以下、本発明の無人搬送台車の進路変更装置および進路変更方法を、図1〜図9に示す一実施形態に基づいて説明する。図1は無人搬送台車の底面図である。
図1において、本実施形態における無人搬送台車1(以下では、単に「車両」ともいう)は、下部の略四隅に配置したキャスタ輪5により支持される台車2と、台車2の下部に固定されて台車2と一体となり、前方および後方位置に旋回可能な駆動ユニット4を有する無人搬送車3と、から構成されている。なお、無人搬送車3と台車2とが一体に形成されるものであってもよい。前記キャスタ輪5は、台車2および台車2上に積載された積載物の重量を支え、無人搬送車3により駆動される車両の移動方向に追従してキャスタ軸回りに旋回され、台車2の進行に連れて従動回転される。以下では、無人搬送車3、台車2、駆動ユニット4等の水平面内での回動や回転を「旋回」という。
前記無人搬送車3は、台車2の下部の前方および後方に床面に向けて立設させた2本の支軸6と、各支軸6に夫々旋回可能に設けた駆動ユニット4と、電源としてのバッテリ7と、駆動ユニット4を制御するコントローラ8とを備える。
前記駆動ユニット4は、前記支軸6に旋回可能に支持され、図示しない一対の駆動モータを内蔵するアクスル9と、アクスル9の左右に配置されて前記一対の駆動モータにより夫々独立して回転駆動される左右一対の駆動輪10とを備える。また、駆動ユニット4には、アクスル9の前方および後方に配置されたブラケットにより保持して、走行ラインを形成する軌道テープ15を検出する軌道センサ11を備える。また、同じくアクスル9の前方若しくは後方に配置されたブラケットに保持して、軌道テープ15に隣接した設定位置に配置されて、無人搬送車3のコントローラ8へ外部信号(コマンド(旋回指令、停止指令、発進指令)命令)を伝達するアドレスマーク(磁気テープ)16を検出するアドレスセンサ12を備える。
左右の駆動輪10は走行路面に接地されて夫々対応する駆動モータにより回転駆動されて無人搬送車3を走行させる。即ち、前記左右駆動輪10が夫々駆動モータにより互いに等速で駆動される場合には、アクスル9は支軸6回りの旋回することなく、左右駆動輪10を連結するアクスル軸と直交する方向(駆動方向)に、アクスル9を介して支軸6を押し、車両を移動させる。この場合には、左右駆動輪10の駆動方向の合成力が一致している。車両の進行方向は、後述するように、車両の前後に配置されている前後駆動ユニット4の夫々の駆動状態(前後駆動ユニット4の駆動方向および駆動速度)に応じて様々に変化させることができる。
また、左右駆動輪10の駆動速度に差を持たせた場合には、支軸6回りにアクスル9を旋回させつつ左右駆動輪10の平均速度に応じて支軸6を押動して車両を走行させる。また、前記左右駆動輪10軌道センサ11の平均速度が零となる場合、即ち、左右駆動輪10が互いに反対方向に等速で駆動される場合には、支軸6回りにアクスル9を旋回させて、支軸6への駆動方向を変更することができる。
車両の進行方向は、車両の前後に配置された夫々の駆動ユニット4の駆動方向が同一軸線上、即ち、車両の前後方向軸と一致している舵角が零の場合には、車両を前方に直進させる(直進位置)ことができ、また、各駆動ユニット4を180度の角度だけ旋回させた状態(後進位置、舵角が180度)では、車両を後方に直進させることができる。なお、前後駆動ユニット4の駆動方向を逆転させる場合においても、車両を後方に直進させることができる。
また、前後駆動ユニット4を直進位置から同一方向に90度の角度により旋回させた場合には、車両をその姿勢を変更させることなく、横方向に横行させることができる。さらに、両駆動ユニット4を任意の同一方向および同一角度により斜め方向に旋回させた場合には、車両をその姿勢を変更させることなく、任意の方向に斜め走行させることができる。
さらに、前後駆動ユニット4を直進位置から夫々互いに逆方向に90度の角度だけ旋回させた場合には、車両の中心位置(前後支軸6の中間位置)を移動させることなく、車両をその場旋回させることができる。また、前方の駆動ユニット4の駆動方向を任意の角度だけ旋回させた場合には、車両をこの任意の方向に旋回させることができ、その時のトレールは前方駆動ユニット4のアクスル軸と後方駆動ユニット4のアクスル軸とが交差する点を旋回中心とする旋回半径を備えるものとなる。この旋回に際して、後方の駆動ユニット4の駆動方向(支軸6回りの角度位置)を前方の駆動ユニット4の駆動方向(支軸6回りの角度位置)とは反対側の角度に旋回させる場合には、前後のアクスル軸同士の交点(旋回中心)がより車両に接近して旋回半径を小さくして、車両を小回りさせることができる。
前記軌道センサ11は、図2に示すように、走行ラインを形成する軌道テープ15の幅方向に沿って複数(例えば、3個)のセンサが設けられている。そして、通常は、コントローラ8により、進行方向の前方に位置する軌道センサ11の全てのセンサによって軌道テープ15を検出するように、駆動ユニット4の左右駆動輪10の移動速度を調整する。なお、進行方向の後方に位置する複数のセンサからなる軌道センサ11によって軌道テープ15を検出させて左右駆動輪10の移動速度を調整してもよく、また、進行方向の前後に位置する両軌道センサ11の全てのセンサによって軌道テープ15を検出して左右の駆動輪10の移動速度を調整してもよい。
図3は無人搬送車3のシステム構成図である。コントローラ8には、無人搬送車3の走行制御を実行する走行制御コントローラ8Aと、各駆動ユニット4を制御する駆動ユニットコントローラ8Bとを備える。前記走行制御コントローラ8Aには、軌道テープ15の側方に必要に応じて配置された、指令コマンドを発信する磁気テープや現在位置を示すアドレス用磁気テープを検出するアドレスセンサ12よりの検出信号と、予め設定した走行ルート・車両速度指令を記憶した記憶回路よりのルート・速度指令とが入力されて、車両の前後駆動ユニット4の舵角指令および速度指令(発進、停止、速度)を演算し、駆動ユニットコントローラ8Bに出力する。以下では、前記指令コマンドを発信する磁気テープや現在位置を示すアドレス用磁気テープを総称して、アドレスマーク16という。
前記駆動ユニットコントローラ8Bには、軌道センサ11よりの検出信号が入力されると共に、走行制御コントローラ8Aからの舵角指令および速度指令が入力され、これらの入力信号に基づいて、左右駆動モータの回転速度および回転角速度を演算する。この左右駆動モータの回転速度および回転角速度の指令は、夫々モータ駆動回路13に出力され、各駆動モータが制御される。
無人搬送車3の走行ラインは、磁気テープや反射テープ等により形成した任意の走行ラインに沿って自在に設定して、無人搬送車3を走行させることができる。ところで、一方の走行ラインから分岐させた走行ラインへ無人搬送車3を移動させる時には、分岐させた軌道テープ15を軌道センサ11によって検出しながら行うことができる。このとき、無人搬送車3の自動走行が軌道センサ11によって確実に軌道テープ15を検出しながら走行できるように、分岐する軌道テープ15は、緩やかなカーブを描くように設置するか、元の軌道テープ15と分岐する軌道テープ15の間の角度が小さく設定されている。
即ち、無人搬送車3は、軌道センサ11によって軌道テープ15を検出しながら移動するため、緩やかなカーブを描くように走行ラインを形成したり小さい角度で走行ラインを分岐させる必要がある。しかしながら、無人搬送車3を走行させるため、大きな角度で交差する走行ラインへは進路変更することができないため、無人搬送車3を走行させるための走行ラインの形状が限られてしまうと共に、広いスペースを用いて走行ラインを形成しなければならない。
図4に示す走行ラインは、大きな角度で交差する走行ラインへ確実に進路変更させる場合に使用する交差点の走行ラインの形態を示すものである。即ち、一方の走行ラインである軌道テープ15A(進路変更前の軌道テープ15Aであり、「第1軌道テープ15A」という)と他方の走行ラインである軌道テープ15B(進路変更後の軌道テープ15Bであり、「第2軌道テープ15B」という)とが交差する交差点を取囲んで円形となる走行ラインが、円軌道テープ15Cにより形成されている。前記円軌道テープ15Cは、交差点を中心とする円形に形成されると共に、そのテープ幅は通常の軌道テープ15A,15Bと概略同じ幅に設定されている。
また、円軌道テープ15Cを検出する軌道センサ11は、駆動ユニット4の支軸6に対して前方および後方にオフセットして配置されているため、軌道センサ11が円軌道テープ15Cに対して直交せずに傾斜した状態で対面するようになる。このため、円軌道テープ15Cの幅は、通常の軌道テープ15A,15Bより若干大きい幅に設定されることが望ましい。そして、円軌道テープ15Cの直径は、無人搬送車3の前後の駆動ユニット4の支軸6間の距離と同じ寸法に設定されている。
また、本実施形態においては、第1軌道テープ15Aの交差点手前の所定位置から左右いずれか一方へ分岐して円軌道テープ15Cに沿う導入軌道テープ15Dによる導入走行ラインが設置されている。前記導入軌道テープ15Dは、後端側において第1軌道テープ15Aから徐々に分岐され、先端側において円軌道テープ15Cの第2軌道テープ15Bと合流する手前位置に徐々に合流させて配置されている。このようにすることにより、導入軌道テープ15Dに沿って無人搬送車3の各駆動ユニット4を走行させることにより、無人搬送車3を停止させることなく各駆動ユニット4を円軌道テープ15C上に導入することができる。
そして、引き続き、各駆動ユニット4を円軌道テープ15C上に走行させることにより、無人搬送車3を、交差点を中心として旋回(その場旋回)させる走行状態にすることができる円軌道テープ15Cに沿った走行により、各駆動ユニット4は互いが逆方向に向いており、しかも、車両に対しては横方向に向いた状態となる。
また、無人搬送車3を、第1軌道テープ15Aから導入軌道テープ15Dに導くために、分岐指令のアドレスマーク16Aが設置される。例えば、図中の矢印方向から第1軌道テープ15Aに沿って無人搬送車3が進行し、前方の駆動ユニット4に設置したアドレスセンサ12が分岐指令のアドレスマーク16Aを検出されると、前方の駆動ユニット4の軌道センサ11は分岐した導入軌道テープ15Dを選択して導入軌道テープ15D上を走行する。同様に、後方の駆動ユニット4の軌道センサ11も分岐した導入軌道テープ15Dを選択して導入軌道テープ15D上を走行可能とする。
また、円軌道テープ15Cに沿った車両旋回後に、第2軌道テープ15Bに沿って矢印Cの方向に進む場合には、無人搬送車3の前方の駆動ユニット4が第2軌道テープ15B上(C点)に到達し且つ後方の駆動ユニット4も同様に第2軌道テープ15B上(A点)に到達した時点で、各駆動ユニット4を停止させ、無人搬送車3の旋回走行を停止させる。この停止のためには、無人搬送車3が第2軌道テープ15Bに沿った状態となる場合に、円軌道テープ15C上の走行を停止させるための、停止指令のアドレスマーク16Bが第2軌道テープ15Bに近接して夫々設置される。この停止指令のアドレスマーク16Bは、各駆動ユニット4を正規位置に停止させるために、各駆動ユニット4に対して設置される。即ち、前方及び後方の駆動ユニット4に設置したアドレスセンサ12が位置する部分に、停止・指令のアドレスマーク16Bが設置される。
上記時点においては、前後の駆動ユニット4の支軸6は、第2軌道テープ15Bと円軌道テープ15Cとが夫々交差した部分に位置して停止される。そして、後述するように、各駆動ユニット4が支軸6回りに90度だけ旋回(復帰旋回)されて、各駆動ユニット4を第2軌道テープ15Bに沿って進行させることができる。
なお、前記アドレスマーク16Bの設置位置は、上記の説明では、円軌道テープ15Cに沿ってその場旋回する無人搬送車3を第2軌道テープ15Bに沿ってC方向に走行若しくはC方向とは逆のA方向に走行させる場合を示している。従って、第2軌道テープ15Bに沿って前記とは台車2の向きを反転して走行させたい場合には、円軌道テープ15C上の旋回走行を更に継続させ、前方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12がA点のアドレスマーク16Bを検出し且つ後方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12がC点のアドレスマーク16Bを検出した時点で、各駆動ユニット4を停止させ、同様に各駆動ユニット4を支軸6回りに90度だけ旋回(復帰旋回)させて、各駆動ユニット4を第2軌道テープ15Bに沿って、C方向若しくはA方向に進行させることができる。
また、台車2の向きを反転して、再び第1軌道テープ15Aに沿って進入方向とは逆のD方向に走行、若しくは、進行方向と同じB方向に走行(進入時とは台車2の左右を逆にして走行)させたい場合には、円軌道テープ15C上の走行を継続させ前方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12がD点のアドレスマーク16Cを検出し且つ後方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12がB点のアドレスマーク16Cを検出した時点で、各駆動ユニット4を停止させ、同様に各駆動ユニット4を支軸6回りに90度だけ旋回(復帰旋回)させて、各駆動ユニット4を第1軌道テープ15Bに沿ってD方向若しくはB方向に進行させることができる。
以上の構成の無人搬送車3の制御動作について、図5及び図6に示すフローチャートに基づいて、以下に説明する。図5は、通常の走行ラインに沿った無人搬送車3の走行、すなわち、無人搬送車3の通常走行時における駆動ユニットコントローラ8A,8Bにより実行される走行制御のフローチャートを示している。図6は、大きく交差した交差点における旋回動作による進路変更での走行制御コントローラ8Aにより実行される進路変更制御のフローチャートを示している。
図5に示す通常走行のための制御は、前後の駆動ユニット4の夫々について実行され、駆動ユニット4の夫々が進行方向を略無人搬送車3の進行方向へ向けた状態(舵角が略0°)で、左右の駆動輪10を略同一速度で回転させながら、軌道センサ11の検出結果に基づいて左右の駆動輪10の回転速度を調整する。これによって、無人搬送車3が走行ラインに沿って操舵されながら走行するようにしている。
このフローチャートの最初のステップS1では、駆動モータのフィードバック制御を行って、左右の駆動輪10を同一の速度で回転駆動して走行する。一方、次のステップS2及びステップS3では、軌道センサ11の検出結果から、軌道テープ15の幅方向に沿って設けられたすべてのセンサが軌道テープ15の検出状態にあるか否かを確認している。ここで幅方向の両側のセンサの何れかが軌道テープ15の非検出状態、すなわち、センサが軌道テープ15からずれると、ステップS2またはステップS3で否定判定される。
走行ラインを形成する軌道テープ15の幅方向に配置されている軌道センサ11の複数のセンサの中で、右端のセンサが軌道テープ15から外れて非検出状態となると、ステップS2で否定判定されてステップS4へ移行する。このステップS4では、駆動ユニット4の左右の駆動輪10のうちの左側の駆動輪10の回転速度を減速させる。即ち、右側のセンサが非検出状態となったときには、駆動ユニット4が軌道テープ15の右側にずれていると判断して左側の駆動輪10を減速する。これによって、駆動ユニット4が左に徐々に旋回し、走行ラインに対するずれが修正される。
また、駆動ユニット4が軌道テープ15に対して左側へずれていると判断したときには、ステップS3で否定判定されて、ステップS5へ移行する。このステップS5では、逆に右側の駆動輪10の回転速度を減速して、駆動ユニット4を徐々に右側に旋回するようにして、駆動ユニット4の走行ラインに対するずれを修正する。
このように、駆動ユニット4の走行ラインに対するずれの修正は、軌道センサ11の検出結果に基づいて行われ、また、軌道センサ11の全てのセンサが軌道テープ15を検出している状態では、ステップS2、S3のそれぞれで肯定判定されて、左右の駆動輪10を同速で駆動して走行する(ステップS1)。これによって、走行ラインに対するずれが修正されながら、無人搬送車3を走行ラインに沿って操舵しながら走行できるようにしている。
なお、上記したステップS4及びステップS5では、ずれていない側(軌道テープ15の内側)の駆動輪10を減速することにより駆動ユニット4の軌道テープ15よりの逸脱を補正するようにしているが、ずれている側(軌道テープ15の外側)の駆動輪10を増速することにより駆動ユニット4の軌道テープ15よりの逸脱を補正してもよく、また、軌道テープ15の内側の駆動輪10を減速させると共に軌道テープ15の外側の駆動輪10を増速させるようにしてもよい。また、上記したステップS4及びステップS5において、軌道テープ15からのずれの程度に応じて、軌道テープ15からずれている側の駆動輪10の速度を上昇させたり、軌道テープ15からずれていない側の駆動輪10の速度を低下させたりしてもよい。
無人搬送車3の走行制御コントローラ8には、無人搬送車3の予め設定した走行ルート・車両速度指令を各アドレスマーク16と共に走行プログラムとして記憶回路に記憶されている。そして、進路変更を行うアドレスマーク16Aが検出された場合に、走行プログラムに基づいて進路変更を行う交差点に到達直前であるとして、無人搬送車3の走行制御コントローラ8Aにより、図6に示す進路変更制御が実行される。そして、走行プログラムでは進路変更を行うアドレスマーク16Aと共に走行方向が設定されており、走行してきた元の軌道テープ15A(第1軌道テープ15A)から右へ向いて走行するか左へ向いて走行するか等が設定されている。ここでは、図4に示す走行ラインに基づいて車両を旋回走行させて進路変更する場合を示す図7〜図9を参照しつつ説明する。
車両は前方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12によって進路変更位置を示すアドレスマーク16Aを検出しながら走行する(ステップS10)。そして、前方の駆動ユニット4が分岐された導入軌道テープ15Dの手前に到達した時点で、アドレスマーク16Aを検出すると、前方の駆動ユニット4は軌道センサ11により導入軌道テープ15Dへの分岐点を検出し、その後は導入軌道テープ15Dを検出して導入軌道テープ15Dに沿って走行する。
次いで、後方の駆動ユニット4も軌道センサ11により導入軌道テープ15Dへの分岐点を検出し、その後は導入軌道テープ15Dを検出して導入軌道テープ15Dに沿って走行する(ステップS11)。無人搬送車3と一体となった台車2も、無人搬送車3の前後の駆動ユニット4の第1軌道テープ15Aから導入軌道テープ15Dへの移行に伴い移動しつつ旋回され、台車2に設けられている各キャスタ輪5は、台車2の移動に追従してそのヨー角度を変更されて追従回転する。
車両の導入軌道テープ15Dに沿った進行により、図7に示すように、前方の駆動ユニット4は導入軌道テープ15Dからそれに連なる円軌道テープ15Cを検出して円軌道テープ15Cに沿う走行状態に移行する。前方の駆動ユニット4は円軌道テープ15Cに追従するために、左右の駆動輪10の駆動速度を制御しながら回転駆動させる。この場合の左右の駆動輪10の駆動速度は、交差点中心に近い内側の駆動輪10の速度が交差点中心から遠い外側の駆動輪10の速度より低くなる内外輪差をもって制御される。この結果として、前方の駆動ユニット4は交差点中心とする円軌道テープ15Cに沿って走行する。一方、後方の駆動ユニット4は導入軌道テープ15Dに沿って走行しているため、図8に示すように、無人搬送車3及び台車2は走行しつつ旋回移動される。
ここで、本実施形態においては、導入駆動テープ15Dと円軌道テープ15Cとが合流する位置に近接した位置に設けたアドレスマーク16D(円軌道テープ15Cと第2軌道テープ15Bとが交差するA点に近接した位置に設けたアドレスマーク16Bと兼用させてもよい)を前方の駆動ユニット4に設けたアドレスセンサ12により検出した場合には、旋回モードに移行したと判定して(ステップS12)、後方の駆動ユニット4による走行速度を減速して低下させて(例えば、前方の駆動ユニット4による走行速度に対して、60〜80%の速度割合)、旋回モードによる走行状態とする(ステップS13)。
更に走行を継続すると、前方の駆動ユニット4の円軌道テープ15Cによる進行方向と後方の駆動ユニット4の導入軌道テープ15Dによる進行方向との角度ずれが徐々に大きくなる。即ち、後方の駆動ユニット4による駆動力が、前方の駆動ユニット4の進行方向を円軌道テープ15Cの外側へ押出すよう作用する。しかしながら、本実施形態においては、後方の駆動ユニット4の走行速度を減速しているため、後方の駆動ユニット4による駆動力が、前方の駆動ユニット4の進行方向を円軌道テープ15Cの外側へ押出す作用を緩和し、前方の駆動ユニット4による円軌道テープ15Cに沿う走行性能を向上させる。
前記台車2の走行中における旋回移動は、台車2に設けられている前方のキャスタ輪5をそのヨー角度を導入軌道テープ15Dに沿う方向から円軌道テープ15C沿う方向に旋回させ、後方のキャスタ輪5は導入軌道テープ15Dに沿う方向を維持しつつ台車2の旋回移動に追従して旋回させる。
更に前方の駆動ユニット4の円軌道テープ15Cに沿う走行が継続すると、図9に示すように、後方の駆動ユニット4も導入軌道テープ15Dに沿う走行から円軌道テープ15Cに沿う走行に移行し、前後の駆動ユニット4が円軌道テープ15Cに沿った走行となるため、無人搬送車3及び台車2は交差点を中心としてその場旋回する。同時に、後方の駆動ユニット4に設けたアドレスセンサ12が前記アドレスマーク16Dを検出することにより、後方の駆動ユニット4の減速状態が解除され、前後の駆動ユニット4は同等の速度で円軌道テープ15Cに沿って走行する(ステップS14)。
また、後方の駆動ユニット4は円軌道テープ15Cに追従するために、左右の駆動輪10の駆動速度を制御しながら回転駆動させる。この場合の左右の駆動輪10の駆動速度は、交差点中心に近い内側の駆動輪10の速度が交差点中心から遠い外側の駆動輪10の速度より低くなる内外輪差をもって制御される。
台車2に設けられている各キャスタ輪5は、無人搬送車3の前後の駆動ユニット4の導入軌道テープ15Dから円軌道テープ15Cへの走行ラインの変化に連れて、無人搬送車3と一体となって移動しつつ旋回される台車2の移動に追従して、そのヨー角度を導入軌道テープ15Dに沿う方向から旋回に追従する方向に変更されて追従回転する。結果として、後方の駆動ユニット4も交差点中心とする走行を円滑にし、無人搬送車3及び台車2が交差点を中心にその場旋回する。
ところで、第1軌道テープ15Aが第2軌道テープ15Bに対して直交する状態で配置されている走行ラインを備える、図10に示す比較例では、車両が交差点上で停止されると、台車2に設けている各キャスタ輪5は今までの進行方向後方側に向かうヨー角度をとることになる。即ち、台車2の右前方側キャスタ輪5は旋回方向に向かうヨー角となり、左前方側キャスタ輪5および左後方側キャスタ輪5は旋回方向に直交するヨー角となり、左後方側キャスタ輪5のみが旋回方向後方側となるヨー角を備えるものとなる。このため、台車2の旋回動作は、先ず、各キャスタ輪5を旋回方向後方側に向くヨー角度となるまでキャスタ輪5を旋回させて後、キャスタ輪5の転動を開始させることとなる。
しかし、キャスタ輪5のヨー角度を変更させるためには、図11に示すように、キャスタ輪5を床面に対する接地軸C回りにすべり接触させつつ(キャスタ輪5と床面との摩擦力に打勝って)その場で転回させる状態で捩るものであるため、大きい旋回抵抗が発生する。この場合、上記したように、一つのキャスタ輪5のヨー角は旋回方向に対して前方にあり、2つのキャスタ輪5のヨー角は旋回方向に直交する方向にある。このため、これら3つのキャスタ輪5のヨー角度を変更する必要があり、非常に大きい旋回駆動力を必要とすることとなる。しかも、前記旋回抵抗は、台車2に積載している積荷による荷重が増加するに連れて増加するものであるため、積載荷重が大きい場合には、各駆動ユニット4による推進力を増加させる等の対策が必要となる。
しかしながら、本実施形態においては、上記したように、第1軌道テープ15Aに沿う走行状態から導入軌道テープ15Dに沿う走行状態を経た後に、停止させることなく円軌道テープ15Cに沿う走行状態とすることにより、台車2の各キャスタ輪5は従動回転を継続しつつ台車2の旋回に追従して旋回される。このため、旋回初期に発生する前記した旋回抵抗を考慮することなく、台車2の旋回動作に追従させることができる。
そして、円軌道テープ15Cに沿った走行により、各駆動ユニット4は互いが逆方向に向いており、しかも、車両に対しては横方向に向いた状態となる。また、台車2に設置されたキャスタ輪5においても、車両前方側のキャスタ輪5の向き(ヨー角度)と車両後方側のキャスタ輪5の向き(ヨー角度)とは、前記駆動ユニット4と同様に、互いが逆方向に向いており、しかも、車両に対しては横方向に向いた状態となる。
次に、ステップS15に進み、前後いずれかの駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止のために、他方の軌道テープ15Bに近接して配置されている、停止指令のアドレスマーク16Bを検出したか否かを確認する。そして、アドレスマーク16Bを検出されると、ステップS16へ進み、アドレスマーク16Bを検出した前後いずれか一方の駆動ユニット4を停止させると共に、停止指令のアドレスマーク16Bを検出していない他方の駆動ユニット4は走行を継続させ、ステップS17へ進む。
ステップS17では、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止用に、他方の軌道テープ15Bに近接して設置されている停止指令のアドレスマーク16Bを検出したか否かを確認する。他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が停止用に設置した停止用のアドレスマーク16Bを検出していない場合には、他方の駆動ユニット4の進行を継続させ、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が停止用に設置した停止指令のアドレスマーク16Bを検出するか否かを確認する。そして、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止用に、他方の軌道テープ15Bに近接して設置されている停止指令のアドレスマーク16Bを検出すると、ステップS18へ進む。
ステップS18では、他方の駆動ユニット4を停止させて、ステップS19へ進む。無人搬送車3の前後の駆動ユニット4は、目的とする他方の軌道テープ15Bに対して、夫々進行方向を直交させて停止される。円軌道テープ15Cに沿った走行により、各駆動ユニット4は互いが逆方向に向いており、しかも、車両に対しては横方向に向いた状態となる。また、台車2に設置されたキャスタ輪5においても、車両前方側のキャスタ輪5の向き(ヨー角度)と車両後方側のキャスタ輪5の向き(ヨー角度)とは、前記駆動ユニット4と同様に、互いが逆方向に向いており、しかも、車両に対しては横方向に向いた状態となる。
前記停止用のアドレスマーク16Bの設置位置は、環状の円軌道テープ15C上を走行してきた各駆動ユニット4の左右の駆動輪10が共に他方の走行ラインを形成する他方の軌道テープ15B上に到達した時点におけるアドレスセンサ12の位置に対応して床面に設置される。なお、アドレスセンサ12として、アドレスマーク16Bを通過した時点で検出信号を発生するものである場合には、検出信号が発生される時点を考量して設置される。
このように、環状の円軌道テープ15Cと他方の軌道テープ15Bとの2つの交差部分に夫々駆動ユニット4の停止用のアドレスマーク16Bを設置しているため、夫々の駆動ユニット4の到達時点に差異が発生しても、正確に他方の走行ライン上に各駆動ユニット4を停止させることができる。
ステップS19では、左右の駆動輪10の相対的な旋回方向を逆方向となるように旋回させ、それぞれの駆動ユニット4が他方の軌道テープ15Bの無人搬送車3の進行方向側へ向ける駆動ユニット4の戻し旋回を行う。この戻し旋回は、駆動ユニット4の左右の駆動輪10の回転を逆転させることにより実行することができる。そして、駆動ユニット4の軌道センサ11が他方の軌道テープ15Bを検出したか否かを確認する。この戻し旋回によって、駆動ユニット4の軌道センサ11が他方の軌道テープ15Bを検出して、軌道センサ11の検出結果に基づいた他方の軌道テープ15Bに沿った走行が可能となると、ステップS20へ進む。
ステップS20では、次のコマンドの実行、例えば、軌道センサ11の検出結果に基づいた通常走行を開始する。この第2軌道テープ15Bに沿っての走行では、前後の駆動ユニット4の進行方向が一致しておりその駆動力が倍増されるため、キャスタ輪5の旋回時におけるヨー角が車両の進行方向に対して直交する方向にあっても、容易にキャスタ輪5のヨー角を変更して走行させることができる。
なお、上記実施形態において、走行ラインに隣接して配置したアドレスマーク16を検出するアドレスセンサ12の設置位置として、各駆動ユニット4の右前方位置および左後方位置に配置したものについて説明したが、各駆動ユニット4の前方の左右位置に配置したものであってもよく、また、前方の駆動ユニット4においては当該駆動ユニット4の前方の左右位置に、後方の駆動ユニット4においては当該駆動ユニット4の後方の左右位置に、夫々配置したものであってもよい。この場合に、走行ラインに隣接して配置するアドレスマーク16の設置位置は、各駆動ユニット4のアドレスセンサ12の設置位置に対応して床面への設置位置が変更されることはいうまでもない。
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
(ア)一対の駆動手段により夫々独立して駆動される左右の駆動輪10を備えた駆動ユニット4を車両の前後に配置した支軸6に旋回可能に配置し、前記駆動ユニット4の前記左右の駆動輪10の回転により車両を走行させると共に、その相対回転により駆動ユニット4が旋回することにより操舵される無人搬送車3と、無人搬送車3若しくは無人搬送車3と一体となった台車2の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車3若しくは台車2の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪5と、を備え、交差する走行ラインの交差点で、一方の走行ライン上から交差する他方の走行ライン上若しくは無人搬送車3の向きを代えて一方の走行ライン上に、旋回させて前後の駆動ユニット4を夫々移行させる際に、前記無人搬送車3の前後の駆動ユニット4を順次、一方の走行ラインから分岐した導入ラインである導入軌道テープ15Dを経由して交差点を中心とする環状軌道である円軌道テープ15Cに沿って走行させ、前記前後の駆動ユニット4が環状軌道上の他方の走行ライン若しくは一方の走行ラインと交差する部位に到達した時点で停止させ、各駆動ユニット4を他方の走行ライン若しくは一方の走行ラインに沿うよう旋回させて無人搬送車3の進路を変更するようにした。
即ち、交差する走行ラインの交差点で、一方の走行ライン上から交差する他方の走行ライン上若しくは無人搬送車3の向きを代えて一方の走行ライン上に、旋回させて前後の駆動ユニット4を夫々移行させる際に、 前記無人搬送車3の前後の駆動ユニット4を順次、一方の走行ラインから分岐した導入軌道を経由して交差点を中心とする環状軌道に沿って走行させるようにしたため、無人搬送車3及び台車2を一次停止させることなく交差点で旋回させることができ、台車2のキャスタ輪5は旋回終了まで停止することが無い。このため、従来例のように交差点での旋回動作開始時に一次停止した場合におけるキャスタ輪5の旋回抵抗に打勝つ高い駆動力を備えた駆動ユニット4とするか、若しくは、付帯設備を新設する必要がなく、安価な駆動ユニット4により無人搬送車3のコストを低減することができる。
更に、駆動ユニット4に掛かる負荷を下げることができるため、旋回時における最大牽引量を増大させることができる。しかも、前後の駆動ユニット4が環状軌道上の他方の走行ライン若しくは一方の走行ラインと交差する部位に到達した時点で停止させるのみであるため、一時停止回数を減らすことができ、進路変更のサイクルタイムを低減することができる。
(イ)前方駆動ユニット4の導入軌道から環状軌道への進入時から前記後方駆動ユニット4の走行速度を減速させるため、環状軌道への進入時及びその後の旋回時に安定させて旋回走行させることができる。なお、上記旋回進入時に限定されることなく、通常走行時におけるコーナ軌道への進入時においても使用することができる。
(ウ)後方駆動ユニット4の走行速度の減速は、後方駆動ユニット4の導入軌道から環状軌道への進入時に解除するため、旋回時におけるサイクルタイムを低減できる。
(エ)一方の走行ラインから分岐した導入軌道は、前記環状軌道に徐々に合流されているため、一方の走行ラインから円滑に環状軌道に無人搬送車3及び台車2を導入することができる。