JP5359050B2 - 光変調素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
ところで、コレステリック光変調素子は無電源で表示を保持できるメモリ性を有すること、偏光板を使用しないため明るい表示が得られること、カラーフィルターを用いずにカラー表示が可能なことなどの特長を有することから近年注目を集めている。
正の誘電異方性を有するコレステリック液晶は、図9(A)に示すように、螺旋軸がセル表面に垂直になり、入射光に対して上記の選択反射現象を起こすプレーナ状態、図9(B)に示すように、螺旋軸がほぼセル表面に平行になり、入射光を少し前方散乱させながら透過させるフォーカルコニック状態、及び図9(C)に示すように、螺旋構造がほどけて液晶ダイレクタが電界方向を向き、入射光をほぼ完全に透過させるホメオトロピック状態、の3つの状態を示す。
図10において(a)で示す領域はプレーナ状態またはフォーカルコニック状態(選択反射状態または透過状態)を、(b)で示す領域は遷移領域を、(c)で示す領域はフォーカルコニック状態(透過状態)を、(d)で示す領域は遷移領域を、(e)で示す領域はホメオトロピック状態を示し、ホメオトロピック状態で電圧を0にするとプレーナ状態(選択反射状態)に変化する。また、Vpf,90 、Vpf,10 、Vfh,10 、Vh,90とは、前記の2つの遷移領域の前後において、正規化反射率が90または10になる電圧(正規化反射率が90以上を選択反射状態とし、10以下を透過状態とする)を意味する。
また、調光層中の液晶比率が高いPDLC構造では強度が不足し、外部からの押圧等により表示特性が低下してしまう場合がある。これに対して、一般的なリブなどのスペーサーをあらかじめ設けておく方法では、規則的なリブの配列によりモアレ等の表示欠陥が発生してしまうこともある。
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも一方が透光性を有し、表面に設けられた電極が対向するように配置された一対の基板と、
前記一対の基板間に設けられ、少なくとも液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセル、高分子バインダー及び多角柱形状である樹脂スペーサーを含む調光層と、を有する光変調素子である。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、表示と強度との安定性がより高められる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、表示と強度との安定性がより高められる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、強度を保持しつつスペーサー導入による表示特性の低下をより抑えた光変調素子が得られる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比して、調光層における液晶滴、スペーサー粒子の密度がより高められ、表示特性もより向上する。
本実施形態の光変調素子は、少なくとも一方が透光性を有し、表面に設けられた電極が対向するように配置された一対の基板と、前記一対の基板間に設けられ、少なくとも液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセル、高分子バインダー及び多角柱形状である樹脂スペーサーを含む調光層と、を有することを特徴とする。
本実施形態では、後述する製造方法により、層形成とスペーサー導入とを同時に行うことができることを見出し、前記特徴を有する光変調素子を得るに到った。
なお、図示は省略するが、電極22と調光層30との間、及び電極12と遮光層14との間等に接着層を設けてもよい。遮光層14は非表示面基板13の外側、即ち電極12が形成されていない側、あるいは表示面基板20側の電極22と調光層30との間に設けてられていてもよい。調光層30は、液晶32aを含む球状の液晶ドロップ32及び球状の樹脂スペーサー33が、ゼラチン(高分子バインダー)34中に配列した状態で構成されている。
樹脂スペーサー35が多角柱形状、特に六面体形状であると、図に示すように樹脂スペーサー35が電極を有する基板と面で接触することができ、スペーサーの配置が安定化され、またスペーサー導入による調光層面の凹凸の発生も抑制することができる。また、液晶ドロップ36も多角柱形状であることにより、同様に液晶ドロップ36も多角柱形状の樹脂スペーサー35と揃った状態で密に配列することができ、表示と強度との安定性がより高められる。
なお光変調素子において、樹脂スペーサー等が多角柱形状であるとは、観察される樹脂スペーサー粒子等全体の50個数%以上が多角柱形状であることをいう。
また、前記「稠密な配置」とは、樹脂スペーサー及び液晶ドロップが互いに最大長の100%以上の間隙を空けることなく密に並列していることをいう。
なお、本実施形態における前記「ゲル化した膜」とは、3次元的に水素結合して溶剤に不溶となった膜のことであり、超音波式粘度測定器により確認することができる。
<基板>
基板を構成する支持基板は、絶縁性を有する、ガラス、及びシリコーン、またはポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどの高分子フィルムを用いて形成され、少なくとも一方、特に視認される側の支持基板(表示面基板を構成する支持基板)は、入射光及び反射光に対して透過性を有する材料により形成される。また必要に応じて、支持基板の表面に、防汚膜、耐磨耗膜、光反射防止膜、ガスバリア膜など公知の機能性膜を形成してもよい。
調光層は、液晶による液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを、ゼラチン中に、分散保持した構造からなる。調光層の層厚は、大きすぎると電極間に印加する駆動電圧を高くする必要があり、小さすぎると光変調素子のコントラストが低下することから、駆動電圧を低く且つコントラストを高くするために、1μm以上100μm以下であることが好ましい。
本実施形態の光変調素子における調光層は、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが単層で構成されていても、複層で構成されていてもよいが、調光層の凹凸を抑制するために、単層であることが好ましい。
調光層において、液晶ドロップや液晶マイクロカプセルに用いることができる液晶材料としては、屈折率異方性があり、電圧印加によって配向が変化するものであればどのような液晶材料であってもよいが、好ましくは、コレステリック液晶(カイラルネマチック液晶を含む)が挙げられる。
なお、本実施形態で用いられるコレステリック液晶材料として、ステロイド系コレステロール誘導体、あるいはシッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキサン系、トラン系、アルケニル系、スチルベン系、縮合多環系などのネマチック液晶やスメクチック液晶、またはこれらの混合液晶に、シッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニル系などの光学活性材料からなるカイラル成分を添加した材料を用いることができる。
また、調光層において樹脂スペーサーとしては硬化性樹脂が好適に用いられる。
硬化性樹脂としては光硬化性、放射線硬化性、電子線硬化性、熱硬化性等の樹脂を用いることができるが、中でも光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。該光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂としては、光硬化性または熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が好ましく用いられる。なお、本実施形態に用いる硬化性樹脂としては、後述する乳化工程を経て調光層用塗布液に分散されるため、水溶性でないことが望ましい。
これらの中では、熱硬化性シリコーン樹脂を特に好適に用いることができる。
上記分子中に反応性二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの1官能タイプや、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能タイプがある。また、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート等のオリゴマー等もある。更に、ビニル基やアリル基を有する、例えば、スチレンモノマー、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、ペンテン、ヘキセン、不飽和化合物等がある。さらに、チオール系の重合性単量体やエポキシ系の重合性単量体なども有効である。
光硬化用重合開始剤としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系などの光開始剤が好適に用いられる。
特に樹脂スペーサーとして、表示特性に悪影響を与えないという点では用いる液晶と屈折率が近いことが望ましく、例えば、紫外線硬化性のチオール系重合性単量体であるNOA65(ノーランド社製)等が好ましい。
体積比率が0.01体積%に満たないと、外部からの押圧等に対して表示特性に影響が出ない程度の強度を確保することができない場合がある。10体積%を超えると、反射率低下など表示特性に悪影響が出る場合がある。
本実施形態における高分子バインダーは、前記液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを保持し、光変調素子の変形による液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルの流動を抑制する。高分子バインダーは、液晶材料に溶解せず、また液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルと相溶しない液体を溶剤とする高分子材料であり、且つ外力に耐えうる強度を持ち、少なくとも反射光及び入射光に対して高い透過性を有する材料であれば特に制限はなく、例えば、水溶性高分子材料(たとえばゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマー、エチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアミジン、イソプレン系スルホン酸ポリマー)、あるいは水性エマルジョン化できる材料(たとえばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂)等が好適に挙げられる。
中でも、表面凹凸を小さくでき、フラットな調光層が得られるという観点から、ゼラチンが特に好ましい
このようなゼラチンとしては、α鎖の多量体である高分子量のβ鎖・γ鎖や、α鎖の主鎖が途中で切れた低分子量成分が少なく、α鎖残量の多いものが適している。牛骨を酸処理して製造されたゼラチン材料は、この条件を満たし、とくにゼリー強度が大きく、ゾル粘度が低いため好ましい。また、原料のコラーゲンを加水分解する際に最初に抽出される第一抽出品がよい。なお、液晶材料のイオン汚染を防止するため、ゼラチン中に残留するイオン成分をイオン交換樹脂など公知の手法を用いて除去してもよい。
被覆層としては前記のようにゲル化した膜(ゲル化膜)が用いられる。ゲル化膜としては、温度によりゾル−ゲル状態を示し、ゲル化状態で液晶ドロップ等を溶解しない特性を有するものであれば特に制限されない。なお本実施形態において、「ゲル化する」および「ゲル状態になる」とは、ゲル状態での飽和粘度を100、ゾル状態での飽和粘度を0として規格化した場合に、上記規格化した粘度が70以上になった場合を意味する。
光導電層は、a−Si:H、a−Se、Te−Se、As2Se3、CdSe、CdS
などの無機光導電体、あるいはアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料、インジゴ顔料、アントロン顔料などの電荷発生材料とアリールアミン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、PVKなどの電荷輸送材料を組合せた有機光導電体(OPC)などにより構成されるが、2つの電荷発生層及び電荷輸送層が積層されたOPC層が好ましい。
電荷輸送層は、電荷発生層からの自由キャリアの注入が効率良く発生し(電荷発生層23,25とイオン化ポテンシャルが近いことが好ましい)、注入された自由キャリアができるだけ高速にホッピング移動するものが好適である。暗時のインピーダンスを高くするため、熱キャリアによる暗電流は低い方が好ましい。
必要に応じて設けられる遮光層は、絶縁性を有する、カドミウム系、クロム系、コバルト系、マンガン系、カーボン系などの無機顔料、またはアゾ系、アントラキノン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、ニトロ系、フタロシアニン系、ペリレン系、ピロロピロール系、キナクリドン系、多環キノン系、スクエアリウム系、アズレニウム系、シアニン系、ピリリウム系、アントロン系などの有機染料や有機顔料、あるいはこれらを高分子バインダーに分散した材料を用いて形成され、少なくとも反射光に対して、光吸収性を有するように構成する。
必要に応じて設けられる接着層は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂など、熱や圧力によって調光層と遮光層を密着させることができる材料を用いる。なお、接着層を挿入する位置はこの実施形態に限らず、電極と調光層の間、電極と遮光層の間とすることもできる。電極と調光層の間に接着層を形成する場合は、少なくとも入射光及び反射光に対して透過性を有する材料により形成する。
本実施形態において、調光層の形成は、塗布として(1)調光層形成用塗布液の塗布工程のみを行う方法と、(2)前記塗布工程に加えて被覆層を形成する被覆層形成工程を行う方法と、に分けられる。
図5は、調光層の形成を調光層用塗布液の塗布工程のみにより行う場合を示す概略工程図である。
この方法による調光層形成は、調光層用塗布液を塗布する工程(工程(A1))、塗布した層を一定温度で保持する工程(工程(A2、A3)、及び乾燥する工程(工程(A4)から構成される。
まず調光層塗布に用いる調光層用塗布液の調製について詳細に説明する。
調光層用塗布液は、例えばゼラチン及び液体を含有する溶液に、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルと、樹脂スペーサーとなる硬化性樹脂滴とを分散することによって調製される。
以下、液晶ドロップ及び液晶マイクロカプセルの調製方法について説明する。
液晶ドロップエマルジョンは、少なくともコレステリック液晶からなる分散相を、分散相と相溶しない連続相、例えば、水相中にドロップ状に乳化分散させることにより調製される。乳化する手段として、分散相と連続相を混合した後、ホモジナイザーなどの機械的なせん断力で分散相を微小な液滴として分散させる方法や、分散相を連続相中に多孔質膜を通して押出し、微小な液滴として分散させる膜乳化法などを用いることができる。特に膜乳化法は乳化液滴の粒径ばらつきが小さくなるため、均一な粒径の液晶ドロップを形成することができるため好ましい。なお、乳化時の連続相中に、乳化を安定させるための界面活性剤や保護コロイドを微量混合しておいてもよい。
高分子シェル内にコレステリック液晶が内包された液晶マイクロカプセルの調製には、公知の液晶マイクロカプセル化手法、例えば、相分離法、界面重合法、in situ重合法を用いることができる。具体的には、前記のごとくして作製した液晶ドロップを、高分子シェル材料を含む溶液中に分散させ、または前記材料に応じて熱硬化などさせ、液晶ドロップの周囲に高分子シェルを形成する。また、ウレタン・ウレア系の高分子シェルを作る場合には、あらかじめ液晶ドロップに多価イソシアネート化合物を含ませておき、液晶ドロップを、多価アルコールを含む溶液中に添加してウレタン・ウレア生成反応を起こさせることが好ましい。
ただし、この段階で液晶ドロップ等の粒径は、調光層用塗布液として混合される硬化性樹脂滴の粒径とほぼ同一としておくことが望ましい。
硬化性樹脂エマルジョンは、少なくとも硬化性樹脂からなる分散相を、分散相と相溶しない連続相、例えば、水相中にドロップ状に乳化分散させることにより調製される。硬化性樹脂としては、前記各種樹脂の中から後述する保持工程などで十分に硬化でき、分散性に優れるものが選択される。
ただし、この段階で硬化性樹脂滴の粒径は、前記同様、調光層用塗布液として混合される液晶ドロップ等の粒径とほぼ同一としておくことが望ましい。
上記工程後の液晶ドロップエマルジョンあるいは液晶マイクロカプセルスラリー、または硬化性樹脂エマルジョンの不揮発分濃度が低く、塗布時の調光層用塗布液で必要となる不揮発分濃度に調整できない場合は濃縮を行う。液晶ドロップあるいは液晶マイクロカプセル、または硬化性樹脂と連続相との比重差を利用して、静置や遠心分離によって沈殿、あるいは沈降させて分離した連続相を除去する方法や、メンブランフィルタで濾過する方法などを用いる。
この場合、支持基板上に単層かつ稠密に液晶ドロップ等を塗布するために、密度計や比重計を用いて、前記液晶ドロップエマルジョンまたは液晶マイクロカプセルスラリー、硬化性樹脂エマルジョン内の各成分の含有量を測定し、調光層用塗布液のゼラチン、溶媒、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセル及び硬化性樹脂の混合割合を調整することが望ましい。
AL=(3/2)・(tW・Sr・Lr/DL)・・・ 式(1)
0.8<AL<1.0 ・・・ 式(2)
算出した混合割合に基づき、液晶ドロップエマルジョンあるいは液晶マイクロカプセルスラリー、または硬化性樹脂に対する、ゼラチン及び溶媒の混合量を調整して塗布調光層用塗布液を作製する。ここで、増粘剤、濡れ性改善剤、乾燥速度調整剤など、公知の調光層用塗布液特性改質剤を微量添加してもよい。
また、液晶ドロップ等と硬化性樹脂との混合質量比(液晶ドロップ/硬化性樹脂)は、必要な体積比から算出して決める。
上記のごとく濃度調製を行った調光層用塗布液の表示面基板への塗布は、アプリケーター、エッジコーター、スクリーンコーター、ロールコーター、カーテンコーター、ダイコーターなど所望のウェット厚に塗布できる公知の装置を用いて行う。
図5においては、エッジコーター64によって電極62を有する基板60上に未硬化の硬化性樹脂滴72a及び液晶ドロップ74aを含む塗布液が塗布され、塗布層70が形成される。
本工程では、前記塗布工程により表示面基板上に形成された塗布層70を密閉容器の中に保持し、且つ表示面基板上への加熱を継続することにより塗布層70をゼラチンの凝固点より高い温度に加熱して、40℃乃至60℃の温度となるような状況下に塗布層70を保持し、且つ、塗布層70を、塗布層中の飽和蒸気圧と同一またはこの溶媒の飽和蒸気圧に近い雰囲気中に1分間乃至10分間保持する。
なお、塗布層温度は、35℃以上65℃以下が好ましく、特に好ましくは、40℃以上60℃以下となるように調整する。65℃を超えると、液晶化合物の組成比が変化しやすいという問題がり、35℃未満であると塗布層中の流動性が低く液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが稠密に配置しにくくなるため好ましくない。
なお、加熱装置内では、溶媒の飽和蒸気圧に近い状態となっていることから、塗布層73が乾燥されることを抑制することができる
また、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合には、前記基板面に対して配列した段階で硬化がほぼ終了するようにしてもよい(硬化工程)。この場合、硬化性樹脂滴は球状のまま硬化するため、後述する乾燥工程で硬化性樹脂滴を多角柱形状とならずそのまま球状の樹脂スペーサーを含む調光層となる。
前記保持工程によって、ゼラチンがゾル状態にある塗布層中の液晶ドロップが塗布層中で稠密配列された後に、乾燥工程では、まず、表示面基板を室温による自然冷却、あるいは冷却装置を用いて強制冷却することによって塗布層中のゼラチンをゼラチンの凝固点以下で且つ塗布層中の溶媒が揮発可能な温度に冷却する。表示面基板を冷却するための冷却装置としては、冷却オーブン、ペルチェなどを用いた冷却プレート、及び冷風ブロー装置等を用いることができる。
乾燥工程をゼラチンの凝固点以下の温度にすることで、塗布膜中のゼラチンの乾燥モードはゾル状態からゲル状態へと変化する。このようなゼラチンの凝固点以下の温度下で且つ塗布層中の溶媒が揮発可能な温度下において、塗布層中の溶媒を揮発させて塗布層を乾燥させる。
塗布層73中のゼラチンは、凝固点以下の温度下に保持されることにより、ゾル−ゲル変化が生じ、ゲル状態での乾燥モードとなる。
なお、本実施形態における硬化工程は、特に乾燥工程の後でなくてもよく、前述のように熱硬化性樹脂を用いた場合には保持工程と同時に行なうこともできるし、光硬化性樹脂を用いた場合でも途中の工程で光照射を行って硬化させてもよい。
なお、前記光照射には紫外線ランプ、紫外線LED、及び紫外線照射装置などを用いることができ、前記加熱にはオーブン等の加熱装置を用いることができる。
図6は、調光層の形成を、調光層用塗布液の塗布工程に、被覆層形成工程を加えて行う場合を示す概略工程図である。
この方法による調光層形成は、調光層用塗布液を塗布する工程(工程(B1))、塗布した層を冷却する工程(工程(B2))、塗布層上に被覆層を形成する工程(工程(B3))、該被覆層を冷却する工程(工程(B4))、塗布層を一定温度で保持する工程(工程(B5))、及び乾燥する工程(工程(B6))から構成される。これらのうち、用いる調光層用塗布液及び工程(B1)は前記工程(A1)と同様であるので、以下それ以降の工程について説明する。
本工程では、工程(B1)で塗布された塗布層がゲル状態になる温度まで冷却する。図6(B2)には、本工程による操作終了後の状態が示されている。
本工程では、コロイド粒子を含む被覆層塗布液を該塗布液がゾル状態となる温度で、ゲル状態になる温度となっている塗布層71の上に塗布する。なお、図6(B3)には、エッジコーター64により塗布層71上にゾル状態の被覆層80が形成される状態が示されている。
被覆層塗布液に含まれるコロイド粒子の詳細については、前記光変調素子の各構成で既に説明した通りである。被覆層塗布液は、前記コロイド粒子を含む溶液、分散液の形で用いられるが、必要に応じて、増粘剤、濡れ性改善剤、消泡剤、乾燥速度調整剤など、公知の特性改質剤を微量添加してもよい。
前記工程の終了後、次工程の保持工程の前の段階には、既に塗布された塗布層71は勿論、積層された被覆層80もゲル状態となって、共に硬化した状態になっている必要がある。
保持工程では、工程(B1)乃至工程(B4)で基板表面に塗り重ねられた塗布層71及び被覆層81を、被覆層がゲル状態でかつ塗布層がゾル状態になる温度まで昇温する。図6(B5)には、本工程による操作を行っている状態が示されている。
また、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合には、前記基板面に対して配列した段階で硬化がほぼ終了するようにしてもよい。この場合、同様に、硬化性樹脂滴は球状のまま硬化するため、後述する乾燥工程で硬化性樹脂滴を多角柱形状とならずそのまま球状の樹脂スペーサーを含む調光層となる。
乾燥工程では、塗り重ねられた両層を乾燥して硬化させる。このときの温度条件は、被覆層のゲル状態を維持したまま、最終的に塗布層もゲル状態となる温度とする。したがって、前記被覆層がゲル状態でかつ前記塗布層粒子分散液がゾル状態になる範囲内での温度変動は許容される。
<実施例1>
(調光層用塗布液の調製)
ネマチック液晶(商品名:E7、メルク社製)77.5質量%と、カイラル剤1(商品名:CB15、メルク社製)18.8質量%と、カイラル剤2(商品名:R1011、メルク社製)3.7質量%とを混合して、グリーンの色光を選択反射するコレステリック液晶を調製した。
このエマルジョン中の硬化性樹脂滴の粒径は数平均で15.2μm、粒径標準偏差が1.55μmで、単分散に近い状態だった。
前記の値を目安にして、上記混合濃縮エマルジョン1質量部に対して、酸性法骨ゼラチン(ゼリー強度:314g、ゾル粘度(60℃):3.2mPa・s、ニッピ社製)の7.7質量%水溶液を4質量部添加することにより、塗布液内の不揮発分体積率が約0.15、不揮発分内の液晶滴及び硬化性樹脂滴を併せたドロップレットの体積率が約0.70の調光層用塗布液を調製した。
被覆層用塗布液として、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、関東化学社製)を0.05質量%添加した寒天(和光純薬工業社製)の1質量%水溶液(保護層用塗布液)を調製した。
得られた保護層用塗布液の温度に対する粘度変化を振動式粘度計(商品名:VM−10A−M、CBCマテリアルズ社製)で測定し、この塗布液が昇温時ゲル状態を維持できる最高温度を求めたところ約80℃であり、降温時ゾル状態を維持できる最高温度は約45℃であった。
−塗布工程−
表示面基板として、片面にITO透明電極(表面抵抗:300Ω/□)が形成された125μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)基板(商品名:ハイビーム、東レ社製)を用意し、前記調光層用塗布液を50℃に加熱して、含まれるゼラチンをゾル状態にした上で、その状態のまま、前記ITO透明電極側の面に、塗布後のウェット膜厚が90μmになるようにギャップを調整したマイクロメータ付きアプリケータ(商品名:Kペイントアプリケータ、松尾産業社製)で塗布し塗布層を形成した。
次いで、塗布後の基板を室温に放置し25℃に徐冷して、塗布層に含まれるゼラチンをゲル化させた。
塗布層及び被覆層を積層した後の基板を55℃のホットプレート上に載せ10分間保持した。前記調光層用塗布液及び被覆層用塗布液の粘度測定の結果から、乾燥の初期段階で、塗布層のゼラチンはゲル状態からゾル状態へ変化し、被覆層の寒天はゲル状態を維持したものと推測される。
調光層塗布液中のコレステリック液晶ドロップ及び硬化性樹脂滴が稠密状態になった表示面基板をホットプレートからはずし、23℃付近の室温で調光層塗布液の溶媒を揮発させた。
このとき、同様にデジタル顕微鏡で塗膜を観察すると、さらに溶剤の揮発が進み完全に乾燥した状態では、多角柱構造に変形したコレステリック液晶ドロップ及び硬化性樹脂滴が単層で稠密に並んだ状態が確認された。
前記調光層用塗布液の塗布において基板として用いた物と同じPET基板を非表示面基盤とし、このITO透明電極側の面に、カーボンブラック顔料を23g/lの割合で分散させた9.0質量%ポリビニルアルコール水溶液を1.3μm厚にスピンコート塗布して遮光層を形成した。さらに形成された遮光層の上に、ウレタン系ラミネート剤(LX719/KY−90、大日本インキ化学社製)を1μm厚にスピンコート塗布して、接着層(ラミネート層)を形成した。
実施例1の調光層用塗布液の調製において、液晶ドロップの濃縮エマルジョンと硬化性樹脂滴の濃縮エマルジョンとの混合比を、全体体積に対する硬化性樹脂滴の体積比が、2.00体積%とした以外は、実施例1と同様にして塗布液の調製を行い、これを用いて実施例1と同様にして光変調素子2の作製を行った。
実施例1の調光層用塗布液の調製において、液晶ドロップの濃縮エマルジョンと硬化性樹脂滴の濃縮エマルジョンとの混合比を、全体体積に対する硬化性樹脂滴の体積比が、3.93体積%とした以外は、実施例1と同様にして塗布液の調製を行い、これを用いて実施例1と同様にして光変調素子3の作製を行った。
表面をカルボキシル基で修飾した球形の樹脂スペーサー(粒径:10μm)を液晶ドロップの濃縮エマルジョンと混合し、全体体積に対する樹脂スペーサーの体積比が2.00体積%とした以外は、実施例1と同様にして光変調素子4を得た。
実施例1の調光層用塗布液の調製において、硬化性樹脂エマルジョンを用いず、濃縮エマルジョンとして液晶ドロップの濃縮エマルジョンのみ使用して、不揮発分内の液晶体積率を約0.70とした以外は、実施例1と同様にして調光層用塗布液を調製し、実施例1と同様に塗布、保持、乾燥を行って比較用の光変調素子5を得た。
この光変調素子5における液晶ドロップの粒径や各層厚は、実施例1の光変調素子1における場合と同等であった。
−ピーク波長反射率−
得られた各光変調素子について、プレーナ状態およびフォーカルコニック状態における表示特性を、積分球型分光測色計(CM2002型、ミノルタ社製)を用いて測定した。具体的には、拡散照明下で正反射光を除去した状態(d8/SCE条件)における反射率を、完全拡散板の反射率を100%として求めた。その反射スペクトルから求めたプレーナ状態のピーク波長における反射率を、まとめて図7に示す。
一方、10mmの角の直方体状ゴムにより表示側から圧力0.1MPa(10N/cm2)で5秒間押圧し、その後、フォーカルコニック状態としたときの視感反射率Y値(黒反射率)を測定した。次いで、電気的に液晶をフォーカルコニック状態にリセットして、押圧後黒反射率を測定する操作を、0.2MPaから0.6MPaまで0.1MPaずつ圧力を上昇させて行った。
実施例1、2及び比較例1の光変調素子について測定した結果を、まとめて図8に示す。
また、図示していないが、球状の樹脂スペーサーを含む参考例1の光変調素子4でも問題なく変化しなかった。但し、ペン先で押した時には差が見られ、本願のスペーサーでは変化しなかったが、球形のスペーサーでは白く変化してしまった。球形のスペーサーでは表示層と高さが合ってないために部分的なたわみが出易く局所的な圧力がかかってしまうからだと推定される。
11、21 支持基板
12、22 電極
13 非表示面基板
14 遮光層
16 接着層
20 表示面基板
30、31 調光層
32、36、74 液晶ドロップ
33、35 樹脂スペーサー
34 ゼラチン(高分子バインダー)
60 基板
62 電極
64 エッジコーター
70、71、73、75 塗布層
72 硬化性樹脂滴
80、81、84 被覆層
Claims (5)
- 少なくとも一方が透光性を有し、表面に設けられた電極が対向するように配置された一対の基板と、
前記一対の基板間に設けられ、少なくとも液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセル、高分子バインダー及び多角柱形状である樹脂スペーサーを含む調光層と、を有することを特徴とする光変調素子。 - 前記液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルも多角柱形状であることを特徴とする請求項1に記載の光変調素子。
- 前記液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセル及び前記樹脂スペーサーの最大長差が±50%以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の光変調素子。
- 前記液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセル及び樹脂スペーサーが、単層かつ稠密に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光変調素子。
- 前記調光層上に、被覆層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光変調素子。
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