以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の冷蔵庫を示す正面外形図である。図2は、冷蔵庫の庫内の構成を表す図1におけるX−X線縦断面図である。図3は、冷蔵庫の庫内の構成を表す正面図であり、図4は、図2の要部拡大説明図であり、冷気ダクトや吹き出し口の配置などを示す図である。図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫1は、上方から、冷蔵室2、製氷室3及び上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6を有する。一例として、冷蔵室2及び野菜室6は、およそ3〜5℃の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、およそ−18℃の冷凍温度帯の貯蔵室である。
冷蔵室2は前方側に、左右に分割された観音開き(いわゆるフレンチ型)の冷蔵室扉2a、2bを備えている。製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを備えている。以下では、冷蔵室扉2a、2b、製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを単に扉2a、2b、3a、4a、5a、6aと称する。
また、冷蔵庫1は、扉2a、2b、3a、4a、5a、6aの開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(図示省略)と、各扉が開放していると判定された状態が所定時間、例えば、1分間以上継続された場合に、使用者に報知するアラーム(図示省略)と、冷蔵室2の温度設定や上段冷凍室4や下段冷凍室5の温度設定をする温度設定器(図示省略)等を備えている。
図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は、内部に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)が充填された断熱箱体10により隔てられている。また、冷蔵庫1の断熱箱体10は複数の真空断熱材25を実装している。
冷蔵庫1の庫内は、断熱仕切壁28により冷蔵室2と、上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが隔てられ、断熱仕切壁29により、下段冷凍室5と野菜室6とが隔てられている。
扉2a、2bの庫内側には複数の扉ポケット32が備えられている(図1、図2参照)。また、冷蔵室2は複数の棚36により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
図2に示すように、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの室の前方に備えられた扉3a、4a、5a、6aと一体に、収納容器3b、4b、5b、6bがそれぞれ設けられている。そして、扉4a、5a、6aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器4b、5b、6bが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、扉3aと一体に、図示しない収納容器(図2中(3b)で表示)が設けられ、扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器3bが引き出せるようになっている。
図2に示すように(適宜図3参照)、冷却器7は下段冷凍室5の略背部に備えられた冷却器収納室8内に設けられている。冷却器7の上方に庫内送風機9(送風機)が設けられている。冷却器7で熱交換して冷やされた空気(以下、冷却器7で熱交換した低温の空気を「冷気」という)は、庫内送風機9によって冷蔵室送風ダクト11、符号省略の野菜室送風ダクト(図3参照)、上段冷凍室送風ダクト12、下段冷凍室送風ダクト13及び図示しない製氷室送風ダクトを介して、冷蔵室2、野菜室6、上段冷凍室4、下段冷凍室5、製氷室3の各室へ送られる。各室への送風は冷蔵室ダンパ装置20と冷凍室ダンパ装置50に設けられた開閉体64(図5等参照)の開閉により制御される。
ちなみに、冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6への各送風ダクトは、図3に破線で示すように冷蔵庫1の各室の背面側に設けられている。
具体的には、冷蔵室ダンパ装置20の開閉体64(図5等参照)が開状態、冷凍室ダンパ装置50の開閉体64(図5等参照)が閉状態のときには、冷気は、冷蔵室送風ダクト11を経て多段に設けられた吹き出し口2cから冷蔵室2に送られる。そして、冷蔵室送風ダクト11から分岐した野菜室送風ダクト(図3参照)を経て、吹き出し口6cから野菜室6に送られる。
なお、冷蔵室2を冷却した冷気は、例えば、冷蔵室2の下面に設けられた戻り口2dから冷蔵室戻りダクト16を経て、冷却器収納室8の正面から見て、例えば、右側下部に戻る。また、野菜室6からの戻り空気は、戻り口6dを経て、冷却器収納室8の下部に戻る。
冷凍室ダンパ装置50の開閉体64(図5等参照)が開状態のとき、冷却器7で熱交換された冷気が庫内送風機9により図示省略の製氷室送風ダクトや上段冷凍室送風ダクト12を経て吹き出し口3c、4cからそれぞれ製氷室3、上段冷凍室4へ送風される。また、下段冷凍室送風ダクト13を経て吹き出し口5cから下段冷凍室5へ送風される。このため、上記冷凍室ダンパ装置50の開閉体64(図5等参照)は、後述する送風機カバー56部の上方に取り付けられ、先の、製氷室送風を容易にしている。
また、上段冷凍室4、下段冷凍室5、製氷室3を冷却した冷気は、下段冷凍室5の奥下方に設けられた冷凍室戻り口17を介して、冷却器収納室8に戻る。
図4に於いて、吹き出し口3c、4c、5cを形成するのが仕切54である。この仕切54は上段冷凍室4、製氷室3及び下段冷凍室5、冷却器収納室8を区画する。
仕切54の後方には、仕切54と間隔をおいてファンモータ固定部55が配設されており、ファンモータ固定部55には庫内送風機9が取り付けられている。このファンモータ固定部55は冷却器収納室8と仕切54間を区画している。
ファンモータ固定部55と仕切54の間には、庫内送風機9の前面を覆う送風機カバー56が設けられている。この送風機カバー56と仕切54との間には下段冷凍室送風ダクト13が形成されている。また、この送風機カバー56の上部は、先の冷凍室ダンパ装置50の吹き出し口56aを形成している。
また、この送風機カバー56は、庫内送風機9の前面を覆う整流部56bを備える。これによって、吹き出す冷気が引き起こす乱流を整流して、騒音等の発生を防止する。
また、送風機カバー56は仕切54との間に庫内送風機9より吹き出された冷気を吹き出し口3c、4c、5c等に導くべく、上段冷凍室送風ダクト12、及び下段冷凍室送風ダクト13を形成している。
さらに、この送風機カバー56は庫内送風機9が吹き出す冷気を冷蔵室ダンパ装置20側に送風する役目も果たしている。すなわち、送風機カバー56に設けられた冷凍室ダンパ装置50に入らない冷気は、冷蔵室ダクト15を経由して図4の如く冷蔵室ダンパ装置20側に行く。
そして、冷凍温度帯室(上段冷凍室4、下段冷凍室5及び製氷室3)と、冷蔵温度帯室(冷蔵室2及び野菜室6)との両方の室に冷却器7を経た冷気を送る時には、圧倒的に冷凍室ダンパ装置50側に冷気は送られるが、わずかの冷気はこの冷蔵室ダクト15側に行くように構成されている。
なお、上記の冷蔵室ダンパ装置20は、図4にも示す如く冷蔵室2の後部に取り付けられているものである。
一般的に、ダンパ装置は送風ダクト内に設けられることから、送風抵抗を低減するために、ダンパ装置の開閉体を開いた際の開口面積を拡大することが考えられる。特に、近年の冷蔵庫においては、内容積の大型化が求められており、開口面積を拡大しつつ貯蔵空間内の容積を減少しないような形態とすることが望ましい。
一方、送風ダクトの占有体積を低減し過ぎて冷気の送風抵抗が増大すると、必要な冷気を送風するための庫内送風機の消費電力が増大して、省エネルギー性能が低下する可能性がある。
このため、本実施形態では、冷蔵庫1の貯蔵空間内の容積を減少させず、かつ省エネルギー性能を向上させるために、冷蔵室送風ダクト11、上段冷凍室送風ダクト12、下段冷凍室送風ダクト13、冷蔵室ダクト15等を偏平な形状として冷蔵庫1の奥行き方向の寸法を小さくする構成としている。そのための冷蔵室ダンパ装置20および冷凍室ダンパ装置50の開閉体64の形状として、奥行き寸法が小さく、横幅を増加した、横長の細長い長方形状としている。
図4に示すように、冷蔵室ダンパ装置20は、開閉体64の閉止時に開閉体64が水平方向に配置されており、庫内前方側に設けられた支軸65(図5参照)を中心に開閉体64が庫内下方側に開くように構成されている。開閉体64の閉止時に冷却器7からの冷気の流れ方向に向かって開閉体64が下方側から水平位置に閉止されることで、開閉体64が送風抵抗を受けにくくなる。
また、冷凍室ダンパ装置50は、開閉体64の閉止時に開閉体64が上下方向に配置されており、庫内上方側に設けられた支軸65(図5参照)を中心に開閉体64が庫内後方側に開くように構成されている。開閉体64の閉止時に冷却器7からの冷気の流れ方向に向かって開閉体64が水平位置から下方側に閉止されることで、開閉体64が送風抵抗を受けにくくなる。
また、冷却器7の下方に除霜ヒータ22が設置されており、除霜ヒータ22の上方には、除霜水が除霜ヒータ22に滴下することを防止するために、上部カバー53が設けられている。
冷却器7及びその周辺の冷却器収納室8の壁に付着した霜の除霜(融解)によって生じた除霜水は、冷却器収納室8の下部に備えられた樋23に流入した後に、排水管27を介して後記する機械室19に配された蒸発皿21に達し、後記する凝縮器(図示省略)の熱により蒸発させられる。
また、冷却器7の正面から見て右上部には冷却器に取り付けられた冷却器温度センサ35、冷蔵室2には冷蔵室温度センサ33、下段冷凍室5には冷凍室温度センサ34がそれぞれ備えられており、それぞれ冷却器7の温度(以下、「冷却器温度」という)、冷蔵室2の温度(以下、「冷蔵室温度」という)、下段冷凍室5の温度(以下、冷凍室温度と称する)を検知できるようになっている。
さらに、冷蔵庫1は、庫外の温湿度環境(外気温度、外気湿度)を検知する図示しない外気温度センサと外気湿度センサを備えている。なお、野菜室6にも野菜室温度センサ33aを配置しても良い。
断熱箱体10の下部背面側には、機械室19が設けられており、機械室19には、圧縮機24及び図示しない凝縮器が収納されており、図示しない庫外送風機により凝縮器の熱が除熱される。ちなみに、本実施形態では、イソブタンを冷媒として用い、冷媒封入量は約80gと少量にしている。
冷蔵庫1の天井壁上面側にはCPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御基板31が配置されている。制御基板31は、前記した外気温度センサ、外気湿度センサ、冷却器温度センサ35、冷蔵室温度センサ33、冷凍室温度センサ34、扉2a、2b、3a、4a、5a、6aの各扉の開閉状態をそれぞれ検知する前記した扉センサ、冷蔵室2内壁に設けられた図示しない温度設定器、下段冷凍室5内壁に設けられた図示しない温度設定器等と接続する。そして、前記ROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機24のON/OFFや回転数の制御、冷蔵室ダンパ装置20及び冷凍室ダンパ装置50を個別に駆動する後述するそれぞれの駆動モータの制御、庫内送風機9のON/OFFや回転速度の制御、前記庫外送風機のON/OFFや回転速度等の制御、前記した扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御を行う。
次に、冷蔵庫1内における冷気の流れについて説明する。冷蔵室ダンパ装置20の開閉体64が閉状態で、且つ冷凍室ダンパ装置50の開閉体64が開状態で、冷凍温度帯室(製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5)のみの冷却が行われている場合、製氷室3に製氷室送風ダクトを介して送風された冷気及び上段冷凍室4に上段冷凍室送風ダクト12(図2参照)を介して送風された冷気は、下段冷凍室5に下降する。そして、下段冷凍室5に下段冷凍室送風ダクト13(図2参照)を介して送風された冷気とともに、図4中に矢印Cで示す冷凍室戻り空気のように流れる。すなわち、下段冷凍室5の背面下部に配された冷凍室戻り口17を経由して冷却器収納室8の下部前方から冷却器収納室8に流入し、冷却器配管7aに多数のフィンが取り付けられて構成された冷却器7と熱交換する。
ちなみに、冷凍室戻り口17の横幅寸法は、冷却器7の幅寸法とほぼ等しい横幅である。
一方、冷蔵室ダンパ装置20の開閉体64が開状態で、且つ冷凍室ダンパ装置50の開閉体64が閉状態で、冷蔵温度帯室(冷蔵室2及び野菜室6)のみの冷却が行われている場合、冷蔵室2からの戻り冷気は、図3中に矢印Dで示す冷蔵室戻り空気のように、冷蔵室戻りダクト16を介して、冷却器収納室8の側方下部から冷却器収納室8に流入し、冷却器7と熱交換する。
なお、野菜室6を冷却した冷気は、図4に示す如く、野菜室戻り口6d(図4参照)を介して、冷却器収納室8の下部に流入するが、風量は冷凍温度帯の製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5を循環する風量や冷蔵室2を循環する風量に比べて少ない。
上記にて説明したように、冷蔵庫1内の冷気の切り替えは、冷蔵室ダンパ装置20および冷凍室ダンパ装置50の開閉体64をそれぞれ適宜に開閉することにより行う構成である。次に、図5から図11を用いて、冷凍室ダンパ装置50を例としてダンパの構成と動作の一例について説明する。なお、冷凍室ダンパ装置50を冷蔵室ダンパ装置20と同様の構成とした場合、その動作は同様となる。
図5は、冷凍室ダンパ装置50の構成の一例を示す斜視図である。図6は、図5を矢印S方向から見た図である。図7は、図5におけるY−Y方向の断面図である。これらの図に示すように、冷凍室ダンパ装置50は、開口62が一面に設けられた横長のフレーム63と、フレーム63の一端(長方形状の短手部)にモータや減速歯車などの駆動系を内蔵した駆動手段60とを備え、駆動軸61から駆動力を出力する。フレーム63は、例えば樹脂製で一体成形されている。開閉体64は、フレーム63の開口62に対向して設けられており、開閉体64の幅方向(長手方向)の一端は駆動軸61に軸支されており、開閉体64の幅方向(長手方向)の他端はフレーム63の他端に設けられた支軸65のまわりに回転自在に設けられている。開閉体64は、樹脂製の板状の開閉板64aと、開閉板64aの一面に、例えば発泡ウレタンや発泡ポリエチレンといった柔軟な材料で成形された緩衝部材64bとを備えている。開閉体64は、駆動軸61と支軸65とを結んだ回動軸のまわりに揺動自在であり、かつ該回動軸は開閉体64の長手方向の一辺と沿うように略平行に、その一辺の近傍に配置されている。
フレーム63の開口62は、横長の略長方形状である。開口62の長手方向略中央部には、該開口62の一辺と他辺を上下方向に連結して、開口62の変形を抑制するための連結部材62aが設けられている。連結部材62aは、補強のための支柱としてはたらく。なお、連結部材62aは、開口62の変形を抑制するものであれば、フレーム63と一体であっても、別体であってもよい。
図5から図7は、開閉体64が閉止(閉鎖)された状態を示している。フレーム63には、開口62の内周に沿って開閉体64側に突出した接触部66(図7参照)が設けられており、開閉体64は、閉位置Aにおいては柔軟な緩衝部材64bが接触部66と接触する。これによって、開口62を通して冷気が流れることを抑制する。駆動手段60のモータを回転させると、駆動軸61を介して開閉体64が矢印方向(図5、図7参照)におよそ90°回動して開位置Bとなり、開位置Bと閉位置Aとの間を開閉体64が開閉動作することによって、開位置Bにおいては開口62を冷気が通過することができ、閉位置Aにおいては冷気の流れを阻止する構成である。
次に、駆動手段60の構成と動作の一例について図8から図12を用いて説明する。図8から図11は駆動手段60を図5の矢印Z方向に見た概略図である。図12は駆動手段60の要部構成をより詳細に示す図であり、図8の矢印81方向からみた斜視図である。これらの図に示すように、駆動手段60にはモータ70が内在され、モータ70の出力軸71にはピニオンギヤ72が設けられており、モータ70の駆動とともに回転してトルクを出力する。駆動側部材としてのアイドラギヤ73は、アイドラ支点74のまわりに回動自在に軸支された減速歯車である。アイドラギヤ73の外周には、ピニオンギヤ72とかみ合うギヤ73aを備え、ピニオンギヤ72からのトルクを減速しながら伝達する。アイドラギヤ73の一部には駆動側部分歯車としての部分歯車73bが設けられており、例えばアイドラギヤ73が90°回転する範囲のみに設けられている。部分歯車73bの歯車形状以外の部分には、アイドラ支点74を中心として円柱状をなした円柱部73c(円弧状部)が設けられている。図12に示すように、部分歯車73bと円柱部73cとはアイドラ支点74の軸方向にオフセットして配置されている。円柱部73cは、部分歯車73bの両端の歯73b1、73b4の歯先部と連続して設けられており、この円柱部73cの外径は、上記部分歯車73bの歯先部の直径と等しい。
図8から図12に示すように、従動側部材としての出力ギヤ75は駆動軸61のまわりに回動自在に軸支され、駆動軸61が開閉体64と嵌合されて開閉体64(開閉板64a、緩衝部材64b)と出力ギヤ75とが連結されており、開閉体64と出力ギヤ75とは一体として回動する。すなわち、開閉体64は該開閉体64の長手方向の回動軸(開閉体64の一端が駆動軸61に軸支され、他端がフレーム63の支軸65に軸支された回動軸)回りに回動する。
出力ギヤ75の一部には従動側部分歯車としての部分歯車75bが設けられ、アイドラギヤ73の一部に設けられた部分歯車73bと噛み合って、アイドラギヤ73と連動して例えば90°だけ回転する。
出力ギヤ75の部分歯車75bを挟んで周方向両側には、円弧形状に窪んだ円弧面を備えた第一のストッパ75cと第二のストッパ75dとが設けられている。出力ギヤ75の部分歯車75bが設けられた範囲の中間部には、部分歯車75bの歯の外周よりも径方向外側に延伸された受け部としての延長係止部75eが設けられている。部分歯車75bと、第一のストッパ75c、第二のストッパ75dおよび延長係止部75eとは、駆動軸61の軸方向にオフセットして配置されている(図12参照)。第一のストッパ75cと第二のストッパ75dは、開閉体64の開位置Bおよび閉位置Aにおいてアイドラギヤ73の円柱部73cと互いに接触する位置関係にある円弧面であって、それぞれの円弧面の先端部は、上記延長係止部75eの周方向両側に配置された延長円弧面75f、75gをなしている。
本実施形態では、出力ギヤ75に設けられた第一のストッパ75cと延長円弧面75f、および第二のストッパ75dと延長円弧面75gの中心は、アイドラギヤ73のアイドラ支点74の位置とされている。
また、アイドラギヤ73の延長係止部75eと対向する位置には、部分歯車73bと部分歯車75bとが噛み合うときに延長係止部75eが入り込む凹状の逃げ部76が設けられている(図12及び図18参照)。これによってアイドラギヤ73および出力ギヤ75が回動するときに延長係止部75eとアイドラギヤ73の部分歯車73bとが干渉することが防止される。
出力ギヤ75が部分歯車75bの噛み合う範囲であるおよそ90°回動することにより、出力ギヤ75と連結された開閉体64が回動して、その後、第一のストッパ75cおよび延長円弧面75f、または第二のストッパ75dおよび延長円弧面75gがアイドラギヤ73の円柱部73cと接触することによって出力ギヤ75の回転が規制される。本実施形態では、アイドラギヤ73の円柱部73cが第一のストッパ75cおよび延長円弧面75f、または第二のストッパ75dおよび延長円弧面75gに接触したときにモータ70の駆動を停止する。すなわち、開閉体64の閉位置Aでは、アイドラギヤ73の部分歯車73bと出力ギヤ75の部分歯車75bとの噛み合いが終了した後でアイドラギヤ73の円柱部73cが出力ギヤ75の延長円弧面75gに当接しており、円柱部73cが「当り部」、延長円弧面75gが「受け部」として機能している(図8及び図17参照)。
本実施形態では、図12に示すように、アイドラギヤ73の部分歯車73bは73b1から73b4までの4枚の歯を備えており、出力ギヤ75の部分歯車75bは75b1から75b5までの5枚の歯を備えている。出力ギヤ75の部分歯車75bをなす歯の一つである歯75b2の歯面75s2と延長係止部75eに設けられた延長円弧面75fとは段差なくなめらかに接続している。同様に、部分歯車の歯75b4の歯面75s4と延長円弧面75gとは段差なく滑らかに接続している。
次に、冷凍室ダンパ装置50の作用であって、駆動手段60による開閉体64の開閉機構について説明する。
図8においては、駆動手段60は開閉体64が閉位置A(閉鎖状態)にあって、図5から図7と同様な状態を図示している。アイドラギヤ73に設けられた円柱部73cは、出力ギヤ75の第二のストッパ75dおよび延長円弧面75gと嵌合している。すなわち、図12に示すようにアイドラギヤ73に設けられた部分歯車73bの歯73b4の歯先部73t4と連続する円柱部73cが延長係止部75eの一部である延長円弧面75gと当接し、出力ギヤ75の回動を規制して開閉体64を閉位置A(閉鎖状態)で保持している。
図9は、図8の状態からモータ70を駆動して、ピニオンギヤ72、アイドラギヤ73、出力ギヤ75をそれぞれ矢印方向に回転した状態であり、ピニオンギヤ72の回転によりアイドラギヤ73が回転し、アイドラギヤ73の一部に設けられた部分歯車73bと出力ギヤ75の一部である部分歯車75bが噛み合うことにより出力ギヤ75が回転する。出力ギヤ75の第二のストッパ75dはアイドラギヤ73の円柱部73cから離反した位置となる。
このとき、出力ギヤ75の延長係止部75eはアイドラギヤ73に設けられた逃げ部76に入り込み、アイドラギヤ73の部分歯車73bと干渉しない。図10は図9よりもさらにピニオンギヤ72、アイドラギヤ73、出力ギヤ75が矢印方向に回動した位置を示している。図11においては、アイドラギヤ73、出力ギヤ75がおよそ90°回動して、出力ギヤ75の一部である部分歯車75bとアイドラギヤ73の一部に設けられた部分歯車73bとの噛み合いが終了し、アイドラギヤ73の円柱部73cは出力ギヤ75の第一のストッパ75cおよび延長円弧面75fと嵌合した位置となって、開閉体64を開位置B(開放状態)で保持する。
このとき、図12においては、アイドラギヤ73は図示反時計方向に略90°回動し、出力ギヤ75は図示時計方向に略90°回動して、アイドラギヤ73に設けられた部分歯車73bの歯73b1の歯先部73t1と連続する円柱部73cが、延長係止部75eの一部である延長円弧面75fと当接し、出力ギヤ75の回動を規制する。開閉体64を再度閉止(閉鎖)する際には、図11の状態から図10、図9の状態を経由して図8の状態に至る。
上記のように動作することによって、冷凍室ダンパ装置50は開閉体64の開閉動作を行う。
先に説明したように、冷気の通風抵抗を低減するためには、ダンパ装置の開口面積を大型化する必要がある。一方、開口面積を大型化すると、開閉体64が受ける風圧がより大きくなるとともに、開閉体64に設けられた緩衝部材64bが大型化するために、緩衝部材64bを適切に開口62の周囲の接触部66(図7参照)に対して圧接するための閉止力をより大きくする必要がある。さらに、成型時に部品に生じる反りやたわみによる変形量が大きくなって開口62の密閉が困難になる可能性があるため、より確実に緩衝部材64bを接触部66に圧接する必要がある。
本実施形態においては、出力ギヤ75に延長係止部75eを設けることによって開閉体64の閉止性(密閉性)を向上しており、その機構を図13から図18を用いて詳細に説明する。図13から図17は開閉体64を閉止する際のアイドラギヤ73と出力ギヤ75の動作を示す図であって、概ね図10から図9を経由して図8の状態に至るまでの動作を示している。判りやすくするために、アイドラギヤ73の外周に設けられたギヤ73aは図示を省略している。
図13においては、アイドラギヤ73と出力ギヤ75とはそれぞれの部分歯車73b、部分歯車75b同士が噛み合ってアイドラギヤ73が矢印で示した時計方向に回転している。このとき、さらに具体的にはアイドラギヤ73の歯73b3が出力ギヤ75の歯75b3に対して矢印Fのように力を与えて出力ギヤ75を回転させる。図14はアイドラギヤ73がさらに時計方向に回転した状態を示しており、ここではアイドラギヤ73の歯73b4が出力ギヤ75の歯75b4に対して矢印Fのように力を与えて出力ギヤ75をさらに回転させる。この矢印で示した力の方向は、接点における接触面に対する法線方向となる。図13から図14に図示した状態は、詳細の説明は省略するが一般的な歯車同士の噛み合いであって、歯型がインボリュート曲線であり、それぞれの部分歯車73bと75b同士の直径が等しく、仮に全周に歯があったときの歯数が互いに等しい場合には、アイドラギヤ73と出力ギヤ75とは同じ角度だけ回転する。
図15は図14の状態からさらにアイドラギヤ73を時計まわりに矢印方向に回転させた状態を示している。この状態において、もし仮想的にアイドラギヤ73の部分歯車73bとして破線で示した75b6の歯が存在したとすれば、歯75b6と出力ギヤ75の歯75b5とが噛み合うので、部分歯車同士の噛み合い状態が継続する。しかし、この歯75b6は本実施形態では存在しないため、アイドラギヤ73の歯73b4の歯端点73dが出力ギヤ75の歯75b4の歯面75s4と接触し続け、矢印Fのように力を加えることによって出力ギヤ75をさらに回転させる。図16においては、歯端点73dは、歯面75s4と延長係止部75eの延長円弧面75gとの連続面に至る。歯面75s4と延長円弧面75gとは段差なくなめらかに連続しているので、アイドラギヤ73をさらに回転させると歯端点73dと連続する円柱部73cが延長円弧面75gと当接する位置関係となる。
図16から図17までの範囲においては、歯端点73dと連続する円柱部73cが延長円弧面75gに当接して摺動し、アイドラギヤ73が回転(空転)する。その際、延長円弧面75gは第二のストッパ75dと同一円弧であって、アイドラギヤ73の回転中心と同心円なので、出力ギヤ75は係止された状態を維持して、図17においては開閉体64を閉止して回転規制された状態となる。
一方、図17に示した状態からアイドラギヤ73を反時計方向に回転させることによって、図16に示した状態を経由して図15に図示した状態に至り、アイドラギヤ73の歯73b4が出力ギヤ75の歯75b5と歯75b4との間に噛みこんで、以降は部分歯車73bと部分歯車75bとが互いに噛み合って回転して開閉体64を開放させる。開閉体64の開放時には、アイドラギヤ73の歯73b1の歯端点73dと連続する円柱部73cが延長円弧面75f及び第一のストッパ75cに当接して出力ギヤ75の回転が規制され、開閉体64を開放状態で保持する。
ここで、本実施形態による延長係止部75eの有無による開閉体64の閉止トルクの相違について説明する。アイドラギヤ73から出力ギヤ75に伝達される力を矢印Fとすると、本実施形態においてはその力が歯端点73dに加わり、延長円弧面75g上に作用して、出力ギヤ75の中心すなわち駆動軸61からの距離はR2となるので、開閉体64の閉止トルクTはT=F×R2となる。
一方、もし仮に延長係止部75eが無い場合(部分歯車と円柱部が同一周面上にある場合)には、歯端点73dが出力ギヤ75に接する部分が存在しないため、そのかわりに出力ギヤ75の歯75b4の歯端面75hがアイドラギヤ73の円柱部73cと当接した状態となる。この場合、かかる力Fが同じであるとして、出力ギヤ75の中心すなわち駆動軸61からの距離はR1となってR2よりも小となる。したがって、開閉体64の閉止トルクTはT=(F×R1)<(F×R2)となることが明らかであり、延長係止部75eを備えることによって開閉体64の閉止トルクTが増加し、開閉体64の閉止性(密閉性)を向上することができる。
延長円弧面75gの円弧の中心はアイドラギヤ73の回転中心と一致することが望ましい。そのようにすれば、開閉体64の閉止時には、歯先と円筒面との線接触ではなく、円柱部73cの円筒面と延長係止部75eの延長円弧面75gとが互いに面同士で当接するので、接触面積が大きくなって接触面圧が小さくなるので、摩耗しにくく長寿命化できる。
さらに、出力ギヤ75の動作精度を向上する効果について説明する。アイドラギヤ73と出力ギヤ75との間には、スムーズに駆動するためには所定の隙間、例えば0.1mm程度のガタが必要である。図17において延長係止部75eがない場合(部分歯車と円柱部が同一周面上にある場合)には、先に説明したように出力ギヤ75の歯75b4の歯端面75hがアイドラギヤ73の円柱部73cと当接するので、0.1mmのガタによる出力ギヤ75の角度ガタδ1はδ1=tan−1(0.1/R1)となる。一方、本実施形態による延長係止部75eを設けた場合には、歯端点73dと連続する円柱部73cが延長円弧面75gと当接するので、同じ0.1mmのガタによる出力ギヤ75の角度ガタδ2はδ2=tan−1(0.1/R2)となる。R2>R1なのでδ2<δ1となって、延長係止部75eを設けた方が角度ガタが小さくなり(角度精度が向上し)、出力ギヤ75の動作精度、すなわち開閉体64の閉止精度が向上して、さらに閉止性(密閉性)を向上することができる。
次に、本発明の第2実施形態のダンパ装置について、図19および図20を用いて説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図19および図20に示すように、図18までに説明した第1実施形態との相違は、開閉体64を開放するときに、アイドラギヤ73の部分歯車73bが最初に当たる出力ギヤ75の歯75b4の歯先である歯先端部75r4と、出力ギヤ75の部分歯車75bと最初に噛み合うアイドラギヤ73の歯73b4の先端の角である歯先端部73r4を、それぞれ面取り形状としたことである。言い換えると、円柱部73cと連続する歯73b4と接する出力ギヤ75の歯75b4の歯先端部75r4と、延長円弧面75gと連続する歯面75s4と接するアイドラギヤ73の歯73b4の歯先端部73r4を、それぞれ面取り形状としている。本実施形態では、歯先端部75r4と歯先端部73r4とを平面状のカット面からなる面取り形状としている。なお、平面状のカット面に代えて、歯先端部75r4と歯先端部73r4を滑らかなR形状からなる面取り形状としてもよい。
図20に示した状態は図8ないし図17と同じく、開閉体64が閉止された状態を図示している。ここで、アイドラギヤ73を矢印CCWに示した反時計方向に回転させることによって、図17から図16に示した状態を経由して図15に図示した状態に至り、アイドラギヤ73の歯73b4が出力ギヤ75の歯75b5と歯75b4との間に噛みこんで、以降は部分歯車73bと部分歯車75bとが互いに噛み合って回転することにより、開閉体64を開放させる。
ここで、図20に示した状態から、歯73b4の歯先である歯先端部73r4は延長円弧面75gに沿って移動し、出力ギヤ75の歯先端部75r4と互いに隣接した位置を通過した後に歯73b4が歯75b5に当接するに至る。ここで、アイドラギヤ73の歯先端部73r4と出力ギヤ75の歯先端部75r4とが当接してひっかかると回転動作がスムーズでなくなり、回転負荷が増大して、場合によっては回転が停止することもある。そこで、歯先端部73r4と歯先端部75r4の両方に平面状のカット面からなる面取り形状を施すことによって、そのようなひっかかりを未然に防止してスムーズな開き動作を実現することができる。
なお、本実施形態では、歯先端部73r4と歯先端部75r4の両方に面取り形状を施したが、歯先端部73r4と歯先端部75r4のいずれか一方に面取り形状を施した場合でも、アイドラギヤ73の歯先端部73r4と出力ギヤ75の歯先端部75r4とのひっかかりを防止してスムーズな開き動作を実現することができる。
なお、平面状のカット面からなる面取り形状に代えて、歯先端部73r4と歯先端部75r4のいずれか一方、あるいは両方を滑らかなR形状からなる面取り形状とすることによって、同様にアイドラギヤ73の歯先端部と出力ギヤ75の歯先端部とのひっかかりを防止してスムーズな開き動作を実現することができる。
またさらに、延長係止部75eと出力ギヤ75とを樹脂で一体成型することにより、製造が容易となると共に、延長係止部75eと歯75b2、75b4の先端部とを段差なく滑らかな形状とすることができるので、さらにスムーズな開き動作を実現できる。
以上説明したように上記第1及び第2実施形態によれば、出力ギヤ75に設けられた部分歯車75bの歯先よりもさらに先端を径方向外側に延長した延長係止部75eを設けて、その延長係止部75eとアイドラギヤ73に設けられた円柱部73cとを当接するようにした。これにより、開閉体64の閉止トルクを増加して、閉止性(密閉性)を向上することができるとともに、出力ギヤ75の動作精度、すなわち開閉体64の閉止精度を向上して閉止性を向上できる。
また、上記第1及び第2実施形態によれば、延長円弧面75gの円弧の中心をアイドラギヤ73の回転中心と一致させることで、開閉体64の閉止時には、歯先と円筒面との線接触ではなく、円柱部73cの円筒面と延長係止部75eの延長円弧面75gとが互いに面同士で当接する。これにより、円柱部73cの円筒面と延長係止部75eの延長円弧面75gとの接触面積が大きくなり、接触面圧が小さくなるので、摩耗しにくく長寿命化を実現できる。
また、上記第1及び第2実施形態によれば、ダンパ装置の開口を確実に閉じることができるので、冷凍室に供給する冷気が冷蔵室または野菜室側のダクトに漏れたり、冷蔵室または野菜室に供給する冷気が冷凍室側のダクトに漏れたりすることを防止して、省エネルギー化が図れる冷蔵庫を提供できる。従って、冷蔵庫1内の食品を所定の冷蔵温度帯および冷凍温度帯に維持しながら省エネルギー性能を確保することができる。
さらに、上記第2実施形態によれば、アイドラギヤ73の歯先端部73r4と出力ギヤ75の歯先端部75r4のいずれか一方、あるいは両方に面取り形状を施すことによって、開放動作の際に歯先端部73r4、75r4の互いのひっかかりを防止してスムーズな開き動作を実現できる。
なお、上記第1及び第2実施形態では、アイドラギヤ73の部分歯車73bと出力ギヤ75の部分歯車75bは、アイドラギヤ73と出力ギヤ75が約90°回動する範囲に設けたが、これに限定されるものではない。開閉体の開閉範囲に応じて、アイドラギヤ73と出力ギヤ75の他の角度範囲に部分歯車を設けてもよい。
なお、上記第1及び第2実施形態では、出力ギヤ75に受け部としての延長係止部75eの延長円弧面75gと、アイドラギヤ73に当り部としての円柱部73cを設けたが、受け部と当り部の形状はこれに限定されるものではない。開閉体の閉位置でアイドラギヤ73の部分歯車73bと出力ギヤ75の部分歯車75bとの噛み合いが終了した後で当り部が受け部と当接し、出力ギヤ75の回動を規制する形状であれば、他の形状でもよい。また、出力ギヤ75の部分歯車75bと延長係止部75e、アイドラギヤ73の部分歯車73bと円柱部73cは、一体成形ではなく、軸方向に離して同軸上に別体に設けてもよい。
また、上記第1及び第2実施形態では、駆動側部材としてギヤ73aを備えたアイドラギヤ73を設けたが、歯車に限定するものではなく、部分歯車73bが回転する構成であればローラなどの他の部材でもよい。
また、冷蔵庫1の庫内における冷蔵室ダンパ装置20および冷凍室ダンパ装置50の位置は、第1実施形態の構成に限定されず、別の位置に設けてもよい。例えば、第1実施形態では、開閉体64の開放時に、アイドラギヤ73の歯73b1の歯端点と連続する円柱部73cが延長円弧面75f及び第一のストッパ75cに当接して出力ギヤ75の回転が規制され、開閉体64を開放状態で保持する構成であるので、開閉体が開放されたときに当該開閉体が別の開口を閉止する位置にダンパ装置を設けることができる。