JP5359932B2 - 4ストロークサイクル内燃機関およびその気筒判別方法 - Google Patents

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Description

この発明は、クランクシャフトの2回転(つまり720°CA)でもって1つのサイクルが完了する4ストロークサイクル内燃機関に関し、特に、3気筒、5気筒といった奇数個の気筒を備えた内燃機関における気筒判別技術に関する。
特定の気筒に適切なタイミングで燃料噴射や点火等を行うために、多気筒内燃機関においては、次に燃焼行程となるべき気筒を判定する気筒判別が必要である。多くの4ストロークサイクル内燃機関では、クランクシャフトの回転位置を検出するクランク角センサに加えて、720°CAで1回転するカムシャフトに同期したカム角センサを備え、クランク角センサから得られる単位クランク角毎のパルス信号(いわゆるPOS信号)とカム角センサから得られる気筒間隔(例えば4気筒機関であれば180°CA)毎の各々異なるパルス信号(いわゆるPHASE信号)とによって、気筒判別ならびに各気筒の現時点のサイクル中の位相位置の特定を行うようになっている。
これに対し、特許文献1には、奇数個の気筒を備えた4ストロークサイクル内燃機関において、カム角センサに依存せずに各気筒の位相位置を検出するようにした技術が開示されている。これは、いわゆる「歯抜け」と呼ばれるパルス欠損部を備えたクランク角センサからの単位クランク角毎のパルス信号のほかに、サイクルに関連して変動する吸気管圧力信号(あるいは回転数信号)を用い、360°CA毎に生じる上記の歯抜け部分付近での吸気管圧力信号の増加/減少の反転もしくは変化の極値(最小値ないし最大値)を求めることで、各気筒がいずれの行程にあるかを判定している。
特許第3998719号公報
上記の特許文献1の技術においては、吸気管圧力信号(あるいは回転数信号)を時間に関して微分することで、その勾配を求め、上記のように歯抜け部分付近での吸気管圧力信号の増加/減少の反転もしくは最小値ないし最大値を検出しているが、このような手法では、吸気管圧力信号等の不可避的な乱れによって多数の極値(つまり増加/減少の反転)が検出されてしまったり、吸気管圧力信号等の位相の僅かなずれによって、歯抜け部分の狭い範囲での勾配が逆になったりすることがあるため、検出の信頼性が低く、確実な気筒判別を行うことができない。
また、時間に関して微分することから、吸気管圧力信号を対象とした場合でも機関回転速度の影響が不可避的に生じ、例えば機関の始動に際してクランキングされているような状況では、機関回転速度の急激な上昇ないし変動により検出精度がさらに低下する。
本発明に係る4ストロークサイクル内燃機関は、奇数個の気筒を備えたものであって、
クランクシャフトの回転に対し、特定の気筒の特定の位置に対応する特異部を含む一定クランク角毎のパルス列からなる第1の信号を出力するクランク角センサと、
クランクシャフトの回転に対し、各気筒の実際の行程に関連して、各気筒の圧縮上死点にそれぞれ対応した山および隣接する2つの山の中間にそれぞれ生じる谷を有するように、気筒数に対応した周期でもって周期的に振動する第2の信号を生成する手段と、
上記特異部を基準として上記山を含むように設定された少なくとも1つの区間と上記谷を含むように設定された少なくとも1つの区間について上記第2の信号を積分する手段と、
これらの積分値の比較に基づき、気筒判別を行う手段と、
を備えたことを特徴としている。
同様に、本発明に係る奇数個の気筒を備えた4ストロークサイクル内燃機関の気筒判別方法は、クランク角360°毎の特異部を含む一定クランク角毎のパルス列からなる第1の信号と、気筒数に対応して周期的に振動する第2の信号と、から気筒判別を行う気筒判別方法において、
クランクシャフトの回転に対し、各気筒の実際の行程に関連して、各気筒の圧縮上死点にそれぞれ対応した山および隣接する2つの山の中間にそれぞれ生じる谷を有するように、気筒数に対応した周期でもって周期的に振動する上記第2の信号を生成し、
上記特異部を基準として上記を含むように設定された少なくとも1つの区間と上記を含むように設定された少なくとも1つの区間とについて上記第2の信号を積分し、
これらの積分値の比較に基づき、クランク角720°のサイクルに対する上記特異部の位置を特定することを特徴としている。
上記第2の信号としては、例えば、各気筒の吸気弁の開閉(つまり各気筒の吸気行程)に相関して変動する吸気管圧力、あるいは、各気筒の圧縮行程での反力等に相関して微視的に変動する回転速度、等を用いることができるが、これは気筒数に対応して周期的に振動変化するので、例えば2つの区間について積分値を求め、これらを比較すれば、いずれの区間が振動の山に相当するか谷に相当するか、あるいは直前の区間が振動の山であったのか谷であったのか、が確実に判別され、第1の信号の特異部の位置と合わせて、気筒判別が可能である。
この発明によれば、第2の信号の乱れや位相の多少のずれに影響されることなく、カム角センサに依存しない気筒判別を確実に実現することができる。
この発明に係る4ストロークサイクル内燃機関の一実施例を示す構成説明図。 この実施例に用いられるクランク角センサを模式的に示した説明図。 第1の信号および第2の信号を示す波形図。
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明を火花点火式4ストロークサイクル内燃機関に適用した一実施例を示す構成説明図であって、この実施例では、内燃機関1は、直列に配置された3個の気筒2を備え、各々の気筒2に、燃焼室4を画成するピストン3が摺動可能に嵌合しているとともに、中央に点火プラグ5が配置されている。上記燃焼室4には、排気弁6を介して排気通路7が接続され、また吸気弁10を介して吸気通路11が接続されている。この吸気通路11には、燃料噴射弁12が吸気弁10へ向けて各気筒毎に配置されており、さらにコレクタ13の上流側に、スロットル弁14が介装されている。
上記スロットル弁14の開度は、スロットル弁開度センサ16によって検出され、また上記コレクタ13には、吸気管圧力としてコレクタ13内の圧力を検出する吸気圧センサ15が設けられている。そして、クランクシャフト8の端部には、該クランクシャフト8の角度位置を検出するために後述するクランク角センサ17が設けられている。これらのセンサ類の検出信号は、それぞれエンジンコントロールユニット18に入力されている。エンジンコントロールユニット18は、これらの検出信号に基づき、燃料噴射弁12による燃料噴射量ならびに噴射時期、点火プラグ5の点火時期等を総合的に制御している。さらに、この内燃機関1は、公知のスタータモータ20を具備し、スタータスイッチ19の信号に基づいて作動するようになっている。
また上記排気弁6および吸気弁10は、それぞれ排気側カムシャフト21および吸気側カムシャフト22によって開閉駆動される。これらのカムシャフト21,22は、クランクシャフト8に連動して、その1/2の速度で駆動され、720°CAで1回転するようになっているが、特に、本実施例では、いわゆるカム角センサは具備していない。
なお、この実施例は、火花点火式内燃機関を例としているが、本発明は、4ストロークサイクルのディーゼル機関においても全く同様に適用できる。
図2は、上記クランク角センサ17の構成を示すものであって、このクランク角センサ17は、クランクシャフト8端部に固定された円形のシグナルプレート25の周囲に、一定間隔、例えば10°間隔でもって多数の突起26を形成し、この突起26をホールIC等からなるピックアップ部27が検出することにより図示するようなパルス信号(POS信号)を出力する構成となっている。そして、いわゆる歯抜け部28として、360°の中の特定の一部で、2つの突起26を除去してあり、これによってクランクシャフト8の角度位置の基準となる特異部が構成されている。なお、この特異部としては、歯抜け部とするほか、逆に一部の突起26の幅(角度範囲)を大きくするなどによって構成することもでき、あるいは別のピックアップ部によって生成した異なるパルスを用いてもよい。また、上記実施例では、360°の中の1箇所にのみ特異部が設けられているが、本発明とは異なる目的でさらに他の箇所に特異部を付加的に具備することも可能である。
次に、図3に基づいて、本発明の気筒判別について説明する。
この図3は、横軸をクランク角として示した波形図ないしタイムチャートであって、最上段は、第1の信号つまり上述したクランク角センサ17によって得られるPOS信号を示している。図示するように、このPOS信号は、基本的に10°CA毎のパルス列からなり、360°CA毎に出現する特異部28’つまりパルス欠損部を含んでいる。この特異部28’は、パルス間の間隔が他と異なることによって容易に識別される。この特異部28’の後に最初に出現するパルスが基準のパルスであり、図3では、便宜上、1つの基準のパルスのクランク角を、「0°CA」として示してある。なお、POS信号は図示するようにある程度の幅を有するパルスとして出力されるが、制御上は、そのパルスの立ち下がりのタイミングが利用されるので、以下の説明では、基本的に「パルス」とは上記の立ち下がりに相当する幅のない信号を意味する。また、図示例では、クランク角センサ17が出力する10°CA毎のパルスをそのままPOS信号として用いているが、10°CA毎のパルスをさらに分周して、より小さな単位クランク角毎のパルス信号としてPOS信号を生成することも可能である。
実施例の直列3気筒内燃機関においては、その点火順は、「♯1気筒→♯2気筒→♯3気筒」の順であり、図3には、各々の圧縮上死点のタイミングを図示してある。そして、特異部28’は、特定の気筒の特定の位相位置に対応しており、例えばこの実施例では、特異部28’直後の基準のパルスが♯1気筒の圧縮上死点前180°CAに対応するように、クランク角センサ17の歯抜け部28の位置がクランクシャフト8に対し位置決めされている。なお、このような特異部28’の位置と各上死点位置との相対的な位置関係は、これに限定されずに任意に設定できるものである。
ここで、クランク角センサ17は360°CAで1回転し、特異部28’は360°CA毎に出現するので、上記のように♯1気筒の圧縮上死点に関連付けて特異部28’の位置を設定しても、720°CAの1サイクル中における位相位置は、これのみでは特定することができない。例えば、図3の例では、「0°CA」として示す最初の基準のパルスが出現するのは、♯1気筒の圧縮上死点前180°CAであるが、360°CA後に2回目の基準のパルスが出現するのは、♯2気筒の圧縮上死点前60°CAであるから、クランク角センサ17からのPOS信号のみでは、気筒判別ならびに位相の特定はできない。
図3の中段は、上記のPOS信号のパルス数をカウントするカウンタPSCNTの値を示している。このカウンタPSCNTは、特異部28’直後の上記の基準のパルスによってリセットされ、従って、その値によって、上記特異部28’(より詳しくは基準のパルス)を基準とした現時点のクランク角位置が示される。
図3の下段は、気筒数に対応した周期でもって周期的に振動する第2の信号を示している。本実施例では、これはサイクル中に微視的に変化する機関回転速度に相当する信号であって、特に、上記のPOS信号に対応した10°CA毎に、その10°CAのクランク角変化に要した実時間を演算し、横軸をクランク角、縦軸を単位クランク角当たりの時間としてプロットしたものである。従って、厳密には離散的な値のグラフとなるが、図3では、滑らかな曲線で連続した形に模式的に描いてある(谷のピークより下部は図示省略してある)。すなわち、1つの気筒についてみると、圧縮仕事によって圧縮上死点付近で微視的に回転速度が低下する。そして、3気筒機関では、240°CAずつずれて各気筒が圧縮上死点となるので、720°CAの間に3つの山および3つの谷を有する振動波形が得られる。従って、この振動波形は、クランクシャフト8の回転に対する各気筒の実際の行程を反映したものと言え、かつ気筒数に対応した周期となるが、気筒数が奇数であることから、図3から明らかなように、360°CA単位で区切ってみると、互いに異なる振動波形となる。
なお、容易に理解できるように、図示例のグラフでは、回転速度としては、山の部分で速度が低く、谷の部分で速度が高い。この図示例のグラフは、機関回転速度そのものの特性と本質的に変わりはないが、上記のようにPOS信号に対応した10°CA毎に実時間を演算する方法によれば、クランク角センサ17以外の回転速度検出手段に依存することがなく、センサとして実質的にクランク角センサ17のみでもって第1の信号と第2の信号の双方を得ることができ、従ってクランク角センサ17のみで所期の気筒判別ならびにサイクル中の位相位置の特定が完結する利点がある。
また、上記の機関回転速度の特性は、爆発燃焼を伴わないクランキングないしモータリングであっても、爆発燃焼を伴う通常の運転中であっても、基本的に変わりがない。つまり、爆発燃焼を伴う場合は、燃焼行程での速度が大となるが、山および谷の位相位置は殆ど変化せず、同様の振動波形となる。
図3に示すT1〜T6の区間は、説明の便宜のために、720°CAの期間を120°CA毎に区切ったものであり、特に、最も回転速度が低下する各気筒の圧縮上死点を中心とした前後60°CAからなる120°CAの区間(図のT2,T4,T6)とこれらの区間に挟まれた残りの120°CAの区間(図のT1,T3,T5)とからなる。図から明らかなように、前者の各気筒の圧縮上死点を中心とした区間T2,T4,T6は、第2の信号の振動波形の山の部分を含んだものとなり、後者の区間T1,T3,T5は、振動波形の谷の部分を含んだものとなる。従って、各区間において、クランク角ベースで第2の信号を積分すると、前者の区間T2,T4,T6の積分値(図中にクロスハッチングを施して示す面積)は大であり、後者の区間T1,T3,T5の積分値(図中にハッチングを施して示す面積)は小である。なお、この実施例の第2の信号は、上述したように10°CA毎のクランク角変化に要した実時間であるから、実際の積分処理としては、POS信号のパルスをトリガとして、10°CA毎に所要の実時間を演算し、かつこれを順次積算していけばよい。
本発明の一つの態様では、ある区間の積分値が、これよりも360°CA前の区間の積分値と比較される。例えば、特異部28’直後の区間(T1もしくはT4)の積分値が、360°CA前の同じく特異部28’直後の区間(T4もしくはT1)の積分値と比較される。この比較の結果、360°CA前の積分値よりも今回の積分値が大となっていれば、この区間は、T1ではなくT4であることが明確となる。従って、この積分ならびに比較が終了した時点(例えばT4の終了直後)で、次に燃焼行程となる気筒が♯3気筒であると判別でき、かつ現時点の各気筒の位相位置を特定することができる。また逆に360°CA前の積分値よりも今回の積分値が小であれば、この区間は、T4ではなくT1であると識別される。
2つの積分値の比較としては、単なる大小比較でもよく、あるいは両者の比を求めるなど他の手法でもよい。また誤判定を回避するために、両者の差あるいは両者の比が所定値よりも小さい場合に気筒判別の最終的な確定を保留するなども可能である。
このように、360°CA離れた複数の区間の積分値を比較する方法では、クランク角センサ17ならびにクランクシャフト8の角度範囲としては全く同じ区間の積分値同士を対比することとなり、種々の要因による誤差が互いに相殺されるため、気筒判別の精度がより高く得られる利点がある。
上記の例では、360°CA離れた2つの区間の積分値を比較しているが、3つ以上の区間の積分値を比較するようにしてもよい。つまり、今回の積分値と、360°CA前の積分値と、さらに360°CA前の積分値と、を順次比較すれば、これらは、交互に大小変化するはずであるから、例えば今回の区間がT1であるのかT4であるのかをより高精度に識別でき、何らかの外乱による誤判定を回避できる。
360°CA異なる区間T2と区間T5とについて、あるいは、区間T3と区間T6とについても、全く同様の処理によって、気筒判別が可能である。特異部28’を基準としたこれらの区間T2(T5)および区間T3(T6)の位置は、カウンタPSCNTの値によって特定される。従って、クランクシャフト8が120°CA回転するたびに、繰り返し気筒判別を行うことが可能である。
本発明の他の態様では、ある区間の積分値が、これに隣接する直前の区間の積分値と比較される。例えば、特異部28’直後の区間(T1もしくはT4)の積分値が、その直前の区間(T6もしくはT3)と比較される。この比較の結果、直前の区間の積分値よりも今回の積分値が大となっていれば、この区間は、T1ではなくT4であることが明確となる。従って、2つの区間の積分ならびに比較が終了した時点(例えばT4の終了直後)で、次に燃焼行程となる気筒が♯3気筒であると判別でき、かつ現時点の各気筒の位相位置を特定することができる。また逆に直前の区間の積分値よりも今回の積分値が小であれば、この区間は、T4ではなくT1であると識別される。
2つの積分値の比較としては、前記と同様に、単なる大小比較でもよく、あるいは両者の比を求めるなど他の手法でもよい。また誤判定を回避するために、両者の差あるいは両者の比が所定値よりも小さい場合に気筒判別の確定を保留するなども可能である。
このように、前後に連続した複数の区間の積分値を比較する方法では、クランクシャフト8の1回転を要さずに相対的に短期間で積分値の比較を完了することができる。そのため、始動時の最初の気筒判別には有利であり、また機関回転速度の巨視的な変化(例えば機関の加速、減速による変化)の影響を受けにくいものとなる。
なお、上記の例では、隣接する2つの区間の積分値を比較しているが、隣接した3つ以上の区間の積分値を比較するようにしてもよい。例えば図の区間T1,T2,T3に示すように、これらは、交互に大小変化するはずであるから、今回の区間がT1であるのかT4であるのかをより高精度に識別でき、何らかの外乱による誤判定を回避できる。
上記のような積分を行う区間は、実際には、720°CAを6等分した120°CAである必要はなく、第2の信号の山の部分および谷の部分に概ね対応した区間について積分を行えば足り、120°CA以上の範囲であっても120°CA以下の範囲であってもよく、また上述したT1〜T6の区間の中心に対し非対称であってもよい。図3の矢印A,B,Cは、360°CA中の実際の積分区間の好ましい一例を示している。区間Aは、特異部28’直後の基準のパルスを0°CAとしたときに、10°CAから90°CAまでの80°CAの範囲であり、同様に、区間Bは、130°CAから210°CAまでの80°CAの範囲であり、区間Cは、250°CAから330°CAまでの80°CAの範囲である。この設定例では、積分区間Cがパルスの出現しない特異部28’と重ならないことから、特異部28’を含むPOS信号をそのまま単純に利用して、パルス間の所要実時間を演算し、かつ積分していくことが可能である。
さらに、上記の区間A,B,Cを、機関運転条件(冷却水温、油温、油圧等)に応じて可変的に設定するようにしてもよい。
以上、本発明の一実施例を説明したが、本発明の気筒判別技術は、上記実施例のように720°CAで1回転するカム角センサを具備しない場合に適用できるのは勿論であるが、従前のようにクランク角センサ17のほかにカム角センサを具備する構成において、カム角センサの故障ないし異常時に、そのバックアップ用の技術として適用することができる。また、カム角センサの異常の診断に利用することも可能である。なお、このようにカム角センサを備えたものなどでは、通常の運転中に上記の手法による気筒判別を併行して実行し、上記区間A,B,Cがより適切なものとなるように、例えば機関温度条件等に対して学習補正することが可能である。
ところで、上記の図3の実施例では、単位クランク角(例えば10°CA)毎に、該単位クランク角の変化に要した実時間を演算し、これを順次積算しているが、これに代えて、1回前に演算した所要実時間と今回の所要実時間との比を求め、これを第2の信号として順次積算していくようにしてもよい。具体的には、区間A,B,Cの間、POS信号の入力のたびに、前回のPOS信号の入力から今回のPOS信号の入力までの所要時間tnを求め、かつ前回のPOS信号の入力の際に同様に求めていた前回の所要時間tn-1との比(tn/tn-1)を求め、これを順次積算していくことで、各々の区間の積分値とする。
このように単位クランク角の実時間の比を第2の信号として用いるようにすれば、第2の信号が実質的に無次元化され、サイクル中の回転速度変動よりも巨視的な機関回転速度の変化の影響を排除することができる。例えば、機関始動の際にスタータモータ20によりクランキングされている状況では、機関回転速度が大きくかつ急激に変化するので、サイクル中の回転速度変動を利用した気筒判別の精度が低下し易いが、上記のように実時間の比を用いることで、その影響を可及的に抑制できる。
本発明における第2の信号としては、上記のような回転速度変動のほかに、吸気圧センサ15によって検出される吸気管圧力の変動を用いることができる。各気筒の吸気通路11が接続されたコレクタ13内の吸気管圧力は、各気筒の吸気行程に応答して周期的に振動する。その振動特性は、図3に示した振動波形と基本的に同様であり、各気筒の実際の行程を反映して気筒数に対応した周期で振動する。従って、上記実施例と全く同様の手法により気筒判別が可能である。但し、吸気管圧力の場合には、実際の行程と圧力振動の山・谷との間に吸気管長に対応した遅れが生じるので、これを考慮して積分値区間A,B,Cを設定する必要があり、さらに、この遅れは実時間であることから機関回転速度に応じて補正を加えることが望ましい。
このような吸気管圧力を利用した方法では、クランク角ベースで積分される積分値は、本質的に機関回転速度の変化(巨視的な変化)による影響を受けないので、例えばクランキング時のように機関回転速度が大きく変化する状況でも高い精度を得ることができる。
本発明は、上記実施例の3気筒内燃機関に限らず、5気筒内燃機関など奇数気筒を有するものであれば、同様に適用が可能である。そして、奇数気筒が順次燃焼行程となればよいので、気筒の配列としても直列多気筒機関に限定されることはない。
1…内燃機関
8…クランクシャフト
17…クランク角センサ
25…シグナルプレート
26…突起
27…ピックアップ部
28,28’…特異部

Claims (8)

  1. クランクシャフトの回転に対し、特定の気筒の特定の位置に対応する特異部を含む一定クランク角毎のパルス列からなる第1の信号を出力するクランク角センサと、
    クランクシャフトの回転に対し、各気筒の実際の行程に関連して、各気筒の圧縮上死点にそれぞれ対応した山および隣接する2つの山の中間にそれぞれ生じる谷を有するように、気筒数に対応した周期でもって周期的に振動する第2の信号を生成する手段と、
    上記特異部を基準として上記山を含むように設定された少なくとも1つの区間と上記谷を含むように設定された少なくとも1つの区間について上記第2の信号を積分する手段と、
    これらの積分値の比較に基づき、気筒判別を行う手段と、
    を備えてなる奇数個の気筒を備えた4ストロークサイクル内燃機関。
  2. クランク角として360°ずつ異なる少なくとも2つの区間での積分値を用いることを特徴とする請求項1に記載の4ストロークサイクル内燃機関。
  3. 第1の山もしくは谷を含む第1の区間と、この第1の山もしくは谷に続く第2の谷もしくは山を含む第2の区間と、を含む少なくとも2つの区間での積分値を用いることを特徴とする請求項1に記載の4ストロークサイクル内燃機関。
  4. 上記の積分値は、所定の単位クランク角毎に、この単位クランク角の角度変化に要した実時間を積算していくことによって求められることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の4ストロークサイクル内燃機関。
  5. 上記の積分値は、所定の単位クランク角毎に、前回の単位クランク角の角度変化に要した実時間と今回の単位クランク角の角度変化に要した実時間との比を積算していくことによって求められることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の4ストロークサイクル内燃機関。
  6. 奇数個の気筒を備え、クランク角360°毎の特異部を含む一定クランク角毎のパルス列からなる第1の信号と、気筒数に対応して周期的に振動する第2の信号と、から気筒判別を行う4ストロークサイクル内燃機関の気筒判別方法において、
    クランクシャフトの回転に対し、各気筒の実際の行程に関連して、各気筒の圧縮上死点にそれぞれ対応した山および隣接する2つの山の中間にそれぞれ生じる谷を有するように、気筒数に対応した周期でもって周期的に振動する上記第2の信号を生成し、
    上記特異部を基準として上記を含むように設定された少なくとも1つの区間と上記を含むように設定された少なくとも1つの区間とについて上記第2の信号を積分し、
    これらの積分値の比較に基づき、クランク角720°のサイクルに対する上記特異部の位置を特定することを特徴とする4ストロークサイクル内燃機関の気筒判別方法。
  7. 上記特異部は、上記クランク角センサが出力するパルス列のパルス欠損部であり、
    上記の積分値は、上記クランク角センサからのパルスの入力の毎に、パルス間の所要の実時間を積算していくことによって求められ、
    上記区間は、上記特異部と重ならないように設定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の4ストロークサイクル内燃機関。
  8. 燃焼を伴わないクランキングないしモータリングと、燃焼を伴う通常の運転中と、の双方で、同じ区間の積分値の比較で気筒判別を行うことを特徴とする請求項1〜5、7のいずれかに記載の4ストロークサイクル内燃機関。
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