JP5367506B2 - 筆記具 - Google Patents
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Description
これらの筆記具は、従来にない簡単な構造で、ペン先となるペン体の反対側が簡単に視認でき、線引きの終点位置を容易に認識できたり、また、インキの終了時期も簡単に認識することができる点で優れたものである。
また、上記特許文献2では、インキの終了サインはインキ誘導部材を視認するものであり、しかも、軸筒の一部、若しくは筆記部に筆記方向を視認できる別部材となる可視部を備えた構造としたので、インキ誘導部材を作製するためには、インキをシールさせる必要があり、また、部品点数も多くなるなどの点に若干の課題がある。
(1) ペン本体内のインキをペン先に供給することで筆記可能となる筆記具において、ペン先が多孔体から構成されると共に、該多孔体を構成する多孔体材料とインキの屈折率の差が0.1以下となるインキがペン先となる多孔体に供給されることにより、該多孔体が視認部となることを特徴とする筆記具。
(2) 多孔体材料の屈折率が1.34〜1.60の範囲であることを特徴とする上記(1)記載の筆記具。
(3) インキの屈折率が、1.33〜1.50の範囲であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の筆記具。
(4) 視認部となる多孔体の視認方向の厚みが、50μm〜2mmであることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の筆記具。
(5) インキが供給された視認部は、可視光線を40%以上透過することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の筆記具。
(6) インキを使い終わると視認部が不透明になることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の筆記具。
なお、本発明で規定する「屈折率」とは、直進する光が異なる物質の境界進行方向を変える角度の割合のことをいい、スネルの法則により光の角度と対応づけられている。
また、「多孔体とインキの屈折率の差が0.1以下」とは、ペン先を構成する多孔体材料の屈折率とインキ成分の屈折率との差が0.1以下となることを意味するものである。
また、本発明の筆記具では、インキを使い終わり、インキの供給がなくなると、視認部は透明又は半透明でなくなり、不透明(非視認部)となるのでインキの終了が簡単に確認することができるものとなる。
図1〜図3は、本発明の実施形態の一例を示す筆記具であり、図1は筆記具の縦断面図、図2(a)はペン先となる多孔体の正面図、(b)はその側面図、図3は筆記具の使用状態であるペン先が視認部となる態様の部分縦断面図である。
本実施形態の筆記具Aは、マーキングペンタイプの筆記具であり、図1に示すように、ペン本体(筆記具本体)となる軸筒10、インキ吸蔵体20、ペン先30及び尾栓40とを備えた構造となっている。
軸筒10は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ガラス等で形成されるものであり、筆記具用インキを含浸したインキ吸蔵体20を収容する本体部11と、多孔体材料からなるペン先30の前方側のペン部31を固着する先軸部12とペン先30の後方側の中継部32を保持する環状の保持部13を有している。
なお、上記軸筒10の後端側開口部は、軸筒10と同一素材又は別の合成樹脂製素材にて成形される尾栓40により封止されている。
具体的に用いることができる各成分としては、溶媒として、例えば、水(精製水、イオン交換水、蒸留水等)、エタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルシクロヘキサン、キシレン、シリコーン等を用いることができ、また、インキに使用する色材としては、染料、顔料などを用いることができる。染料を用いた方がインキに透明性があり、顔料を用いると透明度が下がるため、染料インキを用いた場合の方が透明性を付与し易い傾向にある。更に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられるその他の任意成分、例えば、固着剤、分散剤、活性剤、湿潤剤、防腐剤等を含有することができる。
用いることができる多孔体材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(PP、PE等)、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリエステル系樹脂(PET等)、ポリエチレンナフタレート系樹脂(PEN)、その他各種樹脂が挙げられる。好ましくは、低屈折率の樹脂が望ましい。特に、低屈折率の樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられる。また、多孔体の構造としては、上記インキの屈折率との差が0.1以下となるものであれば、その形態としては焼結体、スポンジ、繊維芯等を含むものである。
この多孔体の厚みが50μm未満の場合、視認部の透明性は高いが、インキ流出量が少なく、筆記描線がかすれてしまうこととなる。一方、視認部となる多孔体の厚みが2mmを超えてより厚くなる場合、インキ流出量は多いが、視認部の透明性が不十分となり、筆記方向を視認することができなくなる。
また、上記多孔体とインキの屈折率の差が0.1を超える場合は、インキが多孔体に供給されても、多孔体は視認部(可視化)とならず、目的の効果を発揮することができないものとなる。
なお、筆記部となるペン部31の描線幅は、通常のマーキングペンの描線幅となるものであり、少なくとも、描線幅2mm以上、好ましくは、3mm以上であることが望ましい。
また、インキが切れることにより多孔体材料との屈折率差が0.1を超えることにより、視認部となるペン部31全体が不透明となることにより、インキ終了サインとなるので、確実にインキの終了を検知することができるものとなる。
なお、本実施形態の軸筒10の周面は着色(例えば、白色により不透明又は素材が不透明となっているものであり、軸筒内を視認することができず、図3中では視認性を有する部位はペン先30(ぺン部31)のみとなっている。
本実施形態のペン先30以外の筆記部の構成は、図1と同様の軸筒10、インキ吸蔵体20を用いて筆記具Aと同様に使用することができる。
本実施形態のペン先30は、上述の実施形態と同様に多孔体材料から構成された、前方側のペン部31と後方側の中継部32とを有すると共に、ペン部31を補強等する別部材からなる保護部材33から構成されるものである。
この図4に示す構造となるペン先30を使用した筆記具では、インキが供給されたペン部31、透明性を有する保護部材33を介して筆記方向側を視認することができるため、保護部材33を合わせたペン先(ペン部)全体を視認部とすることができる。
筆記具の各構成部品は、下記のものを用いた。
また、用いたインキ、ペン先を構成する多孔体材料の屈折率は下記方法により、測定した。
用いた筆記具は、図1〜3に示す筆記具に準拠した筆記具である。
軸筒:PP製、110mm×12φmm
インキ吸蔵体:PET繊維中綿」、気孔率85%(ユニポイント社製)
ペン先:各実施例及び比較例
インキ:各実施例及び比較例
屈折率はデジタルアッベ屈折率計 DR−A1(株式会社アタゴ製)を使用して測定した。
ペン先となる多孔体を低密度PE(屈折率1.51)を用いて、焼結して作製した。視認方向の厚さ400μmであり、描線幅は5mmとした。
インキ成分は下記配合組成を用いた。
溶媒:シリコーン(KF56A、信越シリコーン社製、屈折率1.495
97 質量%
色材:OIL PINK(オリエント工業社製) 1 質量%
樹脂:ヒタノール1501(日立化成工業社製) 2 質量%
インキ成分全体の屈折率は、1.50であった。また、多孔体とインキとの屈折率の差は0.01であった。
上記多孔体、インキなどを用いて図1〜図3に準拠した筆記具を作製した。
ペン先となる多孔体をテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(屈折率1.34)を用いて、焼結して作製した。視認方向の厚さ400μmであり、描線幅は5mmとした。
インキにはPUS102Tで使用している蛍光インクを使用した。溶媒として使用した水の屈折率は1.33である。
インキ成分全体の屈折率は、1.38であった。また、多孔体とインキとの屈折率の差は0.04であった。
また、保護部材として透明性を有するアクリル製部材(透過率92%)を用いた。
上記多孔体、インキ、保護部材などを用いて図1、図3、図4(ペン先)に準拠した筆記具を作製した。
多孔体をPE(屈折率1.53)を用いて、焼結して作製した。視認方向の厚さ200μmであり、描線幅は5mmとした。
インキ成分は上記実施例2で用いた配合組成を用いた。多孔体とインキとの屈折率の差は0.04であった。
上記多孔体、インキなどを用いて図1〜図3に準拠した筆記具を作製した。
これらの評価結果を書き表1に示す。
(視認部となる多孔体の透明性の評価方法)
筆記方向の文字が多孔体を介して視認できるか否か官能評価した。また、この場合の透明性を可視光線の透過率を測定して下記評価基準で評価した。
視認部の透明性は、視感度透過率計・STS−4(富士光電社製)で測定した。
評価基準:
◎:視認性非常に良好。視認部の向こう側の文字が鮮明に見え読み取れる。透過率80%以上100%
○:視認性良好。視認部の向こう側の文字を読み取れるが◎よりは劣る。透過率60%以上80%未満
○´:視認できるレベル。透過率50%以上60%未満
△:視認できるが、読み取り難い。透過率40%以上50%未満
×:視認出来なかった。透過率40%未満。
評価基準:
◎:かすれなし。十分にインキが流出している。
○:かすれなし。
○´:若干のかすれを生じている。
△:かすれている。流量が足りない。
×:かすれが著しくインク流量が足りない。
これに対して、比較例1では、インキが供給されると多孔体は若干半透明になるものの、視認部の向こう側を確認できるほど透明にならなかった。汎用のマーキンペンと同様であった。
図2の視認部の厚みが30μm、50μm、400μm、2mm、4mmとなる5種類のペン先を用いて、実施例1と同様の筆記具、インキを用いて、上記評価方法により、透明性の確認と、描線のかすれの評価を行った。
これらの結果を下記表2に示す。
10 軸筒(ペン本体)
20 インキ吸蔵体
30 ペン先
31 ペン部(筆記部)
Claims (6)
- ペン本体内のインキをペン先に供給することで筆記可能となる筆記具において、ペン先が多孔体から構成されると共に、該多孔体を構成する多孔体材料とインキの屈折率差が0.1以下となるインキがペン先となる多孔体に供給されることにより、該多孔体が視認部となることを特徴とする筆記具。
- 多孔体材料の屈折率が1.34〜1.60の範囲であることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
- インキの屈折率が、1.33〜1.50の範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具。
- 視認部となる多孔体の視認方向の厚みが、50μm〜2mmであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の筆記具。
- インキが供給された視認部は、可視光線を40%以上透過することを特徴とする請求項1〜4記載の何れか一つに筆記具。
- インキを使い終わると視認部が不透明になることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の筆記具。
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