JP5365873B2 - 電極および電池 - Google Patents

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Description

本発明は、集電体と活物質層との密着性に優れた電極およびそれを備えた電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(videotape recorder)、携帯電話あるいは携帯用コンピューターなどのポータブル電子機器の高性能化および多機能化に伴い、それらの電源である二次電池の高容量化が要求されている。現在、一般的に使用されている負極に黒鉛を用いたリチウムイオン二次電池では、技術的に成熟しつつあることから、電池容量は飽和状態にあり、大幅な高容量化は難しい。そこで、負極にケイ素を用いることが検討されており、最近では、気相法などにより負極集電体に負極活物質層を形成することも報告されている。ケイ素は充放電に伴う膨張収縮が大きいので、微粉化によるサイクル特性の低下が問題であったが、気相法によれば、微細化を抑制することができると共に、負極集電体と負極活物質層とを一体化することができるので負極における電子伝導性が極めて良好となり、容量的にもサイクル寿命的にも高性能化が期待されている。
しかし、このように負極集電体と負極活物質層とを一体化した負極においても、充放電を繰り返すと、負極活物質層の激しい膨張および収縮により負極集電体と負極活物質層との間に応力がかかり、負極活物質層の脱落などが生じてサイクル特性が低下するという問題が懸念されていた。そこで、負極集電体の表面を粗化することにより、負極活物質層と負極集電体との密着性を向上させることが既に検討されている(例えば、特許文献1,2参照)。
国際公開第WO01/031723号パンフレット 特開2002−313319号公報
しかしながら、負極活物質層と負極集電体との密着性を高めるために負極集電体の表面粗さを大きくしすぎると、負極集電体の表面の一部に設けられる電極リード(タブ)との界面においてインピーダンスが増大してしまい、結果としてサイクル特性の劣化を招くおそれがある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、集電体と活物質層との密着性を高めつつ、集電体と電極リードとの接続抵抗を低く抑えることのできる電極を提供することにある。本発明の第2の目的は、上記のような電極を備えることにより、優れたサイクル特性を発現する電池を提供することにある。
本発明の電極は、基材上に粒子状の第1の突起部を有する活物質層形成領域、および基材上に電解析出法によって形成された粒子がプレス成型により塑性変形し平坦化された平滑領域を含む集電体と、この集電体の活物質層形成領域に設けられた活物質層とを備え、平滑領域に電極リードが接続されるようにしたものである。
本発明の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、正極および負極のうちの少なくとも一方は、基材上に粒子状の第1の突起部を有する活物質層形成領域、および基材上に電解析出法によって形成された粒子がプレス成型により塑性変形し平坦化された平滑領域を含む集電体と、この集電体の活物質層形成領域に設けられた活物質層とを備え、平滑領域に電極リードが接続されるようにしたものである。
本発明の電極によれば、集電体が、基材上に粒子状の第1の突起部を有する活物質層形成領域、および基材上に電解析出法によって形成された粒子がプレス成型により塑性変形し平坦化された平滑領域を含むようにしたので、集電体と活物質層との密着性を向上させつつ、集電体と電極リードとの接続抵抗を低く抑えることができる。よって、本発明の電池によれば、上記の電極を備えるようにしたので、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す分解斜視図である。 図1に示した巻回電極体のII−II線に沿った構成を表す断面図である。 図2に示した負極20の展開図である。 図3に示した負極20の要部を拡大して示した断面図である。 図3に示した負極20の要部を拡大して示した他の断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明における一実施の形態としての二次電池を分解して表すものである。この二次電池は、いわゆるラミネートフィルム型といわれ、正極リード11および負極リード21が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化に適している。
正極リード11および負極リード21は、それぞれ、外装部材40の内部から外部へ向けてほぼ同一方向に導出されている。正極リード11および負極リード21は、例えば、アルミニウム(Al),銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいはステンレス鋼などの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状となっている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード11および負極リード21との間には、外気などの侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード11および負極リード21に対して密着性を有する材料であるポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図2は、図1に示した巻回電極体30のII−II線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体30は、正極10と負極20とがセパレータ31および電解質層32を介して積層されて巻回されたものであり、最外周部は保護テープ33により保護されている。
正極10、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体12の両面または片面に正極活物質層13を設けたものである。正極集電体12は、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。正極集電体12のうちの正極活物質層13が設けられていない露出領域の一部には、正極リード11が設けられている。正極活物質層13は、例えば、正極活物質と、導電材と、ポリフッ化ビニリデンなどの結着材とを含んで構成されている。導電材としては、例えば、黒鉛,カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。結着材としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム,フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。
正極活物質は、軽金属であるリチウムを吸蔵および離脱することの可能な正極材料の1種または2種以上を含むものである。そのような正極材料としては、例えば、一般式がLip Mn(1-p-q-r) Niq MIr 2-s t 2で表される層状岩塩型のリチウム複合酸化物が挙げられる。式中のMIは、例えばコバルト(Co),マグネシウム(Mg),アルミニウム,ホウ素(B),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr),鉄,銅(Cu),亜鉛(Zn),ジルコニウム(Zr),モリブデン(Mo),スズ(Sn),カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)のうちの1種以上の金属元素を表す。p,q,r,s,tは、それぞれ、例えば0<p≦0. 2,0. 1≦q≦0. 8,0≦r≦0. 5,−0. 1≦s≦0. 2,0≦t≦0.1の範囲内の値である。あるいは、一般式がLia Mn(2-b) MIIb c dで表されるスピネル型のリチウム複合酸化物を正極材料として用いるようにしてもよい。式中、MIIは、コバルト,ニッケル,マグネシウム,アルミニウム,ホウ素,チタン,バナジウム,クロム,鉄,銅,亜鉛,モリブデン,スズ,カルシウム,ストロンチウムおよびタングステンのうちの1種以上の金属元素を表す。a,b,c,dは、それぞれ、例えばa≧0.9,0≦b≦0.6,3.7≦c≦4.1,0≦d≦0.1の範囲内の値である。さらには、一般式がLiX MIIIPO4で表されるオリビン型のリチウム複合酸化物を正極材料として用いることも可能である。xは、例えばx≧0.9を満たす値である。
なお、このような正極材料は、例えば、リチウムの炭酸塩,硝酸塩,酸化物あるいは水酸化物と、遷移金属の炭酸塩,硝酸塩,酸化物あるいは水酸化物とを所望の組成になるように混合し、粉砕したのち、酸素雰囲気中において600℃〜1000℃の範囲内の温度で焼成することにより調製される。
図3は、図1および図2に示した負極20を展開して表すものである。具体的には、図3(A)が平面図であり、図3(B)が図3(A)のIIIB−IIIB線に沿った断面図である。負極20は、図3(A),図3(B)に示したように、帯状の負極集電体22の両面に負極活物質層23が選択的に設けられた構造を有している。詳細には、負極集電体22の両面に負極活物質層23が存在する活物質層形成領域としての被覆領域22Aと、この被覆領域22Aを挟むように巻回中心側および巻回外周側の端部に位置し、負極集電体22の両面とも負極活物質層23が存在せずに露出した状態である平滑領域としての露出領域22S,22Eとを有している。負極リード21は、巻回中心側の露出領域22Sに接合されている。
図4は、図3(B)に示した負極20の要部を拡大した断面図である。なお、図4では、負極集電体22の片面のみに負極活物質層23が設けられた様子を示し、もう一方の面に設けられた負極活物質層23については図示を省略することとする。被覆領域22Aにおいて、負極集電体22は、基材221の上に粒子状の突起部222が複数設けられた構造となっている。突起部222によるアンカー効果により、負極集電体22と負極活物質層23との密着性を向上させることができる。突起部222は、例えば電解析出法によって形成されたものである。突起部222が設けられた被覆領域22Aにおける負極集電体22の表面粗さは、JIS B0601付属書1記載の10点平均粗さRz値で1.8μm以上10.0μm以下であることが望ましい。このような範囲において負極集電体22と負極活物質層23との、より効果的な密着性が得られるからである。一方、露出領域22Sの全ての面(あるいは、少なくとも負極21と接合される面)には突起部222が設けられておらず、基材221の平滑な表面が露出した状態となっている。したがって、露出領域22Sにおける負極集電体22の表面粗さは、被覆領域22Aにおける表面粗さよりも小さくなっており、具体的にはJIS B0601付属書1記載の10点平均粗さRz値で1.7μm以下であることが望ましい。これにより、負極リード21と基材221とが界面21Kにおいて十分に密接した接合状態が得られる。
基材221は、リチウム(Li)と金属間化合物を形成しない金属元素を含む金属材料により構成されていることが好ましい。リチウムと金属間化合物を形成すると、充放電に伴い膨張および収縮し、構造破壊が起こって、集電性が低下するうえ、負極活物質層23を支える能力が小さくなるからである。なお、ここでいう金属材料とは、金属元素の単体のみならず、2種以上の金属元素あるいは1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなる合金をも含む概念である。リチウムと金属間化合物を形成しない金属元素としては、例えば、銅(Cu),ニッケル(Ni),チタン(Ti),鉄(Fe)あるいはクロム(Cr)が挙げられる。これらの金属元素を含む金属箔であれば、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を得ることができる。
また、基材221は、負極活物質層23と合金化することが可能な金属元素を含む方がより好ましい場合もある。合金化により負極集電体22と負極活物質層23との密着性をより向上させることができるからである。リチウムと金属間化合物を形成せず、負極活物質層23と合金化する金属元素、すなわちケイ素と合金化する金属元素としては、銅,ニッケルあるいは鉄が挙げられる。中でも、銅は導電性および強度の面からも好ましい。
基材221は、単層構造としてもよいが、複数層からなる多層構造としてもよい。基材221を多層構造とする場合、例えば負極活物質層23と接する層を負極活物質層23と合金化しやすい金属材料により構成し、それ以外の層を他の金属材料により構成するようにすればよい。
突起部222は、被覆領域22Aにおける基材221の表面に設けられており、負極活物質層23と合金化することが可能な元素を含むことが好ましい。合金化により負極活物質層23との密着性をより向上させることができるからである。ケイ素と合金化しやすい元素としては、例えば、銅,ニッケル,鉄,アルミニウム,インジウム(In),コバルト(Co),マンガン(Mn),亜鉛(Zn),銀(Ag),スズ(Sn),ゲルマニウム(Ge)あるいは鉛(Pb)が挙げられる。突起部222の構成元素は、基材221と同一でも異なっていてもよい。
突起部222の形状は、球状あるいは角状などどのような形状でもよい。突起部222の平均径は、50nm以上5μm以下であることが好ましく、100nm以上4μm以下であればより好ましい。平均径が小さすぎると十分なアンカー効果が得られず、大きすぎても負極集電体22と負極活物質層23との接着性が低下する傾向があるからである。
負極活物質層23は、例えば、気相法,液相法,焼成法および溶射法からなる群のうちの1種以上の方法により少なくとも一部が形成されたものであることが好ましく、それらの2種以上を組み合わせて形成されたものでもよい。充放電に伴う負極活物質層23の膨張・収縮による破壊を抑制することができると共に、負極集電体22と負極活物質層23とを一体化することができ、負極活物質層23における電子伝導性を向上させることができるからである。なお、「焼成法」というのは、活物質を含む粉末とバインダーとを混合し成形した層を、非酸化性雰囲気下等で熱処理することにより、熱処理前よりも体積密度が高く、より緻密な層を形成する方法である。
負極活物質層23は、負極集電体22との界面の少なくとも一部において負極集電体22と合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体22の構成元素が負極活物質層23に、または負極活物質層23の構成元素が負極集電体22に、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。密着性を向上させることができ、負極活物質層23が膨張収縮により負極集電体22から脱落してしまうことを抑制することができるからである。なお、上述した元素の拡散も合金化の一形態に含める。
負極活物質層23は、また、導電性粒子と結着材との混合物を有するものとしてもよい。これにより負極活物質層23は、導電性を確保しつつ、自らの膨張収縮による応力を緩和し、負極集電体22との密着性をより高めることができる。
導電性粒子としては、例えばケイ素(Si),金(Au),銀(Ag),銅,スズ(Sn),ビスマス(Bi),亜鉛(Zn),ニッケル,パラジウム(Pd),クロム(Cr),インジウム(In),アンチモン(Sb),アルミニウム,ゲルマニウム(Ge),タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn),チタン(Ti)もしくはマグネシウム(Mg)の単体またはそれらの合金からなるものが挙げられる。導電性粒子は、特に、ケイ素を構成元素として含んでいることが望ましい。ケイ素はリチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。炭素粒子としては、例えばカーボンブラックが挙げられる。導電性粒子の平均粒子径は、0.5μm以上5.0μm以下であることが望ましい。平均粒子径があまりにも小さいと凝集してしまい、導電性にばらつきが生じてしまう。また、平均粒子径が大きすぎると導電性粒子同士の接触性が低下し、導電性の低下を招くこととなる。
結着材としては、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられ、そのいずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。熱可塑性樹脂としては、水素結合性の官能基を有するものが好ましい。より高い効果を得ることができるからである。これは、金属との間で水素結合をすることにより濡れ性がよくなるためであると考えられる。水素結合性を有する官能基としては、例えば、水素基、アミド基、ウレア基、イミド基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、あるいはケトン基が挙げられる。水素結合性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリビニルエーテル、ポリサルホン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル、メタクリル樹脂、あるいはアイオノマー樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、メラミン樹脂、あるいはウレア樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェノルエタン型エポキシ樹脂、ポリアルコールポリグリコール型エポキシ樹脂、グリセリントリエーテル型エポキシ樹脂、ポイオレフィン型エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、シクロペンタジエンジオキシド、あるいはビニルシクロヘキセンジオキシドが挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂あるいはノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
セパレータ31は、正極10と負極20とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ31は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどよりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ31を構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化したりすることで用いることができる。
セパレータ31の上に設けられた電解質層32は、電解質塩であるリチウム塩を液状の溶媒(例えば有機溶剤などの非水溶媒)に溶解させた電解液を含有している。
この非水溶媒は、鎖状炭酸エステルおよび環状炭酸エステルからなる群のうちの少なくとも1種を含んでおり、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、1,3−ジオキソール−2−オン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホランあるいはジメチルスルホキシド燐酸などである。電解液を備えた電気化学デバイスにおいて、優れた容量特性、高温保存特性および高温サイクル特性が得られるからである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、溶媒は、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)とを混合して含んでいるのが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するため、より高い効果が得られるからである。
特に、鎖状炭酸エステルおよび環状炭酸エステルは、化1に示したハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルおよび化2に示したハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルからなる群のうちの少なくとも1種を含んでいるのが好ましい。より高い効果が得られるからである。
Figure 0005365873
(R1〜R6は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基を表し、それらは互いに同一でもよいし異なってもよい。但し、R1〜R6のうちの少なくとも1つはハロゲンを構成元素として有する。)
Figure 0005365873
(R7〜R10は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基を表し、それらは互いに同一でもよいし異なってもよい。但し、R7〜R10のうちの少なくとも1つはハロゲンを構成元素として有する。)
化1に示したハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルは、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
化2に示したハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルとしては、R7〜R10がアルキル基あるいはハロゲン化アルキル基である場合、それらの炭素数が1あるいは2程度であるものが好ましい。具体的には、化3および化4に示した一連の化合物が挙げられる。すなわち、化3に示した(1)の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(2)の4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(3)の4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(4)のテトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(5)の4−フルオロ−5−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(6)の4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(7)のテトラクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(8)の4,5−ビストリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(9)の4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(10)の4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(11)の4−メチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(12)の4−エチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。また、化4に示した(1)の4−トリフルオロメチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(2)の4−トリフルオロメチル−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(3)の4−フルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(4)の4,4−ジフルオロ−5−(1,1−ジフルオロエチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン、(5)の4,5−ジクロロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(6)の4−エチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(7)の4−エチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(8)の4−エチル−4,5,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(9)の4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、ハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルは、化3(1)の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、化3(3)の4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンがより好ましい。容易に入手可能であると共に、より高い効果が得られるからである。特に、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、より高い効果を得るために、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。
Figure 0005365873
Figure 0005365873
リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6),四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4),六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6),六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF6),過塩素酸リチウム(LiClO4),四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4)などの無機リチウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3Li),リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド((CF3SO22NLi),リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミド((C25SO22NLi),リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホン)メチド((CF3SO23CLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸誘導体のリチウムリチウム塩が挙げられる。リチウム塩は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上混合して用いる場合、LiPF6 を主成分とすることが望ましい。LiPF6 は、導電率が高く、酸化安定性にも優れているからである。
これらリチウム塩の含有量(濃度)は溶媒に対して0.5mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲外ではイオン伝導度の極端な低下により十分な電池特性が得られなくなる恐れがあるからである。
また、電解質層32としては、高分子化合物に電解液を保持させたゲル状の電解質によって構成するようにしてもよい。高分子化合物は、例えば、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体である。具体的には、ポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンを成分とする共重合体が挙げられる。共重合体の具体例としては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体,フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、あるいはこれらにさらに他のエチレン性不飽和モノマーを共重合したものなどが挙げられる。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を用いる場合、この共重合体に対する電解液の存在比(重量比)は、5以上12以下とすることが望ましい。このほか、高分子化合物としては、ポリアクリロニトリル,ポリエチレンオキシド,ポリメチルメタクリレート,ポリ塩化ビニルあるいはこれらの誘導体も用いることができる。高分子化合物には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、正極活物質と結着材と導電材とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体12の両面または片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層13を形成する。続いて、正極集電体12に正極リード11を、超音波溶接やスポット溶接などにより接合することで正極10を作製する。
負極20については、以下のように作製する。
まず、基材221としての金属箔を用意し、これに電解析出法などにより突起部222を全面に亘って形成して負極集電体22を作製する。その際、基材221に電解銅箔を用いるようにすれば、容易に負極集電体22を製造することができるので好ましい。
次いで、負極集電体22の被覆領域22Aに、例えば、気相法,液相法,焼成法,溶射法あるいはそれらの2以上の方法を用いて負極活物質層23を成膜する。気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法が挙げられ、具体的には、真空蒸着法,スパッタ法,イオンプレーティング法,レーザーアブレーション法,あるいはCVD(Chemical
Vapor Deposition ;化学気相成長)法などが挙げられる。液相法としては例えば鍍金が挙げられる。
負極活物質層23を成膜したのち、露出領域22Sにおける突起部222をロールプレス機などにより圧縮して(塑性変形させて)平坦化し、平滑領域を形成する。次いで、負極リード21を、負極集電体22における平滑領域に超音波溶接やスポット溶接などにより接合することで負極20を作製する。なお、この際、露出領域22Sの全てを平滑領域としてもよいが、露出領域22Sのうち、少なくとも負極リード21と接合することとなる領域を平滑領域とすればよい。また、基材221の全面に亘って突起部222を形成するのではなく、負極活物質層23を形成することとなる被覆領域22Aのみに突起部222を選択的に形成するようにしてもよい。その場合、平滑領域を形成するためのプレス処理が不要となる。なお、電極リード21を形成する平滑領域では、負極集電体22の表面が完全な平坦面となっていることが望ましい。但し、例えば図5に示したように、変形後の突起部222Aが残存していても、その突起部222Aの高さh2が被覆領域22Aの突起部222の高さh1よりも低いのであれば、後述する接合抵抗の低減効果が得られる。
なお、負極活物質層23の成膜時に、負極活物質層23と負極集電体22との合金化が同時に起こる場合もあるが、負極活物質層23を成膜したのちに、真空雰囲気下または非酸化性雰囲気下で熱処理を行い、合金化するようにしてもよい。これにより図3および図4などに示した負極20が得られる。
こののち、正極10と負極20とをセパレータ31を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ33を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。さらに電解液を外装部材40の内部に注入したのち、外装部材40の開口部を熱融着して密封する。その際、正極リード11および負極リード21と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
また、電解液を高分子化合物に保持させる場合には、以下のように製造するとよい。まず、上述した方法により形成した巻回電極体30の前駆体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、必要に応じて重合開始剤と、重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入したのち、外装部材40の開口部を熱融着して密封する。そののち、必要に応じて熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層32を形成し、図1および図2に示した二次電池を組み立てるようにすればよい。
なお、巻回体を作製してから電解質用組成物を注入するのではなく、例えば、正極10および負極20の上に電解質用組成物を塗布したのちに巻回したものを外装部材40の内部に封入し、さらに必要に応じて加熱して電解質層32を形成するようにしてもよい。また、正極10および負極20の上に電解質用組成物を塗布し、必要に応じて加熱して電解質層32を形成したのちに巻回し、外装部材40の内部に封入するようにしてもよい。但し、外装部材40の内部に封入したのちに電解質層32を形成するようにした方が好ましい。電解質層32とセパレータ31との界面接合を十分に向上させることができ、内部抵抗の上昇を抑制することができるからである。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層13からリチウムイオンが放出され、電解質層32を介して負極活物質層23に吸蔵される。一方、放電を行うと、負極20からリチウムイオンが放出され、電解質層32を介して正極10に吸蔵される。本実施の形態では、被覆領域22Aに突起部222を備えた負極集電体22を用いているので、負極集電体22と負極活物質層23との密着性が向上しており、充放電により負極活物質層23が膨張収縮しても、負極集電体22からの負極活物質層23の剥離や脱落が抑制される。その一方で、突起部222の存在しない平滑な表面を有する露出領域22S(平滑領域)に負極リード21が設けられているので、負極リード21と基材221とが界面21Kにおいて十分に密接した接合状態が得られる。
このように本実施の形態によれば、基材221の表面に突起部222を設けるようにしたので、負極集電体22と負極活物質層23との密着性を向上させることができ、負極活物質層23の剥離を抑制することができる。その一方で、負極リード21を、被覆領域22Aよりも小さな表面粗さを有する露出領域22S(平滑領域)に設けるようにしたので、負極集電体22と負極リード21との接合抵抗(インピーダンス)を低く抑えることができる。よって、サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。
さらに、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1〜1−8)
本実施例では、上記実施の形態に対応した二次電池を作製した。
まず、基材221として厚み12μmの電解銅箔を用意し、電解析出法により突起部222を形成することにより負極集電体22を作製した。その際、負極集電体22の被覆領域22Aにおける表面粗さ(10点平均粗さ)Rz値を表1に示したように変化させ、負極集電体22の両面(マット面およびシャイン面)における表面粗さRz値をそれぞれ示すようにした。但し、本実施例では、シャイン面の表面粗さRz値を全て5.8μmとした。なお、ここでは、銅イオンが溶解された電解液中に金属製の電解ドラムを浸漬し、この電解ドラムを回転させながら電流を流すことにより、その表面に析出させた電解銅箔を用いた。この電解銅箔における電解液に面する側の面がマット面であり、電解ドラムに接する側の面がシャイン面である。電解処理により銅微粒子を析出させることによって表面を粗面化した状態において、マット面側では銅微粒子がランダムに形成されているのに対し、シャイン面側では電解ドラムの表面が有する筋状の凹凸が転写され、銅微粒子が一定の方向に沿った列状の配列をなすように形成されている。
続いて、導電性粒子として、平均粒子径が3μmのケイ素粒子と導電性炭素粒子とを用意すると共に、結着材として熱可塑性ポリイミドを用意した。次いで、ケイ素粒子70質量%と、導電性炭素粒子10質量%と、熱可塑性ポリイミド20質量%とを溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンを用いて混練し、負極合剤スラリーを作製した。この負極合剤スラリーを負極集電体22の両面の被覆領域22Aに選択的に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機でプレス成型することで負極活物質層23を形成した。この際、併せて、負極集電体22の露出領域22Sをロールプレス機でプレス成型することで、表面粗さ(10点平均粗さ)Rz値が1.7μmの平滑領域を形成した。そののち、負極集電体22の平滑領域に、ニッケルからなる負極リード21を超音波溶接により接合することで負極20を得た。
一方、正極活物質である平均粒径5μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2 )粉末92質量部と、導電材であるカーボンブラック3質量部と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合し、これを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに投入して正極合剤スラリーとした。次いで、これを厚み15μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体12に塗布して乾燥させたのちプレス成型を行い、正極活物質層13を形成した。さらに、アルミニウムからなる正極リード11を超音波溶接により接合することで正極10を得た。
正極10および負極20を作製したのち、厚さ12μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムからなるセパレータ31を介して正極10と負極20とを積層し、巻回して巻回電極体30を作製した。
続いて、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを炭酸エチレン:炭酸ジエチル=3:7の質量比で混合した溶媒にLiPF6を1mol/dm3 の濃度で溶解させることで電解液を調
整した。
次いで、巻回電極体30をアルミラミネートフィルムよりなる外装部材40の間に挟み込んだのち、外装部材40の外縁部同士を、一辺を残して貼り合わせ袋状とした。その際、正極リード11および負極リード21を外装部材40の外部に導出させるようにした。
最後に、外装部材40の内部に開放辺から電解液を注入し、外装部材40の開放辺を熱融着により貼り合わせることにより実施例1−1〜1−8の二次電池を得た。
実施例1−1〜1−8に対する比較例1−1として、露出領域22Sをロールプレス機でプレス成型せずに、表面粗さの大きな状態のまま負極リード21を溶接したことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。また、比較例1−2として、負極活物質層23を形成する前に負極集電体22の全面に亘ってプレス成型を行い、被覆領域22Aのマット面の表面粗さRz値についても1.7μmとしたことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。
作製した各実施例および比較例の二次電池について、25℃の条件下で充放電試験を行い、2サイクル目に対する50サイクル目の放電容量維持率を求めた。その際、充電については、0.5Cの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で充電の総時間が3時間に達するまで行い、放電については、1Cの定電流密度で電池電圧が2.5Vに達するまで行った。放電容量維持率は、2サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の比率、すなわち(50サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100として算出した。さらに、各実施例および比較例の二次電池について、正極リード11と負極リード21との間の抵抗を測定した。それらの結果を表1に示す。
Figure 0005365873
表1に示したように、負極リード21を設ける露出領域22Sの表面粗さRz値を1.7μmとし、被覆領域22Aの表面粗さRz値を1.8μm以上とした実施例1−1〜1−8においては、比較的良好な放電容量維持率が得られた。これに対し、比較例1−1では表面粗さRz値が11.3μmである露出領域22Sに負極リード21を設けるようにしたので、実施例1−1〜1−8と比べて抵抗が増大し、放電容量維持率が低下した。また、比較例1−2では、露出領域22Sの表面粗さRz値を1.7μmとしたので実施例1−1〜1−8と同様に低い抵抗が得られたものの、被覆領域22Aのマット面の表面粗さRz値についても1.7μmとしたので負極集電体22と負極活物質層23との密着性が十分に得られず、実施例1−1〜1−8と比べて放電容量維持率が低下した。さらに、実施例1−1〜1−8の結果から、放電容量維持率は、被覆領域22Aのマット面における表面粗さRz値が1.8μmから大きくなるほどが向上し、7.4μmをピークとして徐々に低下する傾向にあることがわかった。これは、7.4μm程度までは突起部222の存在により負極集電体22と負極活物質層23との密着性向上の効果が十分に得られるが、突起部222があまりにも大きくなると、突起部222自体が基材221から剥離しやすくなるためと考えられる。
(実施例2−1〜2−6)
被覆領域22Aのマット面の表面粗さRz値を全て7.4μmとしつつ、シャイン面の表面粗さRz値を以下に示す表2のように変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして実施例2−1〜2−6の二次電池を作製した。さらに、実施例2−1〜2−6に対する比較例2−1として、負極活物質層23を形成する前に負極集電体22の全面に亘ってプレス成型を行い、被覆領域22Aのシャイン面の表面粗さRz値についても1.7μmとしたことを除き、他は実施例2−1〜2−6と同様にして二次電池を作製した。これらの実施例2−1〜2−6および比較例2−1についても、実施例1−1〜1−8と同様にして放電容量維持率および抵抗の測定を行った。その結果を、実施例1−5および比較例1−1の結果と共に表2に示す。
Figure 0005365873
表2に示したように、負極リード21を設ける露出領域22Sの表面粗さRz値を1.7μmとし、被覆領域22Aの表面粗さRz値を1.8μm以上とした実施例2−1〜2−6においては、比較的良好な放電容量維持率が得られた。これに対し、露出領域22Sの表面粗さRz値が11.3μmである比較例1−1では、実施例1−1〜1−8と比べて抵抗が増大し、放電容量維持率が低下した。また、比較例2−1では露出領域22Sの表面粗さRz値を1.7μmとしたので実施例2−1〜2−6と同様に低い抵抗が得られたものの、被覆領域22Aのシャイン面の表面粗さRz値についても1.7μmとしたので負極集電体22と負極活物質層23との密着性が十分に得られず、実施例2−1〜2−6と比べて低い放電容量維持率を示した。さらに、実施例1−1〜1−8と同様、放電容量維持率は、被覆領域22Aのシャイン面における表面粗さRz値が1.8μmから大きくなるほどが向上し、5.8μmをピークとして徐々に低下する傾向にあることがわかった。
(実施例3−1〜3−3)
露出領域22Sの表面粗さRz値を以下に示す表3のように変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして実施例3−1〜3−3の二次電池を作製した。これらの実施例3−1〜3−3についても、実施例1−5と同様にして放電容量維持率および抵抗の測定を行った。その結果を、実施例1−5の結果と共に表3に示す。
Figure 0005365873
表3に示したように、負極リード21を設ける露出領域22Sの表面粗さRz値を小さくするほど抵抗が低減され、放電容量維持率が向上することがわかった。
(実施例4−1)
露出領域22Sの平坦化を行う際、負極活物質層23についても一括してプレス成型したことを除き、他は実施例1−5と同様にして実施例4−1の二次電池を作製した。これらの実施例4−1についても、実施例1−5と同様にして放電容量維持率および抵抗の測定を行った。その結果を、実施例1−5の結果と共に表4に示す。
Figure 0005365873
表4に示したように、露出領域22Sの平坦化と共に負極活物質層23のプレス成型を行った実施例4−1は、実施例1−5と比較して、より高い放電容量維持率が得られた。これは、プレス成型により、負極集電体22と負極活物質層23との接触面積が増加し、密着性が向上したことが主な要因と考えられる。
(実施例5−1〜5−5)
負極活物質層23に含まれる導電性粒子としてのケイ素粒子の平均粒子径を以下に示す表5のように変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして実施例5−1〜5−5の二次電池を作製した。これらの実施例5−1〜5−5についても、実施例1−5と同様にして放電容量維持率および抵抗の測定を行った。その結果を、実施例1−5の結果と共に表5に示す。
Figure 0005365873
表5に示したように、平均粒子径が特に0.5μmから5.0μmの場合において、より良好な放電容量維持率が得られることがわかった。
(実施例6−1,6−2)
負極活物質層23に含まれる結着材の種類をポリアミドイミド(実施例6−1)およびポリフッ化ビニリデン(実施例6−2)としたことを除き、他は実施例1−5と同様にして実施例6−1および6−2の二次電池を作製した。なお、実施例1−5では、上述したように、熱可塑性のポリイミドを使用した。また、表面粗さRz値が全面に亘って1.7μmである電解銅箔(厚み12μm)を負極集電体として用いたことを除き、他は実施例6−1,6−2および1−5とそれぞれ同様にして比較例6−1〜6−3としての二次電池を作製した。これらの実施例6−1および6−2、ならびに比較例6−1〜6−3についても、実施例1−5と同様にして放電容量維持率の測定を行った。その結果を、実施例1−5の結果と共に表6に示す。
Figure 0005365873
表6に示したように、実施例6−1と比較例6−1との比較、実施例6−2と比較例6−2との比較、実施例1−5と比較例6−3との比較により、いずれの結着材を使用した場合においても、被覆領域22Aに突起部222を設け、表面粗さRz値を大きくすることで、放電容量維持率の向上が図れることがわかった。
(実施例7−1〜7−5)
巻回電極体30を作製する前に、負極20を減圧雰囲気において熱処理を行うようにしたことを除き、他は実施例1−5と同様にして実施例7−1〜7−5の二次電池を作製した。熱処理条件、すなわち、加熱温度(℃)および加熱時間(h)については以下の表7に示した通りである。なお、作成した負極20について断面を切り出し、負極集電体22と負極活物質層23との界面をAES(オージェ電子分光法;Auger electron spectroscopy )により分析を行ったところ、負極活物質層23に負極集電体22の銅の成分が拡散されていることが確認された。すなわち、負極集電体22と負極活物質層23とが合金化していることが確認された。これらの実施例7−1〜7−5についても、実施例1−5と同様にして放電容量維持率および抵抗の測定を行った。その結果を、実施例1−5の結果と共に表7に示す。
Figure 0005365873
表7に示したように、加熱温度を上昇させるに従い、放電容量維持率も上昇する傾向が見られた。これは、より高い加熱温度において熱処理を行うことで負極集電体22と負極活物質層23との元素拡散が促進され、密着性が向上するので、負極活物質層23の膨張収縮に伴う負極集電体22と負極活物質層23との剥離や脱落が抑制されたものと考えられる。なお、加熱温度を700℃とした実施例7−5においては熱処理を行わなかった実施例1−5よりも低い放電容量維持率となった。この原因としては、過度な拡散によって比較的強度の弱いCu3 Siが界面に形成され、密着性が低下したためと考えられる。
(実施例8−1,8−2)
電解質に用いる溶媒として、炭酸エチレンの代わりにフルオロエチレンカーボネート(FEC)またはジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)を用いたことを除き、他は実施例1−5と同様にして実施例8−1および8−2の二次電池を作製した。また、表面粗さRz値が全面に亘って1.7μmである電解銅箔(厚み12μm)を負極集電体として用いたことを除き、他は実施例8−1,8−2および1−5とそれぞれ同様にして比較例8−1〜8−3としての二次電池を作製した。これらの実施例8−1および8−2、ならびに比較例8−1〜8−3についても、実施例1−5と同様にして放電容量維持率の測定を行った。その結果を、実施例1−5の結果と共に表8に示す。
Figure 0005365873
表8に示したように、実施例8−1と比較例8−1との比較、実施例8−2と比較例8−2との比較、実施例1−5と比較例8−3との比較により、いずれの溶媒を使用した場合においても、被覆領域22Aに突起部222を設け、表面粗さRz値を大きくすることで、放電容量維持率の向上が図れることがわかった。
(実施例9−1)
負極活物質層23を気相法により形成したことを除き、他は実施例1−5と同様にして実施例9−1の二次電池を作製した。また、実施例9−1に対する比較例9−1として、露出領域22Sをロールプレス機でプレス成型せずに、表面粗さの大きな状態のまま負極リード21を溶接したことを除き、他は実施例9−1と同様にして二次電池を作製した。また、比較例9−2として、負極活物質層23を形成する前に負極集電体22の全面に亘ってプレス成型を行い、被覆領域22Aの両面の表面粗さRz値をも1.7μmとしたことを除き、他は実施例9−1と同様にして二次電池を作製した。これらの実施例9−1および比較例9−1,9−2についても、実施例1−5と同様にして放電容量維持率および抵抗の測定を行った。その結果を表9に示す。
Figure 0005365873
表9に示したように、負極リード21を設ける露出領域22Sの表面粗さRz値を1.7μmとし、被覆領域22Aの表面粗さRz値を1.8μm以上とした実施例9−1においては、比較例9−1よりも抵抗が低減されたうえ、比較例9−1および比較例9−2の双方よりも良好な放電容量維持率が得られた。
このように、本実施例によれば、基材221の表面に突起部222を設けることで負極集電体22と負極活物質層23との密着性を高め、負極活物質層23の剥離を抑制することができるうえ、負極リード21を、被覆領域22Aよりも小さな表面粗さを有する露出領域22Sに設けることで、負極集電体22と負極リード21との接合抵抗を低く抑えることができ、その結果、放電容量維持率を向上させることができた。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば上記実施の形態および実施例では、ラミネートフィルムを外装部材として用いた二次電池について説明したが、本発明は、外装部材として金属缶を用いた円筒型や角型などの他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、負極が正極やセパレータと共に巻回電極体を構成する場合を例示したが、これに限定されず、例えば積層型の電極体を構成するようにしてもよい。また、本発明の電極としては、負極に限らず正極についても適用可能である。さらに、本発明は、二次電池に限らず一次電池についても同様に適用可能である。
また、上記実施の形態および実施例では、電解銅箔などの基材の表面に電解析出法などにより突起部を設けることで表面粗さを変化させるようにしたが、これに限定されず、例えばエッチングによって表面粗さを変化させるようにしてもよい。
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明したが、ナトリウムあるいはカリウムなどの他のアルカリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウムなどのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属を用いる場合についても、本発明を適用することができる。その際、負極活物質としては、例えば上記実施の形態と同様のものなどを用いることができる。
さらにまた、上記実施の形態および実施例では、集電体の表面粗さや、活物質層における導電性粒子の平均粒子径などのパラメータに関し、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明したが、その説明は、各パラメータが上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、各パラメータが上記した範囲から多少外れてもよい。
10…正極、11…正極リード、12…正極集電体、13…正極活物質層、20…負極、21…負極リード、22…負極集電体,22A…被覆領域、22S,22E…露出領域、221…基材、222…突起部、23…負極活物質層、30…巻回電極体、31…セパレータ、32…電解質層、33…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム。

Claims (26)

  1. 基材上に粒子状の第1の突起部を有する活物質層形成領域、および前記基材上に電解析出法によって形成された粒子がプレス成型により塑性変形し平坦化された平滑領域を含む集電体と、
    前記集電体の活物質層形成領域に設けられた活物質層と
    を備え、
    前記平滑領域に電極リードが接続されている電極。
  2. 前記活物質層形成領域における10点平均粗さRz値は、1.8μm以上10.0μm以下であり、
    前記平滑領域における10点平均粗さRz値は、1.7μm以下である
    請求項1に記載の電極。
  3. 前記平滑領域は、前記基材上に前記第1の突起部よりも高さの低い粒子状の第2の突起部を有し、
    前記平滑領域における第2の突起部は、プレス成型により前記粒子が塑性変形したものである
    請求項1または請求項2に記載の電極。
  4. 前記第1の突起部は、電解析出法によって形成されたものである
    請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電極。
  5. 前記電極リードはニッケル(Ni)を含む金属材料からなる請求項1記載の電極。
  6. 前記集電体は銅(Cu)または銅合金を含んでおり、前記活物質層はケイ素(Si)を含んでいる
    請求項1記載の電極。
  7. 前記活物質層は前記集電体の両面に形成されている請求項1記載の電極。
  8. 前記集電体と前記活物質層とは、界面の少なくとも一部において合金化している請求項1記載の電極。
  9. 前記活物質層は、ケイ素を含む導電性粒子と結着材との混合物を含む
    請求項1記載の電極。
  10. 前記活物質層における導電性粒子の平均粒子径は、0.5μm以上5.0μm以下である
    請求項9記載の電極。
  11. 前記活物質層は、前記結着材として、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの少なくとも一方を含む
    請求項9記載の電極。
  12. 前記活物質層は、前記結着材として、水素結合性を有する熱可塑性樹脂と、エポキシ樹脂,フェノール樹脂,ポリイミド,ポリウレタン,メラミン樹脂,ウレア樹脂からなる群のうちの少なくとも1種の熱硬化性樹脂とを含む
    請求項9記載の電極。
  13. 正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
    前記正極および負極のうちの少なくとも一方は、
    基材上に粒子状の第1の突起部を有する活物質層形成領域、および前記基材上に電解析出法によって形成された粒子がプレス成型により塑性変形し平坦化された平滑領域を含む集電体と、
    前記集電体の活物質層形成領域に設けられた活物質層と
    を備え、
    前記平滑領域に電極リードが接続される
    電池。
  14. 前記活物質層形成領域における10点平均粗さRz値は、1.8μm以上10.0μm以下であり、
    前記平滑領域における10点平均粗さRz値は、1.7μm以下である
    請求項13に記載の電池。
  15. 前記平滑領域は、前記基材上に前記第1の突起部よりも高さの低い粒子状の第2の突起部を有し、
    前記平滑領域における第2の突起部は、プレス成型により前記粒子が塑性変形したものである
    請求項13または請求項14に記載の電池。
  16. 前記第1の突起部は、電解析出法によって形成されたものである
    請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の電池。
  17. 前記電極リードはニッケル(Ni)を含む金属材料からなる
    請求項13記載の電池。
  18. 前記集電体は銅(Cu)または銅合金を含んでおり、前記活物質層はケイ素(Si)を含んでいる請求項13記載の電池。
  19. 前記活物質層は前記集電体の両面に形成されている請求項13記載の電池。
  20. 前記集電体と前記活物質層とは、界面の少なくとも一部において合金化している
    請求項13記載の電池。
  21. 前記活物質層は、ケイ素を含む導電性粒子と結着材との混合物を含む
    請求項13記載の電池。
  22. 前記活物質層における導電性粒子の平均粒子径は、0.5μm以上5.0μm以下である
    請求項21記載の電池。
  23. 前記活物質層は、前記結着材として、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの少なくとも一方を含む
    請求項21記載の電池。
  24. 前記活物質層は、前記結着材として、水素結合性を有する熱可塑性樹脂と、エポキシ樹脂,フェノール樹脂,ポリイミド,ポリウレタン,メラミン樹脂,ウレア樹脂からなる群のうちの少なくとも1種の熱硬化性樹脂とを含む
    請求項21記載の電池。
  25. 前記電解質は、鎖状炭酸エステルおよび環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含む溶媒を有する
    請求項13記載の電池。
  26. 前記鎖状炭酸エステルは、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)および炭酸ジフルオロメチルメチルのうちの少なくとも1種を含み、
    前記環状炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンのうちの少なくとも1種を含む
    請求項25記載の電池。
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