JP5349434B2 - 放熱性樹脂被覆アルミニウム材及びその製造方法 - Google Patents

放熱性樹脂被覆アルミニウム材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、内部で熱を発する電子部品、家電製品等の筐体や放熱板等に用いられ、放熱性に加えて導電性、曲げ加工性、耐食性に優れた樹脂被覆アルミニウム材、ならびに、その製造方法に関する。
電子機器に組み込まれる電子部品の小型化、高性能高集積化により、電子機器内部が高温化する。これによる電子機器の誤動作や寿命低下を防止する為、熱を効率よく電子機器筐体の外部へ排出することが重要な課題となっている。このような課題に対し、自然空冷よりもファンを用いた強制空冷が有効であることが知られている。具体的には、電子機器筐体に開口部を設け、更に、その周辺に設けたファンを作動させて、電子機器内部で発生する熱を外部に排出するものである。
しかしながら、この方法では、外部から水分や埃等が内部に侵入し易く、電子機器内部の電子回路がショートする場合があるという問題が残った。そこで、電子機器内部の温度上昇を防止するために、自然空冷を利用することが検討されている。自然空冷による空冷効率を高めるために、熱伝導率の高い材料を用いて高い放熱性を有する表面処理が行われる。具体的には、特許文献1、2に開示されているように、放熱材としてアルミニウム材が用いられ、その表面に放熱性樹脂皮膜を設けたものである。
一方、電子機器筐体の材料として、樹脂被覆アルミニウム材を用いることにより、電子機器の軽量化が可能である。更に、電子機器筐体には、アース性や電磁波シールド性が要求されることから、樹脂被覆アルミニウム材にも導電性を付与する工夫がなされている。具体的には、樹脂皮膜中に導電性物質を含有させるものである。電子機器筐体には、高性能の導電性が要求されており、樹脂皮膜中に導電性物質を含有させただけでは、電気抵抗値が高く、部分的に、樹脂皮膜を削って、アルミニウム表面を露出させて対応する場合もある。そこで、予め、絶縁性の樹脂皮膜をできるだけ少なくした薄膜樹脂被覆アルミニウム材の適用が検討されている。
薄膜樹脂被覆アルミニウム材では、樹脂皮膜中に存在する腐食起因物質である水がアルミニウム材表面に到達し易く、腐食し易いという問題がある。特に、樹脂皮膜中に導電性物質が含有されていると、樹脂皮膜が不連続となり、水が樹脂皮膜中を透過し易く、アルミニウム材が腐食し易い。また、電子機器筐体用の樹脂被覆アルミニウム材を海外においてプレス成形加工する場合は、コイルの状態で、高温多湿な環境下に保管されることがあり、このような用途での樹脂被覆アルミニウム材には、優れた耐食性が要求される。
特許文献1に開示された放熱性樹脂被覆アルミニウム材では、実施例に記載されている通り、放射率が高く、放熱性は優れている。しかしながら、皮膜厚が10μmと厚いために電気抵抗値が高く(例えば、700Ω)、近年、電子機器筐体に要求される導電性を満足できていないという問題が残った。更に、放熱性樹脂被覆アルミニウム材に対する曲げ加工性や耐食性の向上も要望されていた。
特開2004−160979公報
本発明は、上記問題点や要望に鑑み、放熱性に加えて導電性、曲げ加工性及び耐食性に優れた放熱性樹脂被覆アルミニウム材、ならびに、その製造方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
第1の発明は請求項1において、アルミニウム材と、当該アルミニウム材の両面に形成された化成皮膜と、当該化成皮膜の少なくとも一方の表面に形成され、0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜とを備え、当該樹脂皮膜は、熱硬化性樹脂であって、ポリエステル系樹脂100重量部に対してメラミン系樹脂10〜50重量部で配合されたメラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂と、115〜140nmの平均粒径と6〜28m/gの比表面積を有するカーボンブラックと、ニッケルとを含有する塗料から形成され、前記カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率が40〜90%であることを特徴とする放熱性樹脂被覆アルミニウム材とした。更に第1の発明は請求項2では、前記塗料において、前記ポリエステル系樹脂の100重量部に対して、カーボンブラックが15〜35重量部の割合で、ニッケルが30〜100重量部の割合で配合されるものとした。
第2の発明は、アルミニウム材と、当該アルミニウム材の両面に形成された化成皮膜と、当該化成皮膜の少なくとも一方の表面に形成され、0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜とを備え、当該樹脂皮膜は、分子内にベンゼン環を有し、かつ、21000〜28000の数平均分子量を有するポリエステル系樹脂と、メラミン系樹脂と、115〜140nmの平均粒径を有するカーボンブラックと、ニッケルと、液状ワックスとを含有する塗料から形成されることを特徴とする放熱性樹脂被覆アルミニウム材とした。
第2の発明では、前記樹脂皮膜表面の算術平均粗さをRa(μm)、輪郭曲線平均長さをRSm(μm)として、Ra/RSmを0.058以下とした。
第2の発明では、前記樹脂皮膜表面の表面エネルギーを60×10−3J/m以下とした。
第1の発明の製造方法については請求項において、請求項1又は2に記載の放熱性樹脂被覆アルミニウム材の製造方法において、アルミニウム材の両面に化成処理を施す工程と、熱硬化性樹脂であって、ポリエステル系樹脂100重量部に対してメラミン系樹脂10〜50重量部で配合されたメラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂と、115〜140nmの平均粒径と6〜28m/gの比表面積を有するカーボンブラックと、分散剤とを有機溶剤に添加し、これら添加物を分散させて分散粒度を10μm以下とし、これにニッケルを更に添加、分散させて塗料を調製する工程と、前記化成処理を施したアルミニウム材の少なくとも一方の表面に前記塗料を塗布する工程と、最高到達板温度180〜300℃で焼付時間が15〜80秒の条件で、塗布した塗料を焼付硬化させて、0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする放熱性樹脂被覆アルミニウム材の製造方法とした。
第2の発明の製造方法については、アルミニウム材の少なくとも一方の表面上に形成された樹脂皮膜を備える放熱性樹脂被覆アルミニウム材の製造方法において、アルミニウム材の両面に化成処理を施す工程と、115〜140nmの平均粒径を有するカーボンブラックと分散剤とを有機溶剤に添加し、これら添加物を分散させ、これに、分子内にベンゼン環を有し、かつ、21000〜28000の数平均分子量を有するポリエステル系樹脂と、メラミン系樹脂と、液状ワックスとを加えて分散させて分散粒度を10μm以下とし、これにニッケルを更に添加、分散させて塗料を調製する工程と、前記化成処理を施したアルミニウム材の少なくとも一方の表面に前記塗料を塗布する工程と、最高到達板温度200〜250℃で焼付時間が20〜80秒の条件で、塗布した塗料を焼付硬化させて、0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする放熱性樹脂被覆アルミニウム材の製造方法とした。
第1の発明では、特定の平均粒径と比表面積を有するカーボンブラックを用い、更に、特定の分散条件で塗料を調製して塗装及び焼付硬化させることにより、カーボンブラックの分散が良好となり、カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率が特定の範囲とすることができる。これによって、樹脂被覆アルミニウム材の放熱性に加えて、良好な導電性と曲げ加工性が得られる。
第2の発明では、熱硬化性樹脂として高分子量のポリエステル系樹脂を用いているため、樹脂のからみ合い構造が多くなり、液状ワックスが樹脂皮膜中で固定され、腐食起因となる水分の拡散を遅延させるため、耐食性が向上する。特に、曲げ加工後の耐食性が向上する。ニッケル及び粗大カーボンブラックを高分子量のポリエステル系樹脂をメラミン樹脂で硬化させた樹脂皮膜中に適切な方法で分散させることにより放熱性に加えて、良好な導電性、曲げ加工性及び耐食性も得られる。
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材の放熱性を評価するための装置を模式的に示す断面図である。 本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材の樹脂皮膜中に存在する粉末状ワックスと液状ワックスにおける水分の拡散を表わす模式図である。
A.第1の発明に係る放熱性樹脂被覆アルミニウム材
本発明に係る第1の発明は、アルミニウム材と、その両面に形成された化成皮膜と、その一方の表面に形成され0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜とを備える放熱性樹脂被覆アルミニウム材である。樹脂皮膜は、熱硬化性樹脂と、平均粒径が115〜140nmと6〜28m/gの比表面積のカーボンブラックと、ニッケルとを含有する塗料から形成される。カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率は、40〜90%である。
B.アルミニウム材
アルミニウム材の材質は特に限定されるものではないが、筐体を形成・保持するに足る強度を有し、また、絞り加工、曲げ加工時において十分なプレス成形加工性を有するものが好適に用いられる。このようなアルミニウム材としては、1000系、3000系及び5000系のアルミニウム合金が挙げられる。また、アルミニウム材の形状としては、0.1〜2.5mm厚さの板材が好適に用いられる。
C.化成皮膜
アルミニウム材の両面には、化成皮膜が形成される。化成皮膜としては、反応型及び塗布型の化成皮膜が挙げられる。反応型及び塗布型の化成皮膜のいずれでもよく、特に制限されるものではない。アルミニウム材と樹脂皮膜の両方に対して密着性が良好な反応型化成皮膜を用いるのが好ましい。反応型化成皮膜としては、りん酸クロメート、クロム酸クロメート、りん酸ジルコニウム、りん酸チタニウム等の処理液で形成される皮膜が好適に用いられる。特に、りん酸クロメート皮膜が好ましく、アルミニウム材の耐食性を大きく高めることができる。りん酸クロメート皮膜は、Cr量として10〜50mg/mであるのが好ましい。Cr量が10mg/m未満では耐食性が劣る場合があり、50mg/mを超えても耐食性が劣る場合がある。
D.樹脂皮膜
D−1.皮膜厚
樹脂皮膜の皮膜厚は、0.4〜1.9μmである。皮膜厚が0.4μm未満では、放熱性が劣る。皮膜厚が1.9μmを超えると、アルミニウム材表面の凸部が樹脂皮膜で覆われて露出し難くなり、導電性が劣る。なお、ここで言う皮膜厚とは、焼付乾燥後のものである。
D−2.樹脂皮膜の構成
D−2−1.熱硬化性樹脂
本発明に用いられる熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えばエポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂、イソシアネート系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂などを用いることができる。電子機器からの放射熱はプランクの法則に従い、波長8〜10μmにピークを有する赤外線領域の熱放射性を向上させることが放熱性向上に有効である。したがって、特に、メラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂を用いることによって、このような放熱性を向上することができる。なお、キルヒホッフの法則より熱放射率と熱吸収率は等しく、赤外線の吸収性の高い材料は、赤外線の放射性も高い材料といえる。
メラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂について述べる。ポリエステル系樹脂としては、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及び変成アルキド樹脂等が用いられる。アルキド樹脂は、無水フタル酸などの多塩基酸とグリセリンなどの多価アルコールとの縮合物を骨格とし、これを脂肪酸の油脂で変性したものである。用いる油脂の種類と含有量によって、短油性アルキド樹脂、中油性アルキド樹脂、長油性アルキド樹脂及び超長油性アルキド樹脂に分類される。不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和多塩基酸又は飽和多塩基酸とグリコール類をエステル化することによって合成される。多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びアジピン酸が用いられ、グリコール類としては、プロピレングリコールが多く用いられる。変成アルキド樹脂としては、天然樹脂、フェノール樹脂又はスチレンなどの重合性モノマーで変成されたものが用いられる。
メラミン系樹脂としては、メチル化メラミン系樹脂、ブチル化メラミン系樹脂などが用いられるが、加工性の点からメチル化メラミン系樹脂が好ましい。メラミン系樹脂は広範囲の赤外線波長域において赤外線放射性(吸収性)が良好であり、ポリエステル系樹脂100重量部に対して好ましくは10〜50重量部、より好ましくは20〜40重量部の割合で配合される。メラミン系樹脂の配合割合が10重量部未満では、皮膜の架橋度が不十分となり、曲げ加工性及びその他塗膜の一般物性が低下する場合がある。一方、メラミン系樹脂の配合割合が50重量部を超えると、架橋反応が進行し過ぎて塗膜が硬くなり過ぎ、曲げ加工性が低下する場合がある。
D−2−2.カーボンブラック
赤外線放射性による樹脂皮膜への放熱性付与として、カーボンブラックが必須成分として含有される。カーボンブラックは、炭化水素原料をチャンネル法、ファーネス法、熱分解法、アセチレン法等により熱分解することにより製造される黒色微粉末の物質である。チャンネル法は主として天然ガスを原料に用い、これを燃焼室内で多数のバーナーチップから不完全燃焼させ、適当な高さにおいて鉄製のチャンネルに衝突させて生成するカーボンブラックを付着させ、これを捕集する方法である。ファーネス法は、原料を耐火煉瓦で内張した炉内で、酸素が不足する状態で熱分解させる方法である。熱分解法は完全に空気の供給を断ち、熱を他から供給して熱分解する方法である。アセチレン法は、アセチレンガスの熱分解による方法である。
本発明に用いられるカーボンブラックの製造方法に関しては、平均粒径が115〜140nmであり、かつ、比表面積が6〜28m/gであるカーボンブラックが得られるのであれば、特に制限はない。平均粒径が115nm未満では、樹脂皮膜中のカーボンブラックの濃度を十分に高めることができず、放熱性が劣る。一方、140nmを超えると、ニッケルの周囲に粒径の大きいカーボンブラックが存在するため、不連続な箇所が多くなって、樹脂皮膜中に水が浸透し易くなり耐食性が劣る。なお、カーボンブラックの平均粒径は、電子顕微鏡法によって測定される。
比表面積は粒子径と細孔の個数に支配される物理量であり、本発明で用いるものは、BET法で測定される窒素吸着表面積を指す。粒径が大きい程、細孔の個数が少ない程、比表面積は小さくなる。一方、粒径が小さい程、細孔の個数が多い程、比表面積は大きくなる。比表面積が6m/g未満では、粒径の大きいカーボンブラックがニッケルの周囲に存在するため、割れの起点となり、曲げ加工性が劣る。一方、比表面積が28m/gを超えると、細孔の個数が多くなるため、カーボンブラックがニッケルの周囲に凝集し易くなる。その結果、樹脂皮膜中のカーボンブラックの分布状態が不均一となり、曲げ加工性が劣る。
カーボンブラックは、熱硬化性樹脂100重量部に対して15〜35重量部添加するのが好ましい。15重量部未満では、カーボンブラックの樹脂皮膜中の絶対量が不足し、放熱性が劣る場合がある。一方、35重量部を超えると、均一な成膜が得られない場合がある。
D−2−3.カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率
カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率は、40〜90%である。面積占有率が40%未満では、カーボンブラックの分散状態に偏りが多く、曲げ加工性が劣る。一方、90%を超えると、ニッケルの周囲にカーボンブラックが凝集し、樹脂皮膜中のカーボンブラックの分布が不均一となり曲げ加工性が劣る。
D−2−4.ニッケル
樹脂皮膜への導電性付与として、ニッケルが必須成分として含有される。ニッケルには、球状、鎖型、鱗片状等の種類があり、特に制限されるものではないが、鎖型、鱗片状のものが、特に加工性や導電性の観点から好ましい。ニッケルは、上記種類の中から1種又は2種以上を混合したものが用いられる。
ニッケルの平均粒径は、0.5〜20μmが好ましい。平均粒径が0.5μm未満では、導電性が劣る。これを解消するにはニッケル量を増やす必要があり、コストが増加する。一方、20μmを超えると、割れの起点となり、曲げ加工性が低下する。なお、ニッケルの平均粒径は、フィッシュー・サブシーブ法によって測定される。ニッケルの添加量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して30〜100重量部が好ましい。30重量部未満では、導電性が劣る。一方、100重量部を超えると、成膜が困難となる。
E.放熱性樹脂被覆アルミニウム材の製造方法
E−1.化成処理工程
アルミニウム材表面に樹脂皮膜を形成する前に、その両面に化成処理が施される。化成処理は、アルミニウム材に所定の化成処理液をスプレーしたり、アルミニウム材を処理液中に所定の温度で所定時間浸漬したりすることによって行なわれる。りん酸クロメート、クロム酸クロメート、りん酸ジルコニウム、りん酸チタニウム等の化成処理液は、市販のものを用いることができる。
なお、化成処理を行なう前に、アルミニウム材表面の汚れを除去したり表面性状を調整したりするために、アルミニウム板を、硫酸、硝酸、リン酸等による酸処理(洗浄)、或いは、カセイソーダ、リン酸ソーダ、ケイ酸ソーダ等によるアルカリ処理(洗浄)を行なうことが望ましい。このような洗浄による表面処理も、アルミニウム板に所定の表面処理液をスプレーしたり、アルミニウム板を処理液中に所定温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。
E−2.塗料調製工程
上記熱硬化性樹脂とカーボンブラックとを有機溶剤に添加し、更に分散剤を添加して分散溶液を調製する。そして、分散溶液中の添加物を分散させて、分散粒度が10μm以下となるようにする。分散時間は、適宜選択すればよいが、通常、30〜180分間が好ましい。次いで、この分散溶液にニッケルを更に添加、分散させて塗料を調製する。
有機溶剤には、ベンゼン、トルエン、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、イソホロン、イソブチルアルコール、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、高沸点芳香族ナフサなどが用いられる。熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量の50〜600gを、有機溶剤1リットルに分散する。
分散剤には、アニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子型化合物等が用いられる。アニオン性化合物としては硫酸塩系、スルホン酸塩系、リン酸塩系等の化合物が用いられる。カチオン性化合物としては、アミン類、アミン塩系やアンモニウム塩系等の化合物が挙げられる。非イオン性化合物としてはエステル系、エーテル系、フェノール系等の化合物が挙げられる。高分子型化合物としては種々のポリマーを単独で、若しくは混合したもの等で数多くの種類が挙げられる。分散剤は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量の100重量部に対して、2〜40重量部添加される。
上記分散溶液中における添加物の分散方法、ならびに、この分散溶液添加したニッケルの分散方法としては、攪拌型の分散装置、高速回転せん断型の分散装置、ミル型の分散装置、高圧噴射型の分散装置、超音波型の分散装置を用いる方法が用いられる。攪拌型の分散装置、高速回転せん断型の分散装置、ミル型の分散装置、高圧噴射型の分散装置を用いるのが好ましい。
攪拌型の分散装置は、プロペラ翼、タービン翼、パドル翼、歯付き円板翼などを用いて塗料を攪拌し、翼近傍の溶剤の速度勾配や翼へのカーボンブラックの衝突などにより、カーボンブラックを分散させるものである。高速回転せん断型の分散装置は、攪拌翼を高速回転させ、その外側に固定環を設け、翼と固定環の間隙に高せん断場を実現するとともに、高速回転に伴って発生する塗料のキャビテーションを防止するものである。カーボンブラックが翼と固定間の間隙を通過することにより、適度に分散される。
ミル型の分散装置には、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、ロールミルが挙げられる。ボールミルでは、回転容器内の多数の硬球が運動し、その際に生じる硬球間の衝突によりカーボンブラックを分散させる。ビーズミルでは、多段攪拌槽内に入れた硬球が運動し、その際に生じる硬球間の衝突によりカーボンブラックを分散させる。コロイドミルでは、上下2枚の円板(砥石)の一方を回転させ、円板間隙で形成される高せん断場によりカーボンブラックが分散させる。ロールミルでは、回転する円筒ロール間の間隙に生じるせん断場によりカーボンブラックを分散させる。高圧噴射型の分散装置では、懸濁液に高圧をかけ、ノズルから高速で出口の固定板に噴射することにより、カーボンブラックを分散させる。
分散時間が30分未満では、カーボンブラックが均一に分散されない場合があり、その場合には曲げ加工性が劣る。180分を超えると、熱硬化性樹脂が劣化する場合があり、その場合には曲げ加工性が劣る。分散粒度が10μmを超えると、カーボンブラックが凝集体を形成し曲げ加工性が劣る。
なお、塗料には、必要に応じて、ワックス、レベリング剤、ワキ防止剤、艶消し剤等を適量含有させても良い。
E−3.塗布工程
化成処理したアルミニウム材の一方の表面に、上記塗料を塗布する。塗布方法としては、ロールコート方式が好ましい。ロールコート方式では、通常、塗料をパンに貯めておき、ピックアップロールでパンから塗料をかき上げてアプリケーターロールに転移する。次いで、素材に塗料を転移させる。素材の搬送は、バックアップロールを用いて行う。焼付乾燥後の皮膜厚が0.4〜1.9μmとなるように、ピックアップロールとアプリケーターロール間のニップ圧や塗料粘度を適宜調整する。
E−4.焼付硬化による樹脂皮膜の形成工程
最高到達板温度180〜300℃で焼付時間が15〜80秒の条件で、塗布した塗料を焼付硬化させる。焼付には、熱風炉が好適に用いられる。熱風炉内の温度と炉内を通過する時間を調整することによって、上記焼付硬化条件が達成される。最高到達板温度が180℃未満又は焼付時間が15秒未満では、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となり曲げ加工性が劣る。一方、最高到達板温度が300℃を超えるか又は焼付時間が80秒を超えると、熱硬化性樹脂の劣化が始まり曲げ加工性が劣る。
F.第2の発明に係る放熱性樹脂被覆アルミニウム材
次に、本発明に係る第2の発明は、アルミニウム材と、その両面に形成された化成皮膜と、その一方の表面に形成され0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜とを備える放熱性樹脂被覆アルミニウム材である。樹脂皮膜は、分子内にベンゼン環を有し、かつ、21000〜28000の数平均分子量を有するポリエステル系樹脂と、メラミン系樹脂と、115〜140nmの平均粒径を有するカーボンブラックと、ニッケルと、液状ワックスとを含有する塗料から形成される。以下においては、第1の発明と相違する点について詳細に説明する。アルミニウム材、化成皮膜、樹脂皮膜の皮膜厚については、第1の発明と同じである。
G.樹脂皮膜
G−1.樹脂皮膜の構成
G−1−1.熱硬化性樹脂
第2発明の熱硬化性樹脂には、分子内にベンゼン環を有し、かつ、21000〜28000の数平均分子量を有するポリエステル系樹脂をメラミン系樹脂で架橋して硬化させたものが用いられる。メラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂について、以下に詳述する。ポリエステル系樹脂の分子内にベンゼン環が存在することにより、樹脂皮膜内に疎水性を付与できる。その結果、水が浸透してもこれをはじくために、耐食性が向上する。ポリエステル系樹脂は多塩基酸と多価アルコールを反応させて合成されるもので、分子内にベンゼン環を有することから、多塩基酸として、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸等が用いられる。多価アルコールには、プロピレングリコール等が用いられる。合成によって得られるポリエステル系樹脂の数平均分子量を、21000〜28000とするのが好ましい。このような高分子量のポリエステル系樹脂は、一般に架橋点が少なくなるので架橋密度は小さくなり、樹脂皮膜の強度が不足し易い欠点がある。本発明ではこのような高分子量のポリエステル系樹脂を用いるものであるが、その欠点を補うべく、樹脂皮膜を薄膜とし、後述のように、樹脂皮膜の必須構成物質としてニッケルを配合することにより樹脂皮膜の耐傷付き性として十分な性能が発現されるように設計されている。
このような高分子量のポリエステル系樹脂を用いている為、樹脂のからみ合い構造が多くなり、腐食起因となる水や酸素が透過し難く耐食性が向上する。特に、曲げ加工後の耐食性が向上する。また、低分子量成分が少ない為、加工性も向上する。このように本発明では、高分子量ポリエステル系樹脂を用いているために、曲げ加工後に樹脂皮膜割れがない。また、曲げ部の樹脂皮膜の皮膜厚は他の部分と比較して薄くなるが、樹脂のからみ合い構造が多いために、腐食起因となる水や酸素が透過し難くい為、耐食性が向上する。ポリエステル系樹脂の数平均分子量が21000未満では、曲げ加工後の耐食性が劣る場合がある。一方、28000を超えると、塗料粘度が高くなり塗装外観が劣る場合がある。
メラミン系樹脂としては、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂などが用いられるが、加工性の点からメチル化メラミン樹脂が好ましい。メラミン系樹脂は広範囲の赤外線波長域において赤外線放射性(吸収性)が良好であり、ポリエステル樹脂100重量部に対して5〜60重量部の割合で配合するのが好ましく、20〜40重量部の割合で配合するのが更に好ましい。メラミン系樹脂の配合割合が5重量部未満では、樹脂皮膜の架橋度が不十分となり耐食性が劣る場合がある。一方、メラミン系樹脂の配合割合が60重量部を超えると、メラミ系樹脂の自己架橋が進行してポリエステル系樹脂との間に水が浸透し易くなり、耐食性が劣る場合がある。
G−1−2.カーボンブラック
本発明に用いられるカーボンブラックの製造方法に関しては、平均粒径が115〜140nmであるカーボンブラックが得られるのであれば、特に制限はない。第1の発明で用いるカーボンブラックと異なり、比表面積の制限はない。平均粒径を上記範囲とするのは第1の発明と同じである。また、カーボンブラックの熱硬化性樹脂に対する添加量も第1の発明と同じく、熱硬化性樹脂100重量部に対して15〜35重量部であり、この範囲が好ましい理由も第1の発明と同じである。平均粒径もまた、第1の発明と同様に測定される。
G−1−3.カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率
カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率は、第1の発明と異なり限定されるものではない。しかしながら、50〜70%とするのが好ましい、面積占有率が50%未満では、放熱性及び耐食性が劣る場合がある。一方、70%を超えると導電性が劣る場合がある。
G−1−4.ニッケル
添加されるニッケルについても、その種類、平均粒径、熱硬化性樹脂に対する添加量に関して第1の発明で用いるものと同じである。
G−1−5.液状ワックス
樹脂皮膜への潤滑性付与として、液状ワックスが必須成分として含有される。液状ワックスは融点が室温以下であり、一価アルコール脂肪酸エステル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル等が用いられる。液状ワックスは樹脂皮膜中において液体状で存在し、樹脂皮膜と化成皮膜の界面に存在する場合、樹脂皮膜の密着性を低下させ耐食性が低下する。このように、樹脂皮膜と化成皮膜の界面に存在する液状ワックスは腐食起因となる。本発明では、熱硬化性樹脂として高分子量のポリエステル系樹脂を用いているため、分子間力が強く作用し樹脂の絡み合いが多くなる。その結果、液状ワックスは樹脂皮膜と化成皮膜の界面ではなく絡み合った樹脂皮膜中に保持されるため、樹脂皮膜の密着性が低下しない。
水分もまた、腐食起因となり得る。水の比重は1であり、樹脂皮膜の比重は1.2〜1.3であるので、水分は樹脂皮膜の上側に偏在する。しかしながら、本発明で用いる樹脂皮膜では、熱硬化性樹脂が鎖状に絡み合っている。このような絡み合い構造においては、ある程度の時間が経過すると、水分は樹脂皮膜中を拡散し、次いで化成皮膜中も拡散して、アルミニウム材表面に達する。この水分が、アルミニウム材の腐食起因となり得る。本発明では、樹脂皮膜中に液状ワックスが存在する。図2(b)に示すように、水分が液状ワックス5に接近すると、結晶構造において方向性のない液状ワックス中を水分が拡散せず、液状ワックス5の表面近傍に沿ってD2のように拡散する。これに対して、汎用の粉末状ワックスは、ラメラ構造等の方向性のある結晶構造を有する。この場合には図2(a)に示すように、水は粉末状ワックス4中をD1のように拡散する。液状ワックスは樹脂皮膜中において0.6μm程度の大きさで存在し、粉末状ワックスもまた平均すると同程度の大きさである。そうすると、液状ワックスの方が粉末状ワックスに比べて、水分の拡散距離が長いことから、水分がアルミニウム表面に到達するのに長時間を要することになる。その結果、液状ワックスを含有させた方が粉末状ワックスを含有させたものに比べて、耐食性が向上する。
粉末状ワックスは溶融して粒子同士が融合し易いので、樹脂皮膜中における粒径分布についてみると、液状ワックスに比べて大径側に多く存在する傾向にある。そのため、液状ワックスと同じ配合量でも樹脂皮膜中における密度は小さくなる。その結果、隙間の多い粉末状ワックス中を水分は拡散し易くなり、耐食性は低下する。このことは、曲げ加工後の耐食性において顕著である。曲げ加工により樹脂皮膜は伸ばされるため、曲げ部頂点付近の樹脂皮膜厚は焼付乾燥後と比べて薄くなる。粉末状のワックスでは、樹脂皮膜とともにワックス自体も変形し、場合によっては切断される。このようなワックスの変形や切断によって水が拡散する隙間部分が増えるので、腐食起因の水分が拡散し易くなる。これに対し、液状ワックスもまた樹脂皮膜の変形に伴いそれ自身が変形するが、液状であるため切断され難く連続性が維持され易い。その結果、粉末状ワックスと比べてその中を水分が拡散し難く耐食性が向上する。
液状ワックスは熱硬化性樹脂100重量部に対して、1〜15重量部添加するのが好ましい。1重量部未満では、樹脂皮膜の潤滑性と耐食性が劣る場合があり、15重量部を超えると導電性が劣る場合がある。
H.Ra/RSm
第2の発明においては、樹脂皮膜表面の算術平均粗さをRa(μm)、輪郭曲線平均長さをRSm(μm)として、Ra/RSmを0.058以下とするのが好ましい。RaとRSmは、JISB0601に準拠して、例えば樹脂皮膜表面をレーザー顕微鏡で分析して求められる。ここで、Ra/RSmの指標は樹脂皮膜表面の凸部の分布を表わすもので、凸部の高さが低く、凸部の間隔が大きいほど小さな値となる。本発明で用いる樹脂皮膜の皮膜厚さは薄いために、平均粒径の大きいニッケルが凸部を形成する。Ra/RSmが0.058以下では、ニッケルが樹脂皮膜中に適切に分散されるので、樹脂皮膜中にカーボンブラックが十分に存在することとなり、放熱性に優れる。一方、Ra/RSmが0.058を超えると、ニッケルが樹脂皮膜中に多く分布し樹脂分が少なくなるため、放熱性に劣る。Raは0.4〜1.2μm以下であるのが好ましく、RSmは10.4〜13.0μmであるのが好ましい。
I.表面エネルギー
樹脂皮膜表面の表面エネルギーは、60×10−3J/m以下とするのが好ましい。60×10−3J/mを超えると、潤滑性が不足して加工性が劣る場合がある。
J.放熱性樹脂被覆アルミニウム材の製造方法
化成処理工程、ならびに、酸やアルカリの洗浄は、第1の発明と同じである。
J−1.塗料調製工程
上記カーボンブラックと分散剤を有機溶剤中に添加し、分散溶液を調製する。そして、分散溶液中の添加剤を分散させる。分散剤2〜35gとカーボンブラック5〜100gを、有機溶剤1リットルに分散する。分散時間は、適宜選択すればよいが、通常、30〜180分間が好ましい。次いで、この分散溶液に、上述のポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、液状ワックスを加えて分散させ、分散粒度が10μm以下となるようにする。ポリエステル系樹脂の添加量は、分散溶液中のカーボンブラックとの前述の重量比に基づき、メラミン樹脂と液状ワックスの添加量は、前述のポリエステル系樹脂との重量比に基づく。この分散時間も適宜選択すればよいが、通常、30〜180分間が好ましい。この分散溶液にニッケルを更に添加し、これを分散させて塗料を調製する。ニッケルの添加量は、分散溶液中のポリエステル系樹脂との前述の重量比に基づく。この分散時間もまた適宜選択すればよいが、通常、30〜180分間が好ましい。なお、分散剤及び有機溶剤には、第1の発明と同じものが用いられる。また、分散に用いる分散装置や分散条件は、第1の発明と同じである。必要に応じて、レベリング剤、ワキ防止剤、艶消し剤等を含有させても良い。
なお、分散時間が30分未満の場合や180分を超える場合、ならびに、分散粒度が10μmを超える場合の不利な点は、第1の発明と同じである。
J−2.塗布工程と焼付硬化による樹脂皮膜の形成工程
塗布工程は、第1の発明と同じである。焼付硬化による樹脂皮膜の形成工程では、最高到達板温度200〜250℃で焼付時間が20〜80秒の条件で、塗布した塗料を焼付硬化させる。第1の発明と同様に、焼付には熱風炉が好適に用いられる。熱風炉の温度と炉内を通過する時間を調整することによって、上記焼付硬化条件が達成される。最高到達板温度が200℃未満又は焼付時間が20秒未満では、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となる。その結果、樹脂皮膜中を水が拡散し易くなり耐食性が劣る。一方、最高到達板温度が250℃を超えるか又は焼付時間が80秒を超えると、熱硬化性樹脂の劣化が進行して樹脂の絡み合い構造が十分に得られない。その結果、樹脂皮膜中を水が拡散し易くなり耐食性が劣る。なお、樹脂皮膜中に液状ワックスが含有された状態を確実に達成するために、最高到達板温度は液状ワックスの沸点よりも10℃以下とするのが好ましい。
以下に、本発明に係る第1の発明を実施例と比較例に基づいて詳細に説明する。
(実施例1〜6及び比較例1〜6)
ポリエステル系樹脂(アルキド樹脂)100重量部に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を20重量部配合した熱硬化性樹脂100重量部と、表1に示すカーボンブラック25重量部を、有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加した。更に、これに分散剤(非イオン性化合物)10重量部を添加した。有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量125gに対して、1リットルであった。このようにして調製した溶液を、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で80分間攪拌した。得られた分散溶液の分散粒度は8μmであった。更に、ニッケル(鱗片状)を熱硬化性樹脂100重量部に対して40重量部添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で攪拌して、塗料を調製した。
Figure 0005349434
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けて樹脂被覆アルミニウム材を作製した。焼付条件は、最高到達板温度が240℃で、焼付時間が50秒であった。
(実施例7)
ポリエステル系樹脂(アルキド樹脂)100重量部に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を20重量部配合した熱硬化性樹脂100重量部と、表1に示すカーボンブラック20重量部を、有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加した。更に、これに分散剤(非イオン性化合物)12重量部を添加した。有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量135gに対して、1リットルであった。このようにして調製した溶液を、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で40分間攪拌した。得られた分散溶液の分散粒度は9μmであった。更に、ニッケル(鱗片状)を熱硬化性樹脂100重量部に対して30重量部添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で攪拌して、塗料を調製した。
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けて樹脂被覆アルミニウム材を作製した。焼付条件は、最高到達板温度が182℃で、焼付時間が78秒であった。
(発明例8)
ポリエステル系樹脂(アルキド樹脂)100重量部に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を20重量部配合した熱硬化性樹脂100重量部と、表1に示すカーボンブラック30重量部を、有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加した。更に、これに分散剤(非イオン性化合物)13重量部を添加した。有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量127gに対して、1リットルであった。このようにして調製した溶液を、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で160分間攪拌した。得られた分散溶液の分散粒度は5μmであった。更に、ニッケル(鱗片状)を熱硬化性樹脂100重量部に対して80重量部添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で攪拌して、塗料を調製した。
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けて樹脂被覆アルミニウム材を作製した。焼付条件は、最高到達板温度が296℃で、焼付時間が16秒であった。
(比較例7)
ポリエステル系樹脂(アルキド樹脂)100重量部に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を20重量部配合した熱硬化性樹脂100重量部と、表1に示すカーボンブラック20重量部を、有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加した。更に、これに分散剤(非イオン性化合物)11重量部を添加した。有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量134gに対して、1リットルであった。このようにして調製した溶液を、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で10分間攪拌した。得られた分散溶液の分散粒度は12μmであった。更に、ニッケル(鱗片状)を熱硬化性樹脂100重量部に対して50重量部添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で攪拌して、塗料を調製した。
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けて樹脂被覆アルミニウム材を作製した。焼付条件は、最高到達板温度が170℃で、焼付時間が10秒であった。
(比較例8)
ポリエステル系樹脂(アルキド樹脂)100重量部に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を20重量部配合した熱硬化性樹脂100重量部と、表1に示すカーボンブラック30重量部を、有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加した。更に、これに分散剤(非イオン性化合物)14重量部を添加した。有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂とカーボンブラックとの合計量133gに対して、1リットルであった。このようにして調製した溶液を、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で200分間攪拌した。得られた分散溶液の分散粒度は4μmであった。更に、ニッケル(鱗片状)を熱硬化性樹脂100重量部に対して50重量部添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で攪拌して、塗料を調製した。
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けて樹脂被覆アルミニウム材を作製した。焼付条件は、最高到達板温度が320℃で、焼付時間が95秒であった。
カーボンブラックの平均粒径は電子顕微鏡法によって、ニッケルの平均粒径はフィッシュー・サブシーブ法によって測定した。カーボンブラックの比表面積は、窒素吸着によるBET法で測定した。また、上述した方法で形成された化成皮膜の皮膜量を蛍光X線分析装置により測定した結果、クロム量は30mg/mであった。
カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率は、走査型電子顕微鏡により測定した。走査型電子顕微鏡の1000倍の倍率で得られる二次電子像において、同じ視野を元素分析して炭素が強く検出された部分を画像処理することにより、カーボンブラックの存在面積を算出した。10視野測定して得られた面積占有率の平均値を求めた。
発明例1〜8及び比較例1〜8で作製した樹脂被覆アルミニウム材の試料について、樹脂皮膜厚、カーボンブラックの平均粒径、比表面積及び面積占有率を表1に示す。更に、曲げ加工性、導電性、放熱性を下記の方法にて評価した結果も表1に示す。評価結果は、○、○△、△を合格とし、×を不合格とした。
<曲げ加工性>
曲げ加工性は、試料の樹脂皮膜面を外側にして180度2T曲げ又は3T曲げを行い、樹脂皮膜の割れを目視で観察した。割れの評価基準は、以下の通りである。
○:樹脂皮膜の割れなし
△:小さな樹脂皮膜の割れがあるが使用可能
×:大きな樹脂皮膜の割れがあり使用不可
更に割れ観察後、樹脂皮膜の曲げ部にセロハンテープを密着させ、テープを急激に剥離した際の樹脂皮膜の剥がれ具合を密着性として観察した。密着性の評価基準は、以下の通りである。
○:剥離なし
×:剥離あり
<導電性>
導電性は、四端子法により、銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5R)を荷重80gで試料の樹脂皮膜面に接触させて電気抵抗値を測定した。導電性の評価基準は、以下の通りである。
○:4Ω以下
○△:4Ωを超え、6Ω以下
△:6Ωを超え、10Ω以下
×:10Ωを超える
<放熱性>
放熱性は、樹脂被覆アルミニウム材を用いて筐体を作製し、筐体表面温度を測定することによって評価した。図1に示すように、樹脂皮膜を外側にして、底面が150mm×150mm、高さ100mmの筐体3を作製した。筐体3内部に光源2として60Wの電球を設置して通電し、発光・発熱させ、筐体3内部の温度が定常状態となった時点における筐体3表面の温度を測定した。放熱性の評価基準は、以下の通りである。
○:定常状態の温度が30℃以下
△:定常状態の温度が30℃を超え、35℃以下
×:定常状態の温度が35℃を超える
実施例1〜8では、曲げ加工性、導電性及び放熱性がいずれも合格であった。なお、各評価において、○、○△、△を合格とし、×を不合格とした。
一方、比較例1では、樹脂皮膜厚が薄過ぎたので放熱性が不合格であった。
比較例2では、樹脂皮膜厚が厚過ぎたので導電性が不合格であった。
比較例3では、カーボンブラックの平均粒径が小さ過ぎたので、放熱性が不合格であった。
比較例4では、カーボンブラックの平均粒径が大き過ぎたので、曲げ加工性が不合格であった。
比較例5では、カーボンブラックの比表面積が小さ過ぎて面積占有率が90%を超えた為、曲げ加工性が不合格であった。
比較例6では、カーボンブラックの比表面積が大き過ぎて面積占有率が40%未満の為、曲げ加工性が不合格であった。
比較例7では、最高到達温度が低過ぎ焼付時間も短過ぎて面積占有率が40%未満の為、曲げ加工性が不合格であった。
比較例8では、最高到達温度が高過ぎ焼付時間も長過ぎて面積占有率が40%未満の為、曲げ加工性が不合格であった。
次に、本発明に係る第2の発明を実施例と比較例に基づいて詳細に説明する。
(実施例9〜19及び比較例9〜12)
表2に示すカーボンブラック25重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で85分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸由来のベンゼン環を有し、表2に示す分子量を有するポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスとしてラウリン酸メチルを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で80分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は8μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して30重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で75分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。液状ワックスについては、実施例17では、ラウリン酸メチルに代えてミリスチン酸メチルを用い、実施例18では、ラウリン酸メチルに代えてミリスチル酸イソプロピルを用い、実施例19では、熱硬化性樹脂100重量部に対してラウリン酸メチルを5重量部配合した。
Figure 0005349434
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けて樹脂被覆アルミニウム材を作製した。焼付条件は、最高到達板温度が230℃で、焼付時間が50秒であった。実施例16のみ、最高到達板温度を240℃とし、焼付時間を60秒とした。なお、カーボンブラックとニッケルの平均粒径、ならびに、カーボンブラックの比表面積は、実施例1〜8及び比較例1〜8と同様にして測定した。また、化成皮膜の皮膜量の蛍光X線分析の結果も、実施例1と同様にクロム量が30mg/mであった。
(実施例20)
表2に示すカーボンブラック30重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で40分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸由来のベンゼン環を有し、表2に示す分子量を有するポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスとしてラウリン酸メチルを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で45分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は9μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して80重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で50分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けて樹脂被覆アルミニウム材を作製した。焼付条件は、最高到達板温度が200℃で、焼付時間が70秒であった。なお、カーボンブラックとニッケルの平均粒径、ならびに、カーボンブラックの比表面積は、実施例1〜8及び比較例1〜8と同様にして測定した。また、化成皮膜の皮膜量の蛍光X線分析の結果も、実施例1と同様にクロム量が30mg/mであった。
(実施例21)
表2に示すカーボンブラック20重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で160分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸由来のベンゼン環を有し、表2に示す分子量を有するポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスとしてラウリン酸メチルを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で155分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は5μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して40重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で150分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けて樹脂被覆アルミニウム材を作製した。焼付条件は、最高到達板温度が235℃で、焼付時間が50秒であった。なお、カーボンブラックとニッケルの平均粒径、ならびに、カーボンブラックの比表面積は、実施例1〜8及び比較例1〜8と同様にして測定した。また、化成皮膜の皮膜量の蛍光X線分析の結果も、実施例1と同様にクロム量が30mg/mであった。
(比較例13)
表2に示すカーボンブラック20重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で10分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸由来のベンゼン環を有し、表2に示す分子量を有するポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスとしてラウリン酸メチルを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で12分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は15μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して50重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で13分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けて樹脂被覆アルミニウム材を作製した。焼付条件は、最高到達板温度が170℃で、焼付時間が10秒であった。なお、カーボンブラックとニッケルの平均粒径、ならびに、カーボンブラックの比表面積は、実施例1〜8及び比較例1〜8と同様にして測定した。また、化成皮膜の皮膜量の蛍光X線分析の結果も、実施例1と同様にクロム量が30mg/mであった。
(比較例14)
表2に示すカーボンブラック30重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で210分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸由来のベンゼン環を有し、表2に示す分子量を有するポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスに代えて粉末状ワックスであるポリエチレンワックスを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で215分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は4μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して50重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で220分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けて樹脂被覆アルミニウム材を作製した。焼付条件は、最高到達板温度が320℃で、焼付時間が95秒であった。なお、カーボンブラックとニッケルの平均粒径、ならびに、カーボンブラックの比表面積は、実施例1〜8及び比較例1〜8と同様にして測定した。また、化成皮膜の皮膜量の蛍光X線分析の結果も、実施例1と同様にクロム量が30mg/mであった。
(比較例15)
平均粒径120nmで、比表面積が14m/gであるカーボンブラック30重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)と分散剤(非イオン性化合物)5重量部(後述の熱硬化性樹脂100重量部に対する)を有機溶剤(トルエンとシクロヘキサノンの混合溶剤)に添加し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で80分間攪拌した。次いで、この分散溶液に、分子内にベンゼン環を有さず、分子量が38000であるポリエステル系樹脂に対してメラミン系樹脂(メチル化メラミン樹脂)を配合した熱硬化性樹脂100重量部と、液状ワックスとしてラウリン酸メチルを12重量部配合し、プロペラ翼を備えた攪拌型の分散装置で85分間攪拌した。ここで、ポリエステル系樹:メラミン系樹脂=100:30の重量比で配合した。得られた分散溶液の分散粒度は7μmであった。この分散溶液に、熱硬化性樹脂100重量部に対して45重量部のニッケル(鱗片状)を更に添加し、歯付き円板翼を備えた攪拌機で90分間攪拌して、塗料を調製した。なお、有機溶剤の量は、熱硬化性樹脂、カーボンブラック及び液状ワックスの合計量137gに対して、1リットルであった。
アルミニウム材として、板厚:0.6mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、上記塗料を化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼付けたが、塗装外観が劣り、均一な樹脂被覆アルミニウム材を作製できなかった。
実施例9〜21及び比較例9〜15で作製した樹脂被覆アルミニウム材の試料について、樹脂皮膜厚、カーボンブラックの平均粒径、比表面積、Ra/RSm、表面エネルギーを表2に示す。Ra及びRSmは触針式の粗さ計で測定し、Ra/RSmを算出した。表面エネルギーは、純水とジヨードメタンを樹脂皮膜表面に滴下し接触角を求めて算出した。更に、曲げ加工性、導電性、放熱性を実施例1〜8及び比較例1〜8と同様にして評価し、更に耐食性を下記の方法にて評価した。評価結果はいずれも、○、○△、△を合格とし、×を不合格とした。結果も表2に示す。
<耐食性>
試料の樹脂皮膜を外側にして180度2T曲げを行い、塩水噴霧試験100hを行い、曲げ部の腐食の程度を目視で観察した。評価基準は、以下の通りである。
○:腐食が認められない
○△:僅かに腐食が認められる
△:半分の面積に腐食が認められる
×:全面に腐食が認められる
実施例9〜21では、曲げ加工性、導電性、放熱性及び耐食性がいずれも合格であった。
比較例9では、樹脂皮膜厚が薄過ぎたので耐食性及び放熱性が劣った。
比較例10では、ポリエステル系樹脂の数平均分子量が小さ過ぎたので耐食性が劣った。
比較例11では、カーボンブラックの平均粒径が小さ過ぎたので放熱性が劣った。
比較例12では、カーボンブラックの平均粒径が大き過ぎたので、曲げ加工性と耐食性が劣った。
比較例13では、樹脂皮膜厚が厚過ぎ、カーボンブラックの平均粒径が大き過ぎた。更に、最高到達温度が低過ぎ焼付時間も短過ぎた。その結果、曲げ加工性、導電性、耐食性が劣った。
比較例14では、樹脂皮膜厚が厚過ぎ、カーボンブラックの平均粒径が大き過ぎ、液状ワックスの代わりにポリエチレンワックスを用いた。更に、最高到達温度が高過ぎ焼付時間も長過ぎた。その結果、曲げ加工性、導電性、耐食性が劣った。
比較例15では、分子内のベンゼン環を有せず、かつ、数平均分子量の大き過ぎるポリエステル系樹脂を用いたので均一な樹脂被覆アルミニウム材が得られず、評価ができなかった。
本発明により、例えば内部で熱を発する電子部品、家電製品等の筐体や放熱板等に用いられる、放熱性に加えて、導電性、曲げ加工性及び耐食性に優れた放熱性樹脂被覆アルミニウム材を提供することができる。
1・・・樹脂被覆アルミニウム材
2・・・光源
3・・・筐体
4・・・粉末状ワックス
5・・・液状ワックス
D1・・・粉末状ワックス中における水の拡散方向
D2・・・液状ワックスの表面近傍における水の拡散方向

Claims (3)

  1. アルミニウム材と、当該アルミニウム材の両面に形成された化成皮膜と、当該化成皮膜の少なくとも一方の表面に形成され、0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜とを備え、
    当該樹脂皮膜は、熱硬化性樹脂であって、ポリエステル系樹脂100重量部に対してメラミン系樹脂10〜50重量部で配合されたメラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂と、115〜140nmの平均粒径と6〜28m/gの比表面積を有するカーボンブラックと、ニッケルとを含有する塗料から形成され、前記カーボンブラックの樹脂皮膜表面における面積占有率が40〜90%であることを特徴とする放熱性樹脂被覆アルミニウム材。
  2. 前記塗料において、前記ポリエステル系樹脂の100重量部に対して、カーボンブラックが15〜35重量部の割合で、ニッケルが30〜100重量部の割合で配合される、請求項1に記載の放熱性樹脂被覆アルミニウム材。
  3. 請求項1又は2に記載の放熱性樹脂被覆アルミニウム材の製造方法において、
    アルミニウム材の両面に化成処理を施す工程と、
    熱硬化性樹脂であって、ポリエステル系樹脂100重量部に対してメラミン系樹脂10〜50重量部で配合されたメラミン系樹脂で架橋したポリエステル系樹脂と、115〜140nmの平均粒径と6〜28m/gの比表面積を有するカーボンブラックと、分散剤とを有機溶剤に添加し、これら添加物を分散させて分散粒度を10μm以下とし、これにニッケルを更に添加、分散させて塗料を調製する工程と、
    前記化成処理を施したアルミニウム材の少なくとも一方の表面に前記塗料を塗布する工程と、
    最高到達板温度180〜300℃で焼付時間が15〜80秒の条件で、塗布した塗料を焼付硬化させて、0.4〜1.9μmの厚さを有する樹脂皮膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする放熱性樹脂被覆アルミニウム材の製造方法。
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