以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1から図4を参照して第1実施形態の無人搬送車両1について説明する。図1(a)は、無人搬送車両1の概略的な側面図であり、図1(b)は、無人搬送車両1の概略的な底面図である。図1(c)は、磁気マークMの平面図である。なお、本実施形態では、図1(a),(b)において、矢印Y1方向を無人搬送車両1の前方とし、矢印Y2方向を無人搬送車両1の後方とする。
無人搬送車両1は、例えば、工場などの生産現場において、材料や製品などを無人で搬送する車両である。無人搬送車両1は、シャーシ3の下側に設けられたガイドセンサ(図示せず)が走行経路に敷設された誘導体を検知することで、前後走行や、横行や、斜行などを行いながら、所定の走行経路(図示せず)上を自動的に移動する。
無人搬送車両1は、運転モードとして、自動モードと手動モードとを有している。無人搬送車両1が自動モードに設定されている場合には、無人搬送車両1は、その運行制御を行う図示しない上位のプロセスコンピュータ(以下「上位プロコン」と称す)から通知される行先指令に基づいて、走行経路上を自動的に走行する。一方、無人搬送車両1が手動モードに設定されている場合には、オペレータによるペンダントスイッチ84(図2参照)から入力された各種指令に基づいて、無人搬送車両1を手動走行させることができる。
本実施形態の無人搬送車両1は、操舵モードの1つとして、ピボットターンモードを有する。本明細書において、「ピボットターン」とは、シャーシ3の範囲内に設定された一点を旋回中心とする旋回を意味する。無人搬送車両1は、無人搬送車両1におけるピボットターンの旋回中心に設けた磁気センサである磁気マーク検出センサ80eで、地上における旋回中心位置に設けた磁気マークMを検知しながらピボットターンを行う。図1(c)に示すように、本実施形態の磁気マークMは、100mm×100mmの正方形の磁石板である。
磁気マーク検出センサ80eが磁気マークMを所定時間(例えば、5秒間)に亘って検知できなかった場合に、旋回中心にずれが生じたとして、無人搬送車両1を停止させる。これにより、ピボットターン時における旋回中心のずれに起因する脱輪などの発生を回避することが可能となる。
なお、100mm×100mmの正方形という磁気マークMの大きさおよび形状は、ピボットターンを行う場の勾配によって必然的にピボットターンの旋回中心が安全な範囲内で若干ずれることがあっても、そのずれを許容できる大きさおよび形状である。
図1(a),(b)に示すように、無人搬送車両1は、積載物が積載される荷台2と、荷台2を支持するシャーシ3と、シャーシ3の下部に設置された走行装置5a〜5dと、磁気マーク検出センサ80a〜80fと、制御装置70とを主に有して構成されている。
図1(b)に示すように、走行装置5a〜5dは、シャーシ3の下部において、無人搬送車両1の前後方向に2列、各列の左右方向に2個の計4個設けられている。各走行装置5a〜5dは、1本の車軸6aと、車軸6aの両端に各々連結された2つの車輪6bとをそれぞれ有し、各車軸6aは、車輪6bと共に回転、より詳細には、前転または後転するように構成されている。また、車軸6aは、シャーシ3に対して右または左に旋回するように構成されている。
各走行装置5a〜5dには、車軸6aに回転駆動力を付与して車輪6bを回転させる走行駆動装置76a〜76d(図2参照)と、車軸6aをシャーシ3に対して旋回させて車軸6aに操舵角を付与する操舵駆動装置77a〜77d(図2参照)とが、それぞれ個別に接続されている。これにより、各走行装置5a〜5dに設けられた各車軸6aは、各走行駆動装置76a〜76dにより個々に回転できるとともに、各操舵駆動装置77a〜77dにより個々に操舵角を付与できる。
走行駆動装置76a〜76dは、車軸6aに回転駆動力を付与する走行モータ76a1〜76d1(図2参照)を有する。操舵駆動装置77a〜77dは、車軸6aを旋回させる回転モータ77a1〜77d1(図2参照)を有している。走行駆動装置76a〜76dおよび操舵駆動装置77a〜77dは、制御装置70からの指令によって個々に制御される。
よって、各走行装置5a〜5dの各車軸6aは、制御装置70からの指令に応じて個々に回転され操舵される。これにより、無人搬送車両1は、前後走行や、横行や、斜行や、旋回などを行いながら、走行経路に沿って走行できる。特に、本実施形態の無人搬送車両1は、ピボットターン、すなわち、シャーシ3の範囲内に設定された一点を旋回中心とする旋回を行うことが可能に構成される。
図1(b)に示すように、シャーシ3の下側(すなわち、走行時に地上と対向する側)には、6個の磁気マーク検出センサ80a〜80fが設けられている。磁気マーク検出センサ80a〜80fは、走行経路上に配設された矩形板状の磁気マークM(図1(c))を、その上方から検知する磁気センサである。磁気マークMは、走行経路上における特定位置を無人搬送車両1に識別させる位置決め用のマークとして機能する。
つまり、磁気マーク検出センサ80a〜80fは、位置決め用のマークを検知するセンサとして機能する。走行経路上における特定位置としては、例えば、走行経路上に設けられた各ステーションや、走行経路上の分岐点などである。
なお、「ステーション」とは、無人搬送車両1に対して積載物の積み下ろしをする位置や、無人搬送車両1がピボットターンを開始する位置や終了する位置などである。走行経路上の各ステーションには、ステーション毎に異なる組み合わせで、1個から6個までのいずれかの個数の磁気マークMが配置されている。これにより、無人搬送車両1は、磁気マーク検出センサ80a〜80fのうち、1または複数の磁気マーク検出センサにより検知される磁気マークMの組み合わせによって、走行経路上の各ステーションを識別することができる。
図1(b)に示すように、6個の磁気マーク検出センサ80a〜80fのうち、3個の磁気マーク検出センサ80a〜80cが無人搬送車両1の前方に設けられ、残りの3個の磁気マーク検出センサ80d〜80fが無人搬送車両1の後方に設けられる。より詳細には、無人搬送車両1の前方に設けられる磁気マーク検出センサ80a〜80cは、左右方向にほぼ一直線に並べて配置される。
一方、無人搬送車両1の後方に設けられる磁気マーク検出センサ80d〜80fは、真ん中に配置される磁気マーク検出センサ80eが、他の磁気マーク検出センサ80d,80fより後方側に配置される。なお、6個の磁気マーク検出センサ80a〜80fは、図1(b)に示す配置に限らず、シャーシ3の下側における適宜の位置に配置できる。
本実施形態の無人搬送車両1では、磁気マーク検出センサ80a〜80fのひとつである磁気マーク検出センサ80eが、ピボットターンの旋回中心に配置される。無人搬送車両1は、ピボットターンモードにおいて、磁気マークMを検知しながらピボットターンを行う。つまり、無人搬送車両1に設けられた磁気マーク検出センサ80a〜80fのうち、磁気マーク検出センサ80eは、位置決め用のマークを検知するセンサとして機能するだけでなく、旋回中心からのずれを監視するセンサとしても機能する。
次に、図2を参照して、無人搬送車両1の電気的構成について説明する。制御装置70は、無人搬送車両1の走行状態や、無人搬送車両1が有する各種装置の動作などを制御するものである。制御装置70は、CPU71、フラッシュメモリ72、及び、RAM73を備え、これらがバスライン74を介して入出力ポート75にそれぞれ接続されている。
入出力ポート75には、上述した走行駆動装置76a〜76dと、操舵駆動装置77a〜77dと、磁気マーク検出センサ80a〜80fとに加え、走行速度検出センサ78a〜78dと、無線通信装置82と、ペンダントスイッチ84とが接続されている。
CPU71は、入出力ポート75に接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュメモリ72は、CPU71により実行される各種のプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性のメモリである。なお、後述する図4のフローチャートに示す各処理を実行するプログラムは、このフラッシュメモリ72に格納されている。RAM73は、CPU71がプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリである。
走行速度検出センサ78a〜78dは、各走行装置5a〜5dの各車輪6bの走行速度を検出するセンサであり、各走行装置5a〜5dに設けられる。走行速度検出センサ78a〜78dにより検出された各車輪6bの走行速度は、それぞれ個別に制御装置70へ出力される。これにより、制御装置70は、各走行装置5a〜5dの各車輪6bの走行速度に応じた制御を行うことができる。
無線通信装置82は、無人搬送車両1を監視する上位プロコンとの間で、各種データを送受信するための無線装置である。上位プロコンから送信された行先指令などを受信する受信部(図示せず)と、受信した行先指令に対する確認信号などの各種信号を上位プロコンへ送信する送信部(図示せず)と、それら受信部及び送信部により送受信されるデータをCPU71に対して入出力するための処理回路とを備えている。
ペンダントスイッチ84は、手動モードにおいて無人搬送車両1の動作に関わる各種指令をオペレータに入力させるための手動リモコンである。本実施形態において、ペンダントスイッチ84は、例えば、無人搬送車両1を、走行経路に沿った自動走行の開始地点であるホームポジションHP(図3参照)まで手動で移動させる場合などに使用される。
図3は、ピボットターンを含む、無人搬送車両1の自動走行の一例を示す概略的な平面図である。この例において、無人搬送車両1は、ホームポジションHPから、ネットフェンス100内に設けられた走行経路(図示せず)に沿って自動的に走行する。
無人搬送車両1は、オペレータによるペンダントスイッチ84への入力に基づいて、ホームポジションHPまで手動で移動される。無人搬送車両1は、磁気マーク検出センサ80a〜80fのうち、3つの磁気マーク検出センサ80c,80d,80fが、それぞれ磁気マークM、より詳細には、磁気マークM1〜M3を検知した位置をホームポジションHPとして識別する。なお、無人搬送車両1は、ホームポジションHPにおいて、その後方側(すなわち、図1における矢印Y2側)が、次のステーションであるステーションST1に向けられる。
次に、無人搬送車両1は、上位プロコンからの行先指令に基づいて、ホームポジションHPから、走行経路に沿って所定速度で後進し、ホームポジションHPから所定距離離れた旋回開始位置に設定されたステーションST1まで移動する。無人搬送車両1は、磁気マーク検出センサ80a〜80fのうち、4つの磁気マーク検出センサ80a,80c,80d,80eが、それぞれ磁気マークM、より詳細には、磁気マークM4〜M7を検知した位置をステーションST1として識別する。
無人搬送車両1がステーションST1に位置した後、上位プロコンからの指令に基づいて、無人搬送車両1は、操舵モードがピボットターンモードに切り替えられ、ステーションST1から、磁気マーク検出センサ80eの位置を旋回中心として時計回り(すなわち、右回り)にピボットターンを行う。
無人搬送車両1は、ピボットターンを行いながら、旋回終了位置に設定されたステーションST2まで移動する。敷地の都合上、無人搬送車両1は、磁気マーク検出センサ80eの位置を旋回中心とするピボットターンを行うことによって、周囲のネットフェンス100に接触することなく、無人搬送車両1の進行方向を90度変更することができる。
無人搬送車両1は、旋回中心に配置された磁気マーク検出センサ80eによって磁気マークM7を検知しながらピボットターンを行う。そして、磁気マーク検出センサ80eが磁気マークM7を所定時間(例えば、5秒間)に亘って検知できなかった場合に、旋回中心にずれが生じたと判断し、無人搬送車両1を停止させる。これにより、無人搬送車両1が、旋回中心のずれに起因して脱輪してネットフェンス100に接触することを回避できる。
無人搬送車両1は、磁気マーク検出センサ80a〜80fのうち、4つの磁気マーク検出センサ80a,80c,80e,80fが、それぞれ磁気マークM、より詳細には、磁気マークM8,M9,M7,M10を検知した位置をステーションST2として識別する。無人搬送車両1は、ステーションST2において、その前方側(すなわち、図1における矢印Y1側)が、次のステーション(図示せず)に向けられる。そして、ステーションST2に位置する無人搬送車両1は、上位プロコンからの行先指令に基づいて、ステーションST2から、走行経路に沿って所定速度で前進し、ステーションST2から所定距離離れた次のステーションに向けて移動する。
図3に示すように、ホームポジションHPおよび各ステーションST1,ST2には、磁気マーク検出センサ80a〜80fのうち、1または複数の磁気マーク検出センサにより検知される磁気マークMがステーション毎に異なる組み合わせで配置されている。よって、無人搬送車両1は、磁気マーク検出センサ80a〜80fにより検知される磁気マークMの組み合わせから、ホームポジションHPおよび各ステーションST1,ST2のうち、いずれに位置するかを識別する。一方で、無人搬送車両1は、磁気マーク検出センサ80a〜80fのうち、磁気マーク検出センサ80eを用い、旋回中心にずれが生じたか否かを監視しながらピボットターンを行う。
次に、図4を参照して、制御装置70で実行されるピボットターン処理について説明する。図4は、ピボットターン処理を示すフローチャートである。本処理は、無人搬送車両1をピボットターンにより旋回させるための処理であり、無人搬送車両1の操舵モードをピボットターンモードに切り替える指令が上位プロコンから入力された場合に開始される。
例えば、図3において、ステーションST1に位置する無人搬送車両1に対し、操舵モードをピボットターンモードに切り替える指令が上位プロコンから入力された場合に、本処理が開始される。以下、ピボットターンの旋回中心が磁気マーク検出センサ80eにあるとして、図4のフローチャートの説明を行う。
まず、CPU71は、各走行装置5a〜5dの各車軸6aの据切動作を実行する(S41)。具体的に、CPU71は、予めプログラムにて各車軸6aに対し計算されている操舵角の指令値を、各車軸6aに対する操舵駆動装置77a〜77dに出力する。これにより、各走行装置5a〜5dの各車軸6aは、指令値に従う操舵角まで据え切りされる。
CPU71は、各走行装置5a〜5dの各車軸6aの操舵角が指令値に従う操舵角に達した後、上位プロコンから入力された走行指令に基づき、走行指令に従う速度(例えば、20m/分)で走行することにより、ピボットターンを開始する(S42)。具体的に、CPU71は、走行指令に従う速度で走行するように、各走行装置5a〜5dの各車軸6aの回転速度を算出し、算出した回転速度の指令値を、各車軸6aに対する走行駆動装置76a〜76dに出力する。これにより、各走行装置5a〜5dの各車軸6aは、指令値に従う回転速度で回転される。
よって、各走行装置5a〜5dの各車軸6aは、S41にて制御された操舵角で、S42にて制御された回転速度で回転され、それにより、無人搬送車両1は、磁気マーク検出センサ80eの位置を旋回中心とするピボットターンを開始する。
CPU71は、ピボットターンの旋回中心に位置する磁気マークセンサ、すなわち、磁気マーク検出センサ80eが磁気マークMを検知するかを判断する(S43)。図3の例では、CPU71は磁気マーク検出センサ80eが磁気マークM7を検知するかを判断する。
CPU71は、磁気マーク検出センサ80eが磁気マークMを検知すると判断した場合(S43:Yes)、停止位置に到達したかを判断する(S44)。図3の例では、S44の停止位置はステーションST2である。具体的に、CPU71は、各車軸6aに対して実際に計測される走行距離が、予め設定された走行停止距離に達し、かつ、磁気マーク検出センサ80a,80c,80e,80fが、磁気マークM8,M9,M7,M10を検知した場合に、停止位置に到達したと判断する。
CPU71は、停止位置に未だ到達していないと判断した場合(S44:No)、処理をS43に移行する。一方、CPU71は、停止位置に到達したと判断した場合(S44:Yes)、ピボットターンを終了して、その旨を上位プロコンに通知し(S45)、本処理を終了する。
なお、各車軸6aに対して実際に計測される走行距離が、予め設定された走行停止距離に達したが、磁気マーク検出センサ80a,80c,80e,80fが、磁気マークM8,M9,M7,M10を検知しない場合には、無人搬送車両1の走行を停止するとともに、その旨を上位プロコンに通知する。
CPU71は、磁気マーク検出センサ80eが磁気マークMを検知しないと判断した場合(S43:No)、磁気マークMの検知がされなくなってから、所定時間(例えば、5秒)が経過したかを判断する(S46)。CPU71は、所定時間が未だ経過していないと判断した場合(S46:No)、処理をS43に移行する。
一方、CPU71は、磁気マークMの検知がされなくなってから所定時間が経過したと判断した場合(S46:Yes)、エラー処理を実行し(S47)、本処理を終了する。具体的に、CPU71は、エラー処理として、無人搬送車両1の走行(すなわち、ピボットターンの動作)を停止するとともに、その旨を上位プロコンに通知する。上位プロコンへの通知によって、地上設備のオペレータに異常を伝達できる。
以上説明したように、本実施形態の無人搬送車両1は、当該ピボットターンの旋回中心に設けた磁気マーク検出センサ80eで、地上に設けた磁気マークMを検知しながらピボットターンを行う。そして、磁気マーク検出センサ80eが磁気マークMを所定時間(例えば、5秒間)に亘って検知できなかった場合には、旋回中心にずれが生じたとして、所定のエラー処理が行われる。よって、走行による車輪6bの摩耗や、走行モータ76a1〜76d1の出力のばらつきなどで、走行精度が低下することがあったとしても、ピボットターン中における旋回中心からのずれに起因する脱輪などの発生を好適に回避できる。特に、エラー処理として、ピボットターンを行う無人搬送車両1の停止が行われるので、脱輪などの危険を確実に回避できる。
また、磁気マーク検出センサ80eが、シャーシ3の範囲内に設定された旋回中心に設けられ、地上における旋回中心位置に設けられた磁気マークMを検知しながらピボットターンを行うので、ピボットターン中に旋回中心がずれたか否かの判断を精度よく行うことができる。
特に、磁気マーク検出センサ80eが磁気マークMを所定時間(例えば、5秒)に亘って検知できない場合に、旋回中心がずれたと判断するので、横風や、ピボットターンを行う場の傾きなどによって一時的に磁気マーク検出センサ80eが磁気マークMを検知できない状況が生じたとしても、そのような状況は無視される。よって、ピボットターンの動作に異常がないにもかかわらずエラー処理が実行される事態を抑制できる。
また、無人搬送車両1のシャーシ3に設けたセンサ、より詳細には、磁気マーク検出センサ80eで、地上に設けられた磁気マークMの検知を行うので、ピボットターン中に旋回中心がずれたか否かの判断において、旋回を行う場の傾きなどの場の状態の影響を受け難い。よって、ピボットターンの動作に異常がないにもかかわらずエラー処理が実行される事態を抑制できる。
また、旋回中心からのずれを監視するセンサとして機能する磁気マーク検出センサ80eは、位置決め用のマークを検知するセンサを流用したものであるので、無人搬送車両1の製造に掛かるコストを抑制できる。同様に、磁気マークMについても、位置決め用のマークが、旋回中心からのずれを監視するマークを兼ねているので、設備に掛かるコストを抑制できる。
次に、図5から図7を参照して第2実施形態の無人搬送車両200について説明する。図5(a)は、第2実施形態の無人搬送車両200の底面図であり、図5(b)は、第2実施形態の無人搬送車両200の電気的構成を模式的に示すブロック図である。図6は、ピボットターンを含む、第2実施形態の無人搬送車両200の自動走行の一例を示す概略的な平面図である。尚、図5、図6において、第1実施形態の無人搬送車両1と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、図6では、4つの走行装置5a〜5dのうち、旋回中心となる磁気マークM7に対して外輪側となる走行装置5a,5bだけを図示する。
第2実施形態の無人搬送車両200は、各車輪6bの外径に応じてピボットターン実行時における各車輪6bの回転速度を設定し、その上で図6に示すように、地上に設けた磁気ガイドGをガイドセンサ86で検知しながら、磁気ガイドGに沿ってピボットターンを実行するものである。
図5(a)に示すように、無人搬送車両200には、4つの車輪回転数センサ85と、4つのガイドセンサ86とが設けられる。4つの車輪回転数センサ85の各々は、各走行装置5a〜5dの各車輪6bに設けられ、各車輪6bの回転数を検知するセンサである。4つの車輪回転数センサ85は、図5(b)に示すように、入出力ポート75を介して制御装置70と接続されている。制御装置70は、4つの車輪回転数センサ85の各々から入出力ポート75を介して入力される検知信号に基づいて、各車輪6bの回転数を取得できる。
図6に示すように、ホームポジションHPからステーションST1までの直線区間の途中には、磁気マークM11と、磁気マークM12とが地上に設けられている。磁気マークM11は、車輪回転数センサ85による各車輪6bの回転数の検知を開始する位置を示すマークである。磁気マークM12は、かかる検知を終了する位置を示すマークである。磁気マークM11と、磁気マークM12とは、磁気マーク検出センサ80fにより検知可能な位置に設けられている。
無人搬送車両200がホームポジションHPからステーションST1に向けて走行を開始し、その途中で磁気マーク検出センサ80fにより磁気マークM11を検知すると、制御装置70は、各車輪回転数センサ85による各車輪6bの回転数の検知を開始し、磁気マーク検出センサ80fにより磁気マークM12を検知すると、かかる回転数の検知を終了する。
制御装置70は、検知された車輪6bの回転数と、予めフラッシュメモリ72に記憶されている磁気マークM11から磁気マークM12までの距離とに基づいて、各車輪6bの外径を算出する。制御装置70は、算出した各車輪6bの外径と、ピボットターンを実行する場合に各車輪6bが走行する走行距離とに基づいて、各車輪6bが同時に旋回停止位置に到達するように、各車輪6bの回転速度を算出し、その算出した各車輪6bの回転速度でピボットターンを開始させる。尚、ピボットターンを実行する場合に各車輪6bが走行する理論上の走行距離は予めフラッシュメモリ72に記憶されている。
即ち、車輪6bは摩耗などにより外径が変化し、予め決められた車輪6bの回転速度でピボットターンを実行させると、車輪6bの摩耗状態によっては旋回中心からずれる恐れがある。そこで、ピボットターン開始前に各車輪6bの外径を求め、その求めた各車輪6bの外径を用いてピボットターン実行時の各車輪6bの回転速度を算出し、その算出した各車輪6bの回転速度でピボットターンを実行させる。これにより、各車輪6bの摩耗に起因してピボットターン実行中に、無人搬送車両200が旋回中心からずれるのを防止できる。
また、各車輪6bの回転数を検知する区間は、磁気マークM11から磁気マークM12までの直線区間に設定されている。よって、車輪6bがスリップする可能性が低く、正確に各車輪6bの回転数を検知でき、ひいては、正確に各車輪6bの外径、各車輪6bの回転速度を算出できる。
ガイドセンサ86は、地上に設けられた磁気ガイドGを検出するセンサであり、走行装置5a〜5dと一体に回転可能に設けられる。ガイドセンサ86は、磁気ガイドGからの磁気をそれぞれ個別に検知する複数の磁気センサ(図示せず)によって構成されている。複数の磁気センサは、磁気ガイドGより充分幅広な直線上に配列されている。ガイドセンサ86は、センターに配置されている磁気センサが基準とされ、かかる基準となる磁気センサと、実際に磁気を検知した磁気センサとのずれ量(変位量)を検知可能に構成されている。
ガイドセンサ86は、図5(b)に示すように、入出力ポート75を介して制御装置70と接続されている。制御装置70は、ガイドセンサ86から入出力ポート75を介して入力される検知信号に基づいて、磁気ガイドGに対するガイドセンサ86(ガイドセンサ86のセンターから)のずれ量(変位量)を取得できる。
磁気ガイドGは、磁気テープによって構成され、図6に示すように、ステーションST1からステーションST2までの旋回区間において、ガイドセンサ86(ガイドセンサ86のセンター)が通過する軌跡に沿って連続的に地上に設けられている。
制御装置70は、無人搬送車両200がステーションST1に到達すると、即ち、4つの磁気マーク検出センサ80a,80c,80d,80eが、それぞれ磁気マークM4〜M7を検知するとピボットターンを開始させる。
制御装置70は、ピボットターンを開始させると、ガイドセンサ86によって磁気ガイドGを検知しながら無人搬送車両200を旋回させる。制御装置70は、ガイドセンサ86によりずれ量が検知されると、そのずれ量を減少させる方向に無人搬送車両200を操舵する補正量を算出し、その算出した補正量に基づいて無人搬送車両200を磁気ガイドGに沿って走行させる。よって、旋回中に無人搬送車両200が旋回中心からずれたとしても、わざわざ無人搬送車両200を停止させずに、発生したずれを修正しつつ旋回を継続させることができる。
また、磁気ガイドGは、旋回中心となる磁気マークM7に対して外輪側となる走行装置5a,5bに設けられるガイドセンサ86により検知可能に設けられる。単位時間当たりに発生するずれ量は、内輪側となる走行装置5c,5dよりも、外輪側となる走行装置5a,5bの方が大きく出現するため、かかる外輪側となる走行装置5a,5bに設けられるガイドセンサ86により、ずれ量を検知することで高精度にずれ量を検知できる。
次に、図7を参照して、制御装置70で実行される第2実施形態の走行処理について説明する。図7は、第2実施形態の走行処理を示すフローチャートである。走行処理は、図6に示す無人搬送車両200をホームポジションHPからステーションST1まで走行させた後、ステーションST1からステーションST2にピボットターンにより旋回させる処理である。
CPU71は、上位プロコンから入力される指令に基づいて、ホームポジションHPからステーションST1に向けて無人搬送車両200の走行を開始させると、車輪回転数検知開始位置に到達したか否か(S700)、即ち、磁気マーク検出センサ80fにより磁気マークM11を検知したか否かを判断する。磁気マーク検出センサ80fにより磁気マークM11が検知されるまでは(S700:No)、S700の処理を繰り返す。
CPU71は、磁気マークM11を検知した場合には(S700:Yes)、車輪回転数センサ85から検知信号を取得し(S701)、車輪回転数検知終了位置に到達するまで(S702:No)、即ち、磁気マーク検出センサ80fにより磁気マークM12を検知するまで、S701の処理を繰り返す。
CPU71は、S702の処理において、車輪回転数検知終了位置に到達したと判断した場合(S702:Yes)、即ち、磁気マーク検出センサ80fにより磁気マークM12を検知した場合には、S701の処理で取得した各車輪6bの車輪回転数と、予め記憶されている磁気マークM11から磁気マークM12までの距離とに基づいて、実際の各車輪6bの外径を算出する(S703)。
その後、CPU71は、旋回中心位置(ステーションST1)に到達した否かを判断する(S704)。即ち、4つの磁気マーク検出センサ80a,80c,80d,80eが、それぞれ磁気マークM4〜M7を検知したか判断し、旋回中心位置に到達するまでは(S704:No)、S704の処理を繰り返す。
CPU71は、旋回中心位置に到達したと判断した場合には(S704:Yes)、S703の処理で算出した各車輪6bの外径と、予め記憶されているピボットターンを実行する場合に各車輪6bが走行する走行距離とに基づいて、各車輪6bの回転速度を算出する(S705)。
CPU71は、各走行装置5a〜5dの各車軸6aの据切動作を実行し(S706)、磁気マークM7を旋回中心としたピボットターンを開始する(S707)。即ち、CPU71は、S705の処理で算出した回転速度で各車輪6bを回転させる指令値を、各走行駆動装置76a〜76dに出力する。これにより、各走行装置5a〜5dの各車輪6bは、指令値に従う回転速度でそれぞれ回転される。
CPU71は、ピボットターンを開始すると、ガイドセンサ86から磁気ガイドGに対する検知信号を取得し(S708)、その取得した検知信号から検知位置がガイドセンサ86のセンターか否かを判断する(S709)。検知位置がガイドセンサ86のセンターであると判断した場合には(S709:Yes)、S714の処理に移行する。
一方、検知位置がガイドセンサ86のセンターでないと判断した場合には(S709:No)、検知位置がガイドセンサ86のセンターよりも左寄りか否かを判断し(S710)、左寄りであれば(S710:Yes)、検知位置がセンターになるように、操舵角を右に操舵させる補正指令を生成する(S711)。逆に、S710の判断において、右寄りであると判断した場合には(S710:No)、検知位置がセンターになるように、操舵角を左に操舵させる補正指令を生成する(S712)。CPU71は、S711,S712の処理により補正指令を生成すると、その補正指令を操舵駆動装置77a〜77dに出力する(S713)。これにより、無人搬送車両200を磁気ガイドGに沿って走行させることができる。
CPU71は、S714の処理において、停止位置(ステーションST2)に到達したか否かを判断し(S714)、停止位置に到達していないと判断した場合には(S714:No)、S708の処理に移行し、S708〜S713の各処理を繰り返し実行する。一方、S714の処理において、停止位置に到達したと判断した場合には(S714:Yes)、本処理を終了する。
以上説明したように、第2実施形態の走行処理によれば、旋回中は、無人搬送車両200を磁気ガイドGに沿って走行させることができるので、無人搬送車両200が旋回中心からずれて、脱輪などが発生するのを回避することができる。しかも、旋回を開始する前に、各車輪6bの外径を算出し、その算出した各車輪6bの外径に基づいて、旋回する場合の各車輪6bの回転速度が設定されるので、各車輪6bの摩耗に起因してピボットターン実行中に、無人搬送車両200が旋回中心からずれるのを防止できる。
次に図8から図10を参照して第3実施形態の無人搬送車両300について説明する。図8(a)は、第3実施形態の無人搬送車両300の底面図であり、図8(b)は、第3実施形態の無人搬送車両300の電気的構成を模式的に示すブロック図である。図9は、ピボットターンを含む、第3実施形態の無人搬送車両300の自動走行の一例を示す概略的な平面図である。尚、図8,図9において、第1実施形態の無人搬送車両1と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
第3実施形態の無人搬送車両300は、図9に示すように、地上に設けた磁気マークM20〜M24を磁気マーク検出センサ87で検知しながら、磁気マークM7を旋回中心としたピボットターンを実行するものである。
図8(a)に示すように、無人搬送車両300には、地上に設けた磁気マークM20〜M24(図9参照)を検知する磁気マーク検出センサ87が設けられる。磁気マーク検出センサ87は、磁気マーク検出センサ80cよりも矢印Y1側に設けられるが、磁気マーク検出センサ87を設ける位置は、磁気マーク検出センサ80e(旋回中心)と重複しない位置であれば、シャーシ3の任意の位置に設けることができる。また、磁気マーク検出センサ87を設けずに、磁気マーク検出センサ80e(旋回中心)を除く他の磁気マーク検出センサ80a等を、磁気マークM20〜M24(図9参照)を検知するセンサとして利用することもできる。
一方、図9に示すように、地上には、ピボットターン実行時に磁気マーク検出センサ87が通過する軌跡K上に磁気マークM20〜M24が最大配設距離(例えば50cm)内において等間隔に点在して設けられている。無人搬送車両300は、ピボットターンを行う場合、磁気マーク検出センサ87により磁気マークM20〜M24を順番に検知し、磁気マークM20〜M24が検知されれば旋回を継続し、一方、磁気マークM20〜M24が2個連続して検知されない場合には旋回を停止する。
また、磁気マーク検出センサ87は、図8(b)に示すように、入出力ポート75を介して制御装置70と接続されている。磁気マーク検出センサ87から出力される検知信号は、入出力ポート75を介して制御装置70に入力される。よって、制御装置70は、磁気マーク検出センサ87から出力される検知信号に基づいて、磁気マークM20〜M24を検知したか否かを判断できる。
更に、図8(b)に示すように、無人搬送車両300のRAM73には、マーク検知不可フラグ73aが記憶されている。マーク検知不可フラグ73aは、磁気マークM20〜M24が検知されたか否かを示すフラグである。即ち、マーク検知不可フラグ73aは、磁気マークM20〜M24が検知されない場合にオンされ、磁気マークM20〜M24が検知された場合にオフされる。
制御装置70は、無人搬送車両300が磁気マークM20〜M24の検知位置に到達した場合に、磁気マークM20〜M24が検知されたか否かを判断する。この場合、制御装置70は、磁気マークM20〜M24が検知されない場合であって、マーク検知不可フラグ73aがオンである場合、即ち、2個連続して磁気マークM20〜M24が検知されない場合に旋回を停止する。このように、2個連続して磁気マークM20〜M24が検知されない場合には、無人搬送車両300が旋回中心からずれている可能性が高いので、旋回を停止させることで、無人搬送車両300が旋回中心からずれて、脱輪などが発生するのを回避できる。
換言すれば、1個の磁気マークM20〜M24が検知されない場合であっても、一つ前の磁気マークM20〜M24が検知されていれば、即ちマーク検知不可フラグ73aがオフである場合には、旋回を停止させずに、旋回を継続させる。よって、横風や、旋回を行う場の傾きなどによって一時的に磁気マーク検出センサ87が磁気マークM20〜M24を検知できない状況が生じても、わざわざ旋回を停止させるのを防止できる。
更に、磁気マークM20〜M24は、磁気マーク検出センサ87が通過する軌跡K上に最大配設距離(例えば50cm)内において点在して設ければ良いので、磁気マークM20〜M24を設ける位置の自由度が大きい。即ち磁気マークM20〜M24は、必ずしも等間隔に設けずとも、最大配設距離を超えない範囲であれば不等間隔に設けても良い。よって、例えば、傾斜している位置や凹凸のある位置を避けて磁気マークM20〜M24を設けることができ、磁気マーク検出センサ87による磁気マークM20〜M24の検知精度を向上できる。
なお、第3実施形態においては、磁気マークM20〜M24を2個連続して検知できない場合に無人搬送車両300を停止したが、必ずしもこれに限られるものではなく、磁気マークM20〜M24を短い間隔で配設したような場合には、磁気マークをn個連続して検知できない場合に無人搬送車両300を停止するように構成しても良い。この場合、nは3以上の自然数とされる(即ち第3実施形態のn=2を含めれば、nは2以上の自然数とされる)。
次に、図10を参照して、制御装置70で実行される第3実施形態のピボットターン処理について説明する。図10は、第3実施形態のピボットターン処理を示すフローチャートである。本処理は、図9に示す無人搬送車両300をステーションST1からステーションST2にピボットターンにより旋回させる処理であり、操舵モードをピボットターンモードに切り替える指令が上位プロコンから入力された場合に開始される。
CPU71は、まずマーク検知不可フラグ73aをオフに設定する(S101)。即ち、ステーションST1に位置する無人搬送車両300は、磁気マーク検出センサ87により磁気マークM20が検知されるので、マーク検知不可フラグ73aをオフに設定する。その後、CPU71は、図4に示す第1実施形態のピボットターン処理におけるS41,S42と同様に、各走行装置5a〜5dの各車軸6aの据切動作を実行し(S102)、ピボットターンを開始する(S103)。
CPU71は、ピボットターンを開始すると、磁気マークM21〜M24を検知したか否かを順番に判断する(S104)。具体的には、まず、磁気マーク検出センサ87によって、いずれかの磁気マークM21〜M24が検知されたかを判断し(S104)、いずれかの磁気マークM21〜M24が検知されれば(S104:Yes)、マーク検知不可フラグ73aをオフに設定し(S108)、S109の処理に移行する。いずれかの磁気マークM21〜M24が検知されると、磁気マークM21〜M24の最大配設距離を管理するピボットターンの旋回距離は一旦リセットされる。
その後、CPU71は、S109の処理において、停止位置(ステーションST2)に到達したか否かを判断し(S109)、停止位置に到達したと判断した場合には(S109:Yes)、本処理を終了する。一方、CPU71は、未だ停止位置に到達していないと判断した場合には(S109:No)、再び処理をS104へ移行する。
S104の処理において、CPU71は、いずれかの磁気マークM21〜M24が検知されたかを判断し(S104)、いずれの磁気マークM21〜M24も検知されなければ(S104:No)、ピボットターンの旋回距離が磁気マークM21〜M24の最大配設距離を超えたか判断する(S105)。旋回距離が最大配設距離を超えていなければ(S105:No)、処理をS104へ移行して、再度、いずれかの磁気マークM21〜M24が検知されたかを判断する(S104)。
いずれの磁気マークM21〜M24も検知されないまま、ピボットターンの旋回距離が磁気マークM21〜M24の最大配設距離を超えた場合には(S105:Yes)、磁気マークM21〜M24を1個検出できなかったということである。よって、その場合には、マーク検知不可フラグ73aの状態を確認し(S106)、オフであれば(S106:No)、該フラグ73aをオンして(S107)、処理をS109へ移行する。マーク検知不可フラグ73aがオンされると、磁気マークM21〜M24の最大配設距離を管理するピボットターンの旋回距離は一旦リセットされる。
上述した通り、マーク検知不可フラグ73aは、一つ前の磁気マークM20〜M24を検知できたか否かを示すフラグである。該フラグ73aがオフされている場合には、一つ前の磁気マークM20〜M24を検知できていたということなので、その場合には、無人搬送車両300の旋回を停止することなく継続し、処理をS109へ移行するのである。即ち、磁気マークM21〜M24が検知されない場合でも、一つ前の磁気マークM20〜M23が検知されている場合には、車輪6bの磨耗などが原因で旋回中心からのずれが累積的に大きくなるものではなく、横風や、旋回を行う場の傾きなどによって一時的に磁気マーク検出センサ87が磁気マークM21〜M24を検知できなかった可能性がある。よって、この場合には、旋回を停止させずに、旋回を継続させることで、効率的に旋回を実行できる。
一方、S105の処理において、ピボットターンの旋回距離が磁気マークM21〜M24の最大配設距離を超えた場合に(S105:Yes)、マーク検知不可フラグ73aがオンされていれば(S106:Yes)、磁気マークM21〜M24を2個連続して検出できなかったということである。このように、2個連続して磁気マークM21〜M24を検知できなかった場合には(S106:Yes)、停止指令を走行駆動装置76a〜76dに出力し(S110)、無人搬送車両300を停止させて、本処理を終了する。
即ち、2個連続して磁気マークM21〜M24を検知できない場合は、車輪6bの磨耗などが原因で、旋回中心からのずれが累積的に大きくなる可能性が高い。よって、その場合には、無人搬送車両300を停止させることで、無人搬送車両300が旋回中心からずれて脱輪などが発生するのを回避できる。
次に、図11および図12を参照して第4実施形態の無人搬送車両400について説明する。図11(a)は、第4実施形態の無人搬送車両400の底面図であり、図11(b)は、第4実施形態の無人搬送車両400の電気的構成を模式的に示すブロック図である。尚、図11,図12において、第1実施形態の無人搬送車両1と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
第1実施形態の無人搬送車両1は、図3に示すように、ピボットターンの旋回中心に設けた磁気マーク検出センサ80eで、地上における旋回中心位置に設けた磁気マークM7を検知しながらピボットターンを行うものである。これに対し、第4実施形態の無人搬送車両400は、図11(a)に示すように、磁気マーク検出センサ80eに代えて、磁歪式変位センサ88を設けたものである。
磁歪式変位センサ88は、ヴィーデマン効果による磁歪現象を応用した変位センサである。磁歪式変位センサ88には、ロッド状のプローブに沿ってマグネットが非接触で移動可能に設けられている。マグネットは、検知対象となる磁気マークM7に対する位置に応じてプローブに沿って移動し、プローブ内部の磁歪線上にねじり歪を発生させる。磁歪式変位センサ88は、その歪みの伝播時間を測定することでマグネットの絶対位置(プローブの原点位置に対するマグネットの変位量)を検知するセンサである。尚、本実施形態の磁歪式変位センサ88は、プローブのセンターを原点位置とし、そのセンターに対するマグネットの変位量を検知できる。また、マグネットの変位量が所定値を超える場合には、エラー信号を出力する。
また、磁歪式変位センサ88は、図11(b)に示すように、入出力ポート75を介して制御装置70と接続されている。磁歪式変位センサ88から出力される検知信号は、入出力ポート75を介して制御装置70に入力される。制御装置70は、磁歪式変位センサ88から出力される検知信号(プローブのセンターに対するマグネットの変位量)を、磁気マークM7に対する無人搬送車両400のずれ量として取得できる。制御装置70は、かかるずれ量を取得すると、そのずれ量を減少させる方向に無人搬送車両400を操舵させる補正指令を生成し、その補正指令を操舵駆動装置77a〜77dに出力する。これにより、旋回中に無人搬送車両400が旋回中心からずれたとしても、わざわざ無人搬送車両400を停止させずに、発生したずれを修正しつつ旋回を継続させることができる。
次に、図12を参照して、制御装置70で実行される第4実施形態のピボットターン処理について説明する。図12は、第4実施形態のピボットターン処理を示すフローチャートである。本処理は、無人搬送車両400をステーションST1からステーションST2にピボットターンにより旋回させる処理であり、操舵モードをピボットターンモードに切り替える指令が上位プロコンから入力された場合に開始される。尚、無人搬送車両400がステーションST1に位置している場合、磁歪式変位センサ88のセンター(原点位置)に磁気マークM7が位置しているものとする。
CPU71は、図4に示す第1実施形態のピボットターン処理におけるS41,S42と場合と同様に、各走行装置5a〜5dの各車軸6aの据切動作を実行し(S121)、ピボットターンを開始する(S122)。
CPU71は、磁歪式変位センサ88により磁気マークM7を検知したか否かを判断する(S123)。磁気マークM7を検知していない(S123:No)、即ち、磁歪式変位センサ88からエラー信号を取得した場合には、停止指令を各走行駆動装置76a〜76dに出力し(S124)、本処理を終了する。これにより無人搬送車両400が旋回中心からずれて、脱輪などが発生するのを回避できる。
一方、磁歪式変位センサ88が磁気マークM7を検知していると判断した場合には(S123:Yes)、その検知位置がセンター(原点位置)か否かを判断し(S125)、センターであれば(S125:Yes)、S128の処理に移行する。CPU71は、S125の処理において、検知位置がセンターでないと判断した場合には(S125:No)、検知位置がセンターになるように、無人搬送車両400を操舵させる補正指令を生成し(S126)、その生成した補正指令を各操舵駆動装置77a〜77dへ出力する(S127)。これにより、検知位置がセンターから変位しても、その変位が減少する方向に無人搬送車両400が操舵され、無人搬送車両400の旋回を継続させることができる。
CPU71は、S128の処理において、無人搬送車両400が停止位置(ステーションST2)に到達したか否かを判断し(S128)、停止位置に到達していないと判断した場合には(S128:No)、S123の処理へ移行し、S123〜S127の各処理を繰り返す。一方、無人搬送車両400が停止位置に到達したと判断した場合には(S128:Yes)、本処理を終了する。
以上、各実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施形態で挙げた具体的数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記実施形態では、本発明を適用する旋回として、シャーシ3の中心から外れた位置を旋回中心とする旋回(ピボットターン)を例示した。シャーシ3の中心を旋回中心とする旋回についても、同様に本発明を適用できる。なお、シャーシ3の中心を旋回中心とする旋回は、「スピンターン」と呼ばれることもある。
上記実施形態では、本発明を無人搬送車両1に適用した形態について説明したが、有人無人にかかわらず、ピボットターンや、スピンターンを実行できる搬送車両であれば本発明を適用できる。また、上記実施形態では、4つの走行装置5a〜5dを有する無人搬送車両1に本発明を適用した形態について説明したが、走行装置の数は4つに限られず、適宜の数を採用できる。
上記実施形態では、本発明を適用する旋回として、ピボットターン、すなわち、シャーシ3の範囲内に設定された一点を旋回中心とする旋回を例示したが、シャーシ3の範囲外に設定された一点を旋回中心とする場合についても本発明を適用できる。例えば、シャーシ3の外側に延びるアームを設け、当該アームに磁気マーク検出センサを設け、磁気マーク検出センサが磁気マークMを検出しながら、磁気マーク検出センサの位置を旋回中心として旋回する構成においても、本発明を適用することができる。
上記実施形態では、磁気マークMとして、100mm×100mmの正方形の磁石板を例示した。磁気マークMの大きさおよび形状は、上記例示したものに限られるものではなく、ピボットターンを行う場の勾配によって必然的にピボットターンの旋回中心が安全な範囲内で若干ずれることがあっても、そのずれを許容できる大きさおよび形状であれば、適宜の大きさおよび形状の磁気マークを磁気マークMとして採用できる。例えば、直径100mmの円形の磁石板を磁気マークMとして採用してもよい。
上記実施形態では、ピボットターンの旋回中心に設けるセンサとして、磁気マークMの磁気を検知する磁気センサ(すなわち、磁気マーク検出センサ80a〜80f)を採用する構成とした。ピボットターンの旋回中心に設けるセンサは、レーザセンサや赤外線センサなど、磁気センサ以外のセンサを採用してもよい。かかる場合、磁石板である磁気マークMに代えて、ピボットターンの旋回中心に設けたセンサにより検知可能なマークを採用すればよい。
上記実施形態では、無人搬送車両1の後方側の中央に旋回中心を設定する構成としたが、シャーシ3の範囲内であれば、適宜の位置にピボットターンの旋回中心を設定できる。かかる場合、6個の磁気マーク検出センサ80a〜80fのうち、いずれかの磁気マーク検出センサを、設定された旋回中心の位置に配置すればよい。
上記第1実施形態では、無人搬送車両1は、磁気マーク検出センサ80a,80c,80d,80eが、それぞれ磁気マークM4〜M7を検知した位置をステーションST1として識別する構成とした。つまり、4つの磁気マークM4〜M7をステーションST1の位置を識別させる磁気マークMの組み合わせとした。これに代えて、3つの磁気マークM4〜M6をステーションST1の位置を識別させる磁気マークMの組み合わせとしてもよい。かかる場合、無人搬送車両1は、磁気マーク検出センサ80a,80c,80dが、それぞれ磁気マークM4〜M6を検知した位置をステーションST1として識別する。同様に、3つの磁気マークM8〜M10をステーションST2の位置を識別させる磁気マークMの組み合わせとしてもよい。
このように、ステーションST1,ST2が、それぞれ3つの磁気マークMの組み合わせによって識別される場合、磁気マークM7は、位置決め用のマークでなく、旋回中心からのずれを監視するマークとして機能する。かかる場合、磁気マーク検出センサ80eは、ステーションST1,ST2において、位置決め用のマークを検知するセンサとしてではなく、旋回中心からのずれを監視するセンサとして機能する。
上記第1実施形態では、磁気マーク検出センサ80eが磁気マークMを所定時間(例えば、5秒)に亘って検知しない場合に、ピボットターン中に旋回中心がずれたと判断する、すなわち、S46にてYesと判断する構成とした。これに代えて、磁気マーク検出センサ80eが磁気マークMを一度でも検知しなかった場合に、ピボットターン中に旋回中心がずれたと判断してもよい。
上記第1実施形態では、上位プロコンからの指令に基づいて、無人搬送車両1の操舵モードがピボットターンモードに切り替えられ、それにより、制御装置70が図4のピボットターン処理を開始する構成とした。ピボットターンモードへの切り替えは、オペレータによるペンダントスイッチ84への入力に基づいて行われる構成としてもよい。かかる場合、オペレータによるペンダントスイッチ84への入力に基づき、無人搬送車両1の操舵モードがピボットターンモードに切り替えられると、制御装置70が図4のピボットターン処理を開始する。
上記第1実施形態では、S47にて実行されるエラー処理として、無人搬送車両1の走行停止と、上位プロコンへの通知とを行う構成としたが、いずれか一方であってもよい。
上記第1実施形態では、走行速度検出センサ78a〜78dが、走行駆動装置76a〜76dとは別体として構成されたが、走行駆動装置76a〜76dが、走行速度検出センサ78a〜78dの機能、すなわち、各走行装置5a〜5dの各車輪6bの走行速度を検出する機能を有する構成であってもよい。
上記第1〜第4実施形態のいずれか2つの実施形態を組み合わせて構成しても良い。但し、第2実施形態と、第4実施形態とを組み合わせた場合には、第2実施形態のガイドセンサ86で検知されるずれ量を解消するための操舵角と、第4実施形態の磁歪式変位センサ88で検知されるずれ量を解消するための操舵角との両方が算出されるので、算出された両操舵角が異なる場合には、これを補正する処理が必要になる。
上記第2実施形態では、ピボットターンを開始する前に各車輪6bの外径を求め、その各車輪6bの外径に基づいてピボットターンを実行する場合の各車輪6bの回転速度を算出し、その算出した各車輪6bの回転速度でピボットターンを実行する場合について説明したが、第2実施形態において、この処理を実行せずに、単に、磁気ガイドGに沿って無人搬送車両200を走行させるようにしてもよい。また、かかる処理を、第1,第3,第4実施形態において併せて実行するようにしてもよい。
上記第2実施形態では、旋回中心に対し外輪側に磁気ガイドGを設置する場合について説明した。しかし、磁気ガイドGは、外輪側ではなく、内輪側に設けるようにしても良いし、外輪側と内輪側との双方に設けるようにしてもよい。
上記第3実施形態では、磁気マーク検出センサ87で磁気マークM20〜M24を検知する場合について説明したが、磁気マーク検出センサ87に代えて、磁気マークM20〜M24に対するずれ量(変位量)を検知可能な変位センサ(例えば、磁歪式変位センサ)を適用し、その検知されるずれ量を補正しつつ旋回させても良い。
上記第2実施形態では、ガイドセンサ86によって磁気ガイドGに対するずれ量(変位量)を検知し、上記第4実施形態では、磁歪式変位センサ88によって磁気マークM7に対するずれ量(変位量)を検知した。しかし、必ずしもガイドセンサ86や磁歪式変位センサ88に限定されるものではなく、ずれ量(変位量)を検知可能なセンサであれば、これを適用しても良い。例えば、光学式のセンサや画像処理によってずれ量(変位量)を検知可能な変位センサを用いるようにしても良い。