JP6173747B2 - 放熱性樹脂被覆アルミニウム材 - Google Patents

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Description

本発明は、サーバ等の筐体や床暖房等の放熱板に用いられ、耐ブロッキング性と加工性に優れた放熱性樹脂被覆アルミニウム材に関する。
近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、局所的に発熱量が増えることがある。発熱量の増加は、電子機器の性能を損なう恐れがあると共に、電子機器の信頼性を損なう恐れがある。この熱を速やかに外部へ放散させる手段として、通風孔による放熱対策や冷却ファンなどの放熱部品による対策が挙げられる。これらの対策では、環境性能の低下やコスト増加などが問題となる。一方、熱放射による放熱対策は低コストで、かつ冷却ファンレスによる静音化が可能なため環境性能が高く、省スペースにも適用可能である。このような趨勢の中熱伝導性に優れるアルミニウム製基材の表面に塗装を施すことにより熱放射性を付与した放熱性樹脂被覆アルミニウム材が提案されており(特許文献1)、今後、放熱性樹脂被覆アルミニウム材への期待がますます高まるものと予想される。
このような放熱性樹脂被覆アルミニウム材をサーバ等の筐体に適用する場合、強度との兼ね合いで、材料には、5000系アルミニウム合金を使用し、板厚を1.0mm〜1.5mmとする必要がある。そのような材料では、加工部に肌荒れ(外観欠陥)が発生するため、塗膜には、材料の変形に耐え得る高い加工性が求められる。そこで、塗膜の加工性を高めるために、塗料の主剤に、ガラス転移温度が室温より低い樹脂を用いる方法がある。しかし、このような樹脂で被覆されたアルミニウム材では、樹脂が軟化しやすいため、製造時に当該アルミニウム材を巻き回してコイル状に保管するとブロッキングが生じ問題となる。耐ブロッキング性を向上させる方法として、塗膜表面に滑らかな凹凸を形成する方法が提案されている(特許文献2)。具体的には、塗膜に樹脂ビーズを混合し、さらに、メラミン樹脂の自己縮合反応によって塗膜表面にメラミン樹脂の濃化層を形成する。
特許第4634747号公報 特開平11−104558公報
しかしながら、特許文献2の方法では耐ブロッキング性は向上するが、放熱性は劣る場合がある。また、樹脂ビーズを含有させると、塗膜に欠陥が発生して不連続な部分ができる場合があり、加工性が劣るという問題がある。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、優れた放熱性を実現しつつ、耐ブロッキング性及び加工性に優れた放熱性樹脂被覆アルミニウム材を提供することを目的とする。
本発明に係る放熱性樹脂被覆アルミニウム材は、アルミニウム材と、前記アルミニウム材上に形成された化成皮膜と、前記化成皮膜上に形成された樹脂層とを有する放熱性樹脂被覆アルミニウム材であって、前記樹脂層は、上塗り層と下塗り層とを有し、前記上塗り層は、室温でガラス状態の熱硬化性樹脂、シリカ及び放熱性添加剤を含有し、前記下塗り層は、室温でゴム状態の熱硬化性樹脂及び放熱性添加剤を含有し、前記上塗り層と前記下塗り層の膜厚比が0.2〜2.0であることを特徴とする。
本発明に係る放熱性樹脂被覆アルミニウム材において、前記上塗り層の膜厚が2μm〜8μmであり、前記下塗り層の膜厚が4μm〜13μmであることが好ましい。
本発明に係る放熱性樹脂被覆アルミニウム材において、前記下塗り層は、さらに、硬化剤を含有し、前記室温でゴム状態の熱硬化性樹脂100質量部に対する前記硬化剤の含有量が0.5〜11質量部であることが好ましい。
本発明に係る放熱性樹脂被覆アルミニウム材において、前記室温でガラス状態の熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度が40〜70℃であることが好ましい。
本発明に係る放熱性樹脂被覆アルミニウム材において、前記室温でゴム状態の熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度が−15〜13℃であることが好ましい。
本発明に係る放熱性樹脂被覆アルミニウム材において、前記放熱性添加剤は、凝集性を有する炭素粒子であることが好ましい。
本発明に係る放熱性樹脂被覆アルミニウム材は、上塗り層に、室温でガラス状態の熱硬化性樹脂を用いることで、コイル状に巻き回した際に樹脂が軟化しにくく、更に、シリカを含有させることで、上塗り層が硬質となり、耐ブロッキング性を向上させることができる。更に、下塗り層に、室温でゴム状態の熱硬化性樹脂を用いることで、素材に肌荒れが生じている場合でも、素材の変形に追随し、加工性を向上させることができる。また、上塗り層と下塗り層の膜厚比を特定の範囲とすることで、上塗り層の変形にも追随し、加工性を向上させることができる。更に、下塗り層における硬化剤の含有量を特定の範囲とすることで、上塗り層の変形が下塗り層に影響されず、耐ブロッキング性を向上させることができる。
本実施形態の放熱性樹脂被覆アルミニウム材を説明するための図である。 本実施形態の放熱性樹脂被覆アルミニウム材の放熱性評価方法を説明するための図である。
本実施形態の放熱性樹脂被覆アルミニウム材1は、図1に示すように、アルミニウム材11と、アルミニウム材11上に形成された化成皮膜12と、化成皮膜12上に形成された樹脂層13とを有している。樹脂層13は、下塗り層13aと上塗り層13bとからなる。
(1)アルミニウム材
本発明に用いるアルミニウム材の材質は、特に限定されるものではないが、1000系、3000系、5000系アルミニウム合金が好適に用いられ、特に、強度の点から5000系アルミニウム合金が好適である。すなわち、Mgが0.5〜5.0質量%添加されたAl−Mg系合金が好ましい。アルミニウム材の板厚は、用途に応じて適宜選択されるが、0.8mm〜2.0mmの範囲が好ましく、1.0mm〜1.5mmの範囲がより好ましい。
(2)化成皮膜
本発明の放熱性樹脂被覆アルミニウム材は、アルミニウム材上に化成皮膜を有している。すなわち、アルミニウム材上に樹脂層を形成する前に、アルミニウム材の表面に化成皮膜が形成される。
化成皮膜を形成するに際して、アルミニウム材の表面の汚れを除去し、また表面性状を調整するために、脱脂処理を行うことが好ましい。脱脂処理は、アルカリ洗浄が好ましく、例えば、苛性ソーダ、リン酸ソーダ、ケイ酸ソーダ等を用いて行われる。このようなアルカリ洗浄による脱脂処理は、アルミニウム材に所定の表面処理液をスプレーしたり、アルミニウム材を処理液中に所定温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。アルカリ洗浄後には、アルカリ洗浄により発生したスマットを除去する目的で酸洗浄を行うことが好ましい。酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸、硝酸等が挙げられ、特に0.5〜5.0質量%の硫酸が好ましい。
化成皮膜としては、特に限定されないが、リン酸クロメート処理液で形成されるクロメート化成皮膜、環境問題に配慮したノンクロメート処理液で形成されるノンクロメート化成皮膜を用いることが好ましい。ノンクロメート化成皮膜としては、特に限定されないが、リン酸ジルコニウム系化成皮膜、又はジルコニウム−モリブデン系化成皮膜を用いることが好ましい。化成皮膜におけるCr又はZrの皮膜量は、蛍光X線で測定され、Cr換算で5〜45mg/mであることが好ましく、Zr換算で0.5〜15mg/mであることが好ましい。Cr換算で5mg/m未満又はZr換算で0.5mg/m未満では耐食性が劣る場合があり、Cr換算で45mg/mを超える又はZr換算で15mg/mを超える場合には加工密着性が劣る場合がある。
このような化成処理は、アルミニウム材に所定の化成処理液をスプレーしたり、アルミニウム材を処理液中に所定の温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。
(3)樹脂層
本発明の放熱性樹脂被覆アルミニウム材は、化成皮膜上に樹脂層を有している。樹脂層は、上述のように、化成皮膜上に形成される下塗り層と、当該下塗り層上に形成される上塗り層とで構成されている。
(3−1)下塗り層
本実施形態の下塗り層は、室温でゴム状態の熱硬化性樹脂を主剤とするものであり、放熱性添加剤を含有する。
下塗り層に用いられる熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、−15℃〜13℃であることが好ましい。より好ましくは、−5℃〜12℃である。本発明における室温は、20〜30℃の温度域を指す。そのため、下塗り層に用いられる熱硬化性樹脂は、室温では、ゴム状態となる。ゴム状態の熱硬化性樹脂は適度な弾性率を有するため、曲げ加工における変形に追随でき、加工性に優れる。また、上塗り層から圧力がかかり上塗り層が変形しても耐えられるので、耐ブロッキング性に優れる。また、室温でゴム状態の熱硬化性樹脂は、凝集性を有する放熱性添加剤となじみやすい。ガラス転移温度が−15℃未満では、塗膜が軟らかすぎて、耐ブロッキング性が劣る場合がある。ガラス転移温度が13℃を超えると、素材の肌荒れや硬質の上塗り層の変形に追随できず、加工性が劣る場合がある。ガラス転移温度は、熱重量測定、示差走査熱量測定、示差熱分析法等の公知の方法により測定される。
熱硬化性樹脂の数平均分子量は、18000〜30000の範囲であることが好ましい。数平均分子量が18000未満では、加工性が劣る場合がある。数平均分子量が30000を超えると、塗装性が劣る場合がある。数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。
下塗り層に用いられる熱硬化性樹脂の種類は、室温でゴム状態であれば特に限定されないが、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル系樹脂は多価カルボン酸を主成分とした酸成分と、多価アルコールを主成分としたアルコール成分とを原料として通常の方法により、縮重合することにより得ることができる。酸成分としては、フタル酸、トリメット酸及びこれらの無水物、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸類及びこれらの無水物、又はこれらの混合物等を挙げることができる。アルコール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、又はこれらの混合物等を挙げることができる。
放熱性添加剤としては、例えば、公知の赤外線を放射する機能を有する材料が選択される。このような材料を樹脂層に添加することにより、樹脂層に放熱性を付与する下塗り層に用いられる放熱性添加剤として、例えば、カーボンブラック又はグラファイト等の凝集性を有する炭素粒子が挙げられる。
ここで、カーボンブラックは炭化水素原料をチャンネル法、ファーネス法、熱分解法、アセチレン法等により熱分解することにより製造される黒色微粉末の物質である。本発明に用いられるカーボンブラックの製造方法は、特に限定されない。チャンネル法は主として天然ガスを原料に用い、これを燃焼室内で多数のバーナーチップから不完全燃焼させ、適当な高さにおいて鉄製のチャンネルに衝突させて生成するカーボンブラックを付着させ、これを捕集する方法である。ファーネス法は、原料を耐火煉瓦で内張した炉内で、酸素が不足する状態で熱分解させる方法である。熱分解法は完全に空気の供給を断ち、熱を他から供給して熱分解する方法である。アセチレン法は、アセチレンガスの熱分解による方法である。カーボンブラックの平均粒径(一次粒子径)は、105nm〜200nmであることが好ましい。平均粒径が105nm未満では、樹脂皮膜中のカーボンブラックの濃度を十分に高めることができず、放熱性が劣る場合がある。一方、平均粒径が200nmを超えると、放熱性に関し、それ以上の効果が認められず、コストアップになる。
グラファイトは、六方晶系、六角板状結晶で、構造は、亀の甲状の層状物質で層毎の面内は、強い共有結合で炭素間が繋がっており、層と層の間は、弱いファンデルワールス力で結合したものである。グラファイトの種類は、特に限定されないが、例えば、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、粒状黒鉛、土状黒鉛等が挙げられる。グラファイトの平均粒径は、1μm〜5μmであることが好ましい。平均粒径が1μm未満では、曲げ加工性に関し、それ以上の効果が認められず、コストアップになる。一方、平均粒径が5μmを超えると、曲げ加工性が劣る場合がある。カーボンブラック又はグラファイト、樹脂層中では、一次粒子径の状態では存在せず、個々の粒子が凝集した状態で存在する。
放熱性添加剤の含有量は主剤の熱硬化性樹脂100質量部に対して1質量部〜35質量部が好ましい。含有量が1質量部未満では、放熱性添加剤の樹脂皮膜中の絶対量が不足し、放熱性が劣る場合がある。一方、含有量が35質量部を超えると、均一な塗膜が得られない。
ここで、樹脂被覆アルミニウム材の放熱性評価方法について、図2を参照して説明する。発泡スチロールからなる箱2(箱内:18cm×26cm 深さ 6cm)の底面に、シリコンラバーヒータ3(15cm×20cm)を設置し、熱伝導グリース(図示しない)を介して、アルミニウム板(15cm×20cm)4を密着させる。箱2内の中央部2aに熱電対5を固定する。なお、シリコンラバーヒータ3から発生する赤外線が箱2内で吸収されるのを防ぐ為に、箱2をアルミ箔で覆う。箱2の上面を樹脂被覆アルミニウム材1で蓋をする。シリコンラバーヒータ3につないだスライダックで14Wとなるように調整し、箱2内の温度が定常状態になった時点で、中央部2aの温度Tcを測定する。Tcが小さい程、樹脂被覆アルミニウム材の放熱性は優れており、大きい程、放熱性は劣る。
また、下塗り層は、硬化剤を含有していてもよい。本発明に用いられる室温でゴム状態の熱硬化性樹脂は加熱により硬化するが、硬化を促進するために、硬化剤を含有するのが好ましい。本発明において硬化剤には、メラミン樹脂を用いることが好ましい。メラミン樹脂としては、例えば、n−ブチル化メラミン樹脂、イソ−ブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂等を挙げることができる。
硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.5〜11質量部であることが好ましい。含有量が0.5質量部未満では、塗膜が軟らかくなりすぎ、耐ブロッキング性が劣る場合がある。含有量が11質量部を超えると、加工性が劣る場合がある。
また、下塗り層は、シリカを含有しないことが推奨される。シリカを含有することで、塗膜が硬質となり、割れの起点となりやすく、上塗り層や素材の変形に追随できなくなるからである。
(3−2)上塗り層
本実施形態の上塗り層は、室温でガラス状態の熱硬化性樹脂を主剤とするものであり、放熱性添加剤、及びシリカを含有する。
ここで、上塗り層に用いられる熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、40〜70℃であることが好ましい。より好ましくは、45℃〜65℃である。そのため、室温では、ガラス状態となる。上塗り層は硬質となり、表層にかかる圧力に対して変形しにくくなる。ガラス転移温度が40℃未満では、耐ブロッキング性が劣る場合がある。ガラス転移温度が70℃を超えると、加工性が劣る場合がある。ガラス転移温度は、熱重量測定、示差走査熱量測定、示差熱分析法等により測定される。
上塗り層に用いられる熱硬化性樹脂の種類は、室温でガラス状態であれば特に限定されないが、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂の数平均分子量は、10000〜16000であることが好ましい。数平均分子量が10000未満では、加工性が劣る場合がある。数平均分子量が16000を超えると、架橋点が少なくなり、耐ブロッキング性が劣る場合がある。数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。
なお、上塗り層の加工性を向上させる為に、更に、ガラス転移温度が8〜15℃のポリエステル系樹脂を配合することが好ましい。ポリエステル系樹脂は市販品を使用することができる。
上塗り層に用いられる放熱性添加剤は、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック又は、グラファイトが挙げられる。上塗り層に用いられる放熱性添加剤は、下塗り層に用いられる放熱性添加剤と同様のものを使用することができる。放熱性添加剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して1質量部〜35質量部であることが好ましい。含有量が1質量部未満では、放熱性添加剤の樹脂層中の絶対量が不足し、放熱性が劣る場合がある。一方、含有量が35質量部を超えると、均一な塗膜が得られない場合がある。
また、上塗り層は、硬化剤を含有していてもよい。本発明に用いられる室温でガラス状態の熱硬化性樹脂は加熱により硬化するが、硬化を促進するために、硬化剤を含有するのが好ましい。硬化剤には、メラミン樹脂を用いることが好ましい。特に、メチル化メラミン樹脂を用いることが好ましい。硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、5〜60質量部であることが好ましい。含有量が5質量部未満では、皮膜の架橋度が不十分となり、耐ブロッキング性が劣る場合がある。一方、含有量が60質量部を超えると、自己架橋が進み、加工性が劣る場合がある。
上塗り層に用いられるシリカは、特に限定されないが、例えば、湿式法シリカ、乾式法シリカが挙げられる。湿式法シリカがより好ましい。湿式法シリカは、乾式法と比較して、表面シラノール基が多い。このシラノール基が、フィラーとしての補強性や吸着性の機能を発揮する。また、樹脂の透明性、耐水性等を改良する目的で、表面をシラン類やシリコーン類で疎水化処理しても良い。上塗り層に硬質のシリカを含有させることで、塗膜が硬くなり、耐ブロッキング性を向上させる。シリカの含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましい。含有量が1質量部未満では、耐ブロッキング性が劣る場合がある。含有量が20質量部を超えると、加工性が劣る場合がある。
なお、上塗り層には、潤滑性を付与するために更にワックスを配合することができる。本発明では、特に限定されないが、ポリエチレンワックス、カルナウバワックスの少なくとも1種が好適に用いられる。ポリエチレンワックスは、数平均分子量が600〜12000であり80〜130℃の融点を有するものを用いることが好ましい。カルナウバワックスは、高級脂肪酸エステルを主成分とする植物ロウであり、80〜86℃の融点を有するものを好適に使用することができる。ワックスの含有量は、熱硬化性樹脂に対して1〜15質量%、好ましくは2〜12質量%である。また、ワックスは平均粒径が1μm〜5μmであることが好ましい。ワックスの平均粒径が上述の範囲内にあると、ウエットの状態で塗布した場合、ワックスは溶剤に溶け難いために樹脂層の表面から突出しやすい。これを焼付乾燥することにより、表面に突出している部分が溶融し、樹脂層の表面をワックスが覆うので、均一なワックスの分布を得ることができる。数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。融点は、JIS K 7121に準じて測定することができる。平均粒径は、レーザ回折・散乱法で測定することができる。
(3−3)膜厚
上塗り層と下塗り層の膜厚比は0.2〜2.0の範囲にある。膜厚比が0.2未満では耐ブロッキング性が劣り、2.0を超えると、加工性が劣る。上塗り層の膜厚は、2μm〜8μmであることが好ましく、下塗り層の膜厚は、4μm〜13μmであることが好ましい。上塗り層の膜厚が2μm未満では、耐ブロッキング性が劣る場合があり、8μmを超えると、加工性が劣る場合がある。下塗り層の膜厚が4μm未満では、加工性が劣る場合があり、13μmを超えると、加工性が劣る場合がある。また、上塗り層と下塗り層の膜厚の合計は、10〜16μmであることが好ましい。膜厚は、ストランドゲージ、電磁膜厚計、渦電流式膜厚計や重量法等で測定される。
(3−4)樹脂層の形成
まず、室温でゴム状態の熱硬化性樹脂と、硬化剤とを混合し、これに放熱性添加剤を加え、溶媒にこれらを溶解又は分散させることにより塗料を調製する。この塗料をアルミニウム板に形成された化成皮膜上に塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥する。これにより、化成皮膜上に、下塗り層が形成される。溶媒は特に限定されないが、例えば、水、エステル、グリコールエーテル、グリコール、ケトン、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール等が挙げられる。これらの中でも、具体的には、キシレン、トルエン、及びこれらの混合物が特に適切である。通常、塗料は1〜50質量%の固形分となるように調製される。
次に、室温でガラス状態の熱硬化性樹脂と、硬化剤と、シリカとを混合し、これに放熱性添加剤を加え、溶媒にこれらを溶解又は分散させることにより塗料を調製する。この塗料を下塗り層の表面に塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥する。これにより、化成皮膜上に、上塗り層が形成される。溶媒は特に限定されないが、例えば、水、エステル、グリコールエーテル、グリコール、ケトン、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール等が挙げられる。これらの中でも、具体的には、キシレン、メチルケトン、及びこれらの混合物が特に適切である。通常、塗料は1〜50質量%の固形分となるように調製される。
塗料の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ロールコーター法、ロールスクイズ法、エアナイフ法、ケミコーター法、浸漬法、スプレー法、バーコーター法等が挙げられる。アルミニウム板に形成された化成皮膜上に低コストにて樹脂層を形成するには、コイルを用いロールコーターにて連続的に塗布する方法が最も適している。この方法で塗料を塗布する場合、3〜7ゾーンに分かれた焼付炉にて塗料を焼付けることになる。また、全焼付時間は10〜60秒が好ましく、20〜45秒がより好ましい。焼付温度は、最高到達温度が200〜290℃が好ましい。
以下に、本発明を実施例と比較例に基づいて詳細に説明する。
(実施例1〜9、比較例1〜6)
アルミニウム材として、板厚:1.0mmのアルミニウム板(材質:JIS A5052)を用いた。この両面を市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗した。次いで、市販のりん酸クロメート処理液によりアルミニウム板の両面に化成処理を施した。その後、表1に示すポリエステル系樹脂(主剤)にメラミン樹脂(硬化剤)を配合し、グラファイトを添加し、有機溶剤(キシレンとトルエンの混合溶剤)に溶解させた塗料を、化成処理したアルミニウム板の一方の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼き付けて、下塗り層を形成させた。なお、焼付条件は、最高到達温度が220℃で、焼付時間が40秒であった。更に、表1に示すポリエステル系樹脂(主剤)にメラミン樹脂(硬化剤)、シリカを配合し、更に、グラファイトを添加し、有機溶剤(キシレンとメチルエチルケトン)に溶解させた塗料を、下塗り層の表面にロールコート方式によって塗布し、熱風炉で焼き付けて、上塗り層を形成させ、樹脂被覆アルミニウム材を製造した。なお、焼付条件は、最高到達温度が230℃で、焼付時間が50秒であった。蛍光X線で化成皮膜量を測定したところ、Cr量 30mg/mであった。乾燥後の塗膜厚を渦電流式膜厚計で測定した結果を表1に示す。
<成分>
ポリエステル樹脂A:ガラス転移温度7℃、数平均分子量 23000
ポリエステル樹脂B:ガラス転移温度0℃、数平均分子量 19000
ポリエステル樹脂C:ガラス転移温度−15℃、数平均分子量28000
ポリエステル樹脂D:ガラス転移温度4℃、数平均分子量23000
ポリエステル樹脂E:ガラス転移温度56℃、分子量16000
ポリエステル樹脂F:ガラス転移温度60℃、分子量15000
ポリエステル樹脂G:ガラス転移温度47℃、分子量16000
ポリエステル樹脂H:ガラス転移温度68℃、分子量15000
ポリエステル樹脂J:ガラス転移温度10℃、分子量23000
樹脂被覆アルミニウム材について、加工性及び耐ブロッキング性、放熱性を評価し、○を合格、×を不合格とした。表1に、評価結果を示す。
<加工性の評価>
樹脂被覆アルミニウム材の塗膜面を外側にして、素板を1枚はさみ、180度曲げを実施し、目視で塗膜割れの程度を評価した。
○:塗膜割れが認められない。
×:塗膜割れが認められる。
更に、テープ剥離試験を実施し、目視で塗膜剥離の程度を評価した。
○:塗膜剥がれなし。
×:塗膜剥がれあり。
<耐ブロッキング性の評価>
樹脂被覆アルミニウム材を5cm×5cm角のサイズに2枚切断し、塗膜面どうしを重ねて、プレス機で圧力をかけて、50℃で2時間放置後、取り出し、樹脂被覆アルミニウム材を手で剥がした。
○:容易に剥がすことができる。
×:剥がすことができない。
<放熱性の評価>
樹脂被覆アルミニウム材を19cm×28cmのサイズに切断し、図2に示すように、前述した方法に基づいて、箱2の中央部2aの温度Tcを測定した。なお、シリコンラバーヒータにスライダックをつなぎ、14Wとなるように調整した。
○:Tc 65℃以下
×:Tc 65℃超
Figure 0006173747
実施例1〜9では、加工性、耐ブロッキング性がいずれも良好であった。一方、下塗り層がなく、上塗り層が室温でガラス状態でない比較例1では、耐ブロッキング性が劣ることが分かった。また、上塗り層が室温でガラス状態であっても、下塗り層がない比較例2では、加工性が劣ることが分かった。また、上塗り層と下塗り層の膜厚比が2.0より大きい比較例3では、加工性が劣ることが分かった。また、上塗り層と下塗り層の膜厚比が0.2未満である比較例4では、加工性が劣ることが分かった。また、下塗り層が室温でゴム状態でない比較例5では、加工性が劣ることが分かった。また、上塗り層が室温でガラス状態でない比較例6では、耐ブロッキング性が劣ることが分かった。
1 放熱性樹脂被覆アルミニウム材
2 箱
2a 中央部
3 シリコンラバーヒータ
4 アルミニウム板
5 熱電対
11 アルミニウム材
12 化成皮膜
13 樹脂層
13a 下塗り層
13b 上塗り層

Claims (5)

  1. アルミニウム材と、前記アルミニウム材上に形成された化成皮膜と、前記化成皮膜上に形成された樹脂層とを有する放熱性樹脂被覆アルミニウム材であって、
    前記樹脂層は、上塗り層と下塗り層とを有し、
    前記上塗り層は、室温でガラス状態の熱硬化性樹脂、シリカ及び放熱性添加剤を含有し、
    前記下塗り層は、室温でゴム状態の熱硬化性樹脂、及び放熱性添加剤を含有し、
    前記上塗り層と前記下塗り層の膜厚比が0.2〜2.0であり、
    前記下塗り層は、さらに、硬化剤を含有し、前記室温でゴム状態の熱硬化性樹脂100質量部に対する前記硬化剤の含有量が0.5〜11質量部であることを特徴とする、放熱性樹脂被覆アルミニウム材。
  2. 前記上塗り層の膜厚が2μm〜8μmであり、前記下塗り層の膜厚が4μm〜13μmであることを特徴とする請求項1に記載の放熱性樹脂被覆アルミニウム材。
  3. 前記室温でガラス状態の熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度が40〜70℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の放熱性樹脂被覆アルミニウム材。
  4. 前記室温でゴム状態の熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度が−15〜13℃であることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の放熱性樹脂被覆アルミニウム材。
  5. 前記放熱性添加剤は、凝集性を有する炭素粒子であることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の放熱性樹脂被覆アルミニウム材。
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