JP5365021B2 - ソリッドゴルフボール - Google Patents

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Description

本発明は、ソリッドコアと、該コアを被覆するカバー層を有するソリッドゴルフボールに関し、更に詳述すると、特に低ヘッドスピードでのドライバーフルショット時に良好な変形となり、飛び性能に優れると共に、アプローチショット性能及び打感が良好であり、更に耐擦過傷性や割れ耐久性にも優れたソリッドゴルフボールに関する。
従来より、飛び,打感,アプローチコントロール性等のゴルフボールの要求特性を総合的に満足したツーピースソリッドゴルフボールが種々改善されており、その一例として特開平6−98949号公報で提案されたゴルフボールなどが挙げられる。しかしながら、このゴルフボールは、カバーが硬いためにスピン性能に課題があった。
また、別の提案として特開平9−308708号公報、特開2003−70936号公報、特開2003−180879号公報などには、カバーの厚み、曲げ剛性率、ショアD硬度を特定の範囲とすることにより、反発性や耐カット性を低下させることなく、フィーリングやコントロール性を改善したソリッドゴルフボールが提案されている。
しかしながら、このゴルフボールは、コアの反発性が不足し、コア硬度分布が適正化しておらず、飛距離、スピン性能等に課題が残る。
更には、特開平9−215778号公報、特開平9−271538号公報及び特開平11−178949号公報には、カバー材料にポリウレタン材料を用いたソリッドゴルフボールが提案されている。しかし、このゴルフボールは、コアの反発性が充分でないこと、カバーを形成する樹脂の耐擦過傷性が不充分であることから、飛距離やカバーの耐擦過傷性の面で改善の余地を有するものであった。
そのほか、特開2002−355338号公報、特開2004−180793号公報に記載されたゴルフボールは、コアの反発性は良好ではあるが、ゴルフボールのたわみ硬度が大きく、軟らかいために、ボール反発性が低下し、未だ飛距離に課題が残るものであった。
また、特開2002−355338号公報では、カバー材としてアイオノマーが用いられており、耐擦過傷性に悪く、コアの硬度分布が適正化されておらずボール反発性が未だ十分ではない。
また、ツーピースソリッドゴルフボールについて、ゴム製コアの中心や表面等の硬度分布を適正化する技術が特開平11−290479号公報、特開平10−127823号公報及び特開2001−25908号公報に記載されているが、ゴム製コアの反発性が未だ不十分であり、未だ飛距離改良の余地がある。
特開平9−308708号公報 特開2003−70936号公報 特開2003−180879号公報 特開平9−215778号公報 特開平9−271538号公報 特開平11−178949号公報 特開2002−355338号公報 特開2004−180793号公報 特開2002−355338号公報 特開平11−290479号公報 特開平10−127823号公報 特開2001−25908号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、特に低ヘッドスピードでのドライバーフルショット時に良好な変形となり、飛び性能に優れると共に、アプローチショット性能及び打感が良好であり、更に耐擦過傷性や割れ耐久性にも優れたソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、比較的軟らかな特性を示すポリウレタン製のカバーを用いたソリッドゴルフボールにおいて、主な改良として、適量な老化防止剤をコア用ゴム組成物に添加することにより、コア表面を軟らかくし、コア内部の硬度が一番大きくなるようにコア硬度分布を適正化することにより、HS30〜40m/s程度の低ヘッドスピード領域でボールをドライバーで打撃した時の飛距離がより一層向上し、打感や耐擦過傷性が改善し得たゴルフボールを知見し、本発明をなすに至ったものである。また、このソリッドゴルフボールにおいては、アイオノマー樹脂等を材料とする通常のカバー層と比較して、カバー層が硬さの割には、曲げ剛性が低く、これにより、スピン性能及びその安定性が非常に高いものである。更に、このソリッドゴルフボールは、耐擦過傷性、繰り返し打撃したときの割れ耐久性に優れたものである。このような知見により、本発明のソリッドゴルフボールは、下記のソリッドコアIとカバー層IIとを具備し、ゴルフボールの初期荷重10kgfから終荷重130kgfまで負荷したときの変形量が2.0〜3.8mmである。
I.ソリッドコア
(i)シス−1,4−結合を60%以上含有し、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエンゴムを60〜100質量部含むゴム基材100質量部に対して、有機硫黄化合物0.1〜5質量部、不飽和カルボン酸又はその金属塩、無機充填剤及び老化防止剤を含むゴム組成物にてソリッドコアを形成すること
(ii)ソリッドコアの初期荷重10kgfから終荷重130kgfまで負荷したときの変形量が2.0〜4.0mmであること
(iii)ソリッドコアの硬度分布が下記表を満たし、且つ表面硬度と中心硬度との差がショアD硬度で14以下であること
Figure 0005365021
II.カバー層
(i)上記カバー層がポリウレタン材料を主成分として形成されること
(ii)上記カバー層の厚さが0.5〜2.5mm、その表面硬度がショアD硬度50〜70、その曲げ剛性が50〜300MPaであり、且つ、上記カバー層の表面硬度より上記ソリッドコアの表面硬度の方が小さく、その差がショアD硬度で5〜20であること
従って、本発明は、下記のソリッドゴルフボールを提供する。
〔1〕ソリッドコアと、これを被覆するカバー層とを具備し、上記カバー層のうち最外層の外表面に多数のディンプルが形成されたソリッドゴルフボールにおいて、上記ソリッドコアが、シス−1,4−結合を60%以上含有し、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエンゴムを60〜100質量部含むゴム基材100質量部に対して、有機硫黄化合物0.1〜5質量部、不飽和カルボン酸又はその金属塩、無機充填剤及び老化防止剤を含むゴム組成物から形成されると共に、ソリッドコアの初期荷重10kgfから終荷重130kgfまで負荷したときの変形量が2.0〜4.0mmであり、かつソリッドコアが上記表1の硬度分布を有し、表面硬度と中心硬度との差がショアD硬度で14以下となり、上記カバー層がポリウレタン材料を主成分として形成され、上記カバー層の厚さが0.5〜2.5mm、その表面硬度がショアD硬度50〜70、その曲げ剛性が50〜300MPaであり、上記カバー層の表面硬度より上記ソリッドコアの表面硬度の方が小さく、その差がショアD硬度で5〜20であり、ゴルフボールの初期荷重10kgfから終荷重130kgfまで負荷したときの変形量が2.0〜3.8mmであることを特徴とするソリッドゴルフボール。
〕上記ソリッドコアの表面硬度と上記ソリッドコアの中心硬度との差がショアD硬度で7〜14である〔〕記載のソリッドゴルフボール。
〕上記ソリッドコアの直径が37.6〜43.0mmであり、上記ゴルフボールの直径が42.67〜44.0mmである〔〕又は〔〕記載のソリッドゴルフボール。
〕上記ソリッドコアにおいて、ゴム基材100質量部に対して不飽和カルボン酸又はその金属塩を33〜45質量部、有機過酸化物を0.1〜1.0質量部、無機充填剤を5〜80質量部、老化防止剤を0.2〜1.0質量部配合する〔1〕〜〔〕のいずれか1項記載のソリッドゴルフボール。
〕上記ディンプルにおいて、総数が250〜420個、全ディンプルの平均深さが0.125〜0.150mm、平均直径が3.7〜5.0mm、種類が4種以上の条件でディンプルを構成した〔1〕〜〔〕のいずれか1項記載のソリッドゴルフボール。
本発明のソリッドゴルフボールによれば、ソリッドコアの硬度分布、カバー材料の選定、ソリッドコア及びカバーの硬度、ボール全体のたわみ量などを適正化することにより、より一層反発性が向上し得、特に、HS30〜40m/sの低ヘッドスピードでのドライバーフルショット時におけるボールのスピン量を低減させてボールの飛距離を増大させたものである。また、コア内部の硬度よりもコア表面硬度を軟らかくすることにより良好な打感を得ることができる。更に、通常のアイオノマーカバーに比べて、カバーが硬い割には曲げ剛性が低くなり、アプローチスピン性能に優れ、その安定性が非常に高いものである。また更には、本発明は、耐擦過傷性、繰り返し打撃した時の割れ耐久性にも優れたものであり、総合的にみて競技上大変有利なボールである。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のソリッドゴルフボールは、ソリッドコアと、これを被覆するカバー層とを具備したものである。
上記ソリッドコアは、ポリブタジエンを基材ゴムとするゴム組成物の加熱成形物である。
ここで、上記のポリブタジエンは、シス1,4結合が60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上有するものであると共に、1,2ビニル結合が2%以下、好ましくは1.7%以下、最も好ましくは1.5%以下有するものであることが必要である。上記範囲を逸脱すると反発性が低下する。
また、上記のポリブタジエンは、そのムーニー粘度(ML1+4(100℃))が30以上、好ましくは35以上、更に好ましくは40以上、より更に好ましくは50以上、最も好ましくは52以上、上限として100以下、好ましくは80以下、更に好ましくは70以下、最も好ましくは60以下であることが推奨される。
なお、本発明でいうムーニー粘度とは、いずれも回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS−K6300)であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
更に、上記ポリブタジエンの分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)としては、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.2以上、更に好ましくは2.4以上、特に好ましくは2.6以上、上限として好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.4以下である。Mw/Mnが小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下する場合がある。
上記ポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものであることが好ましく、希土類元素系触媒としては、公知のものを使用することができる。
例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルモキサン、ハロゲン含有化合物、更に、必要に応じルイス塩基の組合せよりなる触媒を挙げることができる。
上記ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の金属ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等を挙げることができる。
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、AlR123(ここで、R1、R2及びR3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素数1〜8の炭化水素残基を表す。)で示されるものを用いることができる。
上記アルモキサンは、下記式(I)又は下記式(II)で示される構造を有する化合物を好適に挙げることができる。この場合、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、J.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で示されるアルモキサンの会合体でもよい。
Figure 0005365021
(式中、R4は、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、nは2以上の整数である。)
ハロゲン含有化合物としては、AlXn3-n(ここで、Xはハロゲンを示し、Rは、炭素数が1〜20の炭化水素残基であり、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基であり、nは、1、1.5、2又は3を示す。)で示されるアルミニウムハライド、Me3SrCl、Me2SrCl2、MeSrHCl2、MeSrCl3などのストロンチウムハライド、その他、四塩化ケイ素、四塩化スズ、四塩化チタンなどの金属ハライド等が用いられる。
ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯化するのに用いることができ、例えば、アセチルアセトン、ケトンアルコールなどを挙げることができる。
本発明においては、特に、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジウム化合物を用いたネオジウム系触媒の使用が、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましく、これらの希土類元素系触媒の具体例は、特開平11−35633号公報に記載されているものを好適に挙げることができる。
希土類元素系触媒の存在下でブタジエンを重合させる場合、溶媒を使用しても、溶媒を使用せずにバルク重合あるいは気相重合してもよく、重合温度は通常−30℃〜150℃、好ましくは10〜100℃とすることができる。
上記のポリブタジエンは、上記の希土類元素系触媒による重合に引き続き、ポリマーの活性末端に末端変性剤を反応させることにより得られるものであってもよい。
ここで、末端変性剤は、公知のものを使用でき、例えば下記(i)〜(vii)に記載した化合物を挙げることができる。
(i)ポリマーの活性末端にアルコキシシリル基を持つ化合物を反応させることにより得られる。アルコキシシリル基を持つ化合物としては、エポキシ基又はイソシアナート基を分子内に少なくとも1個有するアルコキシシラン化合物が好適に使用される。具体例としては、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの縮合物、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシランの縮合物などのエポキシ基含有アルコキシシラン;3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、(3−イソシアナートプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−イソシアナートプロピル)メチルジエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシランの縮合物、(3−イソシアナートプロピル)メチルジメトキシシランの縮合物などのイソシアナート基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
また、上記アルコキシシリル基を持つ化合物を活性末端に反応させる際、反応を促進させるためにルイス酸を添加することもできる。ルイス酸が触媒としてカップリング反応を促進させ、変性ポリマーのコールドフローが改良され貯蔵安定性がよくなる。ルイス酸の具体例としては、ジアルキルスズジアルキルマレート、ジアルキルスズジカルボキシレート、アルミニウムトリアルコキシドなどが挙げられる。
(ii)R5 nM’X4-n、M’X4、M’X3、R5 nM’(−R6−COOR74-n又はR5 nM’(−R6−COR74-n(式中、R5及びR6は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R7は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよく、M’はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はリン原子、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数を示す。)に対応するハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物又は有機金属化合物
(iii)分子中に、Y=C=Z結合(式中、Yは炭素原子、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子、Zは酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す。)を含有するヘテロクムレン化合物
(vi)分子中に下記結合を含有するヘテロ3員環化合物
Figure 0005365021
(式中、Yは、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す。)
(v)ハロゲン化イソシアノ化合物
(vi)R8−(COOH)m、R9(COX)m、R10−(COO−R11)、R12−OCOO−R13、R14−(COOCO−R15m、又は下記式で示されるカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物又は酸無水物
Figure 0005365021
(式中、R8〜R16は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜50の炭素原子を含む炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは1〜5の整数を示す。)
(vii)R17 lM”(OCOR184-l、R19 lM”(OCO−R20−COOR214-l、又は下記式で示されるカルボン酸の金属塩
Figure 0005365021
(式中、R17〜R23は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、M”はスズ原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子、lは0〜3の整数を示す。)
以上の(i)〜(vii)に示される末端変性剤の具体例及び反応させる方法は、例えば、特開平11−35633号公報、特開平7−268132号公報、特開2002−293996号公報等に記載されているもの及び方法を挙げることができる。
上記ポリブタジエンは、ゴム基材中に、60質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上、上限として100質量%以下、好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下配合されたものであることが必要である。配合量が足りないと、良好な反発性が付与されたゴルフボールを得ることが困難になる。
また、上記ポリブタジエン以外のゴムを本発明の目的を損なわない範囲で併用・配合することもできる。具体例として、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などを挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ソリッドコアである加熱成形物は、上記ゴム基材100質量部に対し、不飽和カルボン酸又はその金属塩、有機硫黄化合物、無機充填剤及び老化防止剤を必須成分として所定量配合したゴム組成物にて形成される。
ここで、不飽和カルボン酸として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。
また、不飽和カルボン酸の金属塩としては、メタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛等の不飽和脂肪酸の亜鉛塩、マグネシウム塩等を配合し得るが、特にアクリル酸亜鉛を好適に使用し得る。
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは30質量部以上、より好ましくは31質量部以上、更に好ましくは32質量部以上、最も好ましくは33質量部以上、上限として好ましくは45質量部以下、より好ましくは43質量部以下、更に好ましくは41質量部以下、最も好ましくは40質量部以下配合する。配合量が多すぎると硬くなりすぎてしまい、耐え難い打感となり、少なすぎると、反発性が低下してしまう。
有機硫黄化合物は、優れた反発性を付与するための必須成分で、具体的には、チオフェノール類、チオナフトール類、ハロゲン化チオフェノール類又はそれらの金属塩を配合することが推奨され、より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
有機硫黄化合物は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、更に一層好ましくは0.4質量部以上、最も好ましくは0.7質量部以上、上限として好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に一層好ましくは2質量部以下、最も好ましくは1.5質量部以下配合する。配合量が多すぎると硬さが軟らかくなりすぎてしまい、少なすぎると、反発性の向上が見込めない。
無機充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができ、その配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは7質量部以上、最も好ましくは8質量部以上、上限として好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、最も好ましくは20質量部以下とする。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない。
有機過酸化物としては、市販品を挙げることができ、例えば、商品名「パークミルD」(日本油脂(株)製)、「パーヘキサ3M」(日本油脂(株)製)、「パーヘキサC」(日本油脂(株)製)、「Luperco 231XL」(アトケム社製)等が挙げられ、好ましくは、上記の「パーヘキサ3M」、「パーヘキサC」を用いることができる。
この有機過酸化物については、1種もしくは2種以上の異なるものを混合することができる。反発性をより一層向上させる点から、2種以上の異なるものを混合することが好適である。
有機過酸化物は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、最も好ましくは0.4質量部以上、上限として好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、更に好ましくは0.6質量部以下、更に一層好ましくは0.5質量部以下、最も好ましくは0.45質量部以下配合することができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な硬度分布すなわち打感、耐久性及び反発性を得ることができない。
本発明では、老化防止剤を配合することが必要とされる。この老化防止剤を適量配合することにより、コア内部における中間部付近の硬度を一番高くして特異なコア硬度分布を有するコアを作成することができる。この老化防止剤としては、例えば、市販品として「ノクラックNS−6」、「同NS−30」(大内新興化学工業(株)製)、「ヨシノックス425」(吉富製薬社製)等が挙げられる。
老化防止剤の配合量については、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.23質量部以上、更に好ましくは0.25質量部以上、更に一層好ましくは0.27質量部以上、最も好ましくは0.3質量部以上である。上限としては、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、より一層好ましくは0.7質量部以下、最も好ましくは0.6質量部以下とすることが好適な反発性、耐久性を得ることができる点から推奨される。
上記ソリッドコア(加熱成形物)については、上述したゴム組成物を、公知のゴルフボール用ゴム組成物と同様の方法で加硫・硬化させることによって得ることができる。加硫条件については、例えば、加硫温度100〜200℃、加硫時間10〜40分にて実施することができる。この場合、本発明の所望のコア用ゴム架橋体を得る観点から、加硫温度は、150℃以上であることが好ましく、特に155℃以上が好ましく、上限としては、200℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下、最も好ましくは170℃以下である。
また、上記ソリッドコアの初期荷重10kgfから終荷重130kgfまで負荷したときの変形量は2.0mm以上、好ましくは2.2mm以上、より好ましくは2.4mm以上、最も好ましくは2.6mm以上である。上限としては、4.0mm以下、好ましくは3.4mm以下、より好ましくは3.3mm以下、更に好ましくは3.2mm以下、最も好ましくは3.0mm以下である。このソリッドコアの変形量が少なすぎると、打感が悪くなると共に、特にドライバーなどを用いることよる、ボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなり、軟らかすぎると、打感が鈍くなると共に、反発が十分でなくなり飛ばなくなる上、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。
また、本発明では、ソリッドコアが下記表の硬度分布を有することである。
Figure 0005365021
ソリッドコアの中心硬度は、ショアD硬度33以上好ましくは35以上、最も好ましくは37以上であり、上限として43以下好ましくは41以下とするものである。
ソリッドコアの中心から5mm離れた部分の硬度については、ショアD硬度37以上好ましくは39以上、より好ましくは41以上であり、上限として49以下好ましくは47以下、より好ましくは45以下とするものである。
ソリッドコアの中心から10mmの部分の硬度については、ショアD硬度43以上好ましくは45以上、より好ましくは47以上であり、上限として55以下好ましくは53以下、より好ましくは51以下とするものである。
また、ソリッドコアの中心から15mmの部分の硬度については、ショアD硬度46以上好ましくは48以上、より好ましくは50以上であり、上限として、61以下、好ましくは58以下、更に好ましくは56以下、最も好ましくは54以下とするものである。
更に、ソリッドコアの表面から2〜3mm内側の部分の硬度については、ショアD硬度39以上好ましくは41以上、より好ましくは43以上、上限としては、54以下、好ましくは51以下、更に好ましくは49以下、最も好ましくは47以下とするものである。
ソリッドコアの表面における硬度は、ショアD硬度で41以上、好ましくは44以上、更に好ましくは46以上、最も好ましくは48以上であり、上限として56以下好ましくは54以下、より好ましくは52以下とするものである。上記のショアD硬度が低すぎると、反発性が低下し、逆に高すぎると、打感が硬すぎてしまい、ドライバーのスピン量も増加し、飛距離が低下してしまうおそれがある。
また、上述したコア断面のショアD硬度及びコア表面のショアD硬度が低すぎると、反発性が低下し、逆に高すぎると、打感が硬すぎてしまい、ドライバーのスピン量も増加し、飛距離が低下してしまうおそれがある。
そして、ソリッドコアにおける表面と中心との硬度差は、ショアD硬度で好ましくは7以上、より好ましくは8以上、最も好ましくは9以上であり、上限としては14以下であり、好ましくは12以下とするものである。上記の硬度差が上記よりも小さいと、ドライバーのスピン量が増加してしまい、飛距離が低下するおそれがある。逆に、硬度差が上記よりも大きいと反発性,耐久性が低下するおそれがある。
また、上述したソリッドコアの中心から15mmの部分の硬度(Q)とコアの表面における硬度(S)との硬度差について、低ヘッドスピードでのドライバーショット時の適正なボール変形による反発性の向上、打感の改善及び耐擦過傷性の改善の点から、その硬度差[(Q)−(S)]がショアD硬度で1以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、最も好ましくは1.7以上であり、上限としては、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、最も好ましくは4以下とすることができる。
また、上述したソリッドコアの表面硬度(S)とコア表面から2〜3mm内側の硬度との硬度差について、低ヘッドスピードでのドライバーショット時の適正なボール変形による反発性の向上、打感の改善及び耐擦過傷性の改善の点から、その硬度差[(S)−(R)]がショアD硬度で3以上、好ましくは3.5以上、より好ましくは4以上であり、上限としては、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは7以下、最も好ましくは6以下とすることができる。
上記ソリッドコアの直径は、好ましくは37.6mm以上、より好ましくは38.2mm以上、最も好ましくは38.8mm以上、上限として好ましくは43.0mm以下、より好ましくは42.0mm以下、更に好ましくは41.0mm以下、より一層好ましくは40.5mm以下、最も好ましくは40.1mm以下とすることが推奨される。
上記ソリッドコアの比重は、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.1以上、上限として好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下であることが推奨される。
なお、上記ソリッドコアの表面にプライマー処理を施すことがカバー層とソリッドコアとの密着性,耐久性確保の点から好ましい。具体的には、ソリッドコアとカバー層との間には、打撃時の耐久性を向上させる目的のために、接着剤層を設けることができる。この場合、接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤、ビニル樹脂系接着剤、ゴム系接着剤などを挙げることもできるが、特にはウレタン樹脂系接着剤、塩素化ポリオレフィン系接着剤を用いることが好ましい。
この場合、接着剤層の形成をディスパージョン塗装にて行なうことができるが、ディスパージョン塗装に用いるエマルジョンの種類に限定はない。エマルジョン調製用の樹脂粉末としては、熱可塑性樹脂粉末あるいは熱硬化性樹脂粉末を用いることができ、例えば酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、アクリル酸エステル(共)重合樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等を使用することができる。これらの中で、特に好ましいのはエポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリル酸エステル(共)重合樹脂であり、中でも熱可塑性ウレタン樹脂が好適である。
なお、接着剤層の厚さは0.1〜30μm、特に0.2〜25μm、とりわけ0.3〜20μmとすることが好ましい。
本発明において、上記カバー層はポリウレタン材料、特に熱可塑又は熱硬化のポリウレタン材料を主成分として形成される。このようなポリウレタン材料を主材とするカバー層を有するソリッドゴルフボールを形成すると、反発性を損なうことなく、優れたフィーリング、コントロール性、耐カット性、耐擦過傷性、繰り返し打撃したときの割れ耐久性が得られるものである。上記カバー層は1層のみならず2層以上の多層構造であってもよいが、最外層カバーはここで説明する熱可塑性又は熱硬化性ポリウレタン材料を主材とする必要がある。
この場合、カバー層としては、下記(A)成分及び(B)成分を主成分とするカバー成形材料(C)により形成されたカバー層を挙げることができる。
(A)熱可塑性ポリウレタン材料
(B)1分子中に官能基として2つ以上のイソシアネート基を持つイソシアネート化合物(b−1)を、イソシアネートと実質的に反応しない熱可塑性樹脂(b−2)中に分散させたイソシアネート混合物
カバー層を上述した(C)カバー成形材料によって形成した場合には、より優れたフィーリング、コントロール性、耐カット性、耐擦過傷性、繰り返し打撃した時の割れ耐久性を有するゴルフボールを得ることができる。
次に、上記成分(A)〜(C)について説明する。
(A)熱可塑性ポリウレタン材料の構造は、高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、ハードセグメントを構成する鎖延長剤及びジイソシアネートからなる。ここで、原料となる高分子ポリオールとしては、従来から熱可塑性ポリウレタン材料に関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、ポリエステル系とポリエーテル系があり、反発弾性率が高く、低温特性に優れた熱可塑性ポリウレタン材料を合成できる点で、ポリエーテル系の方がポリエステル系に比べて好ましい。ポリエーテルポリオールとしてはポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられるが、反発弾性率と低温特性の点でポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。また、高分子ポリオールの平均分子量は1000〜5000であることが好ましく、特に反発弾性の高い熱可塑性ポリウレタン材料を合成するためには2000〜4000であることが好ましい。
鎖延長剤としては、従来の熱可塑性ポリウレタン材料に関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら鎖延長剤の平均分子量は20〜15000であることが好ましい。
ジイソシアネートとしては、従来の熱可塑性ポリウレタン材料に関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。本発明では、後述する(B)イソシアネート混合物との反応性の安定性から、芳香族ジイソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
上述した材料からなる熱可塑性ポリウレタン材料としては、市販品を好適に用いることができ、例えばディーアイシーバイエルポリマー(株)製パンデックスT−8290、T−8295、T8260や、大日精化工業(株)製レザミン2593、2597などが挙げられる。
(B)イソシアネート混合物は、1分子中に官能基として2つ以上のイソシアネート基を持つイソシアネート化合物(b−1)を、イソシアネートと実質的に反応しない熱可塑性樹脂(b−2)中に分散させたものである。ここで、上記イソシアネート化合物(b−1)としては、従来の熱可塑性ポリウレタン材料に関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、反応性、作業安全性の面から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが最適である。
また、前記熱可塑性樹脂(b−2)としては、吸水性が低く、熱可塑性ポリウレタン材料との相溶性に優れた樹脂が好ましい。このような樹脂として、例えばポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルエラストマー(ポリエーテル・エステルブロック共重合体、ポリエステル・エステルブロック共重合体等)が挙げられるが、反発弾性、強度の点からポリエステルエラストマー、中でもポリエーテル・エステルブロック共重合体が特に好ましい。
(B)イソシアネート混合物における熱可塑性樹脂(b−2):イソシアネート化合物(b−1)の配合比は、質量比で100:5〜100:100、特に100:10〜100:40であることが好ましい。熱可塑性樹脂(b−2)に対するイソシアネート化合物(b−1)の配合量が少なすぎると、(A)熱可塑性ポリウレタン材料との架橋反応に充分な添加量を得るためにはより多くの(B)イソシアネート混合物を添加しなくてはならず、熱可塑性樹脂(b−2)の影響が大きく作用することで(C)カバー成形材料の物性が不充分となる。熱可塑性樹脂(b−2)に対するイソシアネート化合物(b−1)の配合量が多すぎると、イソシアネート化合物(b−1)が混練り中にすべり現象を起こし、(B)イソシアネート混合物の合成が困難となる。
(B)イソシアネート混合物は、例えば、熱可塑性樹脂(b−2)にイソシアネート化合物(b−1)を配合し、これらを温度130〜250℃のミキシングロール又はバンバリーミキサーで充分に混練して、ペレット化又は冷却後粉砕することにより得ることができる。イソシアネート混合物(B)としては、市販品を好適に用いることができ、例えば大日精化工業(株)製クロスネートEM30などが挙げられる。
(C)カバー成形材料は、前述した(A)熱可塑性ポリウレタン材料及び(B)イソシアネート混合物を主成分とするものである。(C)カバー成形材料における(A)熱可塑性ポリウレタン材料:(B)イソシアネート混合物の配合比は、質量比で100:1〜100:100、特に100:5〜100:50、中でも100:10〜100:30であることが好ましい。(A)熱可塑性ポリウレタン材料に対する(B)イソシアネート混合物の配合量が少なすぎると架橋効果が充分に発現せず、多すぎると未反応のイソシアネートが成形物に着色現象を起こさせるので好ましくない。
(C)カバー成形材料には、上述した成分に加えて他の成分を配合することができる。このような他の成分として、例えば熱可塑性ポリウレタン材料以外の熱可塑性高分子材料を挙げることができ、例えばポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレンブロックエラストマー、ポリエチレン、ナイロン樹脂等を配合することができる。この場合、熱可塑性ポリウレタン材料以外の熱可塑性高分子材料の配合量は、必須成分である熱可塑性ポリウレタン材料100質量部に対して0〜100質量部、好ましくは10〜75質量部、更に好ましくは10〜50質量部であり、カバー材の硬度の調整、反発性の改良、流動性の改良、接着性の改良などに応じて適宜選択される。更に、(C)カバー成形材料には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
(C)カバー成形材料を用いたカバーの成形では、例えば、(A)熱可塑性ポリウレタン材料に(B)イソシアネート混合物を添加してドライミキシングし、この混合物を用いて射出成形機によりコアの周囲にカバーを成形することができる。成形温度は(A)熱可塑性ポリウレタン材料の種類によって異なるが、通常150〜250℃の範囲で行われる。
上記のようにして得られたゴルフボールカバーの反応形態、架橋形態としては、熱可塑性ポリウレタン材料の残存OH基にイソシアネート基が反応してウレタン結合を形成したり、熱可塑性ポリウレタン材料のウレタン基にイソシアネート基の付加反応が生じ、アロファネート、ビュレット架橋形態を形成したりすると考えられる。この場合、(C)カバー成形材料の射出成形直後は架橋反応が充分に進んでいないが、成形後にアニーリングを行うことにより架橋反応が進行し、ゴルフボールカバーとして有用な特性を保持するようになる。アニーリングとは、カバーを一定温度、一定時間で加熱熟成したり、室温で一定期間熟成したりすることを言う。
上記カバー層の表面における硬度については、ショアD硬度で50以上、好ましくは53以上、更に好ましくは56以上、より更に好ましくは58以上、最も好ましいのは60以上であり、上限として70以下、好ましくは68以下、更に好ましくは66以下、最も好ましいのは65以下である。カバー硬度が軟らかすぎると、スピンが掛かりすぎたり反発が不足して飛距離が落ちてしまったり、耐擦過傷性が悪くなることがある。逆に、硬すぎると繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、ショートゲーム、パターの打感が悪くなったりすることがある。なお、カバーのショアDはASTM D2240に基づくタイプDデュロメータによる測定値である。
また、上記カバー材料の曲げ剛性は、50MPa以上、好ましくは60MPa以上、より好ましくは70MPa以上であり、上限としては、300MPa以下、好ましくは280MPa以下、より好ましくは260MPa以下、最も好ましくは240MPa以下であり、これにより、カバーが硬い割には、曲げ剛性を低くすることにより、アプローチスピン性能やコントロール性に適したカバー材を提供することができる。
また、ドライバーによるスピン特性の点から、カバー表面硬度よりコア表面硬度の方小さくするものであり、具体的には、両者の表面硬度差をショアD硬度で5以上であり、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、上限としては20以下、好ましくは19以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは17以下の範囲内に調整することである。
上記カバー層の厚さについては、下限値が0.5mm以上、好ましくは0.8mm以上、更に好ましくは1.1mm以上、より更に好ましくは1.4mm以上、最も好ましいのは1.7mm以上とするものである。また、上記カバー厚さの上限値については、2.5mm以下であり、好ましくは2.3mm以下、更に好ましくは2.1mm以下、最も好ましいのは2.0mm以下とするものである。カバーの厚さが薄すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、射出成形により頂点部分に樹脂が回りにくくなり真球度が悪くなることがある。逆に、カバーが厚過ぎると、W#1で打撃した時にスピンが増えて反発性が低下し、飛距離が出なくなったり、打感が硬くなってしまうことがある。
なお、本発明におけるカバー層の形成方法は、直接コアに射出成形する方法や、或いは、予め半球殻状の2個のハーフカップを形成し、これらカップでコアを被覆し、加圧加熱成形する方法等の公知の方法を採用することができる。
本発明のゴルフボールの表面(カバー層の表面)には、多数のディンプルが形成されるが、この場合、ディンプル数は、好ましくは250個以上、より好ましくは270個以上、更に好ましくは290個以上、最も好ましくは310個以上であり、上限として、好ましくは420個以下、より好ましくは415個以下、更に好ましくは410個以下、最も好ましくは405個以下とすることである。本発明ではこの範囲が揚力を受けやすく、特にドライバーでの飛距離を増大させることができる。ディンプルは、適正な弾道を得る点から、平面円形状に形成することが好ましく、その平均直径は、好ましくは3.7mm以上、より好ましくは3.75mm以上、上限として、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.7mm以下、更に好ましくは4.4mm以下、最も好ましくは4.2mm以下であり、また、平均深さは好ましくは0.125mm以上、より好ましくは0.130mm以上、更に好ましくは0.133mm以上、最も好ましくは0.135mm以上、上限として、好ましくは0.150mm以下、より好ましくは0.148mm以下、更に好ましくは0.146mm以下、最も好ましくは0.144mm以下の範囲とする。また、ディンプルは、好ましくは直径及び/又は深さが互いに異なる4種以上、より好ましくは5種以上、更に好ましくは6種以上、上限として特に制限はないが、好ましくは20種以下、より好ましくは15種以下、最も好ましくは12種以下とすることが推奨される。
なお、平均深さとは、全ディンプルの深さの平均値である。ディンプルの直径の測定は、ディンプル部分が陸部(ディンプル非形成部分)と接する位置、即ち、ディンプル部分最高点間の直径(差渡し)である。多くの場合、ゴルフボールは、塗装が施されているが、このようなボールにおいては塗料被覆状態でのディンプル直径である。また、ディンプル深さの測定は、上記ディンプルの陸部接合位置を結んで仮想平面を描いた時、その中心位置とディンプルの底(最も深い位置)までの垂直距離である。
本発明のソリッドゴルフボールの表面には必要に応じてマーキング、塗装、表面処理を施すことができる。
本発明のソリッドゴルフボールの初期荷重10kgfから終荷重130kgfまで負荷したときの変形量は2.0mm以上であり、好ましくは2.2mm以上、より好ましくは2.4mm以上、更に好ましくは2.5mm以上であり、上限として、3.8mm以下、好ましくは3.6mm以下、より好ましくは3.4mm以下、最も好ましくは3.1mm以下である。
本発明のソリッドゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上、重さ45.93g以下に形成することができる。直径の上限としては通常44.0mm以下、好ましくは43.8mm以下、より好ましくは43.5mm以下、最も好ましいのは43.0mm以下である。また、重さの下限としては通常44.5g以上、好ましくは45.0g以上、より好ましくは45.1g以上、更に好ましくは45.2g以上である。
本発明のソリッドゴルフボールの製造方法については、公知の射出成形法等の常法により行なうことができる。例えば、ゴム基材を主体とした加硫成形物をソリッドコアとして所定の射出成形用金型内に配備し、単層のカバー層材料を射出成形することによりゴルフボールを得ることができる。また、予め半殻球状に成形した2枚のハーフカップでソリッドコア包み加熱加圧成形することができる。
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1〜9、比較例1〜8]
表3に示すNo.1〜No.13のいずれかの配合によりコア組成物を調整した後、表3中の加硫条件により加硫成形することによりソリッドコアを作成した。このコアに対して、表4に示すA〜Eタイプのいずれかの配合により、単層のカバー層を射出成形法により成形して、ソリッドコアの周囲にカバーを被覆・形成した。そして、多種類のディンプル種を組み合わせてディンプル種I(330個),II(432個)、III(500個)をボール表面に有するソリッドゴルフボールを作成した。
Figure 0005365021
なお、表中に記載した主な材料の商品名は以下の通りである。
BR11: ポリブタジエンゴム:Ni系触媒、シス−1,4結合含有量96%、1
,2ビニル含有量2.0%、ムーニー粘度43、Mw/Mn=4.1;
JSR社製
BR730: ポリブタジエンゴム:Nd系触媒、シス−1,4結合含有量96%、1
,2ビニル含有量1.3%、ムーニー粘度55、Mw/Mn=3;JS
R社製
BR51: ポリブタジエンゴム:Nd系触媒、シス−1,4結合含有量96%、1
,2ビニル含有量1.3%、ムーニー粘度35.5、Mw/Mn=2.
8;JSR社製
パーヘキサC−40:
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン40%希釈;日
本油脂(株)製
なお、「パーヘキサC−40」は40%希釈品のため、実質添加量を
上記表中に表示した。
パークミルD: ジクミルパーオキサイド:日本油脂(株)製
酸化亜鉛: 堺化学社製
老化防止剤: 2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
「ノクラックNS−6」、大内新興化学工業(株)製
アクリル酸亜鉛:日本蒸留工業(株)製
ステアリン酸亜鉛:日本油脂(株)製
Figure 0005365021
なお、表中に記載した主な材料の商品名は以下の通りである。
ハイミラン・シリーズ
三井・デュポンポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
パンデックス・シリーズ
大日本インキ化学工業(株)製の熱可塑性ポリウレタンエラストマー
イソシアネート化合物
大日精化工業(株)製のイソシアネート化合物、商品名「クロスネートEM30」
また、得られた本実施例1〜9及び比較例1〜8の各ゴルフボールにつき、ボールのたわみ量及びボール物性、飛び性能、アプローチスピン、耐擦過傷性及び打感を評価した。結果を表5,6に示す。また、コア配合No.1〜No.13による実施例及び比較例のコア硬度分布を図1,2に示した。
ソリッドコアの硬度分布(ショアD硬度)
23℃に温調後、ショアD硬度(ASTM−2240規格 デュロメータ タイプD)により各部位の硬度を測定した。
・表面硬度は、5個のコア表面の任意の各2点をランダムに測定した値の平均値を示す。
・中心硬度は、コアをファインカッターにより半分にカットして、5個のコアの各々の2個の半球体の断面の中心部分の硬度の平均値を示す。
・断面硬度については、コアを半分にカットして、その断面の中心から5mm,10mm,15mm離れた部分及び表面から2〜3mm内側に離れた部分を測定した。5個のコアの各々の2個の半球体の断面の該当部分の硬度の平均値を示す。
カバー層の表面硬度
23℃に温調後、製品5個の表面においてディンプルの無い土手の部分をランダムに各表面につき2点測定した。ASTM−2240規格のデュロメータ「タイプD」により測定した。
ソリッドコア及び製品のたわみ量
ソリッドコア及び製品をインストロン・コーポレーション製,4204型を用いて、各々10mm/minの速度で圧縮し、10kgでの変形量と130kgでの変形量との差を測定した。
初速
初速は、R&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同方式の初速測定器を用いて測定した。ボールは23±1℃の温度で3時間以上温調し、室温23±2℃の部屋でテストされた。250ポンド(113.4kg)のヘッド(ストライキングマス)を使って打撃速度143.8ft/s(43.83m/s)にてボールを打撃した。1ダースのボールを各々4回打撃して6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を計測し、初速を計算した。約15分間でこのサイクルを行った。
飛距離
ドライバー(ブリヂストンスポーツ社製,Tour Stage X-DRIVE TYPE350 PROSPEC,ロフト角10.5°)をスウィングロボット(ミヤマエ社製)に装着し、ヘッドスピード(HS)40m/sで打撃した時のトータル飛距離を測定した。スピン量は打撃直後のボールを高速カメラにより測定した値である。
アプローチスピン
サンドウェッジ(SW)(ブリヂストンスポーツ社製,Tour Stage X-wedge,ロフト角58°)を用い、HS20m/sにて打撃したときのスピン量を測定した。なお、スピン量は上記の飛距離測定と同じ方法により測定した。
打感
10人のアマチュアゴルファーがティーアップしてドライバーでHS40m/sにて打撃し、また、パターで打撃し、その際の打感について「軟らかい」と答えた人数によって下記のように評価した。なお、ドライバーは、ブリヂストンスポーツ社製,X-DRIVE TYPE350 PROSPEC,ロフト角10°を使用し、パターは、同社製,Tour Stage ViQ Model-IIIを使用した。
・1〜3人が軟らかいと判断した場合を「悪い」(×)と評価した。
・4〜6人が軟らかいと判断した場合を「普通」(△)と評価した。
・7〜10人が軟らかいと判断した場合を「良好」(○)と評価した。
耐擦過傷性(耐ささくれ性)
スウィングロボットマシンを用い、クラブはピッチングウェッジ(角溝仕様)を使用して、各ボールを23℃に温調後、ヘッドスピード33m/sで打撃し、ボールの状態を以下の基準で3人で目視にて評価し、その平均値を数値化した。
10点 全く傷がない。
8点 ほとんど気にならない。
5点 気になるが使用できる。
3点 なんとか使用できる。
1点 全く使用できない。
Figure 0005365021
Figure 0005365021
表5,6の結果から、比較例1は、ボール製品硬度が硬すぎてしまい、打感が硬く、スピンが多過ぎてしまい、飛距離が低下した。比較例2は、コア硬度が軟らかすぎ、反発性が低くなり、飛距離が低下すると共に、アプローチ性能が低かった。比較例3は、コア中心から15mm離れた硬度より、コア表面硬度の方が高いため、ヘッドスピード(HS)40m/sでの飛距離が低下し、打感も硬くなってしまう。比較例4は、カバーが厚くなり過ぎてしまい、反発性が得られず、飛距離が低下した。比較例5は、コア中心から15mm離れた硬度より、コア表面硬度の方が高いため、ヘッドスピード(HS)40m/sでの飛距離が低下し、打感も硬くなってしまう。比較例6は、カバーが硬いアイオノマーであり、アプローチコントロール性(スピン量)が非常に悪く、パターの打感も悪かった。比較例7は、ニッケル触媒系ポリブタジエンゴムをコア材に用いたため反発性が低くなり、飛距離が悪化した。比較例8は、軟らかいアイオノマーカバーを用いたため、反発性が低くなり、飛距離が悪化すると共に、耐擦過傷性が悪かった。
実施例で用いたコアの硬度分布No.1〜No.7を示すグラフである。 比較例で用いたコアの硬度分布No.8〜No.13を示すグラフである。

Claims (5)

  1. ソリッドコアと、これを被覆するカバー層とを具備し、上記カバー層のうち最外層の外表面に多数のディンプルが形成されたソリッドゴルフボールにおいて、上記ソリッドコアが、シス−1,4−結合を60%以上含有し、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエンゴムを60〜100質量部含むゴム基材100質量部に対して、有機硫黄化合物0.1〜5質量部、不飽和カルボン酸又はその金属塩、無機充填剤及び老化防止剤を含むゴム組成物から形成されると共に、ソリッドコアの初期荷重10kgfから終荷重130kgfまで負荷したときの変形量が2.0〜4.0mmであり、かつソリッドコアが下記表の硬度分布を有し、表面硬度と中心硬度との差がショアD硬度で14以下となり、上記カバー層がポリウレタン材料を主成分として形成され、上記カバー層の厚さが0.5〜2.5mm、その表面硬度がショアD硬度50〜70、その曲げ剛性が50〜300MPaであり、上記カバー層の表面硬度より上記ソリッドコアの表面硬度の方が小さく、その差がショアD硬度で5〜20であり、ゴルフボールの初期荷重10kgfから終荷重130kgfまで負荷したときの変形量が2.0〜3.8mmであることを特徴とするソリッドゴルフボール。
    Figure 0005365021
  2. 上記ソリッドコアの表面硬度と上記ソリッドコアの中心硬度との差がショアD硬度で7〜14である請求項記載のソリッドゴルフボール。
  3. 上記ソリッドコアの直径が37.6〜43.0mmであり、上記ゴルフボールの直径が42.67〜44.0mmである請求項1又は2記載のソリッドゴルフボール。
  4. 上記ソリッドコアにおいて、ゴム基材100質量部に対して不飽和カルボン酸又はその金属塩を33〜45質量部、有機過酸化物を0.1〜1.0質量部、無機充填剤を5〜80質量部、老化防止剤を0.2〜1.0質量部配合する請求項1〜のいずれか1項記載のソリッドゴルフボール。
  5. 上記ディンプルにおいて、総数が250〜420個、全ディンプルの平均深さが0.125〜0.150mm、平均直径が3.7〜5.0mm、種類が4種以上の条件でディンプルを構成した請求項1〜のいずれか1項記載のソリッドゴルフボール。
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