JP5358790B2 - 色素増感型光電変換素子用光電極及びその製造方法 - Google Patents
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Description
図1に示すように、本願発明の色素増感型太陽電池は、透明プラスチックフィルム基板11上に透明導電層12を積層した透明導電性基板上に、増感色素14を担持した金属酸化物半導体ナノ粒子からなる多孔質半導体微粒子層13を形成した光電極層1、電解液層2及びプラスチック基板31上に透明導電層32を積層した対向電極3で構成されている。本願発明の光電極を構成する金属酸化物半導体ナノ粒子からなる多孔質半導体微粒子層13は、一次粒子の平均粒径が異なる2つの金属酸化物半導体ナノ粒子からなる多次粒子により構成されている。電解液層2は、溶媒中に電解質が溶解している電解液からなる。
(1) プラスチック基板
本願発明に用いるプラスチック基板材料としては、無着色で透明性が高く、耐熱性が高く、耐薬品性ならびにガス遮断性に優れ、かつ低コストの材料が好ましく選ばれる。この観点から、好ましい材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)などが用いられる。これらのなかでも化学的安定性とコストの点で特に好ましいものは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)であり、もっとも好ましいものはポリエチレンナフタレート(PEN)である。
本願発明に用いる透明導電層としては、金属(例、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン)、炭素、導電性金属酸化物(例、酸化スズ、酸化亜鉛)または複合金属酸化物(例、インジウム‐スズ酸化物、インジウム−亜鉛酸化物)から形成できる。この中で高い光学的透明性をもつ点で導電性金属酸化物が好ましく、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)、酸化亜鉛、インジウム‐亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。最も好ましいものは、耐熱性と化学安定性に優れる、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)やインジウム‐亜鉛酸化物(IZO)である。
透明導電層の表面抵抗値は100Ω/□以下が好ましく、50Ω/□以下がより好ましく、30Ω/□以下がさらに好ましく、10Ω/□以下がさらにまた好ましく、5Ω/□以下が最も好ましい。透明基板上に透明電極層を設けた光電極基板の光透過率(測定波長:500nm)は、60%以上が好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、80%以上が最も好ましい。
本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液に含まれる金属酸化物半導体ナノ粒子は、公知の方法を用いて製造することができる。製造方法としては、例えば「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)に記載されているゾル−ゲル法や、金属塩化物を無機酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法や、金属化合物を気相中、高温で熱分解して超微粒子とする気相噴霧熱分解法などにより調製できる。これらの方法によって作る二酸化チタン(TiO2)の超微粒子やナノ粒子については、「微粒子工学体系第2巻(応用技術)」柳田博明監修(2002年)に解説されている。金属酸化物半導体材料としては、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、鉛、アンチモン、ビスマスの酸化物がある。半導体材料としては、n型の無機半導体材料がある。具体的には、TiO2、ZnO、Nb2O3、SnO2、WO3、Si、CdS、CdSe、V2O5、ZnS、ZnSe、KTaO3、FeS2、PbSなどが好ましく、TiO2、ZnO、Nb2O3、SnO2、WO3がより好ましく、二酸化チタン(TiO2)が特に好ましい。
ところで、二酸化チタンナノ粒子の結晶形には、アナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型がある。酸化チタンを気相法により製造するとき、最も低温で生成し安定な酸化チタンはアナターゼ型であり、熱処理を加えるに従い、ブルッカイト型、ルチル型へと変換する。結晶構造はX線回折法による回折パターンの測定や透過型電子顕微鏡観察による結晶格子像の検出により判断できる。また、二酸化チタンナノ粒子の平均粒子径は、レーザー光散乱法による光相関法や走査型電子顕微鏡観察法による粒径分布測定から算出できる。
本願発明は、金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を導電性基板上に噴霧して塗布し、加熱処理して多孔質半導体微粒子層を形成する色素増感型太陽電池用光電極に関するものである。
本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液は、金属酸化物半導体ナノ粒子を水と炭素数5以下のアルコールの混合物からなる溶媒に分散させたものであり、粘性のある乳白色の液体である。ただし、本願発明は金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を導電基板上に噴霧して塗膜を形成するため、ドロップキャスト法に比べて粘性を高める必要はない。このため、分散液の製膜性及びレべリング性を高める目的で添加される樹脂やラテックス等のバインダー材料を含まない分散液組成が可能となっている。これにより、形成された多孔質半導体微粒子層の導電性も高いレベルに保たれる。
本願発明で好ましいアルコール類の具体例としては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、及びこれらとエタノールの混合物がある。より好ましくは、1−プロパノールまたは1−プロパノールとエタノールの混合物である。前記アルコール類は、本願金属酸化物半導体微粒子分散液の全組成中に5〜90wt%、好ましくは30〜80wt%、より好ましくは40〜70wt%含まれる。
本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液には、前記アルコールに加えて水が分散溶媒として用いられる。これは、金属酸化物半導体ナノ粒子の分散安定性を維持し、分散液の粘度を適性に維持する目的で添加するものである。前記分散液の含水率は15〜35wt%である。
本願発明の一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子を溶媒に分散させる方法には、ペイントコンディショナー、ホモジナイザー、超音波攪拌装置などが用いられ、自転/公転併用式のミキシングコンディショナーが好適に用いられる。一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子を溶媒に分散させた後、一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子を分散した酸性ゾル水溶液を添加して、金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を調製する。分散安定性と塗膜形成性の観点から分散液に含まれる金属酸化物半導体ナノ粒子全体の固形分濃度は5〜30wt%であり、8〜25wt%が好ましく、8〜20wt%がより好ましい。
ここで、エアスプレイ装置とは、圧縮空気の膨張で生じる気圧差を利用して、液体を一定方向に飛散させる装置をいう。一定幅の塗膜を均一に形成する観点からは、二流体スリットノズルを用いることが好ましい。インクジェット装置とは、噴霧する液体を満たした微細ノズルを体積収縮または昇温することにより液体を微細な粒として放出する装置をいう。超音波噴霧装置とは、液体に超音波を照射することにより、液体を霧状に飛散させる装置をいう。これらの装置は、製造する多孔質構造の多孔質半導体微粒子層の大きさ、言い換えれば、光電極のサイズ、あるいは、分散液の固形分濃度により任意に選択できる。
透明導電性基板上に金属酸化物半導体ナノ粒子分散液の噴霧により形成される多孔質半導体微粒子層の厚みは、透過光の吸収損失を考慮して、30μm未満が好ましく、20μ未満がより好ましい。多孔質半導体微粒子層の厚みが、かかる範囲より小さいと均一な厚みの層を形成できず、かかる範囲より大きいと多孔質半導体微粒子層の抵抗が高くなるからである。形成される多孔質半導体微粒子層の空孔率(膜内を空孔が占める体積の割合)は、50〜85%であることが好ましく、65〜85%でることがより好ましい。
加熱処理温度は、導電性基板の耐熱性の範囲内、例えば、透明導電性基板がプラスチック基板である場合は、低温製膜法(例、200℃以下、好ましくは150℃以下)で多孔質半導体微粒子層を形成することができる。
多孔質半導体微粒子層の増感に用いる色素分子としては、電気化学の分野で色素分子を用いる半導体電極の分光増感にこれまで用いられてきた各種の有機系、金属錯体系の増感材料が用いられる。また、光電変換の波長領域をできるだけ広くし、かつ、変換効率を上げるために、二種類以上の色素を混合して用いてもよく、光源の波長域と強度分布に合わせて、混合する色素とその混合割合を選択してもよい。
増感色素は、有機色素(例、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素)および金属錯体色素(例、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体)を含む。金属錯体色素を構成する金属の例は、ルテニウムおよびマグネシウムを含む。そのほか「機能材料」、2003年6月号、第5〜18ページに記載されている合成色素と天然色素や、「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J.Phys.Chem.)」、B.第107巻、第597ページ(2003年)に記載されるクマリンを中心とする有機色素を用いることもできる。
多孔質半導体微粒子層に色素を吸着させる方法としては、色素の溶液中によく乾燥した多孔質半導体微粒子層を有する導電性基板を浸漬する方法、あるいは色素の溶液を多孔質半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。浸漬法の場合は、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7−249790号公報に記載されているように加熱還流して行ってもよい。塗布法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等の塗布方法や、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等の印刷方法が利用できる。
電解液層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電解液からなる層である。光電極層は、その多孔構造中の空孔が電解液により充填されていることが好ましい。具体的に、光電極層が有する空孔が電解液によって充填されている割合は、20体積%以上が好ましく、50体積%以上がさらに好ましい。電解液層の厚さは、例えば、光電極層と対向電極層との間に設けるスペーサーの大きさによって調整できる。電解液が光電極の外側で単独で存在する部分の厚さは、1μm〜50μmが好ましく、1μm〜30μmがより好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、1μm〜15μmが最も好ましい。
電解液層の光透過率は、測定波長400nmにおいて、電解液層の厚さが30μmである場合に換算して(30μmの光路長において)70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが最も好ましい。光透過率は、350nm〜900nmの波長領域全体において、上記の透過率を有することが好ましい。本願発明の電解液層を形成するには、キャスト法、塗布法、浸漬法等により光電極層上に電解液を塗布する方法や、光電極と対向電極を有するセルを作製しその隙間に電解液を注入する方法などが挙げられる。
好ましい態様によれば、光電極層中の空隙を完全に埋める量より多い電解質液を塗布するので、図1に示すように得られる電解液層は光電極層の透明導電層との境界から対向電極層の透明導電層との境界までの間に存在する。ここで、電解液層の厚さ(半導体粒子層を含まない)は0.001μm〜200μmであるのが好ましく、0.1μm〜100μmであるのが更に好ましく、0.1〜50μmであるのが特に好ましい。なお、電解液層の厚さ(実質的に電解液を含む層の厚さ)は0.1μm〜300μmであるのが好ましく、1μm〜130μmであるのが更に好ましく、2μm〜75μmであるのが特に好ましい。
本発明に用いる電解液は、特に、ヨウ素を実質的に含まない電解液が好ましく。具体的には、無機塩とイミダゾリウム塩(ジメチルイミダゾリウム、メチルプロピルイミダゾリウム、メチルブチルイミダゾリウム、メチルヘキシルイミダゾリウムとその塩など)との混合物を、グリコールエーテルと5員環環状エーテルの一方または両方を溶媒として溶解させた電解液である。以下、この場合の電解液構成成分について説明する。
対向電極は光電変換素子を光化学電池としたときに正極として作用するものである。対向電極は、透明基板および透明導電層からなることが好ましい。透明基板および透明導電層の詳細は、光電極層の透明基板および透明導電層と同様である。対向電極の触媒層は、触媒作用を有する貴金属粒子が好ましい。対向電極の導電性膜上に触媒層を付与することで好ましい触媒層付きの対向電極が作製できる。貴金属粒子としては、触媒作用のあるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは比較的高い触媒作用を有する金属白金、金属パラジウム及び金属ルテニウムの少なくとも一種類から構成することが好ましい。触媒層の付与方法は特に限定されないが、例えばこれらの金属を蒸着法あるいはスパッタ法で付与してもよく、また該金属微粒子を溶媒に分散させて得られる分散液を、塗布あるいは噴霧などで対向電極も導電性層の上に設置してもよい。分散法で設置する場合は、その分散液に更にバインダーを含有させてもよく、導電性高分子が好ましく用いられる。該導電性高分子としては、導電性を有し、前記貴金属粒子を分散させることができるものであれば特に限定されないが、導電性の高い方が好ましい。
Poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl),poly(2,3−dihydrothieno−[3,4−b]−1,4−dioxin)等のポリチオフェン、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、Poly(p−xylenetetrahydrothiophenium
choride),Poly[(2−methoxy−5−(2’ethylhexyloxy))−1,4−phenylenvinylene],Pory[(2−methoxy−5−(3’,7’−dimethyloctyloxy)−1,4−phenylenevinylene)],Poly[2−2’,5’−bis(2’’−ethylhexyloxy)phenyl]−1,4−phenylenevinylene]等のポリフェニレンビニレン類等が使用出来る。これらの中でも特に好ましい導電性高分子は、Poly(2,3−dihydrothieno−[3,4−b]−1,4−dioxin)/Poly(styrenesulfonate)
(PEDOT/PSS)である。
電極として作用する光電極層及び対向電極層の一方又は両方に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法や逐次塗布法が利用できる。本願発明のフィルム型光電池には、上記の基本的層構成に加えて所望に応じさらに各種の層を設けることができる。例えば導電性プラスチック支持体と多孔質半導体層の間に緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として設けることができる。下塗り層として好ましいのは金属酸化物であり、たとえばTiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5などである。下塗り層は、例えばElectrochim.Acta 40、643‐652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス法の他、スパッタ法などにより塗設することができる。下塗り層の好ましい膜厚は5〜100nmである。
本発明の色素増感型光電変換素子は、更に色素増感太陽電池に組み上げるためには、モジュール化する必要があり、以下に簡単に記述する。一般的には下記が本構成の代表となる。
光電極の透明導電膜に集電線を配備し、区分された光電極透明導電膜上に増感色素を吸着した光電極基板と、対向極の導電膜からなる集電線を配備した対向電極とを、集電線上の透明導電膜上に設けられたシール部により接着させてセル部を設け、そのセル部に電解質層を封入したプラスチック基板からなる色素増感太陽電池モジュールが好ましい。
光電極および対向電極の集電線は、銀、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロムのうちから選ばれた少なくとも1つ以上の金属あるいはこれらの合金からなることが好ましい。集電線が透明基板上に格子状に形成され形状でも好ましい。集電線の形成法としては、スパッタ法、蒸着法、メッキ法あるいはスクリーン印刷法などが用いられる。
また、集電線で区分された透明導電膜上に半導体微粒子膜を形成しその上に色素を吸着させて光電極を作製する工程と、基板上に導電膜を形成し対向電極を作製する工程と、集電線上の透明導電膜上にシール部を形成し光電極と対向電極を接着してセル部を形成する工程と、そのセル部に電解質を封入する工程からなる色素増感太陽電池モジュールの作製することが好ましい。なおセル部に電解質を封入する工程を予め実施し、しかる後に集電線上の透明導電膜上にシール部を形成し光電極と対向電極を接着してセル部を形成する工程を実施してもよい。集電線で集められた発電電力は、リード線に接合して所望とする電気機器類に接続して、発電源として利用するものである。この時、各単位セルのみの利用のみでもよく、2個以上のセルをリード線で結合してモジュール化することが更に好ましい。その際に、各セルを直列、並列でも良く、更には直列と並列を組み合わせてもよい。
さらに、本発明では、その基板が水蒸気やガスに対してその透過性を低減するように設計されているが、過酷な環境条件により出力の劣化が見られる可能性があり、特に高温度で高湿度での環境条件で耐久性付与が重要である。これらの改良方法としては、基板にガスや水蒸気に対するバリアー特性を有する基板にするか、あるいはバリアー性のある包装体で、本発明の色素増感型光電変換素子を包み込むことで達成できる。以下に、本発明で好ましく用いられるバリアフィルム、特に水蒸気バリアー性について以下に記述する。
Thin Solid Films 1996年 290−291頁)、有機層と無機層を連続的に積層したもの(米国特許2004−46497)などが挙げられる。
アナターゼ型結晶を含む二酸化チタンナノ粒子(平均粒径60nm)〔昭和電工製、商品名スーパータイタニア〕を10g、そしてブルッカイト型結晶の粒子を含む二酸化チタンナノ粒子(平均粒径15nm)が分散された酸性のゾル水溶液(濃度20質量%)24gを、エタノール66gに混合した。この混合物を自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使って均一に攪拌混合することによって、白色の粘性液体組成物(質量100g)を調製した。このペーストは二酸化チタンと溶媒のみからなり、バインダーを含んでいない粘性のバインダフリーペーストである(実施例1−1)。次に同様の調整法で表1の実施例1−2〜4−6のペーストを作製した。
(2−1) プラスチックフィルム製透明導電性基板の作製
透明導電性プラスチックフィルムとして、ITOを導電膜として担持したフィルム厚み200μm、表面抵抗15Ω/□のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。この導電性フィルムの表面抵抗を下げるために、銀分散ペーストをスクリーン印刷する方法で、ITO膜上に線幅100μm、厚さ20μmの銀の集電用補助リード線を10mmの間隙で平行線状にパターニングした。これらの銀パターンの上に、ポリエステル系樹脂を保護膜として幅250μmで塗布して銀線を完全に保護した。得られたパターン入り導電性ITO−PETフィルムの実用シート抵抗は3Ω/□となった。
Ruビピリジル錯体色素としてビスイソシアネートビスビピリジルRu錯体のテトラブチルアンモニウム塩(N719)を、アセトニトリル:tert‐ブタノール(1:1)の混合溶媒に濃度3×10-4モル/リットルに溶解した色素溶液に上記の多孔性半導体フィルム電極基板を浸漬して、撹拌下40℃で60分放置して、色素吸着を完了し、色素増感酸化チタンITO−PETフィルム電極を作製した。
500Wのキセノンランプを装着した太陽光シミュレータ用を用いて、上記のフィルム型光電池に対し、入射光強度が100mW/cm 2 のAM1.5模擬太陽光を、色素増感半導体フィルム電極側から照射した。電池は恒温装置のステージ上に密着して固定し、照射中の素子の温度を40℃に制御した。電流電圧測定装置を用いて、素子に印加するDC電圧を10mV/秒の定速でスキャンし、素子の出力する光電流を計測することにより、光電流−電圧特性を測定した。これにより求められた上記の各種素子のエネルギー変換効率(η)を、フィルム電極の塗工に用いたペーストの組成とともに、表1に示す。
上記のITO−PETフィルムのITO面に表1の実施例、比較例の二酸化チタン分散ペーストを塗布膜厚が約5ミクロンになるようにエアスプレイ塗布し、150℃で5分間乾燥させて得られた乾燥膜を、フィルムを曲率1.0cm -1 まで機械的に10回曲げる疲労試験を行い、多孔性半導体層の剥離の状態を目視によって判定した。これらの評価の結果を、AA:極めて良い、A:良い、B:悪いが許容内、C:悪い、の四段階で判定し、結果を表1に示した。
1.本発明の範囲以外の金属酸化物半導体ナノ粒子サイズを用いると、耐剥離性と光電変換率が共に悪化する(実施例1−1〜1−8と比較例1−1〜1−5の比較)
2.本発明の総固形分濃度より低いと光電変換率が非常に悪化し、高いと光電変換率、耐剥離性が共に非常に悪化する(実施例2−1〜2−2と比較例2−1〜2−2の比較)
3.金属酸化物半導体ナノ粒子のいずれか一方の固形分濃度が本発明の範囲より高すぎても低すぎても、耐剥離性と光電変換率が共に悪化する(実施例3−1〜3−4と比較例3−1〜3−4の比較)
4.本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液の溶媒として使用する炭素数5以下のアルコールとしては、沸点が75℃〜120℃、かつ融点が−80℃以下のアルコールの場合が耐剥離性と光電変換率に優れ、1−プロパノール(沸点:97.2℃、融点:−126.5℃)が耐剥離性と光電変換率共に特に優れる(実施例4−3〜4−6)。
本願発明はサイズ異なる2種類の金属酸化物半導体ナノ粒子を併用し、両者のサイズと固形分濃度が本発明の範囲であるとき、さらには、アルコール溶媒の沸点と融点が本発明の範囲でるときのみ、物理特性である耐剥離性と光電変換率が共に良好な色素増感太陽電池ができることが特徴であり、非常に限られた条件でのみ達成できることが分かる。
11 透明プラスチック基板
12 透明導電層
13 多孔質半導体微粒子層
14 増感色素
2 電解液層
3 対向電極
31 透明プラスチック基板
32 透明導電層
41 光電極層側の入射光
42 対向電極側の入射光
5 電流
Claims (6)
- 金属酸化物半導体ナノ粒子と溶媒を必須成分とする金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を導電性基板上に噴霧して塗布し、加熱処理して多孔質半導体微粒子層を形成する方法であって、前記金属酸化物半導体ナノ粒子が、一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子と一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の混合物であり、前記溶媒が水と沸点が75℃〜120℃、かつ融点が−80℃以下である炭素数2〜5のアルコールとの混合物であり、前記分散液中の前記一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の固形分濃度が1〜15wt%であり、前記一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子の固形分濃度が0.1〜25wt%であり、かつ、分散液中の金属酸化物半導体ナノ粒子全体の固形分濃度が5〜30wt%であることを特徴とする多孔質半導体微粒子層の製造方法。
- 前記炭素数2〜5のアルコールが、2−ブタノール、1-プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールのいずれか又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載した色素増感型光電変換素子用光電極の製造方法。
- 前記一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子は、ブルッカイト型結晶を含む二酸化チタンナノ粒子を分散した酸性ゾル水溶液として調製されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した多孔質半導体微粒子層の製造方法。
- 前記一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの金属酸化物半導体ナノ粒子は、ルチル/アナターゼ混合型の結晶性の二酸化チタンナノ粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した多孔質半導体微粒子層の製造方法。
- 導電性基板上に請求項1乃至請求項4のいずれかに記載した方法により製造した多孔質半導体微粒子層に増感色素を担持した色素増感型光電変換素子に用いる光電極。
- 請求項5に記載した光電極、電解質層、対向電極をこの順で有する光電変換素子または色素増感型太陽電池。
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