JP2021080541A - 耐熱合金 - Google Patents

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Fumitaka Ichikawa
文崇 市川
正美 澤田
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正美 澤田
木村 謙
Ken Kimura
謙 木村
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Minami Hanai
実菜美 花井
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Abstract

【課題】800℃における高温強度と耐酸化性とに優れる耐熱合金を提供すること。【解決手段】所定の化学組成を有し、800℃での0.2%耐力が、330MPa以上であり、表面からの深さが0〜7μmの領域である表層領域の平均N含有量が、質量%で0.100%以上であり、前記表層領域における前記平均N含有量が、質量%で、厚み方向中心部における平均N含有量の2.5倍以上である耐熱合金。【選択図】図1

Description

本発明は耐熱合金に関する。
自動車のエンジン排気系には、排気マニホールド、コンバーター、フロントパイプ、マフラー等の部材が用いられている。これらの排気系に用いられる部材は、高温の排気ガスに長時間曝されるので、高温強度及び耐酸化性が求められる。これらの部材について、従来は、高温強度及び耐酸化性の確保のため耐熱ステンレス鋼が多く使用されている。
近年、自動車の環境規制がさらに強化され、エンジンの高効率化による燃費向上が求められている。燃費向上のためには、エンジンの燃焼ガスの温度を上昇させることが検討されているが、燃焼ガスの温度を上昇させると、排気系部材の使用温度も上昇する。例えば、従来は、排気系部材の使用温度は700〜750℃程度であったが、燃焼ガスの温度の上昇によって、使用温度が800℃程度になることが予想される。
しかしながら、従来使用されてきた耐熱ステンレス鋼では、800℃で長時間使用した場合には、強度が低下するという課題があった。
このため、800℃における高温強度が従来の耐熱ステンレス鋼以上であり、かつ十分な耐酸化性を持った新たな材料が要望されている。
例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:≦2.0%、Mn:≦2%、Cr:13〜23%、Ni:25〜45%、Ti:1.5〜3.5%、Al:0.1〜1.5%、TiとAlとの質量%の比率Ti/Alが2.0以上であり、更に、Mo:≦3.0%、W:≦3.0%、Nb+Ta:≦5.0%、V:≦1.0%、Hf:≦3.0%、Zr:≦0.5%、B:≦0.05%のうち1種または2種以上を含有し、残部不可避的不純物及びFeからなる合金組成を有する合金を、700〜975℃で予備熱処理した後、970℃以下の温度で熱間加工し、さらに975℃以下の温度で固溶化及び時効熱処理を施したことを特徴とする耐熱合金が開示されている。特許文献1では、Ti/Al比を制御し特定の金属間化合物相を多量析出させることで、組織が微細化され、高温強度に優れると記載されている。
特許文献2には、質量%で、C:0.01〜0.1%、Si:≦2%、Mn:≦2%、Cr:12〜25%、Nb+Ta:0.2〜2.0%、Ti:1.5%未満、Al:0.5〜3.0%、Ni:25〜45%、Cu:0.1〜5.0%で、TiとAlとの原子%の比率Ti/Alが、Ti/Al=0.115〜1.0であり、残部不可避的不純物及びFeからなる合金組成を有する耐熱合金が開示されている。特許文献2では、この耐熱合金は、高温で長時間使用され続けても軟化・劣化を起さず、過時効特性に優れると記載されている。
特許文献3には、質量%で、C:≦0.1%、Si:≦1.0%、Mn:≦2.0%、P:≦0.04%、S:0.01%、Cr:10.0〜20.0%、Nb:0.05〜2.5%、Ti:1.5〜4.0%、Al:0.8%超〜3.0%、Ni:25.0〜60.0%、Cu:0.1〜5.0%、MoとWの1種または2種がMo+W/2:0.05〜5.0%、B:0.001〜0.015%、Mg:0.0005〜0.01%、S/Mg:≦1.0、N:≦0.01%、O:≦0.005%、残部不可避的不純物及びFeからなる合金組成を有し、オーステナイト基地中に平均円相当径で25nm以上の析出γ′相が存在しない金属組織を有することを特徴とする金属ガスケットが開示されている。特許文献3では、自動車エンジンのガスケット用の材料に用いられることが主眼とされ、ガスケット形状への良好な冷間加工性と高温での使用中における高い強度とを兼ね備えると記載されている。
特許文献4には、質量%で、C:0.0020〜0.10%、Si:0.020〜3.0%、Mn:0.020〜2.0%、P:<0.050%、S:<0.010%、Cr:12.0〜25.0%未満、Ni:35.0%超〜50.0%未満、N:0.0005〜0.020%、Al:3.0%超〜5.0%、Ti:1.5%超〜3.0%未満、Mo:1.0〜2.5%、Nb:2.25〜4.00%、Cu:<0.3%を含有し、Ti、NbおよびAlの質量%での含有量についてTi/Al:≧0.50、Nb/Al≧0.75であり、残部不可避的不純物及びFeからなる合金組成を有し、オーステナイト相のみからなる金属組織を呈する耐熱部材用合金原板であって、700℃で1時間加熱処理した場合に、オーステナイト母相中にNi系金属間化合物が存在する金属組織を呈し、前記Ni系金属間化合物を構成する化学組成全体に対して、前記Ni系金属間化合物に含まれるNi、TiおよびNbの化学組成が、原子%で、それぞれ60%超、3.5%以上および0.8%以上を占めることを特徴とする、耐熱部材用合金原板が開示されている。特許文献4では、特許文献3と同様、自動車エンジンのガスケット用の材料に用いられることが主眼とされ、ガスケットとして使用された際の耐へたり性に優れると記載されている。
しかしながら、本発明者らが検討を行った結果、特許文献1〜4に示されるようなNiを多く含有する耐熱合金は、高温で長時間曝された場合、十分な耐酸化性が得られない場合があることが分かった。
特開昭58−34129号公報 特許第3744084号公報 国際公開第2017/104755号 特開2018−188686号公報
本発明は、上記の課題に鑑みてなされた。本発明は、800℃における高温強度と耐酸化性とに優れる耐熱合金を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、合金成分の適切な制御した上で表層領域のN含有量を高めることで、高温強度と耐酸化性との両方を高めることができることを見出した。
本発明は上記の知見に基づいてなされた。本発明の要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.0003〜0.0200%、Si:0.02〜2.00%、Mn:0.02%〜2.00%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、Cr:12.00%以上、30.00%未満、Ni:35.0〜60.0%、N:0.0001〜0.0500%、Nb:1.00%超、3.50%以下、Al:2.00%超、4.00%以下、Ti:0〜0.80%、V:0〜1.00%、Mo:0〜5.00%、W:0〜5.00%、Cu:0〜1.00%、Co:0〜1.00%、B:0〜0.0100%、Zr:0〜0.0100%、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、を含有し、残部がFe及び不純物である化学組成を有し、800℃での0.2%耐力が、330MPa以上であり、表面からの深さが0〜7μmの領域である表層領域の平均N含有量が、質量%で0.100%以上であり、前記表層領域における前記平均N含有量が、質量%で、厚み方向中心部における平均N含有量の2.5倍以上である、耐熱合金。
(2)板厚が0.1〜2.0mmの合金板である、(1)に記載の耐熱合金。
(3)大気中で800℃で50時間保持する熱処理を行った後の、前記熱処理を行う前に対する、1cm当たりの重量の増加量が、0.070mg/cm以下であり、前記熱処理を行った後において、前記表層領域における円相当径が150nm以下である第二相の平均個数密度が、前記厚み方向中心部における円相当径が150nm以下である第二相の平均個数密度の70%以下である、(1)または(2)に記載の耐熱合金。
(4)質量%で、Ti:0.10〜0.80%、V:0.10〜1.00%、Mo:0.50〜5.00%、W:0.02〜5.00%、Cu:0.01〜1.00%、Co:0.10〜1.00%、の一種または二種以上を含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の耐熱合金
(5)質量%で、B:0.0002〜0.0100%、Zr:0.0002〜0.0100%、Ca:0.0001〜0.0050%、Mg:0.0001〜0.0050%、の一種または二種以上を含有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の耐熱合金。
本発明によれば、800℃における高温強度と耐酸化性とに優れる耐熱合金を提供することができる。
図1は、合金の表面への窒素吸収の有無による酸化挙動の違いについて模式的に表した図である。
本発明の一実施形態に係る耐熱合金(本実施形態に係る耐熱合金)は、質量%で、C:0.0003〜0.0200%、Si:0.02〜2.00%、Mn:0.02%〜2.00%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、Cr:12.00%以上、30.00%未満、Ni:35.0〜60.0%、N:0.0001〜0.0500%、Nb:1.00%超、3.50%以下、Al:2.00%超、4.00%以下、Ti:0〜0.80%を含有し、任意にV:1.00%以下、Mo:5.00%以下、W:5.00%以下、Cu:1.00%以下、Co:1.00%以下、B:0.0100%以下、Zr:0.0100%以下、Ca:0.0050%以下、Mg:0.0050%以下、を含有し、残部がFe及び不純物である化学組成を有する。
また、本実施形態に係る耐熱合金は、800℃での0.2%耐力が、330MPa以上であり、表面からの深さが0〜7μmの領域である表層領域の平均N含有量が、質量%で0.100%以上であり、表層領域における平均N含有量が、質量%で、厚み方向中心部における平均N含有量の2.5倍以上である。
また、本実施形態に係る耐熱合金は、例えば板厚が0.1〜2.0mmである合金板であり、好ましくは、大気中で、800℃で50時間保持する熱処理を行った後、1cm当たりの重量の増加量が、0.070mg/cm以下であり、熱処理後において、表層領域での、円相当径が150nm以下の第二相の平均個数密度が、厚み方向中心部における第二相の平均個数密度の70%以下である。
以下、それぞれの限定理由について説明する。
<化学組成について>
C:0.0003〜0.0200%
Cは、Ti、Nbと結びついて炭化物を形成する元素である。Ti、Nbが炭化物を形成すると、第二相として高温強度の向上に寄与するγ′相の生成量が減少する。そのため、C含有量は低い方が望ましい。したがって、C含有量は0.0200%以下とする。
一方、C含有量を0.0003%未満にしようとすると、脱Cに伴う製造コストが著しく増加する。そのため、C含有量を0.0003%以上とする。
Si:0.02〜2.00%
Siは、精錬の際に脱酸元素として有効な元素である。また、Siは、合金の耐酸化性および高温強度を改善する元素である。これらの効果を得るため、Si含有量を0.02%以上とする。好ましくは、0.03%以上である。
一方で、Si含有量が多すぎると、合金が硬質化し、加工性が劣化する。そのため、Si含有量を2.00%以下とする。好ましくは、1.50%以下、更に好ましくは、1.00%以下とする。
Mn:0.02%〜2.00%
Mn含有量が多すぎると、熱間加工性が劣化する上、高温での耐酸化性が著しく劣化する。したがって、Mn含有量は2.00%以下とする。好ましくは、1.80%以下とする。
一方、Mnは、Siと同様に、脱酸剤として有効な元素であるとともに、オーステナイト母相の安定性を向上させる元素である。加えてMnは、原料スクラップなどから混入するので、Mn含有量を大きく低減させるにはスクラップの使用を減らす必要がある。スクラップの使用を減らすと、コストが増大する。したがって、Mn含有量は0.02%以上とする。好ましくは、0.05%以上とする。
P:0.050%以下
Pは合金の原料の一つであるフェロクロムに含まれる不純物元素である。Pは熱間加工性や靱性に有害であるので、P含有量を0.050%以下に制限する。好ましくは、0.035%以下である。
P含有量は少ない方が好ましいので、下限は0%である。しかしながら、精錬時の脱Pは難しく、P含有量の低減のためには、原料としてP濃度が低いフェロクロムを用いることが必要となる。P濃度が低いフェロクロムは高価であるので、P含有量を必要以上に低減しようとするとコストが上昇する。したがって、P含有量を、0.005%以上としてもよい。
S:0.0100%以下
Sは原料のスクラップなどに含まれる不純物元素である。Sは熱間加工性や耐食性に有害であるので、S含有量は0.0100%以下に制限する。好ましくは、0.0050%以下である。
S含有量は少ない方が好ましいので、下限は0%である。しかしながら、必要以上にS含有量を低減しようとすると精錬時の脱硫負荷が増大し、製造コストが上昇する。したがって、S含有量は、0.0002%以上としてもよい。
Cr:12.00%以上、30.00%未満
Crは耐熱合金としての耐酸化性、耐食性を確保する観点から必須の元素である。十分な耐食性、耐酸化性を確保する観点から、Cr含有量は12.00%以上とする。好ましくは14.00%以上である。
一方で、Cr含有量が多すぎると、焼鈍時にσ相などの粗大な化合物が生成し、材料が脆化し、加工性も低下する。また、オーステナイト母相の安定度が低下する。そのため、Cr含有量は30.00%未満とする。好ましくは、20.00%以下である。
Ni:35.0〜60.0%
Niは強力なオーステナイト安定化元素であり、ミクロ組織においてオーステナイト母相を得るために必須の元素である。また、Niは、第二相として高温強度の向上に寄与する、γ′相(Ni(Al,Nb,Ti))を得るためにも極めて重要な元素である。耐熱合金として高温での強度を確保する観点から、Ni含有量は35.0%以上とする。好ましくは、37.5%以上、更に好ましくは、40.0%以上である。
一方、Ni含有量が多すぎると、コストが上昇することに加え、熱間加工時の変形抵抗が高くなって、製造が困難になる。そのため、Ni含有量は60.0%以下とする。好ましくは、57.5%以下、更に好ましくは、55.0%以下である。
N:0.0001〜0.0500%
Nは、本実施形態に係る耐熱合金において、耐酸化性に優れるAl酸化物皮膜を安定的に生成させるために用いられる。この効果を得るためには、N含有量を0.0001%以上とする必要がある。
一方で、N含有量が過剰であると、NがAl、Nb、Tiと結合して窒化物を形成する。Al、Nb、Tiが窒化物を形成すると、第二相として合金を強化する強化相であるγ′相の生成量が減少する。そのため、N含有量は、0.0500%以下に制限する。好ましくは、0.0400%以下、より好ましくは、0.0350%以下、さらに好ましくは0.0200%以下である。
耐熱合金のN含有量を0.0500%以下としつつ、耐熱合金の表面に耐酸化性に優れるAl酸化物皮膜を安定して生成させる場合、合金の表面から窒素吸収によって表層領域のN含有量を高めることが好ましい。
Nb:1.00%超、3.50%以下
Nbは固溶強化元素としてオーステナイト母相を強化するだけでなく、高温強度の上昇に寄与する強化相であるγ′相を構成する元素であり、Nbを固溶したγ′相は高温強化能が高い。高温強度確保のため、Nb含有量は1.00%超とする。好ましくは、1.50%以上、更に好ましくは、1.70%以上である。
一方、Nbは合金の融点を下げ、高温での熱間加工を困難にする元素である。したがって、Nb含有量は3.50%以下とする。好ましくは、3.25%以下、更に好ましくは、3.00%以下である。
Al:2.00%超、4.00%以下
Alは、脱酸元素として有効な元素である。また、Alは、高温強度の上昇に寄与する強化相であるγ′相を構成する元素である。その強化能は、Ti、Nbには及ばないが、Ti、Nbに比べて、長時間安定してγ′相を維持する効果がある。更に、Alは、耐酸化性に優れるAl酸化物皮膜を安定的に生成させるのに必要である。長時間高温に曝された際も安定して高温強度、耐酸化性を維持する観点から、Al含有量は2.00%超とする。好ましくは、2.20%以上、更に好ましくは、2.30%以上である。
一方、Al含有量が過剰であると、合金の融点が下がり、高温での熱間加工が困難になる。したがって、Al含有量は、4.00%以下とする。好ましくは、3.70%以下、更に好ましくは、3.50%以下である。
本実施形態に係る耐熱合金は、上記の元素(必須元素)を含有し、残部がFe及び不純物からなっていてもよい。しかしながら、各種の特性を向上させるため、以下に示す元素をFeの一部に代えて含有させてもよい。合金コストの低減のためには、これらの任意元素を意図的に合金中に添加する必要がないので、これらの任意元素の含有量の下限は、いずれも0%である。
不純物とは、合金の製造過程において、原料から、またはその他の製造工程から、意図せず含まれる成分をいう。
Ti:0〜0.80%
Tiは強化相であるγ′相を構成する元素であり、高温強度の向上に寄与する元素である。そのため、必要に応じて含有させてもよい。上記効果を得る場合、Ti含有量を0.10%以上とすることが好ましい。
一方、Tiを多量に含有し、γ′相中のTi含有量が高まると、γ′相が高温強度の向上に寄与しないη相に変化しやすくなる。また、合金中のC、NとTiとが粗大な炭化物、窒化物を形成し、熱間加工性や冷間加工性が著しく劣化する。また、Tiの含有により合金の融点が下がるので、Ti含有量が過剰であると高温での熱間加工が困難になる。したがって、含有させる場合でも、Ti含有量は0.80%以下とする。好ましくは、0.60%以下である。
V:0〜1.00%
Vは、固溶強化元素としてオーステナイト母相を強化することにより、高温強度の向上に寄与する元素である。この効果を得るため、含有させてもよい。上記効果を得る場合、V含有量は0.10%以上とすることが好ましい。
一方、VはC、Nと結合して炭化物、窒化物を形成する。V含有量が多すぎると、粗大な炭化物、窒化物が生成し、材料の加工性が劣化する。そのため、含有させる場合でも、V含有量は1.00%以下とする。好ましくは、0.80%以下である。
Mo:0〜5.00%
Moも、NbやVと同様、母相であるオーステナイト相に固溶し、高温強度の向上に寄与する元素である。そのため、必要に応じて含有させてもよい。上記効果を得る場合、Mo含有量を0.30%以上とすることが好ましく、更には0.50%以上とすることが好ましい。
一方、多量にMoを含有すると、熱間加工時の変形抵抗が増加し、所定の板厚に熱間圧延するのが困難になる。また、高温長時間時効時に粗大なLaves相の析出が促進され、高温強度が低下する。したがって、含有させる場合でも、Mo含有量は5.00%以下とする。好ましくは、4.00%以下である。
W:0〜5.00%
Wはオーステナイト母相に固溶し、高温強度の向上に寄与する元素である。そのため必要に応じて含有させてもよい。上記効果を得る場合、W含有量を0.02%以上とすることが好ましく、0.10%以上とすることがより好ましい。
一方、多量にWを含有すると、熱間加工時の変形抵抗が増加し、所定の板厚に熱間圧延するのが困難になる。また、高温長時間時効時に粗大なLaves相の析出が促進され、高温強度が低下する。したがって、含有させる場合でも、W含有量は5.00%以下とする。好ましくは、4.00%以下である。
Cu:0〜1.00%
Cuは、オーステナイト母相に固溶し、高温強度を上げる効果を有する元素である。そのため必要に応じて含有させてもよい。上記効果を得る場合、Cu含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.03%以上することがより好ましい。
一方、Cu含有量が過剰になると、熱間圧延時の耳割れが発生する場合がある。したがって、含有させる場合でも、Cu含有量は1.00%以下とする。好ましくは、0.80%以下である。
Co:0〜1.00%
CoはNiの代替としてγ′相に固溶する元素であり、高温強度の向上に寄与する元素である。そのため、含有させてもよい。上記効果を得る場合、Co含有量を0.10%以上とすることが好ましく、0.20%以上とすることがより好ましく、0.30%以上とすることがさらに好ましい。
一方で、Coを多量に含有すると、コストの増加に加えて、熱間加工時の変形抵抗が増加し、所定の板厚に熱間圧延するのが困難になる。したがって、含有させる場合でも、Co含有量は1.00%以下とする。好ましくは、0.90%以下、より好ましくは、0.80%以下である。
B:0〜0.0100%
Bは結晶粒界に偏析する元素であり、結晶粒界を強化することで、粒界でのすべりを抑制し、高温強度の向上に寄与する元素である。そのため、含有させても良い。Bを含有することによる上述の効果を得るためには、B含有量は好ましくは0.0002%以上である。
一方で、Bを多量に含有すると粒界偏析が顕著になり、熱間加工性が著しく低下する。そのため、含有させる場合でも、B含有量は0.0100%以下とする。好ましくは、0.0090%以下である。
Zr:0〜0.0100%
Zrは結晶粒界に偏析する元素であり、結晶粒界を強化することで、粒界でのすべりを抑制し、高温強度の向上に寄与する元素である。そのため、含有させても良い。Zrを含有することによる上述の効果を得るためには、Zr含有量は好ましくは0.0002%以上である。
一方で、Zrを多量に含有させると粒界偏析が顕著になり、熱間加工性が著しく低下する。そのため、含有させる場合でも、Zr含有量は0.0100%以下とする。好ましくは、0.0080%以下である。
Ca:0〜0.0050%
Caは脱硫元素として使用され、熱間加工性を改善する効果を有する。熱間加工性が改善すると製造コストが低減できる。この効果を得るため、含有させても良い。上記効果を得る場合、Ca含有量を0.0002%以上とすることが好ましい。
一方、Ca含有量が多量になると、比較的粗大な水溶性介在物が析出し、耐食性が低下する。そのため、含有させる場合でも、Ca含有量は0.0050%以下とする。好ましくは、0.0040%以下である。
Mg:0〜0.0050%
Mgは、Caと同様に脱硫元素として使用され、熱間加工性改善する効果を有する。熱間加工性が改善すると製造コストが低減できる。この効果を得るため、含有させても良い。上記効果を得る場合、Mg含有量を0.0002%以上とすることが好ましい。
一方、Mg含有量が多量になると、水溶性介在物が析出し、耐食性を低下させる。そのため、含有させる場合でも、Mg含有量は0.0050%以下とする。好ましくは、0.0040%以下である。
上述の通り、本実施形態に係る耐熱合金は、上記必須元素を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成、または、上記必須元素及び任意元素の1種以上を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する。
上述した本実施形態に係る耐熱合金の化学組成については、耐熱合金の厚み中心部の化学組成であり、AES(オージェ電子分光法)等の化学分析によって求めることができる。本実施形態における厚み中心部とは、合金板であれば成品板厚をtとしたとき、板表面から(2/5)×t〜(3/5)×tの範囲を指す。
<800℃での0.2%耐力が330MPa以上>
800℃での0.2%耐力が330MPa以上であれば、エンジン排気系部材として800℃で使用される場合でも、十分な高温強度が得られる。
<表面からの深さが0〜7μmの領域である表層領域の平均N含有量が、質量%で0.100%以上>
<表層領域における平均N含有量が、厚み方向中心部における平均N含有量の2.5倍以上>
本発明者らは、800℃程度での使用においても十分な高温強度と耐酸化性とを有する自動車排気系部材用の材料について検討を行った。本発明者らは、800℃での高温強度を確保するためγ′相(ガンマプライム相)と呼ばれる金属間化合物相による析出強化に着目した。γ′相(ガンマプライム相)は、母相となるオーステナイト相と結晶構造が近いことから、母相との界面の整合性が高く、他の析出強化相と比べて母相粒内に均一に微細分散しやすいことや、γ′相自体の強度が温度との逆依存性を有することなどから、特に高温での析出強化能が高いという特徴を有する。
本実施形態に係る耐熱合金では、上述した範囲に合金成分を適正化することにより、高温環境でγ′相の適正な析出を促すことができる。
一方で、耐酸化性について、従来の耐熱ステンレス鋼等の場合、高温環境で表面にCr酸化物皮膜が形成されるので、一定の耐酸化性は得られる。しかしながら、本発明者らの検討の結果、800℃程度の高温において長時間使用された場合には、Cr酸化物皮膜が形成されていても必ずしも十分な耐酸化性が得られないことが分かった。
そこで、本発明者らは、耐熱合金の表面に、Cr酸化物皮膜に加えて、Cr酸化物皮膜よりも合金母材の表面への密着性が高く、酸素の透過性が低い(バリア性が高い)Al酸化物皮膜を形成することで、耐酸化性を向上させることを検討した。
しかしながら、Niを多く含有し、高温でγ′相が形成されるように化学組成が制御された合金では、Alを一定量含有させても、高温環境において、γ′相の生成により母相中のAlが消費され、耐酸化性確保に有効なAl酸化物皮膜を表面に形成することは困難であることが分かった。
そこで、本発明者らがさらに検討を行った結果、窒素吸収等により耐熱合金の表層領域の窒素含有量を増加させることで、γ′相が生成するような化学組成を有する耐熱合金であっても、表面近傍ではγ′相の生成が抑制され、表面にAl酸化物皮膜が形成され、高温強度とともに耐酸化性も向上させることができることを見出した。
より具体的には、表面からの深さが0〜7μmの領域を表層領域としたとき、表層領域における平均N含有量が、質量%で0.100%以上であり、かつ表層領域における平均N含有量が、厚み方向中心部における平均N含有量の2.5倍以上である場合に、高い高温強度と優れた耐酸化性とを確保できることが分かった。
表層領域の窒素(N)量を高めることで、耐酸化性の向上に寄与するAl酸化物皮膜を形成させることができる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推定される。
本実施形態に係る耐熱合金は、ミクロ組織がオーステナイト相を含む。好ましくは実質的にオーステナイト相が母相となる組織(母相のオーステナイト相に対し、γ′相や炭窒化物等が析出した組織)を有する。窒素吸収により表面から窒素を合金中に拡散させ、表層領域のN含有量を中心部よりも高めることで、Nが表層領域(特に表面近傍)のオーステナイト相の格子間に侵入して、表層領域のオーステナイト相の格子定数が大きくなる。
γ′相の格子定数は、N原子等が侵入していないオーステナイト相の格子定数と近く、γ′相とオーステナイト相との界面エネルギーが低いので、γ′相は、高温状態に曝された際にオーステナイト相から早期に核生成、成長しやすいということが知られている。しかしながら、固溶N量が増加しオーステナイト相の格子定数が大きくなると、オーステナイト相の格子定数とγ′相の格子定数との間のミスフィットが大きくなり、γ′相が析出、成長する際に必要な界面エネルギーが上昇する。その結果、オーステナイト相の格子定数が大きくなった表層領域では、γ′相の核生成、成長に掛かる時間が長くなる。このような組織を有する耐熱合金が、高温に曝されると、γ′相とオーステナイト相との界面エネルギーが低い内部は早期にγ′相が生成するのに対し、γ′相とオーステナイト相との界面エネルギーが高い表面近傍ではγ′相の生成が遅いので、γ′相の析出によりオーステナイト相中のAlが消費される前に、表面に安定なAl酸化物が形成されると考えられる。例えば、図1は、合金の表面への窒素吸収の有無による酸化挙動の違いについて模式的に表した図である。図1の左側に示すように、表面からの窒素吸収がない場合、高温において早期にγ′相が析出するので、表面近傍でのAl濃度が減少し、密着性の高いAl酸化物皮膜が十分に形成されず、強く酸化される。一方、図1の右側に示すように、予め表面からの窒素吸収を施した場合は、表面近傍でγ′相の析出が抑制され、Alが消費されなくなるので、高温において表面にAl酸化物皮膜が安定的に生成する。このため、酸化が抑制される。
表層領域におけるN含有量が質量%で0.100%未満、または表層領域における平均N含有量が、厚み方向中心部における平均N含有量の2.5倍未満であると、表面に十分なAl酸化物が形成されず、耐酸化性が不十分となる。熱処理後に表面に形成されるAl酸化物は膜状に表面全体を覆うことが好ましいが、断続的に形成される場合であっても、大部分(面積率で表面の8割以上)がAl酸化物によって被覆されていれば、耐酸化性の向上効果は得られる。
表層領域における平均N含有量及び、厚み方向中心部における平均N含有量は、AESを用いて以下の方法で求めることができる。
表層領域のN量は、AESの線分析(ラインスキャン)により、耐熱合金の表面(最表層)から厚み方向に7μmの範囲で成分の定量分析を行い、測定線上の各測定点におけるN含有量の平均値により求める。各測定点の測定間隔は特に指定しないが、十分な測定精度確保のため0.5μm以下であることが望ましい。窒素吸収処理においては、必ずしもNが完全に均一に吸収されるわけではないので、値のばらつきを考慮すると、異なる個所で、最低でも計5回の線分析が必要である。厚み方向中心部のN量は、厚み方向の中心部(板厚をtとしたとき、t/2の位置)におけるAESの点分析によって求める。これも表層領域と同様、値のばらつきを考慮し、異なる個所で、最低でも5回の点分析が必要である。
<大気中で800℃で50時間保持する熱処理を行った後の、熱処理を行う前に対する、1cm当たりの重量の増加量が、0.070mg/cm以下>
本実施形態に係る耐熱合金では、800℃で50時間保持する熱処理後の、熱処理前に対する、1cm当たりの重量の増加量が、0.070mg/cm以下であることが好ましい。
大気環境で、800℃の雰囲気に合金が曝されると、合金は酸化する。しかしながら、表面に母材への密着性が高く、酸素の透過性が低いAl酸化物皮膜が安定的に形成されれば、酸化速度は、著しく小さくなる。大気中で50時間保持しても、重量の増加(熱処理前の重量に対する熱処理後の重量の増加)が少ないことは、耐酸化性が高いことを示す。
上述したように表面から窒素吸収を行うことで、耐酸化性は向上する。しかしながら、Nの存在状態によって耐酸化性の向上度合いは変化する場合がある。
800℃で50時間保持する熱処理を行った後の、熱処理を行う前に対する、1cm当たりの重量の増加量が0.070mg/cm以下となるように耐熱合金が制御されていれば、熱処理後により高い水準で安定した耐酸化性向上効果が得られるので好ましい。
800℃で50時間保持する熱処理前後の重量の増加量は以下の方法で求めることができる。
耐熱合金から、20mm×25mm(×板厚)の試験片を切り出し、表面を全面♯400で研磨の後、試験前の重量を測定し、800℃の大気中で50時間保持した後、試験後の重量を測定する。本実施形態に係る耐熱合金は、板厚によっては昇温、冷却中にスケール剥離を起こす場合があるので、試験後の試料重量は、剥離したスケールの重量を含めた値として算出する。
<800℃で50時間保持する熱処理を行った後において、表層領域における円相当径が150nm以下の第二相の平均個数密度が、厚み方向中心部における第二相の平均個数密度の70%以下>
本実施形態に係る耐熱合金では、800℃で50時間保持する熱処理を行った後において、表層領域での円相当径が150nm以下の第二相の平均密度が、厚み方向中心部(t/2の位置)における第二相の平均密度の70%以下であることが好ましい。より好ましくは50%以下である。
本実施形態に係る耐熱合金の成分系では、800℃で50時間の熱処理を加えられた際の、円相当径が150nm以下の第二相は、ごく僅かな炭化物、窒化物等を除いて実質的にγ′相であるとみなすことができる。
すなわち、高温に曝された後の表層領域での第二相の平均密度が、厚み方向中心部における第二相の平均密度よりも小さいことは、熱処理前の耐熱合金において、γ′相が析出しにくい状態、言い換えると表層領域のオーステナイト相の格子定数が厚み方向中心部のオーステナイト相の格子定数と異なる状態に制御されていたことを示す。
そのため、熱処理後の表層領域での第二相の平均密度が、厚み方向中心部における第二相の平均密度の70%以下になるように耐熱合金が制御されていれば、熱処理後により高い水準で安定した耐酸化性向上効果が得られるので好ましい。
上記のような第二相は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察することができる。観察面をL断面(圧延方向に平行、板厚方向に垂直な断面)とし、耐熱合金の表面から厚み方向に7μmの領域を表層領域、板厚をtとしたとき、t/2から厚み方向に上下3.5μmずつまでの領域を厚み方向の中心部として、それぞれの組織内の円相当径150nm以下の第二相の平均個数密度を計算する。この際、画像解析ソフトなどを用いてもよい。本実施形態に係る耐熱合金の金属組織においては、観察視野によって組織に多少のばらつきが出るため、表層領域と中心部とでそれぞれ850μm以上の面積を観察し、第二相の平均個数密度を求める。この第二相の平均個数密度は、上述したように、γ′相の平均個数密度にほぼ等しい。
本実施形態に係る耐熱合金は、例えば板厚が0.1〜2.0mmである合金板である。このような板厚の合金板であれば、排気マニホールド、コンバーター、フロントパイプ、マフラー等の部材の素材として好適である。
<製造方法について>
次に、本実施形態に係る耐熱合金の好ましい製造方法について説明する。本実施形態に係る耐熱合金は、製造方法に関わらず上記の特徴を有していればその効果が得られる。しかしながら、以下の方法によれば安定して製造できるので好ましい。
本実施形態に係る耐熱合金は、以下の工程を含む製造方法で製造することができる。
(i)所定の化学組成を有する合金を、窒素と水素とを含有するガス雰囲気中で、1050℃以上の温度で5〜600秒保持する熱処理工程。
(ii)熱処理工程後の合金を15℃/秒以上の冷却速度で500℃以下まで冷却する冷却工程。
各工程について説明する。
<熱処理工程>
熱処理工程では、上述した本実施形態に係る耐熱合金と同じ化学組成を有する合金に対し、合金を、窒素と水素とを含有するガス雰囲気中(例えば、アンモニア(NH)分解ガス)で、1050℃以上の温度で5〜600秒保持する熱処理を行う。
熱処理に供される合金は、化学組成を除いて限定されないが、合金板を用いる場合には、公知の方法で溶製、鋳造、熱間圧延等を行って所定の厚みに制御された合金板を用いればよい。
加熱温度を1050℃以上とすることで、合金中に形成されているγ′相を溶解させることができる。加熱温度が1050℃未満である、及び/または、保持時間が5秒未満であると、γ′相が十分に溶解せず、高温環境での高温強度、耐酸化性が低下する。
溶体化熱処理温度が高すぎたり、処理時間が長すぎたりするとコストの増加を招く。したがって、溶体化熱処理温度は1200℃以下、時間は600秒以下とすることが好ましい。
また、熱処理雰囲気を窒素と水素とを含む雰囲気とすることで、合金の表層領域に窒素を吸収させることができる。熱処理雰囲気において、窒素ガスは、窒素吸収反応のために体積比率で20%以上とすることが好ましい。他方、水素ガスは熱処理装置中の雰囲気ガスに不可避的に混入する酸素ガスや水分を還元して、窒素吸収反応を促進する。この効果を得るために水素ガスは体積比率で40%以上とすることが好ましい。また、雰囲気ガスの露点が高いと、不可避的に混入する酸素ガスや水分の量が多くなり、酸化物皮膜が生成され窒素吸収反応が阻害される。このため雰囲気ガスの露点は−50℃以下とすることが好ましい。
<冷却工程>
冷却工程では、熱処理工程後の合金に対し、15℃/秒以上の冷却速度で(15℃/秒以上の冷却速度を維持しつつ)500℃以下まで冷却する。冷却速度が15℃/秒未満である、及び/または冷却停止温度が500℃超である場合、冷却中または冷却停止後に合金中にγ′相が析出する。
排気系部材等として使用される前にγ′相が多量に析出すると、使用時にγ′相が新たに析出しない。また、使用前に析出したγ′相は早期に粗大化し、高温強度向上への寄与が小さい。その結果、高温強度が低下する。
そのため、15℃/秒以上の冷却速度で500℃以下まで冷却する。
<調質圧延工程>
本実施形態に係る耐熱合金の製造方法は、冷却工程後の耐熱合金に対し、さらに、圧下率5%以上、45%以下の圧下を行ってもよい。
調質圧延を行うことで、高温強度を高めることができる。高温強度の向上の点では、圧下率を5%以上とすることが好ましい。一方で、調質圧延の圧下率が45%を超えると、加工性が低下する。そのため、圧下率は45%以下であることが好ましい。
電気溶解炉にて、種々の合金成分を有する25kg合金塊を溶製した。この合金塊を熱間鍛造により厚さ45mmに成型し、その後厚さ5mmまで熱間圧延を行った。
これらの熱延板について、焼鈍及び酸洗後、冷間圧延により厚さ0.15〜3.1mmの中間冷延板とした。
この中間冷延板について、表2に示すように温度、保持時間、雰囲気、熱処理後の冷却速度、冷却停止温度を種々に変化させた熱処理を行った後、圧下率35%の調質圧延を行い、供試材とした。調質圧延後の板厚を表2に合わせて示す。
供試材の板厚中心部のAESによる成分分析結果を表1に示す。供試材No.1とNo.30、No.4とNo.31、No.9とNo.32、No.13とNo.33、No.21とNo.34は、それぞれ同じ25kg合金塊から採取し、調質圧延前の熱処理条件を変化させた。
Figure 2021080541
Figure 2021080541
前述のように作製された供試材のL断面について、AESを用いて、表層から7μmの領域の窒素濃度xNsを測定し、板厚中心部の窒素濃度xNcとの比率を百分率で計算した。
また、作製された供試材の高温強度評価のため、各供試材のL方向に平行な方向で引張試験片を採取し、800℃での高温引張試験(JIS G0567準拠)を行い、0.2%耐力を測定した。
800℃における0.2%耐力が330MPa以上であれば、十分な高温強度を有すると判断した。
また、作製された供試材に対し、冷延板から20×25mmの試験片を切り出し、板の全面を♯400で研磨した後、試験片の重量を測定し、その後、800℃、50時間の大気酸化試験を行った。
高温での耐酸化性評価のため、大気酸化試験後の供試材から、剥離したスケールを含む、試験片の試験後の重量を測定し、試験前後の重量の変化を算出した。
800℃大気酸化試験における重量の増加量が0.070mg/cm以下であれば、耐熱合金として十分な耐酸化性を持つと判断した。
また、大気酸化試験後の試験片のL断面の金属組織をSEMにより観察し、板厚中心部と表層領域との、それぞれの第二相の単位面積当たりの個数密度を測定し、その比率を百分率で計算した。
結果を表3に示す。
Figure 2021080541
表1〜表3から分かるように、本発明例であるNo.1〜No.27では、高温強度、耐酸化性に優れていた。
一方、比較例であるNo.28〜36では、成分や製造条件が好ましくなかったことで、表層領域のN含有量が少なく耐酸化性が十分ではなかった、または、800℃での0.2%耐力が低かった。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.0003〜0.0200%、
    Si:0.02〜2.00%、
    Mn:0.02%〜2.00%、
    P:0.050%以下、
    S:0.0100%以下、
    Cr:12.00%以上、30.00%未満、
    Ni:35.0〜60.0%、
    N:0.0001〜0.0500%、
    Nb:1.00%超、3.50%以下、
    Al:2.00%超、4.00%以下、
    Ti:0〜0.80%、
    V:0〜1.00%、
    Mo:0〜5.00%、
    W:0〜5.00%、
    Cu:0〜1.00%、
    Co:0〜1.00%、
    B:0〜0.0100%、
    Zr:0〜0.0100%、
    Ca:0〜0.0050%、
    Mg:0〜0.0050%、
    を含有し、残部がFe及び不純物である化学組成を有し、
    800℃での0.2%耐力が、330MPa以上であり、
    表面からの深さが0〜7μmの領域である表層領域の平均N含有量が、質量%で0.100%以上であり、
    前記表層領域における前記平均N含有量が、質量%で、厚み方向中心部における平均N含有量の2.5倍以上である
    ことを特徴とする耐熱合金。
  2. 板厚が0.1〜2.0mmの合金板である
    ことを特徴とする請求項1に記載の耐熱合金。
  3. 大気中で800℃で50時間保持する熱処理を行った後の、前記熱処理を行う前に対する、1cm当たりの重量の増加量が、0.070mg/cm以下であり、
    前記熱処理を行った後において、
    前記表層領域における円相当径が150nm以下である第二相の平均個数密度が、前記厚み方向中心部における円相当径が150nm以下である第二相の平均個数密度の70%以下である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の耐熱合金。
  4. 質量%で、
    Ti:0.10〜0.80%、
    V:0.10〜1.00%、
    Mo:0.50〜5.00%、
    W:0.02〜5.00%、
    Cu:0.01〜1.00%、
    Co:0.10〜1.00%、
    の一種または二種以上を含有する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐熱合金。
  5. 質量%で、
    B:0.0002〜0.0100%、
    Zr:0.0002〜0.0100%、
    Ca:0.0001〜0.0050%、
    Mg:0.0001〜0.0050%、
    の一種または二種以上を含有する
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐熱合金。
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