JP5349434B2 - 放熱性樹脂被覆アルミニウム材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
第1の発明は請求項1において、アルミニウム材と、当該アルミニウム材の両面に形成された化成皮膜と、当該化成皮膜の少なくとも一方の表面に形成され、0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜とを備え、当該樹脂皮膜は、熱硬化性樹脂であって、ポリエステル系樹脂100重量部に対してメラミン系樹脂10〜50重量部で配合されたメラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂と、115〜140nmの平均粒径と6〜28m2/gの比表面積を有するカーボンブラックと、ニッケルとを含有する塗料から形成され、前記カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率が40〜90%であることを特徴とする放熱性樹脂被覆アルミニウム材とした。更に第1の発明は請求項2では、前記塗料において、前記ポリエステル系樹脂の100重量部に対して、カーボンブラックが15〜35重量部の割合で、ニッケルが30〜100重量部の割合で配合されるものとした。
本発明に係る第1の発明は、アルミニウム材と、その両面に形成された化成皮膜と、その一方の表面に形成され0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜とを備える放熱性樹脂被覆アルミニウム材である。樹脂皮膜は、熱硬化性樹脂と、平均粒径が115〜140nmと6〜28m2/gの比表面積のカーボンブラックと、ニッケルとを含有する塗料から形成される。カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率は、40〜90%である。
アルミニウム材の材質は特に限定されるものではないが、筐体を形成・保持するに足る強度を有し、また、絞り加工、曲げ加工時において十分なプレス成形加工性を有するものが好適に用いられる。このようなアルミニウム材としては、1000系、3000系及び5000系のアルミニウム合金が挙げられる。また、アルミニウム材の形状としては、0.1〜2.5mm厚さの板材が好適に用いられる。
アルミニウム材の両面には、化成皮膜が形成される。化成皮膜としては、反応型及び塗布型の化成皮膜が挙げられる。反応型及び塗布型の化成皮膜のいずれでもよく、特に制限されるものではない。アルミニウム材と樹脂皮膜の両方に対して密着性が良好な反応型化成皮膜を用いるのが好ましい。反応型化成皮膜としては、りん酸クロメート、クロム酸クロメート、りん酸ジルコニウム、りん酸チタニウム等の処理液で形成される皮膜が好適に用いられる。特に、りん酸クロメート皮膜が好ましく、アルミニウム材の耐食性を大きく高めることができる。りん酸クロメート皮膜は、Cr量として10〜50mg/m2であるのが好ましい。Cr量が10mg/m2未満では耐食性が劣る場合があり、50mg/m2を超えても耐食性が劣る場合がある。
D−1.皮膜厚
樹脂皮膜の皮膜厚は、0.4〜1.9μmである。皮膜厚が0.4μm未満では、放熱性が劣る。皮膜厚が1.9μmを超えると、アルミニウム材表面の凸部が樹脂皮膜で覆われて露出し難くなり、導電性が劣る。なお、ここで言う皮膜厚とは、焼付乾燥後のものである。
D−2−1.熱硬化性樹脂
本発明に用いられる熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えばエポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂、イソシアネート系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂などを用いることができる。電子機器からの放射熱はプランクの法則に従い、波長8〜10μmにピークを有する赤外線領域の熱放射性を向上させることが放熱性向上に有効である。したがって、特に、メラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂を用いることによって、このような放熱性を向上することができる。なお、キルヒホッフの法則より熱放射率と熱吸収率は等しく、赤外線の吸収性の高い材料は、赤外線の放射性も高い材料といえる。
赤外線放射性による樹脂皮膜への放熱性付与として、カーボンブラックが必須成分として含有される。カーボンブラックは、炭化水素原料をチャンネル法、ファーネス法、熱分解法、アセチレン法等により熱分解することにより製造される黒色微粉末の物質である。チャンネル法は主として天然ガスを原料に用い、これを燃焼室内で多数のバーナーチップから不完全燃焼させ、適当な高さにおいて鉄製のチャンネルに衝突させて生成するカーボンブラックを付着させ、これを捕集する方法である。ファーネス法は、原料を耐火煉瓦で内張した炉内で、酸素が不足する状態で熱分解させる方法である。熱分解法は完全に空気の供給を断ち、熱を他から供給して熱分解する方法である。アセチレン法は、アセチレンガスの熱分解による方法である。
カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率は、40〜90%である。面積占有率が40%未満では、カーボンブラックの分散状態に偏りが多く、曲げ加工性が劣る。一方、90%を超えると、ニッケルの周囲にカーボンブラックが凝集し、樹脂皮膜中のカーボンブラックの分布が不均一となり曲げ加工性が劣る。
樹脂皮膜への導電性付与として、ニッケルが必須成分として含有される。ニッケルには、球状、鎖型、鱗片状等の種類があり、特に制限されるものではないが、鎖型、鱗片状のものが、特に加工性や導電性の観点から好ましい。ニッケルは、上記種類の中から1種又は2種以上を混合したものが用いられる。
E−1.化成処理工程
アルミニウム材表面に樹脂皮膜を形成する前に、その両面に化成処理が施される。化成処理は、アルミニウム材に所定の化成処理液をスプレーしたり、アルミニウム材を処理液中に所定の温度で所定時間浸漬したりすることによって行なわれる。りん酸クロメート、クロム酸クロメート、りん酸ジルコニウム、りん酸チタニウム等の化成処理液は、市販のものを用いることができる。
上記熱硬化性樹脂とカーボンブラックとを有機溶剤に添加し、更に分散剤を添加して分散溶液を調製する。そして、分散溶液中の添加物を分散させて、分散粒度が10μm以下となるようにする。分散時間は、適宜選択すればよいが、通常、30〜180分間が好ましい。次いで、この分散溶液にニッケルを更に添加、分散させて塗料を調製する。
化成処理したアルミニウム材の一方の表面に、上記塗料を塗布する。塗布方法としては、ロールコート方式が好ましい。ロールコート方式では、通常、塗料をパンに貯めておき、ピックアップロールでパンから塗料をかき上げてアプリケーターロールに転移する。次いで、素材に塗料を転移させる。素材の搬送は、バックアップロールを用いて行う。焼付乾燥後の皮膜厚が0.4〜1.9μmとなるように、ピックアップロールとアプリケーターロール間のニップ圧や塗料粘度を適宜調整する。
最高到達板温度180〜300℃で焼付時間が15〜80秒の条件で、塗布した塗料を焼付硬化させる。焼付には、熱風炉が好適に用いられる。熱風炉内の温度と炉内を通過する時間を調整することによって、上記焼付硬化条件が達成される。最高到達板温度が180℃未満又は焼付時間が15秒未満では、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となり曲げ加工性が劣る。一方、最高到達板温度が300℃を超えるか又は焼付時間が80秒を超えると、熱硬化性樹脂の劣化が始まり曲げ加工性が劣る。
次に、本発明に係る第2の発明は、アルミニウム材と、その両面に形成された化成皮膜と、その一方の表面に形成され0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜とを備える放熱性樹脂被覆アルミニウム材である。樹脂皮膜は、分子内にベンゼン環を有し、かつ、21000〜28000の数平均分子量を有するポリエステル系樹脂と、メラミン系樹脂と、115〜140nmの平均粒径を有するカーボンブラックと、ニッケルと、液状ワックスとを含有する塗料から形成される。以下においては、第1の発明と相違する点について詳細に説明する。アルミニウム材、化成皮膜、樹脂皮膜の皮膜厚については、第1の発明と同じである。
G−1.樹脂皮膜の構成
G−1−1.熱硬化性樹脂
第2発明の熱硬化性樹脂には、分子内にベンゼン環を有し、かつ、21000〜28000の数平均分子量を有するポリエステル系樹脂をメラミン系樹脂で架橋して硬化させたものが用いられる。メラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂について、以下に詳述する。ポリエステル系樹脂の分子内にベンゼン環が存在することにより、樹脂皮膜内に疎水性を付与できる。その結果、水が浸透してもこれをはじくために、耐食性が向上する。ポリエステル系樹脂は多塩基酸と多価アルコールを反応させて合成されるもので、分子内にベンゼン環を有することから、多塩基酸として、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸等が用いられる。多価アルコールには、プロピレングリコール等が用いられる。合成によって得られるポリエステル系樹脂の数平均分子量を、21000〜28000とするのが好ましい。このような高分子量のポリエステル系樹脂は、一般に架橋点が少なくなるので架橋密度は小さくなり、樹脂皮膜の強度が不足し易い欠点がある。本発明ではこのような高分子量のポリエステル系樹脂を用いるものであるが、その欠点を補うべく、樹脂皮膜を薄膜とし、後述のように、樹脂皮膜の必須構成物質としてニッケルを配合することにより樹脂皮膜の耐傷付き性として十分な性能が発現されるように設計されている。
本発明に用いられるカーボンブラックの製造方法に関しては、平均粒径が115〜140nmであるカーボンブラックが得られるのであれば、特に制限はない。第1の発明で用いるカーボンブラックと異なり、比表面積の制限はない。平均粒径を上記範囲とするのは第1の発明と同じである。また、カーボンブラックの熱硬化性樹脂に対する添加量も第1の発明と同じく、熱硬化性樹脂100重量部に対して15〜35重量部であり、この範囲が好ましい理由も第1の発明と同じである。平均粒径もまた、第1の発明と同様に測定される。
カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率は、第1の発明と異なり限定されるものではない。しかしながら、50〜70%とするのが好ましい、面積占有率が50%未満では、放熱性及び耐食性が劣る場合がある。一方、70%を超えると導電性が劣る場合がある。
添加されるニッケルについても、その種類、平均粒径、熱硬化性樹脂に対する添加量に関して第1の発明で用いるものと同じである。
樹脂皮膜への潤滑性付与として、液状ワックスが必須成分として含有される。液状ワックスは融点が室温以下であり、一価アルコール脂肪酸エステル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル等が用いられる。液状ワックスは樹脂皮膜中において液体状で存在し、樹脂皮膜と化成皮膜の界面に存在する場合、樹脂皮膜の密着性を低下させ耐食性が低下する。このように、樹脂皮膜と化成皮膜の界面に存在する液状ワックスは腐食起因となる。本発明では、熱硬化性樹脂として高分子量のポリエステル系樹脂を用いているため、分子間力が強く作用し樹脂の絡み合いが多くなる。その結果、液状ワックスは樹脂皮膜と化成皮膜の界面ではなく絡み合った樹脂皮膜中に保持されるため、樹脂皮膜の密着性が低下しない。
第2の発明においては、樹脂皮膜表面の算術平均粗さをRa(μm)、輪郭曲線平均長さをRSm(μm)として、Ra/RSmを0.058以下とするのが好ましい。RaとRSmは、JISB0601に準拠して、例えば樹脂皮膜表面をレーザー顕微鏡で分析して求められる。ここで、Ra/RSmの指標は樹脂皮膜表面の凸部の分布を表わすもので、凸部の高さが低く、凸部の間隔が大きいほど小さな値となる。本発明で用いる樹脂皮膜の皮膜厚さは薄いために、平均粒径の大きいニッケルが凸部を形成する。Ra/RSmが0.058以下では、ニッケルが樹脂皮膜中に適切に分散されるので、樹脂皮膜中にカーボンブラックが十分に存在することとなり、放熱性に優れる。一方、Ra/RSmが0.058を超えると、ニッケルが樹脂皮膜中に多く分布し樹脂分が少なくなるため、放熱性に劣る。Raは0.4〜1.2μm以下であるのが好ましく、RSmは10.4〜13.0μmであるのが好ましい。
樹脂皮膜表面の表面エネルギーは、60×10−3J/m2以下とするのが好ましい。60×10−3J/m2を超えると、潤滑性が不足して加工性が劣る場合がある。
化成処理工程、ならびに、酸やアルカリの洗浄は、第1の発明と同じである。
上記カーボンブラックと分散剤を有機溶剤中に添加し、分散溶液を調製する。そして、分散溶液中の添加剤を分散させる。分散剤2〜35gとカーボンブラック5〜100gを、有機溶剤1リットルに分散する。分散時間は、適宜選択すればよいが、通常、30〜180分間が好ましい。次いで、この分散溶液に、上述のポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、液状ワックスを加えて分散させ、分散粒度が10μm以下となるようにする。ポリエステル系樹脂の添加量は、分散溶液中のカーボンブラックとの前述の重量比に基づき、メラミン樹脂と液状ワックスの添加量は、前述のポリエステル系樹脂との重量比に基づく。この分散時間も適宜選択すればよいが、通常、30〜180分間が好ましい。この分散溶液にニッケルを更に添加し、これを分散させて塗料を調製する。ニッケルの添加量は、分散溶液中のポリエステル系樹脂との前述の重量比に基づく。この分散時間もまた適宜選択すればよいが、通常、30〜180分間が好ましい。なお、分散剤及び有機溶剤には、第1の発明と同じものが用いられる。また、分散に用いる分散装置や分散条件は、第1の発明と同じである。必要に応じて、レベリング剤、ワキ防止剤、艶消し剤等を含有させても良い。
なお、分散時間が30分未満の場合や180分を超える場合、ならびに、分散粒度が10μmを超える場合の不利な点は、第1の発明と同じである。
塗布工程は、第1の発明と同じである。焼付硬化による樹脂皮膜の形成工程では、最高到達板温度200〜250℃で焼付時間が20〜80秒の条件で、塗布した塗料を焼付硬化させる。第1の発明と同様に、焼付には熱風炉が好適に用いられる。熱風炉の温度と炉内を通過する時間を調整することによって、上記焼付硬化条件が達成される。最高到達板温度が200℃未満又は焼付時間が20秒未満では、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となる。その結果、樹脂皮膜中を水が拡散し易くなり耐食性が劣る。一方、最高到達板温度が250℃を超えるか又は焼付時間が80秒を超えると、熱硬化性樹脂の劣化が進行して樹脂の絡み合い構造が十分に得られない。その結果、樹脂皮膜中を水が拡散し易くなり耐食性が劣る。なお、樹脂皮膜中に液状ワックスが含有された状態を確実に達成するために、最高到達板温度は液状ワックスの沸点よりも10℃以下とするのが好ましい。
(実施例1〜6及び比較例1〜6)
ポリエステル系樹脂(アルキド樹脂)100重量部に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を20重量部配合した熱硬化性樹脂100重量部と、表1に示すカーボンブラック25重量部を、有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加した。更に、これに分散剤(非イオン性化合物)10重量部を添加した。有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量125gに対して、1リットルであった。このようにして調製した溶液を、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で80分間攪拌した。得られた分散溶液の分散粒度は8μmであった。更に、ニッケル(鱗片状)を熱硬化性樹脂100重量部に対して40重量部添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で攪拌して、塗料を調製した。
ポリエステル系樹脂(アルキド樹脂)100重量部に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を20重量部配合した熱硬化性樹脂100重量部と、表1に示すカーボンブラック20重量部を、有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加した。更に、これに分散剤(非イオン性化合物)12重量部を添加した。有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量135gに対して、1リットルであった。このようにして調製した溶液を、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で40分間攪拌した。得られた分散溶液の分散粒度は9μmであった。更に、ニッケル(鱗片状)を熱硬化性樹脂100重量部に対して30重量部添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で攪拌して、塗料を調製した。
ポリエステル系樹脂(アルキド樹脂)100重量部に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を20重量部配合した熱硬化性樹脂100重量部と、表1に示すカーボンブラック30重量部を、有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加した。更に、これに分散剤(非イオン性化合物)13重量部を添加した。有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量127gに対して、1リットルであった。このようにして調製した溶液を、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で160分間攪拌した。得られた分散溶液の分散粒度は5μmであった。更に、ニッケル(鱗片状)を熱硬化性樹脂100重量部に対して80重量部添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で攪拌して、塗料を調製した。
ポリエステル系樹脂(アルキド樹脂)100重量部に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を20重量部配合した熱硬化性樹脂100重量部と、表1に示すカーボンブラック20重量部を、有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加した。更に、これに分散剤(非イオン性化合物)11重量部を添加した。有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量134gに対して、1リットルであった。このようにして調製した溶液を、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で10分間攪拌した。得られた分散溶液の分散粒度は12μmであった。更に、ニッケル(鱗片状)を熱硬化性樹脂100重量部に対して50重量部添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で攪拌して、塗料を調製した。
ポリエステル系樹脂(アルキド樹脂)100重量部に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を20重量部配合した熱硬化性樹脂100重量部と、表1に示すカーボンブラック30重量部を、有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加した。更に、これに分散剤(非イオン性化合物)14重量部を添加した。有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量133gに対して、1リットルであった。このようにして調製した溶液を、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で200分間攪拌した。得られた分散溶液の分散粒度は4μmであった。更に、ニッケル(鱗片状)を熱硬化性樹脂100重量部に対して50重量部添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で攪拌して、塗料を調製した。
曲げ加工性は、試料の樹脂皮膜面を外側にして180度2T曲げ又は3T曲げを行い、樹脂皮膜の割れを目視で観察した。割れの評価基準は、以下の通りである。
○:樹脂皮膜の割れなし
△:小さな樹脂皮膜の割れがあるが使用可能
×:大きな樹脂皮膜の割れがあり使用不可
○:剥離なし
×:剥離あり
導電性は、四端子法により、銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5R)を荷重80gで試料の樹脂皮膜面に接触させて電気抵抗値を測定した。導電性の評価基準は、以下の通りである。
○:4Ω以下
○△:4Ωを超え、6Ω以下
△:6Ωを超え、10Ω以下
×:10Ωを超える
放熱性は、樹脂被覆アルミニウム材を用いて筐体を作製し、筐体表面温度を測定することによって評価した。図1に示すように、樹脂皮膜を外側にして、底面が150mm×150mm、高さ100mmの筐体3を作製した。筐体3内部に光源2として60Wの電球を設置して通電し、発光・発熱させ、筐体3内部の温度が定常状態となった時点における筐体3表面の温度を測定した。放熱性の評価基準は、以下の通りである。
○:定常状態の温度が30℃以下
△:定常状態の温度が30℃を超え、35℃以下
×:定常状態の温度が35℃を超える
比較例2では、樹脂皮膜厚が厚過ぎたので導電性が不合格であった。
比較例3では、カーボンブラックの平均粒径が小さ過ぎたので、放熱性が不合格であった。
比較例4では、カーボンブラックの平均粒径が大き過ぎたので、曲げ加工性が不合格であった。
比較例5では、カーボンブラックの比表面積が小さ過ぎて面積占有率が90%を超えた為、曲げ加工性が不合格であった。
比較例6では、カーボンブラックの比表面積が大き過ぎて面積占有率が40%未満の為、曲げ加工性が不合格であった。
比較例7では、最高到達温度が低過ぎ焼付時間も短過ぎて面積占有率が40%未満の為、曲げ加工性が不合格であった。
比較例8では、最高到達温度が高過ぎ焼付時間も長過ぎて面積占有率が40%未満の為、曲げ加工性が不合格であった。
(実施例9〜19及び比較例9〜12)
表2に示すカーボンブラック25重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で85分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸由来のベンゼン環を有し、表2に示す分子量を有するポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスとしてラウリン酸メチルを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で80分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は8μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して30重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で75分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。液状ワックスについては、実施例17では、ラウリン酸メチルに代えてミリスチン酸メチルを用い、実施例18では、ラウリン酸メチルに代えてミリスチル酸イソプロピルを用い、実施例19では、熱硬化性樹脂100重量部に対してラウリン酸メチルを5重量部配合した。
表2に示すカーボンブラック30重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で40分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸由来のベンゼン環を有し、表2に示す分子量を有するポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスとしてラウリン酸メチルを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で45分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は9μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して80重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で50分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。
表2に示すカーボンブラック20重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で160分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸由来のベンゼン環を有し、表2に示す分子量を有するポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスとしてラウリン酸メチルを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で155分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は5μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して40重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で150分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。
表2に示すカーボンブラック20重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で10分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸由来のベンゼン環を有し、表2に示す分子量を有するポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスとしてラウリン酸メチルを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で12分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は15μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して50重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で13分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。
表2に示すカーボンブラック30重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で210分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸由来のベンゼン環を有し、表2に示す分子量を有するポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスに代えて粉末状ワックスであるポリエチレンワックスを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で215分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は4μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して50重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で220分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。
平均粒径120nmで、比表面積が14m2/gであるカーボンブラック30重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で80分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、分子内にベンゼン環を有さず、分子量が38000であるポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスとしてラウリン酸メチルを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で85分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は7μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して45重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で90分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。
試料の樹脂皮膜を外側にして180度2T曲げを行い、塩水噴霧試験100hを行い、曲げ部の腐食の程度を目視で観察した。評価基準は、以下の通りである。
○:腐食が認められない
○△:僅かに腐食が認められる
△:半分の面積に腐食が認められる
×:全面に腐食が認められる
比較例10では、ポリエステル系樹脂の数平均分子量が小さ過ぎたので耐食性が劣った。
比較例11では、カーボンブラックの平均粒径が小さ過ぎたので放熱性が劣った。
比較例12では、カーボンブラックの平均粒径が大き過ぎたので、曲げ加工性と耐食性が劣った。
比較例13では、樹脂皮膜厚が厚過ぎ、カーボンブラックの平均粒径が大き過ぎた。更に、最高到達温度が低過ぎ焼付時間も短過ぎた。その結果、曲げ加工性、導電性、耐食性が劣った。
比較例14では、樹脂皮膜厚が厚過ぎ、カーボンブラックの平均粒径が大き過ぎ、液状ワックスの代わりにポリエチレンワックスを用いた。更に、最高到達温度が高過ぎ焼付時間も長過ぎた。その結果、曲げ加工性、導電性、耐食性が劣った。
比較例15では、分子内のベンゼン環を有せず、かつ、数平均分子量の大き過ぎるポリエステル系樹脂を用いたので均一な樹脂被覆アルミニウム材が得られず、評価ができなかった。
2・・・光源
3・・・筐体
4・・・粉末状ワックス
5・・・液状ワックス
D1・・・粉末状ワックス中における水の拡散方向
D2・・・液状ワックスの表面近傍における水の拡散方向
Claims (3)
- アルミニウム材と、当該アルミニウム材の両面に形成された化成皮膜と、当該化成皮膜の少なくとも一方の表面に形成され、0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜とを備え、
当該樹脂皮膜は、熱硬化性樹脂であって、ポリエステル系樹脂100重量部に対してメラミン系樹脂10〜50重量部で配合されたメラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂と、115〜140nmの平均粒径と6〜28m2/gの比表面積を有するカーボンブラックと、ニッケルとを含有する塗料から形成され、前記カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率が40〜90%であることを特徴とする放熱性樹脂被覆アルミニウム材。 - 前記塗料において、前記ポリエステル系樹脂の100重量部に対して、カーボンブラックが15〜35重量部の割合で、ニッケルが30〜100重量部の割合で配合される、請求項1に記載の放熱性樹脂被覆アルミニウム材。
- 請求項1又は2に記載の放熱性樹脂被覆アルミニウム材の製造方法において、
アルミニウム材の両面に化成処理を施す工程と、
熱硬化性樹脂であって、ポリエステル系樹脂100重量部に対してメラミン系樹脂10〜50重量部で配合されたメラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂と、115〜140nmの平均粒径と6〜28m2/gの比表面積を有するカーボンブラックと、分散剤とを有機溶剤に添加し、これら添加物を分散させて分散粒度を10μm以下とし、これにニッケルを更に添加、分散させて塗料を調製する工程と、
前記化成処理を施したアルミニウム材の少なくとも一方の表面に前記塗料を塗布する工程と、
最高到達板温度180〜300℃で焼付時間が15〜80秒の条件で、塗布した塗料を焼付硬化させて、0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする放熱性樹脂被覆アルミニウム材の製造方法。
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