JP5375171B2 - 方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5375171B2
JP5375171B2 JP2009038644A JP2009038644A JP5375171B2 JP 5375171 B2 JP5375171 B2 JP 5375171B2 JP 2009038644 A JP2009038644 A JP 2009038644A JP 2009038644 A JP2009038644 A JP 2009038644A JP 5375171 B2 JP5375171 B2 JP 5375171B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
decarburization
electrical steel
oriented electrical
grain
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009038644A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010196081A (ja
Inventor
山口  広
康之 早川
多津彦 平谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2009038644A priority Critical patent/JP5375171B2/ja
Publication of JP2010196081A publication Critical patent/JP2010196081A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5375171B2 publication Critical patent/JP5375171B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Description

本発明は、大型のモータや発電機の鉄心材料として用いられる方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法に関するものである。
電磁鋼板は、無方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板の2つに大別され、無方向性電磁鋼板は主として回転機等の鉄心材料に、方向性電磁鋼板は主として変圧器その他の電気機器の鉄心材料として使用され、いずれもエネルギーロスを少なくするため、低鉄損の材料が求められている。
方向性電磁鋼板の製造工程において、脱炭焼鈍処理は、一次再結晶焼鈍と同時に施されるのが一般的である。すなわち、冷間圧延後の組織の回復再結晶を、800〜900℃程度の範囲とし、さらに酸化性の雰囲気ガス中で行うことにより、鋼中に残留する炭素を除去している。
最終製品の鋼板中に炭素が残留していると、トランスなどの変圧器で使用されている間に炭化物が析出し、主要な磁気特性の一つである鉄損が増加するという問題が生じるためである。これは磁気時効としてよく知られた現象であり、そのため、方向性電磁鋼板の製造においては、最終製品の段階までに、炭素を30ppm以下に低減することが求められている。
一次再結晶焼鈍に引き続いて行われる仕上げ焼鈍においては、ゴス方位と呼ばれる圧延方向に(110)[001]方位を配向させる二次再結晶と、積層して使用される方向性電磁鋼板の層間抵抗を高めるための酸化物被膜の形成とが同時に行われる。後者の酸化物被膜は、焼鈍分離剤のMgOと一次再結晶焼鈍時に形成されるシリカを主体とした一次被膜とが反応して形成されるため、仕上げ焼鈍で形成される酸化物被膜の良否は、一次再結晶焼鈍で形成される一次被膜の品質に左右されることが知られている。
脱炭処理と一次被膜形成を両立するためには、一次再結晶焼鈍時の雰囲気ガスとしては水蒸気を含む水素を主体としたガスが有効であることが、古くは特許文献1に露点制御という形で記載されており、その後も、雰囲気制御に限ると、特許文献2には、水蒸気分圧と水素分圧との比率、すなわち雰囲気酸化性の指標である酸化度PH2O/PH2の範囲を焼鈍処理の前後半で別々に規定する技術が記載され、特許文献3には、昇温過程の雰囲気酸化性を、均熱過程のそれより低く規定する技術が記載されている。ここで酸化度PH2O/PH2とは、水蒸気(H2O)の分圧を水素(H2)の分圧で除した値であり、PH2O/PH2は大きいほど酸化性が高く、電磁鋼板の場合、およそ0.15に満たない値では、還元性として作用する雰囲気となることが一般に知られている。
上述した技術は、いずれも水蒸気を含む雰囲気、すなわち雰囲気ガスの露点をおおよそ零度以上に設定することで、脱炭反応や表面酸化反応を促進させる技術である。
一方、特許文献4には、脱炭処理を行わない場合であれば、焼鈍処理時の雰囲気ガスの露点を下げて酸化度PH2O/PH2を0.15未満とできる旨の記載があり、ここからも、脱炭処理を行う熱処理においては、水蒸気の必要性が推察される。
他方、電磁鋼板中に含まれる窒素については、前述したような時効変化は起きないものの、高温での熱処理後に窒素が含まれている場合、熱処理後の冷却時に窒化珪素等を析出して、鋼板割れ等の原因になるなどの製造上の問題を有している。
また、インヒビタとしてAlN等の窒化物を利用する場合、通常、窒化物は、非常に細かく析出しているため粒界に巨大に析出して割れの起点となるようなことはないが、二次再結晶時にインヒビション効果を発揮させた後は、インヒビタ成分は不要となる。さらに、磁気特性向上の点では、上記インヒビタを含め、鋼中の不純物をできるだけ除去することが要求される。そのため、これら窒化物は、純化処理により分解されることになるが、純化処理条件では窒素を完全に除去しきれず、前述したように窒化物として析出し、鋼板の割れや破断の原因となるおそれがあるため、脱窒には十分な注意が必要である。実製造では、最終製品の段階において、分析下限の5ppm未満となるまでの低減が求められている。
方向性電磁鋼板の製造方法を考えてみると、特許文献5に記載されているように、低鉄損化を目指して、絶縁被膜を意図的に形成させないプロセスや、二次再結晶の組織制御のために添加される炭素自身を最初から含まなかったり、従来の0.05質量%程度と比較して、非常に低い値に抑えたりするプロセスが提案されている。さらに、そもそもインヒビタを利用しないプロセスも特許文献6などに提案されている。
上記した新規技術開発によって方向性電磁鋼板を製造する場合、特許文献1〜3に記載したような、従来の露点を導入した水蒸気/水素系のガスによる脱炭処理は、必ずしも最適とは言えない状況になりつつある。
特開昭51−145422号公報 特開昭54−160514号公報 特開平6−336616号公報 特開平7−118749号公報 特開平5−33052号公報 特開2005−240098号公報 特開2001-32021号公報 特開2003-34821号公報 特開平6-65754号公報 特開平6-65755号公報 特開平6-299366号公報
上述した露点を導入する従来の脱炭処理では、必然的に酸化物被膜が形成されるが、これは仕上げ焼鈍以降のプロセスが現行と異なる場合には、かならずしも有利とはならない。
また、脱窒処理についても同様であり、例えば、仕上げ焼鈍の後半に水素雰囲気中でなされる、窒化物を主体としたインヒビタの分解処理も、インヒビタの変化とともに、最適な脱窒処理の条件は変化しつつある。
このように、従来の脱炭、脱窒処理を前述した新規技術開発に適用した場合には、必ずしも十分な脱炭、脱窒が望めないことから、前述した様々なプロセス、インヒビタの有無に対応した、新しい脱炭および脱窒処理方法の開発が望まれていた。
本発明は、上記の要望に有利に応えるもので、簡便で、脱炭、脱窒処理を同時に行い、さらには、様々なプロセスに対応できる脱炭および脱窒処理方法の提供を目的とする。
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、より効果的な脱炭および脱窒処理について種々の検討を重ねた。その結果、炭素や窒素に対する反応性の高いものとして塩化物に注目した。
この考えに基づき、発明者らは、塩化物を使用するとの前提に立って、種々の素材、反応条件等を検討し、脱炭および脱窒能力について調査を行った。
その結果、最も効率良くこれらの処理を行うためには、塩化物の存在のみならず、鋼板の表面酸化物や処理時の反応雰囲気が強く影響することを新規に見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)方向性電磁鋼板に対して脱炭および脱窒処理を施すに際し、単位面積当たりの酸素量が0.3g/m2未満の表面酸化物を有する鋼板の表面に、酸化度がPH2O/PH2<0.1で、かつ濃度:0.5vol%以上の四塩化チタンガスと、水素とを含有する非酸化性雰囲気ガスを作用させることにより、上記方向性電磁鋼板の炭素濃度および窒素濃度を低減させることを特徴とする方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法。
)前記脱炭および脱窒処理を、方向性電磁鋼板の製造工程において、最終仕上げ圧延後の脱炭・1次再結晶焼鈍工程後に適用することを特徴とする前記(1)に記載の方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法。
)前記脱炭および脱窒処理を、方向性電磁鋼板の製造工程において、最終仕上げ焼鈍中、または該最終仕上げ焼鈍後に実施することを特徴とする前記(1)に記載の方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法。
本発明によれば、方向性電磁鋼板の製造プロセスやインヒビタ成分の有無にかかわらず、効率の良い脱炭および脱窒を行うことができる。
塩化物を含む混合ガスによる処理前後の炭素量(a)、および窒素量(b)を処理前の表面酸素量との関係で示した図である。
以下、本発明を完成に至らしめた実験について説明する。
<実験>
質量%でSi:3.2%、C:0.02%、およびN:0.005%を含有し、板厚:3.0mmの方向性電磁鋼板に対し、アルミナを主体とした焼鈍分離剤を塗布し、表面酸化物の生成を抑制した仕上げ焼鈍を施した。
このとき、焼鈍分離剤の成分を調整することで、焼鈍後の鋼中に含まれる炭素および窒素、ならびに表面に形成される酸化物量を変化させた。得られた鋼板を水素、アルゴン、水蒸気、四塩化チタンを含む混合ガス雰囲気中、温度:1050℃、時間:10分間の条件で焼鈍し、鋼中の炭素および窒素量を分析した。
始めに、露点:-20℃、水素:20%、TiCl4:10vol%の混合雰囲気中で、上記のガス処理を行った、この時の処理前後における炭素量および窒素量の変化を、処理前の表面酸素量との関係で、図1(a)、(b)に示す。この時の雰囲気ガスの酸化度PH2O/PH2は、0.0052であった。図中、白丸は処理前の炭素量、黒丸は処理後の炭素量、白四角は処理前の窒素量、黒四角は処理後の窒素量をそれぞれ表す。
同図に示したように、処理前の表面に存在する酸化物量が脱炭、脱窒反応に影響を及ぼしていることが分かる。また、同図より、単位面積当たりの表面酸素量を0.3g/m2未満とすることで、残留炭素および窒素量を、目標の30ppm以下の炭素量、5ppm未満の窒素量まで低減できることが分かる。
そこで、本発明では、鋼板の単位面積当たりの表面酸素量を0.3g/m2未満に限定した。
以上の理由は、明確に解明されてはいないが、塩化物ガスと炭素または窒素との反応が鋼板の表面で起こることから、表面酸化物がその反応を阻害するためと推定される。
次に、雰囲気ガス組成の影響を評価するために、表面酸素量:0.1〜0.15g/m2の仕上げ焼鈍後の鋼板について、TiCl4濃度、H2濃度、露点(H2O)をそれぞれ変化させた時の処理後の炭素量および窒素量と雰囲気酸化度PH2O/PH2の関係について調べた結果を表1に示す。残部ガス成分としてはアルゴンを使用して希釈した。同表に示したように、TiCl4濃度が0.5%未満では十分な脱炭、脱窒処理が行えないことが分かる。この原因は、濃度が低すぎたためと考えている。
水素および水蒸気の分圧バランスに関しては、酸化度PH2O/PH2の値が0.1未満の条件で炭素:30ppm以下、窒素:5ppm未満を達成している。表中で窒素が5ppm未満とは分析下限以下まで低下していることを示している。
以上のことから、TiCl4濃度:0.5vol%以上、および酸化度PH2O/PH2の値が0.1未満とする必要があることが判明した。
Figure 0005375171
従来の一次再結晶と同時になされる脱炭処理においては、前述の特許文献2に記載されているように、およそ酸化度PH2O/PH2の最適範囲は0.15〜0.75であり、非脱炭処理とする場合には酸化度を0.15未満とすることが知られている。
したがって、本発明の技術思想は極めて新規で、極低酸化度での脱炭および脱窒処理はこれまでと異なる効果をもたらすことが期待される。
脱炭および脱窒処理に適用する雰囲気ガスとして使用する塩化物は、ガス状になっているものが望ましい。これは、反応処理が短時間で済むために有利である。また、本発明の反応では、鋼板中に存在する炭素や窒素を表面まで拡散し、炭化物や窒化物の形で安定的に固定するので、逆反応でふたたび分解して鋼板中に戻ることがないという利点も有している。
前述した塩化物ガスの好適素材としては、四塩化チタンや三塩化アルミ、四塩化珪素などが挙げられる。適切な焼鈍処理温度である800℃以上において、いずれもが反応性の高い気体となるため、特にガス種を選ばないが、実際の操業等を考慮した場合、室温では液体である四塩化チタンがバブリングによるガス濃度調整が容易なこともあり、とりわけ好適である。
ここに、塩化物ガスの混合割合は、前掲TiCl4の例でも示したとおり、少なくとも0.5vol%を必要とする。一方、上限については特に制限はないが、50vol%を超えると、キャリアガスの相対量が減るため、バブリングによる露点制御を正しく行うことが困難となるので、30vol%程度以下とするのが好ましい。
上述した塩化物は、純物質である必要はないが、露点を上昇させる反応基を持つ物質の混合は、本発明の趣旨から適当ではない。また、雰囲気ガスの濃度調整あるいは希釈のため不活性ガスのアルゴンを導入したり、反応性促進のため水素を導入することは有効である。ここに、水素ガスの濃度が、5vol%に満たないと水素ガスによるTiCl4の分解還元反応が遅くなるため、水素ガスの濃度は5vol%以上とすることが好ましく、実用上は10vol%以上が好適である。
また、本発明では、その他窒素や炭素を含むガスを混合することもできる。
窒素の混合は、脱炭処理だけを目的とする場合には何ら問題にならないが、脱窒を目的とする場合には、鋼中の窒素と雰囲気ガス中の窒素ガスが競合するため混合比率には注意が必要である。同様に炭素を含むガスを導入する場合には、脱炭反応を阻害しない程度に添加量を調整する必要がある。
次に、本発明を適用して好適な電磁鋼板について説明する。本発明を適用する電磁鋼板の成分組成については、特に制限はなく、従来公知のものいずれもが適合する。すなわち、従来どおり、インヒビタを用いる電磁鋼板であっても、インヒビタを用いない電磁鋼板であっても良い。また、副インヒビタ成分としてB、Bi、Sb、Mo、Te、Sn、P、Ge、As、Nb、Cr、Ti、Cu、Pb、ZnおよびInなどを含有していても良い。
表面性状としては、表面酸素量が0.3g/m2未満の状態にある一次再結晶後あるいは仕上げ焼鈍後の鋼板などが考えられるが、酸化物量の制御、すなわち表面酸素量を低減できなかった場合には、追加で何らかの表面酸化物除去処理を施すことを妨げない。この表面処理としては、サーマルエッチングや化学研磨、ハロゲン化物水溶液中での電解研磨等も有効であり、同時に得られる平滑な表面は粗度が小さく、方向性電磁鋼板の鉄損低減には有利であることが多い。
特に、特許文献7に記載のような、インヒビタ成分を使用せずに二次再結晶現象を発現させた方向性電磁鋼板は、最終仕上げ焼鈍に焼鈍分離剤を使用せずにフォルステライト被膜を有していないため、本発明を適用する鋼板として好適である。
また、特許文献8に示されたような、鋼中の炭素を活用して磁束密度を向上させた方向性電磁鋼板でも、最終仕上げ焼鈍時に本発明を適用することで、鋼中に残留する炭素や窒素を効果的に除去することができる。
次に、電磁鋼板の製造工程をふまえて、本発明の脱炭、脱窒方法の適用時期について述べる。
本発明に適用される鋼板の製造工程については、従来公知の工程を使用できる。
例えば、所望の成分組成に調整した鋼板を、通常スラブ加熱に供された後に、熱間圧延により熱延コイルとするが、このスラブの加熱温度については1300℃以上の高温度とする場合と1250℃以下の低温度とする場合のいずれでも良い。また近年、スラブ加熱を行わず連続鋳造後、直接熱間圧延を行う方法が開発されているが、この方法で熱間圧延される場合にも適用できる。
熱間圧延後の鋼板は、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、1回の冷延もしくは中間焼鈍を挟む複数回の圧延によって最終冷間圧延板とする。これらの圧延については、動的時効を狙ったいわゆる温間圧延や静的時効を狙ったパス間時効を施したものであっても良い。
最終冷延後の鋼板は、1次再結晶焼鈍を施される。脱炭反応が起こるような焼鈍雰囲気であっても構わない。本発明は、この1次再結晶焼鈍の後に適用することができる。この場合、表面酸素量が0.3g/m2未満となるように雰囲気制御を行う必要がある。仮に表面酸素量が0.3g/m2以上の場合には、その後に追加の表面酸化物除去処理を施した後、本発明を適用する。
その後、最終仕上げ焼鈍により、2次再結晶処理を施されて方向性電磁鋼板を得る。
最終仕上げ焼鈍を行う場合には、通常、1次再結晶焼鈍後に焼鈍分離剤を塗布し、これにより酸化物被膜を形成するが、この焼鈍分離剤の組成を調整して、鋼板表面上の酸化物被膜の生成を抑制することもできる。
本発明は、この最終仕上げ焼鈍中または最終仕上げ焼鈍後にも適用することができる。すなわち、最終仕上げ焼鈍において、焼鈍分離剤の組成を調整して、鋼板表面上の酸化物被膜の生成を、表面酸素量で0.3g/m2未満に抑制できる場合には、この最終仕上げ焼鈍の際に本発明を適用することができる。
一方、最終仕上げ焼鈍の際に鋼板表面に生成する酸化物被膜が表面酸素量で0.3g/m2以上となる場合には、この最終仕上げ焼鈍に、表面酸化物除去処理を施して表面酸素量を0.3g/m2未満とした上で、本発明を適用する必要がある。
さらに、インヒビタを用いない方向性電磁鋼板の場合、最終冷延後の一次再結晶焼鈍を800℃〜1000℃の範囲で行い、その後、焼鈍分離剤を用いずに仕上げ焼鈍を行うことで、フォルステライト被膜を形成させることなく二次再結晶組織を発達させることができる。この時の仕上げ焼鈍の雰囲気は、固溶窒素の粒界移動を抑制する効果を利用して二次再結晶させる上で、窒素を含有する必要がある。従って、この最終仕上げ焼鈍において、本発明を適用する場合には、窒素が不要になった仕上げ焼鈍の後段で行う必要がある。無論この仕上げ焼鈍後であっても良い。
上記したように、本発明を最終仕上げ焼鈍の際に適用した場合、鋼板の表面には、絶縁層としての酸化物層が不足している。
通常、方向性電磁鋼板は、積層して使用されるため、層間絶縁用の絶縁層(酸化物層)が必要である。追加で施される絶縁層としては、方向性電磁鋼板に使用される無機質層が利用できる。特に、張力付与効果を有するコーティングは、低鉄損化を達成するために表面を平滑化した方向性電磁鋼板との組合せが極めて有効である。張力付与型コーティングの種類としては、熱膨張係数を低下させるシリカを含むコーティングが有効であり、従来からフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に用いられているリン酸塩-コロイダルシリカ-クロム酸系のコーティング等が、その効果およびコスト、均一処理性などの点から好適である。コーティングの厚みとしては、張力付与効果や占積率、被膜密着性等の点から0.3μm以上10μm以下の程度の範囲が望ましい。
また、張力コーティングとして、これ以外にも特許文献9〜11などで提案されているホウ酸-アルミナ等の酸化物系被膜を適用することも可能である。
<実施例 1>
質量%でC:0.02%、Si:3.3%、Mn:0.06%、Al:0.003%、およびSn:0.02%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物の組成になる方向性電磁鋼スラブを、1200℃に加熱し、熱間圧延後、N2雰囲気中1000℃の熱延板焼鈍を行い、ついで、冷間圧延により最終板厚:0.30mmの冷間圧延板とした。その後、露点:-30℃のH2−N2混合雰囲気中、900℃で再結晶焼鈍を施した。その後、焼鈍分離剤を適用せず、N2−Ar混合雰囲気中にて仕上げ焼鈍を900℃で行った。
得られた鋼板に対し、TiCl4:20vol%、表2に示すH2濃度、残部Arガスからなる雰囲気ガス中にて1100℃で5分間の脱炭、脱窒処理を行った。
脱炭、脱窒処理前の表面酸化物量と、処理中のH2濃度、雰囲気ガスの露点、酸化度PH2O/PH2、および処理後の残留炭素、窒素量について調べた結果を、表2に併記する。
Figure 0005375171
同表に示したとおり、脱炭、脱窒処理前の表面酸化物の量が酸素換算で0.3g/m未満、かつ、焼鈍時の雰囲気ガスの酸化度PH2O/PH2が0.1未満である試料No.1、2の発明例はいずれも、十分な脱炭、脱窒反応が成されており、残留量は、本発明の目標値である炭素が30ppm以下、窒素が5ppm未満を満足していた。これに対し、表面酸化物の多かった試料No.4、5の比較例、さらには、雰囲気ガスの酸化度が高かった試料No.3、5、6の比較例はいずれも、残留炭素、窒素量ともに本発明の目標値を超えており、製品としては不適であった。
また、H2濃度:0 vol%の条件では、雰囲気ガスの酸化度PH2O/PH2は無限大となるが、実際の反応ではTiCl4の分解が促進されないためか、脱炭、脱窒反応ともに起こらず、製品としては不適であった。このことからも、H2が必要であることが分かる。
<実施例 2>
質量%でC:0.08%、Si:3.2%、Mn:0.07%、Al:0.02%、S:0.02%、およびBi:0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物の組成になる方向性電磁鋼スラブを、1420℃に加熱し、熱間圧延後、中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって最終板厚:0.23mmの冷間圧延板とし、磁区細分化処理のため5mm間隔のエッチング溝を形成した。引き続き行う一次再結晶焼鈍における処理雰囲気を変化させ、種々の炭素量を残留させた素材を作成した。MgOを主成分とした塩化アンチモンを含む焼鈍分離剤を塗布し、フォルステライト膜のない平滑な表面を有する最終仕上げ焼鈍板を得た。得られた鋼板表面に酸化物はほとんど存在しないが、一部の試料についてはNaCl水溶液により電解研磨処理を行い表面の酸化物を除去した。
この鋼板に対し、TiCl4:0.2〜20vol%、H2:15 vol%、残部Arガスからなる雰囲気ガス中にて、露点を変化させ、1150℃で3分間の脱炭、脱窒処理を行った。
脱炭、脱窒処理前の表面酸化物量と、処理中のTiCl4濃度、雰囲気ガスの露点、酸化度PH2O/PH2、焼鈍後の残留炭素、窒素量について調べた結果を、表3にまとめて示す。
Figure 0005375171
同表に示したとおり、試料No.7、8、11の結果を比較すると、焼鈍処理前の表面酸化物の量が0.9g/m2の試料No.11では、残留炭素、窒素量が本発明の目標値を超えており、逆に酸化物量が0.3g/m2未満であれば、表面の電解処理の有無によらず、残留炭素、窒素量は、本発明の目標値を満足していた。
また、TiCl4濃度が0.5 vol%未満であった試料No.9や、雰囲気ガスの酸化度PH2O/PH2が0.1以上であった試料No.10では、残留炭素、窒素量が本発明の目標値を超えていることが分かる。
本発明では、方向性電磁鋼板中の不純物元素である炭素および窒素を併せて低減することができる。従って、本発明に従い得られた方向性電磁鋼板は、発電用の大型モータに使用され、エネルギー効率を改善し、省エネルギーに寄与する。

Claims (3)

  1. 方向性電磁鋼板に対して脱炭および脱窒処理を施すに際し、単位面積当たりの酸素量が0.3g/m2未満の表面酸化物を有する鋼板の表面に、酸化度がPH2O/PH2<0.1で、かつ濃度:0.5vol%以上の四塩化チタンガスと、水素とを含有する非酸化性雰囲気ガスを作用させることにより、上記方向性電磁鋼板の炭素濃度および窒素濃度を低減させることを特徴とする方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法。
  2. 前記脱炭および脱窒処理を、方向性電磁鋼板の製造工程において、最終仕上げ圧延後の脱炭・1次再結晶焼鈍工程後に適用することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法。
  3. 前記脱炭および脱窒処理を、方向性電磁鋼板の製造工程において、最終仕上げ焼鈍中、または該最終仕上げ焼鈍後に実施することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法。
JP2009038644A 2009-02-20 2009-02-20 方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法 Active JP5375171B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009038644A JP5375171B2 (ja) 2009-02-20 2009-02-20 方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009038644A JP5375171B2 (ja) 2009-02-20 2009-02-20 方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010196081A JP2010196081A (ja) 2010-09-09
JP5375171B2 true JP5375171B2 (ja) 2013-12-25

Family

ID=42821099

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009038644A Active JP5375171B2 (ja) 2009-02-20 2009-02-20 方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5375171B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6011063B2 (ja) * 2011-06-27 2016-10-19 Jfeスチール株式会社 低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法
RU2761517C1 (ru) * 2018-07-13 2021-12-09 Ниппон Стил Корпорейшн Основной лист для листа анизотропной электротехнической стали, лист анизотропной кремнистой стали, который используется в качестве материала основного листа для листа анизотропной электротехнической стали, способ производства основного листа для листа анизотропной электротехнической стали и способ производства листа анизотропной электротехнической стали
KR102133909B1 (ko) * 2018-12-19 2020-07-14 주식회사 포스코 방향성 전기강판 및 그의 제조 방법

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4232408B2 (ja) * 2002-07-31 2009-03-04 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法
JP4259061B2 (ja) * 2002-07-31 2009-04-30 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法
JP4232407B2 (ja) * 2002-07-31 2009-03-04 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010196081A (ja) 2010-09-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1992708B1 (en) Process for producing grain-oriented magnetic steel sheet with excellent magnetic property
JP6327364B2 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5988027B2 (ja) 極薄方向性電磁鋼板の製造方法
WO2011105054A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6119959B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
CN113166872B (zh) 双取向电工钢板及其制造方法
JP2009046738A (ja) 永久磁石埋め込み型モータのロータ鉄心用鋼板及びその製造方法
JPH10298653A (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
JPH10152724A (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
JP5375171B2 (ja) 方向性電磁鋼板の脱炭および脱窒処理方法
CN109906284B (zh) 取向电工钢板及其制造方法
WO2020149341A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP3329641B2 (ja) 磁気特性及び鋼板端部形状に優れるAl含有方向性電磁鋼板の製造方法
JP3061491B2 (ja) 磁気特性の優れた厚い板厚のグラス被膜の少ない一方向性電磁鋼板の製造方法
JP4422385B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5428580B2 (ja) 高珪素鋼板の製造方法
JP2003034820A (ja) 下地被膜を有しない、打ち抜き加工性の良好な方向性電磁鋼板の製造方法
JP2560579B2 (ja) 高透磁率を有する高珪素鋼板の製造方法
JP2005068525A (ja) 鉄損が低くかつ磁束密度の高い方向性電磁鋼板の製造方法
JP4103393B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP4876799B2 (ja) 方向性電磁鋼板
JP5712626B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP4241125B2 (ja) フォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法
US20210388459A1 (en) Method for manufacturing grain-oriented electrical steel sheet
JP4306259B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20111025

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130308

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130319

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130517

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130827

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130909

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5375171

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250