JP5343558B2 - 析出強化型フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents
析出強化型フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5343558B2 JP5343558B2 JP2008333937A JP2008333937A JP5343558B2 JP 5343558 B2 JP5343558 B2 JP 5343558B2 JP 2008333937 A JP2008333937 A JP 2008333937A JP 2008333937 A JP2008333937 A JP 2008333937A JP 5343558 B2 JP5343558 B2 JP 5343558B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- mass
- less
- steel
- ferritic stainless
- stainless steel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
Description
C:0.020mass%以下
Cは、鋼の強度を増加させる元素である。また、高温での使用時にVと結合して炭化物として析出し、高温強度を高める元素でもある。しかし、0.020mass%を超えて添加すると、靱性および成形性の低下が大きくなる。また、使用中に鋼中に析出する炭化物の粗大化を促進してしまう。よって、Cは0.020mass%以下とする。成形性を高める観点からは、Cは低いほど望ましく、0.008mass%以下とするのが好ましい。
Siは、耐酸化性を向上するのに有効な元素であるが、過剰な添加は鋼の靭性を低下させる。よって、本発明では、Siは1.0mass%以下に制限する。好ましくは0.01〜0.15mass%の範囲である。
Mnは、脱酸剤としての作用を有するとともに、酸化皮膜の密着性を向上させる元素である。しかし、過剰に添加すると、粗大なMnSを形成して、成形性や耐食性を低下させる。よって、本発明では、Mnは2.0mass%以下に制限する。好ましくは1.5mass%以下である。
Pは、鋼の成形性や靱性を低下させる有害元素であり、できるだけ低減するのが望ましい。しかし、脱Pコストを抑える観点から、Pは0.060mass%以下とする。好ましくは0.030mass%以下である。
Sは、鋼の耐食性を低下させる有害元素であり、できるだけ低減するのが望ましい。しかし、脱Sコストを抑える観点から、Sは0.008mass%以下とする。好ましくは0.005mass%以下である。
Crは、鋼の耐酸化性や耐食性を向上させるのに極めて有効な元素であり、このような効果を得るためには12.0mass%以上の添加が必要である。しかし、過剰に添加すると、鋼の靱性を低下させるので、30.0mass%以下に制限する。好ましくは14〜20mass%の範囲である。
Niは、鋼の靱性を向上させる元素である。しかし、過剰な添加は、原料コストの増大を招くので、1.00mass%以下に制限する。好ましくは0.01〜0.80mass%の範囲である。
Nbは、C,Nを炭窒化物として固定することにより、鋼の成形性や耐食性等を向上させる元素である。また、鋼に固溶することにより、高温強度を高める効果も有する。しかし、高温に曝されると、Laves相として析出して粗大化し、鋼を著しく軟化させてしまうだけでなく、本発明において重要な役割を担うVNの析出の妨げともなるため、0.20mass%を上限とする。
Nは、Cと同様に、鋼の強度を増加させるだけでなく、高温での使用時にVと結合してVNとして析出し、高温強度を高める効果がある。このVNは、母相との整合性が高く、極めて安定であるため、安定して高い高温強度を確保することができる。この効果を得るためには、0.020mass%以上の添加が必要である。しかし、過剰に添加すると、VNが粗大化してしまうため、上限を0.050mass%とする。
Vは、高温での使用時にC,Nと炭窒化物を形成して微細に析出し、0.2%耐力などの高温強度を高める効果があり、本発明においては極めて重要な元素である。この微細に析出したVNは、母相との整合性が極めて高く、粗大化しにくいため、長時間に亘って高温強度を維持することができる。この効果を得るためには、0.2mass%以上の添加が必要である。しかし、過剰な添加は、鋼を脆化させるのみならず、VNの粗大化を促進してしまうため、上限を0.6mass%とする。
本発明の鋼の製造条件は、後述する仕上焼鈍以外は、特に限定されるものではなく、Cr含有鋼の一般的な製造方法であれば好適に用いることができる。例えば、上記の適正な成分組成に調整した溶鋼を、転炉や電気炉等の溶製炉さらには取鋼精錬、真空精錬等の2次精錬を経て溶製した後、連続鋳造方法または造塊・分塊法でスラブとし、その後、そのスラブを、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗の各工程を順次経て、冷延焼鈍板とする製造方法を採用することができる。なお、上記工程における冷間圧延は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延としてもよく、また、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗の各工程は繰り返して行ってもよい。さらに、熱延板焼鈍工程は省略してもよい。また、熱間圧延後、後述する仕上焼鈍条件に準じた条件で熱延板焼鈍し、使用に供することも可能である。
仕上焼鈍温度:1000〜1200℃
本発明のフェライト系ステンレス鋼が、高温での使用時に、Vの炭窒化物を微細に析出し、高温強度ひいては熱疲労特性を改善する効果を奏するためには、使用前の状態において、Vを十分に固溶させた状態にしておく必要がある。そのためには、最終の仕上焼鈍温度を1000℃以上とする必要がある。一方、1200℃を越える温度での焼鈍は、焼鈍すること自体が難しくなるので、上限は1200℃とする。好ましくは、1020〜1170℃の範囲である。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、仕上焼鈍後、Vを固溶させた状態のまま、室温まで冷却する必要がある。そのためには、仕上焼鈍温度から500℃までの範囲を40℃/sec以上の速度で冷却してやることが必要である。40℃/sec未満では、冷却中に粗大なVの炭窒化物が析出するため、本発明の効果を得ることができなくなる。なお、冷却速度の上限は特に制限はないが、鋼板の形状確保や安定操業の観点から、上限は60℃/sec程度に抑えるのが好ましい。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、高温で使用開始する前の状態では、Vが鋼中に固溶していることが必要である。高温での使用開始時に鋼中のVが析出していると、V炭窒化物の微細析出による析出強化機能が既に失われているため、高温使用時における析出強化効果が十分に得られないからである。そして、固溶状態にあると、成形加工も容易となる。
その後、上記仕上焼鈍後の角材から、図1に示した形状、寸法の熱疲労試験片を作製し、この熱疲労試験片を用いて、図2に示した、拘束率0.8で200℃/800℃間を昇温・降温させて加熱冷却を繰り返す熱疲労試験に供して熱疲労寿命を測定した。なお、熱疲労試験における昇温・降温速度は5℃/sとし、800℃の保持時間は60sec、200℃の保持時間は0secとした。また、熱疲労寿命は、200℃において検出された荷重が、初期の80%を下回ったサイクル数とした。
Claims (4)
- C:0.020mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:2.0mass%以下、P:0.060mass%以下、S:0.008mass%以下、Cr:12.0〜30.0mass%、Ni:1.00mass%以下、Nb:0.20mass%以下、N:0.020〜0.050mass%、V:0.2〜0.6mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、使用開始時にはVが固溶状態にあることを特徴とする析出強化型フェライト系ステンレス鋼。
- 600〜700℃の温度で析出するV炭窒化物が、長径100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の析出強化型フェライト系ステンレス鋼。
- 上記V炭窒化物は、析出密度が100個/μm2以上であることを特徴とする請求項2に記載の析出強化型フェライト系ステンレス鋼。
- C:0.020mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:2.0mass%以下、P:0.060mass%以下、S:0.008mass%以下、Cr:12.0〜30.0mass%、Ni:1.00mass%以下、Nb:0.20mass%以下、N:0.020〜0.050mass%、V:0.2〜0.6mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を製造するに当たり、1000〜1200℃の温度で焼鈍後、上記焼鈍温度から500℃までの範囲を40℃/sec以上の速度で冷却することにより、Vを固溶させた状態のまま、室温まで冷却する仕上焼鈍を施すことを特徴とする析出強化型フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008333937A JP5343558B2 (ja) | 2008-12-26 | 2008-12-26 | 析出強化型フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008333937A JP5343558B2 (ja) | 2008-12-26 | 2008-12-26 | 析出強化型フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010156008A JP2010156008A (ja) | 2010-07-15 |
JP5343558B2 true JP5343558B2 (ja) | 2013-11-13 |
Family
ID=42574136
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2008333937A Active JP5343558B2 (ja) | 2008-12-26 | 2008-12-26 | 析出強化型フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5343558B2 (ja) |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH04365838A (ja) * | 1991-06-14 | 1992-12-17 | Kawasaki Steel Corp | 熱間加工性ならびに高温強度に優れたフェライト系耐熱鋼 |
JP3508667B2 (ja) * | 2000-01-13 | 2004-03-22 | 住友金属工業株式会社 | 高温強度に優れた高Crフェライト系耐熱鋼およびその製造方法 |
JP4369596B2 (ja) * | 2000-05-09 | 2009-11-25 | 日新製鋼株式会社 | 耐熱性フェライト系ステンレス鋼材 |
JP2005171326A (ja) * | 2003-12-11 | 2005-06-30 | Nippon Steel Corp | 耐表面損傷性および耐内部疲労損傷性に優れた高炭素鋼レール |
-
2008
- 2008-12-26 JP JP2008333937A patent/JP5343558B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2010156008A (ja) | 2010-07-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4702493B1 (ja) | 耐熱性に優れるフェライト系ステンレス鋼 | |
JP5540637B2 (ja) | 耐熱性に優れるフェライト系ステンレス鋼 | |
JP5141296B2 (ja) | 高温強度と靭性に優れるフェライト系ステンレス鋼 | |
USRE44709E1 (en) | Soft Cr-containing steel | |
JP5012243B2 (ja) | 高温強度、耐熱性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼 | |
JP2012102376A (ja) | 耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼 | |
JP6796708B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法、ならびに、排気部品 | |
TW201718903A (zh) | 肥粒鐵系不銹鋼 | |
JP2009197307A (ja) | 高温強度、耐水蒸気酸化性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼 | |
JP2005002451A (ja) | 耐熱ばね用Fe−Ni−Cr基合金および耐熱ばねの製造方法 | |
JP2803538B2 (ja) | 自動車排気マニホールド用フェライト系ステンレス鋼 | |
JP7205277B2 (ja) | 耐熱合金及びその製造方法 | |
JP2011236465A (ja) | オーステナイト系ステンレス鋼、ステンレス鋼製品およびそれらの製造方法 | |
JP5343558B2 (ja) | 析出強化型フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 | |
JP5239642B2 (ja) | 熱疲労特性、高温疲労特性および耐酸化性に優れるフェライト系ステンレス鋼 | |
JP2014189863A (ja) | メタルガスケット用耐熱オーステナイト系ステンレス鋼 | |
JP3744403B2 (ja) | 軟質なCr含有鋼 | |
JP5796398B2 (ja) | 熱疲労特性と高温疲労特性に優れたフェライト系ステンレス鋼 | |
JP5417764B2 (ja) | 熱疲労特性と耐酸化性に優れるフェライト系ステンレス鋼 | |
JP2021080541A (ja) | 耐熱合金 | |
JP5810722B2 (ja) | 熱疲労特性と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼 | |
JP5239644B2 (ja) | 熱疲労特性、高温疲労特性、耐酸化性および靭性に優れるフェライト系ステンレス鋼 | |
CN102392184A (zh) | 一种抗高温氧化铁素体耐热钢棒材及其制备方法 | |
JP5343444B2 (ja) | 熱疲労特性、耐酸化性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼 | |
JP2018188686A (ja) | 耐熱部材用合金原板、耐熱部材用合金板、およびエンジンの排気系部材用のガスケット |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20110824 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20130520 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20130528 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130624 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20130716 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20130729 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5343558 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |