JP5368288B2 - コークス炉壁観察方法および装置 - Google Patents

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Description

本発明は、コークス炉壁観察方法および装置に関する。さらに詳しくは、コークス炉内にカメラを挿入し、その画像を用いて炉壁の状態を観察するコークス炉観察方法および装置に関する。
製鉄に用いるコークスを製造するために、幅数十センチメートル、高さ数メートル、奥行き十数メートルのレンガ造りのコークス炉が用いられる。コークスの製造は、コークス炉の上面に設けられた石炭挿入口から炉内に石炭を挿入し、高温に熱せられた炉内で石炭を乾留することにより行われる。完成したコークスは、コークス炉両端の炉入口および炉出口を開放した後に押出機が炉入口から挿入され、炉出口側に配置されたバケットに押し出される。その際に炉内ではレンガが剥落したり、カーボンが付着したりして、炉壁が損傷する。製鉄所の主要設備であるコークス炉の安定操業と長寿命化の為には、炉壁の状態を随時観察し、損傷箇所を早期発見し、修繕する必要がある。
従来、コークス炉の炉壁の観察は目視観察によるものが一般的であり、作業員が操業の合間に、コークス炉の両端から、あるいは石炭挿入口から直接観察を行っていた。そのため、狭窄な炉内を観察できる範囲は限られており、特に炉壁中心部の観察は困難であった。また、高温に保たれたコークス炉の観察は作業員にとって危険な作業でもあった。
この問題に対する解決策として、熱対策したカメラを炉内に挿入し、炉壁を撮影した映像を観察する方法がある(例えば特許文献1)。カメラの映像により炉壁の状態を観察することができるので、炉壁中心部においても観察することができ、作業員にとっても確認作業を安全に行うことができる。
しかるに、特許文献1の方法では、図10(A)に示すようにカメラの向きを炉壁に対して正面としているため、幅が数十センチメートルのコークス炉の場合、カメラと炉壁との距離が短く、カメラで撮影できる視野が限られ、炉壁全体について迅速に観察することは困難であった。
また、カメラで撮影した映像は録画されるが、その録画された映像を観察する場合、映像をはじめから再生する必要があるため、確認作業に時間のかかるものであり、一見して炉壁全体の状況を把握できるものではなかった。
これに対して特許文献2のコークス炉の内壁観察方法は、カメラの向きを炉壁に対して斜めとし、カメラをコークス炉内に挿入し、カメラの位置と対応付けながら炉壁の画像を斜視像として順次撮影する方法である。さらに、その斜視像を画像処理して炉壁を正面から見た視点変換画像を生成し、カメラ位置に従って視点変換画像を張り合わせることで、炉壁全体画像の合成を行う。
図10(B)に示すように、カメラの向きを炉壁に対して斜めとすることにより、撮影できる視野を広くすることができ、炉壁全体について迅速に観察することが可能となる。また、合成された炉壁全体画像により一見して炉壁全体の状況を把握することが可能となる。
しかるに、特許文献2で得られる視点変換画像は元が斜視像であるため、図11(A)に示すように、カメラの手前側の手前側画像は高解像度だが高さ方向の視野が狭く、カメラから奥側の奥側画像は高さ方向の視野が広いが低解像度になるという特性を持つ。そのため、視点変換画像を張り合わせて炉壁全体画像を合成するに際して、手前側画像(i)を採用する場合には高解像度だが高さ方向の視野が狭い炉壁全体画像となり(図11(B))、奥側画像(ii)を採用する場合には高さ方向の視野が広いが低解像度の炉壁全体画像となる(図11(C))という問題がある。
特開昭63−252242号公報 特許第2664494号公報
本発明は上記事情に鑑み、視点変換画像内の高解像度領域を優先的に採用しながら、高さ方向の視野が広い炉壁全体画像を合成するコークス炉壁観察方法および装置を提供することを目的とする。
第1発明のコークス炉壁観察方法は、カメラをコークス炉内に挿入し、該カメラのコークス炉内におけるカメラ位置と対応付けながら、コークス炉内の炉壁を斜視像として順次撮影し、前記炉壁の斜視像を視点変換処理して、炉壁を正面から見た画像であって、カメラの上下の視野角の範囲外である視野範囲外領域が含まれた視点変換画像を生成し、前記視点変換画像を、対応する前記カメラ位置をもとにつなぎ合せることで炉壁全体画像を合成する方法であって、前記炉壁全体画像の合成に際し、隣り合う前記視点変換画像を、前記視点変換画像の手前側視野限界が前面に来るように、かつ、前記視点変換画像の視野範囲外領域を透明色として重ね合わせることを特徴とする。
発明のコークス炉壁観察方法は、第発明において、前記視点変換画像の生成に際し、前記視点変換画像のカメラの奥側の視野限界である奥側視野限界から所定の幅を持った領域の視点変換処理を行わないことを特徴とする。
発明のコークス炉壁観察方法は、第または第発明において、前記視点変換画像の生成に際し、前記視点変換画像の手前側視野限界から所定の幅を持った領域の視点変換処理を行わないことを特徴とする
第4発明のコークス炉壁観察装置は、コークス炉内を移動しながら、コークス炉内の炉壁を斜視像として順次撮影するカメラと、該カメラのコークス炉内におけるカメラ位置を計測する位置検出手段と、前記カメラで撮影した前記炉壁の斜視像と、前記位置検出手段で計測した前記カメラ位置とを取り込み、画像処理を行う画像処理手段とを備えたコークス炉壁観察装置であって、前記画像処理手段は、前記炉壁の斜視像を視点変換処理して、炉壁を正面から見た画像であって、カメラの上下の視野角の範囲外である視野範囲外領域が含まれた視点変換画像を生成し、前記視点変換画像を、対応する前記カメラ位置をもとにつなぎ合せることで炉壁全体画像を合成し、前記炉壁全体画像の合成に際し、隣り合う前記視点変換画像を、前記視点変換画像の手前側視野限界が前面に来るように、かつ、前記視点変換画像の視野範囲外領域を透明色として重ね合わせることを特徴とする。
発明のコークス炉壁観察装置は、第発明において、前記画像処理手段は、前記視点変換画像の生成に際し、前記視点変換画像のカメラの奥側の視野限界である奥側視野限界から所定の幅を持った領域の視点変換処理を行わないことを特徴とする。
発明のコークス炉壁観察装置は、第または第発明において、前記画像処理手段は、前記視点変換画像の生成に際し、前記視点変換画像の手前側視野限界から所定の幅を持った領域の視点変換処理を行わないことを特徴とする。
第1発明によれば、炉壁全体画像の合成に際し、手前側視野限界が前面に来るように、かつ、前記視点変換画像の視野範囲外領域を透明色として重ね合わせることにより、視点変換画像の手前側視野限界と上側視野限界と下側視野限界とから所定の幅を持った領域の画像を用いることができるので、視点変換画像内の高解像度領域を優先的に採用しながら、高さ方向の視野が広い炉壁全体画像を合成することができる。
発明によれば、視点変換画像の生成に際し、視点変換処理を一部省略することができるので、視点変換処理を高速化でき、視点変換画像が滑らかに移り変わるように表示することができる。また、生成される視点変換画像のサイズが小さくなるので、視点変換画像を記憶する領域の消費も抑制することができる。
発明によれば、視点変換画像の生成に際し、広角レンズの外周に相当する領域の視点変換処理を行わないので、広角レンズにより生じる視点変換画像の暗部と歪曲を取り除くことができ、炉壁全体画像を合成する際に生じる視点変換画像のつなぎ目の不連続さを低減することができる
第4発明によれば、画像処理手段における炉壁全体画像の合成に際し、手前側視野限界が前面に来るように、かつ、前記視点変換画像の視野範囲外領域を透明色として重ね合わせることにより、視点変換画像の手前側視野限界と上側視野限界と下側視野限界とから所定の幅を持った領域の画像を用いることができるので、視点変換画像内の高解像度領域を優先的に採用しながら、高さ方向の視野が広い炉壁全体画像を合成することができる。
発明によれば、画像処理手段における視点変換画像の生成に際し、視点変換処理を一部省略することができるので、視点変換処理を高速化でき、視点変換画像が滑らかに移り変わるように表示することができる。また、生成される視点変換画像のサイズが小さくなるので、視点変換画像を記憶する領域の消費も抑制することができる。
発明によれば、画像処理手段における視点変換画像の生成に際し、広角レンズの外周に相当する領域の視点変換処理を行わないので、広角レンズにより生じる視点変換画像の暗部と歪曲を取り除くことができ、炉壁全体画像を合成する際に生じる視点変換画像のつなぎ目の不連続さを低減することができる。
本発明の一実施形態に係るコークス炉壁観察装置の構成図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。 炉壁画像の一例である。 視点変換画像の座標から炉壁画像の座標への座標変換の説明図である。 カメラ、その光学系および炉壁の位置関係の説明図である。 カメラ、その光学系および炉壁の位置関係の説明図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。 視点変換画像の一例である。 視点変換画像の配置手順の説明図である。 炉壁全体画像の一例である。 視点変換画像の奥側切出位置、奥側領域、手前側切出位置、手前側領域の説明図である。 従来技術のカメラの取り付け向きの説明図である。 従来技術の視点変換画像および炉壁全体画像の説明図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、コークス炉10は高さ数メートル、奥行き十数メートルの対となるレンガ造りの炉壁11が数十センチメートルの間隔を隔てて設けられた、狭窄な炉である。コークス炉10内で製造されたコークスCは、コークス炉10の片側の炉入口12から押出機20が挿入されることにより反対側の炉出口13へと押し出される。
押出機20は、押板21とビーム22とからなり、ビーム22が図示しない駆動装置に接続されており、この駆動装置の動作により押板21がコークス炉10の炉入口12から炉出口13まで移動自在となっている。押板21がコークス炉10の断面と同形状をしているため、押板21の移動によりコークスCを押し出すことができる。
本発明の一実施形態に係るコークス炉壁観察装置は、押出機20の押板21に取り付けられたカメラ30と、押出機20のビーム22の移動量からカメラ位置を計測するエンコーダ40と、カメラ30からの炉壁画像とエンコーダ40からのカメラ位置情報を取り込み、画像処理を行うコンピュータ50とからなる。
カメラ30は、押板21の背面に取り付けられており、コークスCの押出方向と逆方向(図1の右方向)を向くように取り付けられている。これは、カメラ30を押板21の前面に取り付けるとコークスCに阻まれて炉壁11の撮影ができないからである。カメラ30には、1台のカメラで両側の炉壁を撮影できるように、広角のレンズが取り付けられている。また、押出機20は赤熱したコークス炉10内(1000℃程度)に挿入されるため、カメラ30には冷却ボックスの中に設置するなどの熱対策が施されている。
エンコーダ40は、ビーム22の挿入距離を計測することが可能な位置検出装置であり、ビーム22の挿入距離から、カメラ30のコークス炉10内の炉長方向の挿入位置を計測するものである。
カメラ30およびエンコーダ40はコンピュータ50とケーブル31、41を介して接続されており、カメラ30で撮影された炉壁画像、およびエンコーダ40で計測されたカメラ位置情報はコンピュータ50に取込可能となっている。
コンピュータ50は主に、CPU51、メモリ52、ハードディスク53、モニタ54からなり、炉壁画像とカメラ位置情報から後述する画像処理を行い、その結果をモニタ54に表示する。
つぎに、本発明の一実施形態に係るコークス炉壁観察装置を用いた炉壁観察について説明する。
炉壁観察は大きく分けて、(1)炉壁画像から視点変換画像を生成し、その視点変換画像を押出機移動中に観察する即時観察、(2)視点変換画像から炉壁全体画像を合成、保存し、その炉壁全体画像を押出機の運用とは別の時期に観察する後日観察の2種類を行う。
(1)即時観察
即時観察は、押出機20の運転者などが、コークス押出のための押出機の通常運用を行う際に同時に行う観察である。
まず、押出機20とともにカメラ30をコークス炉10内に挿入し、カメラ30で撮影した炉壁画像OI(図2参照)を、ケーブル31を介してコンピュータ50のメモリ52に取り込む。
この際に得られる炉壁画像OIは、図2に示すように、カメラ30はコークスCの押出方向と逆方向を向くように取り付けられているため、炉壁画像OIの中央には炉入口12が映し出される。また、カメラ30には広角レンズが取り付けられているため左右の炉壁11が、炉壁画像OIの左右に映し出される。なお図中、14はコークス炉の天井、15はコークス炉の底である。実際には、押出機20のビーム22も映し出されるが、説明のため省略してある。
炉壁画像OIにより炉壁11の状態を観察することが可能であるが、炉壁画像OIにおいて炉壁11は斜視像として映し出されるため、これを炉壁11の正面から見た画像とした方が、観察が行いやすい。
そこで、CPU51によりメモリ52に記憶された炉壁画像OIを視点変換処理して、炉壁11を正面から見た視点変換画像TIを生成する。
視点変換処理は例えば以下のように行われる。
一般に、画像処理により画像を変換して新たな画像を生成する場合、変換後の画像の各画素が変換前の画像のどの画素を参照すればよいかが分かればよい。すなわち、本実施形態の場合、視点変換画像TIの各画素が炉壁画像OIのどの画素を参照すればよいかが分かればよい。そのためには、図3に示すように、視点変換画像TI上の座標から炉壁画像OI上の座標を参照するための座標変換を導くことが必要である。
ここで、カメラ30がCCDカメラである場合、視点変換画像TI上の座標から炉壁画像OI上の座標への座標変換とは、炉壁11上のある点から出た光がカメラ30のCCD上のどこへ到達するか、という問題に置き換えることができる。つまり、カメラ30、その光学系および炉壁11の特性値および位置関係から座標変換を導くことができる。
図4において、sx はカメラ30のCCDの幅[mm]、sy はCCDの高さ[mm]、f はCCD面から光学中心までの距離[mm]、d はカメラ30と炉壁11との距離[mm]、A は光学中心から炉壁11上へ垂線を下ろした時の交点、B はカメラ30で撮影可能な炉壁11上の最近接位置、D は点A から点B までの距離(最近接距離)である。
以上の通りに定義した場合、最近接距離 D[pixel] は、炉壁画像OI上での画素スケールを k[mm/pixel]とすると次式で与えられる(図5(A)参照)。
Figure 0005368288
炉壁11上(すなわち視点変換画像TI上)のある点(x,y)[pixel]を出た光は、光学中心を通り、CCD面上(すなわち炉壁画像OI上)の点(u,v)[pixel]に到達する。
このように、光学中心を通る光線のみで撮像系をモデル化する手法をピンホールカメラモデルによるモデル化という。
図5(A)より、x から u への変換は以下の通りに記述できる。
Figure 0005368288
ここで、nx はCCDの幅方向の画素数であり、k’=sx/nx である。
また、図5(B)より、y から v への変換は以下の通りに記述できる。
Figure 0005368288
ここで、ny はCCDの高さ方向の画素数であり、k’’=sy/ny である。
これら数2、数3が視点変換画像TI上の座標から炉壁画像OI上の座標への座標変換となる。
数2、数3で表わされる座標変換を、視点変換画像TIの全画素について計算し、求めた座標から炉壁画像OI上の色情報を参照して視点変換画像TIの色情報とすることで、視点変換画像TIを生成することができる。
しかしながら、この座標変換に要する計算コストは非常に大きい。またカメラ30などのハードウエアや、カメラ30と炉壁11との距離が変化しない限り、座標変換のためのパラメータも変化しないため、視点変換画像TIを生成するたびに同じ計算を繰り返すことは無駄である。
そこで、視点変換画像TIの全画素について一度だけ座標変換の演算を行い、その結果を保存しておくことが好ましい。より具体的には、視点変換画像TIの各画素に対応する炉壁画像OI上の座標をテーブル(以下、座標変換テーブルとする。)として生成し、ハードディスク53に保存しておく。通常運用時の視点変換処理においてはこの座標変換テーブルを参照し、視点変換画像TIの各画素の色情報を炉壁画像OIの対応する画素の色情報とすることで、視点変換処理を高速に行うことができる。
なお、座標変換テーブルにサブピクセル単位(画素をより細分化した単位)での座標を格納しておけば、その座標の4近傍画素の色情報を内挿することにより、より鮮明な視点変換画像TIを生成することができる。
以上の視点変換処理で生成された視点変換画像TIは図6に示すようになる。図6は片方の炉壁11に対する視点変換画像TIであるが、同様の視点変換画像TIを、左右の炉壁11それぞれに対して1枚得ることができる。図6に示される視点変換画像TIとして映し出される炉壁11の範囲は、図4に示す視野Vに対応する。カメラ30の手前側の手前側画像NVでは、カメラ30の上下の視野角の範囲外となる視野範囲外領域O(上下一対の三角形の領域)が現れる。そのため、視点変換画像TIは、その手前側画像は高さ方向の視野が狭く、カメラ30から奥側の奥側画像FVは高さ方向の視野が広くなる。
なお説明のため、視点変換画像TIの中でカメラ30の手前側の画像を手前側画像NV、カメラ30から奥側の画像を奥側画像FV、カメラ30の手前側の視野限界を手前側視野限界ne、奥側の視野限界を奥側視野限界fe、上側の視野限界を上側視野限界ue、下側の視野限界を下側視野限界deと定義する。
以上の炉壁画像OIの撮影と、視点変換画像TIの生成は、押出機20の移動中に所定の間隔で行われ、それにより得られる炉壁画像OIと視点変換画像TIはコンピュータ50のモニタ54に随時表示される。押出機20の運転者は、押出機20を運転しながら、モニタ54に映し出される画像から炉壁11の状態を観察する。
なお、押出機20を移動する間、所定の間隔で生成される視点変換画像TIは、後述する炉壁全体画像WIの合成のために、エンコーダ40から得られるカメラ位置情報とともにメモリ52に一時記憶されていく。
(2)後日観察
後日観察は、視点変換画像TIから炉壁11全体の画像を合成し、それを炉壁全体画像WIとして保存しておき、押出機の運用とは別の時期にその炉壁全体画像WIを用いて行う観察である。炉壁全体画像WIは、一見して炉壁11全体の状況を把握することを容易にするために生成される。
前述の即時観察において、押出機20の移動が炉入口12から炉出口13まで完了すると、コークス炉10の全長にわたり、炉長方向の所定間隔ごとに視点変換画像TIが生成され、その視点変換画像TIに対応するカメラ位置情報とともにメモリ52に一時記憶された状態となる。
CPU51は、このメモリ52に一時記憶された視点変換画像TIを、それに対応するカメラ位置情報をもとに適当な位置に配置し、つなぎ合せることで、炉壁全体画像WIを合成する。
ところで図6に示すように、視点変換画像TIは、元が斜視像であるため、画像内での場所により解像度や視野が異なる。視点変換画像TI上で、手前側画像NVは解像度が高いが高さ方向の視野が狭い。逆に奥側画像FVは高さ方向の視野が広いが解像度が低い。
そのため、視点変換画像TIをつなぎ合せて炉壁全体画像WI(図7参照)を合成するに際して、視点変換画像TIの配置手順により炉壁全体画像WIの画質が大きく異なる。
(配置手順1)
図7(A)に示すように、所定間隔のカメラ位置に対して視点変換画像TIが撮影順に(1)から(6)まで得られた場合に、これらの視点変換画像TIを配置する手順として、撮影順に後の視点変換画像TIが前面に来るように重ね合わせる手順が考えられる(配置手順1)。
本実施形態において、カメラ30はコークスCの押出方向と逆方向を向くように取り付けられているため、視点変換画像TI上で、手前側視野限界neが炉出口13側、奥側視野限界feが炉入口12側となる。すなわち、奥側視野限界feから手前側視野限界neに向かう方向が押出機20の移動方向であり、視点変換画像TIの配置位置は、撮影順に考えると、奥側視野限界feから手前側視野限界neに向かう方向に移り変わることになる。
そのため図7(B)に示すように、配置手順1の手順で重ね合わせた場合、視点変換画像TIの手前側画像NVは、撮影順が後の視点変換画像TIにより上書きされ見えなくなり、奥側画像FVが、炉壁全体画像WIの画像として採用されることになる。
この場合、奥側画像FVは解像度が低いため、炉壁全体画像WIの解像度が低くなってしまう。
(配置手順2)
これに対して、視点変換画像TIを、撮影順が前の視点変換画像TIが前面に来るように重ね合わせる手順が考えられる(配置手順2)。
図7(C)に示すように、配置手順2の手順で重ね合わせた場合、視点変換画像TIの奥側画像FVは、撮影順が前の視点変換画像TIにより上書きされて見えなくなり、手前側画像NVが、炉壁全体画像WIの画像として採用されることになる。
この場合、手前側画像NVは解像度が高いため、炉壁全体画像WIの解像度を高くすることができるが、高さ方向の視野が狭いため、炉壁全体画像WIの高さ方向の視野が狭くなってしまう。
(配置手順3)
以上の問題に対応する手順が配置手順3であり、配置手順3が本発明に係る手順である。配置手順3は、配置手順2と同様に、視点変換画像TIを、撮影順が前の視点変換画像TIが前面に来るように重ね合わせる手順であるが、重ね合わせる際、視野範囲外領域Oを透明色とし、背面に来る画像を上書きしないようにする手順である。
図7(D)および図8に示すように、配置手順3の手順で重ね合わせた場合、視点変換画像TIの手前側視野限界neと上側視野限界ueと下側視野限界deとから一定の幅を持った「く」の字型の領域が炉壁全体画像WIの画像として採用されることになる。
その結果、炉壁全体画像WIの上下中央は解像度が高い手前側画像NVを採用することができ、かつ、上下に離れていくと徐々に解像度が低くなるが、視野を広く保つことができる。上側視野限界ueもしくは下側視野限界deに近い画像は手前側視野限界neに近い画像に比べれば解像度が低くなるものの、同じ高さに相当する奥側画像FVに比べれば解像度が高いため、視点変換画像TI中の高解像度領域を優先的に採用しながら、高さ方向の視野が広い炉壁全体画像WIを合成することができることとなる。
図8に示すように、炉壁全体画像WIは、複数の視点変換画像TIがそれに対応するカメラ位置情報にもとづいて配置され、つなぎ合わされることで、コークス炉10の全長にわたった、炉壁11全体の画像となる。
以上の配置手順3により合成された炉壁全体画像WIは、ハードディスク53に記憶され、押出機の運用とは別の時期に炉壁11の状態を観察する際に、モニタ54に表示され、観察が行われる。
前述の炉壁全体画像WIの合成において、視点変換画像TIの奥側画像FVは、その前面に配置される撮影順が前の視点変換画像TIによって上書きされるため炉壁全体画像WIの画像としては採用されない。
その一方、視点変換画像TIを生成するための視点変換処理には、CPU51の演算時間を消費し、また、生成された視点変換画像TIを一時記憶するためのメモリ52領域も消費する。
そこで、炉壁画像OIから視点変換画像TIを生成するに際して、奥側視野限界feから所定の幅を持った領域の視点変換処理を行わず視点変換画像TIの領域として含めないようにしてもよい。
図9に示すように、視点変換画像TI上における炉長方向の任意の位置に奥側切出位置flを設定し、その奥側切出位置flよりカメラ30から奥側の奥側領域faについては視点変換処理を行わず、奥側切出位置flよりカメラ30の手前側の領域について視点変換処理を行う。より具体的には、前述の視点変換処理において、座標変換テーブルのうち、奥側切出位置flよりカメラ30の手前側の領域に対応する座標のみを参照し、炉壁画像OIから視点変換画像TIを生成する。
このようにすることで、視点変換処理を一部省略することができるので、視点変換処理を高速化することができる。また、生成される視点変換画像TIのサイズが小さくなるので、メモリ52領域の消費も抑制することができる。
視点変換処理は前述の即時観察において行われるため、視点変換処理が高速化されることにより、即時観察においてモニタ54に表示される視点変換画像TIが滑らかに移り変わることができる。視点変換画像TIが滑らかに移り変わることと、メモリ52領域および炉壁全体画像WIにおける視点変換画像TIの重なり幅を考慮して、奥側切出位置flを設定すればよい。
本実施形態において、カメラ30には広角レンズが取り付けられているが、広角レンズを取り付けた場合、レンズの外周は光学系の周辺部にあたるため光量が低下して画像が暗くなる場合がある。また安価な広角レンズの場合、レンズの外周は画像に歪曲が生じる場合がある。レンズの外周は視点変換画像TIにおける手前側視野限界neに近い領域に相当し、この暗部と歪曲を残したまま炉壁全体画像WIを合成すると、視点変換画像TIのつなぎ目が不連続になってしまう。
そこで、炉壁画像OIから視点変換画像TIを生成するに際して、手前側視野限界neから所定の幅を持った領域の視点変換処理を行わず視点変換画像TIの領域として含めないようにしてもよい。
図9に示すように、視点変換画像TI上における手前側視野限界neに近い任意の位置に手前側切出位置nlを設定し、その手前側切出位置nlよりカメラ30の手前側の手前側領域naについては視点変換処理を行わず、手前側切出位置nlよりカメラ30から奥側の領域について視点変換処理を行う。より具体的には、前述の視点変換処理において、座標変換テーブルのうち、手前側切出位置nlよりカメラ30から奥側の領域に対応する座標のみを参照し、炉壁画像OIから視点変換画像TIを生成する。
このようにすることで、広角レンズにより生じる視点変換画像TIの暗部と歪曲を取り除くことができるので、炉壁全体画像WIを合成する際に生じる視点変換画像TIのつなぎ目の不連続さを低減することができる。
もちろん、奥側切出位置flと手前側切出位置nlを同時に設定し、その間の領域について視点変換処理を行えば、前述の効果を同時に得ることができる。
(他の実施形態)
前述の実施形態おいて、カメラ30は押出機20の押板21の背面に取り付けられているが、これに代えて、カメラ挿入専用の装置に取り付ける実施形態としてもよい。この場合、カメラはコークスの押出方向と同じ方向を向くように取り付けてもよい。このとき、炉壁全体画像WI合成の配置手順は前述の配置手順3において、視点変換画像TIを、撮影順が後の視点変換画像TIが前面に来るように重ね合わせる手順とすればよい。
また、広角レンズを用いずに2台のカメラで左右の炉壁を斜視像として撮影する実施形態としてもよい。さらに必要であれば、カメラを高さ方向に複数台取り付け、高さ方向の撮影可能範囲を広くしてもよい。
また、前述の実施形態おいて、すべての視点変換画像TIを生成した後に炉壁全体画像WIを合成するとしたが、これに限られず、視点変換画像TIを生成しながら炉壁全体画像WIを合成する実施形態としてもよい。
OI 炉壁画像
TI 視点変換画像
WI 炉壁全体画像
V 視野
O 視野範囲外領域
10 コークス炉
11 炉壁
20 押出機
30 カメラ
40 エンコーダ
50 コンピュータ

Claims (6)

  1. カメラをコークス炉内に挿入し、
    該カメラのコークス炉内におけるカメラ位置と対応付けながら、コークス炉内の炉壁を斜視像として順次撮影し、
    前記炉壁の斜視像を視点変換処理して、炉壁を正面から見た画像であって、カメラの上下の視野角の範囲外である視野範囲外領域が含まれた視点変換画像を生成し、
    前記視点変換画像を、対応する前記カメラ位置をもとにつなぎ合せることで炉壁全体画像を合成する方法であって、
    前記炉壁全体画像の合成に際し、隣り合う前記視点変換画像を、前記視点変換画像の手前側視野限界が前面に来るように、かつ、前記視点変換画像の視野範囲外領域を透明色として重ね合わせる
    ことを特徴とするコークス炉壁観察方法。
  2. 前記視点変換画像の生成に際し、
    前記視点変換画像のカメラの奥側の視野限界である奥側視野限界から所定の幅を持った領域の視点変換処理を行わない
    ことを特徴とする請求項記載のコークス炉壁観察方法。
  3. 前記視点変換画像の生成に際し、
    前記視点変換画像の手前側視野限界から所定の幅を持った領域の視点変換処理を行わない
    ことを特徴とする請求項または記載のコークス炉壁観察方法。
  4. コークス炉内を移動しながら、コークス炉内の炉壁を斜視像として順次撮影するカメラと、
    該カメラのコークス炉内におけるカメラ位置を計測する位置検出手段と、
    前記カメラで撮影した前記炉壁の斜視像と、前記位置検出手段で計測した前記カメラ位置とを取り込み、画像処理を行う画像処理手段とを備えたコークス炉壁観察装置であって、
    前記画像処理手段は、
    前記炉壁の斜視像を視点変換処理して、炉壁を正面から見た画像であって、カメラの上下の視野角の範囲外である視野範囲外領域が含まれた視点変換画像を生成し、
    前記視点変換画像を、対応する前記カメラ位置をもとにつなぎ合せることで炉壁全体画像を合成し、
    前記炉壁全体画像の合成に際し、隣り合う前記視点変換画像を、前記視点変換画像の手前側視野限界が前面に来るように、かつ、前記視点変換画像の視野範囲外領域を透明色として重ね合わせる
    ことを特徴とするコークス炉壁観察装置。
  5. 前記画像処理手段は、
    前記視点変換画像の生成に際し、
    前記視点変換画像のカメラの奥側の視野限界である奥側視野限界から所定の幅を持った領域の視点変換処理を行わない
    ことを特徴とする請求項記載のコークス炉壁観察装置。
  6. 前記画像処理手段は、
    前記視点変換画像の生成に際し、
    前記視点変換画像の手前側視野限界から所定の幅を持った領域の視点変換処理を行わない
    ことを特徴とする請求項または記載のコークス炉壁観察装置。
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