車載用情報表示装置や、カーオーディオの表示部等に、セグメント表示、またはセグメント表示に加えてドットマトリクス表示が可能な液晶表示装置が用いられる。セグメント表示部をカラー表示可能な液晶表示装置の1つとして、カラーフィルタの形成された液晶表示素子に、白色のバックライト光を照射する構成のものがある。
カラーフィルタを用いた液晶表示装置の短所としては、液晶表示素子のガラス基板上にカラーフィルタを形成する工程が必要なことや、各セグメントの表示色がカラーフィルタの色に限定されること等が挙げられる。
セグメント表示部をカラー表示可能な、他の液晶表示装置として、いわゆるフィールドシーケンシャル(FS)駆動を行うものがある。このような液晶表示装置では、液晶表示素子にカラーフィルタを形成しない代わりに、例えば赤緑青(RGB)発光可能なマルチカラー発光ダイオード(LED)光源などにより構成されたマルチカラーバックライトを用い、点灯色を順次時間的に切り替えることにより、所望のカラー表示を行う。
図18を参照して、従来のFS駆動方法の具体例について説明する。図18は、各セグメントの入力信号と、バックライト点灯状態とを示すタイミングチャートである。液晶表示素子として、オン状態で光を透過させ、オフ状態で光を透過させないノーマリーブラック型のものを想定している。
1つの画像を表示する時間的単位である1フレーム内に、バックライトがR、G、Bそれぞれに点灯する3つのサブフレームSB1〜SB3が設定されている。例えば、1フレームの長さは、NTSC規格に従った16.7msであり、各サブフレームの長さは、1フレームを等間隔に3分割した5.57msである。
液晶表示素子に印加される駆動波形は、例えば矩形波で、駆動周波数は、1つのサブフレーム内で1周期以上になるように設定し、入力信号に対して液晶表示素子が明暗表示できるように、オン時及びオフ時の振幅(駆動電圧)が調整される。
一般に、液晶表示素子は、印加電圧に対する応答がバックライトのそれに比べて遅いため、液晶表示素子がある程度応答するまでバックライトを点灯させないブランク時間を要する。
図19に、ノーマリーブラック型液晶表示素子の1セグメント部分における、明表示から暗表示への切り替え時の立下り電気光学応答の測定例を示す。縦軸の上側が透過率を示し、縦軸の下側がセグメント部上下電極間駆動波形の電位を示し、横軸が経過時間を示す。
駆動電圧が閾値以上の電圧Vから0に変化しても、すぐには透過率が充分低下しないことが分かる。透過率が充分に低下していない状態で、サブフレーム内で指定された色のバックライト光を点灯すれば、このセグメントで消光すべき色の光が漏れるため、色純度が低下することになる。従って、透過率が充分に低下するまでの期間は、バックライトを点灯させないブランク時間とする必要がある。
図18に戻って説明を続ける。各サブフレームの切り替え直後から、ブランク時間Bが設けられている。ブランク時間Bの後、各サブフレームの終了時刻までが、サブフレームに対応する色のバックライトを点灯させるバックライト点灯時間Lとなっている。
サブフレーム動作を人間の目に認識されない速度(例えば約16.7ms/フレーム、約5.57ms/サブフレーム、約3ms/ブランク時間)で駆動させれば、狙い通りの、ちらつきの抑えられたカラー表示を実現可能である。図18に示す例で、セグメント1はRとGの混色である黄色、セグメント2はRとBの混色であるマゼンタ、セグメントnはGのみの緑の表示として、人間の目に認識される。
なお、上述のFS駆動方法(このFS駆動方法を、後述するカラーブレークレスFS駆動方法と区別する場合には、通常FS駆動方法と呼ぶこととする)では、特に観察者の周囲が暗い場合に、観察者の視線が表示素子から離れた時や、素子自体に振動が加わった場合など(例えば自動車内環境において)、通常状態では人間の目に認識されない、各サブフレームの画像が分離して観察されるカラーブレークと呼ばれる現象が現れる場合がある。この現象は、人間の心理的要因からあまり好ましい表示状態とはいえない。
カラーブレーク現象は、特に、白表示部分にはっきり現れることから、通常FS駆動方法において、1つのセグメント表示部にて複数のサブフレームで点灯動作が行われている場合、即ち白色、黄色やマゼンタなどの混色表示状態で顕著に確認されると考えられる。
カラーブレーク現象を低減する方法として、1フレーム内に白表示サブフレームを挿入する等の方法が提案されているが、このような方法でカラーブレーク現象を除去することはできない。
本願発明者らは、特許文献1において、カラーブレーク現象を解消可能なFS駆動方法(以下、上述の通常FS駆動方法と区別する場合には、カラーブレークレスFS駆動方法と呼ぶこととする)を提案した。
この駆動方法の基本的な考え方は、1サブフレーム内において、バックライトの点灯色として原色(R、G、B)のみではなく、混色(白やオレンジ等)も用い、各セグメントにおいては1サブフレームでのみバックライト光を透過させることにより、カラーブレーク現象を生じさせない、というものである。
図20を参照して、カラーブレークレスFS駆動方法の具体例について説明する。図20は、各セグメントの入力信号と、バックライトの点灯状態とを示すタイミングチャートである。液晶表示素子として、ノーマリーブラック型のものを想定している。
この例のバックライト発光色は、第1のサブフレームで白色とし、第2のサブフレームでオレンジとし、第3のサブフレームで青としている。この駆動方法では、1フレーム内で可能な表示色は、サブフレーム数をMとして、発光色Mに黒を加えたM+1色となる。
なお、フレームごとにバックライト点灯色を可変にできるので、液晶表示素子の動作が明と暗の2値動作である場合は、上記通常FS駆動方法に比べて、表示色が大幅に増加可能であることは明白であろう。
この例では、1フレームが16.7msであり、等間隔の3つのサブフレームを設定している。なお、各サブフレームの間隔は、バックライトの発光色に応じて変化させても良い。即ち、サブフレームは不等間隔でも動作可能である。
この例では、セグメント1で白表示を行い、セグメント2で黒表示を行い、セグメントnでオレンジ表示を行っている。バックライトの点灯タイミングについて、通常FS駆動方法と同様に、サブフレーム切り替え直後は、液晶表示素子の電気光学応答を待つため約3msのブランク時間Bを設けている。ブランク時間Bの後、サブフレームの終了まで、サブフレームに対応する色のバックライトを点灯させるバックライト点灯時間Lが設けられる。
このような動作を行うことにより、外観上狙い通りの、ちらつきの無いカラー表示を、カラーブレークなしに実現することが可能である。
次に、スタティック駆動とマルチプレックス駆動とを比較する。まず、セグメント表示部にスタティック駆動波形が印加される場合について説明する。図21は、駆動波形とバックライト点灯タイミングを示すタイミングチャートの例である。ノーマリーブラック型の液晶表示素子を、通常FS駆動方法する場合を想定している。セグメント表示部の駆動波形は、周波数略720Hzの矩形波としている。1フレームを16.7msとし、RGBを点灯させる3つのサブフレームを各5.57msと設定している。サブフレーム切り替え直後から2.5msを、ブランク時間Bとしている。その後、サブフレームの終了時刻までの時間3.07msが、バックライト点灯時間Lとなる。
走査線本数(コモン電極数)が複数となる場合、各セグメント表示部に薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子を具備していなければ、複数の走査線を順次走査して行うマルチプレックス駆動が必要になる。マルチプレックス駆動を行う場合は、均一な表示状態を得るために、走査線走査の待ち時間もバックライトを点灯できなくなる。
図22及び図23は、このような駆動方法での、コモン電極へ印加する駆動波形と、バックライト点灯タイミングを示すタイミングチャートの例である。図22が、コモン電極数が2つで、1/2デューティ、1/2バイアスのマルチプレックス駆動のタイミングチャートであり、図23が、コモン電極数が4つで、1/4デューティ、1/3バイアスのマルチプレックス駆動のタイミングチャートである。
通常FS駆動方法を想定し、1フレームを16.7msとし、RGBを点灯させる3つのサブフレームを各5.57msと設定している。ブランク時間Bは、2.5msに設定している。
図22の1/2デューティの場合の駆動周波数を360Hzとし、図23の1/4デューティの場合の駆動周波数を180Hzとしている。いずれも、コモン電極1つ当たりの走査時間は略0.7msである。サブフレーム当たりの走査待ち時間は、コモン電極の総数から1を引いた数のコモン電極の走査に要する時間となる。
図22のコモン電極数2つの場合、走査待ち時間は略0.7msとなり、引き続きブランク時間2.5msを経た後に、バックライトが点灯されるので、バックライト点灯時間Lは、略2.37msとなる。走査待ち時間があるので、スタティック駆動の場合のバックライト点灯時間3.07msに比べて、バックライト点灯時間が減少し、表示輝度が低下する。
図23のコモン電極数4つの場合、走査待ち時間は略2.09msに延び、引き続きブランク時間2.5msを経た後に、バックライトが点灯されるので、バックライト点灯時間Lは、略0.99msとなる。コモン電極数2つの場合に比べて、さらに表示輝度が低下する。
このように、デューティ数が増えると、走査待ち時間の増大に起因して、マルチプレックス駆動のFS駆動液晶表示装置の表示輝度が低下する。なお、さらに、マルチプレックス駆動においては、デューティ数の増大に伴って、オン電圧、オフ電圧の比が小さくなることから、応答速度が低速化し、それに伴ってブランク時間を長く設定しないと、良好な色純度を示す表示状態が実現できなくなると考えられる。
なお、特許文献2に、表示画面を複数の領域に分割し独立に照明を制御できる機構を設け(同文献段落[0025])、薄膜トランジスタ(TFT)を備えたアクティブマトリックス駆動の(同文献段落[0023])液晶表示装置が開示されている。
特許3894323号公報
特開2000−275605号公報
まず、図1を参照して、本発明の実施例による液晶表示装置に共通な構成について説明する。図1は、液晶表示装置の概略的構成を示すブロック図である。液晶表示装置は、液晶表示素子1と、バックライト2と、駆動装置3とを含んで構成される。
液晶表示素子1は、複数のコモン電極と、各コモン電極に対向しセグメント表示を行うセグメント電極とを含む。1つまたは複数のコモン電極ごとに、表示画面が、表示領域A、B等に分割されている。
バックライト2は、液晶表示素子1の背面に備えられ、表示領域ごとに設けられたマルチカラー光源LSと、マルチカラー光源LSから放出された光が、対応する表示領域のみを照射するように、配光を制御する配光構造とを含む。各マルチカラー光源LSは、複数色の光源、例えば赤緑青(RGB)発光可能なマルチカラー発光ダイオード(LED)を含んで構成される。各マルチカラー光源LSは、それぞれ独立のタイミングで点灯可能である。
駆動装置3が、液晶表示素子1とマルチカラー光源LSを所望のタイミングで同期駆動させて、マルチプレックス駆動のフィールドシーケンシャル(FS)駆動によるカラー表示を行う。
液晶表示素子1として、例えば、ノーマリーホワイト(NW)ツイステッドネマチック(TN)モード液晶表示素子、2層TNモード液晶表示素子、及び、垂直配向(VA)モード液晶表示素子を用いることができる。
図2(A)〜図2(C)を参照して、NWTNモード液晶表示素子について説明する。図2(A)は、NWTNモード液晶表示素子の概略斜視図である。液晶セル11が、上下のガラス基板12、13と、それらの間に形成された液晶層14とを含んで構成される。
図2(B)に示すように、液晶セルのガラス基板12、13それぞれの、液晶層側内面に、表示パタンに対応するパタンが形成された透明電極31が配置され、さらにその内面に、水平配向膜32が形成されている。上下の水平配向膜32に、上下基板間で左ねじれ90°で液晶分子が配向するようラビング処理が施されている。
上下水平配向膜32の間に、左ねじれのカイラル材が添加されたΔε>0の液晶材料が満たされて、液晶層14が形成されている。液晶層14の厚さ、即ちセル厚は、略2μmに設定されており、液晶セル厚dと液晶材料のねじれピッチpとの比d/pは、略0.35に設定されている。なお、液晶材料の複屈折率Δnとセル厚dとの積であるリタデーションΔndは、略446nmに設定されている。液晶層中央分子配向方位が、液晶表示素子を法線方向から観察したとき、素子面内において6時方位となるように、ラビング方向が調整されている。
液晶セル11は、相互にクロスニコル配置された上側偏光板21と下側偏光板22との間に配置されている。偏光板21、22は、それぞれ、液晶セル11の近接する基板のラビング方向に直交するように、吸収軸が配置されている。偏光板21、22として、例えばポラテクノ製SKN18243Tが用いられる。
なお、液晶表示素子の視角特性等を改善するため、表示パタン部以外の領域の、片側または両側のガラス基板上に、表示パタン電極から非導電物により電気的に絶縁したブラックマスク膜を配置する場合もある。ブラックマスク膜は、例えばクロムやモリブデン等の金属薄膜からなる。なお、ブラックマスク膜として、顔料、カーボンを分散したアクリル等の樹脂膜を用いてもよい。
図2(C)に示すように、絶縁膜41、ブラックマスク膜42は、例えば、液晶セルのガラス基板12(13)と透明電極31との間に形成される。必要に応じて、透明電極31と配向膜32との間に形成してもよい。特に、カラーブレークレスFS駆動の液晶表示装置には、このような遮光構造を採用することが好ましい。
次に、図3を参照して、2層TNモード液晶表示素子について説明する。図3は、2層TNモード液晶表示素子の概略斜視図である。上側偏光板61と下側偏光板62とが、相互にクロスニコル配置されている。偏光板61、62として、ポラテクノ製SKN18243Tを用いることができる。偏光板61、62の間に、上側から、2層の液晶セル51、52が配置されている。
下側の液晶セル52は、図2(A)を参照して説明したNWTNモード液晶セルと同等なものであり、「駆動セル」として動作させる。駆動セル52は、このセル側に外部から駆動電圧を印加して、表示素子の明暗をスイッチングするために用いる。
上側の液晶セル51は、「補償セル」として用いる。補償セル51では、上下のガラス基板間で液晶分子が右ねじれ90°に配向するように、ラビング方向が設定されている。補償セル51の液晶層には、右ねじれを誘起するカイラル材が添加され、液晶層中央分子の配向方位は3時方位としている。また、補償セル51のガラス基板表面には、表示パタン電極が形成されていない。その他の条件は、駆動セル52と同様である。
補償セル51により、駆動セル52で発生したリタデーションがキャンセルされ、正面観察時におけるリタデーションが略0となり、ほぼ偏光板クロスニコルの暗表示が得られる。このように2層の液晶セルを用いることにより、ノーマリーブラック(NB)動作が得られる。
なお、補償セルの代わりに、補償セルと同様な光学特性を有する光学フィルム、例えばポラテクノ製Twistarフィルムを用いることができることは明らかであり、実際の液晶表示素子に適用して、同様な動作が可能であることを確認済みである。
次に、図4を参照して、垂直配向(VA)モード液晶表示素子について説明する。図4は、VAモード液晶表示素子の概略斜視図である。VAモード液晶表示素子の液晶セル71では、上下ガラス基板72、73それぞれの液晶層側内面に、所望のパタンを形成した透明電極が配置され、さらにその内面に、垂直配向膜が形成されている。上下の垂直配向膜に、上下基板間でアンチパラレル配向となるようにラビング処理が施されている。
上下垂直配向膜間に、Δε<0の液晶材料が満たされて、液晶層74が形成されている。液晶層74の厚さは略2μmに設定され、リタデーションΔndは略300nmに設定され、液晶層中央分子の配向方位は12時方位に設定されている。
液晶セル71は、相互にクロスニコル配置された上側偏光板81と下側偏光板82との間に配置されている。上側の偏光板81の吸収軸は、12時方位から反時計回りに45°回転させた位置に設定されている。
液晶セル71と、上下の偏光板81、82との間に、それぞれ、視角補償板91、92が配置されている。視角補償板91、92として、負の二軸光学異方性を有する光学フィルムを用いることができる。試作した液晶表示素子では、住友化学製ヨウ素系偏光板に、負の二軸光学異方性を有する光学フィルムを貼り合わせた視角補償板貼合偏光板を用いた。
視角補償板91、92の面内遅相軸は、それぞれ、近接する偏光板81、82の透過軸にほぼ平行に配置した。視角補償板91、92各々について、面内位相差は、略45nmとし、厚さ方向の(厚さ断面内の)位相差は略120nmとしている。
なお、負の二軸光学異方性を有する視角補償板は、液晶セルの上面側または下面側の一方のみに配置されていてもよい。さらに他方に、負の一軸光学異方性を有する視角補償板を配置してもよい。光学フィルムのパラメータとしては、厚さ方向の位相差(光学フィルム2枚以上使用の場合はその合計)を、液晶セルのΔndに対して略0.5倍〜略1倍に設定することが好ましい。また、負の二軸光学異方性を有する光学フィルムの面内位相差は、略30nm〜略65nmに設定することが好ましい。
2層TN素子、VA素子は、ノーマリーブラック型素子となる。ノーマリーブラック型素子を用いると、ブラックマスクを用いない構造で、コントラストの高いカラーブレークレスFS駆動液晶表示装置を作製することが容易である。特に、VA素子は視角特性に優れているので、表示品位を高めるのに好適である。
次に、表示パタン等を様々に異ならせた第1〜第4の実施例による液晶表示装置について説明する。
まず、1/2デューティ、1/2バイアスでマルチプレックス駆動される第1の実施例の液晶表示装置について説明する。図5(A)に、液晶表示素子1の表示パタンを示す。第1の実施例の液晶表示素子1は、2つのコモン電極101、102を有し、「STANLEY R&D」という文字を示す1セグメントの表示部103と、2桁の7セグメント表示部104とを有する。表示部103、104のセグメント電極が、それぞれ、コモン電極101、102に対向する。
図5(B)に、表示領域を示す。表示画面が、2つの表示領域A及びBに分割されている。表示領域A及びBは、平面視上、それぞれ、表示部103及び104を内包し、コモン電極101及び102にほぼ沿う形状で画定されている。表示部103(STANLEY R&D)の下端と、表示部104(2桁の7セグメント表示部)の上端との中央に、表示領域AとBとの境界105が配置されている。
図6に、バックライト2の構造例を示す。これは、サイドライト式バックライトの構造例である。導光板201の、表示領域AとBの境界105の直下に、例えば金属からなる反射板202が挿入されており、導光板201が、表示領域A側の部分201Aと表示領域B側の部分201Bとに分割されている。
導光板201の表示領域A側の部分201Aの端部に、マルチカラー光源LSAが設置され、表示領域B側の部分201Bの端部に、マルチカラー光源LSBが設置されている。反射板202が設けられていることにより、マルチカラー光源LSA、LSBから放出された光は、相互に混ざることなく、それぞれ、表示領域Aのみ、表示領域Bのみを照明する。
ただし、表示領域A内の表示部103と、表示領域B内の表示部104とが、マルチカラー光源LSA、LSBで別々に照明されるためには、表示部103と表示部104との間隔が充分に開いていることが好ましい。相互に隣接する表示領域に含まれる表示部間の最短距離(表示画素間の最短距離)は、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。本実施例では、表示部103(STANLEY R&D)の下端と、表示部104(2桁の7セグメント表示部)の上端との間隔(表示部103と104との最短距離)を、2.5mmとしている。
なお、バックライトの構造は、サイドライト式に限定されない。例えば、図7を示すように、いわゆる直下型バックライトとしてもよい。光を拡散反射させる側壁211を持つ箱状の構造体が、光を拡散反射させる隔壁212で、表示領域A側の部分211Aと、表示領域B側の部分211Bとに仕切られている。隔壁212は、表示領域AとBの境界105の直下に設けられている。
表示領域A側の部分211Aの底部に、マルチカラー光源LSAが設置され、表示領域B側の部分211Bの底部に、マルチカラー光源LSBが設置されている。マルチカラー光源LSA、LSBから放出された光は、隔壁212により、相互に混ざることなく、散乱板213を介して、それぞれ、表示領域Aのみ、表示領域Bのみを照明する。
図8に、第1の実施例の液晶表示装置の、コモン電極101、102の駆動波形と、表示領域A、Bのバックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。1フレームは16.7msとし、RGBを点灯させる3つのサブフレームSB1〜SB3に等間隔5.57msに分割した。液晶表示素子に印加するマルチプレックス駆動波形の駆動周波数は略360Hzとした。コモン電極1つ当たりの走査時間は略0.7msである。ブランク時間Bは、2.5msとした。表示領域A、Bの順に走査される。
表示領域Aに属するコモン電極は、コモン電極101の1つのみである。複数のコモン電極の走査が必要ないので、表示領域Aでは、コモン電極101への駆動波形印加の開始時刻から、すなわちサブフレームの開始時刻から、ブランク時間Bを設定でき、ブランク時間Bの後、サブフレームの終了時刻までが、バックライト点灯時間Lに設定される。バックライト点灯時間Lは、略3.07msとなる。
表示領域Aに属するコモン電極101への駆動波形印加の開始時刻から略0.7ms後に、表示領域Bに属するコモン電極102への駆動波形の印加が開始する。表示領域Bに属するコモン電極も、コモン電極102の1つのみであり、表示領域Aと同様に、複数のコモン電極の走査が必要ない。
従って、表示領域Aの駆動シーケンスを、コモン電極1つ当たりの走査時間である略0.7msだけシフトさせることにより、表示領域Bの駆動シーケンスとすればよい。表示領域Bについても、バックライト点灯時間を略3.07ms確保できる。表示領域AとBとでバックライト点灯時間が等しいので、表示輝度の均一化が図られる。
表示画面が複数の表示領域に分割されていない場合は、1つのサブフレーム内で全てのコモン電極を走査するので、長い走査待ち時間が必要になり、バックライト点灯時間を長く確保することが難しい。本実施例のように、表示画面を、1つ(または複数)のコモン電極ごとに、複数の表示領域に分割し、サブフレーム内で走査されるコモン電極数を減らすことにより、長いバックライト点灯時間を確保することができる。
第1の実施例では、さらに、表示領域当たりに1つのコモン電極が属するようにしたことにより、サブフレーム内での走査待ち時間が生じず、サブフレーム開始直後からブランク時間を設定できる。例えば図22を参照して説明したような、サブフレーム内で複数のコモン電極の走査が必要な駆動方法に比べて、点灯時間を長く確保できるので、表示輝度の向上が図られる。
図8のタイミングチャートに従ってFS駆動する第1の実施例の液晶表示装置と、図22のタイミングチャートに従ってFS駆動する従来例の液晶表示装置とを作製して外観状態を観察した。液晶表示素子として、NWTN素子を用いた。その結果、実施例と従来例で色純度は同等であったが、実施例の方が、表示輝度が明らかに向上していることが確認された。
次に、1/3デューティ、1/3バイアスでマルチプレックス駆動される第2の実施例の液晶表示装置について説明する。図9(A)に、液晶表示素子1の表示パタンを示す。第2の実施例では、表示パタンは第1の実施例と同様であるが、電極の配線の引き回しが異なっている。
第2の実施例の液晶表示素子は、3つのコモン電極111〜113を有し、2桁の7セグメント表示部114と、「STANLEY R&D」という文字を示す1セグメントの表示部115とを有する。2桁の7セグメント表示部114は、下側の4セグメント分の表示部114Lと、上側の3セグメント分の表示部114Uとに分けられている。表示部114L、114U、115のセグメント電極が、それぞれ、コモン電極111、112、113に対向する。
図9(B)に、表示領域を示す。表示画面が、2つの表示領域A及びBに分割されている。表示領域Aは、表示部114L及び114U、すなわち2桁の7セグメント表示部114を内包し、コモン電極111及び112をまとめた電極にほぼ沿う形状で画定されている。表示領域Bは、文字の表示部115を内包し、コモン電極113にほぼ沿う形状で画定されている。
表示領域AとBとの境界116は、第1の実施例と同様に画定されている。第1の実施例と同様に、表示部115(STANLEY R&D)の下端から、表示部114(2桁の7セグメント)の上端までの間隔は、2.5mmである。
図10に、第2の実施例の液晶表示装置の、コモン電極111〜113の駆動波形と、表示領域A、Bのバックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。1フレームは16.7msとし、RGBを点灯させる3つのサブフレームSB1〜SB3に等間隔5.57msに分割した。液晶表示素子に印加するマルチプレックス駆動波形の駆動周波数は略180Hzとした。コモン電極1つ当たりの走査時間は略0.93msである。ブランク時間Bは、2.5msとした。表示領域A、Bの順に走査される。
表示領域Aに属するコモン電極は、コモン電極111及び112の2つである。最初に走査されるコモン電極111への駆動波形印加の開始時刻から、すなわちサブフレームの開始時刻から、コモン電極111の走査時間0.93msを待って(表示領域Aの持つコモン電極総数2から1を引いた個数のコモン電極を走査するのに要する走査待ち時間0.93msを待って)、2番目に(表示領域Aで最後に)走査されるコモン電極112への駆動波形印加が開始される。
表示領域Aでは、最後に走査されるコモン電極112への駆動波形印加の開始時刻から、ブランク時間Bが設定され、ブランク時間Bの後、サブフレームの終了時刻までが、バックライト点灯時間Lに設定される。バックライト点灯時間Lは、略2.14msとなる。
表示領域Bの駆動シーケンスは、表示領域Aの駆動シーケンスを、表示領域Aが持つコモン電極2つ分の走査時間である略1.86msだけシフトさせることにより設定される。
表示領域Bは、1つのコモン電極113しか持たないが、コモン電極113への駆動波形印加の開始時刻から、コモン電極1つ分の走査時間0.93msを待って、ブランク時間Bが設定され、ブランク時間Bの後、サブフレームの終了時刻までが、バックライト点灯時間Lに設定される。表示領域Bでも、表示領域Aと同様に、バックライト点灯時間Lが、略2.14msとなる。
第2の実施例も、第1の実施例と同様に、表示画面を複数の表示領域に分割して、サブフレーム内で走査されるコモン電極数を減らすことにより、長いバックライト点灯時間を確保することができる。
第2の実施例では、さらに、コモン電極数の相対的に多い表示領域Aの駆動シーケンスを所定時間シフトして、コモン電極数の相対的に少ない表示領域Bの駆動シーケンスとすることにより、両表示領域で、コモン電極数が等しくなくても、サブフレーム内における点灯タイミングが一致し、バックライト点灯時間が等しくなるので、表示輝度の均一化が図られる。
図10のタイミングチャートに従ってFS駆動する液晶表示装置を作製して外観状態を観察した。液晶表示素子として、NWTN素子を用いた。その結果、コモン電極数の相異なる表示領域AとBで、表示輝度は均一であるように観察された。
次に、1/4デューティ、1/3バイアスでマルチプレックス駆動される第3の実施例の液晶表示装置について説明する。図11(A)に、液晶表示素子1の表示パタンを示す。第3の実施例の液晶表示素子は、4つのコモン電極121〜124を有し、それぞれ4桁の7セグメント表示部125及び126が、2行に配置されている。
上側の4桁の7セグメント表示部125は、上側の3セグメント分の表示部125Uと、下側の4セグメント分の表示部125Lとに分けられている。下側の4桁の7セグメント表示部126は、上側の3セグメント分の表示部126Uと、下側の4セグメント分の表示部126Lとに分けられている。表示部125U、125L、126U、126Lのセグメント電極が、それぞれ、コモン電極121、122、123、124に対向する。
図11(B)に、表示領域を示す。表示画面が、2つの表示領域A及びBに分割されている。表示領域Aは、表示部125U及び125L、すなわち上側の4桁の7セグメント表示部125を内包し、コモン電極121及び122をまとめた電極にほぼ沿う形状で画定されている。表示領域Bは、表示部126U及び126L、すなわち下側の4桁の7セグメント表示部126を内包し、コモン電極123及び124をまとめた電極にほぼ沿う形状で画定されている。
上側の4桁の7セグメント表示部125と下側の4桁の7セグメント表示部126との行間の中心に、表示領域AとBとの境界127が画定されている。上側の4桁の7セグメント表示部125と、下側の4桁の7セグメント表示部126との行間は、2.5mmである。
図12に、第3の実施例の液晶表示装置の、コモン電極121〜124の駆動波形と、表示領域A、Bのバックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。1フレームは16.7msとし、RGBを点灯させる3つのサブフレームSB1〜SB3に等間隔5.57msに分割した。液晶表示素子に印加するマルチプレックス駆動波形の駆動周波数は略180Hzとした。コモン電極1つ当たりの走査時間は略0.7msである。ブランク時間Bは、2.5msとした。表示領域A、Bの順に走査される。
表示領域Aに属するコモン電極は、第2の実施例の表示領域Aと同様に、コモン電極121及び122の2つであり、最後に走査されるコモン電極122への駆動波形印加の開始時刻から、ブランク時間Bが設定され、ブランク時間Bの後、サブフレームの終了時刻までが、バックライト点灯時間Lに設定される。バックライト点灯時間Lは、略2.37msとなる。
第3の実施例では、表示領域Bも、表示領域Aと同様に、2つのコモン電極123及び124を有する。表示領域Bの駆動シーケンスは、表示領域Aの駆動シーケンスを、表示領域Aが持つコモン電極2つ分の走査時間である略1.4msだけシフトさせることにより設定すればよい。
つまり、表示領域Bのコモン電極123の走査時間0.7msを待って、表示領域Bの2番目の(最後の)コモン電極124への駆動波形印加が開始され、コモン電極124への駆動波形印加の開始時刻から、ブランク時間Bが設定され、ブランク時間Bの後、サブフレームの終了時刻までが、バックライト点灯時間Lに設定される。表示領域Bでも、表示領域Aと同様に、バックライト点灯時間Lが、略2.37msとなる。表示領域AとBとでバックライト点灯時間が等しいので、表示輝度の均一化が図られる。
これを、図23を参照して説明した、表示画面を複数表示領域に分割しない従来駆動方法でのバックライト点灯時間0.99msと比べると、略1.4msの点灯時間延長が可能となり、表示輝度が大幅に改善可能できると考えられる。
図12のタイミングチャートに従ってFS駆動する第3の実施例の液晶表示装置と、図23のタイミングチャートに従ってFS駆動する従来例の液晶表示装置とを作製して外観状態を観察した。液晶表示素子として、NWTN素子を用いた。その結果、実施例と従来例で色純度は同等であったが、実施例の方が、表示輝度が明らかに向上していることが確認された。
なお、第3の実施例(後述の第6の実施例でも同様)では、表示領域A及びBに等しく2つずつコモン電極を割り当てたが、第2の実施例のように、表示領域ごとに異なる個数のコモン電極を割り当てることもできる。例えば、表示領域Aに3つのコモン電極121〜123を割り当て、表示領域Bに残りの1つのコモン電極124を割り当てるようにしてもよい。
ただし、このような場合は、表示領域AとBとで表示輝度を等しくするため、第2の実施例で説明したように、相対的にコモン電極数の少ない表示領域Bの走査待ち時間を、相対的にコモン電極数の多い表示領域Aの走査待ち時間と等しくするような駆動シーケンスを採用することが好ましい。
次に、1/3デューティ、1/3バイアスでマルチプレックス駆動される第4の実施例の液晶表示装置について説明する。図13(A)に、液晶表示素子1の表示パタンを示す。第4の実施例の液晶表示素子は、3つのコモン電極131〜133を有し、「Stanley R&D」という文字を示す1セグメントの表示部134と、「Color FS −LCD」という文字を示す1セグメントの表示部135と、3桁の7セグメント表示部136とを有する。表示部134、135、136のセグメント電極が、それぞれ、コモン電極131、132、133に対向する。
図13(B)に、表示領域を示す。表示画面が、3つの表示領域A〜Cに分割されている。表示領域A〜Cは、それぞれ、表示部134〜136を内包し、コモン電極131〜133にほぼ沿う形状で画定されている。
表示部134と135との行間の中心、及び、表示部135と136との行間の中心に、それぞれ、表示領域AとBとの境界137、及び、表示領域BとCとの境界138が画定されている。表示部134と135との行間、及び、表示部135と136との行間は、それぞれ2.5mmである。
なお、バックライトは、表示領域A〜Cをそれぞれに照明する3つのマルチカラー光源を有し、表示領域A〜C間で照明光が混ざらないような配光構造の形成されたものを用いる。
図14に、第4の実施例の液晶表示装置の、コモン電極131〜133の駆動波形と、表示領域A〜Cのバックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。1フレームは16.7msとし、RGBを点灯させる3つのサブフレームSB1〜SB3に等間隔5.57msに分割した。液晶表示素子に印加するマルチプレックス駆動波形の駆動周波数は略180Hzとした。コモン電極1つ当たりの走査時間は略0.93msである。ブランク時間Bは、2.5msとした。表示領域A〜Cの順に走査される。
表示領域Aに属するコモン電極は、コモン電極131の1つなので、最初に走査される表示領域Aで、走査待ち時間なしに、サブフレームの開始時刻からブランク時間Bを設定でき、ブランク時間Bの後、サブフレームの終了時刻までが、バックライト点灯時間Lとなる。バックライト点灯時間Lは、略3.07msとなる。
表示領域B、Cに属するコモン電極も、それぞれ、コモン電極132、133の1つずつなので、表示領域Bの駆動シーケンスは、表示領域Aのそれを、表示領域Aが持つコモン電極1つ分の走査時間である略0.93msだけシフトさせることにより設定し、表示領域Cの駆動シーケンスは、表示領域Aのそれを、表示領域AとBの合計のコモン電極2つ分の走査時間である略1.86msだけシフトさせることにより設定すればよい。表示領域B、Cのバックライト点灯時間Lも、それぞれ略3.07msとなる。表示領域A〜Cでバックライト点灯時間が等しいので、表示輝度の均一化が図られる。
図14のタイミングチャートに従ってFS駆動する液晶表示装置を作製し、外観状態を観察した。なお、表示領域A〜Cのバックライトの発光輝度は等しくしている。液晶表示素子として、NWTN素子を用いた。表示領域A〜Cの表示輝度は均一であるように観察された。
以上、第1〜第4の実施例として、1/2デューティ〜1/4デューティのマルチプレックス駆動条件で、バックライトの表示領域を最大3領域に分割した液晶表示装置について説明した。なお、デューティ数は8(1/8デューティ)程度まで動作可能であると考えられる。ただし、上述のように、隣接する表示領域の表示部同士の最短距離(表示画素同士の最短距離)は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上確保する。
それより大きなデューティ数が設定される表示素子では、ドットマトリクス表示部が主要になる。このため表示部同士の間隔の確保が困難になったり、液晶表示素子とバックライトの分割部分との位置合わせが困難になったりするので、現実的ではない。また、構造が複雑になるのを防ぐためには、表示領域の数を4以下とするのが妥当であろう。
1サブフレーム時間をS、液晶表示素子のコモン電極数をN(1/Nデューティ駆動)、液晶表示素子の駆動周波数をf、表示領域数をM、表示領域に属するコモン電極数の最大値をCmaxとすると、走査待ち時間SMは、Cmax=1の場合は0、それ以外は(Cmax−(M−1))/(2f×N)となる。
ある表示領域(現表示領域と呼ぶこととする)と、その直後に走査される表示領域(次表示領域と呼ぶこととする)の、コモン電極数をそれぞれCb、Caとすると、現表示領域と次表示領域の動作シーケンスは等しいが、動作タイミングとしては、次表示領域の方が、現表示領域よりも(Cb+(Ca−1))/(2f×N)だけ遅れた動作となる。
なお、上記実施例のように、コモン電極形状は、液晶表示素子の左右方向に長い矩形状となることが多いが、表示パタンに応じて、例えばL字状等の変型形状となることもある。このような場合、コモン電極にほぼ沿って画定される表示領域も、液晶表示素子の左右方向に沿った矩形状ではない変型形状となる。
次に、上述のように作製したNWTNモード、2層TNモード、及びVAモードの3種の液晶表示素子の、室温時における電気光学応答特性について説明する。測定には、大塚電子製LCD5200を用いた。
駆動条件について説明する。駆動波形は、スタティック駆動(1/1デューティ駆動)時には矩形波、1/2デューティ駆動時には1/2バイアス、1/3及び1/4デューティ駆動においては1/3バイアスのマルチプレックス駆動波形とし、駆動周波数は500Hzとした。それぞれの駆動条件における駆動電圧VLCDは、外観上最も良好な表示状態となるように調整した。なお、スタティック駆動時におけるオフ電圧は全て0Vとした。
図15(A)は、NWTN素子、2層TN素子、及びVA素子の、オン電圧の駆動電圧VLCD、立上り応答時間(暗→明)、及び、立下り応答時間(明→暗)を、スタティック駆動、1/2デューティ〜1/4デューティのマルチプレックス駆動についてまとめた表である。立上り及び立下り応答時間はms単位で示す。
暗表示電圧印加時における定常状態の透過率を0%とし、明表示電圧印加時における定常状態の透過率を100%とした相対透過率を考え、暗表示から明表示への立上り応答時間を、相対透過率が0%から90%まで上昇するのに要する時間で定義し、明表示から暗表示への立下り応答時間を、相対透過率が100%から10%まで下降するのに要する時間で定義している。
駆動電圧VLCDの設定により応答時間は左右されることになるが、特に2層TN素子とVA素子において、デューティが大きくなるに従って、立上り応答時間が長くなる傾向が見られる。また、2層TN素子、VA素子の立下り応答について、駆動電圧VLCDを高くすると応答時間が短くなる傾向が見られるようである。
NWTN素子と、ノーマリーブラック型である2層TN素子及びVA素子とを比較すると、立下り応答時間について、ノーマリーブラック型素子の方が、NWTN素子よりも長い傾向がある。
図15(B)は、NWTN素子、2層TN素子、及びVA素子の、オン電圧の駆動電圧VLCD、及び、立上りの応答遅れ時間(0−10%時間)を、スタティック駆動、1/2デューティ〜1/4デューティのマルチプレックス駆動についてまとめた表である。立上りの応答遅れ時間はms単位で示す。立上りの応答遅れ時間は、相対透過率が0%から10%まで上昇するのに要する時間で定義している。
立上りの応答遅れ時間は、NWTN素子では、デューティが大きくなるに従って短くなる傾向が見られる。一方、2層TNの立上りの応答遅れ時間は、デューティが大きくなるに従って長くなる傾向が見られる。VA素子の立上りの応答遅れ時間は、比較的デューティによる依存性が低いが、スタティック駆動に比べて、1/2デューティ〜1/4デューティ駆動時の方が長くなる傾向がある。
NWTN素子と、ノーマリーブラック型である2層TN素子及びVA素子とを比較すると、ノーマリーブラック型素子の方が、立上りの応答遅れ時間が長い傾向がある。
特に立下りの応答時間が長くなると、色純度低下を避けるためにサブフレーム内のブランク時間を長く設定しなければならなくなるが、ブランク時間が長くなるほど、バックライト点灯時間が短くなるので、表示輝度が低下することが懸念される。
上述のように、ノーマリーブラック型素子は、表示品位を高めた液晶表示装置に用いるのに好ましいが、ノーマリーホワイト型素子に比べて立下り応答時間が長い傾向が見られ、長いバックライト点灯時間を確保することが比較的難しくなる。ノーマリーブラック型素子を用いた場合でも、バックライトの点灯時間を長く取れるFS駆動方法が望まれる。
次に、このようなFS駆動方法について考察する。あるサブフレーム(第1のサブフレームと呼ぶこととする)で明表示にされていた表示部は、次のサブフレーム(第2のサブフレームと呼ぶこととする)で明表示のままか暗表示に切り替えられる。暗表示に切り替えられる場合でも、図15(A)や図19に示したように、瞬時に透過率が低下するわけではない。一方、暗表示から第2のサブフレームで明表示に切り替えられる表示部も、図15(A)及び図15(B)に示したように、透過率が瞬時に上昇するわけではない。
第2のサブフレームの初期、図15(B)に示したような立上りの応答遅れ時間内(相対透過率が10%に達するまでの時間内)に、第1のサブフレームの表示パタンに対応する点灯色を延長して点灯させるのであれば、第2のサブフレームで明表示に切り替えられる表示部からのこの点灯色の光漏れによる色純度低下を抑制して、第1のサブフレームの表示パタンに対応する表示部の輝度を向上させることができると考えられる。
すなわち、第1のサブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを、第1のサブフレーム内で点灯させ、さらに、その直後の第2のサブフレームの初期まで延長して点灯させることにより、色純度低下を抑制しつつ、長いバックライト点灯時間を確保し、表示輝度を向上できると考えられる。
図15(A)及び図15(B)を参照して説明したように、ノーマリーブラック型素子(2層TN素子、VA素子)は、立上りの応答遅れ時間が比較的長いので、延長点灯時間を長く取れることになる。また、立下り応答時間も比較的長いので、明表示から暗表示に切り替わる表示部について、延長点灯時間中の透過率が比較的高い。次サブフレームの初期までバックライト点灯時間を延長するFS駆動方法は、このような観点から、特にノーマリーブラック型素子を用いる液晶表示装置の表示輝度向上に有効と考えられる。
なお、通常FS駆動方法で、明表示から明表示に移る表示部に対しては、明表示のまま点灯時間が延びるので、特に高い輝度向上効果が得られるであろう。
次に、第5の実施例によるFS駆動方法について説明する。液晶表示装置として、図5(A)を参照し第1の実施例で説明した1/2デューティ、1/2バイアスでマルチプレックス駆動されるものを用いる。すなわち、2つの表示領域A、Bに、それぞれ、1つずつのコモン電極101、102が属する液晶表示装置を用いる。ただし、液晶表示素子として、ノーマリーブラック型である2層TN素子を用いる。
図16に、コモン電極101、102の駆動波形と、表示領域A、Bのバックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。第1の実施例(図8)と同様に、1フレームを16.7msとし、RGBを点灯させる3つのサブフレームSB1〜SB3を等間隔5.57msに分割し、駆動周波数は略360Hzとし、コモン電極1つ当たりの走査時間は略0.7msとした。表示領域Aの駆動シーケンスを、コモン電極1つ当たりの走査時間0.7msシフトさせて、表示領域Bの駆動シーケンスとする点も、第1の実施例と同様である。
サブフレームの開始時刻から、2層TN素子の立下り応答完了を待つための略2.5ms(図15(A)の1/2デューティ駆動時参照)の後、サブフレームの終了時刻までが、当該サブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを点灯させる現サブフレームバックライト点灯時間Lに設定されている。現サブフレームバックライト点灯時間Lは、略3.07msである。なお、これが、第1の実施例と同様な駆動方法でのバックライト点灯時間Lとなる。
第5の実施例では、さらに、サブフレームの開始時刻から、その直前のサブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを延長して点灯させる前サブフレームバックライト点灯時間Dが設定されている。前サブフレームバックライト点灯時間Dは、2層TN素子の立上りの応答遅れ時間1.18ms(図15(B)の1/2デューティ駆動時参照)に設定されている。
立下り応答完了を待つための2.5ms(第1の実施例のブランク時間Bに相当)から、前サブフレームバックライト点灯時間1.18msを引いた1.32msが、バックライトを点灯させないブランク時間Bとなる。
1色当たりのバックライト点灯時間は、前サブフレームバックライト点灯時間を導入することにより、3.07msから1.18ms延びて略4.25msとなる。バックライト点灯時間の延長により、表示輝度向上が図られる。
2層TN素子を用いた液晶表示装置を、図16のタイミングチャートに従う第5の実施例の方法で駆動させた場合と、図8のタイミングチャートに従う第1の実施例と同様な方法(前サブフレームバックライト点灯時間を導入しない駆動方法)で駆動させた場合とで、外観状態を比較した。その結果、両実施例で色純度にほとんど差はないが、第5の実施例の方が、表示輝度が明らかに向上していることが確認された。
次に、第6の実施例によるFS駆動方法について説明する。液晶表示装置として、図11(A)を参照し第3の実施例で説明した1/4デューティ、1/3バイアスでマルチプレックス駆動されるものを用いる。すなわち、2つの表示領域A、Bに、それぞれ、2つずつのコモン電極121及び122、123及び124が属する液晶表示装置を用いる。ただし、液晶表示素子として、ノーマリーブラック型であるVA素子を用いる。
図17に、コモン電極121〜124の駆動波形と、表示領域A、Bのバックライトの点灯タイミングを示すタイミングチャートを示す。第3の実施例(図12)と同様に、1フレームを16.7msとし、RGBを点灯させる3つのサブフレームSB1〜SB3を等間隔5.57msに分割し、駆動周波数は略180Hzとし、コモン電極1つ当たりの走査時間は略0.7msとした。表示領域Aの駆動シーケンスを、コモン電極2つ当たりの走査時間1.4msシフトさせて、表示領域Bの駆動シーケンスとする点も、第3の実施例と同様である。
サブフレームの開始時刻から、コモン電極1つ当たりの走査時間0.7msを待ち、さらにVA素子の立下り応答時間略3.48ms(図15(A)の1/4デューティ駆動時参照)の後、サブフレームの終了時刻までが、当該サブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを点灯させる現サブフレームバックライト点灯時間Lに設定されている。現サブフレームバックライト点灯時間Lは、略1.39msとなる。
第6の実施例では、さらに、サブフレームの開始時刻から、その直前のサブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを延長して点灯させる前サブフレームバックライト点灯時間Dが設定されている。前サブフレームバックライト点灯時間Dは、VA素子の立上りの応答遅れ時間2.28ms(図15(B)の1/4デューティ駆動時参照)に設定されている。
立下り応答完了を待つための3.48msから、前サブフレームバックライト点灯時間2.28msを引いた略1.89msが、ブランク時間Bとなる。
1色当たりのバックライト点灯時間は、前サブフレームバックライト点灯時間を導入することにより、1.39msから2.28ms延びて略3.67msとなる。バックライト点灯時間の延長により、表示輝度向上が図られる。
VA素子を用いた液晶表示装置を、図17のタイミングチャートに従う第6の実施例の方法で駆動させた場合と、図12のタイミングチャートに従う第3の実施例と同様な方法(前サブフレームバックライト点灯時間を導入しない駆動方法)で駆動させた場合とで、外観状態を比較した。その結果、両実施例で色純度にほとんど差はないが、第6の実施例の方が、表示輝度が明らかに向上していることが確認された。
なお、1サブフレーム時間Sは、前サブフレームバックライト点灯時間Dと、ブランク時間Bと、現サブフレームバックライト点灯時間Lとに分けられる。つまり、S=D+B+Lと表すことができる。
サブフレーム内で、立下りの応答を待って、そのサブフレームに対応する点灯色を点灯させる現サブフレームバックライト点灯時間Lが設定される。しかし、例えば低温等で立下り応答時間が非常に長くなると、立下りの応答完了が、サブフレームの終了時刻に到達してしまう。このような場合には、現サブフレームバックライト点灯時間Lが0になってしまう。
しかし、この点灯色を、次のサブフレームの初期に点灯させれば、点灯時間を確保することができることになる。つまり、現サブフレームバックライト点灯時間Lが0となっても、前サブフレームバックライト点灯時間Dを非0とすることにより、点灯時間を確保することができる。
前サブフレームバックライト点灯時間を導入したFS駆動方法は、このように、サブフレームの表示パタンに対応する点灯色のバックライトを、そのサブフレームでは点灯させずに、その直後のサブフレームで点灯するような場合に応用することもできる。
前サブフレームバックライト点灯時間を導入したFS駆動方法では、現サブフレームバックライト点灯時間Lが非0であっても0となっても、サブフレームの表示パタンに対応する点灯色が、当該サブフレーム内のある時点から、その直後のサブフレーム内のある時点までの間に点灯される。
走査待ち時間SMは、上述のように、1サブフレーム時間をS、液晶表示素子のコモン電極数をN(1/Nデューティ駆動)、液晶表示素子の駆動周波数をf、表示領域数をM、表示領域に属するコモン電極数の最大値をCmaxとして、Cmax=1の場合は0、それ以外は(Cmax−(M−1))/(2f×N)となる。
前サブフレームバックライト点灯時間Dとブランク時間Bとの和は、走査待ち時間SMと液晶表示素子の立下り応答時間との和以上に設定されていることが好ましい。
なお、上記実施例では、フレーム内の点灯色はR、G、Bの順で点灯させたが、表示領域ごとに点灯色の点灯順を異ならせても、外観上違いが現れないので構わない。例えば、表示領域AではR、G、Bの順で点灯させ、表示領域Bでは、G、B、Rの順で点灯させてもよい。ただし、点灯色の点灯順に応じて、各サブフレームの明暗の表示パタンを適宜設定する必要がある。また、バックライト点灯色として原色であるR、G、Bを用いているが、これ以外の発光色とすることもできる。
なお、上記実施例では、通常FS駆動液晶表示装置を例に説明したが、カラーブレークレスFS駆動液晶表示装置を用いることもできる。カラーブレークレスFS駆動では、各表示部を1フレーム当たり1つのサブフレームでしか明表示としないが、サブフレームで、原色のみでなく、複数色の光源を同時点灯して混色表示を行うことにより、所望のカラー表示を行うことができる。カラーブレークレスFS駆動の場合、表示領域ごとにフレームでの点灯色を変えることにより、表示画面中の同時発色数を増やすことができる。
なお、上記実施例では、1フレームを3つのサブフレームに分割していたが、サブフレーム数は、必要な表示態様に応じて、2つ以上の適当な数とすることができる。また、必要に応じて、サブフレームを不等間隔に分割してもよい。1フレーム期間を、1フレーム表示ごとに異ならせることも可能であり、これに伴ってサブフレーム時間を変化させることもできる。
なお、実施例の液晶表示装置、FS駆動方法は、以下のような製品に適用することができる。例えば、セグメント表示部、または、セグメント表示部及びドットマトリクス表示部を含む車載用情報表示装置に適用することができる。また、例えば、カーオーディオの表示部、コピー機等の操作パネル表示部に適用することもできる。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。