JP5358790B2 - 色素増感型光電変換素子用光電極及びその製造方法 - Google Patents

色素増感型光電変換素子用光電極及びその製造方法 Download PDF

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本願発明は、色素増感型光電変換素子用光電極及びその製造方法に関するものであり、特に色素を担持する比表面積が大きい多孔質半導体微粒子層を有する光電極、及び該光電極の製造方法に関するものである。併せて、前記光電極を用いた光電変換素子からなる色素増感型太陽電池に関するものである。
色素増感型太陽電池は、シリコンのp−n接合や化合物半導体のヘテロ結合を光電変換層とする従来の固体接合型太陽電池に代わる低コストの太陽電池として注目を集めている。色素増感型太陽電池では、二酸化チタンナノ粒子を代表とする金属酸化物半導体ナノ粒子からなる多孔質半導体微粒子層に色素を担持して光電変換を行っている。したがって、色素増感型太陽電池の光電変換効率には、光電極の性能、とりわけ色素を担持する金属酸化物半導体ナノ粒子からなる多孔質半導体微粒子層の構造及びその組成が重要な役割を持つ。具体的には、多孔質半導体微粒子層の比表面積を大きくすることで増感色素の担持量を増やすことができ、外部から光電変換素子に注入された光を有効に光電変換できるからである。また、電解液層を構成する電解液が多孔質半導体微粒子層の細部にまで拡散でき、増感色素上で発生した正孔を効率よく輸送できるからである。
一方、色素増感型太陽電池やキャパシタのようなエネルギーディバイスを、フィルム電極を用いて薄層化し、デバイス本体の軽量化、フレキシブル化の要請がある。このため、導電性プラスチックフィルムを導電性基板として用いる色素増感型太陽電池(以下、「フィルム型色素増感型太陽電池」という。)が提案されている。ところで、光電極は金属酸化物半導体ナノ粒子を含む分散液を導電性基板上に塗布し、これを加熱処理(乾燥・焼成)することで多孔質膜を導電性基板上に形成し、これに色素を担持することで製作している。しかしながら、フィルム型色素増感型太陽電池では、導電性ガラス基板を用いる色素増感型太陽電池(以下、「ガラス型色素増感型太陽電池」という。)のように加熱温度を450℃以上とすること(以下、「高温製膜処理法」という。)ができないため、加熱温度を160℃以下とする加熱処理(乾燥・焼成)をして多孔質膜を導電性基板上に形成している(以下、「低温製膜処理法」という)。
高温製膜処理法では、金属酸化物半導体ナノ粒子に、加熱処理により気散する有機物(バインダー)を添加した分散液を、スクリーン印刷法、ドロップキャスト法、スピンコート法などによって導電性基板上に塗布し、その後加熱処理(乾燥・焼成)することにより多孔質半導体微粒子層を形成している。有機物(バインダー)の気散により生じた空間が多孔質となるからである。一方、低温製膜処理法では、金属酸化物半導体ナノ粒子を含む分散液は、金属酸化物半導体ナノ粒子と溶媒から構成すること(以下、「バインダーフリー分散液」という。)が必要である。低温製膜処理法では、形成された多孔質半導体微粒子層中に有機物(バインダー)の気散が十分でなく、残存物(不純物)が絶縁性物質として混入して光電変換効率が低下するからである。このため、実質的にバインダーを含まない金属酸化物半導体ナノ粒子分散液により多孔質半導体微粒子層を形成したフィルム型色素増感型太陽電池が提案されている(特許文献1,2)。
バインダーフリー分散液により導電性基板に多孔質半導体微粒子層を形成する方法としてスプレー塗布法が提案されている(特許文献3,4)。特許文献3においては、金属酸化物半導体ナノ粒子のゾルまたはスラリーをスプレー法により塗布して形成し、形成した多孔質半導体微粒子層を有機色素膜形成前に中和処理することが提案されている。ノズルから噴霧された分散液(塗布液)が基板表面上に到達するまでに分散液(塗布液)に含まれる溶媒の一部または大部分が揮発することにより、金属酸化物半導体ナノ粒子の一次粒子から多次粒子への成長が生じ、基板表面上に形成された多孔質半導体微粒子層はスポンジ状の多孔質構造となるからである。特許文献4においては、金属酸化物微粒子(金属酸化物半導体ナノ粒子)と溶媒を必須成分とする金属酸化物分散液を、分散液組成を連続または不連続に変化させつつ、シート状電極上に噴霧して塗布し、乾燥して多孔質膜(多孔質半導体微粒子層)を形成することが提案されている。多孔質膜の層構造を多層構造または傾斜構造とすることで、多孔質膜の比表面積を大きくすることで増感色素の担持量を増やすことができ、外部から光電変換素子に注入された光を有効に光電変換できるからである。また、電解液層を構成する電解液が多孔質膜の細部にまで拡散でき、増感色素上で発生した正孔を効率よく輸送できるからである。
しかしながら、特許文献3では金属酸化物半導体ナノ粒子分散液(同文献において、「酸化チタンゾル液」)調製は、酸化チタン微粒子の前駆体であるチタンアルコキシドの加水分解により行われているが、酸化チタン微粒子の粒径については示されていない。特許文献4では、分散液組成を連続または不連続に変化させるため、塗布工程の制御が煩雑になるという問題がある。
特開2006−76855号公報 特開2006−172722号公報 特開2003−297442号公報 特開2002−324591号公報
本願発明は、このような事情のもとに、比表面積が大きく増感色素の担持量が多く、電解液層を構成する電解液が多孔質半導体微粒子層の細部にまで拡散できる、多孔質構造を有する色素増感型光電変換素子用光電極及びその製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
本願発明の課題は、本願発明を特定する下記の事項およびその好ましい態様により達成できる。
(態様1) 金属酸化物半導体ナノ粒子と溶媒を必須成分とする金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を導電性基板上に噴霧して塗布し、加熱処理して多孔質半導体微粒子層を形成する方法であって、前記金属酸化物半導体ナノ粒子が、一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子と一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の混合物であり、前記溶媒が水と沸点が75℃〜120℃、かつ融点が−80℃以下である炭素数2〜5のアルコールとの混合物であり、前記分散液中の前記一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の固形分濃度が1〜15wt%であり、前記一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の固形分濃度が0.1〜25wt%であり、かつ、分散液中の金属酸化物半導体ナノ粒子全体の固形分濃度が5〜30wt%であることを特徴とする多孔質半導体微粒子層の製造方法である。
(態様2) 前記炭素数2〜5のアルコールが、2−ブタノール、1-プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールのいずれか又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載した色素増感型光電変換素子用光電極の製造方法である。



(態様3) 前記一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子は、ブルッカイト型結晶を含む二酸化チタンナノ粒子を分散した酸性ゾル水溶液として調製されたものであることを特徴とする態様(1)または態様(2)に記載した多孔質半導体微粒子層の製造方法である。
(態様4) 前記一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子は、ルチル/アナターゼ混合型の結晶性の二酸化チタンナノ粒子であることを特徴とする態様(1)または態様(2)に記載した多孔質半導体微粒子層の製造方法である。
(態様5) 導電性基板上に態様(1)乃至態様(4)のいずれかに記載した方法により製造した多孔質半導体微粒子層に増感色素を担持した色素増感型光電変換素子に用いる光電極である。
(態様6) 態様(5)に記載した光電極、電解質層、対向電極をこの順で有する光電変換素子または色素増感型太陽電池である。
本願発明によって、比表面積が大きく増感色素の担持量が多く、電解液層を構成する電解液が多孔質半導体微粒子層の細部にまで拡散できる、多孔質構造を有する色素増感型光電変換素子用光電極及びその製造方法を提供できる。
本願発明の光電極を用いた色素増感型太陽電池の一例の構造を示す断面図である。
以下、本願発明の多孔質半導体微粒子層の製造方法及び本願発明の多孔質半導体微粒子層を用いた光電極並びに当該光電極を用いた色素増感型太陽電池について説明する。
図1に示すように、本願発明の色素増感型太陽電池は、透明プラスチックフィルム基板11上に透明導電層12を積層した透明導電性基板上に、増感色素14を担持した金属酸化物半導体ナノ粒子からなる多孔質半導体微粒子層13を形成した光電極層1、電解液層2及びプラスチック基板31上に透明導電層32を積層した対向電極3で構成されている。本願発明の光電極を構成する金属酸化物半導体ナノ粒子からなる多孔質半導体微粒子層13は、一次粒子の平均粒径が異なる2つの金属酸化物半導体ナノ粒子からなる多次粒子により構成されている。電解液層2は、溶媒中に電解質が溶解している電解液からなる。
[1] 光電極層
(1) プラスチック基板
本願発明に用いるプラスチック基板材料としては、無着色で透明性が高く、耐熱性が高く、耐薬品性ならびにガス遮断性に優れ、かつ低コストの材料が好ましく選ばれる。この観点から、好ましい材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)などが用いられる。これらのなかでも化学的安定性とコストの点で特に好ましいものは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)であり、もっとも好ましいものはポリエチレンナフタレート(PEN)である。
(2) 透明導電層
本願発明に用いる透明導電層としては、金属(例、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン)、炭素、導電性金属酸化物(例、酸化スズ、酸化亜鉛)または複合金属酸化物(例、インジウム‐スズ酸化物、インジウム−亜鉛酸化物)から形成できる。この中で高い光学的透明性をもつ点で導電性金属酸化物が好ましく、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)、酸化亜鉛、インジウム‐亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。最も好ましいものは、耐熱性と化学安定性に優れる、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)やインジウム‐亜鉛酸化物(IZO)である。
透明導電層の表面抵抗値は100Ω/□以下が好ましく、50Ω/□以下がより好ましく、30Ω/□以下がさらに好ましく、10Ω/□以下がさらにまた好ましく、5Ω/□以下が最も好ましい。透明基板上に透明電極層を設けた光電極基板の光透過率(測定波長:500nm)は、60%以上が好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、80%以上が最も好ましい。
低い表面抵抗値を達成するためには、金属を用いることも好ましいが、透明でないという問題は金属メッシュ構造からなる透明導電性層を形成することにより解決できる。その際にはこの導電層には集電のための補助リードをパターニングなどにより配置させることができ、低抵抗の金属材料(例、銅、銀、アルミニウム、白金、金、チタン、ニッケル)によって形成される。補助リードを含めた表面の抵抗値は好ましくは1Ω/□以下に制御することが好ましい。このような補助リードのパターンは透明基板に蒸着、スパッタリングなどにより形成し、さらにその上に酸化スズ、ITO膜、IZO膜などからなる透明導電層を設けることも好ましい。
(3) 金属酸化物半導体ナノ粒子
本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液に含まれる金属酸化物半導体ナノ粒子は、公知の方法を用いて製造することができる。製造方法としては、例えば「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)に記載されているゾル−ゲル法や、金属塩化物を無機酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法や、金属化合物を気相中、高温で熱分解して超微粒子とする気相噴霧熱分解法などにより調製できる。これらの方法によって作る二酸化チタン(TiO2)の超微粒子やナノ粒子については、「微粒子工学体系第2巻(応用技術)」柳田博明監修(2002年)に解説されている。金属酸化物半導体材料としては、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、鉛、アンチモン、ビスマスの酸化物がある。半導体材料としては、n型の無機半導体材料がある。具体的には、TiO2、ZnO、Nb23、SnO2、WO3、Si、CdS、CdSe、V25、ZnS、ZnSe、KTaO3、FeS2、PbSなどが好ましく、TiO2、ZnO、Nb23、SnO2、WO3がより好ましく、二酸化チタン(TiO2)が特に好ましい。
二酸化チタンの製造方法は、四塩化チタンや硫酸チタニルを加水分解する液相法と四塩化チタンと酸素または酸素含有ガスとを混合燃焼する気相法とがある。液相法はアナターゼを主相として得ることができるが、ゾルまたはスラリー状となり、粉末として使用するためには乾燥が必要であるが、乾燥により凝集(二次粒子化)が進むという問題がある。一方、気相法は、溶媒を使用しないため液相法に比べ分散性に優れ、合成時の温度が高く、結晶性に優れるという特徴がある。
ところで、二酸化チタンナノ粒子の結晶形には、アナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型がある。酸化チタンを気相法により製造するとき、最も低温で生成し安定な酸化チタンはアナターゼ型であり、熱処理を加えるに従い、ブルッカイト型、ルチル型へと変換する。結晶構造はX線回折法による回折パターンの測定や透過型電子顕微鏡観察による結晶格子像の検出により判断できる。また、二酸化チタンナノ粒子の平均粒子径は、レーザー光散乱法による光相関法や走査型電子顕微鏡観察法による粒径分布測定から算出できる。
本願発明に用いる一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの結晶性二酸化チタンナノ粒子は、気相法により得られたものであり、ルチル型結晶とアナターゼ型結晶の混合物であり、ルチル化率は40%以下である。ルチル化率が40%を超えると光触媒としての機能が低下し、光起電力が低下するため色素増感型太陽電池として十分な性能を得られないからである。二酸化チタンナノ粒子の形態は、無定形、球形、多面体、繊維状、ナノチューブ状などの種々の形態であってもよいが、多面体またはナノチューブ状の形態が好ましく、多面体の形態がより好ましい。分散安定性の観点から金属酸化物半導体ナノ粒子分散液に含まれる固形分濃度は0.1〜25wt%であり、0.5〜20wt%が好ましく、0.5〜15wt%がより好ましい。
一方、本願発明に用いる一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子は、液相法により得られたブルッカイト型結晶を含む二酸化チタンナノ粒子を分散した酸性ゾル水溶液として調製されている。ブルッカイト型の酸化チタンは、色素との結合性に優れ、ルチル型やアナターゼ型酸化チタンに比べて高い光電変換効率が得られるからである。液相法により製造したブルッカイト型酸化チタン、特に四塩化チタンまたは三塩化チタンの加水分解により製造されたブルッカイト型酸化チタンが好ましい。多孔質半導体微粒子層を形成する金属酸化物半導体ナノ粒子分散液として使用するため分散ゾルの状態で問題がなく、分散状態も安定しており塗膜性に優れるからである。分散性を高めるため水媒体は酸性に調製してあり、pHは1〜6、好ましくは、pHは3〜5である。分散安定性の観点から金属酸化物半導体ナノ粒子分散液に含まれる固形分濃度は1〜15wt%であり、2〜12wt%が好ましく、2〜10wt%がより好ましい。
(4) 金属酸化物半導体ナノ粒子分散液
本願発明は、金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を導電性基板上に噴霧して塗布し、加熱処理して多孔質半導体微粒子層を形成する色素増感型太陽電池用光電極に関するものである。
本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液は、金属酸化物半導体ナノ粒子を水と炭素数5以下のアルコールの混合物からなる溶媒に分散させたものであり、粘性のある乳白色の液体である。ただし、本願発明は金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を導電基板上に噴霧して塗膜を形成するため、ドロップキャスト法に比べて粘性を高める必要はない。このため、分散液の製膜性及びレべリング性を高める目的で添加される樹脂やラテックス等のバインダー材料を含まない分散液組成が可能となっている。これにより、形成された多孔質半導体微粒子層の導電性も高いレベルに保たれる。
本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液に使用する溶媒は、水及び水と相溶性がある炭素数5以下のアルコールを選択することができる。なかでも、沸点が75℃〜120℃、より好ましくは、80℃〜100℃であって、かつ融点が−80℃以下、より好ましくは−100℃以下であるアルコールが特に好ましい。沸点が75℃〜120℃、より好ましくは、80℃〜100℃のアルコールを選択することによって、導電性基板上に塗布した後溶媒の揮散が容易で多孔質半導体微粒子層の形成を容易に行うことができるからである。また、融点が−80℃以下、より好ましくは−100℃以下のアルコールを選択することで分散組成物を噴霧する際に溶媒の揮散による気化熱によって分散溶媒が固化して導電性基板上に形成された多孔質半導体微粒子層の層構造が不均一となることを防ぐことができるからである。
本願発明で好ましいアルコール類の具体例としては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、及びこれらとエタノールの混合物がある。より好ましくは、1−プロパノールまたは1−プロパノールとエタノールの混合物である。前記アルコール類は、本願金属酸化物半導体微粒子分散液の全組成中に5〜90wt%、好ましくは30〜80wt%、より好ましくは40〜70wt%含まれる。
本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液には、前記アルコールに加えて水が分散溶媒として用いられる。これは、金属酸化物半導体ナノ粒子の分散安定性を維持し、分散液の粘度を適性に維持する目的で添加するものである。前記分散液の含水率は15〜35wt%である。
本願発明は、分散液中に一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子と一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の両方が含まれることが特徴である。一次粒子の平均粒径の範囲が重複しない金属酸化物半導体ナノ粒子を単純に混合することで、比表面積が大きく増感色素の担持量が多く、電解液層を構成する電解液が多孔質半導体微粒子層の細部にまで拡散できる、多孔質構造の多孔質半導体微粒子層を容易に製造できる。したがって、特許文献4に提案されているような金属酸化物半導体ナノ粒子と溶媒を必須成分とする金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を、分散液組成を連続または不連続に変化させつつ噴霧する必要はない。また、平均粒径が大きく異なる粒子の混合により、乾燥時の体積収縮歪を緩和できる。さらに、一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の脱水縮合により、乾燥後形成される多孔質半導体微粒子層の構造がしっかりしたものになる。
本願発明の一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子を溶媒に分散させる方法には、ペイントコンディショナー、ホモジナイザー、超音波攪拌装置などが用いられ、自転/公転併用式のミキシングコンディショナーが好適に用いられる。一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子を溶媒に分散させた後、一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子を分散した酸性ゾル水溶液を添加して、金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を調製する。分散安定性と塗膜形成性の観点から分散液に含まれる金属酸化物半導体ナノ粒子全体の固形分濃度は5〜30wt%であり、8〜25wt%が好ましく、8〜20wt%がより好ましい。
本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液の噴霧に用いる噴霧装置は、金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を200μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μ以下の霧状にすることができる装置を用いる。例えば、エアスプレイ装置、インクジェット装置、超音波噴霧装置がある。
ここで、エアスプレイ装置とは、圧縮空気の膨張で生じる気圧差を利用して、液体を一定方向に飛散させる装置をいう。一定幅の塗膜を均一に形成する観点からは、二流体スリットノズルを用いることが好ましい。インクジェット装置とは、噴霧する液体を満たした微細ノズルを体積収縮または昇温することにより液体を微細な粒として放出する装置をいう。超音波噴霧装置とは、液体に超音波を照射することにより、液体を霧状に飛散させる装置をいう。これらの装置は、製造する多孔質構造の多孔質半導体微粒子層の大きさ、言い換えれば、光電極のサイズ、あるいは、分散液の固形分濃度により任意に選択できる。
(5) 多孔質半導体微粒子層
透明導電性基板上に金属酸化物半導体ナノ粒子分散液の噴霧により形成される多孔質半導体微粒子層の厚みは、透過光の吸収損失を考慮して、30μm未満が好ましく、20μ未満がより好ましい。多孔質半導体微粒子層の厚みが、かかる範囲より小さいと均一な厚みの層を形成できず、かかる範囲より大きいと多孔質半導体微粒子層の抵抗が高くなるからである。形成される多孔質半導体微粒子層の空孔率(膜内を空孔が占める体積の割合)は、50〜85%であることが好ましく、65〜85%でることがより好ましい。
加熱処理温度は、導電性基板の耐熱性の範囲内、例えば、透明導電性基板がプラスチック基板である場合は、低温製膜法(例、200℃以下、好ましくは150℃以下)で多孔質半導体微粒子層を形成することができる。
(6) 増感色素
多孔質半導体微粒子層の増感に用いる色素分子としては、電気化学の分野で色素分子を用いる半導体電極の分光増感にこれまで用いられてきた各種の有機系、金属錯体系の増感材料が用いられる。また、光電変換の波長領域をできるだけ広くし、かつ、変換効率を上げるために、二種類以上の色素を混合して用いてもよく、光源の波長域と強度分布に合わせて、混合する色素とその混合割合を選択してもよい。
増感色素は、有機色素(例、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素)および金属錯体色素(例、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体)を含む。金属錯体色素を構成する金属の例は、ルテニウムおよびマグネシウムを含む。そのほか「機能材料」、2003年6月号、第5〜18ページに記載されている合成色素と天然色素や、「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J.Phys.Chem.)」、B.第107巻、第597ページ(2003年)に記載されるクマリンを中心とする有機色素を用いることもできる。
(5) 多孔質半導体微粒子層への色素の吸着
多孔質半導体微粒子層に色素を吸着させる方法としては、色素の溶液中によく乾燥した多孔質半導体微粒子層を有する導電性基板を浸漬する方法、あるいは色素の溶液を多孔質半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。浸漬法の場合は、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7−249790号公報に記載されているように加熱還流して行ってもよい。塗布法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等の塗布方法や、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等の印刷方法が利用できる。
色素溶液に用いる溶媒は色素の溶解性に応じて適宜選択できる。例えばアルコール類(メタノール、エタノール、t‐ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3‐メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセタミド等)、N‐メチルピロリドン、1,3‐ジメチルイミダゾリジノン、3‐メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2‐ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)、これらの混合溶媒等が使用できる。
色素の吸着方法では、色素溶液の粘度、塗布量、透明導電性基板の材質、塗布速度等に応じて適宜選択すればよい。量産化の観点からは、塗布後の色素吸着に要する時間をなるべく短くすることが好ましい。色素の全使用量は、透明導電性基板の単位表面積(1m)当たり0.01〜100mmolとすることが好ましい。色素の吸着量が少なすぎると増感効果が不十分となり、また色素の吸着量が多すぎると多孔質半導体微粒子層に付着していない色素が浮遊し、増感効果を低減させる。色素の吸着量を増大させるために吸着前に多孔質半導体微粒子層を加熱処理するのが好ましい。また、加熱処理の後に多孔質半導体微粒子層表面に水が吸着するのを避けるため、加熱処理後には常温に戻さず多孔質半導体微粒子層の温度が40℃〜80℃で素早く色素を吸着させるのが好ましい。未吸着の色素は、吸着後速やかに洗浄により除去することが好ましい。洗浄は、アセトニトリルやアルコール系溶剤等の有機溶媒を用いて行うのが好ましい。
会合のような色素同士の相互作用を低減する目的で、界面活性剤としての性質を持つ無色の化合物を色素溶液に添加し、多孔質半導体微粒子層に共吸着させてもよい。共吸着させる化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例 コール酸、ケノデオキシコール酸)が挙げられる。また、紫外線吸収剤を併用してもよい。また、余分な色素の除去を促進する目的で、色素を吸着した後にアミン類を用いて多孔質半導体微粒子層の表面を処理してもよい。アミン類としてはピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよく、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
[2] 電解液層
電解液層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電解液からなる層である。光電極層は、その多孔構造中の空孔が電解液により充填されていることが好ましい。具体的に、光電極層が有する空孔が電解液によって充填されている割合は、20体積%以上が好ましく、50体積%以上がさらに好ましい。電解液層の厚さは、例えば、光電極層と対向電極層との間に設けるスペーサーの大きさによって調整できる。電解液が光電極の外側で単独で存在する部分の厚さは、1μm〜50μmが好ましく、1μm〜30μmがより好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、1μm〜15μmが最も好ましい。
電解液層の光透過率は、測定波長400nmにおいて、電解液層の厚さが30μmである場合に換算して(30μmの光路長において)70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが最も好ましい。光透過率は、350nm〜900nmの波長領域全体において、上記の透過率を有することが好ましい。本願発明の電解液層を形成するには、キャスト法、塗布法、浸漬法等により光電極層上に電解液を塗布する方法や、光電極と対向電極を有するセルを作製しその隙間に電解液を注入する方法などが挙げられる。
塗布法によって電解液層を形成する場合、溶融塩等を含む電解液に塗布性改良剤(レベリング剤等)等の添加剤を添加して、これをスピンコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法、多層同時塗布方法等の方法により塗布し、その後必要に応じて加熱すればよい。加熱する場合の加熱温度は色素の耐熱温度等により適当に選択すればよいが、通常10℃〜150℃であるのが好ましく、10℃〜100℃であるのが更に好ましい。加熱時間は加熱温度等にもよるが、5分〜72時間程度が好ましい。
好ましい態様によれば、光電極層中の空隙を完全に埋める量より多い電解質液を塗布するので、図1に示すように得られる電解液層は光電極層の透明導電層との境界から対向電極層の透明導電層との境界までの間に存在する。ここで、電解液層の厚さ(半導体粒子層を含まない)は0.001μm〜200μmであるのが好ましく、0.1μm〜100μmであるのが更に好ましく、0.1〜50μmであるのが特に好ましい。なお、電解液層の厚さ(実質的に電解液を含む層の厚さ)は0.1μm〜300μmであるのが好ましく、1μm〜130μmであるのが更に好ましく、2μm〜75μmであるのが特に好ましい。
本願発明の電解液は、電解質と溶媒を基本としており、その電解液構成分について下記に説明する。電解質は、ヨウ素(I2 )と金属ヨウ化物若しくは有機ヨウ化物との組み合わせ、臭素(Br2 )と金属臭化物若しくは有機臭化物との組み合わせのほか、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン/キノンなどを挙げることができる。上記金属化合物のカチオンとしてはLi、Na、K、Mg、Ca、Csなど、また上記有機化合物のカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウム類、ピリジニウム類、イミダゾリウム類などの4級アンモニウム化合物が好ましいが、これらに限定されるものではない。また、これらを二種類以上混合して用いてもよい。この中でも、I2 とLiI、NaIやイミダゾリウムヨーダイドなどの4級アンモニウム化合物を組み合わせた電解質が好ましい。電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05〜10Mが好ましく、さらに好ましくは0.2〜3Mである。I2 やBr2 の濃度は0.0005〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.5Mである。また、4−tert−ブチルピリジンやベンズイミダゾリウム類などの各種添加剤を加えることも好ましい。
上記電解質組成物を構成する溶媒としては、水、アルコール類、エーテル類、ジアルキルグリコールエーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを二種類以上混合して用いることもできる。さらに、溶媒としてテトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム系4級アンモニウム塩の室温イオン性液体を用いることも可能である。
さらに上記電解質組成物へゲル化剤、ポリマー、架橋モノマーなどを溶解させ、ゲル状電解質として使用してもよい。この時電解質組成物はゲル状電解質の50〜99wt%が好ましく、80〜97wt%がより好ましい。また、上記電解質と可塑剤とをポリマーに溶解させ、可塑剤を揮発除去してもよい。
本発明に用いる電解液は、特に、ヨウ素を実質的に含まない電解液が好ましく。具体的には、無機塩とイミダゾリウム塩(ジメチルイミダゾリウム、メチルプロピルイミダゾリウム、メチルブチルイミダゾリウム、メチルヘキシルイミダゾリウムとその塩など)との混合物を、グリコールエーテルと5員環環状エーテルの一方または両方を溶媒として溶解させた電解液である。以下、この場合の電解液構成成分について説明する。
溶媒は沸点が200℃以上であることが好ましい。さらに、非プロトン性極性溶媒であることも好ましく、グリコールエーテルが好ましく、ジアルキルグリコールエーテルがより好ましい。このような溶媒の具体例としては、グリコール類、モノアルキルグリコールエーテル類、ジアルキルグリコールエーテル類がある。これらのグリコールエーテル類は、2種以上併用してもよい。このような溶媒の具体例としては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトンを挙げることが出来る。
本願発明に用いる得る無機塩は、アルカリ金属ハロゲン化物(例、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウムなど)、アルカリ土類金属ハロゲン化物(例、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなど)、アンモニウムハロゲン化物(例、ヨウ化アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウムなど)を用いることが好ましい。ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素を用いることが好ましく、臭素、ヨウ素が特に好ましく、ヨウ素が最も好ましい。ハロゲン化物の添加濃度は、0.01〜3.0mol/Lが好ましく、0.05〜2.0mol/Lがさらに好ましい。
電解液中のヨウ素を除去するため、チオサリチル酸、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の無機化合物、アスコルビン酸、ハイドロキノン、フェニドン、硫酸パラメチルアミノフェノール等を更に添加してもよい。電解液は、さらに他の成分を含むことができる。他の成分の例には、ベンゾイミダゾール化合物のほか、(イソ)チオシアン酸イオン、グアニジウムイオンが挙げることができる。ベンゾイミダゾール化合物の具体例としては、N−メチルベンゾイミダゾール、1,2−ジメチルベンゾイミダゾール、N−ブチルベンゾイミダゾール、N−ベンジルベンゾイミダゾール、N−(2−エトキシエチル)ベンゾイミダゾール、などがある。
電解液中にチオシアン酸イオン(S-−C≡N)またはイソチオシアン酸イオン(N-=C=S)を添加する場合、電解液中のチオシアン酸イオンおよびイソチオシアン酸イオンの合計の濃度は0.01M〜1Mが好ましく、0.02M〜0.5Mがさらに好ましく、0.05M〜0.2Mが最も好ましい。電解液の調製において、イソチオシアン酸イオンは塩として添加することが好ましい。塩の対イオンは、後述するグアニジウムイオンが好ましい。電解液中には必要に応じて、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を添加してもよい。
[3] 対向電極
対向電極は光電変換素子を光化学電池としたときに正極として作用するものである。対向電極は、透明基板および透明導電層からなることが好ましい。透明基板および透明導電層の詳細は、光電極層の透明基板および透明導電層と同様である。対向電極の触媒層は、触媒作用を有する貴金属粒子が好ましい。対向電極の導電性膜上に触媒層を付与することで好ましい触媒層付きの対向電極が作製できる。貴金属粒子としては、触媒作用のあるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは比較的高い触媒作用を有する金属白金、金属パラジウム及び金属ルテニウムの少なくとも一種類から構成することが好ましい。触媒層の付与方法は特に限定されないが、例えばこれらの金属を蒸着法あるいはスパッタ法で付与してもよく、また該金属微粒子を溶媒に分散させて得られる分散液を、塗布あるいは噴霧などで対向電極も導電性層の上に設置してもよい。分散法で設置する場合は、その分散液に更にバインダーを含有させてもよく、導電性高分子が好ましく用いられる。該導電性高分子としては、導電性を有し、前記貴金属粒子を分散させることができるものであれば特に限定されないが、導電性の高い方が好ましい。
このような高導電性高分子としては、例えばPoly(thiophene−2,5−diyl)、Poly(3−butylthiophene−2,5−diyl),
Poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl),poly(2,3−dihydrothieno−[3,4−b]−1,4−dioxin)等のポリチオフェン、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、Poly(p−xylenetetrahydrothiophenium
choride),Poly[(2−methoxy−5−(2’ethylhexyloxy))−1,4−phenylenvinylene],Pory[(2−methoxy−5−(3’,7’−dimethyloctyloxy)−1,4−phenylenevinylene)],Poly[2−2’,5’−bis(2’’−ethylhexyloxy)phenyl]−1,4−phenylenevinylene]等のポリフェニレンビニレン類等が使用出来る。これらの中でも特に好ましい導電性高分子は、Poly(2,3−dihydrothieno−[3,4−b]−1,4−dioxin)/Poly(styrenesulfonate)
(PEDOT/PSS)である。
また、触媒層は、導電層への密着性を向上させる観点から、他のバインダーを含むことができる。前記バインダーは有機樹脂であっても良いし、無機物であっても良い。有機樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロースおよび誘導体、ブチラール樹脂、アルキド樹脂、塩ビ樹脂等の熱硬化性あるいは熱可塑性有機高分子化合物、紫外線(UV)硬化性有機高分子化合物、電子線(EB)硬化性有機高分子化合物、ポリシロキサン等の無機高分子化合物等を、単独もしくは複合して用いることができる。
前記無機物としては、シリカゾル、MO・nSiO(M:Li、Na、K)等のケイ酸塩、リン酸塩、珪素酸化物やジルコニウム酸化物やチタン酸化物やアルミニウム酸化物粒子コロイド、珪素やジルコニウムやチタンやアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物、溶融フリット、水ガラス等を単独または複合して用いることが出来る。
また、上述したバインダーの他に、触媒層の膜付着強度、導電性などの一層の向上を目的として、必要に応じ、例えばケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、チタン、イットリウム、亜鉛、マグネシウム、インジウム、錫、アンチモン、ガリウム、ルテニウムなどの酸化物または複合酸化物の粒子、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、及び錫ドープ酸化インジウム等の導電性酸化物粒子を含むこともできる。なお、触媒層の厚さは好ましくは100nm〜1μm、より好ましくは50nm〜5μmであり、特に好ましくは30nm〜5μmである。
[4] その他の層
電極として作用する光電極層及び対向電極層の一方又は両方に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法や逐次塗布法が利用できる。本願発明のフィルム型光電池には、上記の基本的層構成に加えて所望に応じさらに各種の層を設けることができる。例えば導電性プラスチック支持体と多孔質半導体層の間に緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として設けることができる。下塗り層として好ましいのは金属酸化物であり、たとえばTiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5などである。下塗り層は、例えばElectrochim.Acta 40、643‐652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス法の他、スパッタ法などにより塗設することができる。下塗り層の好ましい膜厚は5〜100nmである。
また、光電極として作用する多孔質光電極と対向電極の一方又は両方の外側表面、導電層と基板の間又は基板の中間に、保護層、反射防止層、ガスバリアー層などの機能性層を設けてもよい。これらの機能性層は、その材質に応じて塗布法、蒸着法、貼り付け法などによって形成することができる。
本願発明のフィルム型光電池の全体の厚さは、機械的フレキシブル性と性能安定性を保証する目的から、150μm〜500μm、好ましくは250μm〜450μmが好ましい。本願発明の多層構成のフィルム型光電池には所望に応じ、短絡防止のためのセパレータを含ませることも推奨される。セパレータを形成する材料は電気的に絶縁性の材料であり、その形体はフィルム形体、粒子形体、電解質層と一体化した形体のいずれであってもよいが、フィルム形体のセパレータを用いることが好ましい。
フィルム形体で用いる場合、フィルムは電解液を透過する多孔質の膜、例えば樹脂フィルム、不織布、紙などの有機材料が用いられる。また、このような多孔質フィルムは表面を親水化処理してできる親水性のフィルムを用いることもできる。このフィルムの厚みは80μm以下であることが必要であり、その空孔率が50%〜85%のものを用いることが必要である。
粒子形体で用いる場合は、粒子としては各種の無機材料、有機材料を用いることができる。無機材料としては、シリカ、アルミナ、フッ素系樹脂など、有機材料としてはナイロン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミドなどのビーズが好ましく、更にはビーズがその成分として架橋基を有する成分が含有されていることが好ましく、電解液による膨潤が防止できる。これらの粒子の平均粒径は、10μm〜50μmが好ましく15μm〜30μmがさらに好ましい。セパレータが電解質と一体化する場合は、例えば、ポリマーなどによってゲル化した電解液、電解液中の化合物の架橋反応によって電解液を架橋して粘度を高めた電解液などが用いられる。これらのいわゆる擬固体化された電解液も広義のセパレータに含まれる。
[5] モジュール
本発明の色素増感型光電変換素子は、更に色素増感太陽電池に組み上げるためには、モジュール化する必要があり、以下に簡単に記述する。一般的には下記が本構成の代表となる。
(1) 集電線
光電極の透明導電膜に集電線を配備し、区分された光電極透明導電膜上に増感色素を吸着した光電極基板と、対向極の導電膜からなる集電線を配備した対向電極とを、集電線上の透明導電膜上に設けられたシール部により接着させてセル部を設け、そのセル部に電解質層を封入したプラスチック基板からなる色素増感太陽電池モジュールが好ましい。
光電極および対向電極の集電線は、銀、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロムのうちから選ばれた少なくとも1つ以上の金属あるいはこれらの合金からなることが好ましい。集電線が透明基板上に格子状に形成され形状でも好ましい。集電線の形成法としては、スパッタ法、蒸着法、メッキ法あるいはスクリーン印刷法などが用いられる。
(2) モジュール化
また、集電線で区分された透明導電膜上に半導体微粒子膜を形成しその上に色素を吸着させて光電極を作製する工程と、基板上に導電膜を形成し対向電極を作製する工程と、集電線上の透明導電膜上にシール部を形成し光電極と対向電極を接着してセル部を形成する工程と、そのセル部に電解質を封入する工程からなる色素増感太陽電池モジュールの作製することが好ましい。なおセル部に電解質を封入する工程を予め実施し、しかる後に集電線上の透明導電膜上にシール部を形成し光電極と対向電極を接着してセル部を形成する工程を実施してもよい。集電線で集められた発電電力は、リード線に接合して所望とする電気機器類に接続して、発電源として利用するものである。この時、各単位セルのみの利用のみでもよく、2個以上のセルをリード線で結合してモジュール化することが更に好ましい。その際に、各セルを直列、並列でも良く、更には直列と並列を組み合わせてもよい。
(3) 外装、バリアー包装体
さらに、本発明では、その基板が水蒸気やガスに対してその透過性を低減するように設計されているが、過酷な環境条件により出力の劣化が見られる可能性があり、特に高温度で高湿度での環境条件で耐久性付与が重要である。これらの改良方法としては、基板にガスや水蒸気に対するバリアー特性を有する基板にするか、あるいはバリアー性のある包装体で、本発明の色素増感型光電変換素子を包み込むことで達成できる。以下に、本発明で好ましく用いられるバリアフィルム、特に水蒸気バリアー性について以下に記述する。
前述したように、発明の色素増感型光電変換素子は、基板の外部にガスや水蒸気に対するバリアー性を有する層を有することも好ましい。さらに、水蒸気バリアー性のある包装材料で包装あるいは包み込まれていても好ましい。その際に、本発明の色素増感型光電変換素子とハイバリア包装材料に間に空間があってもよく、また接着剤で色素増感型光電変換素子を接着させてもよい。更には、水蒸気やガスを通しにくい液体や固体(例えば、液状またはゲル状のパラフィン、シリコン、リン酸エステル、脂肪族エステルなど)を用いて、色素増感型光電変換素子を包装材料に包装してもよい。
本願発明で好ましく用いられるバリアー性のある基板あるいは包装材料の好ましい水蒸気透過度は、40℃、相対湿度90%(90%RH)の環境下で0.1g/m/日以下であり、より好ましくは0.01g/m/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m/日以下である。また、環境温度が60℃、90%RHでのより過酷な場合でも、バリアー性のある基板あるいは包装材料の水蒸気透過度は、より好ましくは0.01g/m/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m/日以下である。またバリアー性のある基板あるいは包装材料の酸素透過率は25℃、0%RHの環境下において、好ましくは約0.001g/m/日以下であり、より好ましくは0.00001g/m/日以下が好ましい。
これらの本発明の色素増感型太陽電池用バリアー性のある基板あるいは包装材料に、水蒸気やガスに対するバイア性付与は、特に限定されないが、太陽電池に必要な光量を妨げないことが必要であるために透過性のあるバリアー性のある基板あるいは包装材料であり、その透過率は好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。上記の特性を有するバリアー性のある基板あるいは包装材料は、その構成や材料において特に限定されることはなく、該特性を有するものであれば特に限定されない。
本願発明の好ましいバリアフィルムのある基板あるいは包装材料は、プラスチック支持体上に水蒸気やガスの透過性が低いバリアー層を設置したフィルムであることが好ましい。ガスバリアフィルムの例としては、酸化ケイ素や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特公昭53−12953、特開昭58−217344)、有機無機ハイブリッドコーティング層を有するもの(特開2000−323273、特開2004−25732)、無機層状化合物を有するもの(特開2001−205743)、無機材料を積層したもの(特開2003−206361、特開2006−263989)、有機層と無機層を交互に積層したもの(特開2007−30387、米国特許6413645、Affinitoら著
Thin Solid Films 1996年 290−291頁)、有機層と無機層を連続的に積層したもの(米国特許2004−46497)などが挙げられる。
次に本願発明を実施するための態様を実施例として以下に示す。また、評価結果一覧を表1に示す。
(1) 金属酸化物半導体ナノ粒子分散液(以下「ペースト」という。)の調製
アナターゼ型結晶を含む二酸化チタンナノ粒子(平均粒径60nm)〔昭和電工製、商品名スーパータイタニア〕を10g、そしてブルッカイト型結晶の粒子を含む二酸化チタンナノ粒子(平均粒径15nm)が分散された酸性のゾル水溶液(濃度20質量%)24gを、エタノール66gに混合した。この混合物を自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使って均一に攪拌混合することによって、白色の粘性液体組成物(質量100g)を調製した。このペーストは二酸化チタンと溶媒のみからなり、バインダーを含んでいない粘性のバインダフリーペーストである(実施例1−1)。次に同様の調整法で表1の実施例1−2〜4−6のペーストを作製した。
比較例として、前記と同様な調整法で比較例1−1〜3−4のペーストを同時に作製した
(2) ペーストを用いた色素増感太陽電池の作製
(2−1) プラスチックフィルム製透明導電性基板の作製
透明導電性プラスチックフィルムとして、ITOを導電膜として担持したフィルム厚み200μm、表面抵抗15Ω/□のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。この導電性フィルムの表面抵抗を下げるために、銀分散ペーストをスクリーン印刷する方法で、ITO膜上に線幅100μm、厚さ20μmの銀の集電用補助リード線を10mmの間隙で平行線状にパターニングした。これらの銀パターンの上に、ポリエステル系樹脂を保護膜として幅250μmで塗布して銀線を完全に保護した。得られたパターン入り導電性ITO−PETフィルムの実用シート抵抗は3Ω/□となった。
このITO−PETフィルムのITO面に、表1の実施例、比較例の二酸化チタン分散ペーストを、塗布膜厚が約5ミクロンになるようにDEVILVIS社製エアースプレイ・モデルJJを用いて、エアー圧0.8MPa、距離25cmの条件でスプレイ塗布し、室温で乾燥後、さらに150℃で10分間乾燥を行って多孔性の酸化チタン粒子層を担持したフィルム電極を作製した。
(2-2) 色素増感太陽電池の作製
Ruビピリジル錯体色素としてビスイソシアネートビスビピリジルRu錯体のテトラブチルアンモニウム塩(N719)を、アセトニトリル:tert‐ブタノール(1:1)の混合溶媒に濃度3×10-4モル/リットルに溶解した色素溶液に上記の多孔性半導体フィルム電極基板を浸漬して、撹拌下40℃で60分放置して、色素吸着を完了し、色素増感酸化チタンITO−PETフィルム電極を作製した。
対向電極としてITOを導電膜として担持した厚み400μm、表面抵抗15Ω/□のポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムのITO表面に、厚さ100nmの白金膜をスパッタリング法で被覆したシート抵抗0.8Ω/□の導電性フィルムを用いた。
色素増感ITO−PETフィルム電極の半導体層をフィルムから掻き落として、受光面積40cm2(5cm×8cm)の受光層を形成した。この電極に対して、上記の対極の白金蒸着ITO−PETフィルムを重ね合わせ、その間隙に毛管効果によってγ−ブチロラクトン、ヨウ化ナトリウム、ブチルメチルイミダゾリウムヨージド、N−メチルベンゾイミダゾールから成る非水有機電解液を注入した。このように作製したサンドイッチ型のフィルム電池のエッジ部にエポキシ系の熱効果型シール材を注入し、110℃で20分間硬化処理を行った。このようにして組み立てた名刺サイズのフィルム型光電池は厚さが約600μm、重さが3.6gとなった。
(3) フィルム型太陽電池の光電変換特性の評価
500Wのキセノンランプを装着した太陽光シミュレータ用を用いて、上記のフィルム型光電池に対し、入射光強度が100mW/cm 2 のAM1.5模擬太陽光を、色素増感半導体フィルム電極側から照射した。電池は恒温装置のステージ上に密着して固定し、照射中の素子の温度を40℃に制御した。電流電圧測定装置を用いて、素子に印加するDC電圧を10mV/秒の定速でスキャンし、素子の出力する光電流を計測することにより、光電流−電圧特性を測定した。これにより求められた上記の各種素子のエネルギー変換効率(η)を、フィルム電極の塗工に用いたペーストの組成とともに、表1に示す。
(4) ペーストの耐剥離性評価
上記のITO−PETフィルムのITO面に表1の実施例、比較例の二酸化チタン分散ペーストを塗布膜厚が約5ミクロンになるようにエアスプレイ塗布し、150℃で5分間乾燥させて得られた乾燥膜を、フィルムを曲率1.0cm -1 まで機械的に10回曲げる疲労試験を行い、多孔性半導体層の剥離の状態を目視によって判定した。これらの評価の結果を、AA:極めて良い、A:良い、B:悪いが許容内、C:悪い、の四段階で判定し、結果を表1に示した。
表1の結果から、多孔質半導体層形成用ペーストとしての実用性について以下のことが明らかである。
1.本発明の範囲以外の金属酸化物半導体ナノ粒子サイズを用いると、耐剥離性と光電変換率が共に悪化する(実施例1−1〜1−8と比較例1−1〜1−5の比較)
2.本発明の総固形分濃度より低いと光電変換率が非常に悪化し、高いと光電変換率、耐剥離性が共に非常に悪化する(実施例2−1〜2−2と比較例2−1〜2−2の比較)
3.金属酸化物半導体ナノ粒子のいずれか一方の固形分濃度が本発明の範囲より高すぎても低すぎても、耐剥離性と光電変換率が共に悪化する(実施例3−1〜3−4と比較例3−1〜3−4の比較)
4.本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液の溶媒として使用する炭素数5以下のアルコールとしては、沸点が75℃〜120℃、かつ融点が−80℃以下のアルコールの場合が耐剥離性と光電変換率に優れ、1−プロパノール(沸点:97.2℃、融点:−126.5℃)が耐剥離性と光電変換率共に特に優れる(実施例4−3〜4−6)。
本願発明はサイズ異なる2種類の金属酸化物半導体ナノ粒子を併用し、両者のサイズと固形分濃度が本発明の範囲であるとき、さらには、アルコール溶媒の沸点と融点が本発明の範囲でるときのみ、物理特性である耐剥離性と光電変換率が共に良好な色素増感太陽電池ができることが特徴であり、非常に限られた条件でのみ達成できることが分かる。

多孔質構造を有する色素増感型太陽電池として、電気エネルギー供給に広く利用することができる。
1 光電極層
11 透明プラスチック基板
12 透明導電層
13 多孔質半導体微粒子層
14 増感色素
2 電解液層
3 対向電極
31 透明プラスチック基板
32 透明導電層
41 光電極層側の入射光
42 対向電極側の入射光
5 電流



Claims (6)

  1. 金属酸化物半導体ナノ粒子と溶媒を必須成分とする金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を導電性基板上に噴霧して塗布し、加熱処理して多孔質半導体微粒子層を形成する方法であって、前記金属酸化物半導体ナノ粒子が、一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子と一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の混合物であり、前記溶媒が水と沸点が75℃〜120℃、かつ融点が−80℃以下である炭素数2〜5のアルコールとの混合物であり、前記分散液中の前記一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の固形分濃度が1〜15wt%であり、前記一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の固形分濃度が0.1〜25wt%であり、かつ、分散液中の金属酸化物半導体ナノ粒子全体の固形分濃度が5〜30wt%であることを特徴とする多孔質半導体微粒子層の製造方法。
  2. 前記炭素数2〜5のアルコールが、2−ブタノール、1-プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールのいずれか又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載した色素増感型光電変換素子用光電極の製造方法。
  3. 前記一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子は、ブルッカイト型結晶を含む二酸化チタンナノ粒子を分散した酸性ゾル水溶液として調製されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した多孔質半導体微粒子層の製造方法。
  4. 前記一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子は、ルチル/アナターゼ混合型の結晶性の二酸化チタンナノ粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した多孔質半導体微粒子層の製造方法。
  5. 導電性基板上に請求項1乃至請求項4のいずれかに記載した方法により製造した多孔質半導体微粒子層に増感色素を担持した色素増感型光電変換素子に用いる光電極。
  6. 請求項5に記載した光電極、電解質層、対向電極をこの順で有する光電変換素子または色素増感型太陽電池。

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