JP4241125B2 - フォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として小型トランスや発電機の鉄心材料としての用途に好適な、フォルステライト(Mg2SiO4 )被膜を有しない、打ち抜き加工性の良好な方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、小型トランスでは、電磁鋼板を積層してコアとして使用している。このコアの代表的な形状としては、図1(a)または(b)に示すような、EI型コアが知られている。このEI型コアは、打ち抜き加工により製造されているが、打ち抜く際に発生するスクラップの量が少ない、同図(c)に示すような、効率的な加工方法が用いられている。
【0003】
現在、このEI型コア用の鉄心材料には、無方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板の両方が用いられている。まず、無方向性電磁鋼板を使用した場合は、方向性電磁鋼板を使用した場合に比較して磁気特性のレベルが低いために、コアの磁気特性は劣っている。しかしながら、無方向性電磁鋼板は方向性電鋼板に比較して製造プロセスが単純で価格を低く抑えられることから、経済的な観点から使用されている。
【0004】
一方、方向性電磁鋼板は、圧延方向の磁気特性は良好であるが、圧延直角方向の磁気特性は著しく劣っている。しかしながら、Elコア内の脚は4本が圧延方向、1本が圧延直角方向のために、磁束の流れは圧延方向の特性が支配的であり、EI型コアの鉄心材料として方向性電磁鋼板を使用した場合には、無方向性電磁鋼板よりも遥かに良好な特性が得られる。そのため、鉄損を重視する多くの場合には方向性電磁鋼板が用いられている。
【0005】
ここで、EI型コアは、鋼板を金型によって打抜き加工することによって製造されている。通常、方向性電磁鋼板の表面には、フォルステライト(Mg2SiO4)を主体とした下地被膜(グラス被膜)が施されているが、無方向性電磁鋼板に施されている有機樹脂系の被膜に比べて、フォルステライト被膜は著しく硬質であるため、打抜金型の磨耗が大きい。そのために、金型の再研磨または交換が必要となり、需要家における鉄心加工時の作業効率の低下とコストアップをもたらすことになる。また、スリット性、切断性も同様にフォルステライト被膜の存在により劣化する。
【0006】
方向性電磁鋼板の打抜加工性を改善する方法として、フォルステライト被膜を酸洗や研削などにて除去することが一般的であるが、コスト高になるのみならず、表面性状が悪化し磁気特性も劣化するという、大きな問題がある。
【0007】
一方、特許文献1および特許文献2には、仕上焼鈍時に適用するMgOを主体とする焼鈍分離剤中に薬剤を配合し、フォルステライト被膜の形成を抑制する技術が、また特許文献3には、Mnを含有する素材にシリカ、アルミナを主体とする焼鈍分離剤を適用する技術が、それぞれ提案されている。
【0008】
これらの方法では、コイルの層間における仕上焼鈍雰囲気の変動によりフォルステライトが部分的に形成されることが多く、フォルステライトの形成を完全に抑制した製品板を得ることは、極めて困難であった。
【0009】
これに対して、発明者らは、特許文献4において、インヒビタ成分を含有しない高純度素材を用いて、固溶窒化性の粒界移動抑制効果を利用して二次再結晶を発現させる技術を提案した。この技術では、高温でのインヒビタ成分の純化が不要となるため、焼鈍分離剤を用いずに仕上焼鈍することが可能となり、フォルステライト被膜のない鋼板を得ることができる。
【0010】
さらに、Cを低減した成分を用いて再結晶焼鈍における雰囲気を低酸化性とすることによって、酸化被膜の生成をさらに抑制する技術を、特許文献5に提案した。これらの技術により、フォルステライトを形成しない方向性電磁鋼板を安価に製造することができるようになった。そして、このような表面に硬質なフォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板は、EI型コア等の、打ち抜き加工性を重視する小型電気機器に有利に適合する。
【0011】
【特許文献1】
特公平6−49948号公報
【特許文献2】
特公平6−49949号公報
【特許文献3】
特開平8−134542号公報
【特許文献4】
特開2000-129356号公報
【特許文献5】
特開2001-32021号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発明者らが、上記の特許文献4及び5に記載の技術にて製造を重ねる内に、最終仕上げ焼鈍時に鋼板が著しく窒化されてしまうという、新たな問題が生じることがわかった。すなわち、上記の技術において、最終仕上げ焼鈍は窒化性雰囲気を用いて行うのが通例である。そのため、窒化により製品板粒界に窒化珪素(Si3N4)が析出し、それを起点に曲げ特性が悪化し、結果として最終仕上げ焼鈍後のコーティングラインで板破断を起こす等、通板性に問題が発生した。
【0013】
そこで、本発明は、フォルステライト被膜のない電磁鋼板における、特に曲げ特性の問題を解消した、方向性電磁鋼板を安定して製造する方法について提案することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を解決するために、最終仕上げ焼鈍時の均熱時雰囲気について鋭意検討した結果、窒化性雰囲気および非窒化性雰囲気の双方の雰囲気に滞留させ、両雰囲気での滞留時間を適正な時間とすることにより、最終仕上げ焼鈍後のコーティングライン等を安定して通板でき、かつ優れた磁気特性も得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0015】
すなわち、本発明の要旨構成は次の通りである。
(1)C:0.08mass%以下、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜3.0mass%を含み、Alを100 massppm以下およびNを50 massppm以下にそれぞれ低減し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を用いて製造したスラブを熱間圧延し、次いで1回若しくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施したのち、露点が40℃以下の雰囲気にて再結晶焼鈍を行い、その後最終仕上げ焼鈍を露点が40℃以下の雰囲気にて行って、フォルステライト(Mg2SiO4 )被膜を有しない、方向性電磁鋼板を製造するに際し、
該最終仕上げ焼鈍中に800℃以上および20時間以上で行う均熱時に、窒化性雰囲気に滞留させた後、非窒化性雰囲気に滞留させ、かつ、
窒化性雰囲気:非窒化性雰囲気=1:(0.25〜2)
の滞留時間比の下に滞留させることを特徴とするフォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法。
【0016】
(2)上記(1)において、鋼板が、さらに
Ni:0.01〜1.50mass%、
Sn:0.01〜0.50mass%、
Sb:0.005〜0.50mass%、
Cu:0.01〜0.50mass%、
P:0.005〜0.50mass%および
Cr:0.01〜1.50mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とするフォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を成功に至らしめた実験について説明する。
まず、最終仕上げ焼鈍時の雰囲気が磁気特性および窒化にどのような影響を与えるかを把握するために、以下の実験を行った。なお、massppmについては、単にppmと表示する。
C:0.0030mass%、Si:3.25mass%、およびMn:0.05mass%を含み、Al:50ppmおよびN:25ppm、その他成分を30ppm以下に低減し、残部Feおよび不可避的不純物とした溶鋼を用い、インヒビタ成分を含まないスラブを連続鋳造により製造した。
【0018】
次いで、スラブを1150℃で加熱した後、熱間圧延して2.4mm厚の熱延板とした。その後、1000℃の窒化性雰囲気中で20秒均熱後急冷し、冷間圧延により0.34mmの最終板厚にし、水素50vol%、窒化性50vol%および露点−30℃の雰囲気中にて、930℃で20秒の再結晶焼鈍を行った。
【0019】
その後、露点−20℃以下の窒化性雰囲気中で常温から900℃までを50℃/hの速度で昇温し、その温度で50時間均熱する条件で最終仕上げ焼鈍を行った。
この50時間の均熱中における雰囲気を、窒化性(窒素)雰囲気と非窒化性雰囲気(この実験ではAr雰囲気)とに変化させ、それぞれの滞留時間を変えた際の、製品の窒化量、曲げ特性および磁気特性に及ぼす影響を調査した。その結果を、図2〜4に示す。なお、曲げ特性は、JIS C2550に規定される繰り返し曲げ試験にて評価した。
【0020】
まず、図2に窒化量について示す通り、50時間の均熱中において、非窒化性雰囲気とした時間が10時間未満では、窒化が進み、図3に示すように、曲げ特性が劣化することがわかる。一方、非窒化性雰囲気とした時間が35時間より長い場合には、図4に示すように、正常に二次再結晶せずに磁性劣化することがわかる。
【0021】
以上の実験を基に、窒化性雰囲気と非窒化性雰囲気との両雰囲気に滞留させて行う均熱過程について、鋭意調査した結果、二次再結晶の発現に必要となる最終仕上焼鈍における800℃以上かつ20時間以上の均熱過程の下では、窒化性雰囲気と非窒化性雰囲気との滞留時間比率が重要になり、その滞留時間の比を、
窒化性雰囲気:非窒化性雰囲気=1:(0.25〜2)
の範囲とすることにより、磁気特性と曲げ特性を両立できることが明らかとなった。
以上の実験結果並びに知見に基づいて、本発明を導いたのである。
【0022】
次に、本発明の各構成要件について、その限定理由を述べる。
まず、この電磁鋼板を製造する際の、溶鋼成分の限定理由を以下に説明する。
C:0.08mass%以下
溶鋼におけるCが0.08mass%を超えると、鋼板における磁気時効の起こらないC含有量である50ppm以下の範囲に、低減することが困難になるため、0.08mass%以下に制限する。特に、素材段階で50ppm以下に低減しておくことが、再結晶焼鈍を乾燥雰囲気で行い脱炭を省略して平滑な製品表面を得る上で望ましい。または、C量が高い素材の場合、最終仕上焼鈍後、平坦化焼鈍時に低酸化性雰囲気で脱炭することも可能である。
【0023】
Si:2.0〜8.0mass%
Siは鋼の電気抵抗を増大し、鉄損を改善するのに有用な元素であるため、2.0mass%以上含有させる。しかし、含有量が8.0mass%を超えると、加工性が著しく低下して冷間圧延が困難となる。従って、Si量は2.0〜8.0mass%の範囲に限定した。
【0024】
Mn:0.005〜3.0mass%
Mnは、熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.005mass%未満であると効果がなく一方3.0mass%を超えると磁束密度が低下するため、0.005〜3.0mass%とする。
【0025】
sol. Al:100ppm以下、N:50ppm以下
sol. Alは100ppm以下に、Nは50ppm以下好ましくは30ppm以下に、それぞれ低減することが、良好に二次再結晶を発現させるために必要である。
その他、窒化物形成元素である、Ti、Nb、B、Ta、Vについても、それぞれ50ppm以下に低減することが鉄損の劣化を防ぎ、加工性を確保する上で有効である。
また、析出物形成元素であるSおよびSeについても、それぞれ50ppm以下、好ましくは30ppm以下に低減することが好ましい。
【0026】
以上、必須成分および抑制成分について説明したが、本発明ではその他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.01〜1.50mass%、Sn:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%およびCr:0.01〜1.50mass%の内から選んだ少なくとも1種。
【0027】
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させる有用な元素である。しかしながら、含有量が0.01mass%未満では磁気特性の向上量が小さく、一方1.50mass%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するため、Ni量は0.01〜1.50mass%とした。
【0028】
また、Sn、Sb、Cu、PおよびCrは、それぞれ鉄損の向上に有用な元素であるが、いずれも上記範囲の下限値に満たないと鉄損の向上効果が小さく、一方上限値を超えると二次再結晶の発達が阻害されるため、それぞれSn:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%およびCr:0.01〜1.5mass%の範囲で含有させることが好ましい。
【0029】
そして、製品での鋼板表面にはフォルステライト(Mg2SiO4)を主体とした下地被膜を有しないことが、良好な打ち抜き性を確保するために必要である。
【0030】
次に、本発明の製造工程について説明する。
上記した成分組成に調整した溶鋼を、転炉や電気炉などを用いる公知の方法で精錬し、必要があれば真空処理などを施したのち、通常の造塊法や連続鋳造法を用いてスラブとする。
次いで、スラブは通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後加熱せずに直ちに熱間圧延に供してもよい。その後、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍は800〜1000℃の範囲が好適である。ここで、インヒビター成分を含有しないので、スラブ加熱を1200℃以下の低温とすることは、コスト面で有効である。
【0031】
この熱延板焼鈍後に、必要に応じて中間焼鈍を挟む1回以上の冷間圧延を施す。この冷間圧延に際しては、圧延温度を100〜250℃に上昇させて行うことや、冷間圧延の途中で100〜250℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、ゴス組織を発達させる上で有効である。
【0032】
そして、最終冷間圧延後に再結晶焼鈍を行う。この再結晶焼鈍に際しては、露点が40℃以下の低酸化性雰囲気、好ましくは露点が0℃以下の非酸化性雰囲気を使用して、表面酸化物の生成を極力抑制することが、平滑な表面を保ちフォルステライトを形成させず、良好な磁気特性を得る上で重要である。また、この段階で必要があれば、鋼中Cを磁気時効の起こらない50ppm以下、好ましくは30ppm以下に低減する。なお、再結晶焼鈍は800〜1000℃の範囲で行うことが好ましい。なお、最終冷間圧延後あるいは再結晶焼鈍後に、浸珪法によってSi量を増加させる技術を併用してもよい。
【0033】
その後、焼鈍分離剤として、MgOを適用せずに最終仕上げ焼鈍を行うことがフォルステライトの形成を完全に排除し、かつ平滑な表面を保ち、良好な鉄損を得る上で必要となる。この最終仕上げ焼鈍により二次再結晶組織を発達させる。
この最終仕上げ焼鈍の雰囲気は、酸化物の生成を抑制するために、露点が40℃以下の低酸化性雰囲気、好ましくは露点が0℃以下の非酸化性雰囲気を用いることが重要である。その理由は、露点が40℃を超えると表面酸化物の生成量が多くなって鉄損が劣化するだけでなく、打ち抜き性も大きく劣化するからである。
【0034】
ここで、最終仕上げ焼鈍での雰囲気が特に重要である。まず、窒素やNH3を含有させた窒化性雰囲気とすることが、固溶窒素の粒界移動抑制効果で二次再結晶を発現させるために有効であるが、その一方で最終仕上げ焼鈍の雰囲気をすべて窒化性雰囲気で行うと曲げ特性が劣化し、その後のコーティングライン等で通板する際に破断等のトラブルが多くなることは、既に述べた通りである。
【0035】
すなわち、最終仕上げ焼鈍は、二次再結晶発現のために、800℃以上で20時間以上の均熱工程を含む必要がある。なぜなら、800℃未満では二次再結晶が発現せず、また均熱時間が20時間未満では発生した二次再結晶粒の成長が十分に生じないからである。
なお、最高到達温度は、インヒビタ成分を含有しないため、1000℃以下で十分である。
【0036】
さらに、この条件で行う均熱時において、窒化性雰囲気および非窒化性雰囲気の双方に滞留させ、かつ両雰囲気での滞留時間比を
窒化性雰囲気:非窒化性雰囲気=1:(0.25〜2)
の範囲に制御することが肝要であるのは、上述のとおりである。
ここで、窒化性雰囲気は窒素やNH3等の窒化能を有するガスを含有する雰囲気であり、非窒化性雰囲気としては、H2、Arまたは他の不活性ガスおよびこれらの混合ガスが挙げられる。
【0037】
なお、最終仕上げ焼鈍を高温で実施する場合には、焼鈍分離剤を適用することになるが、その際にはフォルステライトを形成するMgOは使用せず、シリカやアルミナ等を用いる。また、塗布を行う際にも、水分を持ち込まず酸化物生成を抑制する目的で静電塗布を行うことなどが有効である。
【0038】
最終仕上げ焼鈍後は平坦化焼鈍を施して形状を矯正するが、その際の焼鈍温度は700℃〜1050℃の温度域とすることが好ましい。その理由は、平坦化焼鈍温度が700℃に満たないと形状矯正が不十分になり、一方1050℃を超えると塑性変形を生じて磁気特性が劣化するからである。
【0039】
平坦化焼鈍後には、鋼板表面に絶縁コーティングを施す。この絶縁コーティングとしては、良好な打ち抜き性を確保するために、樹脂を含有する有機系コーティングとするのが望ましいが、溶接性を重視する場合には無機系コーティングを適用することもできる。
【0040】
なお、本発明による電磁鋼板は、El型コア用として最適であるが、必ずしもEl型コアに限定されるものではなく、打ち抜き加工を重視する方向性電磁鋼板の用途すべてに適用することができるのは言うまでもない。
さらに、素材としてインヒビタを使用しないことから、スラブの高温加熱や高温純化焼鈍を施す必要がないため、低コストにて大量生産が可能であるという、大きな利点がある。
【0041】
【実施例】
実施例1
C:0.003mass%、Si:3.3mass%、Mn:0.05mass%およびSb:0.04mass%を含み、Al:70ppmおよびN:20ppmに低減し、その他成分もすべて50ppm以下に低減し、残部がFeおよび不可避的不純物になる溶鋼を用いて、鋼スラブを連続鋳造で製造した。その後、1100℃×20分間の加熱後、熱間圧延により2.4mm厚の熱延板とした。そして、熱延板焼鈍を1000℃×30秒施し、冷間圧延で0.34mmに仕上げた。
【0042】
次いで、H2:25vol%、N2:75vol%および雰囲気露点:−30℃で930℃×均熱10秒の再結晶焼鈍を行ってから、焼鈍分離剤を適用することなく、窒化性雰囲気で900℃までを50℃/hで昇温し、この温度で50時間保持して均熱する、最終仕上げ焼鈍を行った。この最終仕上げ焼鈍の均熱時は、前半を窒化性雰囲気(N2)および後半を非窒化性雰囲気であるArでそれぞれ行い、その際、双方の雰囲気での滞留時間を、表1に示すように様々に変化させた。
【0043】
その後、900℃×30秒の平坦化焼鈍を施した後、重クロム酸アルミニウムを主成分とするコーティングを施して300℃で焼き付けて製品とした。
この平坦化焼鈍における板破断回数と磁気特性とを評価した結果について、表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例2
表2に示す成分を含有し、その他の成分は全て各50ppm以下に低減し、残部Feおよび不可避的不純物になる溶鋼を用いて、鋼スラブを連続鋳造で製造した。その後1050℃×20分間の加熱後、熱間圧延により2.4mm厚の熱延板とした。その後、熱延板焼鈍を1000℃×30秒で施し、冷間圧延で0.34mm厚に仕上げた。
【0046】
次いで、H2:25vol%、N2:75vol%および雰囲気露点:−30℃で、930℃×均熱10秒の再結晶焼鈍を行った。その後、焼鈍分離剤としてシリカを適用し、900℃までを窒化性雰囲気で50℃/hで昇温し、この温度で40時間保持する均熱時に、前半を窒化性雰囲気(N2)で、後半を非窒化性雰囲気であるH2にして、最終仕上げ焼鈍を行った。その際、双方の雰囲気での滞留時間を、窒化性雰囲気:非窒化性雰囲気=1:1とした。
【0047】
その後、900℃×30秒の平坦化焼鈍を施した後、重クロム酸アルミニウムを主成分とするコーティングを施して300℃で焼き付けて製品とした。
この平坦化焼鈍での板破断回数と磁性の結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、フォルステライト(Mg2SiO4 )被膜(グラス被膜)を有しないため打ち抜き加工性に優れ、安定した電磁特性と平坦化焼鈍時の優れた通板性とを併せ持つ、方向性電磁鋼板を安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 El型コアの形状を示す図である。
【図2】 最終仕上げ焼鈍時の非窒化性雰囲気の時間と窒化量との関係を示す図である。
【図3】 最終仕上げ焼鈍時の非窒化性雰囲気の時間と曲げ特性との関係を示す図である。
【図4】 最終仕上げ焼鈍時の非窒化性雰囲気の時間と磁気特性との関係を示す図である。
Claims (2)
- C:0.08mass%以下、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜3.0mass%を含み、Alを100 massppm以下およびNを50 massppm以下にそれぞれ低減し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を用いて製造したスラブを熱間圧延し、次いで1回若しくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施したのち、露点が40℃以下の雰囲気にて再結晶焼鈍を行い、その後最終仕上げ焼鈍を露点が40℃以下の雰囲気にて行って、フォルステライト(Mg2SiO4 )被膜を有しない、方向性電磁鋼板を製造するに際し、
該最終仕上げ焼鈍中に800℃以上および20時間以上で行う均熱時に、窒化性雰囲気に滞留させた後、非窒化性雰囲気に滞留させ、かつ、
窒化性雰囲気:非窒化性雰囲気=1:(0.25〜2)
の滞留時間比の下に滞留させることを特徴とするフォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項1において、鋼板が、さらに
Ni:0.01〜1.50mass%、
Sn:0.01〜0.50mass%、
Sb:0.005〜0.50mass%、
Cu:0.01〜0.50mass%、
P:0.005〜0.50mass%および
Cr:0.01〜1.50mass%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とするフォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法。
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