この特許文献1に示されている保持部は、当接部材のテーブル状となっている上面によって形成されたものとなっており、楔状部材の下端が当接部材の上面に載せられることにより、下向きに打圧される前の楔状部材が保持されるようになっている。このため、下向きに打圧される前の楔状部材が下端を中心に揺動するおそれがあり、楔状部材を安定して保持させておくことは難しい。この結果、楔状部材の打圧作業を行うために、保持部に保持させていた楔状部材を上に持ち上げて、この楔状部材を保持部から分離させる作業に手間が掛かるおそれがあった。
本発明の目的は、下向きに打圧される前の楔状部材を安定して保持させておくことができるようになる仮設足場用筋交を提供するところにある。
本発明に係る仮設足場用筋交は、棒状の筋交本体と、この筋交本体の両端に設けられ、互いに並設される2本の仮設足場用支柱に設けられた連結枠に連結される連結部と、を有する仮設足場用筋交であって、それぞれの前記連結部が、連結部本体と、この連結部本体に結合され、前記連結枠に上から挿入される挿入部材と、前記連結部本体に取り付けられ、下向きに打圧された楔状部材が当接案内されることによってこの楔状部材を前記連結枠の側へ移動案内させるための当接部材と、下向きに打圧される前の楔状部材を保持しておくための保持部と、を含んで構成されている仮設足場用筋交において、前記保持部が前記連結部本体に設けられ、前記楔状部材には、前記保持部に係止されることによってこの保持部により前記楔状部材を保持しておくための係止部が設けられ、前記連結部本体には、下向きに打圧される前に前記保持部で保持される前記楔状部材の揺動を阻止し、前記筋交本体に対する前記楔状部材の姿勢を安定させるための揺動阻止部が設けられていることを特徴とするものである。
この仮設足場用筋交では、下向きに打圧される前の楔状部材を保持させておくための保持部は、連結部本体に設けられており、また、楔状部材には、前記保持部に係止されることによって楔状部材を保持しておくための係止部が設けられている。さらに、連結部本体には、下向きに打圧される前に保持部で保持される楔状部材の揺動を阻止し、筋交本体に対する楔状部材の姿勢を安定させるための揺動阻止部が設けられている。
このため、楔状部材に設けられている係止部が、連結部本体に設けられている保持部に係止されることによって、下向きに打圧される前の楔状部材を安定して保持させておくことができるようになる。
さらに、下向きに打圧される前に保持部で保持される楔状部材は、連結部本体に設けられている揺動阻止部によって揺動が阻止され、筋交本体に対する楔状部材の姿勢の安定化が図られるようになる。これにより、下向きに打圧される前に保持部で保持される楔状部材をより安定して保持させておくことができるようになる。また、これにより、保持部で保持させておいた楔状部材をこの保持部から外して打圧する作業を円滑に行うことができるようになる。
なお、本発明では、連結部本体は、当接部材よりも大きい上下寸法及び左右寸法を有しているため、楔状部材を安定して保持しておくことができる保持部の配置位置を、連結部本体の形状や構造等に応じて任意に設定できる。
本発明において、係止部における係止によっても楔状部材を保持部に安定して保持しておくことができるようにするためには、一例として、係止部を、縦長形状となっている楔状部材の上下方向の中央部又は略中央部に設けることができる。
これによると、楔状部材は、この楔状部材の下端が保持部に載せられることによって保持部に保持されるのではなく、縦長形状となっている楔状部材の上下方向の中央部又は略中央部に設けられた係止部を保持部に係止することにより、楔状部材は保持部に保持されることになるため、楔状部材を保持部に安定して保持させておくことができる。
また、係止部の形状は任意であり、この係止部の形状を、楔状部材に下向きに開口して形成された凹部とすることにより、楔状部材を保持部に一層安定して保持させておくことができる。
本発明において、連結部本体の形状及び構造は任意である。その一例は、連結部本体を、楔状部材を上下に移動可能とする間隔を開けて互いに対面している2個の面状部を有するものとし、これらの面状部の間に前述した筋交本体の端部と前述した挿入部材が配置されるようにし、保持部は、2個の面状部のうち、少なくとも一方の面状部の一部を他方の面状部の側へ折り曲げることによって形成された折り曲げ部とし、この折り曲げ部によって2個の面状部の間隔が規定されるようにすることである。
これによると、保持部は、2個の面状部のうち、少なくとも一方の面状部の一部を他方の面状部の側へ折り曲げることによって形成された折り曲げ部となっているため、保持部を、連結部本体を形成する2個の面状部のうち、少なくとも一方の面状部の一部によって形成でき、また、保持部となっている上記折り曲げ部によって2個の面状部の間隔が規定されるようになっているため、楔状部材を保持しておくための保持部により、筋交本体の端部と挿入部材が配置される2個の面状部の間隔を正確に設定できるようになる。
このように保持部を、2個の面状部のうち、少なくとも一方の面状部の一部を他方の面状部の側へ折り曲げることによって形成された折り曲げ部とする場合には、一方の面状部の一部だけを他方の面状部の側へ折り曲げてもよく、あるいは、折り曲げ部を2個の面状部のそれぞれに設け、これらの折り曲げ部の折り曲げ長さを同じとし、これらの折り曲げ部同士の先端を突き合わせてもよい。
後者によると、2個の面状部のそれぞれに折り曲げ部が形成され、これらの折り曲げ部の折り曲げ長さは同じになっているため、2個の面状部を形成するための作業を容易に行えるようになる。
本発明において、揺動阻止部の形状及び構造は任意であり、下向きに打圧される前に保持部で保持される楔状部材が揺動することが阻止されるものであればよい。すなわち、揺動阻止部の形状及び構造は、下向きに打圧される前に保持部で保持される楔状部材が揺動したとき、この楔状部材が当接するものであれば任意である。
揺動阻止部の形状及び構造の第1の例として、2個の面状部のうち、少なくとも一方の面状部の一部から他方の面状部の側へ突出した突出部となっているものを挙げることができる。ここで、突出部は、2個の面状部のうち、少なくとも一方の面状部の一部を他方の面状部の側へ押し出し加工することにより形成されるものでもよく、2個の面状部のうち、少なくとも一方の面状部の内面(他方の面状部と対面する面)に溶着や接着等で結合したピース部材(小片部材)で形成されるもの等でもよい。
揺動阻止部の形状及び構造の第2の例として、2個の面状部にそれぞれ形成され、互いに対向する貫通孔に挿通固定された棒状部材を挙げることができる。なお、貫通孔をねじ孔とし、棒状部材をこのねじ孔に螺入可能なボルト等のねじ部材としてもよい。
本発明において、揺動阻止部を面状部に設ける位置は、下向きに打圧される前に保持部で保持される楔状部材が揺動することが阻止される位置であれば任意である。例えば、下向きに打圧される前に保持部で保持される楔状部材が筋交本体側へ揺動することが阻止されるようにするためには、揺動阻止部を、保持部よりも上方であって、この保持部よりも筋交本体の側の位置に設けることが好ましい。また、下向きに打圧される前に保持部で保持される楔状部材が筋交本体とは反対の側へ揺動することが阻止されるようにするためには、揺動阻止部を、保持部よりも上方であって、この保持部よりも筋交本体とは反対の側の位置に設けることが好ましい。
本発明において、連結部本体を、前述したように、楔状部材を上下に移動可能とする間隔を開けて互いに対面している2個の面状部を有するものとした場合には、これら2個の面状部は、1個の板状材を折り返し加工することによって形成してもよく、あるいは、2個の板状材によって形成してもよい。
また、本発明において、筋交本体の両端に設けられている前述の連結部における前述の挿入部材は、連結部本体から下方へ延びる長さを同じにしてもよく、これらの長さを異ならせてもよい。
筋交本体の両端に設けられている連結部における挿入部材を、連結部本体から下方へ延びる長さが異なっているものとした場合には、本発明に係る筋交を、互いに並設された2本の仮設足場用支柱に斜めに架設するときに、それぞれの挿入部材を、これらの仮設足場用支柱に設けられた連結枠に同時に挿入するのではなく、連結部本体から下方へ延びる長さが長くなっている一方の挿入部材を一方の仮設足場用支柱の連結枠に挿入した後に、連結部本体から下方へ延びる長さが短くなっている他方の挿入部材を他方の仮設足場用支柱の連結枠に挿入することができるため、これらの挿入部材の連結枠への挿入作業を容易に行えるようになる。
なお、筋交本体の両端に設けられた連結部における挿入部材を、連結部本体から下方へ延びる長さが異なっているものとすることは、前述と異なり、保持部を連結部本体に設けず、また、楔状部材に、保持部に係止されることによってこの保持部により楔状部材を保持しておくための係止部を設けず、さらに、連結部本体に揺動阻止部を設けない場合にも、実施することができる。
本発明によると、下向きに打圧される前の楔状部材を安定して保持させておくことができるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る仮設足場用筋交が用いられて構築された仮設足場の一部を示す正面図であり、図2は、図1のS2−S2線断面図である。
図1で示す仮設足場1は、互いに並設された2本の仮設足場用支柱2を含んで構成され、これらの支柱2の外周面には、図2で示されているように、連結ポイント3が設けられている。図1で示されているように、支柱2の高さ方向に複数設けられているこの連結ポイント3は、支柱2の円周方向に90度間隔で配置された4個の連結枠4で構成されており、それぞれの連結枠4は、コ字状に屈曲させた板材の両端部を支柱2に溶接で結合することで形成されていて、上下に貫通したものとなっている。また、連結枠4は、支柱2に対して互いに反対側の位置であって同じ高さ位置に配置された2個で1組をなしており、2組の連結枠4のうち、一方の組の連結枠4Aは、他方の組の連結枠4Bよりも高い位置に配置されている。
互いに並設された2本の支柱2の連結枠4A同士の間には、図1で示す仮設足場用横架材5が水平に架設され、この架設は、横架材5の両端に設けられている楔状部材5Aのそれぞれの支柱2の連結枠4Aに上から打圧、挿入することにより、楔状部材5Aの楔効果によって連結枠4Aに楔状部材5Aを連結することで行われ、これにより、互いに並設された2本の支柱2同士は、仮設足場用横架材5によって連結される。
また、互いに並設された2本の支柱2同士の間には、仮設足場1の強度を確保、向上されるために仮設足場用筋交10が架設され、この架設は、2本の支柱2に上下にずれて配置されているそれぞれの連結ポイント3の連結枠4Bに筋交10の両端部を連結することにより、2本の支柱2同士の間に筋交10を斜めに架設することによって行われる。
筋交10は、棒状の筋交本体11と、この筋交本体11の両端に設けられ、2本の支柱2の連結枠4Bに連結される連結部12と、を有し、棒状の筋交本体11はパイプ材で形成されている。また、それぞれの連結部12は、連結部本体13と、この連結部本体13に結合され、連結枠4Bに上から挿入される挿入部材14と、連結部本体13に取り付けられ、下向きに打圧された楔状部材15が当接案内されることにより、この楔状部材15を連結枠4Bの側へ移動案内させるための当接部材16と、を含んで構成されている。
図3〜図7は、図1で示されている筋交10の両端に設けられた上下2個の連結部12のうち、上側の連結部12の連結部本体13を示しており、図3は、正面図であり、図4は、連結枠4Bの側から見た側面図であり、図5は、平面図であり、図6は、図3のS6−S6線断面図であり、図7は、図3のS7−S7線断面図である。また、図8は、図1で示されている筋交10の両端に設けられた上下2個の連結部12のうち、下側の連結部12の連結部本体13の正面図である。筋交10の上下両方の連結部12は、後述する挿入部材14の上下寸法を除き、左右対称の形状及び構造となっているため、以下では、筋交10の上側の連結部12について説明する。
図5に示されているように、連結部12の連結部本体13は、楔状部材15を上下に移動可能とする間隔を開けて互いに対面している2個の面状部20を有しており、これらの面状部20は、互いに個別となっている2個の板状材によって形成されている。そして、これらの板状材の間には、挿入部材14が配置され、図3及び図4に示されているように、挿入部材14の上部が、それぞれの面状部20に溶接部21で結合されている。また、これらの板状材の間には、図2に示されているように、筋交本体11の偏平部11Aも配置され、これらの板状材と筋交本体11の偏平部11Aが溶接される。これにより、2個の面状部20を形成している2個の板状材が、挿入部材14と筋交本体11の偏平部11Aを介して結合されている。
なお、図3に示すように、それぞれの面状部20は、主部20Aと、この主部20Aの上部から連結枠4Bの側へ延出した延出部20Bとからなっており、図3及び図4に示すように、これらの延出部20Bにおける連結枠4B側の部分の間に挿入部材14が配置されている。これにより、面状部20の主部20Aと挿入部材14との間には、図3に示すように、連結枠4Bの一部を形成している板状部4Cを挿入可能な空間が形成され、この空間に板状部4Cを挿入できるようになっている(図2も参照)。
図3から分かるとおり、2個の面状部20の延出部20Bの間には、挿入部材14の上部が挿入され、この上部は、前述したように、2個の面状部20の延出部20Bに溶接部21で結合されている。そして、この挿入部材14の上端は、連結部本体13の上面まで達している。また、この挿入部材14の下部には、図3に示されているように、前述の筋交本体11の側へ鉤状に突出した鉤状部17が形成され、この鉤状部17における連結枠4Bの側とは反対側の側面の下部は、言い換えると、この鉤状部17における筋交本体11の側の側面の下部は、傾斜面17Aとなっており、下側に向かって筋交本体11とは反対側へ、すなわち連結枠4Bの側へ傾斜しているこの傾斜面17Aにより、連結枠4Bへの挿入部材14の上からの挿入を、板状部4C(図2参照)に対して挿入部材14が円滑に滑って行えるようになっている。
図3及び図6に示されているとおり、連結部本体13を形成している2個の面状部20には縦長の孔22が形成され、これらの孔22に前述の当接部材16が2個の面状部20に跨って挿入配置され、厚い板又はブロックで形成されているこの当接部材16は、図3から分かるように、それぞれの面状部20に溶接部23で結合されている。また、全体的に縦長形状となっている当接部材16は、2個の面状部20が構成要素となっている連結部本体13に鉛直に配置されておらず、下側に向かって連結枠4Bの側へ傾斜して配置されている。
そして、以上の連結部本体13における当接部材16の配置構造により、当接部材16は、全体周囲が連結部本体13に囲まれた状態でこの連結部本体13に配置固定されていることになる。
また、図6に示されているように、連結部本体13を形成している2個の面状部20のそれぞれには、当接部材16の上側において、折り曲げ部24が形成されている。これらの折り曲げ部24は、互いに向かい合う方向に折り曲げられている。言い換えると、一方の面状部20に設けられている折り曲げ部24が、他方の面状部20の側へ折り曲げることにより形成されているとともに、他方の面状部20に設けられている折り曲げ部24が、一方の面状部20の側へ折り曲げることにより形成されている。そして、両方の折り曲げ部24の折り曲げ長さは同じとなっており、両方の折り曲げ部24の先端同士は突き合わせられている。
このため、それぞれの折り曲げ部24は、連結部本体13の一部、具体的には、連結部本体13を形成している2個の面状部20の一部によって形成されている。また、両方の折り曲げ部24の先端同士が突き合わせられることにより、2個の面状部20の間の間隔が規定されており、この規定により、2個の面状部20の間の間隔を、挿入部材14、筋交本体11の端部、さらには前述した楔状部材15を挿入するための適正な大きさに設定することができるようになっている。
そして、それぞれの折り曲げ部24の下部は、図6に示されているように、当接部材16を挿入配置するためにそれぞれの面状部20に形成された孔22になっているため、これらの孔22を形成するために面状部20の一部を切り起し加工したときに生ずる切り起し片の一部により、折り曲げ部24を形成することができるようになっている。
また、図5及び図6に示されているように、2個の面状部20のそれぞれには、対面する他方の面状部20の側へ突出した突出部34が設けられている。そして、図3及び図4に示されているように、面状部20における同じ高さ位置に設けられているそれぞれの突出部34は、面状部20のうち、折り曲げ部24よりも上方であって、この折り曲げ部24よりも筋交本体11の側の位置に設けられている(図1も参照)。これらの突出部34は、図7に示されてように、面状部20の一部を対面する他方の面状部20の側へ押し出し加工することにより形成されたものとなっている。
なお、押し出し加工による突出部34の成形作業は、板状材の打ち抜き加工によって形成される面状部20のこの打ち抜き加工と同時に行ってもよく、あるいは、この面状部20の打ち抜き加工を行った後、例えば、切り起し加工による折り曲げ部24の成形作業と同時に行ってもよい。
図2に示されているように、前述のパイプで形成されている筋交本体11の両端部は押し潰し加工によって偏平部11Aとなっており、これらの偏平部11Aは、連結部本体13を形成している2個の面状部20の間に挿入され、当接部材16に対して挿入部材14とは反対側において2個の面状部20の間に挿入されている偏平部11Aは、図10及び図12に示されているように、連結部本体13に対して所定の角度をなして連結部本体13に溶接部25で結合されている。
なお、筋交本体11の偏平部11Aを連結部本体13に溶接部25で結合することは、以下のように行われる。すなわち、図12と図14で示されている偏平部11Aと連結部本体13に共通して形成した貫通孔18に、溶接治具に設けられているピンを挿入し、筋交本体11と連結部本体13のうち、一方を溶接治具に固定した後に、他方を溶接治具のピンを中心に回動させ、筋交本体11が連結部本体13に対して所定の角度となった後、筋交本体11の偏平部11Aと連結部本体13とを溶接部25で結合する。
図3と図8で示されているとおり、筋交10の両端の連結部12に設けられている挿入部材14は、連結部本体13から下方へ延びる長さが同じとなっておらず、図3に示すように、筋交10の上側の連結部12に設けられている挿入部材14Aは、連結部本体13から下方へ延びる長さがL1となっており、図8に示すように、筋交10の下側の連結部12に設けられている挿入部材14Bは、連結部本体13から下方へ延びる長さがL2となっており、L1はL2よりも長くなっている。
図9は、前述した楔状部材15を示しており、図9(A)は正面図であり、図9(B)は、前述した連結枠4Bの側から見た側面図である。楔状部材15の上端部には、連結部本体13を形成している2個の面状部20の並び方向(言い換えると、楔状部材15の厚さ方向)に突出し、これらの面状部20の間の隙間の大きさよりも突出幅が大きくなった頭部26が設けられている。また、楔状部材15の下端部には孔27が形成されており、楔状部材15を、2個の面状部20の間の隙間に上から挿入した後に、この孔27にピン状の抜け止め部材28が挿入固定される。この抜け止め部材28の長さは、2個の面状部20の間の隙間の大きさよりも長いため、2個の面状部20の間の隙間に挿入された楔状部材15は、連結部本体13に頭部26と抜け止め部材28とによって抜け止めされて配置される。
また、図9(A)に示されているように、楔状部材15は、上部の幅広部15Aと、下部の幅狭部15Bとからなり、これらの幅広部15Aと幅狭部15Bとの間は、連結枠4B側への方向である左右方向への段差部15Cとなっており、この段差部15Cに、下向きに開口した凹部となっている係止部29が形成されている。そして、この係止部29は、縦長形状となっている楔状部材15の上下方向の中央部又は略中央部に設けられている。
さらに、図9(A)に示されているように、楔状部材15の幅広部15Aにおける連結枠4Bとは反対側の側面は、傾斜面30となっており、この傾斜面30は、下側に向かって連結枠4Bの側へ傾斜している(図10及び図12を参照)。また、楔状部材15の幅狭部15Bの下部における連結枠4Bの側の側面は、傾斜面31となっており、この傾斜面31は、下側に向かって連結枠4Bとは反対側へ傾斜している(図10及び図12を参照)。そして、幅広部15Aの両方の面には、楔状部材15の重量を軽量化するために、浅くて大きな面積で凹部32が形成されている。
次に、図1で示されている2本の支柱2に筋交10を架設するための作業について説明する。図10及び図12は、筋交本体11の両端部に設けられている上下両方の連結部12を2本の支柱2の連結枠4Bに連結して2本の支柱2に筋交10を架設した後を示しており、図11及び図13は、これらの連結部12を連結枠4Bに連結する前を示している。
図11及び図13に示されているように、筋交本体11の両端部に設けられている上下両方の連結部12を2本の支柱2の連結枠4Bに連結する前は、楔状部材15に下向きの凹部として形成されている係止部29は、連結部本体13に形成されていて、先端同士が突き合わせられている2個の折り曲げ部24に係止されており、これにより、楔状部材15は、連結部本体13に保持されている。このため、2個の折り曲げ部24により、楔状部材15を連結部本体13に保持しておくための保持部33が連結部本体13に形成されていることになる。
このように楔状部材15を連結部本体13に設けられている保持部33に保持した状態で、筋交10の上下両端の連結部12に下向きに設けられているそれぞれの挿入部材14を、図1、図10及び図12に示されている2本の並設された支柱2の連結枠4Bに上から挿入する。この挿入作業は、それぞれの挿入部材14についての連結部本体13から下方へ延びる長さL1,L2が同じになっていないため、同時に行う必要がなく、上側の連結部12に設けられている挿入部材14Aは、連結部本体13から下方へ延びる長さがL1であって、下側の連結部12に設けられている挿入部材14Bは、連結部本体13から下方へ延びる長さがL2であり、L1はL2よりも長くなっているため、上側の連結部12に設けられている挿入部材14Aについての挿入作業を先に行うことができ、下側の連結部12に設けられている挿入部材14Bについての挿入作業を後に行うことができる。
このように本実施形態に係る筋交10では、両方の挿入部材14を2本の支柱2の連結枠4Bに上から挿入する作業を、同時に行うのではなく、時間差をもって行えるため、この挿入作業を容易に行えることになる。
また、前述したように、挿入部材14の鉤状部17における前述の筋交本体11の側の側面の下部は傾斜面17Aとなっており、この傾斜面17Aは、下側に向かって筋交本体11とは反対側へ傾斜しているため、この傾斜面17Aにより、連結枠4Bへの挿入部材14の上からの挿入作業を、連結枠4Bの前述した上記板状部4Cに対して挿入部材14が円滑に滑ることにより容易に行える。
次に、筋交10の2個の連結部12のうち、一方の連結部12において、保持部33に係止部29を係止させることで連結部本体13に保持させていた楔状部材15を上に持ち上げることにより、この楔状部材15を保持部33から分離させ、この後に、楔状部材15の下側の幅狭部15Bを連結枠4Bと当接部材16との間に上から挿入し直し、楔状部材15の頭部26をハンマー等の工具で下向きに打圧する。これにより、楔状部材15は2個の面状部20の間において上から下へ移動しながら、図10及び図12に示されているように、楔状部材15の幅広部15Aにおける傾斜面30が、連結部本体13に結合されている当接部材16における連結枠4Bの側へ傾斜した側面に当接案内され、この当接案内により、楔状部材15は、下向きに移動しながら連結枠4Bの側へ移動案内されて、挿入部材14と共に、連結枠4Bの前述した板状部4C(図2参照)を挟着することとなる。
これにより、筋交10の一方の連結部12は、楔状部材15の楔状作用により、一方の支柱2の連結枠4Bに連結されることになる。また、以上と同じ作業を、筋交10の2個の連結部12のうち、他方の連結部12についても行うことにより、他方の連結部12も、楔状部材15の楔状作用により、他方の支柱2の連結枠4Bに連結されることになり、これにより、並設された2本の支柱2の間に筋交10が斜めに架け渡されることになる。
なお、楔状部材15と連結枠4Bの板状部4Cとの間に左右方向の僅かな隙間が存在する場合には、挿入部材14や楔状部材15の寸法、形状等を適宜に設定することにより、このような隙間を発生させずに、楔状部材15と挿入部材14とによって連結枠4Bの板状部4Cを挟着することもできる。
また、前述したように、楔状部材15の幅狭部15Bの下部における連結枠4Bの側の側面は、下側に向かって連結枠4Bとは反対側へ傾斜している傾斜面31となっているため、楔状部材15の頭部26を下向きに打圧して楔状部材15を下向きに移動させた際に、この傾斜面31により、楔状部材15を連結枠4Bの板状部4Cや挿入部材14の鉤状部17に対して円滑に滑らせることができる。
また、それぞれの連結部12を支柱2の連結枠4Bから分離させて、筋交10を2本の支柱2から取り外すときには、それぞれの楔状部材15の下面をハンマー等の工具で上向きに打圧し、これにより、楔状部材15を連結部本体13に対して上昇させる。これにより、楔状部材15と挿入部材14とによる連結枠4Bの板状部4Cの挟着が解除されることになり、筋交10全体を上へ持ち上げることにより、それぞれの連結部12の挿入部材14をそれぞれの支柱2の連結枠4Bから抜き取り、これらの連結部12を連結枠4Bから分離させることにより、筋交10を2本の支柱2から取り外すことができる。
このようにそれぞれの連結部12を支柱2の連結枠4Bから分離させて、筋交10を2本の支柱2から取り外した後は、それぞれの連結部本体13に設けられている保持部33に楔状部材15の係止部29を係止することにより、連結部本体13に楔状部材15を保持させておくことができる。
図14は、下側の連結部12の連結部本体13に設けられている保持部33に保持されている楔状部材15が、筋交本体11側へ揺動したときを示す図である。
連結部12の連結部本体13に設けられている保持部33に保持されている楔状部材15は、係止部29を中心として揺動可能となっているが、下側の連結部12の連結部本体13に設けられている保持部33に保持されている楔状部材15が、図14に示すように、筋交本体11側へ大きく揺動した場合には、この楔状部材15が筋交本体11に当接し、筋交本体11が損傷するおそれがある。
しかし、2個の面状部20のそれぞれには、対面する他方の面状部20の側へ突出した突出部34が設けられている(図5及び図6参照)。このため、筋交本体11側へ揺動した楔状部材15は、図14に示されているように、面状部20の突出部34に当接することで、これ以上筋交本体11側へ揺動することが阻止される。この結果、楔状部材15が筋交本体11へ当接することが防止される。
図15は、上側の連結部12の連結部本体13に設けられている保持部33に保持されている楔状部材15が、筋交本体11側へ揺動したときを示す図である。
この図15に示されているように、上側の連結部12の連結部本体13に設けられている保持部33に保持されている楔状部材15も、面状部20の突出部34に当接することで、これ以上筋交本体11側へ揺動することが防止されるようになっている。
このように、2個の面状部20のそれぞれに設けられている突出部34は、下向きに打圧される前に保持部33で保持される楔状部材15の揺動を阻止し、筋交本体11に対する楔状部材15の姿勢を安定させるための揺動阻止部となっている。
以上説明した本実施形態によると、楔状部材15に設けられている係止部29が、筋交10の連結部12の連結部本体13に設けられている保持部33に係止されることによって、下向きに打圧される前の楔状部材15を保持部33に安定して保持させておくことができる。さらに、2個の面状部20のそれぞれに設けられている突出部34によって、楔状部材15の筋交本体11側への揺動が阻止され、筋交本体11に対する楔状部材15の姿勢の安定化が図られるようになる。このため、下向きに打圧される前に保持部33で保持される楔状部材15をより安定して保持させておくことができる。また、これにより、楔状部材15の打圧作業を行うために、保持部33に係止部29を係止させることで連結部本体13に保持させていた楔状部材15を上に持ち上げることにより、この楔状部材15を保持部33から分離させる作業を円滑に行うことができる。
なお、保持部33は、筋交10の連結部12の連結部本体13に設けられており、この連結部本体13は、当接部材16よりも大きい上下寸法及び左右寸法を有しているため、楔状部材15を安定して保持しておくことができる保持部33の配置位置を、連結部本体13の形状や構造等に応じて任意に設定できる。
また、係止部29は、縦長形状となっている楔状部材15の上下方向の中央部又は略中央部に設けられているため、連結部本体13を形成している2個の面状部20の間の隙間に挿入されている楔状部材15を一層安定して保持しておくことができる。
さらに、係止部29は、楔状部材15に下向きに開口して形成された凹部となっているため、連結部本体13の保持部33に係止部29を係止することを、楔状部材15自身の重量を利用することにより、安定して行えることになる。
また、保持部33は、連結部本体13を形成している2個の面状部20のうちの一部を折り曲げた折り曲げ部24によって形成されているため、連結部本体13の材料を用いることによって保持部33が連結部本体13に設けられていることになり、したがって、保持部33のための特別の部材を用意する必要がない。
また、それぞれの折り曲げ部24の先端同士は突き合わせられているため、楔状部材15を保持しておくための保持部33により、筋交本体11の端部と挿入部材14が配置される2個の面状部20の間隔を正確に設定することができる。
さらに、2個の面状部20のそれぞれに設けられた折り曲げ部24の折り曲げ長さは同じになっているため、2個の面状部20を形成するための作業を容易に行える。
また、本実施形態では、押し出し加工による突出部34の成形作業は、板状材の打ち抜き加工によって形成される面状部20のこの打ち抜き加工と同時に、あるいは、この面状部20の打ち抜き加工を行った後、例えば、切り起し加工による折り曲げ部24の成形作業と同時に行うことができるため、それだけ、連結部本体13の製造作業工程数の削減化を図ることができる。
また、本実施形態では、連結部本体13に取り付けられている当接部材16は、この連結部本体13を形成している2個の面状部20に形成された孔22に挿入されているため、当接部材16は、この当接部材16の全体が連結部本体13で囲まれた状態となって連結部本体13に取り付けていることになる。このため、楔状部材15の頭部26がハンマー等の工具で下向きに打圧されることにより、楔状部材15の傾斜面30が当接部材16に当接案内されるときに当接部材16に作用する荷重を、連結部本体13によって有効に支持することができ、連結部本体13による当接部材16の支持強度を充分に大きくすることができる。
また、図11及び図13で説明したように、筋交本体11の偏平部11Aと連結部本体13とを溶接部25で結合する作業は、偏平部11Aと連結部本体13に共通して形成した貫通孔18に、溶接治具に設けられているピンを挿入し、筋交本体11と連結部本体13のうち、一方を溶接治具に固定した後に、他方を溶接治具のピンを中心に回動させ、筋交本体11が連結部本体13に対して所定の角度となった後、筋交本体11の偏平部11Aと連結部本体13とを溶接部25で結合するようにしているため、2本の支柱2に設けられている前述の連結ポイント3の上下の間隔等が異なっている仮設足場に用いる筋交については、図11及び図13に示されているように、前述の筋交本体11とは長さが異なっている筋交本体11’の偏平部11Aと連結部本体13とに共通した貫通孔18を形成し、この貫通孔18に溶接治具のピンを挿入した後に、筋交本体11’と連結部本体13のうち、一方を溶接治具に固定して他方を溶接治具のピンを中心に回動させ、筋交本体11’が連結部本体13に対して所定の角度となった後、筋交本体11’の偏平部11Aと連結部本体13とを溶接部25で結合する作業を行うことができる。
これにより、それぞれの連結部12を同じ部材によって構成していながら、筋交本体11,11’の長さが異なり、かつ筋交本体11,11’と連結部本体13とがなす角度が異なっている各種の筋交を容易に製造することができる。
なお、以上説明した本実施形態において、2個の面状部20は、1個の板状材の折り返し加工で形成するようにしてもよい。