JP4929648B2 - 光変調素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを含む調光層を有する光変調素子の製造方法に関する。
紙パルプの原料である森林資源の破壊や、ごみの廃却、焼却による環境汚染などから、オフィスを中心とする大量の紙の消費が問題になっている。しかしながら、パーソナルコンピュータの普及、インターネットを始めとする情報化社会の発達により、電子情報の一時的な閲覧を目的とする、いわゆる短寿命文書としての紙の消費は、益々増加する傾向にあり、紙に代わる書き換え可能な表示媒体の実現が望まれている。
ところで、コレステリック光変調素子は無電源で表示を保持できるメモリ性を有すること、偏光板を使用しないため明るい表示が得られること、カラーフィルターを用いずにカラー表示が可能なことなどの特長を有することから近年注目を集めている。
液晶分子が螺旋構造を持つコレステリック液晶は、入射した光を右円偏光と左円偏光に分け、螺旋の捩じれ方向に一致する円偏光成分をブラッグ反射し、残りの光を透過させる選択反射現象を起こす。反射光の中心波長λ、及び反射波長幅Δλは、螺旋ピッチをp、平均屈折率をn、複屈折率をΔnとすると、それぞれλ=n・p、Δλ=Δn・pで表され、コレステリック液晶層による反射光は螺旋ピッチに依存した鮮やかな色を呈する。
正の誘電異方性を有するコレステリック液晶は、図11(A)に示すように、螺旋軸がセル表面に垂直になり、入射光に対して上記の選択反射現象を起こすプレーナ状態、図11(B)に示すように、螺旋軸がほぼセル表面に平行になり、入射光を少し前方散乱させながら透過させるフォーカルコニック状態、及び図11(C)に示すように、螺旋構造がほどけて液晶ダイレクタが電界方向を向き、入射光をほぼ完全に透過させるホメオトロピック状態、の3つの状態を示す。
上記の3つの状態のうち、プレーナ状態とフォーカルコニック状態は、無電圧で双安定に存在することができる。したがって、コレステリック液晶の配向状態は、液晶層に印加される電圧に対して一義的に決まらず、プレーナ状態が初期状態の場合には、印加電圧の増加に伴って、プレーナ状態、フォーカルコニック状態、ホメオトロピック状態の順に変化し、フォーカルコニック状態が初期状態の場合には、印加電圧の増加に伴って、フォーカルコニック状態、ホメオトロピック状態の順に変化する。一方、液晶層に印加した電圧を急激にゼロにした場合には、プレーナ状態とフォーカルコニック状態はそのままの状態を維持し、ホメオトロピック状態はプレーナ状態に変化する。そして、印加するパルス電圧の大きさによって上記3つの状態を相互に遷移させることができる。
この電気光学応答を示したものが図12である。図12中、曲線Aは初期状態がプレーナ状態の場合を示し、曲線Bは初期状態がフォーカルコニック状態の場合を示す。
図12において(a)で示す領域はプレーナ状態またはフォーカルコニック状態(選択反射状態または透過状態)を、(b)で示す領域は遷移領域を、(c)で示す領域はフォーカルコニック状態(透過状態)を、(d)で示す領域は遷移領域を、(e)で示す領域はホメオトロピック状態を示し、ホメオトロピック状態で電圧を0にするとプレーナ状態(選択反射状態)に変化する。また、Vpf,90 、Vpf,10 、Vfh,10 、Vh,90とは、前記の2つの遷移領域の前後において、正規化反射率が90または10になる電圧(正規化反射率が90以上を選択反射状態とし、10以下を透過状態とする)を意味する。
そして、コレステリック液晶層の背面に、少なくとも選択反射色と同じ波長の光を吸収する層を配置することで、プレーナ状態とフォーカルコニック状態を利用した反射型メモリ表示を実現できる。
コレステリック光変調素子は、一対の支持基板間に液晶を連続相として封入する構造のほかに、高分子バインダ中にコレステリック液晶をドロップ状に分散したPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)や、高分子バインダ中に液晶マイクロカプセル化された液晶を分散したPDMLC(Polymer Dispersed Microencapsulated Liquid Crystal)と称される表示方法が知られている(例えば、以下の特許文献1乃至特許文献3参照)。
PDLC構造やPDMLC構造を用いると、液晶の流動性が抑えられるため曲げや圧力に対する画像の乱れが小さくなり、フレキシブルな媒体を実現できる。また、複数のコレステリック液晶層を直接積層してカラー表示を行ったり、光導電層と積層して光信号で画像をアドレスする表示素子とすることもできる。さらに、調光層を、厚膜印刷技術を用いて形成することが可能となるため、製造方法が簡略化されて低コストになるという利点もある。
しかしながら、PDLC構造やPDMLC構造のコレステリック光変調素子には、プレーナ状態での選択反射色の明るさや色純度が低く綺麗なカラー表示を行うことができないという問題や、フォーカルコニック状態での光透過率が悪く、例えば背面に黒色の光吸収層を設けた表示素子では、黒表示が白濁してコントラストが低くなるという問題がある。
前記のプレーナ状態での選択反射色の明るさが低い理由は、図10に示すように、球形等の湾曲面を有する液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセル36内では界面付近に配向の乱れた領域32bが生じ、プレーナ状態では有効な選択反射領域32aが小さくなり、フォーカルコニック状態では不要な散乱光が発生するためである。
このような反射率及び彩度の低下を抑制するために、隣接する液晶ドロップを密着させると共に液晶ドロップを多面体構造とした液晶表示素子が知られている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4では、入射した光を有効に活用でき、調光層を透過する光の量を高めるための技術が開示されている。それによれば、隣接する液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセル同士を密着させ且つ多面体構造とすることによって、入射した光を有効に活用でき、透過率を向上させると共に高いコントラストを実現することができる。
この技術を用い、隣接する液晶ドロップを密着させると共に液晶ドロップを多面体構造とすることにより、反射率を向上させることが可能と考えられる。
しかし、特許文献4の技術によれば、液晶マイクロカプセルを多面体化するために、液晶層の厚み方向に機械的に圧力をかけ、液晶マイクロカプセルに対して圧力を加えているため、機械的な加圧により液晶マイクロカプセルが破壊されるおそれがあった。また、液晶層を基板に平行な面に対して均一に加圧する必要があり、加圧のための基板面積に応じた専用装置が必要であった。
液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを扁平化させる技術は、例えば、特許文献5乃至特許文献8等に示されているが、何れの技術においても、液晶層に機械的に圧力をかけ、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルに圧力を加えて扁平化を行っており、液晶マイクロカプセルの破壊や、加圧のための基板面積に応じた専用装置が必要であるという問題の解決には至っていない。
特公平7―009512号公報 特開平09―236791号公報 特許第3178530号明細書 特開平9−236791号公報 特開平11―142862号公報 特開平11―84348号公報 特開平7―181454号公報 特開平5―80302号公報
本発明は前記のごとき問題点に鑑みてなされたものであり、液晶マイクロカプセルまたは液晶ドロップを機械的に加圧することなく簡易な方法で、液晶マクロカプセルまたは液晶ドロップの多面体化を行い、反射率及び彩度の向上を実現可能な光変調素子の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題は、以下の光変調素子の製造方法を提供することにより解決される。
(1)本発明の光変調素子の製造方法は、少なくとも一方が透光性を有すると共に間隙をもって対向し、電極を有する一対の基板間に、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを含む調光層を有する光変調素子の製造方法であって、前記調光層を設ける工程が、前記基板上に、ゼラチン及び溶媒を含む溶液に液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが分散された調光層用塗布液を塗布する塗布工程と、前記塗布された調光層用塗布液によって形成された塗布層を、前記ゼラチンの凝固点より高い温度で且つ前記溶媒の飽和蒸気圧と同一または前記溶媒の飽和蒸気圧に近い雰囲気中に1分間以上保持して、前記塗布層の乾燥を抑制しつつ前記液晶ドロップまたは前記液晶マイクロカプセルを前記基板面に自然沈降または浮揚させる保持工程と、前記塗布層中の前記溶媒を、前記ゼラチンの凝固点以下の温度で揮発させて乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴としている。
)上記()に記載の光変調素子の製造方法において、少なくとも前記保持工程の一部または全部において、前記調光層に振動を加えることを特徴としている
また、本発明の光変調素子の製造方法によれば、調光層を設ける工程が、基板上に、ゼラチン及び溶媒を含む溶液に液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが分散された調光層用塗布液を塗布する塗布工程と、塗布された調光層用塗布液によって形成された塗布層を、前記ゼラチンの凝固点より高い温度で且つ溶媒の飽和蒸気圧と同一または溶媒の飽和蒸気圧に近い雰囲気中に1分間以上保持して、前記塗布層の乾燥を抑制しつつ前記液晶ドロップまたは前記液晶マイクロカプセルを前記基板面に自然沈降または浮揚させる保持工程と、塗布層中の前記溶媒を、前記ゼラチンの凝固点以下の温度で揮発させて乾燥させる乾燥工程と、を有する。このため、液晶マイクロカプセルまたは液晶ドロップを機械的に加圧することなく簡易な方法で、液晶マクロカプセルまたは液晶ドロップの多面体化を行い、反射率及び彩度の向上を実現可能な光変調素子の製造方法を提供することができる、という効果が得られる。
本発明の光変調素子(以下、単に「表示素子」ということがある。)は、少なくとも一方が透光性を有すると共に間隙をもって対向し電極を有する一対の基板と、この一対の基板の間に調光層を有している。
本発明の光変調素子に用いる液晶はコレステリック液晶、ネマチック液晶、ゲスト・ホスト液晶など、特に制限なく用いられるが、以下ではコレステリック液晶を例にとって説明する。
図1に示すように、本発明の光変調素子10は、対向して設けられた一対の非表示面基板13と表示面基板20との間に、液晶ドロップ32を含む調光層30が設けられている。非表示面基板13は、支持基板11上に電極12を積層した構成となっている。表示面基板20は、支持基板21上に電極22を積層した構成となっている。非表示面基板13には遮光層14が設けられ、表示面基板20には調光層30が設けられており、接着層16を介して積層された構成となっている。
なお、図示は省略するが、電極22と調光層30との間、及び電極12と遮光層14との間等に接着層を設けてもよい。遮光層14は非表示面基板13の外側、即ち電極12が形成されていない側、あるいは表示面基板20側の電極22と調光層30との間に設けてられていてもよい。調光層30は、液晶32aによる液晶ドロップ32及びゼラチン34を含んで構成されている。
このように構成された光変調素子10において、対向する電極22及び電極12へ電圧が印加されると、印加電圧に応じてコレステリック液晶の配向状態が制御され、調光層30へ入射された入射光が、コレステリック液晶により選択反射される。
なお、図1に示す光変調素子10の調光層30は、図2に示す光変調素子23の調光層31のように、コレステリック液晶をドロップとしてではなく、液晶32aを高分子シェル、すなわち液晶マイクロカプセル36bに包み込んだ形態の液晶マイクロカプセル36として含むようにしてもよい。
また、図1に示す光変調素子10は、図3に示すように、電極12と遮光層14との間に光導電層40を設けた構成の光変調素子24であってもよい。図3に示す光変調素子24によれば、電極12及び電極22の間にバイアス電圧を印加するとともに、光導電層40に書込み光を照射することによって、コレステリック液晶の配向状態を制御することができる。
なお、上記支持基板21及び支持基板11が、本発明の基板に相当し、液晶ドロップ32及び液晶マイクロカプセル36各々が、本発明の液晶ドロップ及び液晶マイクロカプセル各々に相当する。また、上記電極12及び電極22各々が、本発明の電極に相当し、上記光変調素子10、光変調素子23、及び光変調素子24が、本発明の光変調素子に相当する。
次に、前記で説明した光変調素子に用いる各構成部材について説明する。
―支持基板―
支持基板は、絶縁性を有する、ガラス、及びシリコーン、またはポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどの高分子フィルムを用いて形成され、少なくとも一方、特に視認される側の支持基板(表示面基板を構成する支持基板)は、入射光及び反射光に対して透過性を有する材料により形成される。また必要に応じて、支持基板の表面に、防汚膜、耐磨耗膜、光反射防止膜、ガスバリア膜など公知の機能性膜を形成してもよい。
―電極―
電極は、導電性を有する、金やアルミなどの金属薄膜、酸化インジウムや酸化スズなどの金属酸化物、またはポリピロール、ポリアセチレン、ポリアニリンなどの導電性有機高分子を用いて形成され、少なくとも表示面側にある電極は、入射光及び反射光に対して透過性を有する材料により形成する。また必要に応じて、その表面に、密着力改善膜、光反射防止膜、ガスバリア膜など公知の機能性膜を形成してもよい。
―調光層―
調光層は、液晶による液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを、ゼラチン中に、分散保持した構造からなる。調光層の層厚は、大きすぎると電極間に印加する駆動電圧を高くする必要があり、小さすぎると光変調素子のコントラストが低下することから、駆動電圧を低く且つコントラストを高くするために、1μm〜100μmであることが好ましい。
本発明の光変調素子の調光層は、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが単層で構成されていても、複層で構成されていてもよいが、調光層の凹凸を抑制するために、単層であることが好ましい。
(液晶)
本発明において用いることができる液晶材料としては、屈折率異方性があり、電圧印加によって配向が変化するものであればどのような液晶材料であってもよいが、好ましくは、コレステリック液晶(カイラルネマチック液晶を含む)が挙げられる。
なお、本発明で用いられるコレステリック液晶材料として、ステロイド系コレステロール誘導体、あるいはシッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキサン系、トラン系、アルケニル系、スチルベン系、縮合多環系などのネマチック液晶やスメクチック液晶、またはこれらの混合液晶に、シッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニル系などの光学活性材料からなるカイラル成分を添加した材料を用いることができる。
(ゼラチン)
本発明の調光層に用いられるゼラチンとしては、ゼラチンの物性として、ゼリー強度が大きく、ゾル粘度が低いものが好ましい。
このようなゼラチンとしては、α鎖の多量体である高分子量のβ鎖・γ鎖や、α鎖の主鎖が途中で切れた低分子量成分が少なく、α鎖残量の多いものが適している。牛骨を酸処理して製造されたゼラチン材料は、この条件を満たし、とくにゼリー強度が大きく、ゾル粘度が低いため好ましい。また、原料のコラーゲンを加水分解する際に最初に抽出される第一抽出品がよい。なお、液晶材料のイオン汚染を防止するため、ゼラチン中に残留するイオン成分をイオン交換樹脂など公知の手法を用いて除去してもよい。
―接着層―
接着層は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂など、熱や圧力によって調光層と遮光層を密着させることができる材料を用いる。なお、接着層を挿入する位置はこの実施形態に限らず、電極と調光層の間、電極と遮光層の間とすることもできる。電極と調光層の間に接着層を形成する場合は、少なくとも入射光及び反射光に対して透過性を有する材料により形成する。
―遮光層―
遮光層は、絶縁性を有する、カドミウム系、クロム系、コバルト系、マンガン系、カーボン系などの無機顔料、またはアゾ系、アントラキノン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、ニトロ系、フタロシアニン系、ペリレン系、ピロロピロール系、キナクリドン系、多環キノン系、スクエアリウム系、アズレニウム系、シアニン系、ピリリウム系、アントロン系などの有機染料や有機顔料、あるいはこれらを高分子バインダに分散した材料を用いて形成され、少なくとも反射光に対して、光吸収性を有するように構成する。
―光導電層―
光導電層は、a−Si:H、a−Se、Te−Se、As2Se3、CdSe、CdS
などの無機光導電体、あるいはアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料、インジゴ顔料、アントロン顔料などの電荷発生材料とアリールアミン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、PVKなどの電荷輸送材料を組合せた有機光導電体などにより構成する。
次に本発明の光変調素子の作製方法について説明する。なお、本発明では、説明を簡略化するために、図1に示すように、対向して設けられた非表示面基板と表示面基板との間に、液晶ドロップを含む調光層が設けられる場合を説明する。
本発明の光変調素子の作成方法は、表面に電極を有する支持基板としての非表示面基板上に遮光層を積層し、また、表面に電極を有する支持基板としての表示面基板上に調光層を積層した後に、接着層を介して、表面に電極を有する支持基板としての表示面基板を電極が形成された側と表面に電極を有する支持基板としての非表示面基板の電極が形成された面とが対向するように重ね合わせて接着することにより作製される。
次に、前記光変調素子の調光層の作製方法について詳細に説明する。
なお、説明を簡略化するために、調光層を表示面基板上に形成するものとして説明する。
まず、調光層用塗布液の調整について詳細に説明する。
[調光層用塗布液の調製]
本発明の調光層用塗布液は、ゼラチン、及び液体を含有する溶液に、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを分散することによって調整される。
まず、液晶ドロップ及び液晶マイクロカプセルの調製方法について説明する。
まず、液晶ドロップ及び液晶マイクロカプセルの調製方法について説明する。
<液晶ドロップエマルジョンの調製>
液晶ドロップエマルジョンは、少なくともコレステリック液晶からなる分散相を、分散相と相溶しない連続相、例えば、水相中にドロップ状に乳化分散させることにより調製される。乳化する手段として、分散相と連続相を混合した後、ホモジナイザ−などの機械的なせん断力で分散相を微小な液滴として分散させる方法や、分散相を連続相中に多孔質膜を通して押出し、微小な液滴として分散させる膜乳化法などを用いることができる。特に膜乳化法は乳化液滴の粒径ばらつきが小さくなるため、均一な粒径の液晶ドロップを形成することができるため好ましい。なお、乳化時の連続相中に、乳化を安定させるための界面活性剤や保護コロイドを微量混合しておいてもよい。
<液晶マイクロカプセルスラリーの調製>
高分子シェル内にコレステリック液晶が内包された液晶マイクロカプセルの調製には、公知の液晶マイクロカプセル化手法、例えば、相分離法、界面重合法、in situ重合法を用いることができる。具体的には、前記のごとくして作製した液晶ドロップを、高分子シェル材料を含む溶液中に分散させ、または前記材料に応じて熱硬化などさせ、液晶ドロップの周囲に高分子シェルを形成する。また、ウレタン・ウレア系の高分子シェルを作る場合には、あらかじめ液晶ドロップに多価イソシアネート化合物を含ませておき、液晶ドロップを、多価アルコールを含む溶液中に添加してウレタン・ウレア生成反応を起こさせることが好ましい。
高分子シェルとしては内包する液晶材料に溶解しない材料を用い、例えば、ゼラチン、セルロース誘導体、ゼラチン−アラビアゴム、ゼラチン−ゲランゴム、ゼラチン−ペプトン、ゼラチン−カルボキシメチルセルロース、ポリスチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、ポリフェニルエステル、ポリウレタン、ポリウレア、メラミンホルマリン樹脂、フェノールホルマリン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂などが挙げられる。
液晶マイクロカプセルの粒径は小さすぎると充分な反射特性が得られず、表示特性を悪化させると共に、コントラストの低下を招く。一方、高分子シェルによる液晶マイクロカプセルの壁厚は、厚すぎると液晶マイクロカプセル内に内包される液晶材料の量が少なくなり、薄すぎると強度が低下する。したがって、コントラストが高く且つ強度の低下を抑制するには、液晶マイクロカプセルの壁厚は、液晶マイクロカプセルの半径の1%〜25%、好ましくは、3%〜21%にすることが好ましい。
なお、液晶マイクロカプセル及び液晶ドロップの体積平均一次粒径は、1μm〜100μmが好ましく、更に好ましくは、3μm〜20μm、特に好ましくは、10μm〜15μmである。液晶マイクロカプセル及び液晶ドロップの体積平均一次粒径が20μm以上であると駆動電圧の上昇を生じ、3μm未満であると充分な反射特性が期待できないおそれがある。
<濃縮>
上記工程後の液晶ドロップエマルジョン、または液晶マイクロカプセルスラリーの不揮発分濃度が低く、塗布時の調光層用塗布液で必要となる不揮発分濃度に調整できない場合は濃縮を行う。液晶ドロップ、または液晶マイクロカプセルと連続相の比重差を利用して、静置や遠心分離によって沈殿、あるいは沈降させて分離した連続相を除去する方法や、メンブランフィルタで濾過する方法などを用いる。
<調光層用塗布液の調製>
前記のごとくして得られた液晶ドロップエマルジョンまたは液晶マイクロカプセルスラリーを、ゼラチン、及び溶媒を含む溶液に分散することにより調光層用塗布液を調製する。
(調光層用塗布液の調整方法)
本発明では、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを支持基板上に塗布する。そこで、密度計や比重計を用いて、前記液晶ドロップエマルジョンまたは液晶マイクロカプセルスラリー内の各成分の含有量を測定し、調光層用塗布液のゼラチン、溶媒及び液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルの混合割合を調整する。
調光層用塗布液体積に対する不揮発成分体積の比率(体積率)をSr、不揮発成分体積に対する液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルの体積の比率(体積率)をLr、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルの平均粒径(μm)をDL、非表示面基板上へのウェット塗布厚(μm)をtWとすると、塗布面積に対する液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルの被覆面積の比率ALは、
[式]
L=(3/2)・(tW・Sr・Lr/DL)…式(1)
となる。そして、ALが、
[式]
0.8<AL<1.0…式(2)
の範囲になるように塗布調光層用塗布液を調整することが好ましい。
前記Srは、調光層用塗布液Xccから溶媒を蒸発させた場合に残る不揮発成分がYccの場合、Sr=Y/Xを意味し、また不揮発成分YccにZccの液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが含まれる場合Lr=Z/Yを意味する。
また、圧力などによる破壊を防ぐため、前記不揮発成分体積に対する液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルの体積の比率(体積率)Lrを0.9以下にすることが好ましい。
算出した混合割合に基づき、液晶ドロップエマルジョン、または液晶マイクロカプセルスラリーに対する、ゼラチン、及び溶媒の混合量を調整して塗布調光層用塗布液を作製する。ここで、増粘剤、濡れ性改善剤、乾燥速度調整剤など、公知の調光層用塗布液特性改質剤を微量添加してもよい。
(溶媒)
本発明の調光層用塗布液に含有される溶媒としては、ゼラチンを溶解し、液晶ドロップの場合は液晶を溶解させないものが用いられ、液晶マイクロカプセルを用いる場合は少なくとも液晶マイクロカプセルの高分子シェルを溶解させないものが用いられる。このような溶媒としては、純水、イオン交換水、蒸留水、水道水等の水、水溶性有機溶媒、あるいはイオン交換水、蒸留水、水道水等の水と水溶性有機溶媒を混合した液体、非水溶性有機溶媒、及びイオン性液体等が用途や使用条件等に応じて適宜選択される。
本発明において、上記溶媒は、調光層用塗布液に対して、75質量%〜95質量%含有されることが好ましく、80質量%〜90質量%含有されることがより好ましい。溶媒の含有量が75質量%〜90質量%の範囲内であると、調光層用塗布液を塗布できる粘度に調整することができる。
<調光層の形成方法>
次に本発明の光変調素子の調光層を設ける工程について説明する。
本発明の光変調素子の調光層を設ける工程は、表示面基板上に、ゼラチン及び溶媒を含む溶液に液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが分散された調光層用塗布液を塗布する塗布工程と、塗布された調光層用塗布液によって形成された塗布層を、ゼラチンの凝固点より高い温度で且つ溶媒の飽和蒸気圧と同一または溶媒の飽和蒸気圧に近い雰囲気中に所定時間(1分間以上)保持して、前記塗布層の乾燥を抑制しつつ前記液晶ドロップまたは前記液晶マイクロカプセルを前記基板面に自然沈降または浮揚させる保持工程と、塗布層中の前記溶媒をゼラチンの凝固点以下の温度で揮発させて乾燥させる乾燥工程と、を有している。
この調光層を設ける工程について、以下に詳細に説明する。
<塗布工程>
上記のごとく濃度調製を行った調光層用塗布液の表示面基板への塗布は、アプリケータ、エッジコータ、スクリーンコータ、ロールコータ、カーテンコータ、ダイコータなど所望のウェット厚に塗布できる公知の装置を用いて行う。
なお、塗布工程では、調光層塗布液のゼラチンを融点より高い温度に加熱して流動性のあるゾル状態に保持する必要がある。ゼラチンは、融点以上の温度に温めるとゾル化し、凝固点以下の温度に下げるとゲル化し流動性を失う。ゼラチン水溶液の濃度、pHなどによって変化するが、市販ゼラチンの凝固点は20〜30℃で、融点はそれよりも約5℃高い。このため、塗布工程では、調光層塗布液は、凝固点20℃以上の温度として、20℃〜80℃の調光層用塗布液温度に保持することが好ましい。更に好ましくは、30℃〜70℃の調光層用塗布液温度に保持することが好ましく、特に好ましくは、40℃〜60℃の調光層用塗布液温度に保持することが好ましい。調光層用塗布液の温度が20℃未満であると、ゼラチンのゾル化が不十分なため塗布インクとしての適度な粘性が得られず、80℃以上であると液晶材料の揮発などが発生しやすくなり液晶化合物の組成比が変化してしまうという問題がある。
<保持工程>
次に、前記塗布工程により表示面基板上に形成された塗布層を密閉容器の中に保持し、且つ表示面基板上への加熱を継続することにより塗布層を凝固点より高い温度に加熱して、40℃〜60℃の温度となるような状況下に塗布層を保持し、且つ、塗布層を、塗布層中の飽和蒸気圧と同一またはこの溶媒の飽和蒸気圧に近い雰囲気中に1分間〜10分間保持する。
加熱するための加熱装置としては、オーブン、温風ブロー装置、ホットプレートなどを用いることができる。塗布層中の飽和蒸気圧と同一またはこの溶媒の飽和蒸気圧に近い雰囲気にするためには、塗布層をできるだけ小さい容積の容器内で保持する方法、上記発生部を持つチャンバー内で保持する方法、あるいは溶媒の飽和蒸気圧を大気圧以下にする方法などを用いることができる。
なお、塗布層温度は、35℃〜65℃、特に好ましくは、40℃〜60℃、更に好ましくは45℃〜55℃となるように調整することが好ましい。65℃以上であると液晶化合物の組成比が変化しやすいという問題がり、35℃未満であると塗布層中の流動性が低く液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが稠密に配置しにくくなるため好ましくない。
このように、塗布層中のゼラチンをゾル状態に維持したまま、この塗布層を、塗布層中の溶媒の飽和蒸気圧と同一または飽和蒸気圧に近い雰囲気中に所定時間保持すると、塗布層の乾燥を抑制しつつ、塗布層中の液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが比重差によって稠密配列される。液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルの比重がゼラチン水溶液とまったく同じ場合には、稠密配列は生じない。しかしながら、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルの比重がゼラチン水溶液と異なる場合には、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが基板面に対して自然沈降、あるいは浮揚するため、稠密配列される。
なお、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルの動きが不十分な場合、保持工程の一部または全部において、前記塗布層に振動、例えば超音波振動子などによる機械的な振動を加えれば、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルをより稠密に配置しやすくすることができる。
<乾燥工程>
上記保持工程によって、ゼラチンがゾル状態にある塗布層中の液晶ドロップが塗布層中で稠密配列された後に、乾燥工程では、まず、表示面基板を室温による自然冷却、あるいは冷却装置を用いて強制冷却することによって塗布層中のゼラチンをゼラチンの凝固点以下で且つ塗布層中の溶媒が揮発可能な温度に冷却する。表示面基板を冷却するための冷却装置としては、冷却オーブン、ペルチェなどを用いた冷却プレート、及び冷風ブロー装置等を用いることができる。
乾燥工程をゼラチンの凝固点以下の温度にすることで、塗布膜中のゼラチンの乾燥モードはゾル状態からゲル状態へと変化する。このようなゼラチンの凝固点以下の温度下で且つ塗布層中の溶媒が揮発可能な温度下において、塗布層中の溶媒を揮発させて塗布層を乾燥させる。
ここで、ゼラチンはコラーゲンの熱変性物であるため、ゾル状態でのゼラチンの分子構造はランダムコイル状となっているが、ゲル状態でのゼラチンは分子の一部が元のコラーゲンのらせん構造をとりネットワークが形成される。そのため、ゾル状態よりもゲル状態で乾燥工程を行ったほうが、塗布層中の液体の揮発に伴うゼラチンの体積収縮は大きい。上記保持工程で稠密配列された液晶ドロップ又は液晶マイクロカプセルは、乾燥工程をゲル状態にすることでゾル状態での乾燥に比べて、厚み方向には圧縮力が、面方向には引っ張り力が働くため変形し、液晶ドロップ又は液晶マイクロカプセル各々が多面体化される。
以上の各工程(塗布工程、保持工程、及び乾燥工程)を、液晶ドロップがゼラチン及び溶媒を含む溶液に分散された調光層用塗布液を用い、塗布部をできるだけ小さい容積の容器内で保持する場合について、図4を用いて説明する。
図4(A)は塗布工程を示す概念図である。塗布工程では、図4(A)に示すように、表示面基板20上に、ゼラチン及び溶媒を含む溶液37中に液晶ドロップ32が分散された調光層用塗布液を、塗布装置60によって塗布することにより、表示面基板20上に塗布層39を形成する。
次に、保持工程では、図4(B)に示すように、図4(A)に示される塗布工程で形成された塗布層39を密閉容器70の中に保持すると共に、表示面基板20を、図示を省略する加熱装置によって加熱することにより塗布層39をゼラチンの凝固点より高い温度(40℃〜60℃)に加熱する。密閉容器70内の雰囲気は、塗布層39中の溶媒の初期揮発によって溶媒の飽和蒸気圧に近い状態になっている。この状態では、塗布層39から溶媒が急激に揮発しないため、各液晶ドロップ32が激しい流動によって歪むことはない。このような環境下に保持されることにより、調光層39中の液晶ドロップ32は比重差によって調光層39中に稠密配列される。
なお、密閉容器70内では、溶媒の飽和蒸気圧に近い状態となっていることから、塗布層39が乾燥されることを抑制することができる。
乾燥工程では、まず、図4(C)に示すように、上記保持工程によって調光層39中に液晶ドロップ32が稠密に配列された調光層39が形成された背面基板13を密閉容器70外に保持すると共に、調光層39がゼラチンの凝固点以下の温度以下となるように表示面基板20を、図示を省略する冷却プレートによって冷却する。
調光層39中のゼラチンは、凝固点以下の温度下に保持されることにより、ゾルーゲル変化が生じ、ゲル状態での乾燥モードとなる。
更に、乾燥工程では、図4(D)に示すように、調光層39が、ゼラチンの凝固点以下の温度で且つ溶媒が揮発可能な温度15℃〜25℃となるように、表示面基板20を冷却プレートによって保持することによって、塗布層39中の溶媒を揮発させる。
このように乾燥工程では、ゼラチンは、液晶ドロップ32を稠密となるように配列させた状態で、ゾルーゲル変化する。ここで、ゼラチンは、ゾル状態に比べてゲル状態で乾燥させたほうが塗布層中の液体の揮発に伴うゼラチンの体積収縮が大きいことから、乾燥工程をゲル状態で行うことで、溶媒が揮発した時の塗布層39の厚みはゾル乾燥で行う時よりも薄くなり、ゼラチンの体積収縮に伴って、厚み方向には圧縮力が、面方向に引っ張り力がそれぞれ働き、各液晶ドロップ32はゾル状態で乾燥したときよりもゲル状態で乾燥したときのほうが扁平化される。このとき、上記保持工程により、液晶ドロップ32は稠密配列されているので、溶媒の揮発に伴うゼラチンの体積収縮によって、各液晶ドロップ32は図4(D)に示すように稠密に配置された状態で多面体化される。
本発明に用いるゼラチン材料は、保持工程では液晶ドロップ又は液晶マイクロカプセルの動きを阻害しないようゾル粘度の小さいものが好ましく、且つ乾燥工程終了後の調光層表面に液晶滴の漏れ出しを抑制するようゼリー強度の高いものが好ましく、以上の観点から牛骨を原料として酸処理を行ったゼラチンが好適である。
本発明の特徴である、ゼラチンのゾルーゲル変化による液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルの多面体化の理由については、厳密に解明できていない。しかしながら、ゼラチンはコラーゲンの熱変性物であるため、ゾル状態で乾燥させたゼラチンの分子構造はランダムコイル状となっているが、ゲル状態で乾燥させたゼラチンは、分子の一部が元のコラーゲンのらせん構造をとりネットワークが形成されている。そのため、ゼラチンがゾル状態からゲル状態へと変化すると、体積収縮が生じると考えられる。そのため、塗布層を、ゾル状態のまま乾燥した場合には、塗布層中の液体の揮発に伴うゼラチンの体積収縮が低いことから、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを扁平化し、多面体化することは困難であると考えられる。
一方、本発明によれば、塗布工程において表示面基板上に、ゼラチン及び溶媒を含む溶液に液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが分散された調光層用塗布液を塗布し、次の保持工程において、塗布層をゼラチンの凝固点以上の温度で溶媒の飽和蒸気圧と同一または溶媒の飽和蒸気圧に近い雰囲気中に所定時間保持した後に、乾燥工程においてゼラチンの凝固点以下の温度で溶媒を揮発させて乾燥させるので、塗布層中の液体の揮発に伴うゼラチンの体積収縮が大きく、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが、ゼラチン中に稠密に配列された塗布層中のゼラチンをゲル化した状態で乾燥することができ、ゲル状のゼラチン中に含まれる溶媒の揮発に伴い、厚み方向には圧縮力が、面方向には引っ張り力が働くため、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを扁平化し、最終的には多面体化することができる。
以上説明したように、本発明の光変調素子の製造方法では、調光層を設ける工程が、上記塗布工程と、上記保持工程と、上記乾燥工程と、を有することから、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルへ従来技術のように機械的な圧力を加えることなく多面体化することができ、調光層の反射率の向上を図ることができる。
具体的には、図10に示すように、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが分散された調光層30中の液晶ドロップ32または液晶マイクロカプセルが球形等の湾曲面を有する場合には、各液晶ドロップ32または各液晶マイクロカプセル内では界面付近に配向の乱れた領域32bが生じる。その配向の乱れた領域32bでは、表示面基板20の表面に対して螺旋軸が傾いており、入射光に対して充分な選択反射現象を生じさせることができない。そのため螺旋軸が表示面基板20の表面に対して垂直になり、入射光に対して選択反射現象を起こすプレーナ状態における有効選択反射領域32aが、領域32bが発生しない場合に比べて狭くなるため、選択反射色の反射率の低下を引き起こす。同様に、このような配向の乱れた領域32bは、螺旋軸が表示面基板20の表面に対して平行になるフォーカルコニック状態においても発生し、不要な散乱光の原因となり、散乱光の増加によってコントラストの低下を招く。
一方、本発明の調光層の製造方法によれば、機械的に加圧を行うことなく液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを多面体化することができるので、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが破壊されることを抑制することができるとともに、図5に示すように、液晶ドロップ32または液晶マイクロカプセルは湾曲面を有さないことから、各液晶ドロップ32または各液晶マイクロカプセル内における界面付近に配向の乱れた領域32bが湾曲面を有する場合に比べて少なくなり、プレーナ状態における有効選択反射領域32aが、湾曲面を有する場合に比べて広くなるので、反射率を向上させることができる。また、フォーカルコニック状態においても同様に、不要な散乱光の発生を抑制することができるので、コントラストの向上を図ることができる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
(調光層用塗布液の調整)
ネマチック液晶(RDP−83132、大日本インク社製)82.65%、カイラル剤1(R1011、メルク社製)3.47%、カイラル剤2(R811、メルク社製)13.88%と、を混合して、グリーンの色光を選択反射するコレステリック液晶を調整した。
4.2μm計のセラミック多孔質膜をセットした膜乳化装置(マイクロキット、SPGテクノ社製)を用いて、窒素圧力0.07kgf/cm2の条件下で前記コレステリック液晶を0.25質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液中で乳化した。得られたエマルジョンは、コレステリック液晶ドロップの粒子径平均が14.8μm、粒子径標準偏差が1.72μmで、ほぼ単分散に近い状態であった。
次にエマルジョンを静置してコレステリック液晶ドロップを沈降させ、上澄みを除去して濃縮されたエマルジョンを得た。密度計(DMA35n、日本シイベルヘグナー社製)を用いて濃縮エマルジョン内におけるコレステリック液晶ドロップの体積率を測定したところ、0.535であった。
塗布面積に対する液晶ドロップの被服面積の比率ALを0.95に、また、ウェット塗布厚を90umに設定した。前期コレステリック液晶ドロップの平均粒子径(14.8μm)、表示面基板上へのウェット塗布厚(90μm)を用いて、前記式(1)により調光層用塗布液におけるコレステリック液晶ドロップの体積率(Sr×Lr)を求めたところ、0.10(10vol%)であった。
この値を目安にして、前記濃縮エマルジョン1質量部に対して、酸性法骨ゼラチン(ゼリー強度314g/ゾル粘土32mp、ニッピ社製)の7.7質量%水溶液を4質量部添加することにより、調光層用塗布液内の不揮発分体積率が約0.15、不揮発分内のコレステリック液晶ドロップの体積率が0.70の調光層用塗布液を得た。
(調光層の作製)
<塗布工程>
60℃に加熱してゼラチンをゾル状態にした調光層用塗布液を、表示面基板として、ITO透明電極をスパッタした125μm厚のPET支持基板(ハイビーム、東レ社製)の上に、塗布後のウェット膜厚が90μmになるようにギャップを調整したマイクロメータ付きアプリケータで塗布した。塗布直後の透過顕微鏡像を図6(A)に示す。液晶ドロップは均一に分散された状態になっていた。
<保持工程>
続いて、調光層用塗布液を塗布した表示面基板を50℃のホットプレート上にのせ、ポリスチレンケースでカバーをして8分間保持した。乾燥途中の透過顕微鏡像を図6(B)に示す。コレステリック液晶ドロップがお互いの位置関係を少しずつ変えながら、稠密状態へと次第に変化していった。
<乾燥工程>
調光層塗布液中のコレステリック液晶ドロップが稠密状態になった表示面基板をホットプレートからはずし、23℃付近の室温で調光層塗布液の溶媒を揮発させた。
図6(C)の透過顕微鏡像が示すように、ゾル状態のゼラチンがゲル状態となった後に、更に乾燥が進むと、図6(D)の透過顕微鏡像が示すように、乾燥後の塗布層すなわち調光層は、ゲル乾燥のゼラチン中に多面体化された液晶ドロップが稠密に配列された調光層となった。なお、図6(D)に示すように、乾燥後の調光層では、図6(B)に示される乾燥前の調光層(塗布層)に比べて、液晶ドロップ間のギャップが少ないことから、多面体下への変形度が高いといえる。
一方、対向側の非表示面基板としてITO透明電極をスパッタした125μm厚のPET基板(ハイビーム、東レ社製)を用い、その上にカーボンブラック顔料を分散させたポリビニルアルコール水溶液を2.0μm厚にスピンコート塗布して遮光層を形成した。
さらに、前記遮光層の上に、ウレタン系ラミネート剤(LX719/KY−90、大日本インキ化学社製)を1μm厚にスピンコート塗布して、接着層を形成した。
前記のようにして作製した表示面基板と非表示面基板を、調光層と接着層が向かい合うように重ね合わせて、100℃のラミネータを通して接着し、光変調素子を得た。
得られた光変調素子のプレーナ状態における反射顕微鏡による観察像を図8(A)に示す。図8(A)に示されるように、液晶ドロップが稠密に配列され且つ多面体化されていることが分かる。
(比較例1)
<調光層用塗布液の調整>
調光層塗布液は、実施例1と同様の手法で得た。
<塗布、乾燥工程>
実施例1で示したものと同様の手法で表示面基板上へ調光層用塗布液の塗布を行い、実施例1と同様の手法で表示面基板を50℃のホットプレート上で保持した。その後、この50℃のホットプレート上にのせた状態のまま、調光層塗布液中の溶媒が揮発するまで保持した。保持と乾燥時間は合計で15分であった。
図9の透過顕微鏡像が示すように、比較例1の方法で作製された調光層は、実施例1に比べて、液晶ドロップは稠密に配列されているが球形であることが分かる。
さらに、実施例1と同様に、対向側の非表示面基板にもITO透明電極をスパッタした125μm厚のPET支持基板(ハイビーム、東レ社製)を用い、その上にカーボンブラック顔料を分散させたポリビニルアルコール水溶液を2.0μm厚にスピンコート塗布して遮光層を形成した。
さらに、前記遮光層の上に、ウレタン系ラミネート剤(LX719/KY−90、大日本インキ化学社製)を1μm厚にスピンコート塗布して、接着層を形成した。
前記のようにして作製した表示面基板及び非表示面基板を、調光層と接着層が向かい合うように重ね合わせて、100℃のラミネータを通して接着し、光変調素子を得た。
得られた光変調素子のプレーナ状態における反射顕微鏡による観察像を図8(B)に示す。実施例1に比べて、比較例1の方法で作製した光変調素子ではコレステリック液晶ドロップの液滴間に空隙が生じていることが分かる。
(表示特性の測定)
実施例1及び比較例1の光変調素子の、プレーナ状態における表示特性を、積分球型分光測色計(CM2022型、ミノルタ社製)を用いて測定した。図7(A)に実施例1の光変調素子の反射スペクトルの測定結果を示し、図7(B)に比較例1の光変調素子の反射スペクトルの測定結果を示した。
また、表1に反射スペクトルから求めたプレーナ状態のピーク波長における反射率(Rpeak)を示す。
表1から明らかなように、実施例1は、比較例1に対して、プレーナによる明状態での反射率が高い特性を有している。一方、ゲル化せずにゾル状態のまま乾燥することによって調光層を形成した比較例1は、プレーナ状態での反射率が実施例1に比べて低かった。
調光層に液晶ドロップを含む本発明の表示素子の一例を示す模式図である。 調光層に液晶マイクロカプセルを含む本発明の表示素子の一例を示す模式図である。 光書込みを行う本発明の表示素子の一例を示す模式図である。 本発明の光変調素子の調光層を製造する各工程を示す模式図であり、図4(A)は塗布工程を示し、図4(B)は保持工程を示し、図4(C)及び(D)は乾燥工程を示す模式図である。 本発明の光変調素子の調光層における液晶ドロップを示す概念図であり、(A)は上方から、(B)は側面から見た図を示す。 本発明の光変調素子の調光層の各作製工程における透過顕微鏡による写真を示し、(A)は、塗布工程後の塗布層の透過顕微鏡による写真を示し、(B)は、保持工程後の塗布層の透過顕微鏡による写真を示し、(C)は、乾燥工程中の透過顕微鏡による写真を示し、(D)は、乾燥後の塗布層、すなわち調光層の透過顕微鏡による写真を示す。 (A)は、実施例1で作製された光変調素子のプレーナ状態における反射スペクトルを示すグラフであり、(B)は、比較例1で作製された光変調素子のプレーナ状態における反射スペクトルを示すグラフである。 (A)は、実施例1で作製された光変調素子のプレーナ状態における反射顕微鏡による観察像であり、(B)は、比較例1で作製された光変調素子のプレーナ状態における反射顕微鏡による観察像である。 比較例1で作製された調光層の透過顕微鏡写真を示す。 従来の光変調素子の調光層における液晶ドロップを示す概念図であり、(A)は上方から、(B)は側面から見た図を示す。 コレステリック液晶の配列状態を示す模式図であり、(A)は、プレーナ状態を示し、(B)は、フォーカルコニック状態を示し、(C)は、ホメオトロピック状態を示す模式図である。 正の誘電異方性をもつコレステリック液晶の電気光学応答を示すグラフである。
符号の説明
10、23、24 光変調素子
11、21 支持基板
12、22 電極
13 非表示面基板
20 表示面基板
30、31 調光層
32 液晶ドロップ
34 ゼラチン
36 液晶マイクロカプセル
37 調光層塗布液
39 塗布層

Claims (2)

  1. 少なくとも一方が透光性を有すると共に間隙をもって対向し、電極を有する一対の基板間に、液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルを含む調光層を有する光変調素子の製造方法であって、前記調光層を設ける工程が、
    前記基板上に、ゼラチン及び溶媒を含む溶液に液晶ドロップまたは液晶マイクロカプセルが分散された調光層用塗布液を塗布する塗布工程と、
    前記塗布された調光層用塗布液によって形成された塗布層を、前記ゼラチンの凝固点より高い温度で且つ前記溶媒の飽和蒸気圧と同一または前記溶媒の飽和蒸気圧に近い雰囲気中に1分間以上保持して、前記塗布層の乾燥を抑制しつつ前記液晶ドロップまたは前記液晶マイクロカプセルを前記基板面に自然沈降または浮揚させる保持工程と、
    前記塗布層中の前記溶媒を、前記ゼラチンの凝固点以下の温度で揮発させて乾燥させる乾燥工程と、
    を有することを特徴とする光変調素子の製造方法。
  2. 少なくとも前記保持工程の一部または全部において、前記調光層に振動を加えることを特徴とする請求項1に記載の光変調素子の製造方法。
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