しかしながら、特許文献1に記載の始動装置では、軸受及びワンウェイクラッチをエンジンオイルで潤滑するため、オイル漏れを防止するために、シール部材及び他のシール部材の摺動面、シール部材及び他のシール部材の合わせ面、ワンウェイクラッチのレース面、軸受の合わせ面等の箇所を高精度に仕上げる必要があり、コスト高になってしまう。特許文献1に記載の始動装置は、内燃機関がディーゼルエンジンの場合、エンジンオイルに含まれる微粒子(エンジン燃焼時に発生するスス)によって軸受及びワンウェイクラッチの寿命を著しく低下させてしまう。
特許文献2に記載の始動装置では、ベアリング及びワンウェイクラッチをグリスで潤滑しているが、グリス自体の劣化により、ベアリングやワンウェイクラッチの焼き付き等の不具合が発生し、軸受及びワンウェイクラッチの寿命を著しく低下させてしまう。
特許文献1、2のようにワンウェイクラッチを用いた常時噛合い機構を有する始動装置では、ワンウェイクラッチにおいて空転時に引き摺りトルクが発生しており、その引き摺りトルクによりピニオンギヤとリングギヤとの間に歯打ち音が発生するため、このような歯打ち音を減少させるためには、スタータモータにおいて衝撃吸収機構(特許文献3参照)を備えるものを用いる必要がある。また、特許文献1、2のようにワンウェイクラッチを用いた常時噛合い機構を有する始動装置では、内燃機関停止時の揺動等により内燃機関の出力軸(クランク軸)が逆回転すると、ワンウェイクラッチがロックし、スタータモータに逆回転が伝わってしまうため、スタータモータの逆回転を防止するために、スタータモータにおいて逆転防止用クラッチ(特許文献4参照)を備えるものを用いる必要がある。スタータモータにおいて衝撃吸収機構や逆転防止用クラッチを追加すると、コスト高となってしまう。
本発明の主な課題は、コストを低減しつつ耐久性を向上させることができる常時噛合式の内燃機関の始動装置を提供することである。
本発明の第1の視点においては、内燃機関の始動装置において、スタータモータの出力軸に取付けられたドライブギヤと、前記ドライブギヤと常時噛み合うドリブンギヤと、前記ドリブンギヤと一体に回転するドライブプレートと、前記ドライブプレートに揺動可能に取り付けられた爪部材と、内燃機関の本体と前記ドライブプレートとの相対回転差が発生したときに前記爪部材の先端部を外周側に跳ね上げる跳ね上げ機構と、前記内燃機関のクランクシャフトと一体に回転するドリブンプレートと、前記ドリブンプレートと一体に回転するとともに、前記ドライブプレートの回転速度が前記ドリブンプレートの回転速度よりも高いときに跳ね上がった前記爪部材の先端部と引っ掛かり、前記ドライブプレートの回転速度が前記ドリブンプレートの回転速度よりも低いときに前記爪部材の先端部を内周側に跳ね下げるラック部と、を備え、前記跳ね上げ機構は、前記爪部材の先端部と当たると前記爪部材の先端部を外周側に跳ね上げる突起部を有するヒステリシス部材と、前記内燃機関の本体と前記ドライブプレートとの相対回転差が発生したときに前記ヒステリシス部材を挟み込んで前記ヒステリシス部材の回転を規制する挟み込み機構と、を有することを特徴とする。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記爪部材の先端部を内周側に回転するように前記爪部材を付勢するバネを備えることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記爪部材の先端部は、内周向きに傾斜したテーパ面を有し、前記ヒステリシス部材の前記突起部は、前記テーパ面と対向する端面に外周向きに傾斜した他のテーパ面を有することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記挟み込み機構は、前記内燃機関の本体に相対回転不能かつ軸方向移動不能に支持されたカバープレートと、前記ドライブプレートに固定されたはす歯のサンギヤと、前記サンギヤと噛み合うはす歯のプラネタリギヤと、前記カバープレートに相対回転不能かつ軸方向移動可能に支持されるとともに前記プラネタリギヤを回転可能に支持するキャリアと、を有することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記内燃機関の本体は、外側の面における前記クランクシャフトよりも外周の部分にて軸方向に延在した円筒部を有し、前記ドライブプレートは、前記内燃機関の前記円筒部に回転可能に支持されていることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、一端が前記ドライブプレートに固定されるとともに、他端が前記爪部材を揺動可能に支持するピンを備えることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記爪部材を揺動可能に保持する保持部を有することが好ましい。
本発明の第2の視点においては、内燃機関の始動装置において、スタータの出力軸に取付けられたドライブギヤと、前記ドライブギヤと噛み合うドリブンギヤと、前記ドリブンギヤと一体に回転するドライブプレートと、内燃機関のクランクシャフトと一体に回転するドリブンプレートと、前記内燃機関の始動時に前記ドライブプレートが回転することで前記ドライブプレートが前記ドリブンプレートに係合することにより、前記ドライブプレートから前記ドリブンプレートに動力を伝達し、前記ドライブプレート及び前記ドリブンプレートのうちいずれか一方が他方に対し回転することにより前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートとの係合が解除されることによって、前記ドライブプレートから前記ドリブンプレートへの動力の伝達を禁止する動力伝達機構と、を備え、前記動力伝達機構は、前記ドライブプレートに回動可能に取り付けられた係合部材と、前記ドライブプレートが回転することで前記係合部材を第1の方向に回動させる回動機構と、前記ドリブンプレートと一体に回転するとともに、前記ドライブプレートの回転速度が前記ドリブンプレートの回転速度よりも速いときに前記係合部材が係合する凹部、及び、前記ドライブプレートの回転速度が前記ドリブンプレートの回転速度よりも遅いときに前記係合部材を前記第1の方向とは異なる第2の方向に回動させるガイド部を有するラック部と、を備え、前記回動機構は、前記係合部材に当接すると前記係合部材を前記第1の方向に回動させ、前記ドリブンプレートに対して回転可能な当接部材と、前記ドライブプレートが回転することで前記当接部材の回転を規制する回転規制機構と、を有することを特徴とする。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記ドライブプレートは、略環状をなし、前記回動機構は、前記係合部材を前記ドライブプレートの径方向外側に回動させることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記ドライブプレートは、略環状をなし、前記回動機構は、前記係合部材を前記ドライブプレートの径方向内側に回動させることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記回動機構は、前記係合部材を前記ドライブプレートの回転軸方向に回動させることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記係合部材が前記第2の方向に回転するように前記係合部材を付勢する第1の付勢部材を備えることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記係合部材は、前記係合部材は、傾斜したテーパ面を有し、前記当接部材は、前記テーパ面と対向する端面に傾斜した他のテーパ面を有し、前記テーパ面が前記他のテーパ面に当接すると前記係合部材が前記第1の方向に回動することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記回転規制機構は、前記内燃機関の本体に相対回転不能かつ前記ドライブプレートの回転軸方向移動不能に支持されたカバープレートと、前記ドライブプレートに固定されたはす歯のサンギヤと、前記サンギヤと噛み合うはす歯のプラネタリギヤと、前記カバープレートに相対回転不能かつ前記ドライブプレートの回転軸方向移動可能に支持されるとともに前記プラネタリギヤを回転可能に支持するキャリアと、を有し、前記当接部材は、前記カバープレートと前記キャリアとの間に設けられることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記回転規制機構は、前記内燃機関の本体に相対回転不能かつ前記ドライブプレートの回転軸方向移動不能に支持されたカバープレートと、前記ドライブプレートに固定されたはす歯のリングギヤと、前記リングギヤと噛み合うはす歯のプラネタリギヤと、前記カバープレートに相対回転不能かつ前記ドライブプレートの回転軸方向移動可能に支持されるとともに前記プラネタリギヤを回転可能に支持するキャリアと、を有し、前記当接部材は、前記カバープレートと前記キャリアとの間に設けられることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記カバープレートを前記内燃機関の本体に固定する複数のボルトを備え、各ボルトは、前記ドライブプレートの回転軸を中心に前記ドライブプレートの回転方向に前記所定間隔おきに配置され、前記プラネタリギヤは隣接する前記ボルト間に配置されていることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記内燃機関の本体は、前記クランクシャフトの径方向外側の部分にて前記ドライブプレートの回転軸方向に延在した円筒部を有し、前記ドライブプレートは、前記円筒部に回転可能に支持されていることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記ドライブプレートに固定されるとともに、前記係合部材を回動可能に支持する支持部材を備えることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記ドライブプレートは、前記係合部材を回動可能に保持する保持部を有することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記ドライブプレートに固定されたサポートプレートと、一端が前記ドライブプレートに固定されるとともに、他端が前記サポートプレートに固定され、かつ、中間部分で前記係合部材を回動可能に支持する支持部材と、を備えることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、両端が前記ドライブプレートに形成された支持部に固定されるとともに、中間部分で前記係合部材を回動可能に支持する支持部材を備えることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記プラネタリギヤを前記キャリアに押付ける第2の付勢部材を備えることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記係合部材に係る前記第1の付勢部材が前記当接部材を回そうとする力が前記当接部材の回転を停止する力よりも小さくなるように、前記第1の付勢部材の荷重と前記第2の付勢部材の荷重とが設定されていることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記ドライブプレートは、略環状をなし、前記当接部材の一部、前記回転規制機構、前記係合部材、及び、前記ラック部は、前記ドライブプレートの径方向にラップして配置されることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記係合部材は、複数の係合部材のうちの1つであり、前記ラック部は、複数のラック部のうちの1つであり、前記複数の係合部材のうち1つが前記複数のラック部のうちの1つに係合するとき、その他の前記複数の係合部材のうちの少なくとも1つは前記ラック部に非係合であることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記係合部材が前記ラック部に係合したときの前記係合部材と前記ラック部との接触点は、前記係合部材の回転軸に発生する荷重方向と同一線上に配されることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記カバープレートは、前記係合部材の回転軸方向への移動を規制することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記当接部材は、ヒステリシス機能を有し、かつ、前記カバープレート及び前記キャリアと摺動可能な摺動面を少なくとも2面有することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記2つの摺動面のうち一方の摺動面の面積は、他方の摺動面の面積よりも小さいことが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記当接部材は、前記キャリアと摺動することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記当接部材は、前記カバープレートと摺動することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記係合部材は、ストッパ部を有し、前記ドライブプレートは、前記係合部材が前記第1の方向に回動させられたときに前記係合部材の前記ストッパ部に当接する他のストッパ部を有することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記係合部材は、ストッパ部を有し、前記当接部材は、前記係合部材が前記第1の方向に回動させられたときに前記係合部材の前記ストッパ部に当接することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記係合部材は、前記係合部材が前記第1の方向において前記ラック部及び前記ドライブプレートとラップするように配置されており、前記ドライブプレートは、前記係合部材が前記第1の方向に回動させられたときに前記係合部材に当接することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記係合部材は、前記ラック部及び前記当接部材と当接しうる面に緩衝材を有することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記ラック部及び前記当接部材は、前記係合部材と当接しうる面に緩衝材を有することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記ラック部は、前記係合部材と対向する面の反対側の面に慣性材を有することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記カバープレートと前記円筒部とは、2面幅又はスプラインにより相対回転不能に係合することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記カバープレートと前記キャリアとは、2面幅又はスプラインにより相対回転不能かつ前記ドライブプレートの回転軸方向移動可能に係合することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記当接部材は、前記キャリアに向かって突出した第1凸部、及び前記カバープレートに向かって突出した第2凸部を有し、前記第1凸部は、前記キャリアの外周端部をカバーし、前記第2凸部は、前記カバープレートの外周端部をカバーすることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記ドライブプレートを前記ドリブンプレートから離れる方向に付勢する第3の付勢部材を備え、前記ドライブギヤは、はす歯のギヤであり、前記ドリブンギヤは、前記ドライブギヤと噛み合うはす歯のギヤであり、前記動力伝達機構は、前記内燃機関の始動時に前記ドライブプレートが回転することで前記ドライブプレートが前記ドリブンプレートに向かって移動して前記ドライブプレートが前記ドリブンプレートに係合し、前記ドライブプレート及び前記ドリブンプレートのうちいずれか一方が他方に対し回転することにより前記ドライブプレートが前記ドリブンプレートから離れるように移動して前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートとの係合が解除されることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記ドライブプレートは、前記ドリブンプレートと対向する部分に被係合部を有し、前記ドリブンプレートは、前記ドライブプレートと対向する部分に前記被係合部に係合する係合部を有することが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記回動機構は、前記ドライブプレート、又は前記内燃機関の本体に回転可能に支持されるとともに、前記係合部材と当接すると前記係合部材を前記第1の方向に回動させるセンタプレートを備え、前記センタプレートは、回転する際に前記内燃機関の本体に引き摺られることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記センタプレートに固定されるとともに伸縮自在な第2の支持部材と、前記第2の支持部材に固定されるとともに前記内燃機関の本体と当接する摺動材と、前記第2の支持部材の外周に配置され、一端が前記センタプレートに支持され、他端が前記摺動材を前記内燃機関の本体に向かって付勢する第4の付勢部材と、を備えることが好ましい。
本発明の前記内燃機関の始動装置において、前記係合部材は、爪部材であることが好ましい。
本発明の第3の視点においては、内燃機関の始動装置において、スタータの出力軸に取付けられたドライブギヤと、前記ドライブギヤと噛み合うドリブンギヤと、前記ドリブンギヤと一体に回転するドライブプレートと、内燃機関のクランクシャフトと一体に回転するドリブンプレートと、前記内燃機関の始動時に前記ドライブプレートが前記ドリブンプレートに向かって移動し、前記ドリブンプレートに係合することにより、前記ドライブプレートから前記ドリブンプレートに動力を伝達し、前記ドライブプレート及び前記ドリブンプレートのうちいずれか一方が他方に対し回転することによって、前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートとの係合が解除されることにより、前記ドライブプレートから前記ドリブンプレートへの動力の伝達を禁止する動力伝達機構と、を備えることを特徴とする。
本発明の第1の視点によれば、ワンウェイクラッチを使わず、爪部材とラック部とが掛合可能で掛合解除時に爪部材とラック部とが完全に離れる機構を用いることにより、潤滑を必要とせず、高精度仕上げ面が少ないため、装置のコストを低減させることができる。また、掛合解除時に爪部材とラック部とが完全に離れるので、ワンウェイクラッチのような逆転や引き摺りの問題が発生せず、スタータモータにおいての従来技術のような衝撃吸収機構と逆転防止用クラッチが不要となり、装置のコストを低減させることができる。また、掛合解除時に爪部材とラック部とが完全に離れるので、ワンウェイクラッチのようなエンジン始動後の引き摺りがなくなり、装置の耐久性を向上させることができる。また、掛合解除時に爪部材とラック部とが完全に離れる構成では、潤滑を必要としない構造のため、ディーゼル車に適用することが可能となる。
本発明の第2、第3の視点によれば、ドライブプレートが正回転することでドライブプレートとドリブンプレートとの間の動力伝達経路上で引っ掛かり、ドライブプレートが回転停止又は逆回転することでドライブプレートとドリブンプレートとの間の動力伝達経路上での引っ掛かりが解除されるので、潤滑を必要とせず、高精度仕上げ面が少ないため、装置のコストを低減させることができる。また、引っ掛かりを解除した後においてはドリブンプレートが正回転及び逆回転のどちらに回転してもドライブプレートとドリブンプレートとの間で回転動力を伝達しないので、ワンウェイクラッチのような逆転や引き摺りの問題が発生せず、スタータモータにおいての従来技術のような衝撃吸収機構と逆転防止用クラッチが不要となり、装置のコストを低減させることができる。また、引っ掛かりを解除した後においてはドリブンプレートが正回転及び逆回転のどちらに回転してもドライブプレートとドリブンプレートとの間で回転動力を伝達しないので、ワンウェイクラッチのようなエンジン始動後の引き摺りがなくなり、装置の耐久性を向上させることができる。また、引っ掛かりを解除した後においてはドリブンプレートが正回転及び逆回転のどちらに回転してもドライブプレートとドリブンプレートとの間で回転動力を伝達しない構成では、潤滑を必要としない構造のため、ディーゼル車に適用することが可能となる。
本発明の実施形態1に係る内燃機関の始動装置では、スタータモータの出力軸(図1の11)に取付けられたドライブギヤ(図1の12)と、前記ドライブギヤと常時噛み合うドリブンギヤ(図1の13)と、前記ドリブンギヤと一体に回転するドライブプレート(図1の14)と、前記ドライブプレートに揺動可能に取り付けられた爪部材(図1の17)と、内燃機関の本体(図1の2)と前記ドライブプレートとの相対回転差が発生したときに前記爪部材の先端部を外周側に跳ね上げる跳ね上げ機構(図1の19、20、22、23、24を含む機構)と、前記内燃機関のクランクシャフトと一体に回転するドリブンプレート(図1の26)と、前記ドリブンプレートと一体に回転するとともに、前記ドライブプレートの回転速度が前記ドリブンプレートの回転速度よりも高いときに跳ね上がった前記爪部材の先端部と引っ掛かり、前記ドライブプレートの回転速度が前記ドリブンプレートの回転速度よりも低いときに前記爪部材の先端部を内周側に跳ね下げるラック部(図1の26a)と、を備える。
本発明の実施形態2に係る内燃機関の始動装置では、スタータの出力軸(図9の11)に取付けられたドライブギヤ(図9の12)と、前記ドライブギヤと噛み合うドリブンギヤ(図9の13)と、前記ドリブンギヤと一体に回転するドライブプレート(図9の14)と、内燃機関のクランクシャフト(図9の3)と一体に回転するドリブンプレート(図9の26)と、前記内燃機関の始動時に前記ドライブプレートが回転することで前記ドライブプレートが前記ドリブンプレートに係合することにより、前記ドライブプレートから前記ドリブンプレートに動力を伝達し、前記ドライブプレート及び前記ドリブンプレートのうちいずれか一方が他方に対し回転することにより前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートとの係合が解除されることによって、前記ドライブプレートから前記ドリブンプレートへの動力の伝達を禁止する動力伝達機構(例えば、図9の16〜20、22〜24、26aを含む機構)と、を備える。
本発明の実施形態3に係る内燃機関の始動装置では、スタータの出力軸(図33の11)に取付けられたドライブギヤ(図33の54)と、前記ドライブギヤと噛み合うドリブンギヤ(図33の55)と、前記ドリブンギヤと一体に回転するドライブプレート(図33の56)と、内燃機関のクランクシャフト(図33の3)と一体に回転するドリブンプレート(図33の57)と、前記内燃機関の始動時に前記ドライブプレートが前記ドリブンプレートに向かって移動し、前記ドリブンプレートに係合することにより、前記ドライブプレートから前記ドリブンプレートに動力を伝達し、前記ドライブプレート及び前記ドリブンプレートのうちいずれか一方が他方に対し回転することによって、前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートとの係合が解除されることにより、前記ドライブプレートから前記ドリブンプレートへの動力の伝達を禁止する動力伝達機構(例えば、図33の2、54〜59を含む機構)と、を備える。
本発明の実施例1に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図3のX−X´間の径方向の部分断面図である。図2は、本発明の実施例1に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図3のY−Y´間の径方向の部分断面図である。図3は、本発明の実施例1に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。なお、図3は、図1及び図2のドライブプレート14におけるディスク部分のフライホイール5側の面を基準にフライホイール5側の方向を見たときの図である。
始動装置1は、エンジン(図示せず)を始動させる装置であり、スタータモータ(図示せず)の出力軸11と一体に回転するピニオンギヤ12(ドライブギヤ)と、エンジンのクランクシャフト3に駆動力を伝達するリングギヤ13(ドリブンギヤ)とが常時噛み合う常時噛合式の始動装置である。始動装置1は、シリンダブロック2とフライホイール5との間に配されている。始動装置1は、ワンウェイクラッチに代わる機構として、クランクシャフト3が停止している状態でリングギヤ13が回転することにより、ドライブプレート14及びピン16を介してリングギヤ13と連動して回転する爪部材17を、クランクシャフト3と一体に回転するドリブンプレート26におけるラック部26aの引掛面26cに掛合させることでリングギヤ13とクランクシャフト3とを連動させ、クランクシャフト3が回転している状態でリングギヤ13が停止することにより爪部材17と引掛面26cとの掛合を解除させることでリングギヤ13とクランクシャフト3とを遮断するラチェット機構を有する。
始動装置1は、ラチェット機構において、エンジン始動時にリングギヤ13とシリンダブロック2との相対回転差を利用してヒステリシス部材23の突起部23aによって爪部材17の先端部を跳ね上げる「跳ね上げ機構」と、エンジン始動後はクランクシャフト3とリングギヤ13との相対回転差を利用してドリブンプレート26におけるラック部26aのガイド面26dによって爪部材17を跳ね下げる「跳ね下げ機構」と、を有する。跳ね上げ機構では、シリンダブロック2とドライブプレート14との相対回転差が発生したときにヒステリシス部材23を挟み込んでヒステリシス部材23の回転を規制する挟み込み機構を有する。始動装置1は、爪部材17が引掛面26cに掛合しているときに、リングギヤ13からピン16、爪部材17、ドリブンプレート26を介してクランクシャフト3への駆動力の伝達を許容し、爪部材17が引掛面26cに掛合していないときに、爪部材17と引掛面26cとが遮断され、リングギヤ13からクランクシャフト3への駆動力の伝達を行わない。始動装置1は、主な構成部品として、シリンダブロック2と、クランクシャフト3と、ボルト4と、フライホイール5と、出力軸11と、ピニオンギヤ12と、リングギヤ13と、ドライブプレート14と、ブッシュ15と、ピン16と、爪部材17と、バネ18と、サンギヤ19と、プラネタリギヤ20と、ブッシュ21と、キャリア22と、ヒステリシス部材23と、カバープレート24と、スナップリング25と、ドリブンプレート26と、を有する。
シリンダブロック2は、エンジンの骨格となる構造体である。シリンダブロック2は、外部側の面におけるクランクシャフト3よりも外周の部位に、フライホイール5側に延在した円筒部2aを有する。円筒部2aの内周面は、クランクシャフト3と離間している。円筒部2aの外周面は、ブッシュ15を介してドライブプレート14を回転可能に支持する。円筒部2aの外周面には、回り止め部2b及び円周溝部2cが形成されている。回り止め部2bは、カバープレート24の回り止め部24aと相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合させるための部分であり、円筒部2aの外周面にて軸方向に延在した溝状に形成されている。円周溝部2cは、スナップリング25を嵌め込むための部分であり、円筒部2aの外周面にて円周方向に延在した溝状に形成され、カバープレート24の回り止め部24aよりもフライホイール5側に配されている。
クランクシャフト3は、エンジンの出力軸であり、シリンダブロック2に回転可能に支持されている。クランクシャフト3の端部には、フライホイール5及びドリブンプレート26がボルト4によって締結されている。クランクシャフト3は、フライホイール5及びドリブンプレート26と一体に回転する。
ボルト4は、フライホイール5及びドリブンプレート26をクランクシャフト3の端部に締結するための部材である。
フライホイール5は、鋳鉄製の円板であり、ドリブンプレート26とともにクランクシャフト3にボルト4によって固定されており、クランクシャフト3と一体的に回転する。フライホイール5は、ドリブンプレート26のシリンダブロック2側の反対側に配されている。フライホイール5は、クラッチ(図示せず)に向けて回転動力を伝達する。
出力軸11は、エンジン(図示せず)を始動させるスタータモータ(図示せず)で発生した回転動力を出力するシャフトである。出力軸11には、ピニオンギヤ12が取り付けられており、ピニオンギヤ12と一体に回転する。
ピニオンギヤ12は、リングギヤ13を駆動するドライブギヤである。ピニオンギヤ12は、リングギヤ13よりも歯数が少ない平歯車(はすば歯車、やまば歯車でも可)よりなり、リングギヤ13と常時噛み合っている。
リングギヤ13は、スタータモータ(図示せず)の出力軸11からの回転トルクが伝達されるドリブンギヤである。リングギヤ13は、ピニオンギヤ12よりも歯数が多い平歯車(はすば歯車、やまば歯車でも可)である。リングギヤ13は、外周面にてピニオンギヤ12と常時噛み合い、内周面にてドライブプレート14の外周部分に固定され、ドライブプレート14と一体に回転する。
ドライブプレート14は、ラチェット機構を回転駆動するためのプレートである。ドライブプレート14は、円筒状に形成された外周部分の外周面にリングギヤ13が固定されており、リングギヤ13と一体に回転する。ドライブプレート14は、中間部分において、軸方向に延在した複数のピン16の一端が固定され、ピン16を介して爪部材17を揺動可能に支持する。ドライブプレート14には、ピン16の外周に配されたバネ18の一端を固定又は支持する。ドライブプレート14は、円筒状に形成された内周部分の外周面にサンギヤ19が固定されており、サンギヤ19と一体に回転する。ドライブプレート14は、円筒状に形成された内周部分の内周面にてブッシュ15を介してシリンダブロック2の円筒部2aに回転可能に支持されている。なお、ドライブプレート14は、シリンダブロック2の円筒部2aに回転可能に支持されるだけでなく、クランクシャフト3、フライホイール5等のように回転しても外周面が一定の位置にあるものに回転可能に支持されるような構成としてもよい。ドライブプレート14は、円筒状に形成された内周部分が軸方向においてブッシュ15とカバープレート24との間に配されており、カバープレート24を介してスナップリング25によって軸方向の移動が規制されている。
ブッシュ15は、ドライブプレート14をシリンダブロック2の円筒部2aに相対回転可能に支持するためのすべり軸受けである。ブッシュ15は、軸方向におけるドライブプレート14とシリンダブロック2との間にも配されており、ドライブプレート14の軸方向の移動を規制する。
ピン16は、ドライブプレート14の中間部分に爪部材17を揺動可能に取り付けるための部材である。ピン16は、一端がドライブプレート14に固定され、他端にて爪部材17を揺動可能に支持する。ピン16におけるドライブプレート14と爪部材17との間の部分の外周には、バネ18が配されている。
爪部材17は、ドリブンプレート26におけるラック部26aの引掛面26cに掛合可能な爪状の部材であり、ラチェット機構の構成部材である。爪部材17は、末端部がドライブプレート14に固定されたピン16に揺動可能に取り付けられており、先端部の周方向の面にテーパ面17aを有する。テーパ面17aは、内周向きに傾斜した面である。爪部材17は、バネ18によって爪部材17の先端部が内周側に回動するように付勢されている。
爪部材17の先端部がヒステリシス部材23における突起部23aのテーパ面23bに近づくように爪部材17とヒステリシス部材23とが相対回転したときに、爪部材17のテーパ面17a(内周側の部分)がヒステリシス部材23のテーパ面23bによって押付けられることで、爪部材17の先端部が外周側に跳ね上がる。爪部材17の先端部が外周側に跳ね上げられると、爪部材17の先端部がドリブンプレート26におけるラック部26aの溝部26b内に入る。爪部材17の先端部がドリブンプレート26の溝部26b内に入った状態で、爪部材17の先端部がドリブンプレート26におけるラック部26aの引掛面26cに近づくように爪部材17とドリブンプレート26とが相対回転したときに、爪部材17の先端部がドリブンプレート26の引掛面26cに引っ掛かる。爪部材17の先端部がドリブンプレート26の引掛面26cに引っ掛かると、爪部材17とドリブンプレート26とが相対回転しなくなり、リングギヤ13の回転動力がドライブプレート14、ピン16、爪部材17、ドリブンプレート26、及びボルト4を介してクランクシャフト3に伝達される。
爪部材17の先端部がドリブンプレート26の溝部26b内に入っている状態において、爪部材17の先端部がドリブンプレート26の引掛面26cから離れるように爪部材17とドリブンプレート26とが相対回転したときに、爪部材17の外周側の面がドリブンプレート26におけるラック部26aのガイド面26dによって押し付けられることで、爪部材17の先端部が内周側に跳ね下げられる。爪部材17の先端部が内周側に跳ね下げられると、爪部材17のテーパ面17a(内周側の部分)がヒステリシス部材23のテーパ面23bを内周側に押し付け、爪部材17の先端部がヒステリシス部材23のテーパ面23bから離れるようにヒステリシス部材23と爪部材17とが相対回転し、バネ18の付勢力によって爪部材17の先端部が内周側に回動することで最終的には爪部材17の先端部がドリブンプレート26のラック部26aから完全に離れる。
バネ18は、爪部材17の先端部を内周側に回動するように付勢する弾性部材である。バネ18は、ピン16におけるドライブプレート14と爪部材17との間の部分の外周に配されている。バネ18は、一端がドライブプレート14に支持又は固定され、他端が爪部材17の先端部を内周側に回動するように爪部材17を付勢する。
サンギヤ19は、ドライブプレート14とともに回転するギヤである。サンギヤ19は、内周面にてドライブプレート14の内周部分の外周面に固定されている。サンギヤ19は、外周面にはす歯ギヤが形成されており、はす歯のプラネタリギヤ20と噛合っている。
プラネタリギヤ20は、サンギヤ19と噛み合うギヤである。プラネタリギヤ20は、ブッシュ21を介してキャリア22に回転可能に支持されている。プラネタリギヤ20は、外周面にはす歯ギヤが形成されており、はす歯のサンギヤ19と噛合っている。プラネタリギヤ20の回転軸は、ブッシュ21、キャリア22、及びカバープレート24を介してシリンダブロック2に周方向移動不能に保持される。プラネタリギヤ20は、サンギヤ19の回転によって回転すると、ブッシュ21及びキャリア22を介してヒステリシス部材23をカバープレート24に向けて押付けるように作用する。
ブッシュ21は、プラネタリギヤ20をキャリア22のピンに相対回転可能に支持するためのすべり軸受けである。ブッシュ21は、プラネタリギヤ20とキャリア22のピンとの間だけでなく、軸方向におけるプラネタリギヤ20とキャリア22のプレート部との間にも介在している。
キャリア22は、プラネタリギヤ20を回転可能に支持する部材である。キャリア22は、内周端部において、カバープレート24の回り止め部24bと相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する回り止め部22aを有する。キャリア22は、カバープレート24を介してシリンダブロック2の円筒部2aに相対回転不能に保持されている。キャリア22は、サンギヤ19とプラネタリギヤ20との間で回転することによりはす歯の傾斜によってプラネタリギヤ20が軸方向のフライホイール5側に徐々に変位することで、プラネタリギヤ20からブッシュ21を介してヒステリシス部材23側に変位する。キャリア22は、ヒステリシス部材23側に変位することで、カバープレート24で受けられたヒステリシス部材23に圧接し、ヒステリシス部材23の周方向の移動に対して摩擦ブレーキをかける。キャリア22は、ヒステリシス部材23に圧接していないときには、ヒステリシス部材23の周方向の移動を許容する。
ヒステリシス部材23は、軸方向におけるキャリア22とカバープレート24との間に配置された環状の部材である。ヒステリシス部材23は、キャリア22がヒステリシス部材23側に変位することで、キャリア22とカバープレート24に挟み込まれ、キャリア22とカバープレート24によって周方向の移動に対して摩擦ブレーキがかけられる。ヒステリシス部材23は、キャリア22及びプラネタリギヤ20よりも外周側に延在しており、外周面の所定の部分において突出した突起部23aが形成されている。突起部23aは、周方向の端面のうち爪部材17のテーパ面17aと対向する端面にテーパ面23bが形成されている。テーパ面23bは、外周向きに傾斜した面である。テーパ面23bに向かって爪部材17のテーパ面17aが近づくようにヒステリシス部材23と爪部材17とが相対回転したときに、テーパ面23bが爪部材17のテーパ面17a(内周側の部分)を押し付けて爪部材17の先端部を外周側に跳ね上げる。
カバープレート24は、シリンダブロック2における円筒部2aに相対回転不能に係合した環状のプレートである。カバープレート24は、内周端部において、シリンダブロック2における円筒部2aの回り止め部2bと相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する回り止め部24aを有する。カバープレート24は、内周寄りの中間部分に段差部を有し、当該段差部の外周面にキャリア22の回り止め部22aと相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する回り止め部24bを有する。カバープレート24は、キャリア22がヒステリシス部材23側に変位したときに、キャリア22で押付けられたヒステリシス部材23に圧接し、ヒステリシス部材23の周方向の移動に対して摩擦ブレーキをかける。
スナップリング25は、軸方向に積み重なったブッシュ15、ドライブプレート14、及びカバープレート24の軸方向の移動を規制するリング状の部材である。スナップリング25は、シリンダブロック2における円筒部2aの円周溝部2cに嵌め込まれる。
ドリブンプレート26は、ピン16及び爪部材17を介してドライブプレート14によって回転駆動可能な環状のプレートである。ドリブンプレート26は、フライホイール5とともにクランクシャフト3にボルト4によって固定されており、クランクシャフト3と一体的に回転する。ドリブンプレート26は、爪部材17よりも外周側に延在しており、外周端部にてドライブプレート14側に延在したラック部26aを有する。ラック部26aには、内周側の面において周期的に凹んだ複数の溝部26bが形成されており、溝部26bの周方向の面の一方には爪部材17の先端部と掛合可能な引掛面26cを有し、溝部26bの周方向の面の他方には爪部材17の先端部を跳ね下げるように爪部材17をガイドするガイド面26dを有する。引掛面26cは、ドライブプレート14の回転速度がドリブンプレート26の回転速度よりも高いときに、跳ね上がった爪部材17の先端部と引っ掛かる。ガイド面26dは、ドライブプレート14の回転速度がドリブンプレート26の回転速度よりも低いときに爪部材17の先端部を内周側に跳ね下げる。
次に、本発明の実施例1に係る内燃機関の始動装置の動作について図面を用いて説明する。図4は、本発明の実施例1に係る内燃機関の始動装置の動作を説明するための軸方向から見た部分平面図であり、(A)始動前の状態、(B)始動中の状態である。図5は、本発明の実施例1に係る内燃機関の始動装置の動作を説明するための軸方向から見た部分平面図であり、(A)始動中の状態、(B)始動解除中の状態である。図6は、本発明の実施例1に係る内燃機関の始動装置の動作を説明するための軸方向から見た部分平面図であり、(A)始動解除中の状態、(B)始動解除後の状態である。なお、図4〜図6は、図1及び図2のドライブプレート14におけるディスク部分のフライホイール5側の面を基準にフライホイール5側の方向を見たときの図である。
エンジン始動前(エンジン停止時)では、爪部材17の先端部が跳ね上がっていない状態にある(図4(A)参照)。この状態でスタータモータの出力軸(図1の11)が回転すると、出力軸11と一体に回転するピニオンギヤ(図1の12)が回転し、ピニオンギヤ12と常時噛合うリングギヤ13が回転し、リングギヤ13を固定するドライブプレート14が回転し、ドライブプレート14に固定されたサンギヤ19が回転し、サンギヤ19と噛み合うプラネタリギヤ20が回転する。このとき、プラネタリギヤ20の回転軸は、ブッシュ21、キャリア22、及びカバープレート24を介してシリンダブロック2に周方向移動不能に保持される。また、サンギヤ19とプラネタリギヤ20ははす歯ギヤであるため、サンギヤ19とプラネタリギヤ20との間でスラスト力が発生し、プラネタリギヤ20が軸方向のキャリア22側に変位する。プラネタリギヤ20が軸方向のキャリア22側に変位すると、プラネタリギヤ20とともにブッシュ21を介してキャリア22が軸方向のヒステリシス部材23側に移動し、ヒステリシス部材23が、軸方向の移動が規制されたカバープレート24と、キャリア22とによって挟圧される。ヒステリシス部材23が挟圧されると、シリンダブロック2に対して相対回転不能なカバープレート24とキャリア22がヒステリシス部材23に対して摩擦ブレーキをかけ、ヒステリシス部材23の回転方向の動きが規制される。ヒステリシス部材23の回転方向の動きが規制されると、ドライブプレート14の回転によって、ドライブプレート14に揺動可能に支持された爪部材17のテーパ面17aがヒステリシス部材23のテーパ面23bに当たり、爪部材17の先端部が外周側に跳ね上がる(図4(B)参照)。
爪部材17の先端部が外周側に跳ね上がると、爪部材17の先端部がドリブンプレート26のラック部26aの内周側に形成された溝部26bに入り、ドライブプレート14の回転によって、ドライブプレート14に揺動可能に支持された爪部材17の先端部がドリブンプレート26におけるラック部26aの引掛面26cに当たり、爪部材17の先端部がドリブンプレート26の引掛面26cに引っ掛かる(図5(A)参照)。爪部材17の先端部がドリブンプレート26の引掛面26cに引っ掛かると、リングギヤ13の回転動力がドライブプレート14、ピン16、爪部材17、ドリブンプレート26、及びボルト4を介してクランクシャフト3に伝達され、クランクシャフト3の回転をきっかけにエンジンが始動する。
エンジンが始動すると、ドリブンプレート26の回転速度がドライブプレート14の回転速度を上回るため、爪部材17の先端部がドリブンプレート26の引掛面26cから離れて、爪部材17の外周側の面がドリブンプレート26におけるラック部26aのガイド面26dにぶつかり、爪部材17の先端部が内周側に跳ね下がろうとする(図5(B)参照)。このとき、スタータモータの出力軸(図1の11)の回転が止まり、これに伴いドライブプレート14の回転も止まると、サンギヤ19及びプラネタリギヤ20の回転が止まり、サンギヤ19とプラネタリギヤ20との間のスラスト力がなくなってプラネタリギヤ20がドライブプレート14側に変位し、これに伴ってキャリア22とカバープレート24とによるヒステリシス部材23の挟み込みが解除され、摩擦ブレーキがゼロとなったヒステリシス部材23が回転自在となる。ヒステリシス部材23が回転自在な状態で、前述の爪部材17の先端部が内周側に跳ね下がろうとする力と、バネ18の付勢力とにより、爪部材17のテーパ面17a(内周側の部分)がヒステリシス部材23のテーパ面23bを内周側に押し付け(図6(A)参照)、ヒステリシス部材23のテーパ面23bが爪部材17の先端部から離れるようにヒステリシス部材23が回転し、最終的には爪部材17の先端部がドリブンプレート26のラック部26aから完全に離れるので、ドリブンプレート26の回転動力が爪部材17、ピン16、ドライブプレート14、リングギヤ13、ピニオンギヤ(図1の12)に伝達されなくなる(図6(B)参照)。
実施例1によれば、始動装置においてワンウェイクラッチを使わず、爪部材17とドリブンプレート26のラック部26aとが掛合可能なラチェット機構を用いることにより、潤滑を必要とせず、高精度仕上げ面が少ないため、装置のコストを低減させることができる。また、ラチェット機構において掛合解除時に爪部材17とラック部26aとが完全に離れるので、ワンウェイクラッチのような逆転や引き摺りの問題が発生せず、スタータモータにおいての従来技術のような衝撃吸収機構と逆転防止用クラッチが不要となり、装置のコストを低減させることができる。また、ラチェット機構において掛合解除時に爪部材17とラック部26aとが完全に離れるので、ワンウェイクラッチのようなエンジン始動後の引き摺りがなくなり、装置の耐久性を向上させることができる。また、掛合解除時に爪部材17とラック部26aとが完全に離れるラチェット機構では、潤滑を必要としない構造のため、ディーゼル車に適用することが可能となる。
本発明の実施例2に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図7は、本発明の実施例2に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図8のX−X´間の径方向の部分断面図である。図8は、本発明の実施例2に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。なお、図8は、図7のドライブプレート14におけるディスク部分のフライホイール5側の面を基準にフライホイール5側の方向を見たときの図である。
実施例2は、実施例1の変形例であり、ピン(図1の16)を用いる代わりに、ドライブプレート14に設けた保持部14aを用いて爪部材17を所定角度の範囲で揺動可能に保持するようにしたものである。保持部14aは、ドライブプレート14における保持部14aを保持させたい位置に設けられ、ドライブプレート14を絞り加工(折り曲げ加工)等することにより、ドライブプレート14から軸方向に突出している。保持部14aは、円筒状でその一部を切り欠いた形状をしている。保持部14aは、爪部材17の末端部を揺動可能に保持するとともに、ドライブプレート14に対して爪部材17が周方向にずれないように保持している。保持部14aは、爪部材17とドライブプレート14本体との間にてバネ18を収容している。また、爪部材17は、実施例1と同様に、バネ18によって爪部材17の先端部が内周側に回動するように付勢されている。また、バネ18は、実施例1と同様に、一端がドライブプレート14に支持又は固定され、他端が爪部材17の先端部を内周側に回動するように爪部材17を付勢する。その他の構成及び動作は、実施例1と同様である。
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、ピン(図1の16)の廃止によりコストを低減させることができ、保持部14aの強度を向上させることができる。
本発明の実施例3に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図9は、本発明の実施例3に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図11のX−X´間の径方向の部分断面図である。図10は、本発明の実施例3に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図11のY−Y´間の径方向の部分断面図である。図11は、本発明の実施例3に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。なお、図11は、図9のドライブプレート14におけるディスク部分のフライホイール5側の面を基準にフライホイール5側の方向を見たときの図である。
実施例3は、実施例1の変形例であり、ブッシュ(図1の21)を用いる代わりに皿ばね20aによってプラネタリギヤ20をキャリア22側に押付けるようにしたものである。プラネタリギヤ20及びキャリア22以外の構成及び動作は、実施例1と同様である。
始動装置1は、エンジン始動時にドライブプレート14が回転することで爪部材17がラック部26aに引っ掛かってドライブプレート14からドリブンプレート26に回転動力が伝達され、ドライブプレート14の回転が停止することで爪部材17とラック部26aとの引っ掛かりが解除されてドリブンプレート26が正回転及び逆回転のどちらに回転してもドライブプレート14とドリブンプレート26との間で回転動力の伝達が行われない引っ掛け機構(動力伝達機構)を有する。引っ掛け機構では、ドライブプレート14が回転することで所定の部材(プラネタリギヤ20、キャリア22)が軸方向に移動又は押付ける力を発生して爪部材17がラック部26aに引っ掛かってドライブプレート14からドリブンプレート26に回転動力が伝達され、ドライブプレート14が停止することで爪部材17とラック部26aとの引っ掛かりが解除されてドリブンプレート26が正回転及び逆回転のどちらに回転してもドライブプレート14とドリブンプレート26との間で回転動力の伝達が行われないように作動する。引っ掛け機構において、実施例1と同様なラチェット機構、跳ね上げ機構(回動機構)、及び跳ね下げ機構(回動機構)を有する。始動装置1は、内燃機関と変速機の間に配置される。
プラネタリギヤ20は、サンギヤ19と噛み合うギヤである。プラネタリギヤ20は、キャリア22に固定されたピン22bに回転可能に支持されている。プラネタリギヤ20は、外周面にはす歯ギヤが形成されており、はす歯のサンギヤ19と噛合っている。プラネタリギヤ20は、皿ばね20aによってキャリア22側に押付けられている。皿ばね20aは、環状のばねであり、内周端部がピン22bに形成された鍔部に支持され、外周端部がプラネタリギヤ20と当接している。皿ばね20aは、キャリア22とプラネタリギヤ20との間の摩擦力(スラスト荷重)を高めるためのものであり、プラネタリギヤ20に回転抵抗を与える。これにより、プラネタリギヤ20とはす歯で噛み合うサンギヤ19の回転力がプラネタリギヤ20及びキャリア22をカバープレート24側に移動又は押付けしやすくなり、ヒステリシス部材23がキャリア22とカバープレート24に挟み込まれてヒステリシス部材23のスラスト荷重が高まることでヒステリシス部材23が確実に動きにくくなり、回転してくる爪部材17がヒステリシス部材23の突起部23aに当たることで爪部材17を確実に跳ね上げることができる。プラネタリギヤ20の回転軸は、キャリア22、及びカバープレート24を介してシリンダブロック2に周方向移動不能に保持される。プラネタリギヤ20は、サンギヤ19の回転によって回転すると、キャリア22を介してヒステリシス部材23をカバープレート24に向けて押付けるように作用する。
キャリア22は、ピン22bを介してプラネタリギヤ20を回転可能に支持する部材である。ピン22bは、キャリア22に固定されており、プラネタリギヤ20を回転可能に支持し、皿ばね20aの内周端部を支持する鍔部を有する。キャリア22は、内周端部において、カバープレート24の回り止め部24bと相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する回り止め部22aを有する。キャリア22は、カバープレート24を介してシリンダブロック2の円筒部2aに相対回転不能に保持されている。キャリア22は、サンギヤ19とプラネタリギヤ20との間で回転することによりはす歯の傾斜によってプラネタリギヤ20の軸方向のフライホイール5側への移動又は押付けによって軸方向のシリンダブロック2側に移動又は押付ける。キャリア22は、ヒステリシス部材23をカバープレート24側に移動又は押付けることで、ヒステリシス部材23がキャリア22及びカバープレート24と圧接し、ヒステリシス部材23の周方向の移動に対して摩擦ブレーキをかける。キャリア22は、ヒステリシス部材23に圧接していないときには、ヒステリシス部材23の周方向の移動を許容する。
爪部材17は、実施例1の爪部材(図1の17)と同様な構成であるが、バネ18によって爪部材17の先端部が内周側に回動するように付勢されている。これにより、爪部材17を確実に跳ね下げることができるため、爪部材17とラック部26aとの間の引き摺りがなくなり、燃費が向上する。爪部材17は、内周側でヒステリシス部材23の円筒部、及びスラスト荷重発生機構(サンギヤ19、プラネタリギヤ20、キャリア22)と径方向にラップし、外周側でドリブンプレート26のラック部26aと径方向にラップしている。これにより、爪部材17の引っ掛かりを確保しつつ、軸長の短縮が可能となる。図11に示すように、2つの爪部材17は同時にラック部26aに係合せず、一方の爪部材17が一方のラック部26aに係合するとき、他方の爪部材17が他方のラック部26aに係合しない。これにより、空転角が減るため、応答性が上がる。また、ラック部26aに引っ掛かる爪部材17と引っ掛からない爪部材17とが存在し、引っ掛からない爪部材17はヒステリシス部材23の突起部23cと円周方向で当接し、かつ、ガイド面26dに当接しているため、引っ掛かる爪部材17の内周側にヒステリシス部材23の突起部23cが入り込まず、引っ掛かる爪部材17がラック部26aに引っ掛かったままロックされる事態を防止することができる。
バネ18は、実施例1のバネ(図1の18)と同様な構成であるが、皿ばね20aとの関係で、「爪部材17のバネ18がヒステリシス部材23を回そうとする力」<「ヒステリシス部材23の回転を停止する力(プラネタリギヤ20とキャリア22との間のスラスト荷重)」となるように、バネ18の荷重、及び、皿ばね20aの荷重が設定されている。これにより、プラネタリギヤ20とキャリア22との間のスラスト荷重とバネ18の付勢力との最適設計により、確実な爪部材17の跳ね上げを保障できる。
ヒステリシス部材23は、実施例1のヒステリシス部材(図1の23)と同様な構成であるが、ヒステリシス部材23の摺動面は、キャリア22との摺動面、及び、カバープレート24との摺動面の2面である。これにより、爪部材17の跳ね上げに必要なスラスト荷重を低減できるため、コンパクト化が可能である。また、ヒステリシス部材23の摺動面の2面のうち、キャリア22側の摺動面の面積を小さくする。これにより、摺動面の管理面積が小さくなるため、ばらつきの少ない機構となる。さらに、ヒステリシス部材23の円筒部は、内周側でスラスト荷重発生機構(サンギヤ19、プラネタリギヤ20、キャリア22)と径方向にラップし、外周側で爪部材17、及びドリブンプレート26のラック部26aと径方向にラップしている。これにより、爪部材17の掛かりを確保しつつ、軸長の短縮が可能である。
カバープレート24は、実施例1のカバープレート(図1の24)と同様な構成であるが、ピン16からの爪部材17の抜け止めを行う。これにより、部品点数が減るため、組付け工程及びコストを低減させることができる。
ドリブンプレート26は、実施例1のドリブンプレート(図1の26)と同様な構成であるが、ドリブンプレート26のラック部26aは、内周側で爪部材17、ヒステリシス部材23の円筒部、及びスラスト荷重発生機構(サンギヤ19、プラネタリギヤ20、キャリア22)と径方向にラップしている。これにより、爪部材17の掛かりを確保しつつ、軸長の短縮が可能である。また、ドリブンプレート26の溝部26bの引掛面26cの位置は、爪部材17の位置との位相がずれている。つまり、2つの爪部材17が同時に引掛面26cと引っ掛からず、一方の爪部材17が引掛面26cと引っ掛かり、他方の爪部材17が引掛面26cと引っ掛からないように設定されている。これにより、空転角が減るため、応答性が上がる。また、ドリブンプレート26の引掛面26cと爪部材17との接触部は、エンジン始動時にピン16に発生する荷重方向(ピン16の中心軸の移動方向の軌跡となる円におけるピン16の中心軸の接線方向)と同一線上にくるように設定されている。これにより、爪部材17におけるモーメント荷重の発生が抑制されるため、爪部材17の強度を確保することができる。ドリブンプレート26の引掛面26cの角度は、爪部材17及びドリブンプレート26に用いられる材料、摩擦係数等に応じて設定される。
シール部材27は、実施例3で追加したものであるが、シリンダブロック2の円筒部2aとクランクシャフト3との間の隙間をシールする部材である。シール部材27は、シリンダブロック2内への塵、水等の異物の浸入を防止する。
実施例3によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、皿ばね20aによってプラネタリギヤ20がキャリア22に押付けられることにより、爪部材17を確実に跳ね上げることができる。また、「爪部材17のバネ18がヒステリシス部材23を回そうとする力」<「ヒステリシス部材23の回転を停止する力(プラネタリギヤ20とキャリア22との間のスラスト荷重)」となるように、バネ18の荷重、及び、皿ばね20aの荷重を設定することにより、確実な爪部材17の跳ね上げを保障できる。
本発明の実施例4に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図12は、本発明の実施例4に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した径方向の部分断面図である。
実施例4は、実施例3の変形例であり、キャリア22のカバープレート24側の面に突起部22cを設け、キャリア22とヒステリシス部材23との摺動面積を、カバープレート24とヒステリシス部材23との摺動面積よりも小さくしたものである。ヒステリシス部材23は、キャリア22との関係において、突起部22cの先端部と当接可能である。その他の構成及び動作は、実施例3と同様である。
実施例4によれば、実施例3と同様な効果を奏するとともに、ヒステリシス部材23の摺動面の管理面積が小さくなるため、ばらつきの少ない機構となる。
本発明の実施例5に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図13は、本発明の実施例5に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した径方向の部分断面図である。
実施例5は、実施例3の変形例であり、ヒステリシス部材23のカバープレート24側の面に突起部23cを設け、カバープレート24とヒステリシス部材23との摺動面積を、キャリア22とヒステリシス部材23との摺動面積よりも小さくしたものである。ヒステリシス部材23は、カバープレート24との関係において、突起部23cの先端部と当接可能である。その他の構成及び動作は、実施例3と同様である。
実施例5によれば、実施例4と同様な効果を奏する。
本発明の実施例6に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図14は、本発明の実施例6に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図15のX−X´間の径方向の部分断面図である。図15は、本発明の実施例6に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。なお、図15は、図14のドライブプレート14におけるディスク部分のフライホイール5側の面を基準にフライホイール5側の方向を見たときの図である。
実施例6は、実施例3の変形例であり、爪部材17の先端部が跳ね上がりラック部26aの引掛面26cに引っ掛かっているときに、爪部材17の外周側の面がラック部26aの溝部26b(引掛面26c及びガイド面26dを除く)と当接しないように、爪部材17においてストッパ部17bを設けるとともに、ドライブプレート14においてストッパ部14bを設けたものである。ストッパ部17bは、テーパ面17a側の延在部分とは反対側に突出した部分であり、爪部材17の回動とともに回動する。ストッパ部14bは、ドライブプレート14のプレート面から突出した部分(図14では切り込んで折り曲げた部分)であり、爪部材17のテーパ面17a側に延在した部分が外側に回動したときに爪部材17の外周側の面がラック部26aの溝部26bと当接しないようにストッパ部17bを係止する。その他の構成及び動作は、実施例3と同様である。
実施例6によれば、実施例3と同様な効果を奏するとともに、爪部材17の過度な回転が抑制できるため、爪部材17におけるテーパ面17aの内周側にヒステリシス部材23の突起部23aが入り込むのを防止することができ、爪部材17のドリブンプレート26の溝部26bへの噛み込みロック(爪部材17の先端部が跳ね上がったままの状態のロック)を防止することができる。
本発明の実施例7に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図16は、本発明の実施例7に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図17のX−X´間の径方向の部分断面図である。図17は、本発明の実施例7に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。なお、図17は、図16のドライブプレート14におけるディスク部分のフライホイール5側の面を基準にフライホイール5側の方向を見たときの図である。
実施例7は、実施例6の変形例であり、爪部材(図15の17)及びドライブプレート(図15の14)の両方にストッパ部(図15の17b、14b)を設けるのではなく、爪部材17においてのみストッパ部17cを設けたものである。ストッパ部17cは、爪部材17の先端部が跳ね上がりラック部26aの引掛面26cに引っ掛かっているときに、爪部材17の外周側の面がラック部26aの溝部26b(引掛面26c及びガイド面26dを除く)と当接しないように設けられたものであり、テーパ面17a側の延在部分とは反対側に突出した部分である。ストッパ部17cは、爪部材17の回動とともに回動し、ヒステリシス部材23の円筒部の外周面(突起部23aを除く)によって係止される。その他の構成及び動作は、実施例6と同様である。
実施例7によれば、実施例6と同様な効果を奏する。
本発明の実施例8に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図18は、本発明の実施例8に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。
実施例8は、実施例3の変形例であり、爪部材17におけるラック部26a及びヒステリシス部材23と当接しうる部分に緩衝材17dを設けたものである。その他の構成及び動作は、実施例3と同様である。
実施例8によれば、実施例3と同様な効果を奏するとともに、緩衝材17d(例えば、ゴム等)によりショックを吸収できるため、爪部材17の引掛り時及び開放時の打撃音を緩和させることができる。
本発明の実施例9に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図19は、本発明の実施例9に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。
実施例9は、実施例8の変形例であり、爪部材(図18の17)に緩衝材(図18の17d)を設けるのではなく、ラック部26a及びヒステリシス部材23における爪部材17と当接しうる部分に緩衝材26e、23d(例えば、ゴム等)を設けたものである。その他の構成及び動作は、実施例8と同様である。
実施例9によれば、実施例8と同様な効果を奏する。
本発明の実施例10に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図20は、本発明の実施例10に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図21のX−X´間の径方向の部分断面図である。図21は、本発明の実施例10に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。なお、図21は、図20のドライブプレート14におけるディスク部分のフライホイール5側の面を基準にフライホイール5側の方向を見たときの図である。
実施例10は、実施例3の変形例であり、ドリブンプレート26のラック部26aの爪部材17側の面の反対面(図20では外周側の面)の空所に慣性材26fを設けたものである。その他の構成及び動作は、実施例3と同様である。
実施例10によれば、実施例3と同様な効果を奏するとともに、エンジンのクランクシャフト3の慣性が増加することにより、エンジン振動が抑制されるため、NV(騒音・振動)性能を向上させることができる。
本発明の実施例11に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図22は、本発明の実施例11に係る内燃機関の始動装置におけるカバープレートの構成を模式的に示した(A)軸方向から見た平面図、(B)X−X´間の径方向の断面図である。図23は、本発明の実施例11に係る内燃機関の始動装置におけるキャリアの構成を模式的に示した(A)軸方向から見た平面図、(B)Y−Y´間の径方向の断面図である。
実施例11は、実施例3の変形例であり、カバープレート(図9〜図11の24)とシリンダブロック(図9〜図11の2)との間の回り止めを、カバープレート(図9〜図11の24)に形成された凸状の回り止め部(図9〜図11の24a)と、シリンダブロック(図9〜図11の2)の円筒部(図9〜図11の2a)に形成された溝状の回り止め部(図9〜図11の2b)と、を係合させる形式にするのをやめ、カバープレート24に2面幅で回り止めする2面幅回り止め部24cを設け、シリンダブロック(図9〜図11の2に相当)の円筒部(図9〜図11の2aに相当)において2面幅回り止め部24cに対応して相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する2面幅回り止め部(図示せず)を形成したものである。また、カバープレート(図9〜図11の24)とキャリア(図9〜図11の22)との間の回り止めを、カバープレート(図9〜図11の24)に形成された凸状の回り止め部(図9〜図11の24b)と、キャリア(図9〜図11の22)に形成された溝状の回り止め部(図9〜図11の22a)と、を係合させる形式にするのをやめ、カバープレート24にスプラインで回り止めする外スプライン部24dを設け、キャリア22において外スプライン部24dに対応して相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する内スプライン部22dを形成している。少なくとも2面幅回り止め部24c、外スプライン部24d、及び内スプライン部22dは、プレスのみで成形できる。その他の構成及び動作は、実施例3と同様である。
実施例11によれば、実施例3と同様な効果を奏するとともに、プレスのみでカバープレート24及びキャリア22に回り止めを成形できるので、コストを低減させることができる。
本発明の実施例12に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図24は、本発明の実施例12に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図26のX−X´間の径方向の部分断面図である。図25は、本発明の実施例12に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図26のY−Y´間の径方向の部分断面図である。図26は、本発明の実施例12に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。なお、図26は、図24のリベット33のシリンダブロック2側の面を基準にシリンダブロック2側の方向を見たときの図である。
実施例12は、実施例3の変形例であり、機構の動作としては実施例3と共通しているが、シリンダブロック2とドリブンプレート26との間に配置された構成部材(ドライブプレート31、サポートプレート32、リベット33、ピン34、スナップリング35、ワッシャ36、ヒステリシス部材37、リングギヤ38、プラネタリギヤ39、キャリア40、カバープレート41、ボルト42、ブッシュ43)、及びシリンダブロック2の構造が異なる。なお、クランクシャフト3、ボルト4、フライホイール5、出力軸11、ピニオンギヤ12、リングギヤ13、爪部材17、バネ18、ドリブンプレート26、及びシール部材27については、実施例3の対応する構成部材と同様である。
シリンダブロック2は、エンジンの骨格となる構造体である。シリンダブロック2は、外部側の面におけるクランクシャフト3よりも外周の部位に、フライホイール5側に延在した円筒部2aを有する。円筒部2aの内周面は、クランクシャフト3と離間しており、シール部材27と当接している。円筒部2aの外周面は、ブッシュ43を介してドライブプレート31を回転可能に支持する。円筒部2aの外周面には、スナップリング35を嵌め込むための円周溝部が形成されている。円筒部2aの外周において、スナップリング35が嵌め込まれた位置とブッシュ43の位置との間にてワッシャ36が配置されている。シリンダブロック2は、外部側の面における円筒部2aの外周の所定の位置にて突出した回り止め部2dを有する。回り止め部2dは、ドライブプレート31側の面上にてボルト42によってカバープレート41の回り止め部41aが取付固定されており、カバープレート41の回転を規制する。回り止め部2dは、キャリア40において切り欠いた回り止め部40aに挿入されており、キャリア40の回転を規制するとともにキャリア40の軸方向の移動を許容する。
ドライブプレート31は、ラチェット機構を回転駆動するためのプレートである。ドライブプレート31は、外周部分に形成された円筒部の外周面に外歯のリングギヤ13が固定されており、リングギヤ13と一体に回転する。ドライブプレート31における外周部分の円筒部は、爪部材17の先端部が跳ね上がりラック部26aの引掛面26cに引っ掛かっているときに、爪部材17の外周側の面がラック部26aの溝部26b(引掛面26c及びガイド面26dを除く)と当接しないように爪部材17の回転を係止する。ドライブプレート31は、中間部分に形成された段差における円筒部の内周面に内歯のリングギヤ38が固定されており、リングギヤ38と一体に回転する。ドライブプレート31は、外周部分の円筒部と中間部分の円筒部との間のプレート面において、軸方向に延在した複数のピン34の一端が固定され、ピン34を介して爪部材17を揺動可能に支持する。ドライブプレート31は、爪部材17の回転軸の外周に配されたバネ18の一端を外周部分の円筒部の内周面で支持する。ドライブプレート31は、外周部分の円筒部と中間部分の円筒部との間のプレート面において、ピン34が固定された位置から周方向にずれた位置に穴部31aを有する。穴部31aは、ヒステリシス部材37の突起部37aを挿通するためのものであり、突起部37aの周方向への移動を所定の範囲で許容する。ドライブプレート31は、内周部分に形成された円筒部の内周面にて、ブッシュ43を介してシリンダブロック2の円筒部2aに回転可能に支持されている。ドライブプレート31は、中間部分の円筒部と内周部分の円筒部との間のプレート面のフライホイール5側の面にリベット33によってサポートプレート32が取付固定されており、サポートプレート32と一体に回転する。ドライブプレート31における外周部分の円筒部と中間部分の円筒部との間のプレート面は、サポートプレート32と所定の間隔をおいて離間している。ドライブプレート31は、中間部分の円筒部と内周部分の円筒部との間のプレート面のフライホイール5側の面にて当接可能なワッシャ36を介してスナップリング35によって軸方向のフライホイール5側への移動が規制されている。ドライブプレート31は、外周部分の円筒部と中間部分の円筒部との間のプレート面にて当接可能なヒステリシス部材37によって軸方向のシリンダブロック2側への移動が規制されている。なお、ドライブプレート31は、シリンダブロック2の円筒部2aに回転可能に支持されるだけでなく、クランクシャフト3、フライホイール5等のように回転しても外周面が一定の位置にあるものに回転可能に支持されるような構成としてもよい。
サポートプレート32は、ドライブプレート31とともにピン34を固定するプレートである。サポートプレート32は、ドライブプレート31のフライホイール5側に配されており、内周側の部分にてリベット33によってドライブプレート31に取付固定されており、ドライブプレート31と一体に回転する。サポートプレート32は、外周側の部分にてドライブプレート31と所定間隔をおいて離間している。サポートプレート32は、軸方向に延在した複数のピン34の他端が固定され、ピン34を介して爪部材17を揺動可能に支持する。
リベット33は、サポートプレート32をドライブプレート31に取付固定するための部材である。
ピン34は、ドライブプレート31とサポートプレート32とが離間している位置にて爪部材17を揺動可能に取り付けるための部材である。ピン34は、一端がドライブプレート31に固定され、他端がサポートプレート32に固定されている。これにより、ドライブプレート31の強度確保が可能である。ピン34は、中間部分にて爪部材17を揺動可能に支持する。
スナップリング35は、ワッシャ36を介してドライブプレート31の軸方向の移動を規制するリング状の部材である。スナップリング35は、シリンダブロック2における円筒部2aの外周に形成された円周溝部に嵌め込まれる。
ワッシャ36は、シリンダブロック2の円筒部2aの外周に配されたリング状の部材である。ワッシャ36は、シリンダブロック2における円筒部2aの円周溝部に嵌め込まれたスナップリング35により軸方向のフライホイール5側への移動が規制され、ドライブプレート31の軸方向のフライホイール5側への移動を規制する。
ヒステリシス部材37は、軸方向におけるキャリア40とカバープレート41との間に配置された環状の部材である。ヒステリシス部材37は、内周部分にてキャリア40とカバープレート41との間に配置されている。ヒステリシス部材37は、中間部分の両面に凸部37c、37dを有する。凸部37cは、ヒステリシス部材37のフライホイール5側に形成されており、キャリア40の外周端部をカバーする。これにより、ヒステリシス部材37の摺動面への異物混入を抑制できるため、耐異物性が向上する。また、凸部37cは、キャリア40の径方向の移動を規制する。凸部37dは、ヒステリシス部材37のシリンダブロック2側に形成されており、カバープレート41の外周端部をカバーする。これにより、ヒステリシス部材37の摺動面への異物混入を抑制できるため、耐異物性が向上する。また、凸部37dは、カバープレート41によって径方向の移動が規制される。これにより、カバープレート41の軸心とヒステリシス部材37の軸心とを同一にすることができる。ヒステリシス部材37は、キャリア40がヒステリシス部材37側に移動又は押付けることで、キャリア40とカバープレート41に挟み込まれ、キャリア40とカバープレート41によって周方向の移動に対して摩擦ブレーキがかけられる。ヒステリシス部材37は、外周部分のフライホイール5側の面の所定の部分において突出した突起部37aが形成されている。突起部37aは、ドライブプレート31の穴部31aを挿通して配置されている。突起部37aは、周方向の端面のうち爪部材17のテーパ面17aと対向する端面にテーパ面37bが形成されている。テーパ面37bは、外周向きに傾斜した面である。テーパ面37bに向かって爪部材17のテーパ面17aが近づくようにヒステリシス部材37と爪部材17とが相対回転したときに、テーパ面37bが爪部材17のテーパ面17a(内周側の部分)を押し付けて爪部材17の先端部を外周側に跳ね上げる。
リングギヤ38は、ドライブプレート31とともに回転する内歯のリング状のギヤである。リングギヤ38は、外周面にてドライブプレート31の中間部分の筒状部の内周面に固定されている。リングギヤ38は、内周面にはす歯ギヤが形成されており、はす歯のプラネタリギヤ39と噛合っている。
プラネタリギヤ39は、リングギヤ38と噛み合うギヤである。プラネタリギヤ39は、キャリア40に固定されたピン40bに回転可能に支持されている。プラネタリギヤ39は、外周面にはす歯ギヤが形成されており、はす歯のリングギヤ38と噛合っている。プラネタリギヤ39は、皿ばね39aによってキャリア40側に押付けられている。皿ばね39aは、環状のばねであり、内周端部がピン40bに形成された鍔部に支持され、外周端部がプラネタリギヤ39と当接している。皿ばね39aは、キャリア40とプラネタリギヤ39との間の摩擦力(スラスト荷重)を高めるためのものであり、プラネタリギヤ39に回転抵抗を与える。これにより、プラネタリギヤ39とはす歯で噛み合うリングギヤ38の回転力がプラネタリギヤ39及びキャリア40をカバープレート41側に移動又は押付けしやすくなり、ヒステリシス部材37がキャリア40とカバープレート41に挟み込まれてヒステリシス部材37のスラスト荷重が高まることでヒステリシス部材37が確実に動きにくくなり、回転してくる爪部材17がヒステリシス部材37の突起部37aに当たることで爪部材17を確実に跳ね上げることができる。プラネタリギヤ39の回転軸は、キャリア40を介してシリンダブロック2又はカバープレート41に周方向移動不能に保持される。プラネタリギヤ39は、リングギヤ38の回転によって回転すると、キャリア40を介してヒステリシス部材37をカバープレート41に向けて押付けるように作用する。プラネタリギヤ39は、円周方向にてボルト42とラップする。これにより、軸長が長くなるのを最低限に抑えた搭載が可能となる。
キャリア40は、ピン40bを介してプラネタリギヤ39を回転可能に支持する部材である。ピン40bは、キャリア40に固定されており、プラネタリギヤ39を回転可能に支持し、皿ばね39aの内周端部を支持する鍔部を有する。キャリア40は、内周部分において、シリンダブロック2又はカバープレート41の回り止め部2d、41aと相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する空所の回り止め部40aを有する。キャリア40は、リングギヤ38とプラネタリギヤ39との間で回転することによりはす歯の傾斜によってプラネタリギヤ39の軸方向のシリンダブロック2側に移動又は押付けによって軸方向のシリンダブロック2側に移動又は押付ける。キャリア40は、ヒステリシス部材37をカバープレート41側に移動又は押付けることで、ヒステリシス部材37がキャリア40及びカバープレート41と圧接し、ヒステリシス部材37の周方向の移動に対して摩擦ブレーキをかける。キャリア40は、ヒステリシス部材37に圧接していないときには、ヒステリシス部材37の周方向の移動を許容する。
カバープレート41は、シリンダブロック2に固定された環状のプレートである。カバープレート41は、内周端部から内周側に延在した回り止め部41aを有する。回り止め部41aは、シリンダブロック2の回り止め部2dのフライホイール5側の面にボルトによって取付固定されている。カバープレート41は、中間部分に段差部を有し、当該段差部の外周側の環状部分にて、キャリア40がヒステリシス部材37側に移動又は押付けしたときに、キャリア40で押付けられたヒステリシス部材37に圧接し、ヒステリシス部材37の周方向の移動に対して摩擦ブレーキをかける。カバープレート41の外周端面は、ヒステリシス部材37の凸部37dと当接することによりヒステリシス部材37の径方向の移動を規制する。
ボルト42は、カバープレート41の回り止め部41aをシリンダブロック2の回り止め部2dのフライホイール5側の面に取付固定するための部材である。ボルト42は、プラネタリギヤ39の回転軸の延在方向にてプラネタリギヤ39とラップする。すなわち、キャリア40はボルト42を用いてシリンダブロック2寄りに設けられることになる。このため、シリンダブロック2とフライホイール5との間の距離が短くなり、軸長が長くなるのを最低限に抑えた搭載が可能となる。
ブッシュ43は、ドライブプレート31をシリンダブロック2の円筒部2aに相対回転可能に支持するためのすべり軸受けである。
実施例12によれば、実施例3と同様な効果を奏する。
本発明の実施例13に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図27は、本発明の実施例13に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図29のX−X´間の径方向の部分断面図である。図28は、本発明の実施例13に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図29のY−Y´間の径方向の部分断面図である。図29は、本発明の実施例13に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。なお、図29は、図27のドライブプレート14におけるディスク部分のフライホイール5側の面を基準にフライホイール5側の方向を見たときの図である(ただし、ヒステリシス部材46の外周のディスク部分は省略)。
実施例13は、実施例3の変形例であり、爪部材(図9の17)の先端部を外周側に跳ね上げるのではなく、爪部材45の先端部を内周側に跳ね上げてラック部47aと引っ掛かるようにしたものである。爪部材45、ヒステリシス部材46、ドリブンプレート47及びカバープレート24以外の構成及び動作は、実施例3と同様である。
爪部材45は、ドリブンプレート47におけるラック部47aの引掛面47cに掛合可能な爪状の部材であり、ラチェット機構の構成部材である。爪部材45は、末端部がドライブプレート14に固定されたピン16に揺動可能に取り付けられており、先端部の周方向の面にテーパ面45aを有する。テーパ面45aは、外周向きに傾斜した面である。爪部材45は、バネ18によって爪部材45の先端部が外周側に回動するように付勢されている。爪部材45は、先端部が内周側に跳ね上がりラック部47aの引掛面47cに引っ掛かっているときに、爪部材45の外周側の面がラック部47aの溝部47b(引掛面47c及びガイド面47dを除く)と当接しないように、ドライブプレート14に設けられたストッパ部14fに係止されるストッパ部45bを有する。
爪部材45の先端部がヒステリシス部材46における突起部46aのテーパ面46bに近づくように爪部材45とヒステリシス部材46とが相対回転したときに、爪部材45のテーパ面45a(外周側の部分)がヒステリシス部材46のテーパ面46bによって押付けられることで、爪部材45の先端部が内周側に跳ね上がる。爪部材45の先端部が内周側に跳ね上げられると、爪部材45の先端部がドリブンプレート47におけるラック部47aの溝部47b内に入る。爪部材45の先端部がドリブンプレート47の溝部47b内に入った状態で、爪部材45の先端部がドリブンプレート47におけるラック部47aの引掛面47cに近づくように爪部材45とドリブンプレート47とが相対回転したときに、爪部材45の先端部がドリブンプレート47の引掛面47cに引っ掛かる。爪部材45の先端部がドリブンプレート47の引掛面47cに引っ掛かると、爪部材45とドリブンプレート47とが相対回転しなくなり、リングギヤ13の回転動力がドライブプレート14、ピン16、爪部材45、ドリブンプレート47、及びボルト4を介してクランクシャフト3に伝達される。
爪部材45の先端部がドリブンプレート47の溝部47b内に入っている状態において、爪部材45の先端部がドリブンプレート47の引掛面47cから離れるように爪部材45とドリブンプレート47とが相対回転したときに、爪部材45の外周側の面がドリブンプレート47におけるラック部47aのガイド面47dによって押し付けられることで、爪部材45の先端部が外周側に跳ね下げられる。爪部材45の先端部が外周側に跳ね下げられると、爪部材45のテーパ面45a(外周側の部分)がヒステリシス部材46のテーパ面46bを外周側に押し付け、爪部材45の先端部がヒステリシス部材46のテーパ面46bから離れるようにヒステリシス部材46と爪部材45とが相対回転し、バネ18の付勢力によって爪部材45の先端部が外周側に回動することで最終的には爪部材45の先端部がドリブンプレート47のラック部47aから完全に離れる。
ヒステリシス部材46は、軸方向におけるキャリア22とカバープレート24との間に配置された環状の部材である。ヒステリシス部材46は、キャリア22がヒステリシス部材46側に移動又は押付けることで、キャリア22とカバープレート24に挟み込まれ、キャリア22とカバープレート24によって周方向の移動に対して摩擦ブレーキがかけられる。ヒステリシス部材46は、キャリア22及びプラネタリギヤ20よりも外周側にてラック部47a及びピン16を迂回するように外周側に延在しており、外周部分におけるピン16から円周方向にずれた位置において軸方向のフライホイール5側に突出した突起部46aが形成されている。突起部46aは、周方向の端面のうち爪部材45のテーパ面45aと対向する端面にテーパ面46bが形成されている。テーパ面46bは、内周向きに傾斜した面である。テーパ面46bに向かって爪部材45のテーパ面45aが近づくようにヒステリシス部材46と爪部材45とが相対回転したときに、テーパ面46bが爪部材45のテーパ面45a(外周側の部分)を押し付けて爪部材45の先端部を内周側に跳ね上げる。
ドリブンプレート47は、ピン16及び爪部材45を介してドライブプレート14によって回転駆動可能な環状のプレートである。ドリブンプレート47は、フライホイール5とともにクランクシャフト3にボルト4によって固定されており、クランクシャフト3と一体的に回転する。ドリブンプレート47は、ピン16よりも内周側まで延在しており、外周端部にてドライブプレート14側に延在したラック部47aを有する。ラック部47aには、外周側の面において凹んだ溝部47bが形成されており、溝部47bの周方向の面の一方には爪部材45の先端部と掛合可能な引掛面47cを有し、溝部47bの周方向の面の他方には爪部材45の先端部を外周側に跳ね下げるように爪部材45をガイドするガイド面47dを有する。引掛面47cは、ドライブプレート14の回転速度がドリブンプレート47の回転速度よりも高い又は同じときに、跳ね上がった爪部材45の先端部と引っ掛かる。ガイド面47dは、ドライブプレート14の回転速度がドリブンプレート47の回転速度よりも低いときに爪部材45の先端部を外周側に跳ね下げる。
カバープレート24は、シリンダブロック2における円筒部2aに相対回転不能に係合した環状のプレートである。カバープレート24は、内周端部において、シリンダブロック2における円筒部2aの回り止め部2bと相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する回り止め部24aを有する。カバープレート24は、内周寄りの中間部分に段差部を有し、当該段差部の外周面にキャリア22の回り止め部22aと相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する回り止め部24bを有する。カバープレート24は、キャリア22がヒステリシス部材23側に移動又は押付けしたときに、キャリア22で押付けられたヒステリシス部材46に圧接し、ヒステリシス部材46の周方向の移動に対して摩擦ブレーキをかける。なお、カバープレート24の外周部分は、ラック部47aよりも内周側まで延在している。
実施例13によれば、実施例3と同様な効果を奏するとともに、爪部材45のピン16を外周側に配置できるので、ピン16にかかる荷重を低減させることができる。その結果、ピン16の径を小さくでき、コンパクト化が可能である。
本発明の実施例14に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図30は、本発明の実施例14に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図32のX−X´間の径方向の部分断面図である。図31は、本発明の実施例14に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図32のY−Y´間の外周側から見たときの部分断面図である。図32は、本発明の実施例14に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。なお、図32は、図30のドライブプレート14におけるディスク部分のフライホイール5側の面を基準にフライホイール5側の方向を見たときの図である(ただし、ヒステリシス部材51の外周のディスク部分は省略)。
実施例14は、実施例3の変形例であり、爪部材(図9の17)の先端部を外周側に跳ね上げるのではなく、爪部材50の先端部を軸方向のフライホイール5側に跳ね上げてラック部52aと引っ掛かるようにしたものである。爪部材50、ヒステリシス部材51、ドリブンプレート52、ドライブプレート14、及びカバープレート24以外の構成及び動作は、実施例3と同様である。
爪部材50は、ドリブンプレート52におけるラック部52aの引掛面52cに掛合可能な爪状の部材であり、ラチェット機構の構成部材である。爪部材50は、末端部がドライブプレート14に固定されたピン16に揺動可能に取り付けられており、先端部の周方向の面にテーパ面50aを有する。テーパ面50aは、軸方向のシリンダブロック2側の向きに傾斜した面である。爪部材50は、バネ(図示せず)によって爪部材50の先端部が軸方向のシリンダブロック2側に回動するように付勢されている。爪部材50は、先端部が軸方向のフライホイール5側に跳ね上がりラック部52aの引掛面52cに引っ掛かっているときに、爪部材50の軸方向のフライホイール5側の面がラック部52aの溝部52b(引掛面52c及びガイド面52dを除く)と当接しないように、ドライブプレート14に係止されるストッパ部50bを有する。
爪部材50の先端部がヒステリシス部材51における突起部51aのテーパ面51bに近づくように爪部材50とヒステリシス部材51とが相対回転したときに、爪部材50のテーパ面50a(外周側の部分)がヒステリシス部材51のテーパ面51bによって押付けられることで、爪部材50の先端部が軸方向のフライホイール5側に跳ね上がる。爪部材50の先端部が軸方向のフライホイール5側に跳ね上げられると、爪部材50の先端部がドリブンプレート52におけるラック部52aの溝部52b内に入る。爪部材50の先端部がドリブンプレート52の溝部52b内に入った状態で、爪部材50の先端部がドリブンプレート52におけるラック部52aの引掛面52cに近づくように爪部材50とドリブンプレート52とが相対回転したときに、爪部材50の先端部がドリブンプレート52の引掛面52cに引っ掛かる。爪部材50の先端部がドリブンプレート52の引掛面52cに引っ掛かると、爪部材50とドリブンプレート52とが相対回転しなくなり、リングギヤ13の回転動力がドライブプレート14、ピン16、爪部材50、ドリブンプレート52、及びボルト4を介してクランクシャフト3に伝達される。
爪部材50の先端部がドリブンプレート52の溝部52b内に入っている状態において、爪部材50の先端部がドリブンプレート52の引掛面52cから離れるように爪部材50とドリブンプレート52とが相対回転したときに、爪部材50の外周側の面がドリブンプレート52におけるラック部52aのガイド面52dによって押し付けられることで、爪部材50の先端部が軸方向のシリンダブロック2側に跳ね下げられる。爪部材50の先端部が軸方向のシリンダブロック2側に跳ね下げられると、爪部材50のテーパ面50a(外周側の部分)がヒステリシス部材51のテーパ面51bを軸方向のシリンダブロック2側に押し付け、爪部材50の先端部がヒステリシス部材51のテーパ面51bから離れるようにヒステリシス部材51と爪部材50とが相対回転し、バネ(図示せず)の付勢力によって爪部材50の先端部が軸方向のシリンダブロック2側に回動することで最終的には爪部材50の先端部がドリブンプレート52のラック部52aから完全に離れる。
ヒステリシス部材51は、軸方向におけるキャリア22とカバープレート24との間に配置された環状の部材である。ヒステリシス部材51は、キャリア22がヒステリシス部材51側に移動又は押付けることで、キャリア22とカバープレート24に挟み込まれ、キャリア22とカバープレート24によって周方向の移動に対して摩擦ブレーキがかけられる。ヒステリシス部材51は、キャリア22及びプラネタリギヤ20よりも外周側に延在しており、外周部分におけるピン16から円周方向にずれた位置において軸方向のフライホイール5側に突出した突起部51aが形成されている。突起部51aは、周方向の端面のうち爪部材50のテーパ面50aと対向する端面にテーパ面51bが形成されている。テーパ面51bは、軸方向のフライホイール5側の向きに傾斜した面である。テーパ面51bに向かって爪部材50のテーパ面50aが近づくようにヒステリシス部材51と爪部材50とが相対回転したときに、テーパ面51bが爪部材50のテーパ面50a(外周側の部分)を押し付けて爪部材50の先端部を軸方向のフライホイール5側に跳ね上げる。
ドリブンプレート52は、ピン16及び爪部材50を介してドライブプレート14によって回転駆動可能な環状のプレートである。ドリブンプレート52は、フライホイール5とともにクランクシャフト3にボルト4によって固定されており、クランクシャフト3と一体的に回転する。ドリブンプレート52は、爪部材50と同程度の外周の位置まで延在しており、外周部分にてラック部52aを有する。ラック部52aには、軸方向のフライホイール5側に凹んだ溝部52bが形成されており、溝部52bの周方向の面の一方には爪部材50の先端部と掛合可能な引掛面52cを有し、溝部52bの周方向の面の他方には爪部材50の先端部を軸方向のシリンダブロック2側に跳ね下げるように爪部材50をガイドするガイド面52dを有する。引掛面52cは、ドライブプレート14の回転速度がドリブンプレート52の回転速度よりも高い又は同じときに、跳ね上がった爪部材50の先端部と引っ掛かる。ガイド面52dは、ドライブプレート14の回転速度がドリブンプレート52の回転速度よりも低いときに爪部材50の先端部を軸方向のシリンダブロック2側に跳ね下げる。
ドライブプレート14は、実施例1のドライブプレート(図1の14)と同様な構成であるが、中間部分において、ピン16の両端を支持する支持部14c、14dを有する。支持部14c、14dは、ピン16を介して爪部材50を揺動可能に支持する。ドライブプレート14は、爪部材50のテーパ面50a側に延在した部分が軸方向のフライホイール5側に回動したときに爪部材50の軸方向のフライホイール5側の面がラック部52aの溝部52bと当接しないようにストッパ部50bを係止する。
カバープレート24は、シリンダブロック2における円筒部2aに相対回転不能に係合した環状のプレートである。カバープレート24は、内周端部において、シリンダブロック2における円筒部2aの回り止め部2bと相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する回り止め部24aを有する。カバープレート24は、内周寄りの中間部分に段差部を有し、当該段差部の外周面にキャリア22の回り止め部22aと相対回転不能かつ軸方向移動可能に係合する回り止め部24bを有する。カバープレート24は、キャリア22がヒステリシス部材23側に移動又は押付けしたときに、キャリア22で押付けられたヒステリシス部材51に圧接し、ヒステリシス部材51の周方向の移動に対して摩擦ブレーキをかける。なお、カバープレート24の外周部分は、ラック部52aよりも内周側まで延在している。
実施例14によれば、実施例3と同様な効果を奏するとともに、ドライブプレート14のみで爪部材50のピン16による両持ち化が可能であるため、コストを抑えてドライブプレート14の強度を確保することができる。
本発明の実施例15に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図33は、本発明の実施例15に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した径方向の部分断面図であり、(A)非掛合時の図、(B)掛合時の図である。
実施例15は、実施例3の変形例であり、引っ掛け機構の構成を変形したものである。
始動装置1は、エンジン始動時にドライブプレート56が回転することでドリブンプレート57の爪部57aがドライブプレート56のラック部56aに引っ掛かってドライブプレート56からドリブンプレート57に回転動力が伝達され、ドライブプレート56の回転が停止することで爪部57aとラック部56aとの引っ掛かりが解除されてドリブンプレート57が正回転及び逆回転のどちらに回転してもドライブプレート56とドリブンプレート57との間で回転動力の伝達が行われない引っ掛け機構を有する。引っ掛け機構では、ドライブプレート56が回転することでドライブプレート56自身が軸方向に移動又は押付ける力を発生して爪部57aがラック部56aに引っ掛かってドライブプレート56からドリブンプレート57に回転動力が伝達され、ドライブプレート56が停止することで爪部57aとラック部56aとの引っ掛かりが解除されてドリブンプレート57が正回転及び逆回転のどちらに回転してもドライブプレート56とドリブンプレート57との間で回転動力の伝達が行われないように作動する。引っ掛け機構において、実施例1のようなラチェット機構、跳ね上げ機構、及び跳ね下げ機構は有さない。始動装置1は、内燃機関と変速機の間に配置される。始動装置1は、主な構成部材として、シリンダブロック2と、クランクシャフト3と、ボルト4と、出力軸11と、ピニオンギヤ54と、リングギヤ55と、ドライブプレート56と、ドリブンプレート57と、スナップリング58と、皿ばね59と、シール部材27と、を有する。なお、クランクシャフト3、ボルト4、出力軸11、及びシール部材27については、実施例3と同様である。なお、図33では、ドリブンプレート57に爪部57aを設け、かつ、ドライブプレート56にラック部56aを設けているが、ドリブンプレート57にラック部を設け、かつ、ドライブプレート56に爪部を設けてもよく、ドリブンプレート57に爪部を設け、かつ、ドライブプレート56に爪部を設けてもよい。
シリンダブロック2は、エンジンの骨格となる構造体である。シリンダブロック2は、外部側の面におけるクランクシャフト3よりも外周の部位に、フライホイール5側に延在した円筒部2aを有する。円筒部2aの内周面は、クランクシャフト3と離間しており、シール部材27と当接している。円筒部2aの外周面は、ドライブプレート56を回転可能に支持する。円筒部2aの外周面には、ドライブプレート56よりもドリブンプレート57側の部位に円周溝部が形成されており、当該円周溝部にスナップリング58が嵌め込まれている。
ピニオンギヤ54は、リングギヤ55を駆動するドライブギヤである。ピニオンギヤ54は、リングギヤ55よりも歯数が少ないはすば歯車よりなり、リングギヤ55と常時噛み合っている。
リングギヤ55は、スタータモータ(図示せず)の出力軸11からの回転トルクが伝達されるドリブンギヤである。リングギヤ55は、ピニオンギヤ54よりも歯数が多いはすば歯車である。リングギヤ55は、外周面にてピニオンギヤ54と常時噛み合い、内周面にてドライブプレート56の外周部分に固定され、ドライブプレート56と一体に回転する。リングギヤ55は、ピニオンギヤ54の回転によって回転すると、はす歯の傾斜によってドリブンプレート57側に向けて移動又は押付けるように作用し、これに伴いドライブプレート56をドリブンプレート57側に移動又は押付ける。ピニオンギヤ54の回転によってリングギヤ55がドリブンプレート57側に押付ける力は、皿ばね59の付勢力より大きくなるように設定されており、はす歯の傾斜角度や、ドライブプレート56の慣性、出力軸11の回転数等を調整することにより設定できる。
ドライブプレート56は、引っ掛け機構を回転駆動するためのプレートである。ドライブプレート56は、外周端面にリングギヤ55が固定されており、リングギヤ55と一体に回転する。ドライブプレート56は、内周端面にてシリンダブロック2の円筒部2aに回転可能に支持されている。なお、ドライブプレート56は、シリンダブロック2の円筒部2aに回転可能に支持されるだけでなく、クランクシャフト3のように回転しても外周面が一定の位置にあるものに回転可能に支持されるような構成としてもよい。ドライブプレート56は、内周部分が軸方向においてシリンダブロック2の壁面と皿ばね59との間に配されており、皿ばね59によって軸方向のシリンダブロック2側に付勢されている。ドライブプレート56は、ピニオンギヤ54の回転によってリングギヤ55を介してドリブンプレート57側に移動又は押付けられる。ドライブプレート56は、ドリブンプレート57側の面で凹んだラック部56aを有する。ラック部56aは、ドリブンプレート57の爪部57aと引掛可能であり、ピニオンギヤ54の回転によってリングギヤ55を介してドライブプレート56がドリブンプレート57側に移動又は押付けられることでドリブンプレート57の爪部57aと引っ掛かる。
ドリブンプレート57は、ドライブプレート56によって回転駆動可能な環状のプレートである。ドリブンプレート57は、クランクシャフト3にボルト4によって固定されており、クランクシャフト3と一体的に回転する。ドリブンプレート57は、外周部分のシリンダブロック2側の面から突出した爪部57aを有する。爪部57aは、ドライブプレート56のラック部56aと引掛可能であり、ピニオンギヤ54の回転によってリングギヤ55を介してドライブプレート56がドリブンプレート57側に移動又は押付けられることでドライブプレート56のラック部56aと引っ掛かる。
スナップリング58は、皿ばね59を支持するリング状の部材である。スナップリング58は、シリンダブロック2における円筒部2aに形成された円周溝部に嵌め込まれる。
皿ばね59は、ドライブプレート56をシリンダブロック2側に付勢する環状のバネである。皿ばね59は、内周端部がスナップリング58に支持されており、外周端部がドライブプレート56と当接している。皿ばね59は、ピニオンギヤ54の回転数が小さくなりリングギヤ55を介してドライブプレート56がドリブンプレート57側への押付け力が小さくなることでドライブプレート56をドリブンプレート57から離れるように移動させ、爪部57aとラック部56aとの引っ掛かりを解除するように作用する。
実施例15によれば、少ない部品点数で常時噛み合い機構を実現することができる。
本発明の実施例16に係る内燃機関の始動装置について図面を用いて説明する。図34は、本発明の実施例16に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図36のX−X´間の径方向の部分断面図である。図35は、本発明の実施例16に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した図36のY−Y´間の外周側から見たときの部分断面図である。図36は、本発明の実施例16に係る内燃機関の始動装置の構成を模式的に示した軸方向から見た平面図である。図37は、本発明の実施例16に係る内燃機関の始動装置を含む車両の構成を模式的に示したブロック図である。なお、図36は、図34のドライブプレート14におけるディスク部分のフライホイール5側の面を基準にフライホイール5側の方向を見たときの図である。
実施例16は、実施例3の変形例であり、跳ね上げ機構、及び跳ね下げ機構を変形したものである。
始動装置1は、エンジン始動時にドライブプレート14が回転することで爪部材17がラック部26aに引っ掛かってドライブプレート14からドリブンプレート26に回転動力が伝達され、ドライブプレート14の回転が停止又は逆回転することで爪部材17とラック部26aとの引っ掛かりが解除されてドリブンプレート26が正回転及び逆回転のどちらに回転してもドライブプレート14とドリブンプレート26との間で回転動力の伝達が行われない引っ掛け機構を有する。引っ掛け機構では、クランクシャフト3が停止している状態でリングギヤ13が回転することにより、ドライブプレート14及びピン16を介してリングギヤ13と連動して回転する爪部材17を、クランクシャフト3と一体に回転するドリブンプレート26におけるラック部26aの引掛面26cに掛合させることでリングギヤ13とクランクシャフト3とを連動させ、クランクシャフト3が回転している状態でリングギヤ13が停止することにより爪部材17と引掛面26cとの掛合を解除させることでリングギヤ13とクランクシャフト3とを遮断するラチェット機構を有する。
始動装置1は、ラチェット機構において、エンジン始動時にリングギヤ13とシリンダブロック2との相対回転差を利用してセンタプレート61の突起部61aによって爪部材17の先端部を跳ね上げる「跳ね上げ機構」と、エンジン始動後はクランクシャフト3とリングギヤ13との相対回転差を利用してドリブンプレート26におけるラック部26aのガイド面26dによって爪部材17を跳ね下げる「跳ね下げ機構」と、を有する。跳ね上げ機構では、センタプレート61とともに回転するピン61c及び摺動材61dを介してセンタプレート61をシリンダブロック2に引き摺らせる機構を有する。始動装置1は、爪部材17が引掛面26cに掛合しているときに、リングギヤ13からピン16、爪部材17、ドリブンプレート26を介してクランクシャフト3への駆動力の伝達を許容し、爪部材17が引掛面26cに掛合していないときに、爪部材17と引掛面26cとが遮断され、リングギヤ13からクランクシャフト3への駆動力の伝達を行わない。始動装置1は、エンジン70と変速機72の間に配置され、エンジン70のクランクシャフト3と接続され、フライホイール(図34の5)がクラッチ71を介して変速機72と接続されている(図37参照)。始動装置1は、主な構成部品として、シリンダブロック2と、クランクシャフト3と、ボルト4と、フライホイール5と、出力軸11と、ピニオンギヤ12と、リングギヤ13と、ドライブプレート14と、ブッシュ15と、ピン16と、爪部材17と、バネ18と、センタプレート61と、スナップリング25と、ドリブンプレート26と、シール部材27と、を有する。なお、クランクシャフト3、ボルト4、フライホイール5、出力軸11、ピニオンギヤ12、リングギヤ13、ブッシュ15、ピン16、爪部材17、バネ18、ドリブンプレート26、及びシール部材27については、実施例3と同様である。また、始動装置1は、始動装置1の駆動源となるスタータモータ73と電子制御装置75と電気的に接続されている(図37参照)。
シリンダブロック2は、エンジンの骨格となる構造体である。シリンダブロック2は、外部側の面におけるクランクシャフト3よりも外周の部位に、フライホイール5側に延在した円筒部2aを有する。円筒部2aの内周面は、クランクシャフト3と離間しており、シール部材27と当接している。円筒部2aの外周面は、ブッシュ15を介してドライブプレート14を回転可能に支持する。円筒部2aの外周面には、ブッシュ15よりもフライホイール5側に円周溝部が形成されており、当該円周溝部にスナップリング25が嵌め込まれる。
ドライブプレート14は、ラチェット機構を回転駆動するためのプレートである。ドライブプレート14は、円筒状に形成された外周部分の外周面にリングギヤ13が固定されており、リングギヤ13と一体に回転する。ドライブプレート14は、中間部分において、軸方向に延在した複数のピン16の一端が固定され、ピン16を介して爪部材17を揺動可能に支持する。ドライブプレート14には、ピン16の外周に配されたバネ18の一端を固定又は支持する。ドライブプレート14は、円筒状に形成された内周部分の外周面にてセンタプレート61を回転可能に支持する。ドライブプレート14は、円筒状に形成された内周部分の内周面にてブッシュ15を介してシリンダブロック2の円筒部2aに回転可能に支持されている。なお、ドライブプレート14は、シリンダブロック2の円筒部2aに回転可能に支持されるだけでなく、クランクシャフト3、フライホイール5等のように回転しても外周面が一定の位置にあるものに回転可能に支持されるような構成としてもよい。ドライブプレート14は、円筒状に形成された内周部分が軸方向においてブッシュ15とスナップリング25との間に配されており、スナップリング25によって軸方向の移動が規制されている。ドライブプレート14は、センタプレート61のピン61c、及びスプリング62を挿通するための穴部14eを有する。穴部14eは、ピン61c及びスプリング62の円周方向の移動を所定の範囲で許容する。
センタプレート61は、軸方向におけるドライブプレート14とドリブンプレート26との間に配置された環状の部材である。センタプレート61は、ピン61c及び摺動材61dを介してシリンダブロック2の壁面に引き摺り可能になっている。ピン61cは、軸方向に伸縮自在なピンであり、一端がセンタプレート61の本体に固定されており、他端が摺動材61dに固定されている。ピン61cの外周には、スプリング62が配置されている。摺動材61dは、ピン61cの他端に固定されており、スプリング62によってシリンダブロック2側に付勢され、シリンダブロック2の壁面に摺動可能に圧接している。センタプレート61は、外周面の所定の部分において突出した突起部61aが形成されている。突起部61aは、周方向の端面のうち爪部材17のテーパ面17aと対向する端面にテーパ面61bが形成されている。テーパ面61bは、外周向きに傾斜した面である。テーパ面61bに向かって爪部材17のテーパ面17aが近づくようにセンタプレート61と爪部材17とが相対回転したときに、テーパ面61bが爪部材17のテーパ面17a(内周側の部分)を押し付けて爪部材17の先端部を外周側に跳ね上げる。センタプレート61は、ドライブプレート14が回転することによりピン61cがドライブプレート14の穴部14eの壁面に当接して円周方向に押されるが、ピン61cの先端に固定された摺動材61dがシリンダブロック2の壁面からの摺動抵抗を受けることで、穴部14eの壁面に押付けられる方向の反対方向に摩擦ブレーキがかけられる。
スプリング62は、センタプレート61の摺動材61dをシリンダブロック2の壁面に押付ける部材である。スプリング62は、センタプレート61のピン61cの外周に配置され、一端がセンタプレート61の本体に支持され、他端が摺動材61dをシリンダブロック2側に付勢する。スプリング62は、ピン61cとともに、ドライブプレート14の穴部14eに挿通されている。
スナップリング25は、ブッシュ15、ドライブプレート14、及びセンタプレート61の軸方向の移動を規制するリング状の部材である。スナップリング25は、シリンダブロック2における円筒部2aの円周溝部に嵌め込まれる。
スタータモータ73は、出力軸11を駆動する電動モータである。スタータモータ73は、電子制御装置75によって制御される。
電子制御装置75は、所定のプログラムに基づいてスタータモータ73を制御するコンピュータである。電子制御装置75は、イグニッションスイッチ(図示せず)の操作により始動するときにスタータモータ73を正回転に駆動する。電子制御装置75は、エンジン70のクランクシャフト3の回転数(エンジン回転数)を検出するエンジン回転センサ74と通信可能に接続されている。電子制御装置75は、スタータモータ73を正回転に駆動しているときに、エンジン回転センサ74からの信号に基づいてクランクシャフト3が所定の回転数に達したことを検出すると、スタータモータ73を逆回転させて爪部材17とラック部26aとの掛合を解除させ、その後、スタータモータ73を停止させる。
次に、本発明の実施例16に係る内燃機関の始動装置の動作について図面を用いて説明する。図38は、本発明の実施例16に係る内燃機関の始動装置の掛合解除の動作を説明するための図である。
エンジン始動前(エンジン停止時)では、爪部材17の先端部が外周側に跳ね上がっていない状態にある。この状態でスタータモータ73の出力軸11が回転すると、出力軸11と一体に回転するピニオンギヤ12が回転し、ピニオンギヤ12と常時噛合うリングギヤ13が回転し、リングギヤ13を固定するドライブプレート14が回転し、ドライブプレート14に揺動可能に支持された爪部材17のテーパ面17aがセンタプレート61のテーパ面61bに当たり、爪部材17の先端部が外周側に跳ね上がる。このとき、センタプレート61はピン61c及び摺動材61dを介してシリンダブロック2の壁面に引き摺り可能になっているので、爪部材17のテーパ面17aがセンタプレート61のテーパ面61bに当たったときに、センタプレート61の引き摺り抵抗によって爪部材17の先端部を外周側に跳ね上げることが可能である。
爪部材17の先端部が外周側に跳ね上がると、爪部材17の先端部がドリブンプレート26のラック部26aの内周側に形成された溝部26bに入り、ドライブプレート14の回転によって、ドライブプレート14に揺動可能に支持された爪部材17の先端部がドリブンプレート26におけるラック部26aの引掛面26cに当たり、爪部材17の先端部がドリブンプレート26の引掛面26cに引っ掛かる(図36参照)。爪部材17の先端部がドリブンプレート26の引掛面26cに引っ掛かると、リングギヤ13の回転動力がドライブプレート14、ピン16、爪部材17、ドリブンプレート26、及びボルト4を介してクランクシャフト3に伝達され、クランクシャフト3の回転をきっかけにエンジンが始動する。
エンジンを始動し、エンジン回転センサ74からの信号に基づいてクランクシャフト3が所定の回転数に達すると、スタータモータ73を逆回転させることで、爪部材17の先端部がドリブンプレート26の引掛面26cから離れて、爪部材17の外周側の面がドリブンプレート26におけるラック部26aのガイド面26dにぶつかり、爪部材17の先端部が内周側に跳ね下がろうとする。このとき、爪部材17のテーパ面17a(内周側の部分)がセンタプレート61のテーパ面61bを内周側に押し付け、センタプレート61のテーパ面61bが爪部材17の先端部から離れるようにセンタプレート61が回転し、最終的にはバネ18によって爪部材17の先端部が内周側に跳ね下げられて、爪部材17の先端部がドリブンプレート26のラック部26aから完全に離れる(図38参照)。センタプレート61のテーパ面61bが爪部材17の先端部から離れるようにセンタプレート61が回転する際、センタプレート61に摺動抵抗があるが、スタータモータ73が逆回転することで、センタプレート61のテーパ面61bが爪部材17の先端部から離れるようにセンタプレート61を強制的に回転させることができる。爪部材17の先端部がドリブンプレート26のラック部26aから完全に離れると、ドリブンプレート26が正回転及び逆回転のどちらに回転しても、ドリブンプレート26の回転動力が爪部材17、ピン16、ドライブプレート14、リングギヤ13、ピニオンギヤ12に伝達されなくなる。
実施例16によれば、ギヤスラスト荷重発生機構(サンギヤ、ピニオンギヤ)を廃止できるため、コストダウンが可能である。また、スラスト荷重のON/OFFが不要となるため、摺動面の摩擦係数μの管理が容易になり、耐異物性が向上する。
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施例ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。