JP2012049203A - 圧粉磁心、磁心用粉末およびそれらの製造方法 - Google Patents

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大祐 岡本
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Abstract

【課題】比抵抗および強度に優れる圧粉磁心を提供する。
【解決手段】本発明の圧粉磁心は、軟磁性粒子と、加熱硬化型のシリコーン樹脂からなり軟磁性粒子の表面を被覆する第1被覆層と、軟磁性粒子の焼鈍温度よりも低い軟化点を有する低軟化点ガラスからなり第1被覆層の表面を被覆する第2被覆層と、からなる比抵抗および強度に優れることを特徴とする。第1被覆層と第2被覆層との2層構造の被膜が、圧粉磁心を構成する軟磁性粒子の表面に形成される。それら被覆層が相乗効果を発揮することにより、従来になく高比抵抗と高強度が両立した圧粉磁心が得られたと考えられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、体積比抵抗値(以下単に「比抵抗」という。)および強度に優れる圧粉磁心、その圧粉磁心が得られる磁心用粉末およびそれらの製造方法に関するものである。
変圧器(トランス)、電動機(モータ)、発電機、スピーカ、誘導加熱器、各種アクチュエータ等、我々の周囲には電磁気を利用した製品が多々ある。これらの製品は交番磁界を利用したものが多く、局所的に大きな交番磁界を効率的に得るために、通常、磁心(軟磁石)をその交番磁界中に設けている。
この磁心には、交番磁界中における高磁気特性のみならず、交番磁界中で使用したときの高周波損失(以下、磁心の材質に拘らず単に「鉄損」という。)が少ないことが求められる。この鉄損には、渦電流損失、ヒステリシス損失および残留損失があるが、中でも交番磁界の周波数が高くなる程に高くなる渦電流損失の低減が重要である。
このような磁心として、絶縁被膜で被覆された軟磁性粒子(磁心用粉末の各粒子)を加圧成形した圧粉磁心の開発、研究が盛んに行われている。圧粉磁心は、絶縁被膜の存在により高比抵抗で低鉄損であり、また形状自由度も高いので種々の電磁機器に対応できる。もっとも最近では、圧粉磁心の用途を拡大する上で、その比抵抗と共に強度の向上も重視されつつある。このため種々の圧粉磁心が提案されており、例えば下記のような特許文献に関連する記載がある。
特開2006−278833号公報 特開2006−332524号公報 特開2006−332525号公報 特開2008−91413号公報 特開2008−91414号公報 特開2008−88459号公報 特開2008−91413号公報 特開2009−130286号公報 特開2003−303711号公報 特開2004−143554号公報 特開2009−212385号公報
特許文献1〜8は、Mg−Fe−O系被膜、リン酸塩被膜または酸化被膜からなる絶縁被膜を形成した後、さらにその上に低融点ガラス層を形成した軟磁性粒子からなる圧粉磁心を提案している。
特許文献9〜11は、シリコーン樹脂と低融点ガラスと軟磁性粒子とを混合してなる被膜層を表面に有する軟磁性粒子からなる圧粉磁心を提案している。
本発明は、このような従来の圧粉磁心とは異なる表面被膜または被覆層を有する軟磁性粒子からなり、従来の圧粉磁心と同等以上の比抵抗および強度を発揮し得る圧粉磁心を提供することを目的とする。またその圧粉磁心の製造に適した磁心用粉末およびそれらの製造方法を併せて提供する。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、シリコーン樹脂からなる第1被覆層と低軟化点ガラスからなる第2被覆層を有する軟磁性粒子からなる圧粉磁心が、非常に優れる比抵抗および圧環強度を発現することを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《圧粉磁心および磁心用粉末》
(1)本発明の圧粉磁心は、軟磁性粒子と、加熱硬化型のシリコーン樹脂からなり該軟磁性粒子の表面を被覆する第1被覆層と、該軟磁性粒子の焼鈍温度よりも低い軟化点を有する低軟化点ガラスからなり該第1被覆層の表面を被覆する第2被覆層とからなることを特徴とする。
(2)本発明の磁心用粉末は、軟磁性粒子と、加熱硬化型のシリコーン樹脂からなり該軟磁性粒子の表面を被覆する樹脂層と、該樹脂層上に付着していると共に該軟磁性粒子の焼鈍温度よりも低い軟化点を有する低軟化点ガラスからなり該軟磁性粒子よりも粒径の小さいガラス微粒子とからなり、上記の圧粉磁心に適した粉末である。
なお本明細書では、樹脂層とその表面に付着したガラス微粒子を有する軟磁性粒子(つまり本発明の磁心用粉末の構成粒子)を適宜「磁心用粒子」という。
(3)この磁心用粉末を用いることで上述した圧粉磁心を容易に得ることができる。こうして得られた圧粉磁心は、従来の圧粉磁心と同等以上の優れた比抵抗および強度を発現する。もっとも、そのような優れた特性を発現する詳細なメカニズムは必ずしも定かではない。現状では次のように考えられる。
先ず、圧粉磁心は、磁心用粉末を所望形状に加圧成形して得られるが、その際に軟磁性粒子内に導入された残留歪み等を除去するために熱処理(焼鈍)が通常行われる。この焼鈍により残留歪み等が除去されると、圧粉磁心の保磁力が低減してヒステリシス損失も低減する。
ここで磁心用粒子の表面にあるガラス微粒子は軟化点が低いので、その焼鈍によって軟化(さらには溶融)する。これにより、圧粉磁心を構成する軟磁性粒子は、高絶縁性のシリコーン樹脂からなる第1被覆層のみならず、高絶縁性の低軟化点ガラスからなる第2被覆層によっても粒子全体が被覆された状態となる。この第2被覆層により第1被覆層が保護された状態となり、さらには各軟磁性粒子が二重の高絶縁性層によって被覆された状態となるので、その軟磁性粒子からなる圧粉磁心は非常に高い比抵抗を安定的に示す。
しかもその焼鈍時に軟化さらには溶融したガラスは、隣接する軟磁性粒子間でバインダーの役割も果たし軟磁性粒子同士の結合を強固にする。しかも軟化等したガラスは、各軟磁性粒子間の隙間(例えば三重点)へも流入して、その隙間を埋め、各軟磁性粒子を安定的に保持にし得る。このような作用が相乗して、各軟磁性粒子が強固に結合、保持された高強度の圧粉磁心が得られる。
(4)磁心用粒子の樹脂層中にあるシリコーン樹脂は、加圧成形前(焼鈍前)に完全にゲル化または硬化していてもよいし、焼鈍後に完全にゲル化または硬化していてもよい。いずれの場合でも、硬質なシリコーン樹脂からなる第1被覆層が軟磁性粒子の表面に強固に形成される。なお、圧粉磁心の比抵抗や強度を大きく低下させない限り、第1被覆層の一部は二酸化ケイ素(SiO)などでもよい。
本発明でいう「軟化点」は、加熱された低軟化点ガラスの粘度が、温度上昇の過程で1.0x107.5dPa・sとなる温度である。従って本発明でいう軟化点は、一般的にいわれるガラス転移点(Tg)とは必ずしも一致しない。ちなみにガラスの軟化点はJIS R3103−1 ガラスの粘性および粘性定点−第1部:軟化点の測定方法− により特定される。
(5)低軟化点ガラスは硼珪酸塩系ガラスを含むと好適である。焼鈍によって軟化した低軟化点ガラス中に硼珪酸塩系ガラスがあると、その低軟化点ガラスとシリコーン樹脂被膜との濡れ性や密着性が向上すると考えられる。
また軟磁性粒子は、Siを有する鉄合金(Fe−Si合金)からなると好適である。少なくとも軟磁性粒子の表層部にSiが存在すると好ましい。シリコーン樹脂からなる第1被覆層が軟磁性粒子表層のSiと反応して、軟磁性粒子表面に強固なシリコーン樹脂被膜が形成されると考えられる。
低軟化点ガラスが硼珪酸塩系ガラスからなり、軟磁性粒子がFe−Si合金であると、より一層高い比抵抗および強度の圧粉磁心がえられ得る。
《圧粉磁心の製造方法》
本発明は、上述した圧粉磁心としてのみならず、その製造方法としても把握し得る。つまり本発明は、上述した磁心用粉末を金型に充填する充填工程と、該金型内の磁心用粉末を加圧成形する成形工程と、該成形工程後に得られた成形体を焼鈍する焼鈍工程と備え、比抵抗および強度に優れた圧粉磁心が得られることを特徴とする圧粉磁心の製造方法であってもよい。
《磁心用粉末の製造方法》
本発明は、さらに磁心用粉末の製造方法としても把握し得る。つまり本発明は、軟磁性粒子の表面に加熱硬化型のシリコーン樹脂からなる樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、該樹脂層の表面に該軟磁性粒子の焼鈍温度よりも低い軟化点を有する低軟化点ガラスからなり該軟磁性粒子よりも粒径の小さいガラス微粒子を付着させるガラス付着工程と、を備えることを特徴とする磁心用粉末の製造方法であってもよい。
《その他》
(1)本発明でいう「軟磁性粒子の焼鈍温度」とは、磁心用粉末を加圧成形してなり圧粉磁心となる成形体を構成する軟磁性粒子の焼鈍温度という意味である。要するに、加圧成形後の残留歪みや残留応力の除去等を目的として、成形体に対してなされる焼鈍工程における加熱温度を意味する。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の下限値または上限値は、任意に組合わされて「a〜b」のような範囲を構成し得る。さらに本明細書に記載した範囲内に含まれる任意の数値を、数値範囲を設定するための上限値または下限値とすることができる。
各圧粉磁心の比抵抗と圧環強度との関係を示す分散図である。 一実施例である圧粉磁心を構成する軟磁性粒子の表面近傍の電子顕微鏡写真である。 一比較例である圧粉磁心を構成する軟磁性粒子の表面近傍の電子顕微鏡写真である。
発明の実施形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含めて本明細書で説明する内容は、本発明に係る圧粉磁心のみならず、それに用いられる磁心用粉末やそれらの製造方法等にも適宜適用され得る。従って、上述した本発明の構成に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成を付加し得る。この際、製造方法に関する構成は、プロダクトバイプロセスとして理解すれば物に関する構成ともなり得る。なお、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《軟磁性粒子(軟磁性粉末)》
軟磁性粉末を構成する軟磁性粒子は、8属遷移元素(Fe、Co、Ni等)などの強磁性元素を主成分とすれば足るが、取扱性、入手性、コスト等から純鉄または鉄合金からなると好ましい。鉄合金は、Si含有鉄合金(Fe−Si合金)が好ましい。Siは軟磁性粉末の電気抵抗率を高め、圧粉磁心の比抵抗を向上させ、渦電流損失を低減させるからである。
軟磁性粒子(粉末)は、全体を100質量%としたときにSiを0.2〜4質量%さらには0.8〜3.5質量%含むと好ましい。Siが過少では効果がなく、Siが過多になると、圧粉磁心の磁気的特性や成形性を低下させ得る。鉄合金は、その他にCoやAlを含んでもよい。
さらに軟磁性粉末は、複数の粉末を混合した混合粉末でもよい。例えば、純鉄粉とFe−49Co−2V(パーメンジュール)粉、純鉄粉とFe−3Si粉、センダスト(Fe−9Si−6Al)粉と純鉄粉等の混合粉末であってもよい。
軟磁性粒子の最適な粒径は、対象とされる圧粉磁心の種類により異なる。通常、軟磁性粒子の粒径は20〜300μmさらには40〜200μmであると好ましい。粒径が過大では高密度化や渦電流損失の低減化が図り難く、粒径が過小ではヒステリシス損失の低減が図り難い。なお、軟磁性粉末の分級は、篩い分法等により容易に行える。本明細書でいう粒径は、所定のメッシュサイズの篩いによって分級したときに定まる粒径である。
軟磁性粉末の製造方法は問わず、軟磁性粉末は粉砕粉でもアトマイズ粉でもよい。アトマイズ粉は、水アトマイズ粉、ガスアトマイズ粉、ガス水アトマイズ粉のいずれでもよい。ガス(水)アトマイズ粉を用いると、絶縁被膜の破壊等が抑制されて比抵抗の高い圧粉磁心が安定して得られ易い。ガス(水)アトマイズ粉の各構成粒子は擬球状をしており、相互間の攻撃性が低くいからである。
《シリコーン樹脂》
シリコーン樹脂により、磁心用粉末を構成する軟磁性粒子の表面に樹脂層が形成される。その樹脂層がさらには圧粉磁心の第1被覆層となる。この第1被覆層は、樹脂層と実質的に同一でもよいし、その樹脂層が後の焼鈍工程による加熱によって変化したもの(例えば、架橋による硬化が進行したもの)でもよい。
シリコーン樹脂には、熱によって縮合・硬化する加熱硬化型と、室温で硬化する室温硬化型に大別される。本発明では、加熱により官能基が反応してシロキサン結合(−Si−O−Si−結合)による架橋が進行し、縮合・硬化が生じる加熱硬化型のシリコーン樹脂が好適である。
シリコーン樹脂の変態温度は種類によって異なるが、ほぼ150〜300℃程度である。この温度までシリコーン樹脂の付着した軟磁性粒子を加熱すると、シロキサン結合が少なくとも部分的に進行して、その表面に硬質な樹脂層が形成される。なお、シリコーン樹脂の硬化が不十分であっても、その後に焼鈍工程を行うことにより、シロキサン結合による部分的な架橋が全体的な架橋となって、より強固な第1被覆層が形成される。
ちなみに、加熱硬化型のシリコーン樹脂は、温度上昇と共に粘度が低下するが、隣接するシリコーン樹脂のもつ官能基間で架橋し合い、次第にゾルの粘度が上昇する。そしてある程度反応が進むと、ゲル化が起こり、その粘度は急激に上昇する。このようにシリコーン樹脂の粘度が急上昇するときの温度が変態温度である。もっとも変態温度はシリコーン樹脂の加熱時間等にも影響を受ける。例えば、信越化学工業(株)社製のKR−242Aの場合なら、保持時間700秒のときの変態温度は150℃、また、保持時間120秒のときの変態温度は200℃となる。そこで本明細書では、シリコーン樹脂の粘度が一定時間で急上昇しゾルからゲルへ転移する加熱温度を「変態温度」とする。
シリコーン樹脂には、レジン系をはじめ、シラン化合物系、ゴム系シリコーン、シリコーンパウダー、有機変性シリコーンオイル、またはそれら複合物など、用途によって種々のものがある。本発明ではいずれのシリコーン樹脂を用いてもよい。もっとも、レジン系のコーティング用シリコーン樹脂、すなわち、シリコーンのみで構成されているストレートシリコーンレジンあるいはシリコーンと有機系ポリマー(アルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリルなど)とで構成されている変性用シリコーンレジンなどを用いると、電気絶縁性、コーティング(樹脂層形成工程)での簡便性などの点で好ましい。
このようなシリコーン樹脂の具体例として、例えば、東レダウコーニングシリコーン社製の、804RESIN、805RESIN、806ARESIN、840RESIN、SR2400、Z-6018、217FLAKE、220FLAKE、233FLAKE、249FLAKE、SR2402、QP8-5314、SR2306、SR2316、SR2310、SE5060、SE5070、SE5004、SR2404などが挙げられる。
また、信越化学工業(株)社製のKR251、KR500、KR400、KR255、KR271、KR282、KR311、KR213、KR9218、KR5230、KR5235、KR114A、KR169、KR2038、K5206、KR9706、ES1001N、ES1002T、ES1023、KP64、KP851などが挙げられる。勿論、これらの銘柄以外のシリコーン樹脂であってもよい。さらに本発明では、種類、分子量、官能基が異なる2種類以上のシリコーン樹脂を、適当な割合で混合したシリコーン樹脂を使用してもよい。
シリコーン樹脂は、磁心用粉末全体または圧粉磁心全体を100質量%としたときに、0.1〜1質量%さらには0.2〜0.8質量%であると好ましい。シリコーン樹脂が過少では十分な樹脂層ひいては第1被覆層が形成されず、それが過多では圧粉磁心の磁気特性が低下し得る。
なお、軟磁性粒子の表面に形成される樹脂層さらには第1被覆層は、その軟磁性粒子がSiを0.2質量%以上含有していると安定的に形成され易い。理由は定かではないが、軟磁性粉末の表面にあるSi原子にシリコーン樹脂が化学吸着し易いためと思われる。このような観点からも、軟磁性粉末は全体を100質量%としたときにSiを0.2〜4質量%さらには0.8〜3.5質量%含むと好ましい。
《低軟化点ガラス》
低軟化点ガラスは、磁心用粉末を加圧成形した成形体を焼鈍する際の温度(焼鈍温度)よりも低い軟化点を有するガラスである。本明細書でいう「軟化点」は、加熱したガラスの粘度が1.0x107.5dPa・sとなる温度である。この条件を満たすガラスである限り、本発明で用いる低軟化点ガラスの種類は問わない。焼鈍温度に適した軟化点の調整は、ガラス組成の調整により可能である。
低軟化点ガラスとして、例えば食器やタイルなどに使用される、いわれる低融点ガラスを用いることができる。具体的には、硼珪酸鉛系ガラスより環境負荷の小さい組成系の低軟化点ガラスの使用が望まれ、珪酸塩系ガラス、硼酸塩系ガラス、硼珪酸塩系ガラス、酸化バナジウム系ガラス、リン酸塩系ガラス等が挙げられる。珪酸塩系ガラスの場合は主成分として、例えば、SiO−LiO、SiO−NaO、SiO−CaO、SiO−MgO、SiO−Al などがあり、硼酸塩系ガラスの場合は主成分として、例えば、B−LiO、B−NaO、B−CaO、B−MgO、B−Alなどがあり、硼珪酸塩系ガラスの場合は主成分として、例えば、SiO−B−LiO、SiO−B−NaO、SiO−B−CaOなどがあり、酸化バナジウム系ガラスの場合は主成分として、例えば、V−B、V−B−SiO、V−P、V−B−Pなどがあり、リン酸塩系ガラスの場合は主成分として、例えば、P−LiO、P−NaO、P−CaO、P−MgO、P−Al などがある。これらガラスは、SiO、NaO、ZnO、B、LiO、SnO、BaO、CaO、Al等の1種以上を適宜含有し得る。
低融点ガラスは、磁心用粉末全体または圧粉磁心全体を100質量%としたときに、0.01〜2.0質量%、0.05〜2.0質量%さらには0.5〜1.5質量%であると好ましい。低融点ガラスが過少では十分な第2被覆層が形成されず高強度の圧粉磁心が得られないが、それが過多では圧粉磁心の磁気特性を低下させ得る。
ところで低融点ガラスは、圧粉磁心中では軟磁性粒子の第1被覆層を包囲する第2被覆層となるが、磁心用粉末の段階では軟磁性粒子の樹脂層を包囲している必要はない。つまり低融点ガラスは、軟磁性粒子よりも粒径の小さな微粒子となって軟磁性粒子の樹脂層の表面に点在していればよい。この低融点ガラスの微粒子(ガラス微粒子)の粒径は、軟磁性粒子の粒径にも依るが、0.2〜90μmさらには0.5〜80μmであると好ましい。ガラス微粒子の粒径が過小であるとその製造や取扱性が困難となり、粒径が過大であると均一な第2被覆層の形成が困難となる。ちなみにガラス微粒子の粒径の特定方法には、湿式法、乾式法、照射したレーザ光の散乱パターンから求める方法、沈降速度の相違から求める方法、画像解析により求める方法等がある。本発明では主に、走査型電子顕微鏡(SEM)による画像解析またはレーザ回折法によって、ガラス微粒子の粒径を特定した。
《磁心用粉末の製造》
(1)樹脂層形成工程
樹脂層形成工程は、軟磁性粒子の表面に加熱硬化型のシリコーン樹脂からなる樹脂層を形成する工程である。樹脂層形成工程は、例えば、接触工程と乾燥工程とを有すると好適である。
(i)接触工程
接触工程は、シリコーン樹脂を含む樹脂液に軟磁性粒子を接触させる工程である。シリコーン樹脂が液状またはゾル状であれば、それをそのまま樹脂液として用いてもよい。なお、使用するシリコーン樹脂が固形または粉末状等の場合、そのままで軟磁性粒子の表面へ均一に接触させ、付着させることは難しい。そこでシリコーン樹脂を溶媒に溶解させた樹脂液と軟磁性粉末とを接触させると効率的である。この接触工程の具体的な方法は問わず、樹脂液中に軟磁性粉末を入れて撹拌してもよいし、軟磁性粉末に樹脂液を噴霧等してもよい。
樹脂液の調製に用いる溶媒(分散媒)は、例えば、アセトンやメチルエチルケトンに代表されるケトン系溶剤、エタノールやメタノールに代表されるアルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、安息香酸などに代表される芳香族系溶剤、リグロイン、ケロシンなどの石油系溶剤等がある。特に、アセトンなどのケトン系溶剤が、生産性、被膜の物質性の点で好ましい。なお、シリコーン樹脂が水に可溶あるいは分散可能なら、溶媒に水を用いてもよい。樹脂液の濃度は施工のし易さや乾燥時間等を考慮して決定すればよい。
(ii)乾燥工程
乾燥工程は、接触工程後の軟磁性粉末を加熱乾燥させる工程である。この乾燥工程は、上述した変態温度以上の乾燥温度で乾燥させる工程であると好適である。もっともこの段階の乾燥工程では、ゲル化していないシリコーン樹脂が残存していてもよい。後の焼鈍工程でさらに加熱されてゲル化が進行するからである。乾燥工程後に得られた粉末が凝集または固化している場合は、適宜、解砕または粉砕を行う粉末化工程を加えるとよい。
(2)ガラス付着工程
ガラス付着工程は、軟磁性粒子の表面に形成された樹脂層上にガラス微粒子を付着させる工程である。この工程は湿式で行っても乾式で行ってもよい。例えば湿式の場合なら、ガラス付着工程は、樹脂層形成工程後の軟磁性粒子とガラス微粒子を分散媒に分散させた分散液(スラリー)とを混合した後に乾燥させる湿式付着工程であると好適である。また乾式の場合なら、ガラス付着工程は、樹脂層形成工程後の軟磁性粒子とガラス微粒子とを分散媒を介さずに混合する乾式付着工程であると好適である。湿式であればガラス微粒子を軟磁性粒子の樹脂層表面に均一に付着させ易い。乾式であっても、ガラス微粒子を軟磁性粒子の樹脂層表面に均一に付着させることが勿論でき、さらに乾燥工程を省略できるので効率的である。
《圧粉磁心の製造》
本発明の圧粉磁心は、所望形状のキャビティを有する金型へ磁心用粉末を充填する充填工程と、その磁心用粉末を加圧成形して成形体とする成形工程と、その成形体を焼鈍する焼鈍工程とを経て得られる。ここでは成形工程と焼鈍工程について説明する。
(1)成形工程
成形工程で軟磁性粉末に印加される成形圧力は問わないが、高圧成形するほど高密度で高磁束密度の圧粉磁心が得られる。このような高圧成形方法として、金型潤滑温間高圧成形法がある。金型潤滑温間高圧成形法は、高級脂肪酸系潤滑剤を内面に塗布した金型へ前記磁心用粉末を充填する充填工程と、磁心用粉末と金型の内面との間に高級脂肪酸系潤滑剤とは別の金属石鹸被膜が生成される成形温度と成形圧力で加圧成形する温間高圧成形工程とからなる。ここで「温間」とは、表面被膜(または絶縁被膜)への影響や高級脂肪酸系潤滑剤の変質などを考慮して、例えば、成形温度を70℃〜200℃さらには100〜180℃とすることをいう。この金型潤滑温間高圧成形法の詳細については、日本特許公報特許3309970号公報、日本特許4024705号公報など多の公報に詳細が記載されている。この金型潤滑温間高圧成形法によれば、金型寿命を延しつつも超高圧成形が可能となり、高密度な圧粉磁心を容易に得ることが可能となる。
(2)焼鈍工程
焼鈍工程は、成形体中の残留歪みや残留応力の除去を目的としてなされる。これにより、圧粉磁心の保磁力やヒステリシス損失の低減が図られる。この際、樹脂層中でゲル化していなかったシリコーン樹脂もゲル化し、樹脂層は硬質な第1被覆層となる。
焼鈍温度は、軟磁性粒子や低軟化点ガラスの種類に応じて適宜選択し得るが、通常、400〜900℃さらには500〜780℃程度である。加熱時間は0.1〜5時間さらには0.5〜2.0時間程度が好ましく、加熱雰囲気は不活性雰囲気が好ましい。
なお、焼鈍温度が高温になると、シリコーン樹脂からなる樹脂層は多少変質することも考えられる。しかし、その樹脂層はもともと耐熱性が高いため、圧粉磁心の比抵抗が大きく低下することはない。
《圧粉磁心》
(1)被覆層
第1被覆層および第2被覆層からなる被膜は、膜厚が0.3〜10μmさらには0.8〜5μmであると好ましい。膜厚が過小では圧粉磁心の比抵抗や強度の向上を十分に図れず、膜厚が過大であると圧粉磁心の磁気的特性の低下を招く。なお、その被膜は軟磁性粒子の一粒毎に形成されていることが理想的であるが、数個の粒子が固まった状態でその周りに絶縁被膜が形成されている部分が多少存在してもよい。
(2)特性
圧粉磁心の密度は、例えば、軟磁性粒子の真密度(ρ0)に対する、圧粉磁心の嵩密度(ρ)の比である密度比(ρ/ρ0)が96%以上、97%以上、98%以上さらに99%以上であると、高磁気特性が得られるので好ましい。
圧粉磁心の比抵抗は、形状に依存しない圧粉磁心ごとの固有値であり、比抵抗が大きいほど、渦電流損失の低減を図れる。この比抵抗は、例えば、200μΩm以上、1000μΩm以上、2000μΩm、3000μΩm以上、4000μΩm、5000μΩmさらには10000μΩm以上であると好ましい。
圧粉磁心の強度は、高いほどその用途が拡大して好ましい。例えば、強度の代表的な指標である圧環強度が、25MPa以上、30MPa以上、40MPa以上さらには50MPa以上であるとよい。本発明の圧粉磁心では、従来の圧粉磁心と異なり、軟磁性粒子同士が単に塑性変形によって機械的に結合しているのみならず、低軟化点ガラスによっても結合している。このため本発明の圧粉磁心は、従来以上に高い強度が得られる。
(3)用途
本発明の圧粉磁心は、その形態を問わず、各種の電磁機器、例えば、モータ、アクチュエータ、トランス、誘導加熱器(IH)、スピーカ、リアクトル等に利用され得る。具体的には、電動機または発電機の界磁または電機子を構成する鉄心に用いられると好ましい。中でも、低損失で高出力(高磁束密度)が要求される駆動用モータ用の鉄心として本発明の圧粉磁心は好適である。ちなみに駆動用モータは自動車等に用いられる。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
《試料の製造》
(磁心用粉末の製造)
(1)樹脂層形成工程(下地処理)
軟磁性粉末(原料粉末)として、Siを含有する鉄合金からなるガス水アトマイズ粉を用意した。用意した軟磁性粉末の組成、粒度は表1に示した。表1に記載の粒度は、電磁式ふるい振とう器(レッチェ製)を用いて、所定のメッシュサイズの篩いにより分級して求めたものである。なお、表1中の粒度欄に「〜以下」と記載した軟磁性粉末の場合でも、5μm未満の軟磁性粒子が含まれていなかったことはSEMにより確認している。
市販のシリコーン樹脂(MOMENTIVE社製、「YR3370」)を50倍の溶媒(エタノール)で溶解してシリコーン樹脂液(下地処理液)を調製した。このシリコーン樹脂の変態温度は30分保持の場合で150℃である。
シリコーン樹脂液中に、上述した各種の軟磁性粉末を別々に入れて、溶媒が揮発するまで超音波撹拌装置で攪拌した(接触工程)。この攪拌は65℃で行った。
この攪拌後の各粉末を恒温槽を用いて大気雰囲気中で乾燥させた(乾燥工程)。このときの恒温槽内の温度(乾燥温度)も表1に示した。乾燥後に固化していた粉末は乳鉢で解砕した。こうして軟磁性粉末の各粒子表面にシリコーン樹脂からなる樹脂層を形成した。
以降、この粉末を「樹脂被覆粉末」、その粒子を「樹脂被覆粒子」という。
(2)ガラス付着工程
(i)ガラス微粒子の調製
上記の樹脂層の表面に付着させるガラス微粒子を次の湿式粉砕により得た。原料として、表2に示す各種の低軟化点ガラスからなる市販のガラスフリット(日本琺瑯釉薬社製)を用意した。
各ガラスフリットを湿式粉砕機(ダイノーミル:シンマルエンタープライズ社製)のチャンバーへ投入し、攪拌用プロペラを作動させて、各ガラスフリットを微粉砕した。この微粉砕したものを回収して乾燥させた。こうして各種の低軟化点ガラスからなるガラス微粒子の粉末(ガラス微粒子粉)を得た。得られたガラス微粒子の粒径も表2に併せて示した。
なおこの粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による画像解析または湿式レーザ回折法によって特定した。
(ii)湿式コーティング(湿式付着工程)
上記のガラス微粒子粉を10〜30倍の分散媒(エタノール)へ分散させた各種のコーティング液を調製した。このときの攪拌には超音波撹拌装置を用いた。
各コーティング液中に、上述した各種の樹脂被覆粉末を別々に入れ、分散媒が揮発するまで超音波撹拌装置で攪拌した。この攪拌は65℃で行った。
この攪拌後の各粉末を恒温槽を用いて大気雰囲気中で乾燥させた(湿式付着工程)。このときの恒温槽内の温度(乾燥温度)は130℃とした。乾燥後に固化していた粉末は乳鉢で解砕した。こうして樹脂層上にガラス微粒子が付着した磁心用粒子からなる磁心用粉末を得た。
(iii)乾式コーティング(ガラス付着工程)
樹脂被覆粉末とガラス微粒子粉とを回転ボールミルで攪拌した。攪拌後に固化していた粉末は乳鉢で解砕した。こうして表面にガラス微粒子が付着した樹脂被覆粒子からなる磁心用粉末を得た。なお、シリコーン樹脂および低軟化点ガラス(ガラス微粒子)の添加量はそれぞれ、磁心用粉末全体を100質量%として表1に示した。
(圧粉磁心の製造)
(1)充填工程および成形工程
各試料(磁心用粉末)を用いて金型潤滑温間高圧成形法により、リング状(外径:φ39mm×内径φ30mm×厚さ5mm)の成形体を製作した。この成形に際して、内部潤滑剤や樹脂バインダー等は一切使用しなかった。金型潤滑温間高圧成形法は、具体的には次のようにしてを行った。
所望形状に応じたキャビティを有する超硬製の金型を用意した。この金型をバンドヒータで予め130℃に加熱しておいた。また、この金型の内周面には、予めTiNコート処理を施し、その表面粗さを0.4Zとした。
加熱した金型の内周面に、水溶液に分散させたステアリン酸リチウム(1%)をスプレーガンにて10cm/分程度の割合で均一に塗布した。ここで用いた水溶液は、水に界面活性剤と消泡剤とを添加したものである。界面活性剤には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、(EO)10及びホウ酸エステルエマルボンT−80を用い、それぞれを水溶液全体(100体積%)に対して1体積%ずつ添加した。また、消泡剤には、FSアンチフォーム80を用い、水溶液全体(100体積%)に対して0.2体積%添加した。また、ステアリン酸リチウムには、融点が約225℃で、粒径が20μmのものを用いた。その分散量は、上記水溶液100cmに対して25gとした。そして、これをさらにボールミル式粉砕装置で微細化処理(テフロンコート鋼球:100時間)し、得られた原液を20倍に希釈して最終濃度1%の水溶液として、上記塗布工程に供した。
ステアリン酸リチウムが内面に塗布された金型へ、各磁心用粉末を充填した(充填工程)。
金型を130℃に保持したまま、基本的に1568MPaの成形圧力で、その金型内に充填された磁心用粉末を温間加圧成形した(成形工程)。なお、この温間高圧成形に際して、いずれの磁心用粉末も金型とかじり等を生じることがなく低い抜圧で成形体をその金型から取出すことができた。
(2)焼鈍工程
得られた各成形体に、流量8リットル/分の窒素雰囲気中で750℃x1時間の焼鈍を施した。こうして表1に示す複数種の圧粉磁心を得た。
(比較試料の製造)
比較試料として、上述した樹脂層形成工程またはガラス付着工程の一方を施さずに得た磁心用粉末を用いた圧粉磁心も製造した。また、前述のシリコーン樹脂液とガラス微粒子粉とを混合したものを用いて、シリコーン樹脂とガラス微粒子との複合層で表面が被覆された軟磁性粒子からなる圧粉磁心も製造した。これらいずれの場合も、成形工程および焼鈍工程は上述した通りである。こうして得た圧粉磁心(試験片)についても、表1に併せて示した。
《測定》
(1)比抵抗と圧環強度
上記のリング状の圧粉磁心を用いて圧環強度および比抵抗を測定した。圧環強度は、JISZ 2507に準ずる方法により測定した。比抵抗は、デジタルマルチメータ(メーカ:(株)エーディーシー、型番:R6581)を用いて4端子法により測定した。各測定結果を表1に併せて示した。また各圧粉磁心の比抵抗と圧環強度との相関を図1にプロットした。
(2)密度
測定した質量と採寸により求まる体積とに基づいて、各圧粉磁心の密度を求めた。
《観察》
表1に示した試料No.3の圧粉磁心と試料No.C6の圧粉磁心との表層部を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した反射電子組織像を図2および図3にそれぞれ示した。
本発明に係る圧粉磁心では、図2に示すように、シリコーン樹脂からなる第1被覆層と、その表面を被覆する低軟化点ガラスからなる第2被覆層とからなる明確な2層構造が明確に観察された。
一方、シリコーン樹脂とガラス微粒子とを混在させて被覆処理をした圧粉磁心の場合、図3に示すように、軟磁性粒子の表面には一つの複合層が観察されただけであった。
《評価》
(1)表1および図1から、試料No.1〜8の圧粉磁心は、圧環強度と比抵抗のいずれにも優れることが分る。具体的には、それら圧粉磁心はいずれも比抵抗が200μΩ・m以上あり、比抵抗が1000μΩ・m以上さらには10000μΩ・m以上のものも多かった。しかも、それらの圧環強度はいずれも、圧環強度が29〜55MPaの高強度でもあった。そしていずれの圧粉磁心も、密度は7.09g/cm 以上で高密度であった。
従って本発明に係る圧粉磁心は、第1被覆層と第2被覆層とが相乗的に作用して高比抵抗および高強度であると共に、磁気特性にも優れることがわかった。
(2)試料No.C1に示すように、第1被覆層(樹脂層)を設けない圧粉磁心は、圧環強度は向上しても比抵抗が非常に低い。これは軟磁性粒子が直接的に接触する部分が生じたためと考えられる。
逆に試料No.C2〜C5に示すように、第1被覆層(樹脂層)のみの圧粉磁心では、比抵抗は高くなるものの、各軟磁性粒子間の結合が強化されず、十分な強度が得られなかった。試料No.C6に示すように、シリコーン樹脂とガラス微粒子とからなる複合層を表面に有する軟磁性粒子からなる圧粉磁心は、比抵抗および圧環強度のいずれも低く、特に比抵抗の低下が著しかった。これは、圧粉磁心の製造途中でシリコーン樹脂が変質して、軟磁性粒子の表面に適当な絶縁被膜が形成されなかったためと考えられる。また、軟磁性粒子の最表面に適当なガラス層も形成されず、結局、軟磁性粒子間の結合も強化されなかったためと考えられる。

Claims (10)

  1. 軟磁性粒子と、
    加熱硬化型のシリコーン樹脂からなり該軟磁性粒子の表面を被覆する第1被覆層と、
    該軟磁性粒子の焼鈍温度よりも低い軟化点を有する低軟化点ガラスからなり該第1被覆層の表面を被覆する第2被覆層と、
    からなる比抵抗および強度に優れることを特徴とする圧粉磁心。
  2. 前記低軟化点ガラスは、硼珪酸塩系ガラスを含む請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記軟磁性粒子は、Siを有する鉄合金からなる請求項1または2に記載の圧粉磁心。
  4. 全体を100質量%としたときに、
    前記シリコーン樹脂は0.1〜1質量%であり、
    前記低軟化点ガラスは0.05〜1.5質量%である請求項1または3に記載の圧粉磁心。
  5. 軟磁性粒子と、
    加熱硬化型のシリコーン樹脂からなり該軟磁性粒子の表面を被覆する樹脂層と、
    該樹脂層上に付着していると共に該軟磁性粒子の焼鈍温度よりも低い軟化点を有する低軟化点ガラスからなり該軟磁性粒子よりも粒径の小さいガラス微粒子と、
    からなり請求項1に記載の圧粉磁心に用いられる磁心用粉末。
  6. 請求項5に記載の磁心用粉末を金型に充填する充填工程と、
    該金型内の磁心用粉末を加圧成形する成形工程と、
    該成形工程後に得られた成形体を焼鈍する焼鈍工程と備え、
    比抵抗および強度に優れた圧粉磁心が得られることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  7. 軟磁性粒子の表面に加熱硬化型のシリコーン樹脂からなる樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
    該樹脂層の表面に該軟磁性粒子の焼鈍温度よりも低い軟化点を有する低軟化点ガラスからなり該軟磁性粒子よりも粒径の小さいガラス微粒子を付着させるガラス付着工程と、
    を備えることを特徴とする磁心用粉末の製造方法。
  8. 前記樹脂層形成工程は、前記シリコーン樹脂を含む樹脂液に前記軟磁性粒子を接触させる接触工程と、
    該接触工程後の軟磁性粒子を該樹脂液中のシリコーン樹脂がゲル化する変態温度以上の乾燥温度で乾燥させる乾燥工程とを有する請求項7に記載の磁心用粉末の製造方法。
  9. 前記ガラス付着工程は、前記樹脂層形成工程後の軟磁性粒子と前記ガラス微粒子を分散媒に分散させた分散液とを混合した後に乾燥させる湿式付着工程である請求項8に記載の磁心用粉末の製造方法。
  10. 前記ガラス付着工程は、前記樹脂層形成工程後の軟磁性粒子と前記ガラス微粒子とを分散媒を介さずに混合する乾式付着工程である請求項8に記載の磁心用粉末の製造方法。
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