JP5381219B2 - 絶縁物被覆軟磁性粉末、圧粉磁心および磁性素子 - Google Patents
絶縁物被覆軟磁性粉末、圧粉磁心および磁性素子 Download PDFInfo
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Description
このように、モバイル機器の小型化および高性能化を図るためには、スイッチング電源の高周波数化が必要となる。このため、スイッチング電源の駆動周波数は、数100kHz程度まで高周波数化が進んでいる。また、それに伴い、モバイル機器に内蔵されたチョークコイルやインダクター等の各種磁性素子の駆動周波数も高周波数化への対応が必要となる。
しかしながら、これらの磁性素子の駆動周波数が高周波数化した場合、各磁性素子が備える磁心において、渦電流によるジュール損失(渦電流損失)が著しく増大するという問題が発生する。
ところが、このような圧粉磁心においては、混合物を高い圧力で加圧・成形した際に、軟磁性粉末の粒子同士間に存在するバインダーが断ち切れてしまい、この粒子間の絶縁性が低下するという問題が知られている。かかる問題が生じると、渦電流損失を低減することが困難になる。
例えば、特許文献1には、粒径20〜100μmの磁性粉と、シリカ系ゾルを主体とする無機結合剤とを混合したのち、加熱して、前記磁性粉の表面を前記シリカ系ゾルの膜で被覆し、次いで、得られた磁性粉を成形したのち、得られた成形体を焼結することを特徴とする圧粉磁心の製造方法が提案されている。
また、特に、磁性粉が構成成分としてクロムやアルミニウム等を含んでいる場合、磁性粉の表面には化学的に安定な不働態被膜が形成されているため、磁性粉とシリカゾル系の膜との密着性がさらに低下する。
本発明の絶縁物被覆軟磁性粉末は、軟磁性材料で構成された粒子状のコア部と、該コア部を覆うように設けられ、ガラス材料を主材料とする絶縁性材料で構成された被覆部とを有し、
前記被覆部は、前記コア部に対して、前記コア部の平均粒径より小径の前記絶縁性材料の粒子を押圧して形成されたものであり、
前記コア部は、(投影像の面積と同じ面積の真円の周長)/(投影像の周長)で定義される投影像の円形度の平均値が、0.8〜1であり、
前記軟磁性材料は、純鉄、Fe−Si系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Si−Al系合金、およびFe−Cr−Si系合金のうちのいずれかであり、
前記絶縁性材料の粒子の平均粒径は、前記コア部の平均粒径の25〜58%であり、
前記コア部である粒子のタップ密度は、前記コア部の真密度に対して52%以上であり、
前記被覆部の平均膜厚は、前記コア部の平均粒径の0.1〜20%であることを特徴とする。
これにより、表面を絶縁物で被覆してなり、長期にわたって渦電流損失が小さい圧粉磁心を製造可能な絶縁物被覆軟磁性粉末が得られる。
また、これにより、当該絶縁物被覆軟磁性粉末は、十分な絶縁性を有するとともに、この粉末を用いて圧粉磁心を製造した場合には、その圧粉磁心の透磁率および磁束密度が著しく低下するのを防止することができる。
また、これにより、コア部の流動性が高くなり、コア部の転動容易性が高くなる。その結果、コア部表面の全体にわたって絶縁性材料の粒子を均一に固着させ、均一な被覆層を成膜することができる。
これにより、有機系材料に比べて化学的安定性および絶縁性に優れており、長期にわたって高い絶縁性を維持し得る被覆層が得られる。
前記絶縁性材料は、100〜500℃の軟化点を有するガラス材料であり、
前記押圧は、前記コア部である粒子と前記絶縁性材料の粒子との混合物を、同一の容器内で、加圧しつつ撹拌することにより行われたものであり、
前記被覆部は、前記絶縁性材料の粒子の表面が、前記コア部の表面に融合してなるものであることが好ましい。
これにより、被覆層は、部分的に薄くなったりすることなく、均一な厚さになり易い。
また、コア部が水アトマイズ法により製造された粒子であることにより、極めて微小な粉末を効率よく製造することができる。また、得られる粉末の各粒子の形状が真球に近くなるため、コア部の転動容易性が向上し、コア部表面の全体にわたって絶縁性材料の粒子を均一に固着させ、均一な被覆部を成膜することができる。
また、絶縁性材料として前記ガラス材料を用いることにより、コア部に対して絶縁性材料の粒子を機械的に固着させる際に、絶縁性材料の粒子の表面が軟化し、この粒子をコア部の表面に隙間なく固着させることができる。その結果、被覆部とコア部との間に隙間が生じず、長期耐久性および磁気特性に優れた絶縁物被覆軟磁性粉末が得られる。
これにより、長期にわたって低損失の圧粉磁心が得られる。
本発明の磁性素子は、本発明の圧粉磁心を備えたことを特徴とする。
これにより、長期にわたって低損失の磁性素子が得られる。
[絶縁物被覆軟磁性粉末]
まず、本発明の絶縁物被覆軟磁性粉末について説明する。
図1は、本発明の絶縁物被覆軟磁性粉末の一粒子の実施形態を示す縦断面図である。
このような絶縁物被覆軟磁性粉末では、表面が被覆層3で覆われていることにより、粒子間の絶縁性が確保されている。このため、このような複合粒子1をバインダーとともに所定の形状に加圧・成形することにより、例えば長期にわたって渦電流損失が小さい圧粉磁心を製造することができる。
この製造方法は、コア部2に対して、それより粒径の小さい絶縁性材料の粒子(以下、省略して「絶縁粒子」という。)を機械的に固着させて、被覆層3を形成し、複合粒子1を製造する方法である。
[1]まず、コア部2および絶縁粒子30を用意する。
コア部2は、軟磁性材料で構成された金属粉末の一粒子である。
かかる軟磁性材料としては、例えば、純鉄、ケイ素鋼(Fe−Si系合金)、パーマロイ(Fe−Ni系合金)、パーメンジュール(Fe−Co系合金)、センダストのようなFe−Si−Al系合金、Fe−Cr−Si系合金等の各種Fe系合金の他、各種Ni系合金、各種Co系合金、各種アモルファス合金などが挙げられる。このうち、透磁率、磁束密度等の磁気特性や、コスト等の生産性の観点から、各種Fe系合金が好ましく用いられる。
また、パーマロイは、Niを35〜82質量%程度の割合で含むFe系の軟磁性材料である。パーマロイは、前述の範囲内でFeとNiとの組成比を設定したり、添加物を加えたりすることによって、種々の軟磁気特性をもたらすことができるが、全体として透磁率および磁束密度が高い。このため、コア部2の透磁率および磁束密度を高めることができる。
また、Fe−Si−Al系合金としては、特に、Siを5〜11質量%程度の割合で含み、かつAlを3〜8質量%程度の割合で含むセンダストが好ましく用いられる。センダストは、透磁率が高く、かつ硬度が高いため、コア部2の透磁率および硬度の向上を図ることができる。
このうち、コア部2には、アトマイズ法により製造されたものが好ましく用いられる。アトマイズ法によれば、極めて微小な粉末を効率よく製造することができる。また、得られる粉末の各粒子の形状が真球に近くなるため、コア部2の転動容易性が向上し、後述するような効果が生じる。
かかる絶縁性材料としては、無機系の絶縁性材料が挙げられ、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、硫酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラスのような各種ガラス材料等を主成分とする材料が挙げられる。このようなガラス材料は、有機系材料に比べて化学的安定性および絶縁性に優れていることから、長期にわたって高い絶縁性を維持し得る被覆層3を形成することができる。このうち、好ましく用いられるガラス材料は、その軟化点が650℃以下のものであり、より好ましく用いられるガラス材料は、その軟化点が100〜500℃程度のものである。
軟化点が100〜500℃程度のガラス材料としては、例えば、酸化鉛を含有するホウ酸塩系ガラス(PbO・B2O3)や、これに酸化亜鉛または酸化ケイ素を混合した三元系ガラス材料、酸化スズを含有するリン酸塩系ガラス(SnO・P2O5)等が挙げられる。
この機械的な固着は、コア部2の表面に絶縁粒子30を高い圧力で押圧することで生じる。具体的には、複合粒子1は、図2に示すような粉末被覆装置100を用いて上述した機械的な固着を生じさせることで製造される。
コア部2および絶縁粒子30に対して機械的な圧縮と摩擦作用とを生じさせる装置として、ハンマーミル、ディスクミル、ローラーミル、ボールミル、遊星ミル、ジェットミル等の各種粉砕機や、オングミル(登録商標)、高速楕円型混合機、ミックスマラー(登録商標)、ヤコブソンミル、メカノフュージョン(登録商標)、ハイブリダイゼーション(登録商標)等の各種摩擦混合機等が挙げられるが、ここでは、一例として、容器110と、その内側で容器の内壁に沿って回転するチップ140とを有する図2に示す粉末被覆装置100(摩擦混合機)について説明する。このような粉末被覆装置100は、コア部2に対する絶縁粒子30の機械的な固着を効率よく生じさせることができる。
容器110は、ステンレス鋼等の金属材料で構成され、その内部に投入されたコア部2および絶縁粒子30の混合物に対して、機械的な圧縮と摩擦作用とを与える。
また、アーム120の長手方向の中心には回転軸130が挿通されており、アーム120は、この回転軸130を回転中心として回転自在に設けられている。なお、回転軸130は、容器110の中心軸と一致するように設けられている。
また、容器110は、粉末被覆装置100の駆動中、封止状態を維持することができ、内部を減圧(真空)状態または各種ガスで置換した状態を維持することができる。なお、好ましくは、容器110中は窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換される。
まず、コア部2と絶縁粒子30とを容器110内に投入する。次いで、容器110を封止し、アーム120を回転させる。
ここで、図2(a)は、チップ140が上方に位置し、スクレーパー150が下方に位置するときの粉末被覆装置100の状態を示しており、一方、図2(b)は、チップ140が下方に位置し、スクレーパー150が上方に位置するときの粉末被覆装置100の状態を示している。
一方、図2(b)に示すように、チップ140が降下すると、チップ140と容器110との隙間に、コア部2および絶縁粒子30が侵入し、これらはアーム120の回転とともにチップ140から圧縮作用と摩擦作用とを受ける。
アーム120の回転数は、容器110内に投入される粉末の量に応じて若干異なるものの、1分間に300〜1200回程度とするのが好ましい。
また、チップ140が粉末を圧縮する際の押圧力は、チップ140の大きさによって異なるが、一例として30〜500N程度であるのが好ましい。
円形度=(コア部2の投影像の面積と同じ面積の真円の周長)/(コア部2の投影像の周長)
なお、上記投影像とは、コア部2の形状を平面上に投影した二次元投影像である。
この回転に伴って、コア部2の表面の全体にわたって均一な圧縮摩擦作用が生じ、その結果、コア部2の表面全体に均一な被覆層3を成膜することができる。
さらに、被覆層3は、コア部2の表面に絶縁粒子30を機械的に固着させたものであるため、コア部2の表面の状態によらず、密着性が極めて高い。このため、被覆層3の剥離を長期にわたって防止することができる。
さらには、コア部2の表面に異物や不働態被膜等が付着していて、被覆層3の成膜が阻害される場合でも、圧縮摩擦作用により異物等を除去したり、不働態被膜を破壊することができる。これにより、被覆層3を確実に成膜することができる。
なお、コア部2の円形度が前記下限値を下回った場合、コア部2の転動容易性が低下し、均一な被覆層3を成膜することができないおそれがある。
また、コア部2の転動容易性を高める観点からは、コア部2の流動性に関わるタップ密度が高いことが好ましい。
具体的には、コア部2の真密度に対するタップ密度の割合は、45%以上であるのが好ましく、55%以上であるのがより好ましい。このようなコア部2は、流動性が比較的高いと言えるため、結果的に転動容易性の高いものとなる。
なお、上記範囲は、前述した圧縮摩擦作用により、絶縁粒子30に対して圧縮力が確実に伝達されるために適した粒径であり、かつ、圧縮摩耗作用の下では、コア部2に比べて著しく大きな粒径の複合粒子1は製造できないということに基づく範囲である。
なお、本発明において、「平均粒径」とは、対象となる粉末の粒度分布において、体積の累積で50%の部分に分布する粉末の粒径を指す。
また、粉末被覆装置100に投入する前に、コア部2および絶縁粒子30を撹拌機または混合機等により、撹拌(混合)するようにしてもよい。
本発明の磁性素子は、チョークコイル、インダクター、ノイズフィルター、リアクトル、モーター、発電機のように、磁心を備えた各種磁性素子(電磁気部品)に適用可能である。すなわち、本発明の圧粉磁心は、これらの磁性素子が備える磁心に適用可能である。
<第1実施形態>
まず、本発明の磁性素子の第1実施形態を適用したチョークコイルについて説明する。
図3は、チョークコイルの構成を示す模式図(平面図)である。
図3に示すチョークコイル10は、リング状(トロイダル形状)の圧粉磁心11と、この圧粉磁心11に巻き回された導線12とを有する。このようなチョークコイル10は、一般に、トロイダルコイルと称される。
圧粉磁心11の作製に用いられるバインダーの構成材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等の有機バインダー、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸マンガン、リン酸カドミウムのようなリン酸塩、ケイ酸ナトリウムのようなケイ酸塩(水ガラス)等の無機バインダー等が挙げられるが、特に、熱硬化性ポリイミドまたはエポキシ系樹脂が好ましい。これらの樹脂材料は、加熱されることによって容易に硬化するとともに、耐熱性に優れたものである。したがって、圧粉磁心11の製造容易性および耐熱性を高めることができる。
また、有機溶媒としては、バインダーを溶解し得るものであれば特に限定されないが、例えば、トルエン、クロロホルム、酢酸エチル等の各種溶媒が挙げられる。
なお、前記混合物中には、必要に応じて、任意の目的で各種添加剤を添加するようにしてもよい。
このようにして製造された圧粉磁心11では、コア部2の表面を覆う被覆層3と、複合粒子1の隙間に行き渡ったバインダーとにより、コア部2同士が確実に絶縁されることとなる。その結果、圧粉磁心11に高周波数で変化する磁場を付与しても、この磁場変化に対する電磁誘導で発生する起電力に伴う誘導電流は、粒子単位の比較的狭い領域にしか及ばない。このため、この誘導電流によるジュール損失を小さく抑えることができる。
また、このジュール損失は、圧粉磁心11の発熱を招くこととなるため、ジュール損失を抑えることにより、チョークコイル10の発熱量を減らすこともできる。
なお、導線12の表面に、絶縁性を有する表面層を備えているのが好ましい。これにより、圧粉磁心11と導線12との短絡をより確実に防止することができる。
かかる表面層の構成材料としては、例えば、エナメル等の各種樹脂材料等が挙げられる。
まず、複合粒子1と、バインダーと、各種添加剤と、有機溶媒とを混合し、混合物を得る。
次いで、得られた混合物を乾燥させて塊状の乾燥体を得た後、この乾燥体を粉砕することにより、造粒粉を形成する。
この場合の成形方法としては、特に限定されないが、例えば、プレス成形、押出成形、射出成形等の方法が挙げられる。
なお、この成形体の形状寸法は、以後の成形体を加熱した際の収縮分を見込んで決定される。
このときの加熱温度は、バインダーの組成等に応じて若干異なるものの、バインダーが有機バインダーで構成されている場合、好ましくは100〜250℃程度とされ、より好ましくは120〜200℃程度とされる。
また、加熱時間は、加熱温度に応じて異なるものの、0.5〜5時間程度とされる。
なお、上述したチョークコイル10では、複合粒子1の粒子同士をバインダーで結着することにより圧粉磁心11を得ているが、複合粒子1の各粒子が絶縁性の高い被覆層3を備えていることから、複合粒子1の各粒子同士を焼結させることにより、各複合粒子1の被覆層3同士を固着させ、圧粉磁心11を得るようにしてもよい。
まず、複合粒子1と、バインダーと、各種添加剤と、有機溶媒とを混合し、混合物を得る。
ここで用いるバインダーとしては、熱分解するものであればよく、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、エチレンビスステアロアミド、エチレンビニル共重合体、パラフィン、ワックス、アルギン酸ソーダ、寒天、アラビアゴム、レジン、しょ糖等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
次に、この造粒粉を、作製すべき圧粉磁心の形状に成形し、成形体を得る。
この場合の成形方法としては、特に限定されないが、例えば、プレス成形、押出成形、射出成形等の方法が挙げられる。
なお、この成形体の形状寸法は、以後の成形体を加熱した際の収縮分を見込んで決定される。
このときの加熱温度は、バインダーの組成等に応じて若干異なるものの、300〜900℃程度であるのが好ましく、400〜700℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、特に限定されず、例えば0.5〜10時間程度とされる。
また、複合粒子1の各粒子同士の間にバインダーを介していないので、圧粉磁心11の内部に隙間が生じ難くなる。このため、圧粉磁心11の機械的特性が向上するとともに、圧粉磁心11内の隙間に大気中の水分等を取り込むおそれがなくなるので、圧粉磁心11の耐久性がより向上する。
このときの加熱温度は、被覆層3を構成する絶縁物の焼結温度以上であればよく、例えば、800〜1200℃程度であるのが好ましく、900〜1100℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、特に限定されず、例えば0.5〜10時間程度とされる。
このようにして得られた圧粉磁心(本発明の圧粉磁心)11は、低損失で、耐久性の高いものとなる。このため、かかる圧粉磁心11の外周面に沿って導線12を巻き回してなるチョークコイル(本発明の磁性素子)10は、優れた高周波数特性を長期にわたって維持することができる。また、チョークコイル10の小型化や定格電流の増大を図ることができ、発熱量の低減を容易に実現することができる。
まず、本発明の磁性素子の第2実施形態を適用したチョークコイルについて説明する。
図4は、チョークコイルの構成を示す模式図(透過斜視図)である。
以下、第2実施形態にかかるチョークコイルについて説明するが、それぞれ、前記第1実施形態にかかるチョークコイルとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
このような形態のチョークコイル20は、比較的小型かつ薄型のものが容易に得られる。そして、このような小型のチョークコイル20を製造する場合、透磁率および磁束密度が高く、かつ、損失の小さい圧粉磁心21が、その作用・効果をより有効に発揮する。すなわち、より小型であるにもかかわらず、大電流に対応可能な低損失・低発熱のチョークコイル20が得られる。
また、導線22が圧粉磁心21の内部に埋設されているため、導線22と圧粉磁心21との間に隙間が生じ難い。このため、圧粉磁心21の磁歪による振動を抑制し、この振動に伴う騒音の発生を抑制することもできる。
次に、導線22とともに、複合粒子1およびバインダーを加圧して成形体を得る。
次いで、前記第1実施形態と同様に、この成形体に熱処理を施す。これにより、チョークコイル20が得られる。
例えば、前記実施形態では、本発明の磁性素子としてチョークコイルを例に説明したが、圧粉磁心を備える他の磁性素子においても、上記と同様の作用・効果が得られる。
1.圧粉磁心および磁性素子の製造
(実施例1)
[1]まず、水アトマイズ法により製造されたFe−Cr−Si系合金の軟磁性粉末(コア部)を用意した。この軟磁性粉末は、Crを4.5質量%、Siを3.5質量%の割合でそれぞれ含むFe基合金粉末である。なお、この軟磁性粉末の粉末特性は以下のとおりである。
・平均粒径 :12μm
・投影像の円形度 :0.94
・タップ密度 :4.3g/cm3
・真密度 :7.6g/cm3
・真密度に対するタップ密度の割合:57%
・保磁力 :14.2Oe(1130A/m)
・質量磁化率 :190emu/g(3×10−6Hm2/kg)
また、酸化スズを含むリン酸塩系ガラスの粉末(絶縁粒子)を用意した。この粉末は、SnO−P2O5−MgO系ガラス(SnO:62モル%、P2O5:33モル%、MgO:5モル%)の粉末である。
<ガラス粉末の粉末特性>
・平均粒径 :3μm
・ガラス材料の軟化点 :404℃
また、リン酸塩系ガラス粉末の平均粒径は、軟磁性粉末の平均粒径の25%であった。
なお、得られた複合粒子の被覆層の平均厚さは2μmであり、絶縁層の平均厚さの軟磁性粉末の平均粒径に対する割合は17%であった。なお、この絶縁層の平均厚さは、他の実施例および各比較例においてもほぼ同様であった。
[4]次に、得られた混合物を撹拌したのち、温度60℃で1時間加熱して乾燥させ、塊状の乾燥体を得た。次いで、この乾燥体を目開き500μmのふるいにかけ、乾燥体を粉砕して造粒粉末を得た。
<成形条件>
・成形方法 :プレス成形
・成形体の形状:リング状
・成形体の寸法:外径28mm、内径14mm、厚さ5mm
・成形圧力 :6t/cm2(588MPa)
[6]次に、成形体を大気雰囲気中において、温度150℃で1時間加熱して、エポキシ樹脂を硬化させた。これにより、圧粉磁心を得た。
<コイル作製条件>
・導線の構成材料 :Cu
・導線の線径 :0.5mm
・巻き数(透磁率測定時):7ターン
・巻き数(鉄損測定時) :1次側30ターン、2次側30ターン
以下に示す粉末特性のガラス粉末を用いるようにした以外は、前記実施例1と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。なお、以下に示す粉末特性は、実施例1との相違点である。
<ガラス粉末の粉末特性>
・平均粒径 :5μm
・軟磁性粉末の平均粒径に対するガラス粉末の平均粒径の割合:42%
以下に示す粉末特性のガラス粉末を用いるようにした以外は、前記実施例1と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。なお、以下に示す粉末特性は、実施例1との相違点である。
<ガラス粉末の粉末特性>
・平均粒径 :7μm
・軟磁性粉末の平均粒径に対するガラス粉末の平均粒径の割合:58%
水アトマイズ法における条件を変更することにより得られた、以下の粉末特性の軟磁性粉末を用いるようにした以外は、前記実施例2と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。なお、以下に示す粉末特性は、実施例2との相違点である。
<軟磁性粉末の粉末特性>
・投影像の円形度 :0.92
水アトマイズ法における条件を変更することにより得られた、以下の粉末特性の軟磁性粉末を用いるようにした以外は、前記実施例4と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。なお、以下に示す粉末特性は、実施例4との相違点である。
<軟磁性粉末の粉末特性>
・投影像の円形度 :0.90
・タップ密度 :4.2g/cm3
・真密度に対するタップ密度の割合:55%
以下に示す粉末特性のガラス粉末を用いるようにした以外は、前記実施例5と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。なお、以下に示す粉末特性は、実施例5との相違点である。
<ガラス粉末の粉末特性>
・平均粒径 :7μm
以下に示す粉末特性のガラス粉末を用いるようにした以外は、前記実施例5と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。なお、以下に示す粉末特性は、実施例5との相違点である。
<ガラス粉末の粉末特性>
・組成 :ホウ酸塩系ガラス
・ガラス材料の軟化点 :600℃
水アトマイズ法における条件を変更することにより得られた、以下の粉末特性の軟磁性粉末を用いるようにした以外は、前記実施例2と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。なお、以下に示す粉末特性は、実施例2との相違点である。
<軟磁性粉末の粉末特性>
・投影像の円形度 :0.86
・タップ密度 :4.0g/cm3
・真密度に対するタップ密度の割合:52%
水アトマイズ法における条件を変更することにより得られた、以下の粉末特性の軟磁性粉末を用いるようにした以外は、前記実施例2と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。なお、以下に示す粉末特性は、実施例2との相違点である。
<軟磁性粉末の粉末特性>
・投影像の円形度 :0.78
・タップ密度 :3.7g/cm3
・真密度に対するタップ密度の割合:49%
カルボニル反応法により製造された、以下の粉末特性の軟磁性粉末を用いるようにした以外は、前記実施例2と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。なお、以下に示す粉末特性は、実施例2との相違点である。
<軟磁性粉末の粉末特性>
・投影像の円形度 :0.67
・タップ密度 :3.0g/cm3
・真密度に対するタップ密度の割合:39%
まず、水中に軟磁性粉末を分散させ、懸濁液を得た。次いで、この懸濁液に水ガラス(ケイ酸ソーダ)を添加し、撹拌した。なお、水ガラスの添加量は、軟磁性粉末に対して1質量%とした。
その後、得られた懸濁液を濾過・水洗・乾燥することにより、軟磁性粉末が水ガラスの被膜で被覆されてなる複合粒子が得られた(塗布法)。得られた複合粒子における水ガラスの被膜の平均厚さは、約2μmであった。
次いで、この複合粒子を用い、前記実施例1と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。
(比較例4)
複合粒子の被覆層の成膜を省略した以外は、前記実施例1と同様にして圧粉磁心およびチョークコイルを作製した。
2.1 絶縁抵抗値の測定・評価
各実施例および各比較例で得られた圧粉磁心について、それぞれの直流電圧100V〜800V印加時の絶縁抵抗値を、絶縁耐圧測定機(KIKUSUI ELECTRONICS製、TOS9000)を使用して測定した。そして、測定した絶縁抵抗値を、以下の評価基準にしたがって相対的に評価した。なお、測定機の端子間距離は5mmとした。
◎:絶縁抵抗値が特に高い(1GΩ以上)
○:絶縁抵抗値がやや高い(500MΩ以上1GΩ未満)
△:絶縁抵抗値がやや低い(100MΩ以上500MΩ未満)
×:絶縁抵抗値が特に低い(100MΩ未満)
各実施例および各比較例で得られたチョークコイルについて、それぞれの損失(コアロス)および透磁率を以下の測定条件に基づいて測定した。
<測定条件>
・測定周波数 :10〜200kHz
・最大磁束密度:50mT
・測定装置 :交流磁気特性測定装置(岩通計株式会社製、B−HアナライザSY8258)
そして、得られた損失および透磁率を、それぞれ、以下の評価基準にしたがって相対的に評価した。
×:透磁率が低く、かつ、損失が大きいもの
△:透磁率が高いが損失が大きいもの、または、透磁率が低いが損失が小さいもの
○:透磁率が高く、かつ、損失が小さいもの
◎:上記○のうち、透磁率が特に高いか、または、損失が特に小さいもの
各実施例および各比較例で得られたチョークコイルについて、それぞれの高温高湿環境下での絶縁抵抗値の変化を測定(加速試験)することにより、チョークコイルの耐食性・安定性を評価した。
なお、加速試験は恒温恒湿機(大研理化学器械株式会社製)で行い、試験環境は、以下の駆動環境に示すように、温度85℃、湿度90%とした。絶縁抵抗値の測定は、絶縁耐圧測定機(KIKUSUI ELECTRONICS製、TOS9000)を使用し、100V印加時の絶縁抵抗値を測定した。そして、加速試験前(駆動開始直後)の初期の絶縁抵抗値R0と、100日(2400時間)経過後の絶縁抵抗値R100とをそれぞれ測定した。
<チョークコイルの駆動環境>
・温度 :80℃
・湿度 :90%R.H.
・圧力 :2気圧(203kPa)
<絶縁抵抗値の評価基準>
◎:R100が90以上100以下である
○:R100が70以上90未満である
△:R100が50以上70未満である
×:R100が50未満である
また、100日経過後の圧粉磁心の外観を目視にて観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
◎:錆が全く認められない
○:1〜10個の点状の錆が認められる
△:11〜50個の点状の錆が認められる
×:50個以上の点状の錆、または、1個以上の面状の錆が認められる
次いで、絶縁抵抗値と外観とを以下の評価基準にしたがって評価することにより、耐食性を総合的に評価した。
◎:絶縁抵抗値と外観の両方が◎
○:絶縁抵抗値と外観の両方が○、または、一方が○で他方が◎
△:絶縁抵抗値と外観の両方が△、または、一方が△で他方が◎か○
×:絶縁抵抗値と外観の少なくとも一方が×
以上、2.1〜2.3の測定結果を表1に示す。
これに対し、各比較例で得られたチョークコイルは、それぞれ、磁気特性または耐食性のいずれか一方または双方が劣っていた。
Claims (6)
- 軟磁性材料で構成された粒子状のコア部と、該コア部を覆うように設けられ、ガラス材料を主材料とする絶縁性材料で構成された被覆部とを有し、
前記被覆部は、前記コア部に対して、前記コア部の平均粒径より小径の前記絶縁性材料の粒子を押圧して形成されたものであり、
前記コア部は、(投影像の面積と同じ面積の真円の周長)/(投影像の周長)で定義される投影像の円形度の平均値が、0.8〜1であり、
前記軟磁性材料は、純鉄、Fe−Si系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Si−Al系合金、およびFe−Cr−Si系合金のうちのいずれかであり、
前記絶縁性材料の粒子の平均粒径は、前記コア部の平均粒径の25〜58%であり、
前記コア部である粒子のタップ密度は、前記コア部の真密度に対して52%以上であり、
前記被覆部の平均膜厚は、前記コア部の平均粒径の0.1〜20%であることを特徴とする絶縁物被覆軟磁性粉末。 - 前記絶縁性材料の粒子の平均粒径は、3〜7μmである請求項1に記載の絶縁物被覆軟磁性粉末。
- 前記ガラス材料は、ホウ酸塩系ガラス材料またはリン酸塩系ガラス材料である請求項1または2に記載の絶縁物被覆軟磁性粉末。
- 前記コア部は、水アトマイズ法により製造された粒子であり、
前記絶縁性材料は、100〜500℃の軟化点を有するガラス材料であり、
前記押圧は、前記コア部である粒子と前記絶縁性材料の粒子との混合物を、同一の容器内で、加圧しつつ撹拌することにより行われたものであり、
前記被覆部は、前記絶縁性材料の粒子の表面が、前記コア部の表面に融合してなるものである請求項1ないし3のいずれかに記載の絶縁物被覆軟磁性粉末。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載の絶縁物被覆軟磁性粉末とバインダーとの混合物を、加圧・成形して成形体を得た後、該成形体中の前記バインダーを硬化させてなることを特徴とする圧粉磁心。
- 請求項5に記載の圧粉磁心を備えたことを特徴とする磁性素子。
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