JP5352645B2 - マルチビームリフレクトアレイ - Google Patents
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Description
所定の方向に沿って整列した複数の素子を含む素子配列が2つ以上含まれているマルチビームリフレクトアレイであって、
前記素子配列の少なくとも1つは第1ないし第JのJ個の素子群を含み(Jは2以上の自然数)、jが1以上J以下の任意の自然数である場合に第jの素子群は入射波を第jの反射角α j の方向に反射し、α j1 ≠α j2 であり、j 1 及びj 2 はjのとりうる値でありかつj 1 ≠j 2 であり、
前記第jの素子群に属する2つの素子各々により反射された電波の位相差Δφ j と、電波の波数kと、該2つの素子の間隔Δy j と、前記第jの反射角α j とが、
Δφ j =k×Δy j ×sin(α j )
の関係を満たす、マルチビームリフレクトアレイである。
2.マルチビームリフレクトアレイの原理
3.マルチビームリフレクトアレイにおける素子の反射位相
4.シミュレーション
5.変形例
5.1 素子の代替例
5.2 グラフをシフトさせる
5.3 素子の配置例
本実施例によるマルチビームリフレクトアレイを説明する前に、リフレクトアレイの一般的な動作原理を説明する。
α=sin-1[(λΔφ)/(2πΔy)]
ただし、kは波数であり、2π/λに等しい。λは電波の波長である。波長に比べて十分大きなリフレクトアレイを構成する場合、y軸方向に整列するN個の素子M1ないしMNの全体による反射位相差N×Δφが、360度(2πラジアン)になるように、個々の素子の反射位相を設定することが望ましい。例えば、N=4の場合、Δφ=360/4=90度である。したがって、少なくとも理論上は、隣接する素子間の反射位相差が90度であるように素子を設計し、それらを4個並べたものを2次元的に反復的に並べることで、角度αの方向に電波を反射するリフレクトアレイを実現することができる。図4は、隣接する素子同士の位相差が90度である場合の反射波を模式的に示す。90度ずつ反射位相が変化する4つの素子を1つの単位として、周期的な構造を実現することで、所望のリフレクトアレイを実現することができる。図4には、各反射波における等位相面が破線で示されている。
図9は、入射する電波を所望の複数の方向に反射させるマルチビームリフレクトアレイを説明するための図を示す。図示のリフレクトアレイは、y軸方向に並んだ12個(一般的には、N個)の素子M1ないしM12を少なくとも有し、これら12個(一般的には、N個)の素子と同様な構造が、y軸方向及びx軸方向に反復的に又は周期的に設けられている。この点は、図2に示す構成と同様であり、従って図9に示すマルチビームリフレクトアレイの平面図も概して図3に示すものと同様である。ただし、マルチビームリフレクトアレイを構成する素子の各々が、どのような反射位相を実現するように設計されているかが大きく異なる。
素子M1及びM2の反射位相は、第1の反射角α1に関する値φ11及びφ12に、
素子M3及びM4の反射位相は、第2の反射角α2に関する値φ23及びφ24に、
素子M5及びM6の反射位相は、第1の反射角α1に関する値φ11及びφ12に、
素子M7及びM8の反射位相は、第2の反射角α2に関する値φ21及びφ22に、
素子M9及びM10の反射位相は、第1の反射角α1に関する値φ11及びφ12に、
素子M11及びM12の反射位相は、第2の反射角α2に関する値φ25及びφ26にそれぞれ設定されている。図示の例の場合、12個の素子を含む素子配列は、第1の反射角α1方向に電波を反射させるための第1の素子群と、第2の反射角α2方向に電波を反射させるための第2の素子群とを含んでいる。従って、このような素子配列に電波が入射した場合、一部は反射角α1の方向に反射し、一部は反射角α2の方向に反射する。これにより、入射した電波をα1及びα2の方向にそれぞれ反射させるマルチビームリフレクトアレイを実現することができる。
Δy1=Δy2=Δy。
Δy1=Δy2であることは必須ではないが、この関係が成立する場合、反射角及び素子数の間には次式が成立する。
Δφ1=2π/nk1
Δφ2=2π/nk2
ただし、Δφ1は第1の反射角α1を実現するための第1の素子群に属する素子の内、隣接する素子同士の反射位相差である。Δφ2は第2の反射角α2を実現するための第2の素子群に属する素子の内、隣接する素子同士の反射位相差である。nk1は第1の素子群に含まれる素子数である。nk2は第2の素子群に含まれる素子数である。上記の数式が成立する場合、一方の反射角から他方の反射角を求めることができる。例えば、
α2=sin-1[nk1×sin(α1)/nk2]
である。
ただし、mfは定数である。この場合、第1及び第2の反射角は次式を満たす。
更に、説明の便宜上、反射角は2種類だけでなく、3以上の所望の方向(α1,...,αJ)に電波が反射されるように、マルチビームリフレクトアレイを設計することが可能である。Jは2以上の自然数である。この場合、素子配列は、第1の反射角α1を実現するための第1の素子群、第2の反射角α2を実現するための第2の素子群、...第Jの反射角αJを実現するための第Jの素子群を含むことになる。ただし、1つの素子配列(一列分)がJ種類の素子群全てを含むことは必須ではなく、マルチビームリフレクトアレイの中にJ種類の素子群が何らかの配置方法で含まれていればよい。この点については変形例において説明する。
図8を参照しながら説明したように、リフレクトアレイを設計する場合、設計に使用する厚みの基板に対するグラフ(例えば、t24)を選択し、整列する複数のパッチ各々のサイズが、そのパッチの位置で必要な反射位相に応じて決定される。理想的には、リフレクトアレイの中で整列している1つの素子群全体による反射位相の変化が360度であるように、パッチのサイズ等が設計されていることが好ましい。しかしながら、図8に示す例から分かるように、理論上及び製造上の理由から、実現困難な反射位相が存在する場合がある。例えば、(本実施例では)t16の場合、144度より大きな反射位相や、60度より小さな反射位相を実現できるパッチサイズWxは存在しない。t24の場合でも、117度より大きな反射位相や、-72度より小さな反射位相を実現することは困難である。更に、素子同士の間隔Δx及びΔyが2.4mmであることに起因して、パッチサイズWxが2.4mmに近づくと、ギャップ(Δx−Wx)が極めて狭くなり、製造することが困難になる。このように、実際に製造可能なパッチサイズ及び実現可能な反射位相の制約の下で、リフレクトアレイを設計する必要がある。
Δφ=k×Δy×sin(α)
の関係があるので、反射位相と座標(y軸方向に並ぶ素子の位置)との間には、線形な関係が成立する。
素子の反射位相を決定する1つの方法は、第1及び第2の反射角をなす反射波の内、何れかを優先的に実現しようとする。例えば、第1の反射角α1=70度を優先的に実現しようとしたとする。この場合、先ず、図12のグラフにおいて、第1の反射角α1=70度を実現するための反射位相と座標の組(α1=70度に関する直線上にある□印の点)が全て選択される。「反射位相φと座標Mxの組を選択する」とは、素子Mxの反射位相がφに設計されることを意味する。次に、反射位相が決定されていない素子に関し、第2の反射角α2を実現するための反射位相と座標の組(α2=45度に関する直線上にある丸印の点)が存在すれば、それが選択される。このようにして反射位相と座標の組が選択された結果が、図13に示されている。図示されているように、第1の反射角α1=70度に関する点が28個選択され(塗りつぶされた四角印)、第2の反射角α2=45度に関する点が16個選択されている(塗りつぶされた丸印)。44個の素子の内、28個(64%)が第1の反射角に関連し、16個(36%)が第2の反射角に関連しているので、第1の反射角α1=70度の反射波が優先される。この例では、第1の反射角α1=70度を優先的に決定したが、逆に、第2の反射角α2=45度を優先的に決定することもできる。すなわち、先ず、第2の反射角α2=45度を実現するための反射位相と座標の組(α2に関する直線上にある○印の点)が全て選択される。次に、反射位相が決定されていない素子に関し、第1の反射角α1を実現するための反射位相と座標の組(α1に関する直線上にある□印の点)が存在すれば、それが選択される。このようにして選択した結果は、図14に示されている。図示されているように、第1の反射角α1=70度に関する点が14個選択され、第2の反射角α2=45度に関する点が30個選択されている。44個の素子の内、14個(32%)が第1の反射角に関連し、30個(68%)が第2の反射角に関連しているので、第2の反射角α2=45度の反射波が優先される。
素子の反射位相を決定する別の方法は、素子同士の相対的な関係を考慮するものである。先ず、実現可能な反射位相が1つしか存在しない素子については、その反射位相が選択される。図15は、そのようにして反射位相が決定された直後の様子を示す。具体的には、M13-M16、M28-M34、M47-M49については、第1の反射角α1=70度を実現するための反射位相が設定される。M5、M6、M20-M26、M37-M42及びM57については、第2の反射角α2=45度を実現するための反射位相が設定される。M1-M4、M17-M19、M43-M46、M58-M60については、第1及び第2の反射角何れの反射位相も実現可能である。何れの反射位相を選択するかについては、少なくとも次の3つの観点から決定できるが、他の観点から決定されてもよい。概して、第1の反射角を実現するための反射位相の素子が多く選択された場合には、第1の反射角をなす反射波がより強くなる反面、第2の反射角を実現するための反射位相の素子が多く選択された場合には、第2の反射角をなす反射波がより強くなる傾向がある。
28:16、18:26、14:30
である。60個の素子の内、図12に示すグラフを用いて反射位相を決定できる素子数は44個であったので、素子数の割合を%で表現した場合は、
64:36、41:59、32:68
となる。更に、図13、図14、図16に関する素子数の割合の比較例から分かるように、70度用の素子数と45度用の素子数との割合が、所定の値になるように、各素子の反射位相が決定されてもよい。上記の反射位相の決定法は単なる具体例に過ぎず、他の観点から決定されてもよい。また、複数の選択肢を有する素子の反射位相を決定する際、若番順に素子の反射位相が決定されたが、別の順序で反射位相が決定されてもよい。
方法1及び方法2の場合、個々の素子の場所において何らかの反射位相を実現できる場合は常に、その素子の反射位相を何れかの値に設定し、できるだけ多くの素子が何れかの反射波に寄与するようにしていた。このため、図13、図14、図16に示す例の場合、●及び■の印で示されているように、60個の素子の内44個の素子の反射位相が何らかの値に設定されている。
マルチビームリフレクトアレイについてのシミュレーション結果を説明する。図17は、シミュレーションに使用された解析モデルの斜視図を示す。図18は図17に示す解析モデルの平面図を示し、y軸方向に沿ってM1-M60が整列している。ただし、反射位相を実現できない場所の素子は省略されているので、理想的には60個存在する素子の内、実際に実現可能な44個の素子が示されている。図19は図17に示す解析モデルの側面図を示す。電波はz軸∞方向から到来し、yz面内で反射する。図17-図19に示す解析モデルは、マルチビームリフレクトアレイを構成する周期構造1つ分を表す。実際のマルチビームリフレクトアレイでは、このような周期構造の1つ以上が、x軸方向及びy軸方向に反復的に設けられている。
<5.1 素子の代替例>
上記の説明において、マルチビームリフレクトアレイを構成する素子は、図5に示すようなマッシュルーム構造であったが、電波を反射することが可能な適切な如何なる素子が使用されてもよい。例えば、正方形のパッチの代わりに、リング状の導電性パターン(図22(1))、十字型の導電性パターン(図22(2))、並列的な複数の導電性パターン(図22(3))等を有する素子が使用されてもよい。また、マッシュルーム構造において、パッチと接地プレートとを接続するビアがない構造(図22(4))が使用されてもよい。ただし、上記の実施例のように素子にマッシュルーム構造を採用することは、より小さな構造を簡易に設計できる等の観点から好ましい。
マルチビームリフレクトアレイを構成する複数の素子各々の反射位相は、図12に示されるようなグラフを用いて決定されていた。この場合において、特定の場所にある素子について実現可能な反射位相が存在しない場合、1つしか存在しない場合及び2つ存在する場合があった。所望の反射角が3つ以上の場合、3つ以上の選択肢が生じる可能性がある。これは、図11に示すようなグラフに基づいていたためである。図11に示す例では、第1及び第2の反射角のグラフ双方ともに、初期位相0度の反射位相が、最初の素子で実現されるようになっている。しかしながら、初期位相が最初の素子で実現されることは必須ではない。反射位相は素子に関して相対的なものであり、60個(実際には60個未満)の素子全体を通じて所定の反射位相が実現されればよいからである。すなわち、図11に示されている2つのグラフの内、一方を他方に対して横軸方向に循環的にずらしてもよい。
第1の反射角α1及び第2の反射角α2の2つの方向に電波を反射させる場合、ある素子配列をx軸方向及びy軸方向に反復的に並べることで、2つの方向にビームを反射させるマルチビームリフレクトアレイを形成することができる。素子配列の各々は、第1の反射角α1を実現するように反射位相が設定された第1の素子群と、第2の反射角α2を実現するように反射位相が設定された第2の素子群とを含むものである。このような素子の配置方法については上述したとおりである。しかしながら、本願により開示される発明はそのような形態だけでなく、次のような配置例を使用することもできる。
51 接地プレート
52 ビア
53 パッチ
α1 第1の反射角
α2 第2の反射角
Claims (9)
- 所定の方向に沿って整列した複数の素子を含む素子配列が2つ以上含まれているマルチビームリフレクトアレイであって、
前記素子配列の少なくとも1つは第1ないし第JのJ個の素子群を含み(Jは2以上の自然数)、jが1以上J以下の任意の自然数である場合に第jの素子群は入射波を第jの反射角α j の方向に反射し、α j1 ≠α j2 であり、j 1 及びj 2 はjのとりうる値でありかつj 1 ≠j 2 であり、
前記第jの素子群に属する2つの素子各々により反射された電波の位相差Δφ j と、電波の波数kと、該2つの素子の間隔Δy j と、前記第jの反射角α j とが、
Δφ j =k×Δy j ×sin(α j )
の関係を満たす、マルチビームリフレクトアレイ。 - 前記J個の素子群のうち第1の素子群に属する素子の数nk1 と第2の素子群に属する素子の数nk2との割合が、所定値であるように素子の数が決定されている、請求項1記載のマルチビームリフレクトアレイ。
- 定数mfと、前記第1の素子群に属する素子の数nk1と、前記第2の素子群に属する素子の数nk2とが、
mf=[nk1×sin(α1)]/[nk2×sin(α2)]
の関係を満たす、請求項2記載のマルチビームリフレクトアレイ。 - 前記素子配列の少なくとも1つは、前記J個の素子群各々の素子数(nk1,...,nkJ)の最小公倍数に等しい数の素子を単位とする周期構造を有する、請求項1記載のマルチビームリフレクトアレイ。
- 前記第1又は第2の素子群が、同一の反射位相で電波を反射する少なくとも2つの素子を有する、請求項2記載のマルチビームリフレクトアレイ。
- 前記第1の素子群が前記第2の素子群よりも優先的に含まれている又は前記第1の素子群のみが含まれている複数の第1の素子配列と、
前記第2の素子群が前記第1の素子群よりも優先的に含まれている又は前記第2の素子群のみが含まれている複数の第2の素子配列と
が並列的に配置されている、請求項2ないし5の何れか1項に記載のマルチビームリフレクトアレイ。 - 3つ以上の前記第1の素子配列と3つ以上の前記第2の素子配列とが並列的に配置されている、請求項6記載のマルチビームリフレクトアレイ。
- 前記複数の第1又は第2の素子配列に属する素子配列の各々において、前記第1の素子群に属する素子の反射位相が2πより狭い第1の範囲R1内の値に設定され且つ前記第2の素子群に属する素子の反射位相が前記第1の範囲を含まない2πより狭い第2の範囲R2内の値に設定される、請求項6又は7に記載のマルチビームリフレクトアレイ。
- 前記所定の方向に沿って整列した前記複数の素子が、複数のパッチと接地プレートとを少なくとも有するマッシュルーム構造により形成されている、請求項1ないし8の何れか1項に記載のマルチビームリフレクトアレイ。
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