本発明は、単一の軸線回りに相対的に回転される送信機構と受信機構との間での信号の伝送のための光信号伝送装置に関する。
例えば、土木工事等に伴う測量では、基台上に測距部が回転可能に設けられて構成された測量機が用いられることが知られている。この測量機では、基台(すなわち支持台)と測距部(すなわち回転体)との間で信号が伝送可能であること、例えば、回転する測距部内に設けられた測距光調整部を制御するために基台側に設けられた制御演算部からの制御信号を測距光調整部に伝送することが求められており、測距部側の出力端子と基台側の入力端子とを、回転する回転子に摺動接触する接触子が設けられて構成されたスリップリングを介して電気的に接続することが考えられている。
ところが、測量機では、基台に対して測距部を高速に回転駆動させつつ、基台側の制御演算部からの制御信号を測距部側の測距光調整部に適切に伝送することが求められることから、回転子と接触子とが摺動するスリップリングでは、接触子および回転子の磨耗による劣化、互いの振動等に起因する接触不良を招く虞があり、適切に制御信号を伝送する観点、信頼性の観点等から改善されることが望ましい。
そこで、非接触で信号の伝送を可能とする光スリップリングを用いることが考えられている(例えば、特許文献1参照)。この光スリップリングは、固定部材(上記した例では基台に相当する)と回転部材(上記した例では測距部に相当する)との双方に、回転軸上に位置するように光受信器が設けられるとともに、対向される部材の光受信器へ向けて光信号を出射可能に光送信器が設けられており、固定部材に対する回転部材の回転位置が変化しても、一方の部材の光送信器から出射された光信号を他方の部材の光受信器で受光することができるので、相対的に回転される固定部材と回転部材との間で信号を伝送することができる。
特開2004−111696号公報
ところで、基台上で測距部が回転可能とされた測量機では、例えば、測距部にレーザ出射機構が搭載され、回転軸に対して直交する方向にレーザ光を出射する構成とされているものがある。このものでは、回転出射したレーザ光を受光器で受光し、その受光信号に基づいて当該受光位置における回転軸に直交する平面に対する傾斜角および高さを測定することができる。このような回転レーザ出射装置としての測量機では、傾斜角および高さの測定精度を高めるために、出射されるレーザ光の回転軸に対するぶれの発生を極力抑制することが求められている。このため、当該測量機では、測距部内で回転軸上にミラーが収容され、そのミラーへ向けて回転軸に沿うレーザ光を出射すべくレーザ光源を基台に固定的に設ける構成とすることが考えられている。
このような構成の測量機では、基台および測距部の回転軸上にレーザ光を回転出射するための機構が配置されることから、上記したような固定部材(基台)と回転部材(測距部)との双方に回転軸上に位置するように光受信器を設ける構成の光スリップリングを採用することができない。
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、回転軸上の所定の空間を利用することなく、相対的に回転する支持台と回転体との間での信号の伝送を可能とする非接触の光信号伝送装置を提供することにある。
上記した課題を解決するために、請求項1に記載の光信号伝送装置は、支持台と、該支持台に対し回転軸回りに回転可能に支持された回転体との間での信号の伝送のために、前記支持台および前記回転体の一方に設けられた送信機構と、前記支持台および前記回転体の他方に設けられた受信機構とを備える光信号伝送装置であって、前記受信機構は、符号nを1を除く自然数として、前記回転軸に直交する同一面上に前記回転軸を取り巻く環状の受光領域を形成するように、前記支持台と前記回転体との相対的な回転により前記送信機構に対して前記回転軸回りに回転されるn個の受光部と、該各受光部からの受光信号を前記送信機構からの信号として処理する受光制御部と、を有し、前記送信機構は、発光部と、伝送する信号に応じて該発光部を点灯駆動する発光制御部と、前記発光部から出射された光束を前記受光領域との対向方向へ向けて出射させる発光領域を形成すべく前記光束を導光する導光部とを有し、該導光部は、前記受光領域と対向され前記回転軸を取り巻く環状の対向領域において、前記各受光部の前記送信機構に対する前記回転軸回りの回転位置に拘わらずn個の前記受光部のうちのいずれか1つと対向するように、前記対向領域を周方向にn等分したうちの1つを前記発光領域とすべく延在していることを特徴とする。
請求項2の光信号伝送装置は、請求項1に記載の光信号伝送装置であって、前記導光部は、断面が円形で全体に線状とされていることを特徴とする。
請求項3の光信号伝送装置は、請求項1または請求項2に記載の光信号伝送装置であって、前記導光部は、前記発光領域を形成すべく入射された前記光束を出射させるための出射面を有し、前記導光部では、前記受光領域と対向された面を前記出射面とするための散乱面が形成されていることを特徴とする。
請求項4の光信号伝送装置は、請求項3に記載の光信号伝送装置であって、前記散乱面は、前記導光部を延在方向に直交する断面で見て、前記出射面とは反対側に形成されていることを特徴とする。
請求項5の光信号伝送装置は、請求項3または請求項4に記載の光信号伝送装置であって、前記出射面は、出射する前記光束のうち前記受信機構の前記受光部へと入射する量を増加させるような効果を奏するレンズ面とされていることを特徴とする。
本発明の光信号伝送装置によれば、送信機構の発光部の受信機構に対する回転軸回りの回転位置に拘わらず、受信機構の受光部が発光領域から出射された光束すなわち発光部から出射された光束を受光することができるので、送信機構と受信機構との信号の伝送のための接触個所を設けることなく、信号を伝送することができる。
また、受信機構が回転軸を取り巻く環状の受光領域を形成し、送信機構が受光領域に対向する対向領域上に発光領域を形成し、この発光領域から出射された光束を受光領域で受光することにより送信機構と受信機構とで信号を伝送することから、回転軸上の所定の空間を利用することなく、信号を伝送することができる。
特に、前記導光部は、前記発光領域を形成すべく入射された前記光束を出射させるための出射面を有し、前記導光部では、前記受光領域と対向された面を前記出射面とするための散乱面が形成されていると、簡易な構成で発光領域を形成することができる。
特に、前記散乱面は、前記導光部を延在方向に直交する断面で見て、前記出射面とは反対側に形成されていると、簡易な構成で、効率よく光束(光信号)を発光領域の全体に渡って導くことを可能としつつ出射面から光束(光信号)を確実に出射させることができる。
特に、前記出射面は、出射する前記光束のうち前記受信機構の前記受光部へと入射する量を増加させるような効果を奏するレンズ面とされていると、出射面から出射された光束(光信号)を効率よく受光部に受光させることができる。
以下に、図面を参照しつつ本発明の光信号伝送装置10を説明する。図1は、本発明に係る光信号伝送装置10が搭載された3次元位置測定装置50を示す模式的な斜視図である。図2は、3次元位置測定装置50(そこにおける光信号伝送装置10)の構成を説明するための模式的な断面図であり、図3は、その3次元位置測定装置50の電力伝送装置90を説明するために分解して示す模式的な斜視図であり、図4は、電力伝送装置90の内部構成を説明するために部分的に断面で示す模式的な斜視図である。
3次元位置測定装置50には、本発明に係る光信号伝送装置10が搭載されており、本体51と、この本体51に対して回転可能な回転光学部70とを備えている。この3次元位置測定装置50では、回転光学部70が、回転ベアリング82、83を介して本体51に対して回転軸Ar回りに回転自在な状態で固定されている。このため、3次元位置測定装置50では、回転光学部70が本体51に対して回転可能とされており、本体51と回転光学部70との間のデータ信号のやり取りのために光信号伝送装置10が設けられ、本体51から回転光学部70への電力供給のために電力伝送装置90が設けられている。この光信号伝送装置10および電力伝送装置90については後に詳述する。
先ず、3次元位置測定装置50での回転機構について説明する。
本体51には、ステータ52が配置されている。このステータ52は、コイルが巻かれた複数のコアが回転軸Arを中心とする円周上に配置されて構成されている。ステータ52に対向する回転光学部70の部分には、回転軸Arを中心とする円周上に複数の永久磁石を備えて構成されたロータ71が配置されている。このステータ52とロータ71とは、DCブラシレスモータの原理を利用したDD(ダイレクト・ドライブ)モータを構成している。3次元位置測定装置50では、ステータ52のコイルへの通電が図示を略す制御回路によってスイッチングされることで、ステータ52に対するロータ71の回転力が生じ、本体51に対して回転光学部70が回転する。
次に、本体51における測定のための機構について説明する。本体51には、主レンズ系53が設けられている。主レンズ系53は、所定の光学特性を得るために複数のレンズを組み合わせた構造とされている。この主レンズ系53は、回転軸Arに光軸が一致するように配置されており、その主レンズ系53の後ろ(図の下方)には、第1の副反射ミラー54が配置されている。第1の副反射ミラー54は、両面が反射面とされている。また、図2を正面視して、第1の副反射ミラー54の右側に第2の副反射ミラー55が配置され、左側に第3の副反射ミラー56が配置されている。
この第2の副反射ミラー55の下方には、追尾光発光部57と測距光発光部58が配置されている。追尾光発光部57は、図示は略すがコーナーキューブと称される反射装置を追尾(探索)するための光(追尾光)を出射するものである。測距光発光部58は、上述したコーナーキューブを照射する距離測定用の光(測距光)を出射するものである。追尾光発光部57は、ハーフミラーを有し、自らが出射した追尾光の光軸と測距光発光部58からの測距光の光軸とを一致させた状態で第2の副反射ミラー55に導くことものとされている。なお、追尾光と測距光とでは、異なる波長が選択されている。
第3の副反射ミラー56の下方には、測距光を受光する測距光受光部59が配置され、第1の副反射ミラー54の下方には、選択反射ミラー60が配置されている。選択反射ミラー60は、測距光を上方(第1の副反射ミラー54へ向けて)に反射し、追尾光を図の左方向(後述する追尾光用CCD62へ向けて)に反射し、その他の光(追尾光と測距光以外の波長の光)を下方(後述する撮像用CCD61へ向けて)に透過させる機能を有している。選択反射ミラー60の下方には、後述する回転反射ミラー73に映し出された画像を撮像する撮像用CCD61が配置され、左側には、追尾光を検出する追尾光用CCD62が配置されている。
また、本体51には、回転光学部70の指向している方向(水平測角(方位角))を検出するための角度読み取り部となる光検知部63を備えている。この光検知部63に対応するように回転光学部70にスリット円板81が設けられている。このスリット円板81は、回転光学部70の指向している方向を検出するための角度読み取られ部を構成すべく円周方向にスリットが形成されて構成されている。光検知部63は、図示は略すが、コの字形状の部材の一方の壁部に発光ダイオードを、他方の壁部にフォトトランジスタを有して構成され、その間を通過するスリット円板81のスリットを通過するパルス光をフォトトランジスタが検出することで、角度情報の信号を出力する。スリット円板81と光検知部63は、通常のロータリエンコーダと同じ原理により角度を検出する角度検出装置を構成している。
さらに、本体51には、本体制御部22(図5参照)および電源(図示せず)等が設けられている。この本体制御部22(図5参照)は、CPU、メモリ、および各種インターフェース回路を備え、後述する動作制御および距離算出の演算を行う。また、図示は略すが、本体制御部22(図5参照)のメモリには、各種計測データや画像データ等が格納される。この本体制御部22(図5参照)は、後述するように本発明に係る光信号伝送装置10を介して回転光学部70に収容された回転体制御部16(図5参照)の動作のための制御信号を伝送する。
次に、支持台となる本体51に回転可能に支持された回転体としての回転光学部70の構成について説明する。回転光学部70は、回転反射ミラー73を備えている。回転反射ミラー73は、本体51に対して回転光学部70が回転されると、その回転軸Ar回りに本体51に対して自転するように、すなわちミラー面の中心位置が回転軸Ar上に位置するように配置されている。また、この回転反射ミラー73は、回転軸部74によって回転光学部70において鉛直偏向角変化が可能な状態で軸支されている。この回転軸部74は、回転ベアリング75、76によって回転光学部70に支持されている。また、回転光学部70では、開口70a(図1参照)が設けられており、回転反射ミラー73は、開口70aを経て、外部に光を出射し、また外部からの光を採り入れることができる構成とされている。3次元位置測定装置50では、この回転反射ミラー73を回転可能とする構造により、出射する光の鉛直方向への偏向制御が可能とされている。ここで、鉛直方向への偏向制御というのは、本体51側から出射される追尾光や測距光の進行方向を鉛直面内の任意の方向(上下の方向)とする光軸制御すなわち上下方向で見た出射角度のことをいう。なお、この例では、回転軸部74を軸とする回転反射ミラー73の回転角を鉛直偏向角として定義している。
この回転反射ミラー73の偏向制御のために、回転光学部70には、ステータ77が配置されている。このステータ77は、コイルが巻かれた複数のコアが回転軸Arを中心とする円周上に配置されて構成されている。ステータ77に対向する回転反射ミラー73の部分には、回転軸Arを中心とする円周上に複数の永久磁石を備えて構成されたロータ78が配置されている。ステータ77とロータ78とは、DCブラシレスモータの原理を利用したDD(ダイレクト・ドライブ)モータを構成している。回転光学部70(3次元位置測定装置50)では、ステータ77のコイルへの通電が、回転光学部70に収容された後述する回転体制御部16(図5参照)によってスイッチングされることで、ステータ77に対するロータ78の回転力が生じ、回転反射ミラー73の回転軸部74回りの鉛直偏向角制御を行うことができる。
この回転軸部74の他端には、その鉛直偏向を検出するための角度読み取られ部を構成すべく円周方向にスリットが形成されたスリット円板79が取り付けられている。このスリット円板79に対応して、回転光学部70には、光検知部80が設けられている。この光検知部80は、図示は略すがコの字形状の部材の一方の壁部に発光ダイオードを、他方の壁部にフォトトランジスタを備え、その間を通過するスリット円板79のスリットを通過するパルス光をフォトトランジスタが検出することで、角度情報の信号を出力する。スリット円板79と光検知部80とは、通常のロータリエンコーダと同じ原理により角度を検出する角度検出装置を構成している。
3次元位置測定装置50では、上述したように、本体51から回転光学部70への電力供給が電力伝送装置90により行われている。次に、電力伝送装置90について説明する。電力伝送装置90は、本体51側に配置された本体側電力送信部91と、回転光学部70側に配置された回転光学部側電力受信部92を備えている。本体側電力送信部91と回転光学部側電力受信部92とは、共に磁性体(フェライト)で構成され、図2および図3に示すように、断面が凹型の円環形状を有している。
この本体側電力送信部91の凹型断面の内側には、コイル93が収容され、回転光学部側電力受信部92の凹型断面の内側には、コイル94が収容されている。電力伝送装置90は、本体側電力送信部91の凹型断面の開口部と回転光学部側電力受信部92の凹型断面の開口部とが対向し、かつ両者間に所定の間隔(数十μm〜数百μm)を置いて本体側電力送信部91と回転光学部側電力受信部92とが対向されて構成されている。
電力伝送装置90では、このように構成されていることから、本体側電力送信部91もしくは回転光学部側電力受信部92のいずれか一方のコイルに高周波電流を流すと、他方のコイルに相互誘導により同じ周波数の高周波電流が流れる。電力伝送装置90は、この原理を利用して、非接触の電力伝送を行う。この電力伝送装置90では、相互誘導の際、磁性材料で構成される本体側電力送信部91と回転光学部側電力受信部92とにおいて内部を貫く閉じた磁路が形成されるので、伝送損失を低く抑えることができる。
3次元位置測定装置50では、上述したように、本体51と回転光学部70との間のデータ信号のやり取りが光信号伝送装置10により行われているが、この構成および作用については後に詳述する。この例では、光信号伝送装置10は、回転反射ミラー73の鉛直偏向角制御のための制御信号を、本体51に設けられた本体制御部22から回転光学部70に設けられた回転体制御部16(図5参照)へと伝送するものとする。
次に、3次元位置測定装置50における動作の一例を説明する。なお、以下の動作は、本体51に内蔵された本体制御部22(図5参照)によって制御され実行される。
3次元位置測定装置50では、3次元位置測定動作が開始されると、まず目標とする対象物付近に設置したコーナーキューブ(図示せず)を探す動作が行われる。この動作では、図2に示すように、追尾光発光部57から追尾光が出射され、この追尾光が第2の副反射ミラー55および第1の副反射ミラー54で反射されて主レンズ系53に至る。この主レンズ系53を透過した追尾光は、本体51から出射されて回転光学部70に至り、回転軸Ar上に配置された回転反射ミラー73で反射されて、回転光学部70の開口70aから装置の外部に出射される。
このとき、ステータ52には、制御電流が流され、回転光学部70が本体51に対して回転されている。また、本体51の本体制御部22(図5参照)からは、光信号伝送装置10を介して、回転光学部70の回転体制御部16(図5参照)に回転反射ミラー73の鉛直偏向角制御に関するデータが回転光学部70の回転体制御部16(図5参照)に送られ、当該回転体制御部16により回転反射ミラー73の鉛直面内における向きの制御(追尾光の偏向制御)が行われる。
このように、水平角および鉛直偏向角により追尾光で走査することで、コーナーキューブ(図示せず)からの反射光の探索が行われる。コーナーキューブからの反射光が回転反射ミラー73に入射すると、その光線は、主レンズ系53を介して、本体51内に取り込まれる。本体51内に取り込まれた追尾光の反射光は、選択反射ミラー60において、図の左方向に反射され、追尾光用CCD62で検出される。追尾光用CCD62が撮像した画像は、本体制御部22(図5参照)内の図示を略す画像処理装置で画像処理される。そして、本体制御部22(図5参照)において、撮像画像の中央にコーナーキューブが位置するようにステータ52(水平角)およびステータ77(鉛直偏向角)に出力する制御電流が調整され、回転光学部70の水平角および回転反射ミラー73の鉛直偏向角が微調整される。
追尾光用CCD62の撮像画像の中央にコーナーキューブが位置したら、追尾光からの出射が停止され、測距光発光部58から測距光が出射される。測距光は、第2の副反射ミラー55および第1の副反射ミラー54で反射され、主レンズ系53を経て回転反射ミラー73に至り、そこで反射される。回転反射ミラー73で反射された測距光は、回転光学部70の開口70aから装置の外部に出射され、上記探索したコーナーキューブ(図示せず)を照射する。
測距光は、そのコーナーキューブで反射されて回転反射ミラー73に入射して反射され、主レンズ系53から本体51内に取り込まれ、さらに選択反射ミラー60で上方に反射され、第1の副反射ミラー54で左方向に反射される。この反射された測距光は、第3の副反射ミラー56でさらに下方に反射され、測距光受光部59で受光される。
ここで、測距光発光部58では、本体制御部22(図5参照)の制御により、所定の間隔でパルス状の測距光の出射(発光)が繰り返されているので、この出射のタイミングと測距光受光部59での受光(測距光受光部59からの受光信号)のタイミングとに基づいて、コーナーキューブまでの距離を本体制御部22が算出する。
このように3次元位置測定装置50では、任意の位置に設置されたコーナーキューブ(図示せず)までの距離の計測を行うことができる。また、3次元位置測定装置50では、この距離の計測を行った際、距離測定位置の画像情報を取得するために、撮像用CCD61により当該コーナーキューブが中心に位置する画像を撮像する。この画像データは、本体制御部22の図示を略すメモリに格納される。
3次元位置測定装置50では、この距離の計測を、他のコーナーキューブ(図示せず)に対しても同様に繰り返し行うことにより、複数のコーナーキューブまでの距離を計測し、3次元的な位置計測を行う。
この動作において、回転光学部70は、本体51に対して適宜回転されており、かつ回転反射ミラー73も適宜鉛直偏向角の制御が行われているが、光信号伝送装置10および電力伝送装置90では、非接触状態でデータ伝送および電力伝送を行っている。このため、摺動に起因する電極部材の摩耗等の問題が発生することはなく、高い耐久性および信頼性を得ることができ、メンテナンスコストや部品コストを抑えることができる。
次に、この光信号伝送装置10について説明する。図5は、光信号伝送装置10の構成を説明するための模式的な斜視図である。
光信号伝送装置10は、受信機構11と送信機構12とを備える。この光信号伝送装置10は、測距光および追尾光の出射のための機構、すなわち本体51において回転軸Ar上に配置された光学部材および回転光学部70において回転軸Ar上に配置された回転反射ミラー73を取り囲む環状の構成とされている。この実施形態の光信号伝送装置10では、本体51における測距光および追尾光の出射のための機構の周囲に位置する上端に送信機構12が設けられ、そこに対向された回転光学部70の下端に受信機構11が設けられている。このため、光信号伝送装置10では、測距光および追尾光の出射のための機構の設置を可能としつつ、受信機構11が送信機構12に対して回転軸Ar回りに回転可能とされていることとなる。
受信機構11は、図5に示すように、受光部13とレシーバPCB14とを有する。受光部13は、受光素子としてのフォトダイオードで構成されており、受光面13aで光を受光するとその強度に応じた電気信号を生成して出力することができる。受光部13は、受光面13aが本体51の上端に設けられた送信機構12(後述する導光部18の出射面18d)に対向するように、すなわち受光光軸を送信機構12(後述する導光部18の出射面18d)からの出射方向(この例では、回転軸Ar方向)と一致させるように設けられている。この受光部13は、回転光学部70が本体51に対して回転軸Ar回りに回転されると、送信機構12に対して回転軸Ar回りに回転されるので、その受光面13aは、送信機構12に対して回転軸Arを取り囲む環状の軌跡(符号15参照)を描くこととなる。
このことから、受信機構11では、回転光学部70が本体51に対して回転軸Ar回りに回転されている状態であっても、この環状の軌跡(15)上のいずれか一箇所に受光部13の受光面13aが存在することとなるので、環状の軌跡(15)の全領域へ向けて光を照射すれば、受光部13に当該光を必ず受光させることができる。このため、この環状の軌跡が、受光部13(受信機構11)において、後述するように送信機構12から出射される光束(光信号)を受信する受光領域15となる。
この受光部13は、レシーバPCB14と電気的に接続されている。レシーバPCB14は、回転光学部70に設けられた回転体制御部16に電気的に接続されており、受光部13から出力された電気信号を受け取ると、当該電気信号を後述する本体51の本体制御部22からの制御信号に復調して、復調した制御信号を回転体制御部16へと出力する。このため、レシーバPCB14は、受信機構11において、受光部からの受光信号を送信機構からの信号として処理する受光制御部として機能する。この本体51の本体制御部22からの制御信号は、送信機構12から光束(光信号)として出力される。
この送信機構12は、発光部17と導光部18とトランシーバPCB19と有する。発光部17は、発光素子としてのLEDで構成されており、全体的に出射光軸に沿うように光束を出射する。この発光部17は、トランシーバPCB19と電気的に接続されている。発光部17は、出射光軸が導光部18の入射端面18aと直交するように当該入射端面18aと対向されて配置されている。
導光部18は、発光部17から出射された光束を、回転軸Arを中心としつつ取り囲む環状の対向領域20から受光領域15へ向けて出射させるために、当該光束を導光するものである。この対向領域20とは、受信機構11と送信機構12との対向方向(この例では、回転軸Ar方向)で見て、本体51の上端において受光領域15が対向される領域のことをいう。このため、受信機構11の受光部13は、対向領域20から対向方向(この例では、回転軸Ar方向)へと出射された光束を効率よく受光することができる。
この導光部18は、本実施の形態では、アクリル材料からなる角柱状の部材が円環状に湾曲されて構成されており、円環状の導光本体部分18bと、その一部から接線方向へと延出された入射路部分18cとを有している。この入射路部分18cの延出端は、その延出方向に直交する平面とされており、この平面により入射端面18aが形成されている。また、導光部18は、総ての表面が極めて高い精度で平滑な面(所謂鏡面仕上げされたような面)とされている。このため、導光部18は、発光部17から出射されて入射端面18aから入射された光束を、入射路部分18cを経て導光本体部分18b内へと効率よく導くことができる。
この導光部18は、円環状の導光本体部分18bの上面(18d)が対向領域20に位置するように、本体51の上端に設けられている。また、導光部18は、導光本体部分18bにおいて、導光された光束を上面(18d)から積極的に出射させる構成とされており、この上面が出射面18dとされている。この出射面18d(上面)から積極的に出射させる構成とは、例えば、図示は略すが、導光本体部分18b内に導光されて延在方向に向けて進行する光束を受信機構11(後述する受光領域15)へ向けて出射させるべく出射面18dをフレネルレンズ状の傾斜面とすることや、到達した光束を散乱させるための加工を出射面18dに施すことや、出射面18dに対して臨界角よりも小さな入射角で入射するような光束を導光本体部分18b内に生じさせる加工を施すこと等があげられる。
このため、導光部18は、発光部17から出射されて入射端面18aから入射された光束を、入射路部分18cを経て導光本体部分18b内へと導くものであって、この導かれた光束を導光本体部分18bの全長に渡ってその上面である出射面18dから、受信機構11が形成する受光領域15へ向けて出射させるものである。このことから、この実施の形態では、導光本体部分18bの上面である出射面18dが、発光部17から出射された光束(光信号)を受信機構11の受光領域15へ向けて出射させる発光領域21を形成している。このため、本実施の形態では、発光領域21が対向領域20と一致されていることとなる。これは、本実施の形態では、受信機構11が単一の受光部13を有する構成であることから、受光領域15においていずれか一箇所に受光部13の受光面13aが存在するためである。
この導光部18へ導光される光束を出射する発光部17は、電気的に接続されたトランシーバPCB19により駆動制御される。トランシーバPCB19は、本体51に設けられた本体制御部22に電気的に接続されており、その本体制御部22が回転光学部70の回転体制御部16に対して伝送する制御信号に応じて、発光部17の点灯駆動を制御するすなわち点滅制御するものである。このため、トランシーバPCB19は、送信機構12において発光制御部として機能する。
これにより、送信機構12では、本体制御部22が伝送する制御信号に応じた光信号を、導光部18の出射面18dから受信機構11の受光領域15へ向けて出射させることができる。換言すると、受信機構11の受光部13は、送信機構12と受信機構11とが対向する方向(この例では、回転軸Ar方向)で見て、送信機構12の導光部18の出射面18dと対向する位置に受光領域15を形成するように設けられていることとなる。
このように、本発明に係る光信号伝送装置10では、回転光学部70が本体51に対して回転軸Ar回りに回転されることに伴って受信機構11が形成する受光領域15と対向する対向領域20上であって、回転位置(姿勢)に拘らず受信機構11の受光部13の受光面13aの少なくともいずれか1つ(この場合は単一の受光面13a)と対向する位置に送信機構12が発光領域21を形成するものであることから、回転光学部70が本体51に対して回転軸Ar回りに回転されているか否かに拘らず、送信機構12から受信機構11へと所望の信号(データ)を伝送することができる。
また、光信号伝送装置10は、送信機構12から出射された光束を受信機構11が受光することにより信号の伝送を行うものであって、互いに接触する構成ではないことから、摺動に起因する電極部材の摩耗等の問題が発生することはなく、高い耐久性および信頼性を得ることができ、メンテナンスコストや部品コストを抑えることができる。
次に、本発明に係る光信号伝送装置の具体例について説明する。
図6は、具体的な一例としての実施例1の光信号伝送装置101を模式的に示す斜視図であり、図7は、送信機構121の導光部181と、受信機構111の受光部131との配置関係を説明するために回転軸Ar方向で上方から見た様子を模式的に示す説明図である。図8は、図6のI−I線に沿って得られた断面図であり、(a)は界面において全反射されるイメージを示したものであり、(b)は散乱面181eにおいて散乱されるイメージを示したものである。図9は、図6のII−II線に沿って得られた断面図であって、出射面181dの作用を説明するためのものである。
実施例1の光信号伝送装置101は、光信号伝送装置10と同様に3次元位置測定装置50に搭載されているものであって、その基本的な構成は実施例1の光信号伝送装置10と同様であるので、同一機能部分には実施例1と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
実施例1の光信号伝送装置101は、送信機構121が、図6および図7に示すように、環状の対向領域20上であって、周方向に3等分したうちの1つの領域のみに、発光領域211を形成している例である。
この光信号伝送装置101では、受信機構111において、受光部131が3つ設けられている。この3つの受光部131は、それぞれレシーバPCB141に電気的に接続されている。このレシーバPCB141は、いずれの受光部131からの電気信号を出力された電気信号を受け取った場合であっても、当該電気信号を本体51の本体制御部22からの制御信号に復調して、復調した制御信号を回転体制御部16へと出力する。すなわち、受信機構111(光信号伝送装置101)では、3つの受光部131で、送信機構121からの光信号すなわち後述する発光部171から出射された光束(光信号)を受光するものである。
この3つの受光部131は、図7に示すように、単一の受光領域15を形成することができる位置、すなわち回転光学部70において回転軸Arからの距離が等しくなる同一の円周上であって、回転(周)方向で見て互いに等しい間隔となる位置に設けられている。すなわち、3つの受光部131は、回転軸Arを中心とする回転角度で見ると、互いに120度の間隔とされている。このため、各受光部131は、回転光学部70が本体51に対して回転軸Ar回りに回転されると、各受光面131aが単一の受光領域15上を移動することとなり、その受光領域15上において周方向で見て等間隔となる3箇所にいずれかの受光面131aが存在することとなる。このため、光信号伝送装置101では、受光領域15に対向する環状の対向領域20上であって、周方向に3等分したうちの1つの領域のみに発光領域211を形成すれば、当該発光領域211は、回転光学部70の本体51に対する回転軸Ar回りの回転に拘らず、3つの受光面131aのうちのいずれか1つに対向させることができる。
その発光領域211を形成する送信機構121では、導光部181が断面円形の線状(円柱状)のアクリル部材が湾曲されて形成されており、発光領域211を形成すべく対向領域20の3分の1の領域に沿うように湾曲された導光本体部分181bと、そこから対向領域20の外方へと延在する入射路部分181cと、を有し、その入射路部分181cの延在端が入射端面181aとされている。この導光部181は、本体51の上端に設けられた溝部51a内に設置されている。実施例1では、図示は略すが、この溝部51aには、表面を反射面とする加工が施されている。
この導光部181は、アクリル材料が引き抜き加工されることにより形成された円柱状のアクリル部材が用いられており、周方向で見た表面が極めて高い精度で滑らかな面(所謂鏡面仕上げのような)とされている。
また、導光部181では、発光領域211を形成すべく対向領域20の3分の1の領域に沿って湾曲された導光本体部分181bにおいて、図8および図9に示すように、受信機構111の受光領域15(3つの受光部131)と対向される面が出射面181dとなるが、断面で見て出射面181dとは反対側に位置する表面(溝部51aの底面に載置される側の表面)に散乱面181eが形成されている。この散乱面181eは、導光部181内に導かれた光束を散乱させるものである。散乱面181eは、導光部181の表面に粗面加工を施すこと、例えば、ヤスリがけやブラスト加工を施すことにより簡易に形成することができる。
この送信機構121では、図6に示すように、発光部171が導光部181の入射端面181aに対向されるように設けられてはおらず、光ファイバ23が介在されている。すなわち、送信機構121では、発光部171が光ファイバ23の一端に対向され、その光ファイバ23の他端が導光部181の入射端面181aに対向されている。ここで、発光部171から出射される光束は、全体的に出射光軸に沿うものであることから、光ファイバ23を経て入射端面181aから導光部181に入射すると、図8(a)に示すように、導光部181内においてその延在方向に近い方向へと(延在方向に対して小さな傾斜角で)進行することとなる。この導光部181は、上述したように、表面が極めて高い精度で滑らかな面とされていることから、発光部171から出射されて導光部181内へと導かれた光束は、基本的に導光部181の界面(導光部181と外部との境界面)において全反射されることとなり、外部へと漏れ出ることなく延在方向へと導かれることとなる。
また、導光部181では、散乱面181eが設けられていることから、内部に導かれた光束を、出射面181dから受信機構111(特に、受光領域15)へ向けて出射させることができる。これは次のことによる。上述したように、導光部181では、発光部171から出射されて内方へと導かれた光束を、全反射により外部へと漏れ出させることなく延在方向へと導いている(図8(a)参照)。このように、導光部181内では、導かれた光束が界面に到達することとなるので、その一部が散乱面181eに到達する。光束は、散乱面181eに到達すると、図8(b)に示すように、そこで散乱される。このため、導光部181内において延在方向に近い方向で進行していた光束は、一部が散乱面181eで散乱されることにより、散乱面181eと反対側に位置する出射面181dに対して臨界角よりも大きな入射角で界面に到達する。この臨界角よりも大きな入射角で界面に到達した光束は、この界面から導光部181の外方へと出射されることとなる。ここで、散乱面181eで散乱された光束は、導光部181内において散乱された位置から直進することから、導光部181の界面では、断面で見て、散乱面181eから遠ざかるほど、散乱された光束の進行方向に対する角度が臨界角よりも大きくなる確率が高くなる。このため、導光部181では、内部に導かれた光束を、主に断面で見て散乱面181eとは反対側の表面から出射させることとなり(図9参照)、この反対側の表面が出射面181dとなる。このため、導光部181では、内部に導かれた光束を、対向領域20の3分の1の領域に位置された導光本体部分181bの出射面181dから受信機構111(特に、受光領域15)へ向けて出射させることができる。これにより、送信機構121では、対向領域20の3分の1の領域に発光領域211を形成することができる。
この光信号伝送装置101では、図7に示すように、送信機構121が形成した対向領域20の3分の1の領域の発光領域211から光信号が出射される。光信号伝送装置101では、受信機構111において、3つの受光面131aのうちのいずれか1つが必ず当該発光領域211と対向されている。このため、光信号伝送装置101では、送信機構121が発光領域211から光信号を出射させると、回転光学部70の本体51に対する回転軸Ar回りの回転に拘らず、受信機構111の3つの受光部131のいずれか1つで発光領域211からの光信号を受け取ることができる。
この光信号伝送装置101では、以下の(1)〜(10)の効果を得ることができる。
(1)回転光学部70が本体51に対して回転軸Ar回りに回転されているか否かに拘らず、送信機構121から受信機構111へと所望の信号(データ)を確実に伝送することができる。
(2)送信機構121から出射された光束(光信号)を受信機構111が受光することにより信号の伝送を行うものであって、互いに接触する構成ではないことから、摺動に起因する電極部材の摩耗等の問題が発生することはなく、高い耐久性および信頼性を得ることができ、メンテナンスコストや部品コストを抑えることができる。
(3)受信機構111が形成する回転軸Arを中心とする円環状の受光領域15に対して、そこに対向する対向領域20上に送信機構121が形成した発光領域211から光束(光信号)を出射させる構成であることから、すなわち相対的な回転の影響を受けない回転軸Ar上を利用する構成ではないことから、回転軸Ar上の所定の空間を利用することなく、信号(データ)を伝送することができる。
(4)環状の対向領域20上であって、周方向に3等分したうちの1つの領域のみに、送信機構121が発光領域211を形成していることから、光信号伝送装置10(図5参照)と比較して、コストの大幅な上昇を招くことなく伝送効率を向上させることができる。これは、次のことによる。
光信号伝送装置10では、送信機構12の導光部18の環状の導光本体部分18bの上面が全周に渡って出射面18dとされている。これは、受信機構11では、単一の受光部13により送信機構12からの光信号を受光する構成であることから、回転光学部70が本体51に対して回転軸Ar回りに回転された際、環状の受光領域15における受光面13aが存在する個所でのみ送信機構12からの光信号を受光していることとなるので、送信機構12を受光領域15の全領域に対して同一の光信号を出射させる必要があることによる。ここで、送信機構12の導光部18内では、入射端面18aから入射路部分18cを経て導光本体部分18bを進行していくうちに導光する光束の強度が減衰されていくことから、出射面18dから出射される光束には、導光本体部分18bの周方向で見た位置の差異により強度の差異が生じてしまう。また、出射面18dから出射される光束は、光束の進行方向で見て、入射路部分18cから遠ざかるに連れて強度が低下してしまうことから、導光本体部分18bにおける光束の進行方向で見て入射路部分18cから最も遠い位置で出射面18dから出射される光束を適切に受光することが困難であり、当該光信号に基づく電気信号を本体制御部22からの制御信号に復調することが困難となる。これらの問題点を解決する方法としては、発光部17の出射強度を高めることや導光部18における減衰率を低下させることが考えられるが、いずれもコストの大幅な上昇を招いてしまう。
これに対し、光信号伝送装置101では、環状の対向領域20を周方向に3等分したうちの1つの領域のみに送信機構121が発光領域211を形成する構成であることから、導光部181の長さ寸法が小さくされているので、導光部181内を進行する光束の減衰量を低減することができる。また、この構成とするためには、受信機構111において3つの受光部131を用いるだけでよいことから、コストの上昇を極力低減することができる。
(5)導光部181が全反射を利用して光信号としての光束を導くものであることから、効率よく光信号を発光領域211全体に導くことができる。
(6)導光部181が円柱状のアクリル部材を湾曲させて構成されていることから、簡易に形成することができる。このことは、光信号伝送装置10(図5参照)と比較すると大きな差異がある。光信号伝送装置10では、導光部18が円環状の導光本体部分18bと、その一部から接線方向へと延出された入射路部分18cとを有するものであることから、角柱状のアクリル部材を湾曲させて導光本体部分18bを形成した後、入射路部分18cを接合する必要があった。また、導光部18は、アクリル材料から型抜き成形により形成することも考えられるが、全反射を利用すべく表面を平滑にするための加工を表面に施す必要がある。これに対し、導光部181は、引き抜き成形により形成された円柱状のアクリル部材を湾曲させて配置するだけでよいことから、簡易に形成することができ、製造工程および製造コストを大幅に低減することができる。
(7)導光部181では、断面で見て出射面181dと反対側に位置する表面に散乱面181eが形成されていることから、全反射を利用して効率よく光束(光信号)を発光領域211の全体に渡って導くことを可能としつつ出射面181dから光束(光信号)を確実に出射させることができる。また、この散乱面181eは、導光部181の表面に粗面加工を施すだけでよいことから、簡易に形成することができる。
(8)導光部181が、円柱状のアクリル部材で形成されていることから、図9に示すように、断面で見て出射面181dが半円形となるので、出射面181dから出射させた光束(光信号)を効率よく受信機構111の各受光部131の受光面131aに入射させることができる。これは次のことによる。出射面181dから出射される光束は、直交方向で界面を通過するものを除くと、その出射面181dすなわち導光部181の界面において屈折されることとなる。このとき、散乱面181eに散乱されて出射面181dへと向かう光束には、その進行方向が受光面131aへは向かっていなかったが屈折することにより受光面131aに向かうこととなるものがある。このように、出射面181dが半円形とされていることから、当該出射面181dでは所謂レンズ作用が生じることとなり、出射面181dと受信機構111の各受光部131の受光面131aとの距離を適切なものとすることにより、出射面181dから出射された光束(光信号)を効率よく受光面131aに入射させることができる。このレンズ作用は、換言すると、受光面131a側から導光部181を見ると、散乱面181eが拡大されて見えるものである。このため、出射面181dは、導光部181の内方から出射させる光束において、受信機構111の各受光部131(その受光面131a)へと入射する量を増加させるような効果を奏するレンズ面とされていることとなる。
(9)発光部171が光ファイバ23の一端に対向され、その光ファイバ23の他端が導光部181の入射端面181aに対向されていることから、発光部171およびそこに電気的に接続されるトランシーバPCB19等の配置の自由度を高めることができるとともに、電磁波対策を容易なものとすることができる。この電磁波対策とは、例えば、図6に示すように、電磁波の放出を遮断する筐体24に発光部171およびトランシーバPCB19を収容すること等があげられる。これは、トランシーバPCB19では、発光部171の駆動のために瞬間的に比較的大きな電流を流すことから、電磁波を発生させてしまうことによる。
(10)導光部181が設置されている本体51の溝部51aには、表面を反射面とする加工が施されていることから、導光部181内に導かれた光束(光信号)をより効率よく利用することができる。
よって、本発明に係る光信号伝送装置101では、回転軸Ar上の所定の空間を利用することなく、相対的に回転する本体51(支持台)と回転光学部70(回転体)との間での非接触の光伝送により信号を伝送することができる。
なお、実施例1では、受信機構111が、同一の円周上(単一の受光領域15)であって、回転(周)方向で見て互いに等しい間隔となるように3つの受光部131を有するものとされ、かつ送信機構121が、単一の受光領域15に対向する対向領域20の3分の1の領域に発光領域211を形成する構成とされていたが、回転光学部70の本体51に対する回転軸Ar回りの回転に拘らず、受信機構111が発光領域211からの光信号を受け取ることができるものであればよく、実施例1の構成に限定されるものではない。すなわち、本発明に係る光信号伝送装置では、nを(1以上の)自然数として、受信機構が、同一の円周上(単一の受光領域)であって、回転(周)方向で見て互いに等しい間隔となるようにn個の受光部を有するものとされ、かつ送信機構が、単一の受光領域に対向する対向領域のn分の1の領域に発光領域を形成する構成とすることにより、回転光学部70の本体51に対する回転軸Ar回りの回転に拘らず、受信機構が発光領域からの光信号を受け取ることができるものとするものである。このため、上記した光信号伝送装置10は、n=1である例であり、実施例1の光信号伝送装置101は、n=3の例である。ここで、受信機構が、同一の円周上(単一の受光領域)に複数の受光部を有するものである場合、その受光領域に対向する対向領域において、各受光部の送信機構に対する回転軸Ar回りの回転位置に拘らず少なくともいずれか1つの受光部と対向する位置に、発光領域を形成するように送信機構の導光部が延在されていれば、回転光学部70の本体51に対する回転軸Ar回りの回転に拘らず、受信機構が発光領域からの光信号を受け取ることができるので、受信機構が必ずしも回転(周)方向で見て互いに等しい間隔とされていなくてもよく、送信機構が必ずしも対向領域のn分の1の領域に発光領域を形成するものでなくてもよく、送信機構が少なくとも対向領域のn分の1の領域よりも大きい発光領域を形成するものであってもよい。しかしながら、受信機構を、同一の円周上(単一の受光領域)であって、回転(周)方向で見て互いに等しい間隔となるようにn個の受光部を有するものとし、かつ送信機構を、単一の受光領域に対向する対向領域のn分の1の領域に発光領域を形成するものとすると、最も効率のよい構成とすることができる。ここでいうn分の1の領域に形成される発光領域とは、厳密に対向領域をn分の1としたものに限定されるものではなく、例えば、n分の1の領域に各受光部の回転(周)方向で見た大きさ(幅)寸法を加えることにより、回転(周)方向で前後する2つの受光部が同時に対向可能とするものを含むものとしてもよい。
また、実施例1では、送信機構121の導光部181が、断面が円形で全体に線状とされたアクリル部材から形成されていたが、発光部から出射された光束(光信号)を発光領域から出射させるべく延在方向に導くものであればよく、実施例1の構成に限定されるものではない。ここで、例えば、光信号伝送装置10のように断面が方形であると、拡散面(実施例1では符号181e)で拡散されて側面に向かう光束が、当該側面に対して臨界角よりも小さな入射角であると当該側面に全反射されて出射面(18d)へと向かい、当該出射面に対しては臨界角よりも大きな入射角となって当該出射面から出射させることができる。このように、拡散面で拡散された光束を、側面で全反射させて出射面へと向かわせ、当該出射面から出射させる構成とすると、導光部に導かれた光束(光信号)をより効率よく利用することができる。このとき、出射面を実施例1の出射面181dのように、レンズ効果を利用することができるものとすると、導光部に導かれた光束(光信号)をさらに効率よく利用することができることとなる。
次に、実施例2の光信号伝送装置102について説明する。実施例2の光信号伝送装置102は、実施例1の光信号伝送装置101において、複数の信号を同時に伝送することを可能とする構成とされた例である。光信号伝送装置102は、その基本的な構成は実施例1の光信号伝送装置101と同様であるので、同一機能部分には実施例1と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。なお、図10は、光信号伝送装置102の構成を模式的に示す図7と同様の説明図である。
光信号伝送装置102は、図10に示すように、受信機構112が2種類の光束(光信号)を同時に受け取ることが可能な構成とされ、送信機構122が2種類の光束(光信号)を同時に出射することが可能な構成とされている。
詳細には、受信機構112は、3つの受光部132aと、3つの受光部132bと、各受光部132aに対応されたレシーバPCB142aと、各受光部132bに対応されたレシーバPCB142bとを有する。3つの受光部132aは、同一の円周上(単一の受光領域15)であって、回転(周)方向で見て互いに等しい間隔となるように設けられている。各受光部132aは、レシーバPCB142aに電気的に接続され、このレシーバPCB142aは、図示は略すが回転光学部70に設けられた回転体制御部16(図6等参照)に電気的に接続されている。この各受光部132aは、後述する発光部172aから出射される光束の波長に対応された構成(例えば、当該波長域のみを受光可能とする)とされている。このような構成は、例えば、図示は略すが、各受光部132aの受光面にフィルタを設けることにより簡易に実現することができる。
また、3つの受光部132bは、3つの受光部132aが位置された同一の円周上(単一の受光領域15)であって、回転(周)方向で見て互いに等しい間隔となるように設けられている。各受光部132bは、3つの受光部132aとは重ならないように回転(周)方向で見た角度位置が互いにずれて(実施例2では60度)配置されている。各受光部132bは、レシーバPCB142bに電気的に接続され、このレシーバPCB142bは、図示は略すが回転光学部70に設けられた回転体制御部16(図6等参照)に電気的に接続されている。この各受光部132bは、後述する発光部172bから出射される光束の波長に対応された構成(例えば、当該波長域のみを受光可能とする)とされている。このような構成は、例えば、図示は略すが、各受光部132bの受光面にフィルタを設けることにより簡易に実現することができる。
このレシーバPCB142aおよびレシーバPCB142は、対応する各受光部(132a、132b)出力された電気信号を受け取ると、当該電気信号を後述する本体51の本体制御部22からの制御信号に復調して、復調した制御信号を回転体制御部16へと出力する。
送信機構122では、発光部として、発光部172aと発光部172bとハーフミラー26とが用いられている。発光部172aは、各受光部132aに対応する波長域の光束を出射可能とされており、トランシーバPCB192aに接続されている。発光部172bは、各受光部132bに対応する波長域の光束を出射可能とされており、トランシーバPCB192bに接続されている。トランシーバPCB192aおよびトランシーバPCB192bは、図示は略すが本体51の本体制御部22に接続されており、当該本体制御部22を制御下で、それぞれが対応する発光部(172a、172b)の点灯駆動を制御する。
また、発光部172aは、導光部181の入射端面181aとハーフミラー26を介して正対されており、発光部172bは、発光部172aの光軸に直交するようにハーフミラー26に対向されている。このため、発光部172aから出射された光束(光信号)と、発光部172bから出射された光束(光信号)とは、互いの光軸が一致された状態で入射端面181aから導光部181内へと入射され、当該導光部181により導かれることとなる。
この光信号伝送装置102では、発光部172aから出射された光束(光信号)を、各受光部132aにより受信させてレシーバPCB142aで処理させることにより、一方の信号を伝送することができ、発光部172bから出射された光束(光信号)を、各受光部132bにより受信させてレシーバPCB142bで処理させることにより、他方の信号を伝送することができる。よって、光信号伝送装置102では、光信号伝送装置10で得られる効果に加えて、2種類の光束(光信号)を同時に伝送することができる。このため、光信号伝送装置102が搭載された3次元位置測定装置50(図1参照)では、測量を行うために回転光学部70が本体51に対して回転駆動されている場合であっても、本体51の本体制御部22から回転光学部70の回転体制御部16(図6等参照)へと複数の信号を随時伝送することができ、迅速に測量することができる。
なお、実施例2の光信号伝送装置102では、送信機構122において、単一の導光部181を利用する構成とされていたが、例えば、図11に示すように、送信機構122´が2つの導光部1811、1812を有する構成の光信号伝送装置102´とすることもできる。この両導光部1811、1812は、導光部181と同様の構成であって、互いに干渉しないように配置されている。この光信号伝送装置102´では、2つの導光部1811、1812を用いる必要があるが、ハーフミラー26を用いることがなく、発光部172aおよび発光部172bの配置の自由度を高めることができる。
また、実施例2の光信号伝送装置102では、受信機構112において、3つの受光部132aと3つの受光部132bとが単一の受光領域15を形成する構成とされていたが、例えば、図12に示すように、2つの受光領域15aおよび受光領域15bを形成する構成の光信号伝送装置102´´とすることもできる。この光信号伝送装置102´´では、2つの導光部1811´、1812´を用いる必要があり、互いが対応する受光領域15a、15bに対向可能に湾曲されている。この光信号伝送装置102´´では、2つの導光部1811´、1812´が互いに並行されているので、両者を光学的に遮断する遮蔽部材27を間に設けることが望ましい。
なお、上記した各実施例では、本体51に送信機構12が設けられ、かつ回転光学部70に受信機構11が設けられていたが、その配置が逆であってもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。この場合、回転光学部70では、送信機構を、回転軸Ar上に重心が位置しつつ回転軸Arから周方向で見た重さの分布が等しくなるような構成とすることが望ましい。
また、上記した各実施例の構成において、受信機構11の受光部13(それに伴ってレシーバPCB14も)と、送信機構12の発光部17の位置(それに伴ってトランシーバPCB19も)とを入れ替えると、光の逆進性により、受信機構11を送信機構として機能させるとともに送信機構12を受信機構として機能させることができる。このため、例えば、実施例2の構成を利用すれば、受信機構と送信機構との双方向の信号の伝送を可能とすることができる。
さらに、上記した各実施例では、導光部(符号18等)において、アクリル材料からなる柱状の部材が用いられていたが、送信機構12の発光部17から出射された光束(光信号)を受信機構11の受光部13に受光させるべく発光領域21から出射させるために導光することができるものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
上記した各実施例では、受光部13としてLEDが用いられていたが、信号伝達のために点灯制御(光束の出射の制御)が可能なものであれば、例えばレーザダイオードであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施形態では、コーナーキューブからの反射光を検出し、距離の計測を行う例を説明したが、コーナーキューブを用いずに、直接被照射物からの反射光を検出し、距離の測定を行う3次元位置測定装置に本発明を利用することもできる。
上記した実施例1(実施例2も同様)では、対向領域20を周方向にn等分(実施例1では3等分)したうちの1つの領域のみに、送信機構121が発光領域211を形成することにより、伝送効率を向上させるものとされていたが、例えば、図13に示す構成の光信号伝送装置103とすることもできる。光信号伝送装置103では、光信号伝送装置10(図5参照)とは、送信機構123の導光部183が異なる例である。導光部183では、円環状の導光本体部分183bから延出するように、2つの入射路部分183ca、183cbが設けられている。各入射路部分183ca、183cbの延出端は、その延出方向に直交する平面とされており、この平面により入射端面183aa、183abが形成されている。また、送信機構123では、入射端面183aaに対応して発光部173aおよびトランシーバPCB193aが設けられ、かつ入射端面183abに対応して発光部173bおよびトランシーバPCB193bが設けられている。この発光部173aおよび発光部173bからは、同一の光信号が出射される。この光信号伝送装置103では、出射強度の高い発光部17を用いることなく伝送効率を向上させることができる。
本発明に係る光信号伝送装置が搭載された3次元位置測定装置を示す模式的な斜視図である。
3次元位置測定装置(そこにおける光信号伝送装置)の構成を説明するための模式的な断面図である。
3次元位置測定装置の電力伝送装置を説明するために当該電力伝送装置を分解して示す模式的な斜視図である。
電力伝送装置の内部構成を説明するために部分的に断面で示す模式的な斜視図である。
光信号伝送装置の構成を説明するための模式的な斜視図である。
具体的な一例としての実施例1の光信号伝送装置を模式的に示す斜視図である。
実施例1の光信号伝送装置における送信機構の導光部と、受信機構の受光部との配置関係を説明するために回転軸方向で上方から見た様子を模式的に示す説明図である。
図6のI−I線に沿って得られた断面図であり、(a)は界面において全反射されるイメージを示したものであり、(b)は散乱面において散乱されるイメージを示したものである。
図6のII−II線に沿って得られた断面図であって、出射面の作用を説明するためのものである。
実施例2の光信号伝送装置の構成を模式的に示す図7と同様の説明図である。
実施例2の他の例の光信号伝送装置の構成を模式的に示す図7と同様の説明図である。
実施例2の他の例の光信号伝送装置の構成を模式的に示す図7と同様の説明図である。
他の例の光信号伝送装置の構成を模式的に示す図7と同様の説明図である。
符号の説明
10、101、102、102´、102´´、103 光信号伝送装置
11、111、112、112´、112´´、113 受信機構
12、121、122、122´、122´´、123 送信機構
13 受光部
14、141、142 (受光制御部としての)レシーバPCB
15、15a、15b 受光領域
17、172a、172b、173a、173b 発光部
18、181、182、183 導光部
18d 出射面
19 (発光制御部としての)トランシーバPCB
20 対向領域
21、211 発光領域
181e 散乱面
Ar 回転軸