以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下、実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。本実施形態では、本発明に係るブラシモータを電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)に適用した例を説明するが、本発明の適用対象は電動パワーステアリング装置に限定されるものではない。また、本発明を電動パワーステアリング装置に適用する場合でも、その方式は問わない。
(実施形態1)
図1は、ブラシモータを備える電動パワーステアリング装置の構成図である。まず、図1を用いて、本実施形態のブラシモータを備える電動パワーステアリング装置の概要を説明する。電動パワーステアリング装置10は、操舵者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール11と、ステアリングシャフト12と、操舵力アシスト機構13と、ユニバーサルジョイント14と、ロアシャフト15と、ユニバーサルジョイント16と、ピニオンシャフト17と、ステアリングギヤ18と、タイロッド19と、を備える。また、電動パワーステアリング装置10は、ECU(Electronic Control Unit)20と、トルクセンサ21aと、車速センサ21bと、を備える。
ステアリングシャフト12は、入力軸12aと出力軸12bとを含む。入力軸12aは、一方の端部がステアリングホイール11に連結され、他方の端部がトルクセンサ21aを介して操舵力アシスト機構13に連結される。出力軸12bは、一方の端部が操舵力アシスト機構13に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント14に連結される。本実施形態では、入力軸12a及び出力軸12bは、鉄等の磁性材料から形成される。
ロアシャフト15は、一方の端部がユニバーサルジョイント14に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント16に連結される。ピニオンシャフト17は、一方の端部がユニバーサルジョイント16に連結され、他方の端部がステアリングギヤ18に連結される。ステアリングギヤ18は、ピニオン18aと、ラック18bとを含む。ピニオン18aは、ピニオンシャフト17に連結される。ラック18bは、ピニオン18aに噛み合う。ステアリングギヤ18は、ラックアンドピニオン形式として構成される。ステアリングギヤ18は、ピニオン18aに伝達された回転運動をラック18bで直進運動に変換する。タイロッド19は、ラック18bに連結される。
操舵力アシスト機構13は、減速装置22とブラシモータ30とを含む。減速装置22は、出力軸12bに連結される。ブラシモータ30は、減速装置22に連結され、かつ、補助操舵トルクを発生させる。なお、電動パワーステアリング装置10は、ステアリングシャフト12と、トルクセンサ21aと、減速装置22とによりステアリングコラムが構成されている。ブラシモータ30は、前記ステアリングコラムの出力軸12bに補助操舵トルクを与える。すなわち、本実施形態の電動パワーステアリング装置10は、コラムアシスト方式である。
トルクセンサ21aは、ステアリングホイール11を介して入力軸12aに伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ21bは、電動パワーステアリング装置10が搭載される車両の走行速度を検出する。
ECU20は、ブラシモータ30とトルクセンサ21aと車速センサ21bと電気的に接続される。ECU20は、ブラシモータ30の動作を制御する。また、ECU20は、トルクセンサ21a及び車速センサ21bのそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU20は、トルクセンサ21aから操舵トルクTを取得し、かつ、車速センサ21bから車両の走行速度Vを取得する。ECU20は、イグニッションスイッチ28がオンの状態で、電源装置(例えば車載のバッテリ)29から電力が供給される。ECU20は、操舵トルクTと走行速度Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU20は、その算出された補助操舵指令値に基づいてブラシモータ30へ供給する電流値を調節する。
電動パワーステアリング装置10は、以上のような構成である。ステアリングホイール11に入力された操舵者(運転者)の操舵力は、入力軸12aを介して操舵力アシスト機構13の減速装置22に伝わる。この時に、ECU20は、入力軸12aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ21aから取得し、かつ、走行速度Vを車速センサ21bから取得する。そして、ECU20は、ブラシモータ30の動作を制御する。ブラシモータ30が作り出した補助操舵トルクは、減速装置22に伝えられる。出力軸12bを介して出力された操舵トルク(補助操舵トルクを含む)は、ユニバーサルジョイント14を介してロアシャフト15に伝達され、さらにユニバーサルジョイント16を介してピニオンシャフト17に伝達される。ピニオンシャフト17に伝達された操舵力は、ステアリングギヤ18を介してタイロッド19に伝達され、操舵輪を転舵させる。
次に、図2から図6を用いて、操舵力アシスト機構13と、その周辺に配置されている各部の構成、配置位置等について説明する。図2は、操舵力アシスト機構の周辺の概略構成を示す斜視図である。図3は、操舵力アシスト機構の周辺の概略構成を模式的に示す説明図である。図4は、図3に示す操舵力アシスト機構を拡大した説明図である。図5は、電動パワーステアリング装置が備える減速装置の一例を説明する正面図である。図6は、ECUの概略構成を示す斜視図である。なお、図5は、一部を断面として示してある。
図2及び図3に示すように、電動パワーステアリング装置10は、各部を支持する機構として、ステアリングコラム31と、アッパ取付ブラケット32と、ロア取り付けブラケット34と、モータ取付部35と、を有する。ステアリングコラム31は、ステアリングシャフト12を回転自在に内装する。ステアリングコラム31は、減速装置22との連結部にコラプス時の衝撃エネルギーを吸収して所定のコラプスストロークを確保する内管及び外管で構成された2重管構造となっている。
アッパ取付ブラケット32は、ステアリングコラム31の外管及び減速装置22の鉛直方向上側に配置されている。アッパ取付ブラケット32は、車体に取付けられ、ステアリングコラム31の外管及び減速装置22を支持している。アッパ取付ブラケット32は、車体側部材(図示せず)に取付けられる取付板部と、この取付板部に一体に形成された方形枠状支持部と、ステアリングコラム31の外管を支持するチルト機構と、を備えている。チルト機構は、方形枠状支持部に形成されている。
アッパ取付ブラケット32の取付板部は、車体側部材に取付けられる左右一対のカプセルと、これらカプセルに樹脂インジェクションによって固定された摺動板部と、で構成されている。取付板部は、衝突時にステアリングコラム31を車体前方に移動させる衝撃力が作用することにより、カプセルに対して摺動板部が車体前方に摺動して樹脂インジェクションが剪断され、その剪断荷重がコラプス開始荷重となるように構成されている。
チルト機構のチルトレバーを回動させることにより、支持状態が解除される。この操作により、ステアリングコラム31をロア取付ブラケット34の枢軸を中心として上下にチルト位置が調整可能とされている。
ロア取付ブラケット34は、ステアリングコラム31の外管及び減速装置22の鉛直方向下側に配置されている。ロア取付ブラケット34は、車体に取付けられ、ステアリングコラム31の外管及び減速装置22を支持している。ロア取付ブラケット34は、車体側部材(図示せず)に取付けられる取付板部と、この取付板部の下面に所定間隔を保って平行に延長する一対の支持板部と、で形成されている。そして、ロア取付ブラケット34は、支持板部の先端が、減速装置22の減速装置ハウジング44の下端側即ち車体前方側に形成された部分に枢軸を介して回動自在に連結されている。
また、モータ取付部35は、減速装置22の側面(ステアリングシャフト12の回転軸に平行かつ鉛直方向に平行な面)に設けられており、ブラシモータ30を減速装置22に固定する。なお、モータ取付部35は、減速装置22のハウジングの一部としてもよい。
ステアリングシャフト12は、図3及び図4に示すように、入力軸12aと、出力軸12bと、入力軸12aと出力軸12bとを連結する連結軸(トーションバー)12cと、を有する。ステアリングシャフト12は、入力軸12aに入力された回転が、連結軸12cを介して出力軸12bに伝達する。
図3、図4及び図5に示すように、減速装置22は、ウォーム減速装置である。減速装置22は、ウォーム40と、ウォームホイール42と、減速装置ハウジング44と、玉軸受45aと、玉軸受45bと、ホルダ47と、を備える。ウォーム40は、ブラシモータ30の軸118にスプライン、または弾性カップリングで結合される。ウォーム40は、玉軸受45aと、ホルダ47に保持された玉軸受45bとで回転自在に減速装置ハウジング44に保持されている。ウォームホイール42は、減速装置ハウジング44に回転自在に保持される。ウォーム40の一部に形成されたウォーム歯40aは、ウォームホイール42に形成されているウォームホイール歯42aに噛み合う。ブラシモータ30の回転力は、ウォーム40を介してウォームホイール42に伝達されて、ウォームホイール42を回転させる。減速装置22は、ウォーム40及びウォームホイール42によって、ブラシモータ30のトルクを増加させる。そして、減速装置22は、出力軸12bに補助操舵トルクを与える。
ブラシモータ30は、図2から図5に示すように、回転軸が露出したフランジ側の面が減速装置22に対面して配置されている。また、ブラシモータ30の回転軸は、減速装置22の鉛直方向下側となる部分に配置されている。ブラシモータ30は、フランジがモータ取付部35と連結され、減速装置22に固定されている。なお、ブラシモータ30の詳細な構成については、後ほど説明する。
ECU20は、減速装置22の入力軸12a側の面で、かつ、ステアリングシャフト12よりも鉛直方向の下側に配置されている。ECU20は、図6に示すように、ECU取付部20aとECU本体20bとECUカバー20cとを有する。ECU取付部20aは、ECU本体20bを減速装置22に固定する支持台であり、減速装置22の減速装置ハウジング44に設けられている。また、ECU取付部20aは、モータ取付部35の入力軸12a側の面にも設けられている。
ECU本体20bは、ECU20の制御回路であり、ECU取付部20aにネジ止めにより固定されている。ECU本体20bは、パワー基板、合成樹脂製フレーム、制御基板、カバー等を有する。また、ECU本体20bは、鉛直方向上側の端面にトルクセンサ21aと連結する端子20dが形成され、ブラシモータ30と隣接する端面にブラシモータ30のバスバーと接続される端子20eが形成されている。パワー基板は、ブラシモータ30を駆動制御する電界効果トランジスタ等のパワースイッチング素子で構成されるHブリッジ回路やこのHブリッジ回路のパワースイッチング素子を駆動するパルス幅変調回路等が実装されており、ECU取付部20aに放熱グリースを介して直接固定される熱伝導率の高い金属製の基板である。合成樹脂製フレームは、パワー基板を囲繞する長方形枠状の部材である。制御基板は、ブラシモータ30で発生させる操舵補助力を制御するマイクロコンピュータユニット(MCU)やその周辺機器を実装した基板である。制御基板は、トルクセンサ21aからのトルク検出値や車速センサ21bからの車速検出値に基づいて操舵補助電流指令値を算出し、この操舵補助電流指令値とブラシモータ30に出力するモータ電流の検出値とに基づいて電流フィードバック制御を行ってパワー基板のパルス幅変調回路への電圧指令値を算出する。カバーは、パワー基板、合成樹脂製フレーム、制御基板を覆う。ECU本体20bは、カバーで、パワー基板、合成樹脂製フレーム、制御基板を覆うことで、制御回路を構成する各部に異物が混入することを抑制できる。なお、カバーは、樹脂等で形成すればよい。
ECUカバー20cは、ECU本体20bを覆う部材であり、金属で形成されている。ECUカバー20cは、ECU取付部20aにネジ止めで固定されている。これにより、ECU本体20bは、ECU取付部20aとECUカバー20cとで外周が略覆われている状態となる。ECUカバー20cは、外部の電磁波がECU本体20bに到達することを抑制し、外部の電磁波がECU本体20bにノイズを発生させることを抑制する。
次に、図7から図10を用いて、ブラシモータ30について説明する。図7は、ブラシモータを回転軸に平行な方向から見た平面図である。図8は、図7に示すブラシモータをA−A線で切って模式的に示す説明図である。図9は、回転軸に直交する面でブラシモータを切って模式的に示す説明図である。図10は、ブラシケースを出力軸側から見た平面図である。ブラシモータ30は、筐体111と、マグネット113と、回転子114と、軸118と、ブラシ119と、ブラシホルダ120と、ブラシケース121と、バスバーユニット130と、を含む。
筐体111は、筒状部111aと、底部111bと、フランジ112とを含む。筒状部111aは、磁性材料で略円筒形である。筒状部111aを形成する磁性材料は、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材や、電磁軟鉄等である。筒状部111aの一方の端部は、底部111bにより閉塞される。底部111bは、例えば筒状部111aと一体に形成される。また、筒状部111aの他方(底部111bとは反対側)の端部である開口は、フランジ112により閉塞される。なお、フランジ112の形状については後述する。
マグネット113は、筒状部111aの内側面にマグネットホルダ113aによって取り付けられる。マグネット113は、2つ設けられる。2つのマグネット113は、互いに極性が逆に設けられる。マグネット113は、マグネット飛散防止カバー113bにより覆われる。これにより、マグネット飛散防止カバー113bは、2つのマグネット113の万一の飛散を防止する。回転子114は、筒状部111a内に設けられる。回転子114は、軸118によって中心を貫かれ、かつ、軸118に固定される。
回転子114は、整流子115と、コア116と、コイル117とを含む。整流子115は、絶縁体で形成された円柱状の絶縁部の側面に、導電体で形成された複数の導電部115aが等間隔で平行に配置されているものである。コア116は、磁性材料を用いて形成される。コア116は、例えば、磁性材料としてケイ素鋼板が用いられ、ケイ素鋼板が積層されて形成される。回転子114のコア116部分は、複数のスロット(溝)を有する。コイル117は、前記スロットに巻き回されている。コイル117の一端は、一つの導電部115aに接続されており、他端は別の導電部115aに接続されている。
軸118は、軸受118aと軸受118bとによって、回転軸Zrを中心に回転できるように支持される。軸受118aは、筒状部111aの内側であって、フランジ112の略中央部分に設けられる。軸受118bは、筒状部111aの内側であって、底部111bの略中央部分に設けられる。回転軸Zrは、軸118の中心軸に相当し、回転子114の回転軸とも一致する。軸118は、ジョイント118cが取り付けられる。ジョイント118cは、図5に示す減速装置22のウォーム40がスプライン結合される。なお、軸118とウォーム40とは、弾性カップリングで結合されてもよい。
ブラシ119は、ブラシホルダ120により支持される。ブラシ119は、筒状部111a内で、整流子115の径方向で整流子115と対向する位置に複数、本実施形態で4箇所に設けられる。ブラシ119は、略角柱、好ましくは四角柱状の多面体である。より好ましくは、ブラシ119は、整流子115と対向する面に含まれる4つの頂点のうち、フランジ112側ではなく、コア116側にある2つの頂点のいずれかが突出する形状である。ブラシ119は、この突出している頂点が整流子115と接する。このような構造により、ブラシモータ30は、ブラシ119と整流子115とが接触する位置が明確となる。その結果、ブラシモータ30は、ブラシ119から整流子115への電力の供給が安定する。また、ブラシモータ30のユーザーは、ブラシ119の摩耗状態も容易に予測できる。
ブラシ119は、接触抵抗が小さく機械的衝撃に耐えられる材料により構成される。例えば、ブラシ119は、黒鉛により構成される。ブラシ119は、バスバーユニット130によって電力が供給される。電力は、ECU20により制御された電流値の電力である。ブラシ119に供給された電流は、ブラシ119と接触する整流子115の導電部115aを通ってコイル117に導かれる。コイル117に導かれた電流は、コイル117を通り、整流子115の別の導電部115aに至って別のブラシ119に流入する。ブラシモータ30は、コイル117に電流が流れることによって磁界が発生する。ブラシモータ30は、この磁界と、マグネット113の磁界との相互作用により回転子114が回転する。
ブラシホルダ120は、ブラシ119を保持する機構であり、スプリング、基板、弾性部材等を含む。ブラシホルダ120は、ブラシ119毎に設けられている。ここで、ブラシホルダ120は、整流子115側の面が開口となる箱側形状であり、ブラシ119の整流子115側の面が整流子115と対面した状態で支持する。また、ブラシホルダ120は、スプリング等でブラシ119を整流子115側に付勢し、ブラシ119と整流子115とを接触させる。また、ブラシホルダ120は、ブラシ119とブラシケース121との間に弾性部材が介在する構成である。これにより、整流子115とブラシ119との接触で生じる振動がブラシケース121に伝達することを抑制することができる。なお、ブラシホルダ120は、基板を複数のブラシ119に対して共通の基板としてもよい。つまり、1枚の基板を複数のブラシホルダ120で共有してもよい。
ブラシケース(ブラシホルダアセンブリ)121は、ブラシホルダ120を保持する支持機構である。ブラシケース121は、1つの部材で、複数のブラシ119を支持している。また、ブラシケース121は、フランジ112に支持されている。ブラシケース121の構成については後述する。
バスバーユニット130は、第1バスバー131と、第2バスバー132と、バスバー保持手段としての樹脂部133と、ピグテイル135と、を含む。第1バスバー131及び第2バスバー132は、金属の板状部材である。第1バスバー131及び第2バスバー132は、電気伝導部材である。第1バスバー131及び第2バスバー132は、図8に示すように、互いに接触しないように間隔をあけて設けられる。第1バスバー131及び第2バスバー132は、筐体111の外部に一部が露出する。なお、筒状部111aと底部111bとフランジ112とで囲まれる空間が筐体111の内部であり、前記内部以外の空間が筐体111の外部である。
樹脂部133は、例えば弾性を有する。樹脂部133は、第1バスバー131及び第2バスバー132を覆う。これにより、樹脂部133は、第1バスバー131と第2バスバー132とを絶縁する。また、樹脂部133は、バスバーユニット130がブラシモータ30に取り付けられた際に、第1バスバー131及び第2バスバー132と、筒状部111aやフランジ112とを絶縁する。
ピグテイル135は、電気伝導部材である。ピグテイル135は、第1バスバー131及び第2バスバー132と、ブラシホルダ120とを電気的に接続する。ブラシホルダ120は、ブラシ119へ電力を供給するための電気回路が設けられている。前記電気回路は、図8に示す電気電導部材の配線部材135aでブラシ119と電気的に接続される。これにより、ブラシ119は、第1バスバー131及び第2バスバー132から、ピグテイル135を介して電力が供給される。なお、第1バスバー131及び第2バスバー132は、ブラシホルダ120に形成される電気回路を介さず、ピグテイル135でブラシ119と直接電気的に接続してもよい。
ピグテイル135は、第1バスバー131と第2バスバー132との両方に、例えば、溶接、より具体的にはプロジェクション溶接によって電気的に接続される。また、ピグテイル135は、ブラシホルダ120の基板に形成された電気回路に、例えば、溶接、より具体的にはプロジェクション溶接によって電気的に接続される。ピグテイル135は、可撓性を有する。可撓性を有するため、ピグテイル135は、振動を伝え難い。よって、ブラシモータ30は、ブラシ119の振動がブラシホルダ120の基板を介してバスバーユニット130に伝わりにくい。また、ブラシモータ30は、ピグテイル135が撓むため、バスバーユニット130とフランジ112との取り付け誤差を許容しやすい。また、ブラシモータ30は、ピグテイル135が撓むため、バスバーユニット130をフランジ112により容易に取り付けられることができる。
次に、フランジ112及びブラシケース121についてより詳細に説明する。フランジ112は、筒状部111aの底部111bとは反対側の端部に固定されている。フランジ112は、図7及び図8に示すように、軸118が通過する開口が形成されており、軸受118aを介して軸118を支持する。また、フランジ112は軸118の軸方向が軸となる穴112aが複数形成されている。
ブラシケース121は、本体122と突起部124とを有する。本体122は、軸118を中心とした径方向の外側の面を囲う円筒部と、ブラシホルダ120のジョイント118c側の面に対面するリング部(中心側に円形の穴が形成された円板)と、で構成されている。なお、ブラシケース121は、軸118の軸方向に平行な方向における円筒部のジョイント118c側の端面と、軸118を中心とした径方向におけるリング部の外側の端面と、が繋がっている。つまり、ブラシケース121は、軸118の回転軸に平行な方向な断面の形状がL字となる形状である。また、本体122は、図9に示すようにリング部に開口128が形成されている。開口128には、ピグテイル135の配線部材135aが挿入されている。
突起部124は、フランジ112の穴112aに対応して複数設けられている。突起部124は、基端が本体122と繋がっており、軸118の軸方向に平行な向きで、かつ、本体122からジョイント118c側に延びた棒状の突起、本実施形態では円柱である。つまり、突起部124は、本体122のフランジ112と対向した面に配置され、軸118の軸方向に延びた突起である。突起部124は、フランジ112の穴112aに挿入されており、先端126がフランジ112のジョイント118c側の面にある。つまり、突起部124は、穴112aを貫通している。突起部124は、先端126が他の部分(例えば、穴112a内にある部分)よりも大きい形状である。より具体的には、先端126は、穴112aよりも径が大きい形状、つまり、穴112aを通過できない形状である。なお、突起部124の他の部分、より具体的には、穴112aに挿入されている部分は、穴112aと略同一形状または穴112aよりも若干小さい形状である。
ここで、図11及び図12を用いて、本実施形態のブラシモータの製造方法、具体的にはフランジ112とブラシケース121とを連結させる方法について説明する。図11は、製造時のブラシモータを回転軸に平行な方向から見た平面図である。図12は、図11に示すブラシモータを回転軸に平行な面で切って模式的に示す説明図である。
まず、ブラシケース121aとして、突起部の先端が穴112aよりも小さい状態のブラシケース121aを作製する。次に作製したブラシケース121aにブラシホルダ120を固定する。その後、図11及び図12に示すように、ブラシケース121aの突起部124aをフランジ112の穴112aに差し込み、先端124aをフランジ112のジョイント側の面に露出させた状態とする。なお、上述したように、突起部124aは、先端126aが穴112aよりも小さい形状であるため、穴112aに通すことができる。
その後、フランジ112のジョイント側の面に露出させた先端126aを加熱したり、応力を付与したりして、先端126aを変形させ、先端126aを穴112aよりも大きくする。加熱する場合は、先端126aを溶融することで、先端126aを図7及び図8に示す先端126とすることができる。また、先端126aを加熱して変形させる場合は、先端126aをフランジ112のジョイント側の面に溶着させることが好ましい。これにより、ブラシケース121a(121)をフランジ112により確実に固定させることができる。
なお、ブラシモータ30の製造工程において、フランジ112の穴112aに先端126aを差し込む工程と、先端126aを変形させる工程とは、他の製造工程の任意の工程との間に実行すればよい。例えば、フランジ112の穴112aに先端126aを差し込む工程は、ブラシケース121aに軸118が差し込まれた後に行っても、ブラシケース121aに軸118が差し込まれる前に行ってもよい。また、先端126aを変形させる工程は、フランジ112の穴112aに先端126aを差し込む工程よりも後の工程であればよく、図11及び図12に示すようにブラシモータの全体を組み立てた後先端部を変形させてもよく、ブラシケース121aに軸118が差し込まれる前に先端部を変形させてもよい。なお、ブラシケース121aに軸118が差し込まれる前に先端部を変形させる場合は、ブラシケース121aとフランジ112とをサブアセンブリ化してブラシモータを製造することができる。
電動パワーステアリング装置10及びブラシモータ30は、以上のような構成である。ブラシケース121は、突起部124がフランジ112の穴112aを通過し、かつ、先端126が穴112aよりも大きい形状であることで、フランジ112に対して固定される。つまり、突起部124が穴112aから抜けない形状であるため、ブラシケース121がフランジ112に連結される。また、突起部124の基部から先端126までの距離を、穴112aの長さと実質的に同一とすることで、フランジ112とブラシケース121とが軸118の軸方向に平行な方向に相対的に移動することを抑制することができる。
このように、電動パワーステアリング装置10及びブラシモータ30は、ブラシケース121に突起部124を設け、突起部124を穴112aに挿入させ、かつ、先端126を穴112aよりも大きい形状とすることで、ブラシケース121をフランジ112に固定することができる。ブラシケース121をフランジ112に固定することで、ブラシ119をフランジ112や筐体111等の固定子に固定することができる。
また、ブラシケース121に固定に必要な部材を設けることなくブラシケース121をフランジ112に固定できるため、ブラシケース121の内部、ブラシ119を配置する空間を有効に活用することができる。つまり、図9に示すブラシケース121の内部の空間にネジのネジ山が露出しないため、ブラシホルダ120の配置位置や、配線部材135aの配置位置の自由度をより大きくすることができる。また、突起部124の先端126を穴112aよりも大きい形状とすることで、つまり、先端126を穴112aよりも大きい形状とすることで、機械的構造でブラシケース121をフランジ112に固定することができる。これにより、ねじ等を用いて固定した場合と同様に外れにくくすることができる。また、ブラシケース121の内部に固定に必要な部材を配置しないため、突起部124を多数形成しても、ブラシケース121の内部に影響を与えない。これにより、ブラシケースとフランジとを複数の突起部で連結し、よりはずれにくくすることができる。
ここで、突起部124の先端126は、本実施形態のように、フランジ112よりもジョイント118c側に突出しないことが好ましい。つまり、フランジ112の少なくとも一部に穴112aよりもジョイント118c側に突出した部分があり、当該突出した部分が、突起部124の先端126の最もジョイント118c側の部分よりもジョイント118c側にあることが好ましい。つまり、突起部124がフランジ112よりもジョイント118c側に突出していない形状とすることが好ましい。ブラシケース121が他の部材に悪影響を与えることを、例えばジョイント118cと連結する機構と接触することを抑制することができる。
図13は、ブラシモータを回転軸に平行な方向から見た平面図であり、図14は、他のブラシモータを回転軸に平行な方向から見た平面図である。本実施形態のブラシモータ30の構成とすることで、ブラシケースの内部にネジ山等を配置する必要がなくなるため、バスバーユニット130の第1バスバー131と第2バスバー132との距離をより近接して配置することができる。これにより、図13に示すように第1バスバー131と第2バスバー132とを纏める保護カバー160をフランジ112のより近くまで設けることができる。ここで、図14に示すブラシモータ180は、ブラシケースの内部にネジ山等を配置する構成である。ブラシモータ180は、ブラシケースの内部にネジ山等を配置するため各部の配置に制限があり、第1バスバー131aと第2バスバー132aとの距離を短くすることに限界がある。このため、図14に示すように、第1バスバー131a及び第2バスバー132aは、図13に示す第1バスバー131及び第2バスバー132よりも離れた配置となる。このため、第1バスバー131a及び第2バスバー132aのブラシケースへの挿入部で第1バスバー131aと第2バスバー132aとを一定距離離す必要があり、保護カバー160aとフランジ112との距離が長くなる。
このように、本実施形態のように、保護カバー160とフランジ112との距離をより短くできることで、第1バスバー131と第2バスバー132との露出量を少なくすることができる。これにより、第1バスバー131と第2バスバー132とをより確実に保護することができ、装置の耐久性をより高くすることができる。
なお、ブラシケース121は、本体122と突起部124とを一体とすることが好ましい。つまり、ブラシケース121を1つの部材として一体で作製することが好ましい。これにより、本体122と突起部124とをより分離しにくくすることができる。
また、ブラシケース121は、樹脂で作製することが好ましい。なお、樹脂としては、例えば、PPS(Poly-phenylene-sulfide)やPPS系ガラス入り樹脂、ナイロン系ガラス入り樹脂、PET等を用いることができる。ブラシケース121を、樹脂で作製することで射出成形等により製造でき、製造が容易になる。また、製造時に突起部124、特に先端部を容易に変形させることができる。
なお、ブラシケース121は、アルミ、軟鉄等の金属で作製することもできる。この場合は、上述したように加熱し溶融して突起部の先端部を作製してもよいし、リベット加工により突起部124の先端126を成形することができる。なお、ブラシケース121は、突起部と本体とを別部材で作製してもよい。また、突起部の先端部と他の部分とを別の材料で作製してもよい。
また、突起部124の数及びフランジ112の穴112aの数は3つに限定されず任意の数にすることができる。また、突起部124(の棒状に延びている部分)の形状及びフランジ112の穴112aの形状は、円形に限定されない。例えば、四角形等の多角形としてもよく、楕円形としてもよく、曲線と直線とを組み合わせた形状としてもよい。
(実施形態2)
次に、図15から図17を用いて、ブラシモータの他の実施形態について説明する。図15は、他の実施形態のブラシモータを回転軸に平行な方向から見た平面図である。図16は、図15に示すブラシモータを回転軸に平行な面で切って模式的に示す説明図である。図17は、図15に示すブラシケースを出力軸側から見た平面図である。
なお、図15から図17に示すブラシモータ201は、フランジ112とブラシケース221との間に弾性部材230を設けた点を除いて他の構成は、ブラシモータ30の各部と同様である。以下の本実施形態では、ブラシモータ30と同様の構成要素には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、ブラシモータ201に特有の点を重点的に説明する。
ブラシモータ201は、筐体111と、マグネット113と、回転子114と、軸118と、ブラシ119と、ブラシホルダ120と、ブラシケース221と、バスバーユニット130と、弾性部材230と、を含む。
ブラシケース221は、本体122と突起部224とを有する。突起部224は、フランジ112の穴112aに対応して複数設けられている。突起部224は、基端が本体122と繋がっており、軸118の軸方向に平行な向きで、かつ、本体122からジョイント118c側に延びた棒状の突起、本実施形態では円柱である。つまり、突起部224は、本体122のフランジ112と対向した面に配置され、軸118の軸方向に延びた突起である。突起部224は、フランジ112の穴112aに挿入されており、先端126がフランジ112のジョイント118c側の面にある。突起部224は、先端126が他の部分(例えば、穴112a内にある部分)よりも大きい形状である。なお、突起部224の他の部分、より具体的には、穴112aに挿入されている部分は、穴112aよりも一定程度、後述する弾性体230が挿入可能な程度小さい形状である。
弾性体230は、ブラシケース221の本体122のフランジ112側の面及び突起部224の外周の、ブラシケース221とフランジ112との間に配置されている。つまり弾性体230は、ブラシケース221の突起部224の外周と、本体122のフランジ112側の面の一部に配置されている。弾性体230は、突起部224毎に複数設けられている。1つの弾性体230は、突起部224の外周に配置されている部分の本体122側の端部が、本体122のフランジ112側の面の一部に配置されている部分と連結されている(一体となっている)。つまり、弾性体230は、突起部224の延在方向に平行な方向な断面の形状がL字となる形状である。また、図17に示すように、弾性体230のブラシケース221の本体122と対面している部分は、リング形状である。
このように、ブラシケース221とフランジ112との間に弾性体230を配置することで、ブラシケース221及びブラシ119を他の部材(軸、回転子等)に対してフローティングした状態にすることができる。このように、ブラシケース221及びブラシ119をフローティングした状態にすることで、ブラシケース221及びブラシ119と他の部材との間で振動が伝達することを抑制することができる。
また、本実施形態のように、フランジ112に対してブラシケース221を固定する機構に突起部224を用いることで、穴112aと突起部224との対面する領域を平坦な形状とすることができる。つまりネジ溝等が形成されていない、円柱、壁面に凹凸がない穴とすることができる。これにより、弾性体230を簡単な形状とすることができる。これにより、各部品をより簡単に作成することができ、装置コストを改善することができる。
ここで、図18及び図19を用いて、本実施形態のブラシモータの製造方法、具体的にはフランジ112とブラシケース221とを連結させる方法について説明する。図18は、製造時のブラシモータを回転軸に平行な方向から見た平面図である。図19は、図18に示すブラシモータを回転軸に平行な面で切って模式的に示す説明図である。
まず、ブラシケース221aとして、突起部の先端が穴112aよりも小さい状態のブラシケース221aを作製する。次に作製したブラシケース221aにブラシホルダ120を固定する。次に、穴112aに弾性体230を挿入する。または、突起部に弾性体230をはめ込む。その後、ブラシケース221aの突起部224aをフランジ112の穴112aに差し込み、図18及び図19に示すように、先端126aをフランジ112のジョイント側の面に露出させた状態とする。この時、穴112aに弾性体230を挿入している場合は、弾性体230が挿入されている穴112aに突起部224aを差し込む。また、突起部に弾性体230をはめ込んでいる場合は、弾性体230をはめ込んでいる突起部を、穴112aに差し込む。
その後、フランジ112のジョイント側の面に露出させた先端126aを加熱したり、応力を付与したりして、先端126aを変形させ、先端126aを穴112aよりも大きくする。なお、先端126aの変形は、上述したブラシケース121aの先端126aの変形と同様の方法で実行することができる。
このようにフランジ112とブラシケース221との間に弾性体230を設ける場合も、弾性体230を、フランジ112の穴112aに差し込むまたはブラシケース224の突起部224にはめ込む工程を加え、他の工程は上記と同様に実行することでブラシモータを製造することができる。また、この場合、フランジ112の穴112aに差し込むまたはブラシケース221aの突起部224aにはめ込む工程は、凹凸の無い穴に弾性体を差し込むまたは凹凸の無い棒に弾性体をはめ込む処理であるため、簡単に処理することができる。
なお、弾性体の形状は、図15から図17に示す実施形態の形状に限定されない。弾性体は、フランジとブラシケースとが直接接触しない構成とすればよく、つまり、フランジとブラシケースとの接触領域に設け、フランジとブラシケースとが弾性体を介して接触する構成とすればよい。ここで、弾性体は、ブラシケースの本体とフランジとの間の部分を、周方向に延在する形状とすることが好ましい。図20は、他の実施形態のブラシモータのブラシケースを出力軸側から見た平面図である。図20に示すブラシモータ301の弾性体330は、ブラシケース321の本体122とフランジとの間に配置されている部分の形状が、突起部324を基点として、モータの回転軸の周方向に延在する形状である。これにより、ブラシモータ301は、フランジ112とブラシケース321の本体122との間に、より広い面積で弾性体330を配置することできる。つまり、ブラシモータ301の回転軸に直交する面(図20に示す面)における弾性体330の配置面積をより大きくすることができる。これにより、より確実にブラシケース321がフランジ112に対してフローティングした状態にすることができる。また、モータの回転軸の周方向に延在する形状とすることで、回転方向の位置による弾性体330の偏りを少なくすることができ、ブラシモータ301の回転により発生するモータの振動をより確実に低減することができる。また、弾性体は、突起部毎に設けたがこれに限定されず、1つの繋がった弾性体としてもよい。