付けた。
続いて、電解液を調製した。この場合には、まず、主溶媒として炭酸エチレン(EC)と炭酸ジメチル(DMC)とを30:70の重量比で混合した。続いて、主溶媒として化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、副溶媒として化9に示した化合物である化19に示した化合物とを加えて、溶媒を得た。この際、溶媒中におけるFECの含有量を1重量%、化19に示した化合物の含有量を0.1重量%とした。この「重量%」とは、主溶媒および副溶媒を含む溶媒全体を100重量%とする場合の値であり、「重量%」が意味するところは以降においても同様である。こののち、電解液中における濃度が1mol/kgとなるように、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を加えて溶解させた。
続いて、微多孔性ポリプロピレンフィルム(25μm厚)からなるセパレータ23を用意し、負極22、セパレータ23、正極21およびセパレータ23をこの順に積層したのち、その積層体を多数回巻回して巻回電極体20を作製した。続いて、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に正極リード25を安全弁機構15に溶接したのち、ニッケルめっきが施された鉄製の電池缶11の内部に巻回電極体20を収納した。最後に、電池缶11の内部に電解液を減圧方式によって注入することにより、円筒型の二次電池を作製した。
(実験例1−2〜1−4)
主溶媒としてFECに代えて、化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルであるトランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(t−DFEC:実験例1−2)、あるいはシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(c−DFEC:実験例1−3)を用いたと共に、化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルである炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC:実験例1−4)を用いたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。
(実験例1−5,1−6)
副溶媒として化19に示した化合物に代えて、化10に示した化合物である化20に示した化合物(実験例1−5)、あるいは化11に示した化合物である化21に示した化合物(実験例1−6)を用いたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。
(実験例1−7)
副溶媒として化20に示した化合物を加えたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。この際、溶媒中における化19に示した化合物の含有量を0.05重量%、化20に示した化合物の含有量を0.05重量%とした。
(実験例1−8〜1−11)
補助溶媒として化22に示した化合物である化23に示した化合物を加えたことを除き、実験例1−1〜1−4と同様の手順を経た。この際、溶媒中における化23に示した化合物の含有量を0.01重量%とした。
(比較例1−1)
主溶媒としてFECおよび副溶媒として化19に示した化合物を加えなかったことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1−2,1−3)
副溶媒として化19に示した化合物を加えなかったことを除き、実験例1−1,1−2と同様の手順を経た。
(比較例1−4)
主溶媒としてFECを加えなったことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。
これらの実験例1−1〜1−11および比較例1−1〜1−4の二次電池について、保存特性およびサイクル特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
保存特性を調べる際には、以下の手順によって二次電池を保存することにより、放電容量維持率(以下、「保存放電容量維持率」と呼ぶ。)を求めた。まず、23℃の雰囲気中で2サイクル充放電させて2サイクル目の放電容量(保存前の放電容量)を測定した。続いて、再度充電した状態で60℃の恒温槽中に1ヶ月間保存したのち、23℃の雰囲気中で放電させて3サイクル目の放電容量(保存後の放電容量)を測定した。最後に、保存放電容量維持率(%)=(保存後の放電容量/保存前の放電容量)×100を算出した。1サイクルの充電条件としては、1Cの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電したのち、引き続き4.2Vの定電圧で総充電時間が2時間になるまで充電した。また、1サイクルの放電条件としては、0.5Cの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで放電した。この「C」とは、電流条件を表す値であり、「1C」は理論容量を1時間で放電しきる電流値、「0.5C」は理論容量を2時間で放電しきる電流値である。
サイクル特性を調べる際には、以下の手順によって二次電池を繰り返し充放電させることにより、放電容量維持率(以下、「サイクル放電容量維持率」と呼ぶ。)を求めた。まず、23℃の雰囲気中で2サイクル充放電させて2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、60℃の恒温槽中でサイクル数の合計が102サイクルとなるまで充放電させて102サイクル目の放電容量を測定した。最後に、サイクル放電容量維持率(%)=(102サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。1サイクルの充放電条件は、保存特性を調べた場合と同様にした。
なお、上記した保存特性およびサイクル特性を調べる際の手順および条件は、以降の一連の実験例および比較例についても同様である。
表1に示したように、主溶媒としてFEC等を含有すると共に副溶媒として化19に示した化合物等を含有する実験例1−1〜1−11では、主溶媒および副溶媒の双方を含有しない比較例1−1〜1−4よりも保存放電容量維持率が高くなり、併せてサイクル放電容量維持率も高くなった。
詳細には、副溶媒を含有せずに主溶媒だけを含有する比較例1−2,1−3や、主溶媒を含有せずに副溶媒だけを含有する比較例1−4では、主溶媒および副溶媒の双方を含有しない比較例1−1よりも保存放電容量維持率およびサイクル放電容量維持率が高くなった。しかしながら、主溶媒および副溶媒の双方を含有する実験例1−1〜1−11では、上記した比較例1−2〜1−4よりも保存放電容量維持率およびサイクル放電容量維持率がさらに高くなった。
ここで、主溶媒の種類に着目すると、t−DFEC、c−DFECあるいはDFDMCを含有する実験例1−2〜1−4では、FECを含有する実験例1−1と同等以上の保存容量維持率が得られたと共により高いサイクル放電容量維持率が得られた。また、副溶媒の種類に着目すると、化20あるいは化21に示した化合物を含有する実験例1−5,1−6では、化19に示した化合物を含有する実験例1−1とほぼ同等の保存放電容量維持率が得られたと共に同等のサイクル放電容量維持率が得られた。この傾向は、化19および化20に示した化合物を混合した実験例1−7においても同様であった。さらに、補助溶媒の有無に着目すると、化23に示した化合物を含有する実験例1−8〜1−11では、それを含有しない実験例1−1〜1−4と同等以上の保存放電容量維持率およびサイクル放電容量維持率が得られた。
これらのことから、本発明の二次電池では、負極22が負極活物質として人造黒鉛を含む場合に、電解液の溶媒が、主溶媒として化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルおよび化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルのうちの少なくとも1種と、副溶媒として化9、化10および化11に示した化合物のうちの少なくとも1種とを含有することにより、高温雰囲気中における保存特性が向上し、併せてサイクル特性も向上することが確認された。この場合には、上記したハロゲンを有する環状炭酸エステルあるいは鎖状炭酸エステルとして複数のハロゲンを有するものを用いたり、補助溶媒として化23に示した化合物を含有させれば、より高い効果が得られることも確認された。
なお、ここでは化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルとして炭酸フルオロメチルメチルを用いた場合の結果を示していないが、炭酸フルオロメチルメチルは炭酸ビス(フルオロメチル)と同様の特性を有することから、炭酸フルオロメチルメチルを用いた場合においても炭酸ビス(フルオロメチル)を用いた場合と同様の効果が得られることは、明らかである。化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルと化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルとを混合した場合についても、同様である。
(実験例2−1〜2−5)
溶媒中における副溶媒の含有量を0.001重量%(実験例2−1)、0.2重量%(実験例2−2)、1重量%(実験例2−3)、5重量%(実験例2−4)、あるいは10重量%(実験例2−5)としたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。
これらの実験例2−1〜2−5の二次電池について保存特性およびサイクル特性を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
表2に示したように、副溶媒の含有量を0.001重量%以上10重量%以下で変化させた実験例2−1〜2−5では、その含有量に依存せず、比較例1−2,1−4よりも高い保存放電容量維持率が得られた。ここで、サイクル放電容量維持率に着目すると、副溶媒の含有量が多くになるにしたがって増加したのちに減少し、その副溶媒の含有量が0.001重量%まで少なくなるか10重量%まで多くなるとほぼ一定になる傾向を示した。この場合には、副溶媒の含有量が1重量%以下であると比較例1−2,1−4と同等以上のサイクル放電容量維持率が得られ、さらに0.1重量%以上であると比較例1−2,1−4よりも高いサイクル放電容量維持率が得られた。
これらのことから、上記した本発明の二次電池では、電解液の溶媒が副溶媒として化19に示した化合物を含有する場合に、その含有量が0.001重量%以上10重量%以下であれば高温雰囲気中における保存特性が向上すると共に、0.001重量%以上1重量%以下であればサイクル特性が確保され、0.1重量%以上1重量%以下であればサイクル特性も向上することが確認された。
(実験例3−1〜3−4)
その他の溶媒として炭酸ビニレン(VC:実験例3−1)、プロペンスルトン(PRS:実験例3−2)、無水コハク酸(SCAH:実験例3−3)、あるいは無水スルホ安息香酸(SBAH:実験例3−4)を用いたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。この際、溶媒中におけるVC等の含有量を1重量%とした。
これらの実験例3−1〜3−4の二次電池について保存特性およびサイクル特性を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
表3に示したように、溶媒がVC等を含有する実験例3−1〜3−4では、それらを含有しない実験例1−1よりも高い保存放電容量維持率が得られたと共に同等以上のサイクル放電容量維持率が得られた。
このことから、本発明の二次電池では、電解液の溶媒が不飽和結合を有する環状炭酸エステル、スルトンあるいは酸無水物を含有すれば、より高い効果が得られることが確認された。
(実験例4−1〜4−3)
電解質塩として、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 :実験例4−1)、化24に示した化合物である化26(6)に示した化合物(実験例4−2)、あるいは化28に示した化合物である化30(2)に示した化合物(実験例4−3)を加えたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。この際、電解液中におけるLiPF6 の濃度を0.9mol/kg、LiBF4 等の濃度を0.1mol/kgとした。
(比較例4)
主溶媒としてFECを加えなかったことを除き、実験例4−2と同様の手順を経た。
これらの実験例4−1〜4−3および比較例4の二次電池について保存特性およびサイクル特性を調べたところ、表4に示した結果が得られた。
表4に示したように、電解質塩がLiBF4 等を含有する実験例4−1〜4−3では、それらを含有しない実験例1−1よりも高い保存放電容量維持率が得られ、併せて同等以上のサイクル放電容量維持率も得られた。もちろん、主溶媒としてFECを含有する実験例4−2では、それを含有しない比較例4よりも保存放電容量維持率およびサイクル放電容量維持率が高くなった。
これらのことから、上記した本発明の二次電池では、電解質塩が化24に示した化合物あるいは化28に示した化合物を含有すれば、より高い効果が得られることが確認された。
なお、ここでは電解質塩として化27あるいは化29に示した化合物を用いた場合の結果を示していないが、化27および化29に示した化合物は化28に示した化合物と同様の特性を有する。このため、化27あるいは化29に示した化合物を用いた場合においても化28に示した化合物を用いた場合と同様の効果が得られることは、明らかである。
(実験例5−1〜5−6)
負極活物質として人造黒鉛に代えてケイ素を用いて負極活物質層22Bを形成したと共に、溶媒の組成を変更したことを除き、実験例1−1〜1−3,1−5,1−6,1−8と同様の手順を経た。この負極活物質層22Bを形成する場合には、電子ビーム蒸着法により負極集電体21Aにケイ素を堆積させた。また、溶媒の組成としては、主溶媒としてDMCに代えて炭酸ジエチル(DEC)を用い、溶媒中におけるFECの含有量を5重量%、化19に示した化合物の含有量を1重量%とした。
(比較例5−1〜5−4)
実験例5−1〜5−5と同様にケイ素を用いて負極活物質層22Bを形成したと共に溶媒の組成を変更したことを除き、比較例1−1〜1−4と同様の手順を経た。
これらの実験例5−1〜5−6および比較例5−1〜5−4の二次電池について、保存特性およびサイクル特性を調べたところ、表5に示した結果が得られた。
表5に示したように、負極活物質としてケイ素を用いて負極活物質層22Bを形成した場合においても、表1に示した結果とほぼ同様の結果が得られた。すなわち、主溶媒としてFEC等を含有すると共に副溶媒として化19に示した化合物等を含有する実験例5−1〜5−6では、主溶媒および副溶媒の双方を含有しない比較例5−1〜5−4よりも保存放電容量維持率が高くなり、サイクル放電容量維持率も同等以上になった。このことから、本発明の二次電池では、負極22が負極活物質としてケイ素を含む場合に、電解液の溶媒が、主溶媒として化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルおよび化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルのうちの少なくとも1種と、化9、化10および化11に示した化合物のうちの少なくとも1種とを含有することにより、高温雰囲気中における保存特性が向上することが確認された。
(実験例6−1〜6−4)
実験例5−1〜5−5と同様にケイ素を用いて負極活物質層22Bを形成したと共に溶媒の組成を変更したことを除き、実験例2−1,1−1,2−4,2−5と同様の手順を経た。
これらの実験例6−1〜6−4の二次電池において、保存特性およびサイクル特性を調べたところ、表6示した結果が得られた。
表6に示したように、表2に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、副溶媒の含有量を変化させた実験例6−1〜6−4では、その含有量が0.001重量%以上10重量%以下において比較例5−2,5−4よりも高い保存放電容量維持率が得られた。この場合には、副溶媒の含有量が1重量%以下であると同等以上のサイクル放電容量維持率が得られ、さらに0.1重量%以上であると高いサイクル放電容量維持率が得られた。このことから、上記した本発明の二次電池では、副溶媒の含有量が0.001重量%以上10重量%以下であれば高温雰囲気中における保存特性が向上すると共に、0.001重量%以上1重量%以下であればサイクル特性が確保され、0.1重量%以上1重量%以下であればサイクル特性も向上することが確認された。
(実験例7−1〜7−4)
実験例5−1〜5−5と同様にケイ素を用いて負極活物質層22Bを形成したと共に溶媒の組成を変更したことを除き、実験例3−1〜3−4と同様の手順を経た。
これらの実験例7−1〜7−4の二次電池について保存特性およびサイクル特性を調べたところ、表7に示した結果が得られた。
表7に示したように、表3に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、溶媒がVC等を含有する実験例7−1〜7−4では、それらを含有しない実験例5−1よりも高い保存放電容量維持率が得られたと共に同等以上のサイクル放電容量維持率が得られた。このことから、上記した本発明の二次電池では、電解液の溶媒が不飽和結合を有する環状炭酸エステル、スルトンあるいは酸無水物を含有すれば、より高い効果が得られることが確認された。
(実験例8−1〜8−3)
実験例5−1〜5−5と同様にケイ素を用いて負極活物質層22Bを形成したと共に溶媒の組成を変更したことを除き、実験例4−1〜4−3と同様の手順を経た。
(比較例8)
実験例5−1〜5−5と同様にケイ素を用いて負極活物質層22Bを形成したと共に溶媒の組成を変更したことを除き、比較例4と同様の手順を経た。
これらの実験例8−1〜8−3および比較例8の二次電池について保存特性およびサイクル特性を調べたところ、表8に示した結果が得られた。
表8に示したように、表4に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、電解質塩がLiBF4 等を含有する実験例8−1〜8−3では、それらを含有しない実験例5−1よりも高い保存放電容量維持率が得られ、同等以上のサイクル放電容量維持率も得られた。もちろん、主溶媒としてFECを含有する実験例8−2では、それを含有しない比較例8よりも保存放電容量維持率およびサイクル放電容量維持率が高くなった。このことから、上記した本発明の二次電池では、電解質塩が化24に示した化合物あるいは化28に示した化合物を含有すれば、より高い効果が得られることが確認された。
上記した表1〜表8の結果から、本発明の二次電池では、負極活物質の種類に関係なく、電解液の溶媒が、主溶媒として化7に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルおよび化8に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルのうちの少なくとも1種と、副溶媒として化9、化10および化11に示した化合物のうちの少なくとも1種とを含有することにより、高温雰囲気中における保存特性が向上することが確認された。また、副溶媒の含有量が0.001重量%以上1重量%以下であれば高温雰囲気中におけるサイクル特性が確保され、0.1重量%以上1重量%以下であればサイクル特性も向上することが確認された。
この場合には、負極活物質として炭素材料を用いた場合よりもケイ素を用いた場合において、放電容量維持率の増加率が大きくなった。この結果は、負極活物質として高容量化に有利なケイ素を用いると、炭素材料を用いる場合よりも電解液が分解しやすくなるため、電解液の分解抑制効果が際立って発揮されたものと考えられる。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記した実施の形態および実施例では、本発明の二次電池の電解質として、電解液、あるいは電解液を高分子化合物に保持させたゲル状電解質を用いる場合について説明したが、他の種類の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、イオン伝導性セラミックス、イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などのイオン伝導性無機化合物と電解液とを混合したものや、他の無機化合物と電解液とを混合したものや、これらの無機化合物とゲル状電解質とを混合したものなどが挙げられる。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の二次電池として、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池や、負極の容量がリチウムの析出および溶解に基づく容量成分により表されるリチウム金属二次電池について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本発明の二次電池は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極の充電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分とリチウムの析出および溶解に基づく容量成分とを含み、かつそれらの容量成分の和により表される二次電池についても同様に適用可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他の短周期型周期表における1A族元素やマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの2A族元素やアルミニウムなどの他の軽金属を用いてもよい。この場合においても、負極活物質として、上記実施の形態で説明した負極材料を用いることが可能である。
また、上記した実施の形態または実施例では、本発明の二次電池について、電池構造が円筒型、ラミネートフィルム型およびコイン型である場合、ならびに電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の二次電池は、角型あるいはボタン型などの他の電池構造を有する場合や、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合についても同様に適用可能である。
また、上記実施の形態および実施例では、本発明の二次電池用電解液の溶媒中における化9、化10および化11に示した化合物の含有量について、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明している。しかしながら、その説明は、含有量が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、含有量が上記した範囲から多少外れてもよい。