上述したような構造の印字ラベル作成装置においては、カートリッジの着脱の際に、ユーザの指などから静電気が印字ヘッド支持部材を経由して印字ヘッドに伝わり、印字ヘッドに不具合を生じさせるおそれがある。また前面カバーに設けた複数のキーはユーザにより頻繁に接触操作されるため、静電気が前面カバーの隙間、例えば前面カバーと液晶表示部のカバーパネルとの隙間から侵入し、液晶表示部に不具合を生じさせたり、又は液晶表示部と接続されたメイン基板等に伝わり、当該メイン基板に実装された電子素子等に不具合を生じさせるおそれがある。
このとき、上記従来技術の印字ラベル作成装置では、印字ヘッド支持部材が金属フレームに固定されているため、印字ヘッド支持部材に伝わった静電気を接地用経路としての金属フレームを介して装置外部(筐体等)に逃がすことができる。また液晶表示部近傍に伝わった静電気についても、金属フレームを介して装置外部に逃がすことができる。
ここで、印字ラベル作成装置の軽量化及びコスト低減を図ろうとした場合、重量物であり製造コストが高い金属フレームを設けない構成とすることが有効である。しかしながら、この場合には接地用経路としての金属フレームが存在しなくなるため、上記印字ヘッド支持部材や液晶表示部近傍に伝わった静電気を速やかに装置外部に逃がすことができず、印字ヘッドや液晶表示部等を介して伝わることによる不具合を生じさせるおそれがあった。
本発明の目的は、軽量化及びコスト低減を図りつつ、印字ヘッドや液晶表示部を静電気から保護することができる印字ラベル作成装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、第1発明の印字ラベル作成装置は、装着したカートリッジより供給される被印字テープに対し印字ヘッドにより印刷を行い、印字ラベルを作成する印字ラベル作成装置であって、前記印字ラベル作成装置の前面を構成する前カバーに設けられた液晶表示部と、前記印字ラベル作成装置の後面を構成する後カバーに設けられ、前記印字ヘッドを支持する印字ヘッド支持部材と、一方側がプリント配線基板に形成された接地用配線パターンに接続された導電部材とを有し、前記導電部材の他方側に弾性部を形成し、当該弾性部は前記前カバーと前記後カバーとの組み付け時に、前記液晶表示部と前記印字ヘッド支持部材とに接触し、前記プリント配線基板は、前記前カバーに設けられた複数のキーに対応する位置に複数の接点を備え、外周部に前記接地用配線パターンが設けられたキー基板であり、前記導電部材は、金属製の板バネであって、前記導電部材の一方側は、前記キー基板に設けられた前記接地用配線パターンに接続され、前記弾性部は、前記キー基板との接続部より前記液晶表示部側に延設された延設部と、この延設部の他方側端部において屈曲された屈曲部と、この屈曲部により拡開状に折り返された折返し部とを有しており、前記前カバーと前記後カバーとの組み付け時に、前記屈曲部が前記液晶表示部に接触し、前記折返し部が前記印字ヘッド支持部材に接触することを特徴とする。
本願第1発明の印字ラベル作成装置は、液晶表示部が設けられた、装置前面を構成する前カバーと、印字ヘッドを支持する印字ヘッド支持部材が設けられた、装置後面を構成する後カバーとを有している。この印字ラベル作成装置においては、装着したカートリッジより供給される被印字テープに対し印字ヘッドにより所定の印刷が行われ、例えばこの印刷済みの被印字テープが所定の長さに切断されることで、印字ラベルが作成される。
このような印字ラベル作成装置においては、通常、カートリッジは印字ヘッド支持部材が設けられる後カバーに装着される。このため、カートリッジの着脱が静電気を帯びた指などによって行われたときに、静電気が印字ヘッド支持部材から印字ヘッドに伝わり、印字ヘッドに不具合を生じさせるおそれがある。また、液晶表示部が設けられる前カバーには、通常、各種操作を行うための複数のキーが設けられ、ユーザにより頻繁に接触操作される。このため、静電気が前カバーの隙間、例えば前カバーと液晶表示部のカバーパネルとの隙間から侵入し、液晶表示部自体に不具合を生じさせたり、又は侵入した静電気が例えば液晶表示部と接続されたメイン基板に伝わり、メイン基板に実装された電子素子等に不具合を生じさせるおそれがある。
そこで本願第1発明においては、一方側が、プリント配線基板に形成された接地用配線パターンに接続され、他方側に弾性部を形成した導電部材を設ける。この導電部材の弾性部は、前カバーと後カバーとの組み付け時に、液晶表示部と印字ヘッド支持部材とに弾性をもって接触する。
これにより、導電部材の弾性部を、液晶表示部と印字ヘッド支持部材とに対し所定の接触圧をもたせて確実に接触させることができる。これにより、上記印字ヘッド支持部材に伝わった静電気を導電部材及び接地用配線パターンを介して装置外部に逃がし、印字ヘッドに不具合を生じるのを防止することができる。また上記前カバーと液晶表示部のカバーパネルとの隙間等から侵入した静電気を同様に導電部材及び接地用配線パターンを介して装置外部に逃がし、液晶表示部及びメイン基板に不具合を生じるのを防止することができる。
また本願第1発明においては、1部品の導電部材を用いて液晶表示部と印字ヘッド支持部材の両方を接地用配線パターンに接続するので、個別に導電部材を設ける場合に比べ、簡易な構成でコストアップを抑制しつつ静電気対策を実現することができる。
さらに本願第1発明においては、導電部材により、前カバーに設けた液晶表示部と後カバーに設けた印字ヘッド支持部材とを接地用配線パターンに接続するので、印字ラベル作成装置の前面側及び後面側のいずれの側から侵入した静電気についても装置外部に逃がすことができる。
また弾性をもって接触する構成とすることで、前後カバーの非組み付け時において、前カバーに対する各部品(液晶表示部、プリント配線基板、導電部材等)の組み付け誤差や、各部品の寸法誤差等を許容し、多少の誤差があっても液晶表示部と印字ヘッド支持部材とを確実に接触させることができる。
また、上記第1発明の印字ラベル作成装置は、前記プリント配線基板は、前記前カバーに設けられた複数のキーに対応する位置に複数の接点を備え、外周部に前記接地用配線パターンが設けられたキー基板であり、前記導電部材は、金属製の板バネであって、前記導電部材の一方側は、前記キー基板に設けられた前記接地用配線パターンに接続されている。
これにより、導電部材の一方側を、キー基板の外周部に設けられた接地用配線パターンに接続する。これにより、印字ヘッド支持部材に伝わった静電気や、前カバーと液晶表示部のカバーパネルとの隙間等から侵入した静電気を、導電部材及びキー基板の接地用配線パターンを介して確実に装置外部に逃がすことができる。また、メイン基板と異なり電子素子等を有しないキー基板に接地用配線パターンを設けることにより、静電気の経路近傍に電子素子等が設置されることを防止し、電子素子等の不具合を防止できる。またこのようにキー基板に接地用配線パターンを設けることにより、例えば前カバーと各キーとの隙間より侵入した静電気についても迅速に装置外部に逃がすことができる。
さらに、上記第1発明の印字ラベル作成装置は、前記弾性部は、前記キー基板との接続部より前記液晶表示部側に延設された延設部と、この延設部の他方側端部において屈曲された屈曲部と、この屈曲部により拡開状に折り返された折返し部とを有しており、前記前カバーと前記後カバーとの組み付け時に、前記屈曲部が前記液晶表示部に接触し、前記折返し部が前記印字ヘッド支持部材に接触する。
すなわち、導電部材は金属製の板バネであって、その弾性部は、キー基板との接続部より液晶表示部側に延設された延設部と、この延設部の他方側端部において屈曲された屈曲部と、この屈曲部により拡開状に折り返された折返し部とを有している。すなわち導電部材の弾性部は、略くの字状に屈曲した板バネ構造となっている。
これにより、前カバーと後カバーとの組み付け時に、弾性部の弾性力によって、屈曲部及び折返し部をそれぞれ液晶表示部及び印字ヘッド支持部材に対し、所定の接触圧をもたせて確実に接触させることができる。
第2発明の印字ラベル作成装置は、上記第1発明において、前記導電部材の一方側は、前記キー基板にハンダ付けにより固定され、前記導電部材の他方側は、前記前カバーと前記後カバーとの非組み付け時には、前記延設部及び前記屈曲部が前記液晶表示部との間に所定の間隔を有するように配設されており、前記前カバーと前記後カバーとの組み付け時には、前記折返し部が前記印字ヘッド支持部材より受ける反力により、前記屈曲部が前記液晶表示部に押し付けられ、前記折返し部が受ける反力の大きさと、前記屈曲部が前記液晶表示部より受ける反力の大きさが相等しくなるように、構成されていることを特徴とする。
本願第2発明においては、導電部材の他方側は、前カバーと後カバーとの非組み付け時には、延設部及び屈曲部が液晶表示部との間に所定の間隔を有するように配設されている。この間隔をできるだけ小さい値に設定することで、前後カバーの組み付け時において、印字ヘッド支持部材からの反力による屈曲部の移動量を規制し、当該屈曲部の移動に基づいて導電部材の一方側のハンダ付けによる固定部に作用する剥離力を小さくすることができる。
また本願第2発明においては、導電部材の他方側が、前カバーと後カバーとの組み付け時に、折返し部が印字ヘッド支持部材より受ける反力の大きさと、屈曲部が液晶表示部より受ける反力の大きさが相等しくなるように、構成されている。これにより、前後カバーの組み付け時において、折返し部や屈曲部が受ける反力に起因する力が導電部材のハンダ付けによる固定部に作用するのを防止できる。
第3発明の印字ラベル作成装置は、上記第1又は第2発明において、前記前カバーに設けられ、電子素子を実装したメイン基板を有し、前記導電部材は、前記液晶表示部との接触位置が、前記メイン基板よりも前面側となるように設けられていることを特徴とする。
本願第3発明においては、導電部材を、当該導電部材と液晶表示部との接触位置がメイン基板よりも前面側となるように設ける。これにより、前カバーと液晶表示部との隙間等から侵入した静電気がメイン基板に伝わるよりも先に導電部材及び接地用配線パターンを介して装置外部に逃がすことができる。したがって、メイン基板を静電気より確実に保護することができる。
本発明によれば、印字ヘッドや液晶表示部を静電気から保護することができる。
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において前・後・左・右・上・下というときは、各図(図7を除く)に示す方向を指すものとする。
図1は、本実施形態の印字ラベル作成装置1の全体構成を表す斜視図である。
図1に示すように、印字ラベル作成装置1は、ユーザの手によって把持されるハンディ型の印字ラベル作成装置である。この印字ラベル作成装置1の筐体6は、装置前面を構成する前カバー6Aと、装置後面を構成する後カバー6Bとで構成されている。さらにこの後カバー6Bは、種々の機構を内蔵する後カバー本体6B1と、カートリッジ31や乾電池8を着脱する際に後カバー本体6B1より取り外し可能な着脱カバー6B2とで構成されている。
上記前カバー6Aの上側には、印刷データや、設定画面等を表示するための液晶表示部2が設けられている。なお、液晶表示部2の前面は例えば透明のアクリル板等であるカバーパネル2Aによって覆われており、図1ではこのカバーパネル2Aを図示している。液晶表示部2の下側には、印字ラベル作成装置1を操作するためのキーボード部3が設けられている。このキーボード部3には、文字、記号及び数字等の文字キーや、種々の機能キーが含まれている。また上記後カバー本体6B1の右側上端には、印刷済みラベル用テープ80を切断するためのカットボタン4が設けられている。
図2及び図3は、着脱カバー6B2を取り外した状態の印字ラベル作成装置1の内部構造を表す斜視図である。なお、図2はカートリッジ31をカートリッジホルダ7に装着した状態、図3はカートリッジ31をカートリッジホルダ7から取り外した状態を表している。
これら図2及び図3に示すように、後カバー本体6B1の後側上部には、カートリッジ31を着脱するために凹状に形成された平面視矩形状のカートリッジホルダ7が設けられている。このカートリッジホルダ7には、カートリッジ31が着脱される。カートリッジホルダ7の下側には、モータ(図示せず)を収納するためのモータ収納部5が設けられている。モータ収納部5のさらに下側には、乾電池8を収納するための電池収納部9が設けられている。
上記カートリッジホルダ7の上側には、印刷済みラベル用テープ80を外部に排出するためのテープ排出スリット24が設けられている。またカートリッジホルダ7の右側上部にはローラホルダ17(後述の図4参照)が設けられ、このローラホルダ17の後側には、板状形状を有した合成樹脂製の板部25が設けられている。この板部25の上部には、開口部である突起部挿入口10が設けられている。着脱カバー6B2が後カバー本体6B1に着脱されることにより、着脱カバー6B2に設けられた突起部(図示せず)が上記突起部挿入口10に挿抜される。これにより、ローラホルダ17を印刷位置(後述の図4に示す位置)に移動させたり、待機位置(図2及び図3に示す位置)に移動させたりすることができるようになっている。
また、後カバー本体6B1の上端部にはロック穴11が設けられ、下端部にはロック穴12が2箇所設けられている。着脱カバー6B2が後カバー本体6B1に取り付けられた際に、着脱カバー6B2に設けられたロック部材(図示せず)がそれぞれロック穴11,12に嵌め込まれる。これにより、着脱カバー6B2の自然開放が防止されるようになっている。
次に、カートリッジホルダ7の詳細構造について説明する。図3に示すように、カートリッジホルダ7の底面は、合成樹脂製のフレーム13で構成されている。フレーム13の右端部であるフレーム端131は、後述するリブ30及びローラ軸20のさらに右側に設けられている。フレーム13の略中央部には凹状に形成されたギア用凹部26が設けられている。ギア用凹部26には、ギア214が設けられている。また、ギア用凹部26の下側にはギア用凹部第1開口261が設けられている。ギア214は、ギア用凹部第1開口261を介してフレーム13の前側の面に設けられた複数のギア(図示せず)と噛合されている。また、ギア用凹部26の上側にはギア用凹部第2開口262が設けられている。ギア214は、ギア用凹部第2開口262を介してフレーム13の前側の面に設けられた複数のギア(図示せず)と噛合されている。そして、ギア214の後側には、インクリボン55を巻き取るためのリボン巻取軸14が立設されている。この構成により、前述のモータ収納部5に収納されたモータの動力が上記複数のギアにより伝達され、ギア214とリボン巻取軸14とが回転する。
上記ギア214及びこれと噛合するフレーム13の前側の面に設けられた複数のギアはそれぞれ合成樹脂で形成されており、またこれらのギアを回転可能に支持するギア軸(図示せず)も合成樹脂で形成されており、フレーム13と一体として形成されている。
なお、図3では説明のためにギア214の歯部を露出させた状態を表しているが、実際にはギア214の歯部は隠蔽用傘部114(後述の図5参照)によって覆われ露出しない構造となっている。
また図3に示すように、リボン巻取軸14の右側にはリブ30が立設されている。このリブ30の右側面に矩形状の放熱板であるヒートシンク15が設けられている。そして、ヒートシンク15の右側面には、発熱体を有するサーマルヘッド16(印字ヘッド。後述の図4及び図5参照)が設けられている。すなわち、ヒートシンク15(印字ヘッド支持部材)はサーマルヘッド16を支持する支持部材でもある。
また、リブ30とテープ排出スリット24との間には、ローラ軸20がフレーム13に立設されている。このローラ軸20は合成樹脂で形成されており、フレーム13と一体として形成されている。ローラ軸20は、円柱状に形成された円柱部201と、延柱部201の外周から外側に向かって放射状に形成された6個のリブ202とから構成されている(後述の図4参照)。ローラ軸20は、カートリッジ31に設けられたテープ搬送ローラ39の軸孔391(後述の図4参照)に挿入され、テープ搬送ローラ39を回転可能に支持する。
ローラ軸20の左側には、凸部27が立設されている。この凸部27は、カートリッジ31の凹部(図示せず)に挿入されることで、カートリッジ31の位置決めをするものである。
図4は、カートリッジ31の内部構造を表す平面図である。なおこの図4には、カートリッジ31の内部構造と共に、印字ラベル作成装置1の印刷機構の一部であるローラホルダ17や、上述したリブ30、ヒートシンク15、及びサーマルヘッド16等を図示している。
図4に示すように、カートリッジケース33内の左側下部には、透明フィルム状のカバーフィルム51(被印字テープ)を巻回したカバーフィルムスプール52が回転可能に配置されている。このフィルムスプール52から繰り出されたカバーフィルム51は、カートリッジ開口371に向けて案内され、当該カートリッジ開口371から送出される。またカートリッジケース33内の右側下部には、インクリボン55を巻回したリボンスプール56が回転可能に配置されている。このリボンスプール56から繰り出されたインクリボン55は、カートリッジ開口371に向けて案内され、カバーフィルム51と共に送出される。
カバーフィルムスプール52とリボンスプール56との間には、リボン巻取スプール57が回転可能に配置されている。このリボン巻取スプール57は、リボンスプール56からインクリボン55を引き出すと共に、文字等の印刷で消費されたインクリボン55を巻き取る。
カートリッジケース33内の上部には、基材テープ53を巻回した基材テープスプール54が回転可能に配置されている。この基材テープスプール54から繰り出された基材テープ53は、テープ搬送ローラ39に向けて案内され、当該基材テープ53と印刷済のカバーフィルム51とが、テープ搬送ローラ39と押圧ローラ192とによって圧着されて印刷済みラベル用テープ80となり、テープ排出口59に向けて搬送される。
また、カートリッジホルダ7に装着されたカートリッジ31の右側には、プラテンローラユニット18と押圧ローラユニット19とを備えたアーム状のローラホルダ17が、軸支部171を中心に左右方向に揺動可能に設けられている。このローラホルダ17もフレーム13と同様に合成樹脂製である。着脱カバー6B2が取り付けられると、前述した突起部(図示せず)によりローラホルダ17がカートリッジ31方向に移動される。これにより、ローラホルダ17に設けられた押圧ローラユニット19とプラテンローラユニット18とが印刷位置(図4に示す位置)に移動する。
上記プラテンローラユニット18は、ヒートシンク15の右側に配置されている。プラテンローラユニット18には、プラテンローラ182とプラテンローラ用ギア(図示せず)とが設けられている。プラテンローラ182は、ヒートシンク15の右側面に設けられたサーマルヘッド16に対向する位置に配置されている。プラテンローラ用ギアは、フレーム13の前側に設けられたギア(図示せず)に噛合されており、モータから動力を伝達されたプラテンローラ用ギアが回転することで、プラテンローラ182が回転する。これにより、プラテンローラユニット18が印刷位置に移動した際に、プラテンローラ182は、カバーフィルム51とインクリボン55とをサーマルヘッド16に対して押圧しつつ、文字、図形、記号等が印刷されたカバーフィルム51をその回転により押圧ローラユニット19の方向へ搬送する。
押圧ローラユニット19には、押圧ローラ192と押圧ローラ用ギア191(図3参照)とが設けられている。押圧ローラ192はローラ軸20に対向する位置に配置されている。押圧ローラ用ギア191は、フレーム13の前側に設けられたギア(図示せず)に噛合されており、モータから動力を伝達された押圧ローラ用ギア191が回転することで、押圧ローラ192が回転する。これにより、押圧ローラユニット19が印刷位置に移動した際に、押圧ローラ192は、カバーフィルム51と基材テープ53とを、ローラ軸20に回転可能に支持されたテープ搬送ローラ39に対して押圧する。これにより、印刷が行われたカバーフィルム51と基材テープ53とが圧着され印刷済みラベル用テープ80となり、テープ排出スリット24から印字ラベル作成装置1の外部に排出される。
なお、上記プラテンローラ182及び押圧ローラ192のローラ軸183,193はそれぞれ合成樹脂製であり、またプラテンローラ用ギア及び押圧ローラ用ギア191もそれぞれ合成樹脂で形成されている。以上のように、本実施形態の印字ラベル作成装置1においては、各ローラ39,182,192を回転可能に支持するローラ軸20,183,193や、モータの動力をリボン巻取軸14やローラ182,192に対し伝える複数のギアをそれぞれ回転可能に支持する複数のギア軸を合成樹脂で形成し、複数のギア軸については合成樹脂製のフレーム13と一体として形成する。これにより、前述した従来技術のように、ローラ軸、ギア軸、及びこれらが立設されるフレームを金属製とする構成に比べ、金属フレームを不要とし、印字ラベル作成装置全体の軽量化及びコスト低減を図ることができる。
以上のような基本構成である印字ラベル作成装置1において、本実施形態の最大の特徴は、前カバー6Aと後カバー6Bとの組み付け時に、液晶表示部2とヒートシンク15とに弾性をもって接触する板バネ90を設けた点にある。以下、この詳細について説明する。
図5は、着脱カバー6B2を取り外した状態の印字ラベル作成装置1の外観を表す斜視図であり、図6はさらに後カバー本体6B1を取り外した状態の印字ラベル作成装置1の外観を表す斜視図である。なお、図5は前述の図3と見る方向を変えただけで実質的に同内容の図面であるが、図6との対比のために図示している。また図6では説明上、前カバー6Aと共に、後カバー本体6B1に設けられるヒートシンク15及びサーマルヘッド16を図示している。
図6に示すように、前カバー6Aには、上部に配置された前述の液晶表示部2と、この液晶表示部2の後側に配置され、印字ラベル作成装置1の主たる制御を司るメイン基板60と、これら液晶表示部2及びメイン基板60の下側に配置されたキー基板70とが設けられている。メイン基板60には、ICチップ等の複数の電子素子61が実装されている。キー基板70は、その前面における前述したキーボード部3の各キーに対応する位置に複数の接点(図示せず)を備えており、ユーザがキーボード部3のキーを押圧すると、当該キーの裏面側に設けられた導電部(図示せず)がキー基板70の対応する接点を閉成し、これにより対応する操作信号がキー基板70よりメイン基板60に入力される。これにより、操作信号に対応する動作制御が行われるようになっている。
またキー基板70(プリント配線基板)の後面には、外周部に接地用配線パターン71が形成されている。この接地用配線パターン71は、前カバー6Aの下端部に設けられた電源コネクタ81に接続されており、この電源コネクタ81に差し込まれた電源コードを介してキー基板70等を接地させる。
またキー基板70の後面の上端部には、ヒートシンク15に対応する左右方向位置に、金属製の板バネ90(導電部材)が設けられている。この板バネ90は、下方側に形成された、キー基板70に形成された接地用配線パターン71に半田付けにより接続された固定部91と、上方側に形成された弾性部92とを有している。図6に示すように、この弾性部92は、前カバー6Aと後カバー6Bとを組み付けた時に、液晶表示部2とヒートシンク15とに弾性をもって接触するようになっている。このとき、弾性部92と液晶表示部2との接触位置は、メイン基板60よりも前面側となるように構成されている。この弾性部92の詳細構造については後述する。
図7は、液晶表示部2、メイン基板60、及びキー基板70の接続構造を表す平面図である。
図7に示すように、液晶表示部2とメイン基板60とは、ハーネス82により接続されており、メイン基板60とキー基板70とは、ハーネス83により接続されている。これにより、上述したようにキー基板70からの操作信号をハーネス83を経由してメイン基板60に入力することができ、またメイン基板60からの表示信号をハーネス82を経由して液晶表示部2に出力し、当該液晶表示部2に対応する表示を行わせることができる。
図8は、板バネ90の詳細構造を表す側面図である。図8(a)は前カバー6Aと後カバー6Bとの非組み付け時の状態、図8(b)は前カバー6Aと後カバー6Bとの組み付け時の状態を表している。
図8(a)及び図8(b)に示すように、板バネ90の上記固定部91は屈曲構造となっており、上下方向に延在した第1固定部91aがキー基板70に形成された接地用配線パターン71上にハンダ付けにより固定され、前後方向に延在した第2固定部91bがキー基板70に形成された凹部72内に配設されている。なお、図中符号73はハンダを示している。一方、板バネ90の上記弾性部92は、凹部72内における上記第2固定部91bの前端部より液晶表示部2の後面に沿って延設された延設部92aと、この延設部92aの上端部において屈曲された屈曲部92bと、この屈曲部92bにより下側に向かって拡開状に折り返された折返し部92cとを有している。なお、上記延設部92aは、図7に示すように平面視略L字形状となっている。
図8(a)に示すように、カバー6A,6Bの非組み付け時の状態では、延設部92a及び屈曲部92b(詳細には屈曲部92bの前端)が液晶表示部2の後面との間に間隔dを有するように配設されている。この間隔dはできるだけ小さい値(例えば1mm程度)となるように予め設定されている。そして、図8(b)に示すように、カバー6A,6Bの組み付け時には、ヒートシンク15の前端部が折返し部92cに接触し、これにより折返し部92cが受ける反力によって、屈曲部92b(詳細には屈曲部92bの前端)が液晶表示部2の後面に押し付けられる。これにより、屈曲部92bが液晶表示部2に接触し、折返し部92cがヒートシンク15に接触する。
このとき、折返し部92cがヒートシンク15より受ける反力(図中矢印R1で示す)の大きさと、屈曲部92bが液晶表示部2より受ける反力(図中矢印R2で示す)の大きさが相等しくなるように、構成されている。これにより、折返し部92cや屈曲部92bが受ける反力R1,R2に起因する力がハンダ付けによる固定した第1固定部91aに作用するのを防止できるようになっている。その結果、第1固定部91aに作用する剥離力(第1固定部91aをキー基板70より剥離しようとする力。図中矢印R3で示す)は、上述したヒートシンク15の接触による屈曲部92bの前方への移動に起因する力だけとなる。このため、上記間隔dをできるだけ小さな値に設定することにより、屈曲部92bの移動量を規制し、第1固定部91aに作用する剥離力を小さくすることができるようになっている。
以上説明した実施形態の印字ラベル作成装置1は、液晶表示部2が設けられた、装置前面を構成する前カバー6Aと、サーマルヘッド16を支持するヒートシンク15が設けられた、装置後面を構成する後カバー6Bとを有している。この印字ラベル作成装置1においては、装着したカートリッジ31より供給されるカバーフィルム51に対しサーマルヘッド16により所定の印刷が行われ、この印刷済のカバーフィルム51と基材テープ53とが圧着されて形成された印刷済みラベル用テープ80が所定の長さに切断されることで、印字ラベルが作成される。
この印字ラベル作成装置1では、カートリッジ31がヒートシンク15が設けられる後カバー本体6B1のカートリッジホルダ7に装着される。このため、カートリッジ31の着脱が静電気を帯びた指などにより行われたときに、静電気がヒートシンク15に伝わる場合がある。また、液晶表示部2が設けられる前カバー6Aにはキーボード部3が設けられ、ユーザにより頻繁に接触操作されるため、静電気が前カバー6Aの隙間、例えば前カバー6Aと液晶表示部2のカバーパネル2Aとの隙間から侵入する場合がある。このような場合に、侵入した静電気を接地用経路を介して速やかに装置外部に逃がすことができないと、ヒートシンク15に伝わった静電気がサーマルヘッド16に伝わり、サーマルヘッド16に不具合を生じさせるおそれがある。また前カバー6Aとカバーパネル2Aとの隙間等から侵入した静電気により液晶表示部2自体に不具合を生じさせたり、又は侵入した静電気が液晶表示部2と接続されたメイン基板60に伝わり、メイン基板60に実装された電子素子61等に不具合を生じさせるおそれがある。
そこで本実施形態の印字ラベル作成装置1においては、下側の固定部91がキー基板70に形成された接地用配線パターン71に接続され、上側に弾性部92を形成した板バネ90を設ける。この板バネ90の弾性部92は、前カバー6Aと後カバー6Bとの組み付け時に、液晶表示部2とヒートシンク15とに弾性をもって接触する。これにより、板バネ90の弾性部92を液晶表示部2とヒートシンク15に対し所定の接触圧をもたせて確実に接触させることができる。その結果、上記ヒートシンク15に伝わった静電気を板バネ90及び接地用配線パターン71を介して速やかに装置外部に逃がし、サーマルヘッド16に不具合を生じるのを防止することができる。また前カバー6Aと液晶表示部2のカバーパネル2Aとの隙間等から侵入した静電気を同様に板バネ90及び接地用配線パターン71を介して速やかに装置外部に逃がし、液晶表示部2及びメイン基板60に不具合を生じるのを防止することができる。したがって、前述したように金属フレームを不要とする構造とすることで軽量化及びコスト低減を図りつつ、サーマルヘッド16や液晶表示部2を静電気から保護することができる。
また、1部品のみからなる板バネ90を用いて液晶表示部2とヒートシンク15の両方を接地用配線パターン71に接続できるので、個別に導電部材を設ける場合に比べ、簡易な構成でコストアップを抑制しつつ静電気対策を実現することができる。さらに、板バネ90により、前カバー6Aに設けた液晶表示部2と後カバー6Bに設けたヒートシンク15とを接地用配線パターン71に接続するので、印字ラベル作成装置1の前面側及び後面側のいずれの側から侵入した静電気についても装置外部に逃がすことができる。また弾性をもって接触する構成とすることで、前後カバー6A,6Bの非組み付け時において、前カバー6A及び後カバー6Bに対する各部品(液晶表示部2、キー基板70、板バネ90、ヒートシンク15等)の組み付け誤差や、各部品の寸法誤差等を許容し、多少の誤差があっても液晶表示部2とヒートシンク15とを確実に接触させることができる。
また、本実施形態では特に、板バネ90の固定部91を、キー基板70の外周部に設けられた接地用配線パターン71に接続する。これにより、ヒートシンク15に伝わった静電気や、前カバー6Aと液晶表示部2のカバーパネル2Aとの隙間等から侵入した静電気を、板バネ90及びキー基板70の接地用配線パターン71を介して確実に装置外部に逃がすことができる。また、メイン基板60と異なり電子素子61等を有しないキー基板70に接地用配線パターン71を設けることにより、静電気の経路近傍に電子素子61等が設置されることを防止し、それらの不具合を防止できる。またこのようにキー基板70に接地用配線パターン71を設けることにより、前カバー6Aとキーボード部3の各キーとの隙間より侵入した静電気についても迅速に装置外部に逃がすことができる。
また、本実施形態では特に、板バネ90の弾性部92が、キー基板70との接続部より液晶表示部2側に延設された延設部92aと、この延設部92aの上端部において屈曲された屈曲部92bと、この屈曲部92bにより拡開状に折り返された折返し部92cとを有し、略くの字状に屈曲した板バネ構造となっている。これにより、前カバー6Aと後カバー6Bとの組み付け時に、弾性部92の弾性力によって、屈曲部92b及び折返し部92cをそれぞれ液晶表示部2及びヒートシンク15に対し、所定の接触圧をもたせて確実に接触させることができる。
また、本実施形態では特に、板バネ90の弾性部92は、前カバー6Aと後カバー6Bとの非組み付け時には、延設部92a及び屈曲部92bが液晶表示部2との間に所定の間隔dを有するように配設されている。この間隔dをできるだけ小さい値に設定することで、前後カバー6A,6Bの組み付け時において、ヒートシンク15からの反力R1による屈曲部92bの移動量を規制し、当該屈曲部92bの移動に基づいてハンダ付けによる第1固定部91aに作用する剥離力を小さくすることができる。また板バネ90の弾性部92は、前後カバー6A,6Bの組み付け時に、折返し部92cがヒートシンク15より受ける反力R1の大きさと、屈曲部91bが液晶表示部2より受ける反力R2の大きさが相等しくなるように、構成されている。これにより、前後カバー6A,6Bの組み付け時において、折返し部92cや屈曲部92bが受ける反力R1,R2に起因する力がハンダ付けによる第1固定部91aに作用するのを防止できる。
また、本実施形態では特に、板バネ90の屈曲部92bと液晶表示部2との接触位置が、メイン基板60よりも前側となるように構成する。これにより、前カバー6Aと液晶表示部2のカバーパネル2Aとの隙間等から侵入した静電気がメイン基板60に伝わるよりも先に板バネ90及び接地用配線パターン71を介して装置外部に逃がすことができる。したがって、メイン基板60を静電気より確実に保護することができる。
なお、上記図6、図7及び図8に示す板バネ90の形状は一例であり、この形状に限定するものではない。
また以上においては、印刷の終了した印刷済ラベル用テープ80をカッタで切断して印字ラベルを作成する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、ラベルに対応した所定の大きさに予め分離されたラベル台紙(いわゆるダイカットラベル)がロールから繰り出されるテープ上に連続配置されているような場合には、カッタで切断しなくても、テープが排出された後にラベル台紙(対応する印字がなされたもの)のみをテープから剥がして印字ラベルを作成しても良く、本発明はこのようなものに対しても適用できる。
また、以上においては、基材テープ53とは別のカバーフィルム51に印刷を行ってこれらを貼り合わせる方式であったが、これに限られず、印字テープに備えられた被印字テープ層に印字を行う方式(貼りあわせを行わないタイプ)に本発明を適用してもよい。
さらに、以上は、基材テープ53やカバーフィルム51がスプールの周りに巻回されてロールを構成し、カートリッジ31内にそのロールが配置されて印刷済ラベル用テープ80が繰り出される場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば、長尺平紙状あるいは短冊状のテープやシート(ロールに巻回されたテープを繰り出した後に適宜の長さに切断して形成したものを含む)を、所定の収納部にスタックして(例えばトレイ状のものに平積み積層して)カートリッジ化し、このカートリッジを印字ラベル作成装置1側のカートリッジホルダ7に装着して、上記収納部から移送、搬送し印刷を行い印字ラベルを作成するようにしてもよい。
さらには上記ロールを直接印字ラベル作成装置1側に着脱可能に装着する構成や、長尺平紙状あるいは短冊状のテープやシートを印字ラベル作成装置1外より1枚ずつ所定のフィーダ機構によって移送し印字ラベル作成装置1内へ供給する構成も考えられ、さらにはカートリッジ31のような印字ラベル作成装置1の本体側に着脱可能なものにも限られず、装置本体側に着脱不能のいわゆる据え付け型あるいは一体型としてロール等を設けることも考えられる。この場合も同様の効果を得る。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。