本発明の配線母基板について、添付の図面を参照しつつ説明する。図1(a)は本発明の配線母基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面図であり、図1(c)は図1(a)のB−B線における断面図である。図2(a)は、図1に示す配線母基板における、第1の導体および枠状の第1のめっき用導体が形成された絶縁層の内部平面図であり、図2(b)は、図1に示す配線母基板における、第2の導体および枠状の第2のめっき用導体が形成された絶縁層の内部平面図である。図3は、図1に示す配線母基板の第1の導体上に第1のめっき層を、第2の導体上に第2のめっき層をそれぞれ被着させた状態の実施の形態の一例を示す平面図である。図4(a)は本発明の配線母基板の実施の形態の他の例を示す平面図であり、図4(b)は図4(a)のA−A線における断面図であり、図4(c)は図4(a)のB−B線における断面図である。図5(a)は図4に示す配線母基板における、第1の導体および枠状の第1のめっき用導体が形成された絶縁層の内部平面図であり、図5(b)は図4に示す配線母基板における、第2の導体および枠状の第2のめっき用導体が形成された絶縁層の内部平面図である。図6(a)は本発明の配線母基板の実施の形態の他の例を示す平面図であり、図6(b)は図6(a)のA−A線における断面図であり、図6(c)は図6(a)のB−B線における断面図である。図7(a)は図6に示す配線母基板における、第1の導体および枠状の第1のめっき用導体が形成された絶縁層の内部平面図であり、図7(b)は図6に示す配線母基板における、第2の導体および枠状の第2のめっき用導体が形成された絶縁層の内部平面図である。
これらの図において、1は母基板、1aは配線基板領域、1bはダミー領域、1c〜1eは絶縁層、2aは第1の導体、2bは第2の導体、3aは第1のめっき用導体、3bは第2のめっき用導体、4aは第1のめっき用端子部、4bは第2のめっき用端子部、5aは第1のめっき層、5bは第2のめっき層、6は凹部である。
図1〜図7に示す例の配線母基板は、母基板1の中央部に複数の配線基板領域1aが縦横の並びに配列されており、それら複数の配線基板領域1aの周囲(母基板1の外周部)にダミー領域1bが設けられている。中央部に配線基板領域1aが複数配列された配線母基板は、配線基板領域1aを個々に分割することによって複数の小型の配線基板(図示せず)を良好に作製することが可能な多数個取り配線基板となる。なお、図1〜図7に示す例においては、母基板1の中央部に、縦方向に5列および横方向に4列の計20個の配線基板領域1aが配列されている。ダミー領域1bの内部の異なる絶縁層間には、枠状の第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとが形成されており、それぞれめっき電源と接続するための第1のめっき用端子部4aおよび第2のめっき用端子部4bに接続されている。
本発明の配線母基板(第1の構成)は、図1〜図3の例に示すように、複数の絶縁層1a〜1eが積層されて成る母基板1に、母基板1の中央部に配置された配線基板領域1aと、配線基板領域1aの周囲に設けられたダミー領域1bと、配線基板領域1aに設けられた、それぞれ一部が配線基板領域1aの表面に露出した第1の導体2aおよび第2の導体2bと、1つの絶縁層1dのダミー領域1b上に配置された、第1の導体2aに電気的に接続された四角枠状の第1のめっき用導体3aと、第1のめっき用導体3aが配置された絶縁層1dとは異なる絶縁層1eのダミー領域1b上に配置された、第2の導体2bに電気的に接続された四角枠状の第2のめっき用導体3bとを備えており、第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとが、母基板1の主面側から見て重ならないように配置されている。
また、本発明の配線母基板(第2の構成)は、図4〜図7に示す例では、第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとは、母基板1の主面側から見て四角枠状に形成されており、一方のめっき用導体の縦方向に伸びる部分と他方のめっき用導体の横方向に伸びる部分とが交差して、縦方向に伸びる部分同士および横方向に伸びる部分同士が重ならないように配置されており、それ以外の構成は図1〜図3に示す例と同様である。図4〜図7において、図1〜図3と同様の部分には同様の符号を付している。
本発明の配線母基板によれば、上記第1の構成としたことにより、互いに重なるように配置した場合に比べて第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとの近接する導体同士の間の距離を長くでき、一方の導体の露出している表面にめっき層を被着するための電流を一方のめっき用導体に供給したとしても、他方のめっき用導体に電磁誘導により起電力が発生して電流が流れることを抑制できるので、他方の導体の露出している表面に不要なめっき層が被着されることを低減することができる。従って、第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bに所定の電流を供給して、それぞれのめっき用導体に電気的に接続される第1の導体2aおよび第2の導体2bの露出している表面に、所定の厚みまたは材質のめっき層を良好に被着させることができる。
また、本発明の配線母基板によれば、上記第2の構成としたことにより、第1の構成の場合と同様に、第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとの近接する導体同士の間の距離を長くでき、一方のめっき用導体に電流を供給した際に、他方のめっき用導体に電磁誘導により起電力が発生することを抑制できるので、他方の導体の露出している表面に不要なめっき層が被着されることを低減することができる。従って、第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bに所定の電流を供給して、それぞれのめっき用導体に電気的に接続される第1の導体2aおよび第2の導体2bの露出している表面に、所定の厚みまたは材質のめっき層を良好に被着させることができる。
ここで、第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとが母基板1の主面側から見て重ならない配置とは、母基板1の主面側から見て第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bの縦方向に伸びる導体のうち、互いに近接する導体同士が横方向にずれており、かつ第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bの横方向に伸びる導体のうち、互いに近接する導体同士が縦方向にずれているような配置である。なお、製作工程でのばらつきや多数個取りの配線母基板中の配線基板の取数による生産性を考慮して、互いに近接する第1および第2のめっき用導体3a,3b間の距離は、平面視で0.5mm〜5.0mmとなるようにしておくことが好ましい。
例えば、図1および図2に示す例では、第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとには、母基板1の主面側から見て、交差して重なる部分がないので、電流を一方のめっき用導体に供給したときに、他方のめっき用導体に電磁誘導により起電力が発生することを効果的に抑制することができる。
第1のめっき用導体3aと第1の導体2aとは、長方形状の接続部(符号なし)を介して電気的に接続されており、第2のめっき用導体3bと第2のめっき用端子部4bとも、長方形状の接続部(符号なし)を介して電気的に接続されている。なお、第1のめっき用導体3aと第1のめっき用端子部4aとの間、および第2のめっき用導体3bと第2の導体2bとの間は、それぞれ直接に接続されている。これらの接続部は、それぞれ母基板1の主面側から見て第1のめっき用導体2aあるいは第2のめっき用導体2bと交差しているものであれば、第1あるいは第2のめっき用導体2a,2bと重なっていてもよい。
すなわち、2つの線状導体(例えば上記の第2のめっき用導体3aと第2のめっき用端子部4bとの接続部、および第1のめっき用導体2a)が交差している場合には、それぞれに流れる電流の方向が平行ではなく、また重なり合う距離も短いので、線状導体間の電磁誘導は、平行である場合に比べて小さくなる。また、この作用は、両方の線状導体が直交しているときに最小になる。そのため、第1および第2のめっき用導体2a,2bと接続部とは直交していることがより好ましい。
また、第1および第2のめっき用導体2a,2bは、上記第2の構成における配置のように、第1のめっき用導体3aの縦方向に伸びる部分と第2のめっき用導体3bの横方向に伸びる部分とが交差して重なっていても構わないし、あるいは第1のめっき用導体3aの横方向に伸びる部分と第2のめっき用導体3bの縦方向に伸びる部分とが交差して重なっていても構わない。
例えば、図4および図5に示す例では、第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとが母基板1の主面側から見て、母基板1の対角方向のうち図4および図5の左上−右下方向に沿ってずれているように配置されており、第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとが図4および図5における互いの右上部分と左下部分との2箇所で交差し、交差部以外では重ならないように配置されている。また、図6および図7に示す例では、第1のめっき用導体3aの縦方向に伸びる導体は第2のめっき用導体3bの縦方向に伸びる導体の内側に配置され、第1のめっき用導体3aの横方向に伸びる導体は第2のめっき用導体3bの横方向に伸びる導体の外側に配置されており、第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとは図6および図7における互いの4隅の部分の4箇所で交差し、交差部以外では重ならないように配置されている。このように、第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとが交差して配置されている場合にも、交差している部分では重なっていても電磁誘導の作用が小さいので、一方のめっき用導体に電流を供給したときに、他方のめっき用導体に電磁誘導により起電力が発生することを効果的に抑制することができる。
母基板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,炭化珪素質焼結体,窒化珪素質焼結体,ガラスセラミックス等のセラミック材料から成る電気絶縁性の複数の絶縁層1c〜1eが積層されて成るものである。この母基板1の中央部に、タングステンやモリブデン,銅,銀等の金属粉末メタライズから成る第1の導体2aおよび第2の導体2bが形成された、図1〜図7に示す配線基板領域1a(破線で囲まれた領域)が縦横の並びに配置されている。母基板1の破線で囲まれた領域のそれぞれが配線基板の絶縁基板に相当する。また、母基板1の外周部にダミー領域1bが設けられている。ダミー領域1bは、第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bが形成される領域であり、また、母基板1となる後述の生成形体や多数個取り配線基板の加工時や搬送時の位置決めあるいは固定等を行なうための領域としても用いられる。
母基板1は、絶縁層1c〜1eが例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等のセラミック原料粉末に適当な有機バインダーおよび溶剤,可塑剤,分散剤等を添加混合して得たセラミックスラリーを、ドクターブレード法等のシート成形方法を採用してシート状に成形してセラミックグリーンシートを得て、しかる後、セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じてこれを複数枚積層して、母基板1となる生成形体を作製して、約1500〜1800℃の温度で焼成することで、複数の絶縁層1c〜1eからなるものが製作される。
また、配線基板領域1aには、必要に応じて、電子部品(図示せず)が搭載される凹部6を形成しておいてもよい。凹部6は、母基板1用の複数のセラミックグリーンシートのいくつかに、凹部6用の貫通孔を金型やパンチングによる打ち抜き方法あるいはレーザ加工方法等により形成しておくことによって形成することができる。
第1の導体2aおよび第2の導体2bには、母基板1の一方主面に形成され、電子部品の電極に接続される接続電極となるもの、母基板1の他方主面に形成され、外部回路基板の配線導体に接続するための外部端子電極となるもの、あるいは母基板1の内部に形成され、接続電極または外部端子電極を互いに接続する内部配線導体となるものがある。また、これら以外としては、発光素子の光を反射する反射層となるもの、あるいはシールリングやヒートシンク等の金属体をろう材等により母基板1に接合するための接合層となるもの等がある。
図1〜図7に示す例では、第1の導体2aは反射層となるものであり、第2の導体2bは接続電極となるものである。
第1の導体2aおよび第2の導体2bが、絶縁基板や凹部6の表面や絶縁層1c〜1e間に配置される場合は、母基板1(絶縁層1c〜1e)用のセラミックグリーンシートの表面にスクリーン印刷法等の印刷手段によりメタライズペーストを印刷塗布し、母基板1用の生成形体とともに焼成することによって形成する。また、第1の導体2aおよび第2の導体2bが、絶縁層(1c〜1e)を貫通して上下に位置する第1の導体2a同士や第2の導体2b同士を電気的に接続する貫通導体(符号なし)を含む場合は、貫通導体となる部分を形成するためのメタライズペーストの印刷塗布に先立って、母基板1用のセラミックグリーンシートに金型やパンチングによる打ち抜き方法またはレーザ加工等の加工方法によって貫通孔を形成し、この貫通孔にメタライズペーストをスクリーン印刷法等の印刷手段により充填しておき、母基板1となる生成形体とともに焼成することによって形成する。メタライズペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤等を加えて、ボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段によって混合および混練することで作製する。また、セラミックグリーンシートの焼結挙動に合わせたり焼成後の母基板との接合強度を高めたりするために、ガラスやセラミックスの粉末を添加してもよい。貫通孔に充填するメタライズペーストは、有機バインダーや有機溶剤の種類や添加量により、充填に適するように、セラミックグリーンシートの表面に印刷するメタライズペーストよりも高い粘度に調整する。
第1のめっき用導体3aは、1つの絶縁層1dのダミー領域1b上に配置され、第1の導体2aに電気的に接続されている。また、第2のめっき用導体3bは、第1のめっき用導体3aが配置された絶縁層とは異なる絶縁層1eのダミー領域1b上に配置され、第1のめっき用導体3aには電気的に接続されず、第2の導体2bに電気的に接続されている。
第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bは、上述の第1の導体2aおよび第2の導体2bと同様に、母基板1用のセラミックグリーンシートにスクリーン印刷法等の印刷手段によって、第1の導体2aおよび第2の導体2b用のタングステンやモリブデン,銅,銀等の金属粉末を用いたメタライズペーストと同じものを印刷塗布し、母基板1用の生成形体とともに焼成することによって形成する。なお、これらのメタライズペーストは、上述の第1の導体2a,第2の導体2b用のメタライズペーストと同様にして製作することができる。
第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bは、第1のめっき用導体3aから第1の導体2aまでの配線長および第2のめっき用導体3bから第2の導体2bまでの配線長をできるだけ短くし、各配線基板領域1aの第1の導体2aに被着されるめっき層の厚みばらつきおよび第2の導体2bに被着されるめっき層の厚みばらつきを小さくするために、それぞれが電気的に接続される第1の導体2aおよび第2の導体2bが設けられる絶縁層1c〜1eに近い絶縁層1c〜1e上に設けておくことが好ましい。
第1のめっき用端子部4aおよび第2のめっき用端子部4bは、第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bがめっき電源の端子電極あるいは端子電極に接続された治具と接続しやすくするために、図1〜図7に示す例では、母基板1の外辺に設けた切欠きの内面に形成されている。これらの第1のめっき用端子部4aおよび第2のめっき用端子部4bは、セラミックグリーンシートを金型等で打ち抜いて切欠きとなる貫通孔を形成した後、その貫通孔の内面に、第1のめっき用端子部4aおよび第2のめっき用端子部4b用のメタライズペーストと同様のメタライズペーストを印刷塗布し、母基板1用の生成形体とともに焼成することによって形成することができる。
また、図1〜図5に示すように、第1のめっき用端子部4a同士または第2のめっき用端子部4b同士の接続は、それら第1のめっき用端子部4aまたは第2のめっき用端子部4bをそれぞれ四角枠状である第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体の4つの角部それぞれの近傍に設けていると、その接続によって複数の配線基板領域1aのそれぞれに供給される電流のばらつきを低減して、配線基板領域1a毎の第1の導体2aおよび第2の導体2bの露出される表面に被着されるめっき層の厚みばらつきを低減させることができる。
また、図1および図2に示すように、第1のめっき用端子部4aおよび第2のめっき用端子部4bそれぞれの隣に、これらと同様の形状の切欠き部(符号なし)を設けておくと、第1のめっき用端子部4aおよび第2のめっき用端子部4bに加えて、これらの切欠き部でも配線母基板をめっき電源の治具等に固定させることができる。そのため、めっき液に浸漬した際や母基板1の運搬中に、第1のめっき用端子部4aまたは第2のめっき用端子部4bとめっき電源の治具との接触不良が起こることを抑制して、所定の厚みのめっき層が被着されなくなることをより確実に抑制することができる。
また、図6および図7に示すように、第1のめっき用端子部4aおよび第2のめっき用端子部4bをそれぞれ母基板1の異なる辺にそれぞれ対向させて設けていると、第1のめっき用端子部4aまたは第2のめっき用端子部4bとめっき電源との接続領域を図1〜図5に示した例のような場合に比べて多くすることができて、配線基板領域1a毎の第1の導体2aおよび第2の導体2bの露出される表面に被着されるめっき層の厚みばらつきをより効果的に低減させることができる。また、それぞれ対向し合う辺の間で対にしていると、例えば母基板1を上下から治具の端子(金属ピン等)で挟んで保持するときに、第1のめっき用端子部4aまたは第2のめっき用端子部4bを間違ってめっき電源に接続するような接続ミス等を防止することができる。
第1の導体2aの露出する表面にめっき層を被着させる際には、母基板1を電解めっき浴に浸漬するとともに、第1のめっき用端子部4aをめっき電源に接続して第1のめっき用導体3aに電流を供給させる。また、第2の導体2bの露出する表面にめっき層を被着させる際には、母基板1を電解めっき浴に浸漬するとともに、第2のめっき用端子部4bをめっき電源に接続して第2のめっき用導体3bに電流を供給させる。これにより、第1のめっき層5aおよび第2のめっき層5bの異なるめっき層がそれぞれ被着された配線母基板が形成される。
また、第1の導体2aおよび第2の導体2bの露出する表面に同一の材質および厚みのめっき層5a,5bを被着させる際には、第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bの両方に同時に電流を供給すればよい。これにより、第1の導体2aおよび第2の導体2bに複数層からなるめっき層を被着させ、部分的に同一のめっき層を被着させる必要がある場合にも、効率よくめっき層の形成を行なうことができる。例えば、第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bの露出する表面に金めっき層や銀めっき層等を被着形成する際に、これらのめっき層を別々に被着させる前に、その下地層としてのニッケルめっき層を効率よく被着させることができる。
めっき層5a,5bは、ニッケル,金,銀等の、耐蝕性に優れる金属,接続部材の接続性に優れる金属または光の反射率の高い金属からなるものであり、例えば、第1の導体2aおよび第2の導体2bのそれぞれに直接被着された厚さ1〜10μm程度のニッケルめっき層(図示せず)と、そのニッケルめっき層の上に被着された厚さ0.1〜3μm程度の金めっき層または0.1〜5μm程度の銀めっき層(図示せず)とから成る。これにより、第1の導体2aおよび第2の導体2bが腐食することを効果的に抑制することができる。また、金メッキ層を最表層として被着させた場合は、電子部品(図示せず)と第1の導体2aまたは第2の導体2bとの固着、第1の導体2aまたは第2の導体2bとボンディングワイヤ等の接続部材5との接合、および第1の導体2aまたは第2の導体2bと外部電気回路基板の配線導体との接続を強固にすることができる。また、銀メッキ層を最表層として被着させた場合は、光の反射率が高く、発光素子より放射された光を良好に反射することができる。また、第1の導体2aまたは第2の導体2bがシールリングやヒートシンク等の金属体との接続層となる場合には、シールリングやヒートシンク等の金属体をろう材等により接合した後、これらの金属体および第1の導体2aまたは第2の導体2bの表面に下地層としてニッケルを被着し、その上に金または銀等のめっき層を被着してもよい。
また、図1および図2に示すように、枠状の第1のめっき用導体3aを枠状の第2のめっき用導体3bの外側を囲むように配置している場合には、第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bを異なる金属材料で形成して抵抗率を互いに異ならせることもできる。この場合には、第1の導体2a,第2の導体2bの長さや幅等による電流の流れる方向と直交する方向における断面積の違いを、この抵抗率の差で打ち消して抵抗値のばらつきを抑制し、めっき層の厚みばらつき等を低減することができる。
また、めっき層の下地層としてのニッケルめっき層を被着させる場合のように、第1の導体2aおよび第2の導体2bの露出する表面に同一のめっき層を同一厚みに被着させる際にも、良好に被着させることができる。
また、第1のめっき用導体3aと第2のめっき用導体3bとの部分的な重なりも少なくして、その製作工程における母基板1の変形等を抑制することができる。また、第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bの幅をそれぞれ異なるものとしても構わない。
なお、上記のような配線母基板を配線基板領域1aの外縁に沿って分割することにより、配線基板が作製される。また、配線母基板の配線基板領域1a上に電子部品を搭載した後に、配線基板領域1aの外縁に沿って分割する場合もある。配線母基板を配線基板に分割する方法としては、配線母基板の配線基板領域1aの外縁に沿って分割溝を形成しておき、この分割溝に沿って破断させて分割する方法、またはスライシング法等により配線基板領域1aの外縁に沿って切断する方法等を用いることができる。分割溝は、母基板1用の生成形体にカッター刃を押し当てたり、スライシング装置により生成形体の厚みより小さく切り込んだりすることによって形成するか、焼成後にスライシング装置により母基板1の厚みより小さく切り込むことによって形成することができる。
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
例えば、配線母基板は、母基板1の中央部に、1つの配線基板領域1aが配置されていても構わない。
また、母基板1は、配線基板領域1aに凹部6を備えていない、平板形状等であっても構わない。
また、配線基板領域1aは縦または横の一方向に連続して配置されていても良いし、配線基板領域1a同士の間にダミー領域(図示せず)が形成されていても構わない。この場合には、配線基板領域1a同士の間のダミー領域は、母基板1となる生成形体や多数個取り配線基板の加工時や搬送時の位置決め、または固定等を行なうための領域として用いることができる。
また、それぞれの配線基板領域1a同士の間のダミー領域に第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bを形成しておけば、配線基板領域1a毎の第1の導体2aおよび第2の導体2bの露出する表面に被着されるめっき層の厚みばらつきを低減することもできる。
また、第1のめっき用導体3aおよび第2のめっき用導体3bのうち、一方のみをそれぞれの配線基板領域1a同士の間のダミー領域に形成しておき、一方の第1の導体2aまたは第2の導体2bに厚いめっき層を形成しやすくしてもよい。
また、第1の導体2aまたは第2の導体2bは、配線基板領域1aの境界に形成した切欠き部の内面に形成したり、切欠き部を導体で充填したりした、いわゆるキャスタレーション導体としても構わない。
また、図1,図4および図6に示す例では、母基板1の絶縁基板は、絶縁層1c〜1eの3層から製作されているが、より多くの絶縁層からなるものであっても構わない。
次に、本発明の配線母基板の具体例について説明する。
まず、縦85mm×横70mm×厚み0.75mmの酸化アルミニウム質焼結体からなる母基板1に、第1の導体2aおよび第2の導体2bが形成された2mm×3mmの配線基板領域1aを、縦方向に36列および横方向に19列の684個配列して、最外周の配線基板領域1aの外側(母基板1の外周部)には(上下にそれぞれ幅6.5mmの、左右にそれぞれ幅6.5mmの)幅6.5mmの四角枠状のダミー領域1bを設けた配線母基板を準備した。ここで、母基板1は3層の絶縁層1c〜1e(第1の絶縁層1cの厚み:0.40mm,第2の絶縁層1dの厚み:0.15mm,第3の絶縁層1eの厚み:0.20mm)からなり、各配線基板領域1aの中央部には、縦1.4mm×横2.4mm×深さ0.55mmの長円形状の凹部6が形成されているものを用いた。また、第1の導体2aが第1の絶縁層1cの凹部6の内壁面に形成され、第2の導体2bが、凹部6の底面と絶縁基板の下面に形成された導体層と、この導体層同士を接続する第3の絶縁層1e内に形成された貫通導体とからなるものを用いた。
ここで、本発明の実施例の配線母基板は、第2の絶縁層1dのダミー領域1b上に、幅が2.0mmで、外周が縦83mm×横68mmで、内周が縦79mm×横64mmの枠状の第1のめっき用導体3aと、第3の絶縁層1eのダミー領域1e上に、幅が2.0mmで、外周が縦78mm×横63mmで、内周が縦74mm×横59mmの枠状の第2のめっき用導体3bとを備えている。
また、比較例として、第2の絶縁層のダミー領域上に、幅が2.0mmで、外周が縦80mm×横65mmで、内周が縦76mm×横61mmの第1のめっき用導体および第2のめっき用導体とが主面側から見て互いに重なっている以外は、上記と同じ配線母基板も準備した。
また、実施例および比較例の配線母基板ともに、第1のめっき用端子部4aと第2のめっき用端子部4bとを上述の方法によって形成している。
最初に、実施例および比較例の配線母基板の第1の導体2aおよび第2の導体2bの露出する表面に、電解めっき法により4μmのニッケルめっき層を下地層として被着させた。
次に、実施例および比較例の配線母基板を銀めっき浴中に浸漬させ、第1のめっき用導体3aに1Aの電流を420秒間通電させ、第1の導体2aの露出する表面に、銀めっき層を被着させた。そして、実施例および比較例の配線母基板を金めっき浴中に浸漬させ、第2のめっき用導体3bに0.25Aの電流を200秒間通電させ、第2の導体2bの露出する表面に、金めっき層を被着させた。
その後、まず、実施例の配線母基板のめっき層と比較例の配線母基板のめっき層の表面について実体顕微鏡(20倍)による確認を行なった。この実体顕微鏡による外観観察により、比較例の配線母基板の第1の導体に被着された銀めっき層の表面が、実施例の配線母基板の第1の導体2aに被着された銀めっき層の表面と比較して、変色していることが確認された。そして、変色が確認された比較例の配線母基板のめっき層の表面に対して、蛍光X線膜厚計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SFT3300、X線管球:W)を用いて、X線出力:45kV−1mA、測定時間:10秒の測定条件で測定して比較したところ、第1の導体2aに被着された銀めっき層表面に金成分の被着が観測された。なお、本発明の配線母基板においては、第1の導体2aに被着されためっき層表面への金めっき層の被着が観測されなかった。